柳本つとむ裁判官に関する情報,及び過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容

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目次
第1 柳本つとむ裁判官に関する情報

1 立川反戦ビラ入れ裁判に対する抗議行動で名前が出ていること
2 海上自衛隊のソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動に対する抗議活動で名前が出ていること
3 ①名古屋家裁の55歳男性判事の行動に関する平成31年3月13日付の産経新聞の記事,及び②柳本つとむ名古屋家裁家事第2部判事
4 夏祭起太郎名義の2つのエッセー,及び裁判官等の憲法尊重擁護義務
5 勤務時間外の私的な行為に関する,過去の裁判官の懲戒事例
6 取材に対する名古屋家裁総務課の回答等
7 最高裁判所人事局長の国会答弁,及びこれに関するネット記事等
第2 過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容,及び下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
1 最高裁大法廷平成10年12月 1日決定
2 最高裁大法廷平成13年 3月30日決定
3 最高裁大法廷平成30年10月17日決定
4 下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
第3 罪証隠滅のおそれ等

1 元裁判官及び元検事が述べるところの罪証隠滅のおそれ
2 犯人隠避罪に関する裁判例等
3 東京地検次席検事が罪証隠滅防止の実効性がないとの見解を示した,被告人カルロス・ゴーンの保釈条件
4 福岡高裁判事妻ストーカー事件で訴追請求にまでは至らなかった理由
第4 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申の記載
第5 司法修習生の守秘義務違反容疑の場合,司法研修所による調査が実施されて報道されたこと
第6 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話等
1 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話
2 35期新任判事補に対する説明
第6 その他

第1 柳本つとむ裁判官に関する情報
1 立川反戦ビラ入れ裁判に対する抗議行動で名前が出ていること
   -立川反戦ビラ入れ裁判-不当判決を認めない宣言最高裁平成20年4月11日判決に対するもの)に「柳本つとむ」という名前があります。

2 海上自衛隊のソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動に対する抗議活動で名前が出ていること
(1) 週刊かけはし(万国の労働者団結せよ!)HP「海自護衛艦のソマリア派兵反対!」(平成21年3月30日付)「三重県の柳本つとむさんらがスピーチをした。」と書いてあります。
(2) 「309-5.2009年3月14日、湯浅一郎さんを送る会(41)~(50)」には「三重県の柳本つとむさん、(中略)三人は、昼間の呉現地での海上自衛隊ソマリア派兵抗議行動に参加した。」と書いてあります。
(3) 柳本つとむ裁判官は,平成21年3月当時,津地家裁四日市支部判事をしていました(柳本つとむ裁判官(45期)の経歴参照)。

3 ①名古屋家裁の55歳男性判事の行動に関する平成31年3月13日付の産経新聞の記事,及び②柳本つとむ名古屋家裁家事第2部判事
(1) 平成31年3月13日付の産経新聞の記事
   産経新聞HPの「昭和の日を「無責任の日」と批判 判事、過激派参加団体で活動も」(平成31年3月13日付)には以下の記載があります。
① 4月末の天皇陛下の譲位を前に、名古屋家裁の男性判事(55)が「反天皇制」をうたう団体の集会に参加していたことが12日、明らかになった。判事は平成21年以降、少なくとも3つの団体で活動。反皇室、反国家、反権力などを掲げ、中には過激派活動家が参加する団体もあった。
② 「反天皇制運動連絡会」(反天連、東京)などが呼びかけた「代替わり」反対集会では、皇室を批判する激しい発言が繰り返される。判事は昨年、こうした反天連による別の集会に複数回にわたって参加し、自らも「批判的に考察していきたい」などと発言していた。

③ 関係者によると、判事は津地家裁四日市支部勤務だった21年、広島県呉市で行われた反戦団体「ピースリンク広島・呉・岩国」(呉市)の集会に参加。実名でスピーチした。その後、広島地家裁呉支部に異動し、同団体の活動に参加した。
④ 名古屋家裁に異動すると、反戦団体「不戦へのネットワーク」(名古屋市)に参加。会報に「夏祭起太郎」の名前で論考を寄稿した。
⑤ 産経新聞は今年2月、判事に複数回、直接取材を申し込んだが、いずれも無言で足早に立ち去った。
⑥ 名古屋家裁には昨年11月に判事の政治運動疑惑を伝え、見解を質問した結果、書面で「承知していない」「仮定の質問にはお答えできない」との回答があった。今年2月に再度取材したが、家裁は判事に事情を聴くなどの調査をしたかについても明らかにせず、「お答えすることはない」とした。
(2) 反天皇制運動連絡会
   反天皇制運動連絡会は,終わりにしよう天皇制!「代替り」に反対するネットワーク(略称は「おわてんねっと」です。)の呼びかけ団体です(おわてんねっとHP「おわてんねっと賛同団体」参照)。

(3) 柳本つとむ名古屋家裁家事第2部判事
ア 柳本つとむ裁判官は昭和38年(1963年)9月19日生まれですから,平成31年(2019年)3月現在,55歳です。
イ 柳本つとむ裁判官は,平成30年4月現在,名古屋家裁家事第2部判事として,財産管理関係事件,後見等関係事件,遺産分割調停事件,遺産分割審判事件等を担当しています(名古屋家裁の事務分配割合表(平成30年4月1日現在)参照)。
ウ 柳本つとむ裁判官は,平成31年4月現在,名古屋家裁家事第2部判事として,財産管理関係事件,後見等関係事件,相続放棄等,遺言書の検認等,遺産分割調停事件,遺産分割審判事件等を担当しています(名古屋家裁の事務分配割合表(平成31年4月8日現在)参照)。

