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令和6年全国統一運用・裁判所の特別保存制度|令和7年・令和8年改正と保存要望の実務(AI作成)

◯本ブログ記事は、特別保存ガイドブック(令和6年1月10日付で最高裁判所事務総局総務局及び家庭局が作成した文書)を基礎としつつ、令和7年及び令和8年の規則・通達改正まで反映した解説記事であり、専らAIで作成したものである。
◯事件記録等の特別保存とは、史料又は参考資料となるべき記録等を永久に保存することである。
◯令和7年11月4日から、オンラインで特別保存の要望及び保存期間延長の要望ができるようになった(裁判所HPの「オンラインによる特別保存の要望について」及び「オンラインによる保存期間延長の要望について」参照)。
◯通常の刑事公判請求事件の訴訟記録は、訴訟終結後は原則として検察官が保管するため、裁判所の特別保存要望の対象外である。これらについては、刑事確定訴訟記録法による保存及び刑事参考記録の制度が問題となる。

第1 特別保存制度と本ガイドブックの位置づけ

裁判所の事件記録には保存期間が定められており、期間が満了すれば原則として廃棄される。
その例外として、歴史的・社会的に重要な記録を恒久的に残すのが「特別保存」の仕組みである。

1 「規則」「本通達」「ガイドブック」の三層構造

本ガイドブックは、それ単独で制度を定めているものではなく、上位の「規則」と「通達」を現場向けに補完する三層構造の一番下に位置する。

同ガイドブック1頁によれば、まず「事件記録等の特別保存に関する規則」(以下「規則」)が、記録を保存する意義を組織的に共有するための基本理念と、常設の第三者委員会の設置を定め、国民共有の財産である「歴史的・社会的意義を有する記録」を適切に特別保存に付す基本的な仕組みを構築したとされている。
その運用通達である令和6年1月10日付け事務総長通達「事件記録等の特別保存に関する規則の運用について」(以下「本通達」)が、特別保存に付する認定を行う事件の各基準や認定プロセスといった具体的な運用の細目を定めている。
そして本ガイドブック自体は、事務を担当する職員向けに本通達の解釈を示し補完するために作成された、と説明されている。

同ガイドブック1頁によれば、この本通達の発出により、これまで各庁がそれぞれ定めていた運用要領は廃止となる。

名称役割
規則事件記録等の特別保存に関する規則基本理念と常設の第三者委員会の設置を定め、「歴史的・社会的意義を有する記録」を特別保存に付す基本的な仕組みを構築する。
通達令和6年1月10日付け事務総長通達(本通達)規則の運用通達。特別保存に付する認定を行う事件の各基準や認定プロセスといった運用の細目を定める。
ガイドブック特別保存ガイドブック(第1版)事務を担当する職員向けに本通達の解釈を示し補完する。本記事が紹介している文書。

2 令和6年見直しの背景——調査報告書

今回の全国一律化は、突然行われたものではなく、直前の調査報告書での指摘を受けたものである。

同ガイドブック1頁によれば、本通達は、従来「2項特別保存」と呼ばれていた枠組みに関する部分に、これまで各庁の運用要領で定められていた各基準(「判例集登載」「日刊紙2紙掲載」「事件担当部申出」「要望」)の運用に関する部分を加えたものである。
そのうえで、令和5年5月に公表された「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」(以下「調査報告書」)における指摘事項、すなわち「庁ごとに区々となっていた基準や認定プロセスを可能な限り全国一律のものとなるよう見直すことが相当」との指摘を踏まえ、整理・見直しを行った内容だと説明されている。

裁判所HPによれば、平成31年に重要な憲法判断が示された民事事件の記録が廃棄されていたことが判明し、令和4年には社会の耳目を集めた少年事件の記録の廃棄も明らかになった。最高裁判所はこれらの問題を受けて調査・検討を行い、令和5年5月に調査報告書を公表した。
本ガイドブック自体は個別の廃棄事例を挙げていないが、「庁ごとに区々」であった従来の運用を、常設の第三者委員会を伴う全国統一の仕組みへ改めたことが、今回の改革の核心である。

3 施行日・適用範囲と旧Q&Aの失効

制度の切替え時期と、参照してはならない旧資料についても明記されている。

同ガイドブック6頁によれば、本通達の施行日は令和6年1月30日である。
また同2頁によれば、令和4年5月20日に総務局第三課が発出した「事件記録等の特別保存と廃棄に関するQ&A」は、今回の見直し前の取扱いが記載されているため参照しないよう求められており、令和6年1月10日のガイドブック作成時点では、新しいQ&Aの発出が検討中とされていた。

