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ヘッドハンティング・人材スカウト契約の中途解約と返金-成果が出ない場合の確認事項(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 この記事の対象

本記事は,求人企業がヘッドハンティング会社又は人材スカウト会社に対し,現に他社で就業している人材の探索,転職勧奨,面接設定及び入社までの支援を委託したものの,期待した採用成果が出ない場合を対象とする。
一般の登録型人材紹介と異なり,契約締結時にコンサルティング料又は活動費を支払い,内定,入社又は一定期間の在籍時に別の報酬を支払う契約を念頭に置く。

本記事の法令・行政資料の基準日は令和8年9月15日である。
個別の返金額は,契約書,確認書,申込書,手数料表,候補者ごとの経過及び解約時点によって変わるため,以下の計算例だけで確定することはできない。

2 先に押さえるべき結論

採用成果が出ないことだけで,直ちに人材スカウト会社の債務不履行となるわけではない。
しかし,成果を保証しない契約であっても,合意した探索,候補者への接触,面接後のフォロー,求人企業への報告その他の役務まで免除されるものではない。

検討の順序は,①契約上の成果と役務を分けること,②前払報酬と成功報酬の性質を分けること,③「内定」「内定確定」「採用」「入社」及び「在籍」の定義を確認すること,④候補者の内定辞退と入社後の早期離職を分けること,⑤契約上の中途解約,民法651条の任意解除,債務不履行解除及び合意解約を分けること,⑥月間報告書と個別連絡から実施済みの役務と未実施の役務を特定することである。

返金条項がある場合も,その条項だけで直ちに結論を出すのではなく,契約上の中途解約,民法651条の任意解除,債務不履行解除及び合意解約を区別し,各終了原因に精算条項が適用されるか,同法648条3項の割合報酬が生じるか,及び同法651条2項の損害賠償が生じるかを順に確認する。
もっとも,契約どおりの返金額に納得できないという事情だけでは増額請求の根拠にならず,より多い返金又は損害賠償を求めるには,条項解釈,未履行部分,債務不履行,説明内容との不一致又は合意による精算のいずれを根拠とするかを明らかにする必要がある。

第2 人材スカウト契約の法的な位置付け

1 スカウト行為も職業紹介に含まれ得る

職業安定法4条1項は,職業紹介を,求人及び求職の申込みを受け,求人者と求職者との間の雇用関係の成立をあっせんすることと定義している。
サービス名が「ヘッドハンティング」「人材スカウト」「採用コンサルティング」であっても,実際に雇用成立へ向けたあっせんを行う場合には,有料職業紹介事業の規制を検討する必要がある。

最高裁平成6年4月22日第二小法廷判決(平成3年(オ)第1943号,民集48巻3号944頁)は,求人者に紹介する人材を探索し,求人者に就職するよう勧奨するスカウト行為も,職業安定法上の職業紹介におけるあっせんに含まれると判断した。
求職の申込みはあっせんに先立つ必要はなく,紹介者の勧奨に応じて求職の申込みがされる場合も含まれるとした点も重要である。

2 契約全体は一つの典型契約とは限らない

人材スカウト契約には,採用方針の助言,人材の探索,候補者への接触,転職意思の形成支援,面接調整,条件交渉及び入社確認など,性質の異なる役務が含まれる。
契約全体を一律に請負又は準委任と決めるのではなく,報酬ごとに,何の対価であり,どの時点で発生し,途中終了時にどのように精算する合意であるかを確認する。

民法656条は,法律行為でない事務の委託に委任の規定を準用している。
準委任に当たる部分については,善管注意義務を定める同法644条,報告義務を定める同法645条,報酬を定める同法648条及び648条の2,解除を定める同法651条等が問題となるが,実際の契約文言による修正も含めて判断する必要がある。

3 成果非保証と役務義務を混同しない

候補者が転職に応じるか,求人企業が内定を出すか,候補者が内定を承諾して入社するかは,契約当事者だけでは支配できない。
そのため,採用人数を保証しない旨の条項には合理性がある。