4 夏祭起太郎名義の2つのエッセー,及び裁判官等の憲法尊重擁護義務
(1) 夏祭起太郎名義の2つのエッセー
ア 夏祭起太郎の「天皇代替わり、どうする・・・」不戦へのネットワーク会報80号(2018年2月4日発行))には以下の記載があります。
① 天皇代替り茶番劇のスケジュールも,大分具体化して閣議決定など経て、公表されてきた。
② 国内向け,新天皇即位後初めて行われるビッグイベントが2019年初夏頃行われる愛知植樹祭だ。天皇が、一本の木を植えるために数十億単位の公費を使って、たくさんの木を伐採し、「国土の緑を大切に」ともいうまったくもって不思議で呪術的なイベント(毎年都道府県主催で行われる。もちろん主眼は、天皇が全国を巡り歩いて木を植え、「お言葉」なるものを発する天皇賛美の行事だ。)
③ 天皇制要りません、迷惑です、いい加減にしてくださいという意思表示の一つ一つが天皇制を掘り崩し、葬り去ることにつながると思う。
イ 夏祭起太郎の「”支配者面した慰霊,慰問の旅”」不戦へのネットワーク会報81号(2018年5月6日発行))には以下の記載があります。
① アキヒト・ミチコの沖縄・与那国訪問は,歓迎される慰霊,慰問の旅という表向きの宣伝(沖縄戦犠牲者の慰霊,日本最西端の離島に訪問)とは裏腹に,ヤマト政府の方針に従わない連中(まずは辺野古ゲート前に集う人たち,次に自衛隊基地強化に不服な人々)を従わせようと(それも,強制的にではなく自発的に)いう底意から企画演出されたイベントである(与那国訪問には,中国を挑発する意味もあるという説もささやかれている。)。
② 天皇・皇后が,福島を訪問し,植樹祭(放射能汚染から身を守るためにはタブーとされている「土いじり」!)に参加し,復興の偽に出演するとは,何たる政治的行動! しかもインチキ! フクイチ肉薄に執念を燃やしているのはミチコだという女性週刊誌の報道も(アキヒトはH式15点あるかどうか疑問・・・)。
③ 世襲の君主がいろいろな動きをする制度は,やっぱり理不尽,不合理,弱い立場のものを圧迫する,逆らいにくい呪術的な拘束力を醸し出し,第一お金がもったいないので,即刻ゴメンこうむりたい。
(2) 裁判官等の憲法尊重擁護義務
ア 日本国憲法99条は,「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と定めています。
イ 衆議院議員逢坂誠二君提出内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する再質問に対する答弁書(平成29年2月10日付)には以下の記載があります。
   政府としては、憲法第九十九条は、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えている。
ウ ちなみに,日本共産党HPの「天皇をどうする」には,戦後の日本共産党の在り方として,天皇は国政に関する権能を有しないと定める日本国憲法4条1項にかんがみ,「私たちは、四十二年前に綱領を決めたときも、実際にはもっと前からですが、「天皇制打倒」の旗をかかげたことは一度もないのです。」などと書いてあります。
   ただし,日本共産党は,天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律(平成30年12月14日法律第99号)には反対しています(衆議院HPの「議案審議経過情報」,及び参議院HPの「本会議投票結果」参照)。
(3) 宮内庁HPの記載
ア 宮内庁HP「「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会(第2回)」に宮内庁が作成,提出した資料」に以下の資料が載っています。
・ 資料1(歴史上の実例)
→ 文化14年(1817年)3月22日,光格天皇(47歳)が仁孝天皇(18歳)に譲位した事例が書いてあります。
・ 資料2(天皇皇后両陛下の平成御大礼時のご日程について)
イ 宮内庁HP「各都道府県へのお出まし」には,それぞれの都道府県を訪問した際の日程が書いてあります。
ウ 宮内庁HP「戦没者慰霊」には,終戦50年,終戦60年及び終戦70年における,慰霊のための行幸啓のことが書いてあります。

5 勤務時間外の私的な行為に関する,過去の裁判官の懲戒事例
(1)ア 45期の寺西和史仙台地裁判事補は,勤務時間外に出席した,国会提出法案に反対する集会において,パネリストとしての発言は辞退するなどと発言した結果,戒告の懲戒処分を受けました(最高裁大法廷平成10年12月1日決定)。
イ 裁判官は,憲法を尊重し,擁護する義務を負っているものの,国会提出法案を尊重し,擁護する義務は負っていません。
(2) 36期の古川龍一福岡高裁判事は,罪証隠滅行為まではしなかったものの,勤務時間外に,実質的に妻の弁護活動に当たる行為をした結果,戒告の懲戒処分を受けました(
最高裁大法廷平成13年3月30日決定)。
(3) 
46期の岡口基一東京高裁判事は,勤務時間外に,犬の返還請求を認められた当事者の感情を傷つけるツイートを行った結果,戒告の懲戒処分を受けました(最高裁大法廷平成30年10月17日決定)。

6 取材に対する名古屋家裁総務課の回答等
(1) 示現舎HP「反天皇に血道を上げる名古屋家裁判事の「活動歴」」(平成31年3月15日付)によれば,名古屋家裁総務課は,取材に対し,以下のとおり回答したそうです。
① 記事中に出てきた人物が柳本つとむ判事なのか承知していません。把握していない以上、特に処分の有無も言えません。メディアからの取材件数や抗議件数?メディアからの問い合わせについては報道のことですのでお話しするのは控えます。また抗議件数も把握していません。
② (柳本判事の反天皇活動を調査しないかどうかについて)勤務外の行動についての調査の有無はお話できません。
(2)ア 裁判官には適用されませんが,人事院規則14-7(政治的行為)8項は以下のとおり定めています。
   各省各庁の長及び行政執行法人の長は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があつたことを知つたときは、直ちに人事院に通知するとともに、違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。
イ 名古屋家裁総務課の職員については,裁判所職員に関する臨時措置規則に基づき,人事院規則14-7(政治的行為)が適用されます。
ウ 最高裁判所長官「新年のことば」(平成31年1月1日)には以下の記載があります。
   裁判所は,法にのっとり社会に生起する紛争の解決を図ることによって法の支配を実現する使命を託されています。裁判所に働く者一人一人が,それぞれの職場において,安易に先例に頼るのではなく,常にその行為が適正なものといえるかを問う姿勢で職務に当たることが求められていることに思いを致し,自らを戒めなければならないと感じています。

