メインコンテンツへスキップ
       

担保権消滅許可決定が送達された担保権者の初動―1か月の価額決定請求と即時抗告(AI作成)

第1 受任直後の結論

再生債務者等から担保権消滅許可の申立てがされ、許可決定を受けた担保権者は、①その財産が再生債務者の事業継続に欠くことのできないものか、②申立書に記載された財産価額が適正かを別々に検討する。①は許可決定に対する即時抗告(民事再生法148条4項)、②は価額決定請求(同法149条)の問題である。一方を検討しただけで他方の期限管理を終えてはならない。

価額決定請求の期間は、許可決定及び申立書の送達を受けた日から1か月である。受任日に送達日、申立書の申出価額、担保権の順位、費用予納の要否を記録し、即時抗告の期限も別に確認する。以下は、担保権者側の初動を中心に整理する。

第2 送達書類と期限の確認

民事再生法148条2項の申立書には、目的財産、財産価額、消滅すべき担保権及び被担保債権額が記載される。民事再生規則70条は担保権者の表示と、財産が事業継続に不可欠である理由の記載も求める。許可決定と申立書の送達を受けたら、財産の特定、担保権の漏れ、順位及び債権残高を登記事項証明書・契約書・残高資料と照合する。

価額決定請求の1か月は「許可決定日」や依頼者が弁護士に相談した日からではなく、同法148条3項による送達を受けた日を起点とする(同法149条1項)。やむを得ない事由がある場合の期間伸長も、担保権者の申立てと裁判所の判断を要する(同条2項)。資料収集が間に合わないという見込みだけで期限を放置しない。

根抵当権がある場合には、許可決定及び申立書の送達を受けた時から2週間が経過すると元本が確定する規律(同法148条6項)も別に確認する。融資先の残高や将来債権の扱いを判断するため、送達日と元本確定の時点を同じ管理表に記録する。

第3 許可要件と申出価額を分けて争う

1 事業継続に不可欠か

同法148条1項の要件は、担保の目的財産が再生債務者の「事業の継続に欠くことのできないもの」であることにある。使用中の工場なら操業との関係を、売却予定の不動産なら担保を外した売却が事業継続に結び付く経路を具体的に検討する。スポンサーの意向があるだけで当然に要件が満たされるわけではない。

東京高裁平成21年7月7日決定は、戸建分譲事業に用いる販売用土地について、担保権の消滅がなければその事業の仕組みが機能しない事情の下で不可欠性を認めた。売却する財産も一律に対象外ではないが、閉鎖済み施設の売却など別の事案に結論をそのまま当てはめることはできない。スポンサー契約の条件、維持費、代替資金調達と売却後の資金繰りを比較し、許可要件を争うなら許可決定に対する即時抗告を検討する。

2 財産価額は適正か

目的財産の価額が過小だと考える担保権者は、同法149条1項により1か月以内に価額決定を請求できる。請求には裁判所が定める費用の予納を要し、予納しなければ請求は却下される(同条4項・5項)。民事再生規則75条は請求書の記載事項、送達を受けた許可決定・申立書の写しの添付、再生債務者等への通知等を定めている。申出額との開き、評価の根拠及び予納資金を並行して確認する。

請求が受理されると、裁判所は評価人を選任し、その評価に基づいて価額を決定する(同法150条1項・2項)。評価は財産を処分するものとして行われ、不動産では対象の性質に応じて取引事例比較法、収益還元法、原価法などを適切に用いる(民事再生規則79条)。売買予定価格は重要な資料になり得るが、それだけで裁判所が定める価額が決まるわけではない。評価方法と前提条件を具体的に点検する。

第4 担保権者が集める資料

まず登記事項証明書、担保設定契約、被担保債権の残高・遅延損害金の計算書を揃え、他の担保権者と順位を確認する。次に申立書の価額を、鑑定書、不動産業者の査定書、近隣の取引事例、収益資料、賃貸借・占有状況、修繕費及び売買交渉資料と照合する。比較に使った物件や売買条件が異なる場合は、その差を明示する。

不可欠性を争うときは、スポンサーの支援契約・停止条件、売買契約の抵当権抹消条件、維持費の実績、月次資金繰り、他の処分方法及び代替スポンサーの検討記録を確保する。売却代金から担保権者に配当する金銭と、スポンサーから再生債務者に入る資金を混同しない。後者の入金が事業継続にどう結び付くかを、金額と時期のある表で確認する。

第5 費用、納付と配当

価額決定に要した費用の最終負担は、決定価額が申出額を超えるかによって変わる(同法151条1項)。超過額が費用額より小さいときの配分も同項ただし書に定めがある。請求時の予納と最終的な費用負担は区別して、依頼者に見通しを説明する。

価額決定請求がない場合等には申出額、決定が確定した場合には決定価額に相当する金銭を、再生債務者等が裁判所の定める期限までに納付する。担保権が消滅するのは許可決定時ではなく、この納付時である。納付がなければ許可は取り消される(同法152条)。納付後は裁判所が担保権者への配当又は弁済金の交付を行う(同法153条)。許可決定、価額確定、納付及び配当を別の進捗欄で管理する。

第6 受任直後のチェックリスト

①許可決定・申立書の送達日と受領者を記録する。
②許可要件への即時抗告と価額決定請求の双方について、期限と提出先を確認する。
③財産・担保権・被担保債権額を登記と契約資料で照合する。
④申出価額の根拠、売買条件、評価資料及び予納額を確認する。
⑤不可欠性に関するスポンサー条件、資金繰り及び代替手段を検討する。
⑥根抵当権なら元本確定の時点を管理する。
⑦裁判所への納付の有無、配当・弁済金の交付及び登記抹消を最後まで確認する。

第7 関連記事・出典

関連記事:民事再生の担保権消滅許可―売却予定財産も対象となるか。

出典:民事再生法148条~153条(e-Gov法令検索)、民事再生規則70条・75条・79条(裁判所)、東京高裁平成21年7月7日決定の紹介(日弁連法務研究財団)。