しかし,成果非保証条項は,契約で具体的に約束した活動を行わなくてよいという条項ではない。
求人要件の聞取り,対象市場の設計,候補者への接触,面接設定,面接後の連絡,求人企業へのフィードバック依頼,進捗報告等が合意された役務であれば,その実施状況を別に検証する。

第3 報酬と採用人数の数え方

1 金銭を四つに分ける

契約上の金銭は,少なくとも,①契約時に支払うコンサルティング料又は活動費,②内定又は入社時に発生する成功報酬,③一定期間の在籍後に発生する報酬,④中途解約時の返金又は違約金に分けて確認する。
名称ではなく,それぞれがどの役務又は成果の対価であるかを見る。

前払金の全額が直ちに実施済み役務の対価になるとは限らない一方,契約締結後に調査,候補者への接触及び報告が相当程度行われていれば,採用に至らなかったというだけで全額返金になるとも限らない。
途中終了時の既履行割合,契約上の精算式及び終了原因を合わせて検討する。

2 内定と入社を区別する

「内定者1名」「採用者1名」という表現は,契約上の定義を確認しなければ意味が確定しない。
内定通知を出した時点,候補者が内定を承諾した時点,雇用契約を締結した時点,初出勤した時点又は一定期間在籍した時点のいずれを数えるかによって,成功報酬と解約返金の計算が変わる。

候補者が内定を承諾した後に入社を辞退した場合,内定確定人数には含めるが採用実績又は入社人数には含めないという契約もあり得る。
反対に,入社時に初めて採用実績へ算入する契約であれば,内定辞退者は未達人数を減らさない。

3 内定辞退と早期離職を区別する

内定辞退は就業開始前の出来事であり,早期離職は就業開始後の出来事である。
紹介手数料が入社時に発生する契約では,内定辞退について成功報酬が発生せず,入社後の早期離職について返戻金制度を適用する構造が一般的に考えられる。

もっとも,内定承諾時に成功報酬が発生する契約では,候補者都合の入社辞退について,返金,再探索又は別候補者への振替を定める必要がある。
早期離職の返戻率を,入社前辞退へ当然に流用することはできない。

4 採用予定人数三名の計算例

採用予定人数が三名で,三名が内定を承諾したものの,二名が入社前に辞退し,一名だけが入社した例を考える。
解約返金式が「前払報酬×未採用人数÷採用予定人数」であり,「採用」を入社と定義しているなら,未採用人数は二名となる。

他方,返金式が「内定確定に至らなかった人数」を基礎とし,内定確定を候補者の承諾時と定義しているなら,三名ともいったん成果へ算入され,二名の辞退は別の辞退条項によって処理される可能性がある。
したがって,「三名のうち一名を採用した」という事実だけでは計算できず,人数の定義,基準時及び辞退時の振替・返金条項を一緒に読む必要がある。

第4 成果が出ない場合の債務不履行の見方

1 担当者の力量不足という評価を事実へ置き換える

「担当者の力量が不足している」「フォローが悪い」という評価だけでは,債務不履行の内容が明確でない。
契約,提案書,打合せ記録又は継続的な運用から合意された具体的行為へ置き換える必要がある。

例えば,①対象職種・地域・年収帯に合う候補者の探索を行ったか,②候補者への接触回数と反応を記録したか,③面接後何営業日以内に候補者と求人企業へ連絡したか,④辞退理由を確認して次の探索条件へ反映したか,⑤求人企業に必要なフィードバックを具体的に求めたか,⑥担当者変更時に候補者情報と採用方針を引き継いだかを確認する。

サーチ型契約の履行状況は,①求人企業が求める候補者像を具体化したか,②候補者情報を収集及び更新してロングリストを作成したか,③対象候補者への接触,面談及び評価を行ったか,④求人企業へショートリスト又は候補者情報を提供したかという段階に分けて確認する。
いずれかの段階で活動が止まっている場合は,その原因が候補者市場,紹介会社の対応又は求人企業の回答のいずれにあるかを区別する。

東京地裁平成28年3月23日判決(平成26年(ワ)第16220号。裁判所HP未掲載)は,候補者の採用が保証されておらず,候補者リストの作成,候補者への接触及び情報提供等が行われていた事案で,紹介会社の債務不履行を否定した。
東京高裁平成27年7月15日判決(平成27年(ネ)第1747号。裁判所HP未掲載)も,契約書等に面談実現又はその期限の保証がなく,「面談設定の調整」は求人企業と候補者の双方が面談を希望した後の日時及び場所の調整を意味すると判断した。