7 最高裁判所人事局長の国会答弁,及びこれに関するネット記事等
(1)ア 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成31年3月22日の衆議院法務委員会(リンク先の動画の3時間45分の24秒~55秒)において,串田誠一衆議院議員(日本維新の会)の質問に対し,以下の答弁をしています。
   委員ご指摘の新聞報道の件に関しましては,裁判官の私生活上の自由や思想・表現の自由にも配慮しつつ慎重に調査をしているところでございます。
   現時点では,新聞記事の対象となったと考えられます裁判官からの事情聴取等を行いましたものの,本人は新聞記事に記載された事実関係を否定しておりまして,服務規律違反の事実があったことは確認できていないというところでございます。
イ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成31年3月26日の衆議院法務委員会(リンク先の動画の2時間44分56秒~45分37秒)において,門博文衆議院議員(自民党)の質問に対し,以下の答弁をしています。
   委員ご指摘の新聞記事の件に関しましては,委員からもご指摘ございました裁判官の私生活上の自由や思想・表現の自由にも配慮しつつ慎重に調査しているところでございます。
   現時点では,新聞記事の対象となったと考えられる裁判官からの事情聴取等を行いましたものの,本人は新聞記事に記載された事実関係を否定しておりまして,服務規律違反の事実があったことは確認できていないところでございます。
   事実関係を適切に確認できるよう,引き続き慎重に調査してまいりたいと考えております。
(2) 産経新聞HPの「「反天皇制」裁判所の自浄能力注視 調査の甘さ指摘も」(平成31年3月22日付)には以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 産経新聞は、判事が活動に参加している様子を撮影した複数の写真や、団体など多数の関係者への取材を基に報じている。インターネットなどの公開情報で確認できるものだけでも、判事の主張は事実と食い違っている。
② 産経新聞は昨年11月、名古屋家裁に判事の政治運動疑惑を伝え、見解を質問した。しかし、報道するまでの3カ月以上にわたり、事実関係について「承知していない」の一点張りだった。
③ 法曹関係者は「裁判所は判事にパソコンや携帯電話の任意提出も求めず、事情聴取して否定されたから終わりというのはおかしい。団体の関係者や判事の休暇の取得状況まで調査すべきだ」と指摘する。
(3)ア 示現舎HP「反天皇に血道を上げる名古屋家裁判事の「活動歴」」(平成31年3月15日付)には以下の記載がありますところ,関係団体の人は,産経新聞の記事とニュアンスの異なることを言っているみたいです。
   団体名が浮上した 「ピースリンク広島・呉・岩国」と「不戦へのネットワーク」 に柳本氏の活動に聞いてみると、いずれも産経の報道は把握しており、こう回答した。
   「私たちの団体名が出ているということで記事は読みました。しかしこの件で私たちが何か言えることはありません」 (ピースリンク広島・呉・岩国)
   「柳本という名前で活動している者は不戦ネットにいませんし、裁判官を名乗って活動している者もいません。記事に出ていた夏祭起太郎さんは会員ですが柳本つとむという方なのか分からないんですよ。マスコミ関係からの問い合わせは4社ほどありまして、その時も柳本さんという名前が出てきましたが、その名前を聞いたのは初めてです。会報における発言は不戦ネットの公式的な見解ではなく、会の方針とは全く違う内容を投稿される人もいますよ。(夏祭の記事には)植樹祭やオリンピック反対と書いているがそれを討議したことはなく、不戦ネットとして天皇制の問題は一昨年に交流会をやったぐらいです」 (不戦へのネットワーク担当者 )
イ 不戦へのネットワーク会報83号(2018年11月11日発行)には「今回の天皇代替わりの特徴と問題点が載っています。
   また,不戦へのネットワーク会報84号(2019年2月16日発行)には「憲法と天皇制」が載っています。
ウ 不戦へのネットワークHPに掲載されている「2018年度方針(案)」には以下の記載があります。
   私たちは、16年8月から17年6月にいたる退位新法成立の中にハッキリとアキヒト天皇政治を見ることができました。「強制ではなく、自発的に」がアキヒト政治の極意であったと理解します。

第2 過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容,及び下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
1 最高裁大法廷平成10年12月1日決定
(1) 寺西判事補事件に関する最高裁大法廷平成10年12月1日決定が判示した,45期の寺西和史仙台地裁判事補(抗告人)の懲戒の原因となる事実は以下のとおりです。
   抗告人は、本件集会において、パネルディスカッションの始まる直前、数分間にわたり、会場の一般参加者席から、仙台地方裁判所判事補であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をし(以下、本件集会におけるこの抗告人の言動を「本件言動」という。)、本件集会の参加者に対し、本件法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという抗告人の意見を伝えることによって、本件集会の目的である本件法案を廃案に追い込む運動を支援し、これを推進する役割を果たし、もって積極的に政治運動をして、裁判官の職務上の義務に違反した。
(2) 最高裁大法廷平成10年12月1日決定は,裁判所法52条1号の「積極的に政治運動をすること」の意義に関して,以下の判示をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 憲法は、近代民主主義国家の採る三権分立主義を採用している。
   その中で、司法は、法律上の紛争について、紛争当事者から独立した第三者である裁判所が、中立・公正な立場から法を適用し、具体的な法が何であるかを宣言して紛争を解決することによって、国民の自由と権利を守り、法秩序を維持することをその任務としている。
   このような司法権の担い手である裁判官は、中立・公正な立場に立つ者でなければならず、その良心に従い独立してその職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されるものとされ(憲法七六条三項)、また、その独立を保障するため、裁判官には手厚い身分保障がされている(憲法七八条ないし八○条)のである。
   裁判官は、独立して中立・公正な立場に立ってその職務を行わなければならないのであるが、外見上も中立・公正を害さないように自律、自制すべきことが要請される。
   司法に対する国民の信頼は、具体的な裁判の内容の公正、裁判運営の適正はもとより当然のこととして、外見的にも中立・公正な裁判官の態度によって支えられるからである。

   したがって、裁判官は、いかなる勢力からも影響を受けることがあってはならず、とりわけ政治的な勢力との間には一線を画さなければならない。
   そのような要請は、司法の使命、本質から当然に導かれるところであり、現行憲法下における我が国の裁判官は、違憲立法審査権を有し、法令や処分の憲法適合性を審査することができ、また、行政事件や国家賠償請求事件などを取り扱い、立法府や行政府の行為の適否を判断する権限を有しているのであるから、特にその要請が強いというべきである。

   職務を離れた私人としての行為であっても、裁判官が政治的な勢力にくみする行動に及ぶときは、当該裁判官に中立・公正な裁判を期待することはできないと国民から見られるのは、避けられないところである。
   身分を保障され政治的責任を負わない裁判官が政治の方向に影響を与えるような行動に及ぶことは、右のような意味において裁判の存立する基礎を崩し、裁判官の中立・公正に対する国民の信頼を揺るがすばかりでなく、立法権や行政権に対する不当な干渉、侵害にもつながることになるということができる。
② これらのことからすると、裁判所法五二条一号が裁判官に対し「積極的に政治運動をすること」を禁止しているのは、裁判官の独立及び中立・公正を確保し、裁判に対する国民の信頼を維持するとともに、三権分立主義の下における司法と立法、行政とのあるべき関係を規律することにその目的があるものと解される。
③ なお、国家公務員法一〇二条及びこれを受けた人事院規則一四―七は、行政府に属する一般職の国家公務員の政治的行為を一定の範囲で禁止している。
   これは、行政の分野における公務が、憲法の定める統治組織の構造に照らし、議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策の忠実な遂行を期し、専ら国民全体に対する奉仕を旨とし、政治的偏向を排して運営されなければならず、そのためには、個々の公務員が政治的に、一党一派に偏することなく、厳に中立の立場を堅持して、その職務の遂行に当たることが必要となることを考慮したことによるものと解される(最高裁昭和四四年(あ)第一五〇一号同四九年一一月六日大法廷判決・刑集ニ八巻九号三九三頁参照)。
   これに対し、裁判所法五二条一号が裁判官の積極的な政治運動を禁止しているのは、右に述べたとおり、裁判官の独立及び中立・公正を確保し、裁判に対する国民の信頼を維持するとともに、三権分立主義の下における司法と立法、行政とのあるべき関係を規律することにその目的があると解されるのであり、右目的の重要性及び裁判官は単独で又は合議体の一員として司法権を行使する主体であることにかんがみれば、裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請より強いものというべきである。
   また、国家公務員法一〇二条及び人事院規則一四―七は、一般職の国家公務員が禁止される政治的行為について、同条が自ら規定しているもののほかは、同規則六項が具体的に列挙したものに限定され、政治的色彩が強いと思われる行為であっても、具体的列挙事項のいずれにも該当しないものは、同条の禁止する「政治的行為」には当たらないものとし、しかも、同規則六項は、五号から七号までに定めるものを除き、同規則五項の定義する「政治的目的」をもってする行為のみを「政治的行為」と規定している。
   これは、右禁止規定の違反行為が懲戒事由となるほか刑罰の対象ともなり得るものである(同法一一〇条一項一九号)ことから、懲戒権者等のし意的な解釈運用を排するために、あえて限定列挙方式が採られているものと解される。
   これに対し、裁判官の禁止される「積極的に政治運動をすること」については、このような限定列挙をする規定はなく、その意味はあくまで右文言自体の解釈に懸かっている。
   裁判官の場合には、強い身分保障の下、懲戒は裁判によってのみ行われることとされているから、懲戒権者のし意的な解釈により表現の自由が事実上制約されるという事態は予想し難いし、違反行為に対し刑罰を科する規定も設けられていないことから、右のような限定列挙方式が採られていないものと解される。
   これらのことを考えると、裁判所法五二条一号の「積極的に政治運動をすること」の意味は、国家公務員法の「政治的行為」の意味に近いと解されるが、これと必ずしも同一ではないというのが相当である。
④ 以上のような見地に立って考えると、「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって、裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものが、これに該当すると解され、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、その行為の内容、その行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、その行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
(3) 最高裁大法廷平成10年12月1日決定は,「懲戒事由該当性」に関して以下の判示をしています。
   裁判所法四九条にいう「職務上の義務」は、裁判官が職務を遂行するに当たって遵守すべき義務に限られるものではなく、純然たる私的行為においても裁判官の職にあることに伴って負っている義務をも含むものと解され、積極的に政治運動をしてはならないという義務は、職務遂行中と否とを問わず裁判官の職にある限り遵守すべき義務であるから、右の「職務上の義務」に当たる。