なお、通達で別紙となっている少年調査記録に関する部分は、本ガイドブックでも別紙として整理されている(本記事の第5で扱う)。

4 令和7年及び令和8年の改正

令和7年10月16日改正、同年11月4日施行の規則により、別表第一に次の事件が追加された。

① 執行官法17条1項の執行記録が作成された事件
② 刑事損害賠償命令事件
③ その他の事件で、最高裁判所民事判例集、最高裁判所裁判集(民事)、最高裁判所刑事判例集又は最高裁判所裁判集(刑事)のいずれかに判決等が登載されたもの

執行記録について特別保存に付する認定を行うのは、その事件を担当する執行官が所属する地方裁判所の長である。

さらに、令和8年5月14日改正、同月25日施行の規則により、別表第一の倒産関係事件等の中に企業価値担保権実行事件が追加された。企業価値担保権は、事業性融資の推進等に関する法律により創設され、同月25日に施行された、会社の総財産を一体として担保の目的とする制度である。

また、令和8年4月27日改正、同年5月21日実施の現行通達は、電子申立て対象事件について、電子提出システム上の事件領域への表示、非電磁的事件記録の取扱い、附属事項の書類の保存等を定めている。このため、令和6年1月作成のガイドブックが説明する紙記録中心の事務フローは、令和6年1月当時の運用として読む必要がある。

第2 特別保存の対象事件、三つの職権選定基準及び保存要望

どのような事件の記録が特別保存の対象になるのか。
その入口は、通達が掲げる七つの事件類型と、それを現場で拾い上げるための三つの職権選定基準及び一般からの保存要望である。

1 認定を行う事件(通達1の(1)から(7))

同ガイドブック3頁によれば、特別保存に付する認定を行う事件は本通達1の(1)から(7)までに掲げられており、これらを拾い上げるための統一的な基準が本通達2の(1)及び(2)である、という関係に立つ。

現行通達1の(1)から(7)までは、特別保存に付する認定を行う事件として、次の七類型を定めている。

① 重要な憲法判断が示された事件
② 重要な判例となった裁判がされた事件など法令の解釈運用上特に参考になる判断が示された事件
③ 訴訟運営上特に参考になる審理方法により処理された事件
④ 世相を反映した事件で史料的価値の高いもの
⑤ 全国的に社会の耳目を集めた事件又は当該地方における特殊な意義を有する事件で特に重要なもの
⑥ 民事及び家事の紛争、少年非行等に関する調査研究の重要な参考資料になる事件
⑦ 少年保護事件の調査上特に参考になる調査を行った事件

これらは、記録等が有する歴史的、社会的又は実務的価値を示す選定類型である。規則別表第一に掲げられた「事件の種類」とは別の分類であるため、両者を混同しないことが重要である。

2 三つの職権選定基準と特別保存の要望

七つの事件類型を実際に拾い上げる仕組みは、要望の有無にかかわらず裁判所が認定する三つの基準と、何人も利用できる特別保存の要望とに分けて理解するのが正確である。
最初の三つ(判例集登載・日刊紙2紙掲載・事件担当部等申出)は、該当すれば選定委員会の意見を聴くことなく特別保存に付される。
これに対し「要望」は、要望理由を十分に参酌し、選定委員会の意見を聴いて認定するため、付さない認定もあり得る。

基準拾い上げる類型選定委員会認定の性質
判例集登載(通達2の(1)ア)通達1の(1)から(3)に該当するものとみなす意見を聴かない該当すれば必ず特別保存に付する。
日刊紙2紙掲載(通達2の(1)イ)通達1の(4)及び(5)に該当するものとみなす意見を聴かない該当すれば必ず特別保存に付する。
事件担当部等申出(通達2の(1)ウ)通達1の(1)から(7)のいずれか意見を聴かない事件担当部又は事件担当執行官から申出があれば特別保存に付する。
要望(通達2の(2))通達1の(1)から(7)のいずれか意見を聴く候補事件として判断し、付さない認定もあり得る。

