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岡口基一裁判官の第2次分限裁判―犯罪被害者遺族に関するFacebook投稿と最高裁令和2年8月26日戒告決定(AI作成)

第1 第2次分限裁判の概要

岡口基一裁判官に対する第2次分限裁判は,刑事事件の被害者遺族についてFacebookに投稿した行為が,裁判所法49条の「品位を辱める行状」に当たるかが問題となった事件である。
最高裁判所大法廷は,令和2年8月26日,令和2年(分)第1号事件について戒告決定をした(集民264号41頁)。

本件は,犬の返還請求訴訟に関する投稿を対象とした平成30年の第1次分限裁判とは別の事件である。

第2 本件投稿に至る経緯

1 平成29年の刑事判決紹介投稿

岡口裁判官は,平成29年12月13日頃,強盗殺人及び強盗強姦未遂事件の東京高裁判決を閲覧できる裁判所ウェブサイトのURLとともに,被告人の性的嗜好及び犯行の猟奇性に着目した文言をTwitterに投稿した。
最高裁決定は,この投稿を「前回投稿」と呼び,法律上の論点を周知するものではなく,閲覧者の性的好奇心に訴えて興味本位で判決を閲覧するよう誘導するものであったと評価した。

被害者の両親は平成29年12月26日,東京高裁に対し,被害者の尊厳に対する配慮を欠くなどとして処分を求める要望書を提出した。
東京高裁長官は平成30年3月15日,前回投稿について書面による厳重注意をした。

2 令和元年11月12日のFacebook投稿

岡口裁判官は,令和元年11月12日,遺族が東京高裁事務局及び毎日新聞によって洗脳されているという趣旨の文章をFacebookに投稿し,一般の閲覧に供した。

最高裁決定は,この表現が遺族を侮辱する内容であり,遺族の感情をさらに傷つけるものであったと認定した。

第3 分限事件で審理された行為

1 懲戒の原因となった事実

第2次分限裁判で懲戒の原因とされたのは,令和元年11月12日のFacebook投稿である。
過去の刑事判決紹介投稿,遺族の抗議,厳重注意及び第1次分限裁判の戒告は,本件投稿に至る経緯及び懲戒の相当性を判断する事情として記載された。
裁判官分限法6条は,懲戒の裁判手続が管轄裁判所への申立てによって開始されることを定めている。

2 最高裁が中心的に評価した点

最高裁は,とりわけ遺族を洗脳されたと表現したFacebook投稿を重く評価した。
遺族が以前の情報発信によって精神的苦痛を受け,東京高裁に苦情を申し入れていた経緯を知りながら,更に遺族を侮辱する発信をした点が問題とされた。

第4 最高裁大法廷の判断

1 裁判官に対する信頼の毀損

最高裁令和2年8月26日大法廷決定は,Facebook投稿が遺族の人格を軽視し,遺族に二次的な被害を与えるものであると評価した。

岡口裁判官は,現職裁判官であることを明らかにして情報発信を続けていた。
そのため,投稿は個人間の発言にとどまらず,裁判官が事件被害者の遺族を侮辱したものとして,裁判官及び裁判所に対する国民の信頼を損なうと判断された。

2 表現の自由に関する判断

決定は,裁判官にも一市民として表現の自由が保障されることを前提とした。
もっとも,本件投稿は具体的事件の遺族を侮辱し,その感情をさらに傷つけるものであり,裁判官に許容される表現の範囲を逸脱したとした。

3 過去の注意及び戒告

最高裁は,岡口裁判官が過去にもインターネット上の情報発信について注意を受け,平成30年10月17日には犬の返還請求訴訟に関する投稿について戒告を受けていたことも考慮した。
それでも同種の問題を生じさせたことを踏まえ,再度の戒告が相当であるとした。

第5 第1次分限裁判との違い

比較項目第1次分限裁判第2次分限裁判
最高裁決定平成30年10月17日令和2年8月26日
主な投稿媒体TwitterFacebook
中心となる対象犬の返還請求訴訟の原告殺人事件の被害者遺族
主要な問題一面的な事件紹介と当事者への否定的評価遺族を侮辱し,更なる精神的苦痛を与える発信
結論戒告戒告

両事件は,裁判官がSNSで具体的事件の当事者又は関係者について発信した点では共通する。
しかし,対象となった投稿,申立て及び最高裁の決定は別であり,記事上も区別して参照する必要がある。

第6 その後の弾劾裁判との関係

裁判官訴追委員会は令和3年6月16日,岡口裁判官を罷免するよう裁判官弾劾裁判所に訴追した。
訴追及び令和6年4月3日の罷免判決では,本件で問題となった殺人事件の遺族に関する複数の発信も審理対象となった。

もっとも,分限裁判における裁判所法49条の懲戒要件と,弾劾裁判における裁判官弾劾法2条2号の「その他職務の内外を問わず,裁判官としての威信を著しく失うべき非行」の要件は異なる。
第2次分限裁判の戒告から弾劾裁判の罷免が自動的に導かれたわけではない。

第7 関係文書及び関連記事

関連して,次の記事も参照されたい。
①岡口基一裁判官に関する文書
②岡口基一裁判官の経歴,異動歴等
③裁判例の掲載基準
④裁判官の弾劾制度―訴追から罷免判決・資格回復まで

第8 出典

①最高裁判所・令和2年8月26日大法廷決定の裁判例情報
②最高裁判所・同決定PDF
③裁判所法
④裁判官分限法
⑤裁判官弾劾裁判所・過去の事件と判例

本記事は,令和8年9月27日現在の上記一次資料を基に作成した。