2 最高裁大法廷平成13年3月30日決定
   福岡高裁判事妻ストーカー事件(平成13年3月14日付の最高裁判所調査委員会の調査報告書参照)に関する最高裁大法廷平成13年3月30日決定が判示した,36期の古川龍一福岡高裁判事(被申立人)の行為について以下の判示をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 前記事実関係を通覧すれば,被申立人は,山下次席検事から,妻Dに対する被疑事件の捜査が逮捕も可能な程度に進行しているので,事実を確認し,これを認めたならば示談をするようにとの趣旨で,捜査情報の開示を受けたのに対し,Dが繰り返し事実を否認したことから,その嫌疑を晴らすためとみられる一連の行動に出たものであり,具体的には,前記1(2),(3)のとおり,同次席検事から提供された捜査情報の内容をも用いて「〔Dの容疑事実〕ストカー防止法違反」と題する書面等を作成し,被疑者であるDとその弁護に当たる甲弁護士とに交付したなどというのである。
   そして,同書面の記載内容の中には,捜査機関と被疑者のいずれの側にも立たず中立的な立場において捜査状況を分析したというのではなく,被疑者であるDの側に立って,捜査機関の有する証拠や立論の疑問点,問題点を取り出し,強制捜査や公訴の提起がされないようにする端緒を見いだすために記載されたとみられるものが多く含まれている。
② この被申立人の行為は,その主観的意図はともかく,客観的にこれをみれば,被疑者であるDに捜査機関の取調べに対する弁解方法を教示したり,弁護人である甲弁護士に弁護方針について示唆を与えるなどの意味を持つものであり,これにより捜査活動に具体的影響が出ることも十分に予想されたところである。
   また,被申立人としても,この行為がそのような意味を持つものであることを認識し得たということができる。
   これらによれば,被申立人は,先に述べたような実質的に弁護活動に当たる行為をしたといわなければならず,その結果,裁判官の公正,中立に対する国民の信頼を傷つけ,ひいては裁判所に対する国民の信頼を傷つけたのである。
   したがって,被申立人としては,裁判官の立場にある以上,そのような行為は弁護人にゆだねるべきであったのであり,被申立人の行為は,妻を支援,擁護するものとして許容される限界を超えたものというほかはない。
③ 以上のとおり,被申立人の上記行為は,捜査情報の入手が受動的なものであった点や,妻の無実を晴らしたいという夫としての心情から出たものとみられる点を考慮しても,裁判官の職責と相いれず,慎重さを欠いた行為であり,裁判所法49条に該当するものといわなければならない。

3 最高裁大法廷平成30年10月17日決定
(1)ア 岡口基一裁判官に対する分限裁判に関する最高裁大法廷平成30年10月17日決定が判示した,46期の岡口基一東京高裁判事(被申立人)の懲戒の原因となる事実は以下のとおりです。
   被申立人は,平成30年5月17日頃,本件アカウントにおいて,東京高等裁判所で控訴審判決がされて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに,別紙ツイート目録記載2の文言を記載した投稿(以下「本件ツイート」という。)をして,上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけた。
   本件ツイートは,本件アカウントにおける投稿が裁判官である被申立人によるものであることが不特定多数の者に知られている状況の下で行われたものであった。
イ 別紙ツイート目録記載2の文言は以下のとおりです。
公園に放置されていた犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って,
もとの飼い主が名乗り出てきて,「返して下さい」
え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら・・
裁判の結果は・・
(2) 最高裁大法廷平成30年10月17日決定は,一般論として以下の判示をしています。
   裁判の公正,中立は,裁判ないしは裁判所に対する国民の信頼の基礎を成すものであり,裁判官は,公正,中立な審判者として裁判を行うことを職責とする者である。したがって,裁判官は,職務を遂行するに際してはもとより,職務を離れた私人としての生活においても,その職責と相いれないような行為をしてはならず,また,裁判所や裁判官に対する国民の信頼を傷つけることのないように,慎重に行動すべき義務を負っているものというべきである最高裁平成13年(分)第3号同年3月30日大法廷決定・裁判集民事201号737頁参照)。
   裁判所法49条も,裁判官が上記の義務を負っていることを踏まえて,「品位を辱める行状」を懲戒事由として定めたものと解されるから,同条にいう「品位を辱める行状」とは,職務上の行為であると,純然たる私的行為であるとを問わず,およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうものと解するのが相当である。