(1) 判例集登載基準

現行通達2の(1)アによれば、最高裁判所民事判例集、最高裁判所裁判集(民事)、最高裁判所刑事判例集又は最高裁判所裁判集(刑事)のいずれかに判決等が登載された事件は、通達1の(1)から(3)までに該当するものとして、特別保存に付することになる。
この基準に該当した事件は、要望の事件と異なり、裁判所の長が選定委員会の意見を聴くことなく、該当したことをもって特別保存に付する認定を行う。

(2) 日刊紙2紙掲載基準

同ガイドブック4頁によれば、主要日刊紙2紙以上に終局に関する記事が掲載された事件については、本通達1の(4)及び(5)に該当するものとみなすことになる。
また同2頁によれば、従来の各庁運用要領では「主要日刊紙2紙(地域面を除く)」とされていたものを、新運用では「地域面を含む」ものに改めた点が、実務上の大きな変更である。

(3) 事件担当部等申出基準

同ガイドブック4頁によれば、事件担当部は、事件終局時に、当該事件が本通達1の(1)から(7)までのいずれかに該当するか否かを検討し、該当すると判断する場合は特別保存の申出を行う。令和7年改正後の現行通達では、事件を担当した執行官も申出主体に加えられ、事件担当部と事件担当執行官を「事件担当部等」と総称している。行政文書の管理に関するガイドラインに規定する「歴史的緊急事態」に該当するものと決定された事象又は対象区域を全国として指定された激甚災害に関連する事件も、この基準で把握する。
また同2頁によれば、従来は対象事件が本通達1の(1)から(3)までに該当する場合とされていたものを、新運用では(1)から(7)までに対象を広げた点が変更点である。

同4頁では、たとえば終局時には終局に関する記事が掲載されず日刊紙2紙掲載基準に該当しなかったものの、訴え提起・第1回期日・破産の開始決定など終局以外の事由で大きく報道された事件について、事件担当部が本通達1の(4)や(5)に該当するものとして申出を行うことが考えられる、と例示されている。

(4) 特別保存の要望

同ガイドブック4頁によれば、要望は本通達1の(1)から(7)までのいずれかに該当することを理由としてされる。
ここで重要なのは、規則第7条が「何人も」要望をすることができると定めており、これは外部の者に限らず裁判所内部の者も含まれる、と明記されている点である。
規則7条が「何人も」要望できると定めているため、弁護士や市民を含む誰もが、歴史的・社会的意義を理由として、特定事件の記録等の特別保存を要望できる。

第3 市民・弁護士が使える「要望」の手続

三つの職権選定基準と特別保存の要望のうち、外部の者が能動的に使えるのは「要望」である。
その具体的な流れを、ガイドブックの記述及び現在のオンライン手続に沿って追う。

1 要望書の提出先と方法

同ガイドブック18頁によれば、要望書の提出先は、規則3条各号に掲げる裁判所の記録係等である。ただし、現在の実際の受付部署は裁判所ごとに異なり、本庁が管内支部・簡易裁判所分を集約する例もあるため、支部が常に唯一の提出先であるとは限らない。オンラインの場合は提出先裁判所一覧表、書面の場合は各裁判所の最新案内を確認する必要がある。

要望書には別紙様式第4が用意されているが、同17頁によれば、事件と理由が特定されていれば同様式以外での申出も受理することとされており、通達には「原則として」という文言が入れられている。

令和7年11月4日から、裁判所ウェブサイトの特別保存要望フォームによるオンライン要望が可能となった。フォームでは、対象事件が係属した裁判所と事件番号を入力する。事件番号が不明でも、判決日、当事者名、事件名、報道年月日等により対象事件を特定できる場合は要望できるが、事件を特定できない場合は受け付けられない。

全国案内は、事務手続上、保存期間満了日の属する年の10月末日までの提出に協力するよう求めている。ただし、裁判所ごとに別の期限又は受付方法が示されることがあるため、最新の個別案内を優先して確認すべきである。

2 候補事件としての扱いと誤廃棄防止

要望があった事件は、直ちに保存が決まるわけではなく、まず「候補事件」として扱われ、廃棄されないよう保全される。

同ガイドブック18頁から19頁によれば、要望による認定プロセスでは、①要望書の提出を受けた裁判所を「A庁」、②A庁から候補事件の通知を受けた裁判所を「B庁」と表記して整理されている。
A庁の記録係等は、要望を受けた事件の記録等が既に特別保存に付されていたり特別保存予定となっていたりする場合を除き、その事件を特別保存の「候補事件」として扱う。
候補事件が他の審級にも係属していた場合には、他の審級の記録等が廃棄されるのを防ぐため、A庁はB庁の記録係等に対し、事件番号と候補事件となったことをメールやチャット等で通知する。

