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mints後の裁判記録の保存期間——民事裁判の電子化と事件記録等保存規程(AI作成)

民事裁判のIT化(mints)により,訴訟記録は原則として電子データ(裁判所ファイル上の電磁的訴訟記録)となる。
この電子化によって,裁判記録の「保存期間」がどう変わるのか(あるいは変わらないのか)は,依頼者から記録の入手可否を問われる場面や,将来の関連紛争に備えて記録の謄写・証明取得の要否を判断する場面で問題となる。
本記事は,保存期間を定める規範の構造,電子化で変わる部分と変わらない部分,及び令和5年から令和6年にかけての保存・廃棄制度の見直しを整理し,弁護士が実務上留意すべき点を示す。

第1 本記事の対象と結論の要旨

1 扱う問題と射程

mintsは,民事裁判書類電子提出システムの通称である。制度全体,電子申立て,送達及び障害対応の入口は,mints(ミンツ)とは―料金・対象事件・登録・ログイン・提出・送達の実務Q&Aに整理している。
民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)による改正民事訴訟法の全面施行(令和8年5月)により,訴訟記録は原則として電子データとなり,当事者はインターネットを通じて記録を閲覧・複写できるようになる。

本記事が扱う問題は,この電子化の後に,裁判記録の「保存期間」がどうなるのかである。
先に結論の要旨を述べると,保存期間を定めているのは民事訴訟法ではなく最高裁判所の規程である。
令和8年5月20日以前に提起された訴えに係る事件には従来の事件記録等保存規程が適用され,民事通常訴訟の記録本体の保存期間は5年である。
他方,令和8年5月21日以後に提起された訴えに係る事件には,令和7年12月17日に新設された「電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程」(令和7年最高裁判所規程第4号)が適用され,事件記録の保存期間は原則10年とされた。
もっとも,これと並行して,記録の廃棄をめぐる問題を契機とした保存・廃棄制度の見直し(特別保存の制度化)が令和5年から令和6年にかけて行われており,電子化後の記録保存の在り方は,なお検討が続いている論点である。

射程について付言する。
mintsは民事の裁判手続に関するものであるから,本記事も民事の裁判記録を中心とする。
刑事の確定訴訟記録及び執行官の事務に関する記録は,別の法令・規程による別体系であり,この点は第6の4で区別して述べる。

2 用語の整理

本記事で用いる用語を,条文及び規程の定義に即して整理する。

ア 訴訟記録・電磁的訴訟記録・非電磁的訴訟記録

改正民事訴訟法は,訴訟記録を,裁判所のファイルに記録された部分である「電磁的訴訟記録」(同法91条の2)と,それ以外の部分である「非電磁的訴訟記録」(同法91条)とに区別する。
電子化された後の訴訟記録は,原則として電磁的訴訟記録となる。

イ 事件記録・事件書類

保存期間の規律で用いられる「事件記録」及び「事件書類」は,事件記録等保存規程(昭和39年最高裁判所規程第8号)2条が定義する概念である。
「事件記録」は別表に掲げる事件の記録をいい,「事件書類」は,事件に関する書類で記録から分離されたもの及び記録につづり込むことを要しないものをいう。
判決の原本や和解調書の原本は,記録本体とは保存期間が異なる「事件書類」として扱われる。

ウ 特別保存

「特別保存」は,史料又は参考資料となるべき記録等を永久に保存することをいう(事件記録等の特別保存に関する規則(令和5年最高裁判所規則第9号)2条4項)。
保存期間が満了した記録であっても,特別保存に付されたものは廃棄されない。

第2 保存期間を定める規範の構造

1 根拠は民事訴訟法ではなく最高裁判所規程

裁判記録の保存期間の直接の根拠は,法律ではなく最高裁判所の規程にある。
事件記録等保存規程4条1項は,「記録及び事件書類の保存期間は,別表第一及び第二のとおりとする」と定める。
起算点は,特別の定めがある場合のほか,裁判の確定その他の事由による事件完結の日である(同条2項)。