2 過去の実績は参考資料であって保証ではない

同じ会社との過去の取引で多数の面接又は採用が実現していた場合,現在の活動量又は歩留まりが低下したことを示す比較資料になる。
しかし,採用市場,求人条件,報酬,競合企業及び必要人材が変化するため,過去実績だけで現在の契約違反を証明することはできない。

過去比較は,担当者変更の前後,求人条件の変更前後及び同じ職種・地域・報酬帯をそろえて行う。
候補者への接触数が多くても対象要件に合わない者ばかりであれば十分な履行とは限らず,反対に接触数が少なくても対象市場が狭く,質の高い探索が行われている場合もある。

東京地裁令和2年9月25日判決(平成30年(ワ)第11863号。裁判所HP未掲載)は,北海道で勤務する内科医を探す契約について,北海道内の候補者への接触が乏しい一方,九州及び関東の医師への接触を繰り返した点を,債務の本旨に適合しない履行と評価した。
同判決は,2名分の前払報酬2300万円のうち,契約目的に沿った履行が認められた1名分に相当する1150万円だけを紹介会社に帰属させ,残る1150万円の返還を命じた。

東京地裁令和4年5月11日判決(令和2年(ワ)第26517号。裁判所HP未掲載)は,求人企業が求めた年齢及び職歴等の中核条件から著しく外れた2名を候補者として提示した事案について,求人企業による任意解除を認め,紹介会社の履行割合を25%,相当報酬を66万円と評価した。
これらの裁判例からは,接触又は推薦の件数だけでなく,各候補者が契約上の対象地域,職種,資格,経験及び年齢等の条件にどの程度適合していたかを候補者ごとに確認する必要があると考えられる。
中途終了時の報酬精算も,契約期間に対する経過期間だけでなく,合意された工程,各工程の重要性,成果物の利用可能性,やり直しの必要性及び実施記録を確認する。
一般的な精算の枠組みは,準委任契約の中途終了と報酬精算-前払金・割合報酬・損害賠償の確認事項で整理している。

3 求人企業側の協力義務も確認する

人材スカウト契約では,求人企業による職務要件の説明,面接枠の確保,迅速な評価,労働条件の提示及び候補者への訴求が必要となる。
紹介会社がフィードバックを求めたのに求人企業が回答しなかった場合や,求人条件を頻繁に変更した場合には,成果不振の原因が求人企業側にもあると評価され得る。

月間報告書,面接後のメール及び会議記録から,双方がいつ,何を依頼し,いつ応答したかを時系列にする。
紹介会社の不履行だけを抽出せず,求人企業側の未対応も同じ表に記載する方が,交渉でも訴訟でも説明しやすい。

ただし,求人企業に回答遅延又は面談拒否があったというだけで,紹介会社が当然に免責されるわけではない。
東京地裁令和4年5月11日判決は,求人企業が条件から外れた候補者2名との面談後に協議及び新たな面談を断った事情があっても,それ以前の候補者選定が求人条件から著しく外れていたこと等を踏まえ,求人企業による任意解除を認めた。

求人企業側の対応を成果不振の原因として評価するには,どの候補者について,紹介会社がいつ何を求め,求人企業がいつ回答し,その遅延又は条件変更によって面談,内定又は入社のどの段階が停止したのかを特定する必要がある。
他方,紹介会社による条件外候補者の提示が先行している場合は,その後に求人企業が面談を拒んだことだけを切り離して評価しない。

4 定期報告不足と探索業務の不履行を分ける

準委任に当たる部分については,民法645条により,受任者は委任者の請求があるときは処理状況を報告し,委任終了後は遅滞なく経過及び結果を報告しなければならない。
これとは別に,契約書又は合意した運用が月次報告,四半期報告又は定例会を定めている場合は,その頻度,期限及び報告項目どおりに実施されたかを確認する。