同19頁から20頁によれば、候補事件については、選定委員会や最高裁判所の委員会での審理等に一定の時間を要するため、認定までに事件記録としての保存期間が満了することも考えられる。
しかし、最終的に特別保存に付さない認定が行われるまでは廃棄することができないとされ、候補事件であることを看過して誤って廃棄することがないよう、他の記録との分離や事件簿情報への登録を確実に行うよう求められている。

3 選定委員会と最高裁の委員会——付さない方向の場合の第三者チェック

要望があった事件については、各裁判所の選定委員会の意見を聴いて裁判所の長が認定する。その上で、特別保存に付さない認定をしようとする場合に限り、最高裁判所の第三者委員会に意見を求める。したがって、全ての候補事件が常に二段階で審査されるわけではない。

(1) 選定委員会

同ガイドブック6頁によれば、各庁ではこれまでの運用要領に基づき既に選定委員会が設置されているものと考えられ、その場合は新たに設置する必要はないとされている。
令和6年1月作成のガイドブックは、構成員として裁判官のほか、首席家庭裁判所調査官、首席書記官、事務局の局次長・課長等を例示している。現在の通達3の(2)は、選定委員会の構成員を、各庁の裁判官及びその他の裁判所職員から裁判所の長が指名すると定めている。
開催時期は、原則として毎年11月から12月までの間とされている。

(2) 記録の保存の在り方に関する委員会

同ガイドブック20頁から21頁によれば、裁判所の長が候補事件の記録等について特別保存に付さない認定をしようとする場合には、その適否について、最高裁判所に設置された「記録の保存の在り方に関する委員会」に意見を求める必要がある(規則第8条)。
同委員会の庶務は最高裁判所事務総局総務局とされており(規則第15条)、意見を求める際は別紙様式第5の文書及び添付書類を、最高裁判所総務局の担当チームへ送付することとされている。
意見を求める際に当該事件の記録等を添付する必要はないが、規則第16条のとおり、委員会から提出を求められた際には記録等を提出することになる。

規則11条及び12条によれば、同委員会は6人の委員で組織され、法律又は公文書の管理等に関して優れた識見を有する者の中から最高裁判所が任命する。裁判所HPによれば、法曹関係者、法学者、報道関係者及びアーキビスト等の有識者によって構成されている。

このように、要望があった事件を特別保存に付さない認定をしようとする場合には、最高裁判所の第三者委員会による外部的な検証が入る非対称な設計となっている。

4 認定・結果通知と、苦情申出制度の不存在

要望に対する結論は、要望者へ通知される。
ただし、同ガイドブックが明記しているのは、次に述べる「苦情の申出」のような制度が設けられていないという点であり、救済手段一般の有無を論じたものではない。

同ガイドブック21頁によれば、結果通知に係る事務は本庁の記録係が行い、後納郵便で送付することが想定されている。
そして、要望に対して特別保存に付さない認定がされた場合について、司法行政文書の開示に関する事務で定められているような「苦情の申出」の制度は設けられていない。
その理由として、特別保存の要望はあくまで裁判所の長が検討・判断を行う端緒の一つであり、付さない認定をしようとする場合には最高裁の委員会に意見を求めるという、要望も踏まえて客観的かつ多段階に判断する仕組みになっているから、と説明されている。

同21頁から22頁によれば、苦情申出のような制度はないものの、同じ事件について再度要望を提出することは直ちに不受理とはされない。
当初の要望が退けられた後でも、社会情勢の変化や当該事件がはらむ問題がクローズアップされるなどの事情の変化があり得るためである。
ただし、要望の理由が同じであれば結論も同じく付さない認定となる可能性が高い旨を伝え、要望の再考を促すか、別の理由を補充するよう促すことが考えられる、とされている。

5 特別保存と保存期間延長の使い分け

特別保存と保存期間延長は、目的も要件も異なる。

特別保存は、歴史的、社会的な意義を有し、史料又は参考資料として価値を有する記録等を永久に保存する制度である。これに対し、保存期間延長は、特別の事由により保存期間満了後も保存する必要がある記録等を、その事由が続く間だけ保存する制度である。