民事訴訟法は,記録の閲覧・複写・証明書の交付の方法を定めるが(同法91条・91条の2),保存期間そのものは定めていない。
このため,保存期間を検討する際は,条文ではなく規程の別表及びその運用通達(平成4年2月7日総三第8号事務総長通達)に当たる必要がある。
規程及び運用通達は最高裁判所のウェブサイトで公表されている。

2 事件の種類ごとの保存期間

別表第一(第一審裁判所で保存する記録及び事件書類)が定める主な保存期間は,次のとおりである。
記録本体と,判決・調書等の原本とで,保存期間が異なる点に注意を要する。

事件の種類記録の保存期間判決・調書等の原本の保存期間
民事通常訴訟,手形・小切手訴訟,人事訴訟,行政訴訟,少額訴訟5年判決の原本50年/和解・請求の放棄若しくは認諾の調書30年/和解に代わる決定の原本30年
和解事件(訴え提起前の和解)3年和解調書30年
督促事件5年(却下又は送達前の取下げによるものは3年)確定判決と同一の効力を有する支払督促の原本30年
保全命令事件5年保全命令の原本10年/和解調書30年
民事一般調停その他の民事調停事件5年調停調書30年
破産,再生,会社更生等の事件5年破産手続開始決定・免責許可決定等の原本30年
家事審判事件原則5年(子の氏の変更についての許可の申立ては1年)審判の原本30年/遺言書の検認調書30年
家事調停事件5年合意に相当する審判の原本50年/調停調書30年
少年保護事件保護処分決定等により完結したものは少年が26歳に達するまで/その他は3年(20歳未満のものは20歳まで)—

別表第二(上訴裁判所で保存する事件書類)では,控訴事件及び上告事件の判決の原本の保存期間が50年とされている。
本記事で挙げた数値は,いずれも規程の別表原本によって確認したものであり,令和5年5月の調査報告書の本文でも,民事訴訟事件について判決原本50年・事件記録5年,少年事件について少年が26歳に達するまでという年限が示されている。
この表は事件記録等保存規程が適用される事件の年限であり,民事訴訟では令和8年5月20日以前に提起された訴えに係る事件に適用される。同日以後に提起された訴えに係る事件の年限は,第3の2で述べる。

3 廃棄の仕組みと所長の認可

保存期間が満了した記録及び事件書類は,特別保存に付する認定を行ったものを除いて廃棄される(事件記録等保存規程8条1項)。
廃棄は,裁判所の長の認可を受け,首席書記官の指示を受けてしなければならない(同条2項)。
このうち「裁判所の長の認可」は,後述する令和6年の改正により明記された手続である。

紙の記録については,廃棄目録を用いて廃棄の指示を求めた上で,焼却又は細断等の方法により廃棄することが調査報告書に記載されている。
なお,特別の事由により保存期間満了後も保存の必要があるものは,その事由のある間,保存期間を延長しなければならない(同規程9条)。

第3 IT化(mints)で変わる部分と変わらない部分

1 記録の電子化——電磁的訴訟記録と非電磁的訴訟記録

改正民事訴訟法の下では,オンラインで行われた申立て等は裁判所のファイルに記録される。
書面で行われた申立て等についても,裁判所書記官が,その記載事項をファイルに記録しなければならない(同法132条の12第1項本文)。
書証その他の提出書面・記録媒体に記載・記録された事項も,同様にファイルに記録される(同法132条の13第1項本文)。
これにより,訴訟記録は原則として電磁的訴訟記録となる。

2 新法適用事件の記録は原則10年(電磁的事件記録保存規程)

改正民事訴訟法の全面施行(令和8年5月21日)に合わせ,最高裁判所は,令和7年12月17日,「電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程」(令和7年最高裁判所規程第4号。以下「電磁的事件記録保存規程」という。)を定めた。
同規程は,同日以後に提起される訴えに係る事件(人事訴訟及び家庭裁判所の執行関係訴訟に係るものを除く。)等に適用され,これらの事件には事件記録等保存規程は適用されない(同規程附則1項・2項・4項)。