東京地裁令和2年9月25日判決は,四半期ごとの報告を約束した後,約1年間にわたり報告しなかった紹介会社の対応を不誠実と評価した。
もっとも,同判決は,報告義務が契約上の中核的な義務ではなかったとして,報告不足だけを理由とする解除は認めなかった。

したがって,報告がなかった事実と,候補者の調査,接触,評価又は情報提供が行われなかった事実を分けて主張する必要がある。
定期報告を中核的な義務とする場合は,契約書に報告の頻度,期限,最低項目,対象期間及び不履行時の取扱いを明記する。

5 候補者の経歴及び適性は調査分担を確認する

紹介会社が候補者を推薦したことから,候補者の学歴,職歴,資格,能力,適格性又は長期勤務について,紹介会社が当然に保証したことにはならない。
どの事項を本人の申告に基づいて伝えるのか,紹介会社が資料で確認するのか,求人企業が採用判断の過程で調査するのかを契約書及び提案書から確認する。

東京地裁平成16年8月30日判決(平成15年(ワ)第12183号。裁判所HP未掲載)は,人材に関する求人コンサルティング契約を準委任とし,紹介会社の善管注意義務を認めながら,候補者の経歴及び資格について一般的な裏付調査義務を否定した。
同事件の契約書では,適性検査,身元調査及びリファレンス照会を求人企業の責任で行うものとされていた。

東京地裁令和3年11月8日判決(令和2年(ワ)第9792号。裁判所HP未掲載)及び東京地裁令和5年3月22日判決(令和4年(ワ)第22419号。裁判所HP未掲載)も,通常の人材紹介契約について,紹介会社が候補者の抽象的な適格性又は採用後の継続勤務まで保証する義務を否定した。
資格証明,在籍確認,リファレンス照会その他の裏付調査を紹介会社へ委ねる場合は,確認対象,確認方法,本人同意,費用及び誤りが判明した場合の責任分担を明記する。

6 候補者の年齢条件は適法性を先に確認する

候補者の年齢条件が契約上明示されていたとしても,裁判所が契約適合性の判断要素として年齢を参照したことから,あらゆる年齢条件が適法になるわけではない。
求人企業が,募集・採用において,法定の例外に当たらない年齢条件を設けることは,労働施策総合推進法9条に反する。

年齢制限禁止は,民間の職業紹介事業者を通じた募集・採用にも適用される。
求人票を年齢不問としながら,ヘッドハンティング会社にだけ一定年齢以上を探索又は推薦の対象から外すよう指示しても,適法な例外がなければ,実質的な年齢制限であることに変わりはない。

特に,長期勤続によるキャリア形成を理由として若年者等に限定する例外は,期間の定めのない労働契約であることに加え,職業経験を条件とせず,新卒者と同等の訓練・育成体制,配置及び処遇で育成することを要する。
他社で就業中の経験者を即戦力として探索するヘッドハンティングでは,通常,この例外によって「35歳以下」等の上限を正当化しにくい。

したがって,年齢条件から外れた候補者への接触が多いことを債務不履行の根拠とする前に,当該条件が労働施策総合推進法9条及び同法施行規則1条の3の例外に適合するかを確認する必要がある。
適合しない場合は,年齢ではなく,職務内容,必要な能力,経験,技能,勤務条件及び本人の就業意思へ求人要件を置き換えた上で,その要件に対する役務履行を検証する。

第5 終了原因の区別と返金・損害賠償

1 契約上の中途解約

契約に中途解約条項と返金式がある場合,まず,通知方法,予告期間,自動更新,解約の効力発生日,既に進行中の候補者の扱い及び返金時期を確認する。
採用予定人数を基礎とする返金式では,どの時点の予定人数を使うか,追加又は減員が書面化されているか,契約更新時に未達人数が繰り越されたかも確認する。

中途解約条項が,次の民法651条による解除にも適用される趣旨か,又は同条による解除を制限する趣旨かも,文言と契約全体から確認する。

2 民法651条の任意解除

準委任に当たる部分については,民法651条1項が各当事者による任意解除を定めている。
もっとも,同条2項は,相手方に不利な時期に解除した場合,又は委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除した場合には,やむを得ない事由があるときを除き,解除した者が損害を賠償しなければならないと定めている。