したがって、社会的・歴史的価値を後世に残すことが主眼であれば特別保存を選択し、再審、和解無効確認、関連訴訟、債務名義の将来の履行期その他の具体的な手続上の必要が主眼であれば保存期間延長を選択する。両方の要件を満たす場合は、目的と理由を混同せず、両方を別個に要望することを検討すべきである。

保存期間延長が想定される典型例は、①保存期間満了後に債務名義に係る債務の履行期が到来する事件、②再審、和解無効確認又は少年保護処分取消等の事件が現に係属し、又は係属することが予想される事件、③その他の関連事件が現に係属し、又は係属することが予想される事件である。

6 要望書の理由と資料の組み立て方

特別保存の要望には訴訟上の相手方はいない。しかし、裁判所が「事件を特定できない」「七類型への該当性が抽象的である」「私的な保存利益にとどまり、国民共有の財産として永久保存する理由が弱い」などと判断する可能性を見越して、主張と資料を組み立てる必要がある。

実務上は、次の順序で記載すると分かりやすい。

① 裁判所名、事件番号、事件名、当事者名、終局日及び審級を記載し、対象事件を一義的に特定する。
② 通達1の(1)から(7)までのうち、該当すると考える類型を明示する。複数の類型に該当する場合は、類型ごとに理由を分ける。
③ 重要な憲法判断又は先例性を主張する場合は、判決等の該当箇所、公式判例集・裁判集への登載状況、後続裁判例、学術論文及び実務上の利用状況を示す。
④ 世相又は社会的注目を主張する場合は、主要日刊紙の記事について、紙名、掲載日、朝夕刊、地域面を含む掲載面及び見出しを整理する。単なる記事件数だけでなく、その事件がどの社会問題を記録しているかを説明する。
⑤ 地域固有の意義を主張する場合は、自治体史、地域資料、議会資料、地元報道その他の資料を用いて、その地域で当該事件が持つ固有の意味を示す。
⑥ 判決書だけでなく事件記録全体を残す必要がある場合は、主張書面、証拠、鑑定、調査記録等にどのような史料的価値があり、公刊された判決文だけでは代替できないかを具体的に説明する。
⑦ 事件番号が不明な場合は、判決日、当事者名、事件名、報道年月日その他の照合情報をできる限り多く示す。

要望に添付又は引用する資料は、判決書、裁判所ウェブサイト、官公庁資料、新聞記事、学術論文、研究書、自治体史等の順に、出典と該当頁を明記する。ウェブ資料はURLだけでなく、ページ名、掲載主体及び確認日も記載しておくとよい。

既に付さない認定を受けた事件について再度要望する場合は、同じ理由を繰り返すだけでは足りない。新たに判明した資料、社会情勢の変化、後続裁判例、研究成果、記念事業その他の新事情を明示し、前回の理由から何が変わったのかを冒頭で説明すべきである。

第4 裁判所内部の認定プロセス(実務フロー)

ここからは、外部からは見えにくい裁判所内部の事務フローである。
基準ごとに、誰が何を確認し、どのルートで決裁されるのかが定められている。
以下は主として令和6年1月作成のガイドブックに基づく説明である。その後、令和8年5月21日実施の現行通達により、電子申立て対象事件について電子提出システム上の表示や電磁的・非電磁的記録の管理が追加されたため、紙記録を前提とする部分は令和6年1月当時の運用として読む必要がある。

1 判例集登載基準のフロー

同ガイドブック7頁によれば、判例集に登載された事件は、最高裁判所事務総局総務局が各審級の裁判所及び事件番号を記載した一覧表を作成し、毎年1回、COURTSポータルに掲載して各庁に知らせる。
第一審の記録係等はまずこの一覧表を確認し、第一審で保存している記録等のうち特別保存をしていないものについて、特別保存に付する事務処理を行う。
この一覧表の提供時期は、従来は毎年3月であったが、今後は前倒しして毎年1月末頃に行うことが予定されている。

同4頁及び5頁によれば、この基準に該当した事件の認定事務では、保存票(調査記録保存票)を作成し、訟廷から首席書記官を経て所長又は長官に上申するルートで決裁を取ることが想定されている。
各記録係等は、その経過を記録するため確認票を作成する。

2 日刊紙2紙掲載基準と新聞記事検索サービス

日刊紙2紙掲載基準は、今回の見直しで運用の仕組みが最も具体的に整備された基準である。
その中心が、新聞記事の検索サービスの導入である。

(1) 主要日刊紙4紙と地域面

同ガイドブック8頁によれば、本通達における「主要日刊紙」とは、全国に販売網を有する朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞の4紙とされ、新運用ではこれらの地域面に掲載された記事も含めて、2紙に掲載されたかを確認する。