同規程4条1項は,「事件記録の保存期間は、10年とする。」とした上で,別表の下欄に掲げる電磁的記録には別の保存期間を定めている。
民事通常訴訟事件等では,電子判決書及び上訴審における事件を終局させる電子決定書等が50年,和解又は請求の放棄若しくは認諾に係る電子調書及び和解に代わる電子決定書が30年である。
訴え提起前の和解事件の和解に係る電子調書,督促事件の確定判決と同一の効力を有する電子支払督促も30年とされている。
保存期間は事件完結の日から起算し(同規程4条2項),満了した事件記録は特別保存に付する認定を行ったものを除き,裁判所の長の認可を受けて廃棄する(同規程7条)。
保存期間の延長(同規程8条)及び国立公文書館への送付(同規程9条)の規定も置かれている。

したがって,第2の2で示した年限は,令和8年5月20日以前に提起された訴えに係る事件(mints規則に基づいて書面を電子提出していた事件を含む。)に適用されるものであり,同日以後に提起された訴えに係る事件では,記録本体の保存期間が5年から原則10年に延びている。

この整理を補強する条文として,裁判所法60条2項がある。
同項は,裁判所書記官が「裁判所の事件に関する記録その他の書類又は電磁的記録の作成及び保管」を掌ると定めており,書記官の保管事務が電磁的記録を含むことが法律上明示されている。

令和8年9月19日に本項を訂正した。訂正前は,電子化の後も事件記録等保存規程の年限が原則として維持されると整理していたが,電磁的事件記録保存規程の新設により,令和8年5月21日以後に提起された訴えに係る事件の記録の保存期間は原則10年となっている。

3 電子化されない例外

すべての提出書面が電子化されるわけではなく,一定の場合には書面のまま扱われ,非電磁的訴訟記録(民事訴訟法91条)となる。
具体的には,ファイルに記録することにつき困難な事情があるとき(同法132条の12第1項ただし書,132条の13ただし書),営業秘密が記載された書面について閲覧等の制限の申立てがあり裁判所が特に必要と認めるとき(同法132条の12第1項1号,132条の13第1項1号),秘匿事項が記載された部分について裁判所が必要と認めるとき(同法132条の12第1項3号,132条の13第1項3号)などである。
これらの書面は書面のまま保管される。
新法が適用される事件では,これらの書面も電磁的事件記録保存規程にいう「事件記録」(同規程2条1項)に含まれ,同規程の保存期間(原則10年)によると考えられる。

4 電子記録の「廃棄」の意味

紙の記録の廃棄が焼却・細断であるのに対し,電子記録の場合は,保存期間の満了に伴う「廃棄」がデータの消去を意味することになると考えられる。
ただし,電磁的訴訟記録の消去の手順や,バックアップ・複製の取扱いを正面から定めた公表資料は,本記事の調査の範囲では確認できなかった。
この点は,実務運用の細目に関わる事項として,今後の運用通達等で明らかにされる余地がある。

第4 特別保存(永久保存)と令和6年の制度改正

1 記録廃棄問題を契機とする見直しの位置づけ

令和6年の制度改正は,電子化とは別の経緯から生じたものであり,両者を混同しないことが重要である。
全国的に社会の耳目を集めた少年事件の記録が特別保存に付されないまま廃棄されていたことなどが判明したことを受け,最高裁判所は有識者委員会を設けて調査・検討を行い,令和5年5月に「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」を公表した。
これを受けて,令和5年11月22日,事件記録等の特別保存に関する規則が制定されるとともに,事件記録等保存規程及び少年調査記録規程が改正され(令和6年1月30日施行),理念規定の整備・常設の第三者委員会の設置・廃棄手続への所長の関与の明確化が行われた。