4 下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
(1) 「刑事実務と下級審判例」(著者は11期の小林充裁判官)が載ってある判例タイムズ588号の12頁及び13頁には以下の記載があります。
 次に、特殊な場合として下級審裁判官が既存の最高裁判例(または大審院判例-裁判所法施行令5条参照)に反する裁判をなす場合につき若干考察しておく。
 まず、それがまったく容認され得ないものでないことはいうまでもない。最高裁判所の拘束力の根拠は、当該事件に関する国の裁判所としてのあるべき法解釈の推測資料として、最高裁が同種事件についてなした法解釈が重要な意味をもつということにあった。すなわち、そこで重要なのは、最高裁判例それ自体ではなく、国家機関としてのあるべき法解釈ということにあるといわなければならない。ところで、法解釈は社会情勢の変化等に対応して不断に生成発展すべき性質をも有するものであり、最高裁判例も、常にあるべき法解釈を示すとは限らない。このことは、刑訴法410条2項において最高裁自体によって既存の最高裁判例が変更されることが予定されていることから明らかであろう。そして、下級審裁判官としては、あるべき法解釈が既存の最高裁判例と異なると信ずるときには、既存の最高裁判例と異なる裁判をなすことが容認されるといい得るのである。
 ただ、あるべき法解釈というのが、既に述べたように、当該裁判官が個人的に正当であると信ずる法解釈ではなく、国の裁判所全体としてのあるべき法解釈、換言すれば、当該事件が最高裁判所に係属した場合に最高裁が下すであろう法解釈を意味するものであるとすれば、下級裁判所裁判官が右のように信じ得るのは、当該事件が最高裁に係属した場合に最高裁が従前の判例を変更し自己の採った法解釈を是認することが見込まれる場合ということにほかならない。そして、最高裁判例の変更が見込まれるということの判断がしかく容易にされるものではないことは明らかである。その意味では、下級審裁判官が最高裁の判例に従わないことは例外的にのみ許容されるといってよいであろう。下級審裁判官としてただ単に最高裁判例に納得できないということが直ちにこの判断と結びつくものではないことはもとより、最高裁判例に従わない所以を十分の説得力をもって論証できると考えるときも、そのことから直ちに右判例の変更が見込まれるということはできないであろう。下級審裁判官として、最高裁判例の変更が見込まれるかどうかの判断に当たっては、当該判例につき、最近に至るまで何回も同趣旨の判例が反復して出されているか古い時期に一度しか出ていないものであるか、大法廷の判例であるか小法廷の判例であるか、少数意見の有無およびその数の多少、同種の問題につき他の判例と調和を欠くものでないか、それが出された後これに反する下級審判決が現われているか等を、慎重に勘案すべきであろう。
(2) 35期の元裁判官である弁護士森脇淳一HP「裁判官の身分保障について(3)」(平成31年2月21日付)には,「刑事実務と下級審判例」(著者は11期の小林充裁判官)は,裁判官国家機関説(一審の裁判官たるものは,高裁や最高裁がするであろう判断と異なる判断をしてはならないとする説)を裁判官全体に浸透させるのに大いに力があったという趣旨のことが書いてあります。

第3 罪証隠滅のおそれ等
1 元裁判官及び元検事が述べるところの罪証隠滅のおそれ等
(1)ア ヤフーニュースの「【PC遠隔操作事件】「罪証隠滅のおそれ」って何?~名(元)裁判官・原田國男氏が語る”裁判官マインド”」(平成25年6月1日付)には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 僕は裁判官として、量刑と事実認定については厳格にやってきたっていう自負心はあるんですよ。
   ただ、本音を言うと、勾留など身柄の関係については、大勢に従っていたというか、多くの裁判官と同じスタンスでやってきた。
② (「「罪証隠滅のおそれ」が問題になるのは、どういう場合でしょう。 」という問いに対し,)否認が出発点。冤罪であっても、否認すると、検察は必ず「罪証隠滅のおそれ」があると言ってきて、勾留となり、否認を続けていれば、勾留延長になる。起訴になっても、なかなか保釈が通らない。
   在宅の被告人に比べて、弁護人との打ち合わせもなかなか十分にはできない。そして最後は実刑になる。そういう悪い連鎖を作るキーが、「罪証隠滅のおそれ」。
   (否認していると解放されないという)人質司法という問題の中心は、否認した時の「罪証隠滅のおそれ」なんですよ。
   裁判官も、否認すれば「罪証隠滅のおそれ」があるんだろうな、と考えてしまうから。

③ (罪証隠滅の恐れがあることを伝える検察官の意見書の添付書類というのは)捜査
報告書の類。検察官の意見書と一緒に出されるけど、法廷には普通、出て来ない。
   勾留などを決める場合の疎明資料は、証拠能力を立証する必要がなく、そこに、被疑者・被告人は知人に罪証隠滅を働きかけるような手紙を出しているとか、そういうことが書いてある。だから、「罪証隠滅のおそれ」があるんですよ、と。

   そこまで分かりやすい行為でなくても、なんか怪しいと思えることが書かれていると、具体的な「おそれ」まで行ってなくても、裁判官は「罪証隠滅やりそう」って考えがち。あくまで「おそれ」でいいわけだし、もし罪証隠滅されたら事件つぶしちゃうことになるから。
   自分の判断で事件つぶしちゃうのは困るから、身柄はとっておいて、決着は判決でつけよう、という判断になりやすいんだ。

④ 否認していると、「罪証隠滅のおそれ」で出られない。保釈もされない。
   「罪証隠滅のおそれ」というのは、そうやって、いろんな場面で使えるババみたいなカードなんだ。
⑤ 被告人については、悪いことを考えがちですね。40年も裁判官やっていれば、罪証隠滅された話だとかの知識は豊富にあるから。

⑥ (「目の前の被告人が具体的に何かをする「おそれ」があるというより、今までの蓄積と今の被告人が結びついてしまう?」という問いに対し)それが可能なんですよ。職業病と言えば職業病。(初めて刑事裁判を担当する)裁判員みたいな気持ちで被告人を見れば、「罪証隠滅のおそれ」なんてないよね、と思う場合でも、いろんな例を知っているもんだから、「ひょっとすると…」と。
イ PC遠隔操作事件については,平成26年3月5日に保釈された被告人において,別に真犯人がいるという趣旨の電子メールを,別人を装って自ら報道機関に送るなどした結果,同年5月20日に保釈を取り消され,平成27年2月4日,懲役8年の実刑判決を受けました。
(2) 検事失格 弁護士 市川寛のブログ「「罪証隠滅」って何?」には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 人の供述を「隠滅」するとは、なにも文字通りその人を抹殺することではなく、例えば同居人に会って「俺がカネに困っていたとは言わないでくれ」と頼むなどの「口裏合わせ」をすることです。
 ですから、結局のところ、検事が勾留請求したり、保釈に反対するときは、「被疑者(被告人)は、関係者と接触して虚偽の供述をするようはたらきかけるおそれがある」などと述べて、罪証隠滅のおそれを主張するわけです。
② 起訴後では、検事が被害者や目撃者の調書をとっています。
 刑事訴訟法では、警察の調書と比べると、検事の調書は公判で証拠として採用されやすい仕組みになっています(これ自体に問題があることは、ここでは言及しません)。
 被害者・目撃者の供述は、検事の調書という形で保存されているのです。
 ですから、仮に被告人が被害者や目撃者に接触しようが、検事は保存された調書を出せば足りるはずなのです。
 ですが、実情は、たとえ被疑者・被告人が被害者や目撃者と何らの面識のない「赤の他人」の関係でも、検事は「接触して虚偽の供述をはたらきかけるおそれがある」と主張し、裁判所もこの主張を認めるのが殆どなのです。
 「罪証隠滅のおそれ」が、非常に抽象的なものとして運用されているわけです。
 すなわち、果たして本当にそんな罪証隠滅ができるのかという疑問があるのに、これを肯定しての身柄拘束が行われているのです。