同9頁によれば、「事件終局に関する記事」には、判決や和解、審判に限らず、取下げといった終局事由が含まれる(ただし移送や回付は、事件そのものが終了するわけではないため対象としないことで差支えないとされている)。
他方、倒産事件や執行事件等における開始決定や、後見事件等における後見人による横領が大きく報道されるケースは、「事件終局に関する記事」ではないため、この基準では対象外となる。
もっとも同10頁によれば、そうした報道がされた事件は、事件担当部申出により特別保存に付すことが考えられる、と補足されている。

(2) 検索サービスの導入と費用

同ガイドブック8頁から9頁によれば、日刊紙に掲載された事件終局に関する記事を確実かつ合理的に拾い上げるためのツールとして、全国の裁判所の本庁の総務課に「新聞・雑誌記事横断検索サービス」及び「日経テレコン21」(あわせて「検索サービス」)を導入することとされた。
現時点では支部への導入は予定されておらず、本庁の事務局総務課が管内各庁の記事を一元的に確認する。
速報性が求められるものではないため必ずしも毎日検索する必要はなく、検索サービスに記事が反映されるのは発行日の翌日(丸1日後)となる、とされている。

付録の「新聞記事検索サービス利用手順書」(同付録)によれば、導入するGサーチ及び日経テレコン21はニフティが提供する新聞記事の横断検索サービスで、各紙の最終版と地域面を網羅した記事検索が可能とされている。
利用料は一括して最高裁判所が支払い、利用規約上、印刷した記事をコピーしたり支部等へFAX送信・データ化してメール送信したりすることはできない、とされている。

サービス記事見出しの表示記事本文の表示
Gサーチ(新聞・雑誌記事横断検索サービス)1件につき10円(税抜)1件につき100円(税抜)
日経テレコン21課金されない1件につき200円(税抜)

なお、上記のサービス名、利用方法及び金額は、令和6年1月作成のガイドブック付録に記載された当時の内容であり、現在の契約内容又は単価を示すものではない。

(3) 記録係から事件担当部への連絡

同ガイドブック10頁によれば、第一審の本庁の記録係は、総務課から交付を受けた管内の終局事件に関する記事を集約し、別添の「特別保存対象事件リスト」(以下「リスト」)を作成するなどの方法で、2紙掲載を満たすか否かを一元的に管理することが想定されている。
このリストは、日刊紙2紙掲載以外の基準に該当する事件も併せて管理できるひな型となっており、選定委員会用の資料や結果公表用の一覧表の作成、さらには記録廃棄事務における誤廃棄防止のチェックにも活用することが考えられる、とされている。

同11頁によれば、本庁の記録係は、2紙に掲載された事件について本庁のみならず管内の事件担当部へ連絡する。
もっとも、支部等との関係では、検索サービスから印刷した記事をやりとりすることは同サービスの規約上難しいため、基本的には口頭(電話)やメール等により、終局日・当事者名・事件の概要といった事件の特定に必要な情報を提供することとされている。

3 事件担当部等申出のフロー

同ガイドブック14頁から15頁によれば、事件担当部申出は、事件終局時に、当該事件を担当した裁判官・裁判所書記官・家庭裁判所調査官等の意見を踏まえ、担当部が申出をするか否かと該当理由を検討することから始まる。
その検討結果に基づき、記録表紙の余白に「申出の有無」を記載する。
記録の史料又は参考資料としての価値は担当部がよく把握しうるところであり、全ての事件について担当部で申出の検討が行われたことを明らかにするため、「申出の有無」は必ず記載することとされた。

同15頁によれば、申出を行う場合、担当書記官が申出書を作成し、裁判官(又は裁判長)の確認を受ける。
申出書の名義は、別紙様式第3のとおり、裁判官や書記官の個人名である必要はなく、「民事第●部」「△△支部民事係」等の記載で差支えなく、押印も不要とされている。