この見直しは,主として既に保存されている記録(その大半は紙)を対象とするものである。
調査報告書は,現に保存中の紙の記録を一括して電子化することについては,膨大な作業とデータ量に伴うコストを理由に慎重な検討を要するとしており,電子化後の新しい記録の保存期間を正面から論じるものではない。
したがって,令和5年から令和6年の見直しをもって,mints後の記録保存の在り方が確定したと理解するのは正確でない。
電子化後の新しい記録の保存期間は,その後,電磁的事件記録保存規程(第3の2)によって別に定められた。

2 特別保存=永久保存と常設の第三者委員会

特別保存に関する規則は,特別保存を「永久に保存すること」と定義する(同規則2条4項)。
何人も,特別保存に付する認定を行う裁判所の長に対し,史料又は参考資料となるべきものに当たるとして特別保存を要望することができる(同規則7条)。
裁判所の長は,要望があった記録について特別保存に付さない認定をしようとする場合には,その適否について,最高裁判所に置かれる「記録の保存の在り方に関する委員会」に意見を求めなければならない(同規則8条・9条以下)。

この委員会は,法律又は公文書の管理等に関して優れた識見を有する者のうちから最高裁判所が任命する6人の委員で組織される常設の第三者機関であり(同規則11条・12条),特別保存の認定の適否のほか,記録等の保存の在り方の見直しや,一定の重大な社会事象が生じた場合の記録の保存に関する事項についても意見を述べる(同規則10条)。

3 保存期間の延長論と調査報告書の判断

民事訴訟事件の記録の保存期間5年について,短いのではないか,いったん保存した上で特別保存の判断を10年後・20年後に行う枠組みも考えられるのではないか,という意見が調査の過程で示された。
調査報告書は,これに対し,特別保存の基準に該当するものは直ちに認定を行う枠組みとするのが望ましく,保存期間を延長することが必ずしも適切な運用の確保につながるとはいえないとした。
その上で,記録の保存期間は裁判所の事務処理や当事者等の利用に通常必要と考えられる相当な期間を考慮して定めているとして,民事訴訟事件の記録について5年の保存期間は相当であり,一律に保存期間を伸張する必要はないとの結論を示している。

もっとも,同報告書は,当事者等から要望があった事件について更に情報収集の必要がある場合には,保存期間の満了後も保存を継続して特別保存の適否を判断することも可能であるとしており,個別事件で保存の必要が認められる場合の期間延長の余地自体は否定していない。

その後,令和8年5月21日以後に提起された訴えに係る事件の記録は,電磁的事件記録保存規程により保存期間が原則10年とされた。
調査報告書の上記判断との関係や10年とした理由は,公表資料では確認できなかった。

第5 電子化後の記録保存をめぐる現在の論点

1 常設委員会における議論

電子化後の記録保存の在り方は,前記の常設委員会において現に検討課題となっている。
第3回委員会(令和6年12月20日)の議事要旨によれば,記録を含めたデジタル化及び民事判決のデータベース化が今後順次行われる予定であることが事務局から説明されている。
その上で,デジタル化により特定の語による記録の抽出(特別保存に付すべき記録の選別)が技術的に可能となる面はあるものの,最終的に残すかどうかの判断を完全に機械的に行うことは困難である旨の意見が示されている。

また,同委員会では,最初から確定的な選別ができないものについて,暫定的に保存期間を延長し,まず広く記録を残した上で重要性を精査するという運用の可能性も議論されている。
これらは委員会での意見交換の段階のものであり,制度として確定したものではないが,電子化を前提とした特別保存・保存期間の運用が引き続き検討されていることを示している。