2 犯人隠避罪に関する裁判例等
(1)ア 部下である検察官がその職務に関して証拠隠滅罪を犯したことを覚知した地方検察庁の幹部検察官2人が,その犯行を知った他の部下検察官らから上司への報告を求められたなどの本件事実関係の下において,共同して,上司や上級庁に対しては,犯人の証拠隠滅に関する嫌疑を抱かせないための工作を行うとともに,同検察庁の内部及び部下の検察官らに対しては,当該嫌疑に関する情報を管理し,捜査に向けた動きを封じる工作を行ったことは,全体として,刑法103条にいう犯人隠避罪に当たります(大阪高裁平成25年9月25日判決)。
イ 法務省HPに「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について(公表版)」(平成22年12月)が載っています。
(2) 
道路交通法違反,自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら,Aとの間で,事故車両が盗まれたことにする旨口裏合わせをした上,参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をする行為は,刑法103条の「隠避させた」に当たります(最高裁平成29年3月27日決定参照)。
(3)ア ヤフーニュースの「なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか (1)」には,リークのデメリットとして以下の記載があります。
リーク報道により、自分(達)が捜査対象だということを相手に対して明確に認識させることで、証拠隠滅や口裏合わせ、逃亡、自殺を招く。
捜査の手の内が分かれば、狡猾な被疑者らが新たな弁解を構築したり、捜査当局が把握していない未解明の事実を覆い隠すことも可能となる。
イ 捜査情報の漏洩により証拠隠滅や口裏合わせ,新たな弁解の構築等により真相の解明が困難となった可能性がある事件については,罪証隠滅に関する知識の豊富な被疑者を逮捕し,接見禁止付で勾留できる捜査機関が起訴できなかったとしても,当該被疑者が潔白であったとはいえないと思います。

3 東京地検次席検事が罪証隠滅防止の実効性がないとの見解を示した,被告人カルロス・ゴーンの保釈条件
(1) 東京地検次席検事は,平成31年3月8日の定例記者会見において,東京地裁が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車前会長の被告人カルロス・ゴーンの保釈条件について,罪証隠滅防止の実効性がないとの見解を示しました(産経新聞HPの「ゴーン被告保釈条件 地検次席が地裁決定に異例の批判「実効性ない」」参照)。
(2)ア 被告人カルロス・ゴーンの弁護人である高野隆弁護士ブログの「保釈条件について」(平成31年4月6日付)によれば,平成31年3月のカルロス・ゴーンの保釈条件は以下のとおりです(1,2などを①,②などに変えています。)。
① 被告人は、東京都***に居住しなければならない。
  住居を変更する必要ができたときは、書面で裁判所に申し出て許可を受けなければならない。
② 召喚を受けたときは、必ず定められた日時に出頭しなければならない(出頭できない正当な理由があれば、前もって、その理由を明らかにして、届け出なければならない。)
③ 逃げ隠れしたり、証拠隠滅と思われるような行為をしてはならない。
④ 3日以上の旅行をする場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
⑤ 海外渡航をしてはならない。
⑥ 被告人は、所持する旅券すべてを弁護人に預けなければならない。
⑦ 被告人は、第一審の判決宣告に至るまでの間、本邦における在留期間を更新し又は在留資格を取得できるように努め、弁護人を介して、その経過及び結果を裁判所に報告しなければならない。
⑧ 被告人は、グレゴリー ルイス ケリー、大沼敏明、西川廣人、ヘマント クマール ナダナサバパシー、真野力、小坂厚夫、ハーリド ジュファリ(Khaled Juffali)、ジル ノルマンその他の本件事件関係者及び罪体に関する弁護人請求の証人(証人請求予定者を含む。)に対し、直接又は弁護人を除く他の者を介して、面接、通信、電話等による一切の接触をしてはならない。
⑨ 被告人は、弁護人が上記制限住居の玄関に監視カメラ(24時間作動するもの)を設置して録画し、かつその画像を①マイクロSDカード又は②ビデオレコーダー及びUSBメモリーに保存すること、その録画画像(毎月末日までの分)を翌月15日までに裁判所に提出することを、妨げてはならない。
⑩ 被告人は、弁護人から提供される携帯電話1台(番号***)のみを使用し、それ以外の携帯電話機、スマートフォンなどの通信機器を使用してはならない。被告人は、使用を許可された上記携帯電話機の通話履歴明細を保存しておかなければならない。
⑪ 被告人は、弁護士法人法律事務所ヒロナカから提供されるパーソナルコンピューター(機種名***、製造番号***)のみを、平日午前9時から午後5時までの間、同事務所内(東京都千代田区***)において使用し、それ以外の日時・場所で、パーソナルコンピューターを使用してはならない。被告人は、使用を許可された上記パーソナルコンピューターのインターネットのログ記録を保存しておかなければならない。
⑫ 被告人は、制限住居の内外を問わず、面会した相手の氏名(ただし、被告人の妻、弁護人、弁護士法人法律事務所ヒロナカの事務員を除く)、日時・場所を記録しておかなければならない。
⑬ 被告人は、弁護人を介して、10項の通話履歴明細(毎月末日までの分)を翌月末日までに、11項のインターネットのログ記録(毎月末日までの分)及び12項の面会記録(毎月末日までの分)を翌月15日までに、それぞれ裁判所に提出しなければならない。
⑭ 被告人は日産自動車株式会社の株主総会、取締役会その他の会合に出席する場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
⑮ 本件につき公判期日の召喚状、保釈許可決定謄本等裁判所から郵便で送達された書類については、保釈制限住居で受領すべきはもちろんのこと、不在時に配達された場合には、すみやかに集配局に出頭する等の方法により、必ず受領しなければならない。
イ 高野隆弁護士ブログの「保釈条件(2)」(平成31年4月27日付)に,平成31年4月のカルロス・ゴーンの再度の保釈条件が載っています。
ウ 外国人被告人の出国確認留保の通知に係る事務の取扱いについて(平成12年8月28日付の最高裁判所刑事局長,家庭局長通達)を掲載しています。