なお、執行記録に関する事件担当執行官の申出及び認定の事務フローは、現行通達別紙2の2に別途定められている。

4 認定後の処理・公表・誤廃棄防止

現行通達12によれば、特別保存に付する認定後、電子申立て対象事件では電子提出システムの事件領域に「特別保存」と記録し、非電磁的事件記録がある場合にはその表紙にも朱書する。電子申立て非対象事件では事件記録等の表紙に朱書し、事件簿又は事件管理システムの備考欄等にも記載又は記録する。
保存票には確認票及び事件担当部等の申出書を添付して保存し、記録等は他の記録等と明確に区別して保管又は管理する。

令和6年1月作成のガイドブック24頁では、特別保存に付する認定を行った事件について、庁名・事件番号・事件名を記載した一覧表(当時の別紙様式第7)をウェブサイトに掲載して公表するとされている。現行通達12の(2)では、前年の1月から12月までの間に認定を行った事件について、別紙様式第8の一覧表を作成し、毎年適宜の時期にウェブサイトで公表する。
また、第一審及び上訴審の記録係等は、毎年適宜の時期に、記録等と保存票との照合や、記録等が区別して保管されていることの確認を行い、誤廃棄を防止する。
現行通達14によれば、特別保存に付する認定を行ったときは、保存票の写し又はその電磁的記録の複製を送付して遅滞なく最高裁判所に報告し、遅くとも認定日の翌年1月20日までに送付する。

規則6条によれば、公文書等の管理に関する法律14条1項に基づく協議による定めにおいて歴史公文書等として内閣総理大臣に移管するとされた記録等は、最高裁判所の指示を受けて国立公文書館に送付する。ただし、展示等に使用中のもの、保存期間を延長しているもの又は訴訟関係人の利益保護等のため裁判所で保存することが適当なものは、指定が解除されるまで送付を留保する。

第5 少年調査記録の特別保存(別紙)

少年事件で作成される「少年調査記録」については、通常の事件記録とは異なる特有の事務があるため、ガイドブックでは別紙として整理されている。
ここでは、その特徴的な点を三つ紹介する。

1 特別保存をする家裁と保存をする家裁の分離

同ガイドブック別紙1頁によれば、少年調査記録を特別保存に付する認定は、その原因となるべき事件について終局決定をした家裁の長が行い(規則第3条第5号)、認定を行った少年調査記録は当該家裁において特別保存をすることとされた(規則第4条)。
他方、記録そのものを保存する裁判所(保存裁判所)の規律は従前どおりであるため、少年調査記録では、事件記録等と異なり、特別保存をする裁判所と保存裁判所が異なるケースが生じ得る。

同別紙1頁から2頁の設例によれば、A家裁が終局決定を行い特別保存に付する認定をした後、同一少年について再犯事件がB家裁に係属して保護処分が行われた場合、特別保存をする裁判所はA家裁、保存裁判所はB家裁となる。
この場合、B家裁は保存期間満了後速やかにA家裁へ少年調査記録を送付し、A家裁で特別保存をする。
記録がさらにC家裁・D家裁へと移動することもあり得るため、A家裁で特別保存することを少年調査記録表紙に明示することが極めて重要になる、とされている。

2 認定時期の前倒しと執行機関からの取寄せ

同ガイドブック別紙2頁によれば、少年調査記録は、事件が保護処分により終局した場合、速やかに保護処分の執行機関に送付されるという大きな特色がある(少年審判規則第37条の2第1項)。
従来は保存期間満了日に近接した時期に認定を行うのが実務上一般的であったが、調査報告書の指摘を踏まえ、直ちに判断できるものは直ちに認定手続を行うのが相当とされた。
そこで、執行機関への送付前に認定を得ることができるときは、速やかに認定を得ることが明記された。

同別紙2頁から3頁によれば、諸般の事情により速やかに認定を得られない場合は、まず少年調査記録を執行機関に送付し、その後に執行機関から一時的に返還を受けたうえで認定を得るフローが用意されている。
この場合の家裁における使用期間は長くとも1か月程度を目安とし、使用後は速やかに執行機関へ再送付するものとされている。

3 対象事件の共通化

同ガイドブック別紙3頁によれば、従前は特別保存に付する認定を行う事件が事件記録等と少年調査記録とで差異があったが、本通達では共通となり、本通達1の(1)から(7)までの全てが少年調査記録にも適用されることとなった。
たとえば「重要な憲法判断が示された事件」(本通達1の(1))は、改正前の少年調査記録規程の運用通達では特別保存の対象とされていなかったが、本通達では対象となる。