その後,第4回委員会(令和7年3月4日)では,規則10条3号の「一定の重大な社会事象」について,行政文書の管理に関するガイドラインの「歴史的緊急事態」等を参考にする方向性が取りまとめられた。
現行の規則の運用通達(令和8年4月27日改正後のもの)は,歴史的緊急事態に関連する事件等を事件担当部等の申出の対象に含める旨を明記している。
第5回委員会(令和7年4月25日)で説明された執行官の記録及び刑事損害賠償命令事件等を特別保存の対象とする案についても,現行の規則別表第一(29の項・30の項)に掲げられている。
第2回から第5回までの委員会では,規則8条に基づく求意見41件が審議され,いずれも特別保存不相当とされている。
各回の内容は,記録の保存の在り方に関する委員会の議事要旨に整理している。

2 民事判決情報のデータベース化

記録の保存期間とは別に,判決情報の保存・利活用の枠組みも整備された。
民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号)は,民事裁判情報の適正かつ効果的な活用の促進を図るため,国の責務及び法務大臣による基本方針の策定を定めるとともに,民事裁判情報を加工して第三者に提供する業務等を行う法人の指定に関する制度を創設するものである。
これは,令和8年5月に判決書が電子判決書(電磁的記録)となることを契機に,当該情報を集約してデータベース化し,当事者の氏名を記号に置き換えるなどの措置を講じた上で利用に供することを想定した制度であり,記録そのものの保存期間の制度とは別の層に位置づけられる。

3 電子データ固有の長期保存の課題

紙の記録では,庁舎の保管スペースの制約が廃棄の一因とされてきた。
電子化は,物理的な保管スペースの制約を緩和する一方で,記録媒体やファイル形式の陳腐化への対応といった,電子データ固有の長期保存の課題を新たに生じさせるものと考えられる。
この点をめぐっては,裁判記録の適正なデジタルアーカイブの実現に向けた課題を論じる研究も公表されており,調査報告書が裁判所法60条に定める書記官の職責との関係で責任の所在を明示していないとの指摘もされている。
これらは学術上の見解であり,制度の内容そのものを示すものではないが,電子化後の記録保存が今後の検討課題を含むことを裏づけている。

第6 実務家が留意すべき事項

1 閲覧・複写・証明の請求方法の変化

電子化により,記録の閲覧等の請求方法が変わる。
電磁的訴訟記録については,何人も,最高裁判所規則で定めるところにより,その内容を表示したものの閲覧を請求でき,当事者及び利害関係を疎明した第三者は,複写や,記録された事項と同一であることの証明を受けた書面の交付・電磁的記録の提供を請求できる(民事訴訟法91条の2)。
他方,書面のまま残る非電磁的訴訟記録については,従来どおり閲覧・謄写や正本・謄本・抄本の交付を請求することになる(同法91条)。
記録の入手を依頼者に説明する際は,対象部分が電磁的訴訟記録か非電磁的訴訟記録かによって請求の方法が異なる点を確認する必要がある。

新法が適用される民事訴訟事件の電磁的訴訟記録については,通常の事件への関連付けによる閲覧と,別途申請して行う閲覧・複写を区別する。千葉地方裁判所本庁の閲覧・謄写案内に沿うと,申請の要否は次のように分かれる。

① 事件が係属中で,システム送達の届出があり,事件情報にmintsアカウントが関連付けられた当事者・代理人は,別途の申請を要しない。

② 事件終了後の当事者・代理人や,係属中でも①の条件を満たさない者は,閲覧・複写を申請する。

③ 第三者は閲覧を申請し,複写も求める場合は,法律上の利害関係を疎明する書面を準備する。

公開を禁止した口頭弁論等に係る部分や閲覧等制限の対象部分については,閲覧・複写できる範囲を別に確認する。旧法事件では紙記録の閲覧・謄写の案内を確認し,単にmintsのアカウントを取得したことや,控訴した日が施行後であることを理由に,新法事件と同じ方法で閲覧できると考えない。新旧法の区分は,mintsの対象事件と旧法事件の取扱いを参照されたい。