4 福岡高裁判事妻ストーカー事件で訴追請求にまでは至らなかった理由等
(1)ア 福岡高裁判事妻ストーカー事件では,古川龍一福岡高裁判事の自宅にあった3台のパソコン等が押収されましたし,当時はマスコミの注目を集めていた事件でした。
   そのため,福岡県西警察署及び福岡地検によって徹底的に調査されたと思います。
イ 福岡高裁平成13年2月16日決定の決定要旨には,「脅迫等被疑事件の捜査指揮の権限が福岡高等検察庁に移ってからは、妻の起訴・不起訴等のいわゆる生殺与奪の権限を直接同検察庁が握るようになった」などと書いてあります。
(2)ア 最高裁判所調査委員会としては,3台のパソコンの使用状況等にも言及した上で,「古川判事が平成12年12月28日に山下次席検事から妻園子に関する嫌疑を聞かされて以降取った行動に関する供述に何ら不自然な点はなく,罪証を隠滅したとの疑惑についての供述も理解が可能なものであるほか,その一部は捜査機関により公表された捜査の結果裏付けられていることに照らすと,古川判事が,妻園子の刑事事件に関する証拠を隠滅したと認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。」という事実関係を前提として,裁判官弾劾法に基づく訴追請求をすべき理由があるものとまでは認められないと判断しました平成13年3月14日付の最高裁判所調査委員会の調査報告書23頁及び24頁等参照)。
イ 京都弁護士会(平成13年度会長は福井啓介弁護士)が平成13年3月頃に出した「「福岡」事件につき、真相の徹底的究明と抜本的改革策の確立を求める意見書」
には以下の記載があります。
   「最高裁判所調査委員会」は、本件においては当事者ともいうべき同事務総局の局長クラスにより構成されたもので、事実関係の解明が十分なされていないことや、きちんとした改革策が出されていないことは、そのことに起因していると言うほかない。また、最高裁裁判官会議との関係も明らかでなく、いかなる法的根拠、権限により設置されたか等、同報告書の出所そのものも疑問なしとしない。
(3)ア 裁判官訴追委員会は,平成13年4月19日,古川龍一判事について,7対7の評決により不訴追を決定しました(罷免の訴追をするためには,出席訴追委員の3分の2以上の多数が必要であることにつき裁判官弾劾法10条2項ただし書)。
   そのため,古川龍一判事は,平成13年4月24日に依願退官しました(Wikipediaの「福岡高裁判事妻ストーカー事件」参照)。
イ 古川龍一判事について,事実関係に関する供述に何らかの不自然な点があったり,妻の刑事事件に関する証拠を隠滅したと認めるに足りる証拠があったりしたと最高裁判所調査委員会によって判断されていた場合,裁判官訴追委員会において裁判官弾劾法に基づく訴追請求をされていたかもしれません。

第4 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申の記載
1 平成27年度(最情)答申第5号(平成28年2月22日答申)の記載
   裁判官は,憲法上その職務の独立性が保障されるとともに,身分が保障されており(憲法76条3項,78条),また,身分保障の現れとして,その意思に反して,転官や転所をされることはないとされている(裁判所法48条)。したがって,裁判官の異動時期の目安を含めた人事管理に係る情報については,裁判官の独立を確保するため,非常に高い機密性が求められる機微な情報であるということができ,本件対象文書に記録されている上記のような情報を公にすると,それを知った裁判官の異動を望み,あるいは望まない関係者などから不当な働き掛け等がされるなどして,今後の裁判官の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められることから,本件対象文書に記録された情報は,その文書の標題部分や発出者名等も含め,全体として法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する情報に当たると認められる。
2 平成29年度(最情)答申第4号(平成29年5月25日答申)の記載
   裁判官は,憲法上,その職務の独立性が保障されるとともに,身分が保障されている(憲法76条3項,78条)。また,その身分保障の現れとして,裁判官がその意思に反して転官や転所をされることはない(裁判所法48条)。これらの規定の趣旨に照らすと,裁判官の人事管理に係る情報については,裁判官の独立を確保するため,非常に高い機密性が求められる機微な情報であるということができ,本件対象文書に記録されている上記のような情報を公にすると,裁判官の異動を望み,あるいは望まない関係者等から不当な働き掛け等がされるなどして,今後の裁判官の人事管理に係る事務に関し,適正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められるから,本件対象文書に記録された情報は,その文書の標題部分や発出者名等を含め,全体として法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する。
3 
平成29年度(情)答申第2号(平成29年4月28日答申)の記載
   下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的実質を含んだ処分とは異なるものであると判断される。
そして,裁判官については,憲法上その独立が強く保障されており,懲戒処分も,裁判官分限法に基づく分限裁判によって行われることとされていて(裁判所法48条,49条参照),下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意がされたとしても,そのことにより,当該裁判官に具体的な不利益が課されることは,予定されていない。また,裁判官の懲戒である分限裁判が確定したときは,官報に掲載して公告されることとされている(裁判官の分限事件手続規則9条)のに対し,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,公表が予定されていない。
   下級裁判所事務処理規則21条に基づく裁判官に対する注意が上記のような性質のものであることからすると,その運用自体が裁判官の個人的事情に関わる機微なものであるというべきであり,その手続きについては,当該裁判官の行状等の改善に対する実効性を確保する目的で,適切な時期に効果的な形でされるべきであるという観点等から慎重であるべきものと認められる。したがって,司法行政手続の中でその運用においてどのような手続がとられるのか,文書が作成されるのか,作成されるとしてどのような文書が作成,管理,保存されるのかなどについて,本来,これを公にすると,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意という人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
4 平成30年度(最情)答申第32号(平成30年9月21日答申)の記載
   本件不開示部分のうちその余の記載部分については,その記載内容に照らせば,罷免された司法修習生に係る個人識別情報と認められ,同号ただし書イからハまでに相当する事情は認められない。また,これらの記載部分については,司法修習生の人事事務に関する担当者等の一部の関係職員以外には知られることのない秘密性の高い情報であり,特に罷免理由を公にすると,どのような事案で罷免されるのかといった内容が明らかになるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえず,司法修習生の罷免に係る事務に支障が生じるおそれがあると認められるから,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する。
5 平成30年度(最情)答申第41号(平成30年11月16日答申)の記載
   本件対象文書(注:70期司法修習生を罷免するに際し,司法研修所が作成した司法修習生に関する規則19条に基づく報告書)を見分した結果によれば,本件対象文書は,70期司法修習生を罷免するに際し,司法研修所が作成した司法修習生に関する規則(平成29年最高裁判所規則第4号による改正前のもの)19条に基づく報告書であり,司法修習生の氏名や行状等が記載されていることが認められる。このうち司法修習生の氏名や行状等の記載部分については,法5条1号に規定する個人識別情報と認められ,同号ただし書イからハまでに相当する事情も認められない。また,本件対象文書の性質及び内容を踏まえると,標題等を含む本件対象文書全体について,これを公にすると,司法修習生の罷免事由に関する調査事項,司法修習生の弁明書及び提出された資料の内容が明らかになり,今後の公正かつ円滑な調査及び資料収集事務に好ましくない影響を与えるなど,適正な司法修習生の罷免手続事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。