任意解除は,同法652条が準用する620条により将来に向かってのみ効力を生ずる。
したがって,同条だけを根拠に前払報酬の全額返還を当然に請求できるわけではなく,既にした履行については同法648条3項の割合報酬が問題となる。

3 債務不履行解除

民法541条による催告解除を検討する場合,約束された役務が履行されていないことを特定し,相当の期間を定めて履行又は是正を求める。
期間内に是正されないときに解除するのが基本であり,不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である場合には解除できない。

履行が全部不能である場合,履行拒絶が明確である場合又は一部の履行では契約目的を達成できず残部の履行も見込めない場合等には,同法542条の無催告解除を検討する。
実務上は,成果が乏しいというだけで直ちに無催告解除を選ばず,具体的な未履行を通知し,担当者変更,活動計画の提出及び期限付きの是正機会を設ける方が争点を明確にしやすい。

4 合意解約

双方が終了条件に合意できる場合は,終了日,進行中の候補者の扱い,実施済み役務の報酬,返金額と返金日,候補者情報の返還・削除及び清算条項を合意書に記載する。
合意解約では,法定の結論をそのまま確認するだけでなく,争いのある事実及び請求を互譲によって解決することもできる。

5 返金と損害賠償は根拠が異なる

契約上の返金は,約定した精算式による請求である。
債務不履行解除では民法545条の原状回復が問題となる。
他方,準委任の民法651条による任意解除は,同法652条及び620条により将来に向かって効力を生ずるため,その場合の既払金は,報酬合意,契約上の精算,同法648条3項の割合報酬及び返還請求の根拠を分けて検討する。
債務不履行による損害賠償は同法415条が問題となり,それぞれ要件が異なる。

損害賠償を求める場合には,どの義務に違反したか,帰責事由があるか,違反がなければどのような結果になった蓋然性があるか,どの損害が生じたかを説明する必要がある。
採用の不確実性が高い契約では,採用できなかったことによる利益全体を損害として請求することは容易でなく,未実施役務相当額,代替業者へ支払った追加費用その他の具体的損害を検討する。

6 定型約款又は一方的な規約の確認

利用規約又は確認書が多数の取引に共通して用いられ,相手方が個別交渉をしない前提で組み込まれている場合には,民法548条の2以下の定型約款に関する規律も検討する。
もっとも,事業者間契約であることや返金率が低いことだけで,直ちに条項が無効になるわけではない。

契約締結時にどの版の規約が提示され,返金式,違約金,解除方法及び自動更新がどのように説明されたかを確認する。
営業担当者の具体的説明と書面が矛盾する場合は,説明メール,提案書,議事録及び申込画面を保存する。

第6 返金額を検討する手順

1 契約上の計算式を再現する

計算に入る前に,終了原因が契約上の中途解約,民法651条の任意解除,債務不履行解除又は合意解約のいずれであるかを確定し,返金条項がその終了原因に適用されるかを確認する。
返金条項が適用されない終了原因であれば,同法648条3項の割合報酬,原状回復又は損害賠償の枠組みで別に検討する。

返金計算は,①税抜又は税込の基礎額,②採用予定人数,③成果へ算入する人数,④未達人数,⑤返金率,⑥端数処理,⑦消費税の処理を一つずつ書き出す。
契約書に数式がなく文章だけで定められている場合は,候補者ごとの状態を当てはめた計算表を双方で確認する。

内定辞退者を採用実績へ含めるか,入社後の早期離職者をどの時点まで採用実績へ含めるか,代替候補者の探索を受けた場合に重複して数えないかを確認する。
成功報酬の返戻と前払報酬の解約返金を同じ計算欄へ混ぜないことが重要である。

2 約定額を上回る精算を求める方法

約定の中途解約返金が少ない場合でも,直ちに訴訟上より多い返金が認められるとは限らない。
他方,未実施役務が具体的である場合,説明されたサービス水準と実際が大きく異なる場合又は今後の履行が見込めない場合には,契約条項による返金とは別に,未履行部分の精算,減額,代替履行又は合意解約を交渉する余地がある。