2 保存期間を前提とした記録入手の段取り

民事訴訟事件の記録本体の保存期間は,令和8年5月20日以前に提起された訴えに係る事件では5年,同日以後に提起された訴えに係る事件では原則10年であり,事件完結後この期間を経過すると,特別保存に付されない限り廃棄される。
将来の関連紛争や再度の紛争に備えて記録を要する見込みがあるときは,保存期間内に必要な部分の複写又は証明を得ておくことが,実務上の備えとなる。
判決の原本は50年,和解調書等の調書・原本は30年,保全命令の原本は10年と,記録本体より長い期間が定められているものがある一方,記録本体は5年(新法事件では原則10年)で失われ得ることを前提に段取りを組むことが求められる。

もっとも,個別の記録が現に保存されているか,特別保存に付されているかは,事件の種類・完結時期・保管庁の運用により異なる。
確実を期すには,保管する裁判所(原則として第一審裁判所)に対し,記録の保存状況を確認した上で,閲覧・複写・証明の手続を採ることになる。

裁判所が記録を保存する期間と,事件への関連付けによってmintsから記録へアクセスできる期間は同じではない。

関連付けの解除後に記録の閲覧・複写を求めるときは,記録を管理する裁判所への申請方法と,実際に記録を閲覧する場所・方法を確認する。来庁して閲覧する場合は,閲覧を行う裁判所の予約手続も確認する。mintsでオンライン申請ができることだけで,自宅から記録を閲覧できるとは限らない。

例えば,東京高等裁判所の民事記録係の案内は,記録管理裁判所の許可を得た後,閲覧希望日の前開庁日までに予約するよう案内している。来庁時は本人確認書類を持参し,複写の許可がある場合は保存用のUSBメモリも持参する。同案内では,電磁的訴訟記録を紙に印刷し,又は画面を撮影して持ち帰る方法は認められていない。非電磁的訴訟記録も閲覧する場合は,予約前に担当部へ閲覧可能な日時を確認する。

予約方法や利用できる設備は,実際に閲覧する裁判所の案内で確認する。手数料が必要な場合は納付方法も確認し,オンライン申請だけで来庁時の準備まで完了したと扱わない。関連付けがある間の記録の保存操作は,mintsで記録をダウンロード・印刷する方法を参照されたい。

電子判決書,送達報告書等は関連付けの解除前に確保し,解除時期と控訴時の移管については,mintsのシステム送達と期限管理・第3の2を参照されたい(FAQ11頁,準備の手引35頁~36頁)。

事件終了時のダウンロード・チェック

終局事由関連付け解除の基準となる日
判決判決の確定日
訴状却下・訴え却下訴状却下命令・訴え却下判決の確定日
和解和解調書をアップロードした日から1週間が経過した日
和解に代わる決定和解に代わる決定の確定日

関連付けは,表の基準日と,裁判所書記官が事件情報に最後に電磁的記録をアップロードした日から1週間が経過した日とのいずれか遅い日以降に,速やかに解除される。もっとも,判決事件で控訴が提起されると,事件情報を控訴審へ移管するため,判決確定前に関連付けが解除されることがある。
事件終了時は,終局事由と最終アップロード日を案件管理表に記録し,記録一覧及び記録外一覧から,電子判決書,和解調書,送達報告書,提出書面,書証及び調書のうち,将来の説明,登記,強制執行又は関連紛争に必要なファイルを保存する。登記に使用する場合は,記録外領域にある証明文言及び電子署名付きの電子判決書等も確認する。

保存対象は,後で何に用いるかによって次のように分ける。

用途優先して保存・確認するもの保存時の注意点
事件経過の説明・委任終了後の照会当事者の提出書面,書証,証拠説明書,期日調書,送達報告書,電子判決書・和解調書等記録一覧と記録外一覧を別々に確認し,事件番号,取得日及び保存先を案件管理表と対応させる。
不服申立て・関連紛争電子判決書等,送達報告書,主要な提出書面・証拠及び期日調書控訴により第一審の事件情報が移管される前に必要資料を保存し,送達日及び不服申立期限の管理記録と対応させる。
強制執行債務名義となる電子判決書等,必要に応じて執行文・更正決定及びそれぞれの事件特定情報事件特定情報を用いて記録事項証明書の提出を省略する方法と,紙の記録事項証明書等を取得する方法を区別する。
登記・自動車登録・特許権等登録証明文言及び電子署名付きの電子判決書・和解調書等通常の閲覧用PDFと申請用に取得するファイルを区別し,申請先ごとの裁判所資料を確認する。