第5 新61期長崎修習の人の守秘義務違反容疑の場合,司法研修所による調査が実施されて報道されたこと
1 平成20年6月19日,「司法修習生のなんとなく日記」と題するブログに関して,取り調べや刑務所内の見学など修習内容をインターネット上のブログに掲載していたとして,長崎地裁が裁判所法に基づく守秘義務違反の疑いもあるとして調べていると報道されました(孫引きですが,外部ブログの「司法修習生。守秘義務違反」参照)。
    問題となったブログの記載の一部を引用すると以下のとおりであり,ブログを書いてから4ヶ月余り後に報道されたようです。
2008-02-15 | 修習
今日,はじめて取調べやりました。
相手は80歳のばあちゃん。
最初はいろいろ話を聞いてたけど,
途中から説教しまくり。おばあちゃん泣きまくり。
おばあちゃん,涙は出てなかったけど。
けど,なんで20代の若造が80歳のばあちゃんを説教してるのか。
それに対してなんで80歳のばあちゃんが泣いて謝ってるのか。
なんとなく,権力というか,自分の力じゃない力を背後に感じた。
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(2) 新61期長崎修習の人の守秘義務違反容疑につき,司法研修所による調査の結論は以下のとおりになったみたいです(外部ブログの「守秘義務について」参照)。
   ブログ内容は、個人が特定されるものではないとして、「厳密な意味で守秘義務違反に該当するとはいえない」と判断。(長崎新聞7/25より引用)
   だが、「国民の信頼を損ない、修習生の品位を辱めるもので、守秘義務違反にも匹敵する厳しい非難を受けるべき」と批判した。(同前)
2(1) 56期高松修習の人が書いた「司法修習生日記」における「検察修習」とかについては,現在でもインターネット上に存在してますから,検察修習に関するこれらの記載は司法修習生の守秘義務には違反していなかったと思われます。
 しかし,新61期長崎修習の人が書いた「司法修習生のなんとなく日記」が守秘義務に違反するとして不祥事扱いになったのに対し,56期高松修習のブログが守秘義務に違反しないと判断する基準はよく分かりません。
(2)ア   実際,「やっぱり世界は**しい!」と題するブログ「守秘義務」によれば,司法研修所が動くこと自体が司法修習生にとっては大変な脅威であって,司法修習生という立場は,まさに現代の特別権力関係だそうです。
イ 最高裁昭和32年5月10日判決は,公務員に対する懲戒処分は,特別権力関係に基づく行政監督権の作用であると判示していました。
3 名古屋家裁の55歳の男性裁判官については,平成30年11月時点で産経新聞が名古屋家裁に政治活動疑惑を伝えたみたいです。
   しかし,産経新聞が平成31年3月13日に報道するまでの間に,名古屋家裁が何らかの調査をしたかどうかは不明です。

第6 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話等
1 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話
 昭和45年4月9日付の新聞朝刊に掲載された文書は以下のとおりです。
 裁判官の任用について、差別待遇があると二十二期司法修習修了者の代表が主張しているそうであるが、裁判官志望の某君らが不採用となった理由は、人事の機密にぞくすることなので、一切公表することはできない。ただ、同君らが青法協会員であるという理由からではない。
 なお、一般的問題としてであるが、裁判官は、その職責上からして、特に政治的中立性が強く要請されているのは、当然のことである。そしてこの中立性は、裁判官の法廷における適正な訴訟指揮権や法廷警察官の行使を通じ、窮極においては、裁判によって貫かれるべきことである。しかしこれと同時に、裁判は、国民の信頼の基礎の上に成り立っているものであり、したがって裁判官は、常に政治的に厳正中立であると国民全般からうけとられるような姿勢を堅持していることが肝要である。裁判官が政治的色彩を帯びた団体に加入していると、その裁判官の裁判がいかに公正なものであっても、その団体の構成員であるがゆえに、その団体の活動方針にそった裁判がなされたとうけとられるおそれがある。かくては、裁判が特定の政治的色彩に動かされていないかとの疑惑を招くことになる。裁判は、その内容自体において公正でなければならぬばかりでなく、国民一般から公正であると信頼される姿勢が必要である。裁判官は、各自、深く自戒し、いずれの団体にもせよ、政治的色彩を帯びる団体に加入することは、慎しむべきである。
 以上は最高裁判所の公式見解である。

2 35期新任判事補に対する説明
 35期の元裁判官である弁護士森脇淳一HP「ある元裁判官の履歴書(5)」(令和元年5月25日付)には以下の記載があります。
 その研修(注:熱海のホテルで行われた「新任判事補集中研修」のこと。)で講師となった最高裁事務局(だったと思う)員が述べたことのうち、2つの事柄については、今でも鮮明に覚えている(もちろん、記憶の変容があるかもしれないが)。
(中略)
 もう一つは、いわゆる団体に所属してよいか、という問題についてである。当時はまだ、青法協に所属している司法修習生が任官希望する事例があり、その中には、採用願を出す前に、青法協に対して脱退届を出し、その写しを司法研修所の教官に提出するということもあったらしく(注6)、その講師の話は青法協を前提とするものだと思ったので、私は、これには反対されないだろうと思いながら、念の為と思って次の質問をした。
 「私の子は、ある病気に罹っているが、同じ病気の子を持つ親の会に加入している。その団体への加入は問題ないでしょうね?」と。
 それに対する講師の返答は次のようなものであった。
 「その団体が、世論に訴えたり、国会議員に働きかけたりして、その病気の子らのための法律を制定しようとしたら、裁判官はその団体を脱退しなければならない」
 そのとき私は、決してその団体を脱退するつもりはなかったし、その返答を聞いても私の気持ちは変わらなかった。ただ、こう思った。
 「やってられんわ!」

第7 その他
1 以下の記事も参照してください。
① 人事院規則14-7(政治的行為),及び名古屋家裁裁判官の反天皇制に関する行為
② 岡口基一裁判官に対する分限裁判
③ 裁判官の職務に対する苦情申告方法
④ 分限裁判及び罷免判決の実例
⑤ 弁護士の懲戒
2 国家公務員の倫理に関する以下の資料を掲載しています。
① 国家公務員の服務・懲戒制度(平成29年度版)
② 裁判所職員倫理審査会規則(平成12年2月10日最高裁判所規則第5号)
③ 下級裁判所の裁判官の倫理の保持に関する申合せ(平成12年6月15日付の高等裁判所長官申合せ)
3 最高裁判所事務総長が作成した,以下の理由説明書を掲載しています。
① 令和元年8月19日付の理由説明書(名古屋高裁が,名古屋家裁から取得した,柳本つとむ裁判官の勤務時間外の行為を調査した文書)
② 令和元年8月19日付の理由説明書(名古屋家裁の男性判事(55歳)が平成30年中に反天皇制をうたう団体の集会に複数回参加するなどしたことに関する文書)
③ 令和元年8月19日付の理由説明書(名古屋家裁が作成し,又は取得した「夏祭起太郎」に関する文書)
4 衆議院HPに「裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会に関する資料」(平成25年5月に衆議院憲法審査会事務局が作成した資料)が載っていますところ,末尾1頁には以下の記載があります。
   裁判官であっても、国民の信頼を裏切るような行為を犯した場合には辞めさせることができなくてはならない。そこで、日本国憲法において、理念として、公務員を罷免することが国民の権利であると宣言されていること(15 条1項)や、身分保障が強く要請される裁判官をいたずらに不安定な地位におくことは望ましくないことなども考慮して、罷免事由等が限定された現在の裁判官弾劾制度が採用された(64 条1 項)。

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