交渉案としては,①担当者と責任者の交代,②期限を区切った追加探索,③契約期間の無償延長,④未達人数分の前払報酬の増額返金,⑤将来の成功報酬との相殺又は減額,⑥他職種への振替が考えられる。
どの案を選ぶかは,採用ニーズが残っているか,信頼関係を回復できるか,返金請求の立証可能性と回収費用を比較して決める。

第7 月間報告書と証拠の読み方

1 活動量だけでなく工程を確認する

月間報告書は,紹介会社が活動したことの証拠になる一方,契約上必要な工程がどこで止まっているかを示す資料にもなる。
単なる接触人数だけでなく,①対象者の抽出数,②初回接触数,③応答数,④転職意思を確認した人数,⑤求人企業へ提示した人数,⑥面接人数,⑦内定人数,⑧内定承諾人数,⑨入社人数,⑩辞退理由を継続して記録する。

工程ごとの転換率と滞留日数を月別に比較する。
担当者変更後に特定工程だけが急減している場合には,市場全体の変化,求人条件の変更及び求人企業側の回答速度も併記した上で原因を検討する。

2 面接後のフォローを時系列化する

面接後のフォローは,候補者の意思確認だけでなく,懸念点の把握,求人企業からの評価回収,次回面接又は条件提示の調整及び辞退理由の分析を含み得る。
面接日,求人企業の評価回答日,候補者への連絡日,候補者の回答日及び次の行動を一覧にする。

連絡がなかったという主張は,メール,チャット,電話記録及び報告書を突き合わせて確認する。
口頭連絡が中心であった場合には,今後の協議後に確認メールを送り,合意した担当者,期限及び報告事項を残す。

3 保存すべき資料

基本契約,確認書,申込書,提案書,手数料表,利用規約の締結時版,営業説明,月間報告書,候補者ごとの進捗,面接記録,内定通知,候補者の承諾又は辞退,入社日,早期離職,担当者変更及び苦情対応を保存する。
個人情報を含む候補者資料は,紛争に必要な範囲を超えて共有せず,社内の閲覧権限と保存期間を管理する。

月間報告書の再送を求めるときは,後から作成した一覧ではなく,当時送付された原本,送付メール,送付日,ファイル名及び更新履歴が分かる資料を求める。
候補者名は匿名化IDで足りるが,探索,接触,返信,推薦,面接及びフォローの各日付が追跡できる状態にすることが望ましい。

集計上の「抽出」又は「接触」と,求人企業へ候補者として具体的に提示した「推薦」又は「紹介」は区別する。
年齢条件に関する集計を用いる場合は,その条件自体が法定例外に適合するかも併せて記録する。

第8 通知と交渉の進め方

1 最初の照会で確認する事項

解約通知を出す前に,紹介会社へ,①契約上の採用予定人数と実績人数の定義,②候補者ごとの現在状態,③実施済み役務,④未実施又は遅延した役務,⑤今後の具体的活動計画,⑥担当者変更の可否,⑦現時点で通常解約した場合の返金計算を文書で照会する。
月間報告書の記載が抽象的である場合は,個人情報に配慮しつつ,対象条件,接触時期,工程及び結果を検証できる形で補足を求める。

通知の前段階では,まず事務的な照合作業として,契約開始後又は担当者変更後の月間報告書原本,候補者別の経過及び面接後の連絡記録の再送を求めることが考えられる。
資料を受領して事実関係を時系列化した後に,契約上の役務ごとに,実施済み,実施不明及び未実施を分け,具体的な説明と改善を求める。

この順序にすれば,資料を保全する前に相手方へ法的評価を先行して伝えることを避けつつ,改善催告では抽象的な不満ではなく,契約条項と客観的な記録に基づく不足を示すことができる。
年齢条件を問題にする場合は,その適法性を確認し,必要に応じて適法な職務基準へ修正した上で,改善期限と報告方法を定める。

2 是正要求と解約協議を分ける

契約継続の余地がある場合は,具体的な未履行又は改善点,担当者,期限及び合格条件を示して是正を求める。
例えば,「フォローを改善すること」ではなく,「面接翌営業日までに双方へ連絡し,候補者の懸念点と求人企業の評価を報告すること」のように書く。