強制執行で事件特定情報を用いる場合,債務名義,執行文及び更正決定の事件特定情報はそれぞれ別である。準備の手引37頁は,事件特定情報が提供された場合,送達証明書及び確定証明書の提出は不要であると説明している。紙の記録事項証明書等を取得する方法を用いる場合とは,必要書類を分けて確認する必要がある。
具体的な申立方法は,電子化された債務名義と強制執行―事件特定情報・執行文・自動車登録・特許権等登録を参照されたい。

3 特別保存の要望という手段

史料的・社会的な意義を有する記録について保存を求める場合には,特別保存の要望という手段がある。
特別保存に関する規則7条により,何人も,認定を行う裁判所の長に対して特別保存を要望することができ,裁判所の長が特別保存に付さない認定をしようとするときは委員会への求意見を経なければならない(同規則8条)。
弁護士会や研究者に限らず事件関係者も要望をすることができるとされており,記録の保存を求める理由を示して要望を行うことが,廃棄を避けるための現実的な方法となる。

要望の受付期限は裁判所ごとに異なり,最高裁判所及び東京地方裁判所の案内は保存期間が満了する日の属する年の10月末日としているが,大阪地方裁判所及び大阪家庭裁判所の案内は9月末日としている。
令和7年11月4日からはオンラインでの要望も可能である。
具体的な手順は,大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所に事件記録の特別保存・保存期間延長を要望する方法で説明している。
個別の事件で関連紛争等に備えて記録を残す必要があるときは,特別保存とは別に,保存期間の延長を要望することもできる(事件記録等保存規程9条,電磁的事件記録保存規程8条)。

4 刑事・執行官記録など別体系との区別

「裁判記録」であっても,事件の系統によって適用される規律が異なる点に留意を要する。
刑事の確定訴訟記録は,刑事確定訴訟記録法により,訴訟終結後は第一審裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管し,保管期間は同法別表による(同法2条)。
さらに,法務大臣は,刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは,保管期間又は保存期間の満了後,これを刑事参考記録として保存するものとされている(同法9条1項)。
執行官の事務に関する記録についても別の規定によっているが,執行官法17条1項の執行記録が作成された事件は,現在では特別保存に関する規則の別表第一(29の項)に掲げられ,特別保存の対象となっている。
他方,刑事の公判請求事件の記録は裁判所で保存しないため,裁判所に対する特別保存の要望の対象外である(裁判所HP「オンラインによる特別保存の要望について」)。
mintsは民事手続に関するものであるから,本記事の保存期間の整理は民事の裁判記録を対象とするものであり,刑事記録等については各別体系の規律を確認する必要がある。

第7 まとめ——確認の手順

電子化後の裁判記録の保存期間を実務で検討する際の手順は,次のとおり整理できる。

  1. 対象が民事の裁判記録か,刑事の確定訴訟記録等の別体系かを区別する。刑事等は各別の法令・規程を確認する。
  2. 民事の裁判記録については,保存期間の根拠を条文ではなく事件記録等保存規程の別表に求め,事件の種類ごとに記録本体・判決原本・調書原本の各年限を確認する。
  3. 訴えの提起日が令和8年5月21日以後か否かにより,事件記録等保存規程(記録5年)と電磁的事件記録保存規程(記録原則10年)のいずれが適用されるかを確認した上で,対象部分が電磁的訴訟記録か非電磁的訴訟記録かにより,閲覧・複写・証明の請求方法を選ぶ。
  4. 記録本体は事件完結から5年(新法事件では原則10年)で廃棄され得ることを前提に,将来の必要が見込まれる場合は期間内に複写又は証明を得ておく。
  5. 史料的・社会的な意義がある記録は,特別保存の要望を検討する。
  6. 個別の保存状況は保管裁判所に確認し,運用の細目や電子記録の消去の取扱いなど未確定の事項は,最新の規程・通達及び委員会の議論により補う。