同別紙3頁から4頁によれば、少年保護事件記録と少年調査記録は別個に特別保存に付する認定を行う必要がある点は従前と同じである。
そのため、事件担当部申出を行う際には、少年保護事件記録又は少年調査記録のいずれかについての申出が脱漏しないよう注意が必要とされている。
もっとも、特別保存の要望については、いずれか一方のみについて要望がされたときは、双方について要望があったものとして取り扱うこととされている。

第6 弁護士から見た本ガイドブックの意義

本ガイドブックは、あくまで裁判所職員向けの内部事務資料である。
しかし、弁護士や市民の視点から見ても、いくつかの重要な意味を持つ。

新運用初年度の実績も、制度が実際に機能していることを示している。最高裁判所の「記録の保存の在り方に関する委員会」第5回議事要旨によれば、令和6年1月30日から同年12月31日までに特別保存に付する認定がされた事件等は合計3,115件であり、内訳は民事2,842件、家事69件、少年86件、少年調査記録98件、その他20件であった。

認定プロセスの件数は、判例集登載基準455件、日刊紙2紙掲載基準2,266件、事件担当部申出基準372件、要望110件であった。理由及び認定プロセスは複数選択される場合があるため、各内訳の合計は認定総数と一致しない。

一般からの要望による認定が110件存在することは、弁護士や研究者が、事件の社会的・歴史的価値を具体的な資料によって示すことに実務的な意味があることを示している。

第一に、規則7条により何人も特別保存を要望でき、令和7年11月4日からオンライン要望も可能となった。
歴史的・社会的意義のある事件記録について、外部の者が能動的に保存を求める道が、制度として具体化されたと評価できる。

第二に、要望があった事件を特別保存に付さない認定をしようとする場合には、最高裁判所の第三者委員会に意見を求めなければならず、保存しない方向の判断に外部的な検証が入る。
その一方で、要望が退けられた場合の正式な不服申立ての仕組みはなく、事情の変化又は新資料がある場合の再要望が事実上の対応となる点は、利用に当たって理解しておくべき限界である。

第三に、令和6年1月作成のガイドブックは、通達本文だけでは見えにくい当時の事務処理イメージを具体的に確認できる点で価値がある。他方、令和7年及び令和8年の改正後は、執行記録、一定の刑事関係事件、企業価値担保権実行事件及び電子申立て対象事件の処理が追加されているため、現在の実務は必ず現行規則・通達で確認する必要がある。
なお、開示文書中で事件管理システムの名称が「■■■■」と表示されている箇所は、開示に当たって黒塗りとされた部分である。

出典

  1. 事件記録等の特別保存に関する規則(令和8年5月25日施行版)
  2. 事件記録等の特別保存に関する規則の運用について(通達、令和8年5月21日実施版)
  3. 裁判所「事件記録等の特別保存について」
  4. 裁判所「オンラインによる特別保存の要望について」
  5. 裁判所「オンラインによる保存期間延長の要望について」
  6. 裁判所「各裁判所の特別保存に関する要望の提出先等について」
  7. 最高裁判所「記録の保存の在り方に関する委員会」及び第5回議事要旨
  8. 刑事確定訴訟記録法(昭和62年法律第64号)
  9. 事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号)
  10. 石田哲也「令和8年5月施行!事業性融資推進法『企業価値担保権』を解説」BUSINESS LAWYERS、令和8年5月25日更新

参考資料・参考書籍

特別保存ガイドブック(第1版)、最高裁判所事務総局総務局・同家庭局、令和6年1月10日
本文1頁から26頁(末尾26頁、PDF7頁から32頁)、別紙1頁から17頁(末尾17頁、PDF33頁から49頁)及び付録

ほんとうの裁判公開プロジェクト『記者のための裁判記録閲覧ハンドブック』公益財団法人新聞通信調査会、令和2年12月25日
塚原英治「裁判情報開示の理論的・法的後ろ盾と課題」116頁から126頁(末尾126頁、PDF115頁から125頁)

石塚伸一編著『刑事司法記録の保存と閲覧―記録公開の歴史的・学術的・社会的意義』日本評論社、令和5年
瀬畑源「公文書管理法と司法文書の利用」39頁から54頁(末尾54頁、PDF51頁から66頁)
塚原英治「史料・資料としての裁判記録」126頁から144頁(末尾144頁、PDF138頁から156頁)
西本成文「刑事確定訴訟記録法の現代的課題」175頁から191頁(末尾191頁、PDF187頁から203頁)
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