継続が困難である場合は,通常解約による返金額を基準にしつつ,未履行部分,説明との不一致,候補者辞退時の取扱い及び残存採用ニーズを示して合意解約を提案する。
返金,無償延長,担当者変更その他の解決案を優先順位付きで提示すると,金額だけを争うより合意形成しやすい。

3 解約か期限付き継続かを比較する

成果が十分でない場合でも,直ちに解約することが常に合理的とは限らない。まず,目的が優秀な人材の採用なのか,既払金の回収なのか,それとも両者なのかを明確にする。過去に相応の採用実績があり,現在も採用ニーズが残るときは,条件を改めて具体化した上で,期限付きの追加履行を求める余地がある。

返金請求の経済性は,請求総額だけでなく,契約どおりに得られる返金額と,それを超えて争うことにより追加回収できる金額との差額を基準に検討する。追加回収可能額,認容及び回収の見込み,交渉・訴訟費用,担当者の拘束時間並びに採用の遅れによる機会損失を比較し,追加履行によって得られる採用可能性とも対照する。法的に主張できることと,費用をかけて争うことが事業上合理的であることは同じではない。

4 追加履行を受ける場合の条件と権利留保

追加履行を受ける場合は,漫然と契約期間だけを延ばさず,2か月又は3か月などの改善期間又は特定の終了日を定める。担当責任者,対象職種,求人要件に適合する候補者への接触,候補者報告,面接設定,面接後の連絡期限,選考が進まなかった理由の分析及び報告頻度を文書化する。接触数等のKPIが活動状況を測る指標なのか,達成を約束する最低水準なのか,採用という結果を保証するものなのかも区別する。

改善期間中の活動は,未達となっている採用人数又は業務部分に対応付け,候補者ごと・工程ごと・時系列で記録する。追加費用を求められる場合は,従前契約の未履行部分を追加費用なしで履行するのか,新たな役務を別契約として発注するのかを明確にする。

さらに,追加履行を認めることが,従前の履行が十分であったことの承認,解除権,返金請求権若しくは損害賠償請求権の放棄,又は精算条件の変更を意味しない旨を通知しておくことが望ましい。もっとも,継続中に相手方の活動実績が積み上がれば,後日の履行割合の評価にも影響し得るため,改善要求前後の活動を区分し,改善がない場合の終了条件をあらかじめ定める。

5 解約通知に記載する事項

解約又は解除の通知には,対象契約,通知の法的根拠,効力発生日,未決候補者の扱い,今後の接触権限,候補者情報の返還・削除,最終報告,請求書の停止,返金額と計算根拠,振込期限を記載する。
契約上の中途解約,民法651条の任意解除又は債務不履行解除のいずれによるかを曖昧にせず,予備的な主張をする場合も順序を明確にする。

第9 今後の契約条項で定める事項

1 役務仕様と報告

契約書又は別紙には,対象職種,探索地域,候補者要件,探索方法,求人企業への提示条件,面接後の連絡期限,定例会,月間報告項目及び担当者変更時の引継ぎを記載する。
接触人数等のKPIは,活動状況を確認する指標なのか,達成を約束する最低水準なのかを区別する。

2 報酬の発生時点と辞退・離職

前払報酬,内定時成功報酬,入社時成功報酬及び在籍時報酬を分け,内定通知,候補者の承諾,雇用契約締結,入社及び在籍確認の各時点を定義する。
候補者の内定辞退,求人企業による内定取消し,入社後の自己都合退職,解雇,労働条件相違及び経歴詐称を分けて,返金,振替又は再探索の扱いを定める。

3 期間,更新,中途解約及び精算

契約期間,自動更新,未達人数の繰越し,解約予告期間,進行中候補者の扱い,解約後の直接採用,候補者情報の削除及び最終報告を定める。
中途解約返金は,基礎額,既履行割合,採用予定人数,成果算入人数,返金率,消費税及び端数処理を数式で示す。

条項は,①民法651条の任意解除の可否及び手続,②契約上の中途解約と返金式,③同法648条3項による履行の中途終了時の割合報酬,④同法651条2項の損害賠償又は損害賠償額の予定を,別々の条項として定める。
一つの返金条項だけで全ての終了原因と金銭関係を処理しようとすると,適用範囲をめぐって争いが生じやすい。