本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別の事案に対する法的助言ではない。
個別事件における記録の保存状況・入手可否は,具体的な事件の種類・完結時期・保管庁の運用によって異なるため,実際の対応に当たっては保管裁判所への確認と最新の規程・通達の参照が必要である。
判決情報のデータベース化と記録保存制度との違いは,民事裁判情報の活用の促進に関する法律で詳しく説明している。

民事裁判手続全体のデジタル化の仕組み,新旧事件の区別,ウェブ期日及び今後の対象手続は,民事裁判手続のデジタル化(IT化)の全体像を参照されたい。

第8 出典

1 法令

  • 民事執行法(18条の2=事件特定情報の提供による記録事項証明書の提出又は提示の代替)。e-Gov法令検索の現行条文により確認。
  • 民事訴訟法(91条・91条の2=電磁的訴訟記録・非電磁的訴訟記録の閲覧等,132条の12・132条の13=書面等のファイルへの記録及びその例外)。e-Gov法令検索の現行条文により確認。
  • 裁判所法(60条2項=裁判所書記官が電磁的記録の作成及び保管を掌ること)。
  • 刑事確定訴訟記録法(2条=保管検察官による保管及び保管期間,9条=刑事参考記録の保存)。
  • 民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号=民事判決情報の集約・データベース化の枠組み)。
  • 公文書等の管理に関する法律(14条=行政機関以外の国の機関が保有する歴史公文書等の国立公文書館への移管。事件記録等保存規程10条及び特別保存に関する規則6条の移管の根拠)。

2 最高裁判所の規程・規則

3 公的資料

  • 裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書(最高裁判所事務総局・令和5年5月。保存・廃棄の仕組み,民事訴訟事件の判決原本50年・事件記録5年・少年事件の年限,保存期間の見直しに関する検討,紙の記録の一括電子化に関する検討)。
  • 記録の保存の在り方に関する委員会(最高裁判所。委員会の設置・所掌事務及び議事要旨。第3回〔令和6年12月20日〕議事要旨=デジタル化・民事判決のデータベース化及び特別保存の選別に関する意見,第4回〔令和7年3月4日〕及び第5回〔令和7年4月25日〕議事要旨=一定の重大な社会事象の方向性,執行官の記録等の追加及び求意見の結果)。
  • オンラインによる特別保存の要望について(最高裁判所。令和7年11月4日開始,刑事公判請求事件が対象外であること)。
  • 民事裁判手続のデジタル化(最高裁判所。改正民事訴訟法による訴訟記録の電子化の概要)。

裁判所のFAQ11頁及び準備の手引35頁~38頁(mintsの事件関連付け解除と記録の取得並びに電子判決書等に基づく強制執行)。

千葉地方裁判所「事件記録の閲覧・謄写について」(本庁の閲覧・複写等の運用案内。新旧法の区分,申請不要の条件,第三者の申請及び持参資料。公表・改訂日の表示なし。令和8年8月31日確認)。

東京高等裁判所「事件記録の閲覧・謄写(複写)について(民事記録係)」(記録の管理庁への申請,同裁判所での閲覧予約,本人確認及び保存媒体等の運用案内。公表・改訂日の表示なし。令和8年8月31日確認)。

4 文献

  • 栗原佑介「民事裁判記録の適正なデジタルアーカイブに向けた課題と展望」デジタルアーカイブ学会誌9巻s2号s166頁~s169頁(令和7年)。電子化後の記録保存の課題及び調査報告書と裁判所法60条との関係に関する指摘。