有料職業紹介事業者が求人者に対する違約金規約を設けている場合,令和7年4月1日以後に求人の申込みを受けるときは,職業安定法に基づく指針により,違約金の額(額を確定できないときは算定方法),違約金が発生する条件及び解除方法を含む契約の内容を,分かりやすく明瞭かつ正確に記載した書面又は電子メールその他の適切な方法で,あらかじめ求人者に明示することとされている。
候補者の採用辞退後に別の経路で採用した場合に違約金を適用する定めや,契約の更新に関する定めも明示の対象に含まれるので,違約金の対象となる期間も発生条件の一部として明示しておくことが望ましい。
この明示は職業安定法に基づく指針による取扱いであり,明示の有無だけで違約金条項の私法上の効力が直ちに決まるものではないが,明示が不十分であれば,契約への組入れ,合意の内容及び予測可能性をめぐる争いの原因になる。
違約金規約の明示については,人材紹介の紹介手数料・違約金-直接採用条項の有効性と条項例(AI作成)で説明している。

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準委任契約の中途終了と報酬精算-前払金・割合報酬・損害賠償の確認事項(AI作成)では,民法648条3項の割合報酬,651条の任意解除と損害賠償,652条の将来効及び前払金の返金根拠を整理している。
人材紹介の紹介手数料・違約金-直接採用条項の有効性と条項例(AI作成)では,通常の人材紹介契約における手数料,返戻金及び迂回採用の違約金を整理している。
中途採用における使用者側の留意点――募集・選考・内定・試用期間の実務(AI作成)では,募集前の職務設計から内定及び試用期間までの使用者側実務を説明している。
職業安定法と採用活動-職業紹介,求人情報,社員紹介及び公正採用選考(AIリライト)では,職業紹介と募集情報等提供の区別を説明している。
採用時の年齢制限と人材紹介会社への指示-「35歳以下」等の条件が許される場合と許されない場合(AI作成)では,年齢条件の原則,法定例外及び人材紹介会社への指示を整理している。

第11 出典

①職業安定法(e-Gov法令検索)4条,30条,32条の3,32条の13及び32条の16
②民法(e-Gov法令検索)415条,541条,542条,545条,548条の2,620条,644条,645条,648条,648条の2,651条,652条及び656条
③最高裁平成6年4月22日第二小法廷判決(平成3年(オ)第1943号,民集48巻3号944頁)
④厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」(令和8年9月14日適用版)
⑤厚生労働省「紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります」
⑥厚生労働省「利用料金・違約金等の支払いを巡るトラブルを未然に防止しましょう」

⑦東京地裁令和2年9月25日判決(平成30年(ワ)第11863号,判例秘書L07531907,D1-Law.com判例体系29061117,裁判所HP未掲載)
⑧東京地裁令和4年5月11日判決(令和2年(ワ)第26517号,判例秘書L07731648,D1-Law.com判例体系29070954,裁判所HP未掲載)
⑨東京地裁平成28年3月23日判決(平成26年(ワ)第16220号,D1-Law.com判例体系29018191,裁判所HP未掲載)
⑩東京高裁平成27年7月15日判決(平成27年(ネ)第1747号,D1-Law.com判例体系28232841,裁判所HP未掲載)
⑪東京地裁平成16年8月30日判決(平成15年(ワ)第12183号,判例秘書L05933482,裁判所HP未掲載)
⑫東京地裁令和3年11月8日判決(令和2年(ワ)第9792号,判例秘書L07631662,D1-Law.com判例体系29067475,裁判所HP未掲載)
⑬東京地裁令和5年3月22日判決(令和4年(ワ)第22419号,判例秘書L07830341,D1-Law.com判例体系29077302,裁判所HP未掲載)

⑭労働施策総合推進法(e-Gov法令検索)9条
⑮労働施策総合推進法施行規則(e-Gov法令検索)1条の3
⑯厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」
⑰東京労働局「令和8年度 職業紹介事業者の皆様へ 自主点検のススメ」