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人材紹介の紹介手数料・違約金-直接採用条項の有効性と条項例(AI作成)

1 この記事の対象と結論

1-1 紹介手数料と違約金は別の問題です

人材紹介会社が求人企業に請求する金銭には,採用が成立したときの紹介手数料と,紹介会社を外した直接採用,虚偽の不採用連絡その他の契約違反に伴う違約金があります。
紹介手数料は職業紹介という役務の対価であり,違約金は契約違反への対応ですから,発生原因も有効性の判断方法も同じではありません。

本稿は,有料職業紹介事業者と求人企業との契約を中心に,紹介手数料の法的な仕組み,直接採用・中抜き条項の有効性,令和7年4月1日以後の明示義務及び条項例を整理します。
労働者派遣から派遣先が直接雇用する場面は別の法規制があるため,第5節で区別します。

1-2 結論

紹介手数料率や違約金額には,すべての契約に通用する一律の「相場」や安全圏はありません。
紹介手数料は,紹介会社が選択して届け出た手数料制度,求人企業へ明示した手数料表,契約上の発生時点及び算定基礎に従って判断します。

直接採用・中抜きへの違約金条項も当然に無効ではありませんが,紹介会社の正当な利益を守る範囲を超え,長期間又は広範囲に転職を妨げる内容や,労働者派遣法が禁止する派遣終了後の直接雇用制限を金銭で実現する内容は,無効となる可能性があります。
反対に,紹介を受けた求人企業が紹介会社を意図的に外し,本来の手数料を免れようとした場面では,契約条項に基づく請求が認められた裁判例があります。

したがって,金額だけでなく,対象となる候補者,禁止行為,対象期間,関係会社の範囲,発生要件,算定式,除外事由及び契約申込み時の明示方法を具体化する必要があります。
令和7年4月1日以後に求人企業から職業紹介の申込みを受ける場合,違約金等を定めている紹介会社は,その内容を求人企業に誤解が生じないよう明示しなければなりません。

1-3 最初に確認する資料

紛争の結論は,基本契約だけでは決まりません。
基本契約,個別の求人申込書,手数料表,返戻金制度,利用規約,申込画面と同意記録,候補者を紹介したメール,面接記録,採否連絡,内定通知書,労働条件通知書,紹介会社と候補者との契約並びに実際の入社日を一式で確認します。

ウェブサイトの規約を使う場合は,申込当時の規約本文と版,求人企業が確認できた画面,チェック操作,送信日時及び改定履歴を保存します。
単にウェブサイトのトップページへのリンクを示しただけでは,金額や発生条件について十分な明示があったかが争われやすくなります。

2 紹介手数料の法的な仕組み

2-1 有料職業紹介には原則として許可が必要です

職業安定法4条1項は,職業紹介を,求人及び求職の申込みを受け,求人者と求職者との間の雇用関係の成立をあっせんすることと定義しています。
この有料職業紹介事業を行うには,原則として厚生労働大臣の許可が必要です。

事業者が用いる名称ではなく,実際に雇用成立へ向けたあっせんをしたかで判断されます。
業務委託,採用支援又は情報提供という名称であっても,求人者と求職者の意思疎通を加工し,雇用成立を実質的に仲介して対価を受ける仕組みであれば,職業紹介事業の規制を検討する必要があります。

2-2 上限制手数料と届出制手数料

有料職業紹介事業者が徴収できる手数料は,法令で認められた種類に限られます。
厚生労働省の職業紹介事業の業務運営要領は,受付手数料及び紹介手数料について,法令所定の上限に従う方式と,あらかじめ届け出た手数料表に従う方式を説明しています。

上限制手数料方式では,求人受付事務費と,雇用関係の成立後に支払われた賃金に一定率を乗じる紹介手数料が定められています。
業務運営要領に示される11%という数字はこの方式の法定上限の一部であり,届出制手数料を採用するすべての紹介契約の上限ではありません。

届出制手数料方式を採用する紹介会社は,徴収する手数料の種類,額又は率その他の事項を記載した手数料表を届け出て,求人者等に明示します。
契約書に成功報酬率が書かれていても,許可,届出及び明示された手数料表との整合を別に確認する必要があります。

2-3 手数料率の「相場」の見方

個別契約の妥当性を,インターネット上で見かける平均的な率だけで判断することはできません。
職種,年収帯,採用難度,独占性,探索方法,返戻金制度及び紹介会社が負担する業務が異なるためです。

厚生労働省の人材サービス総合サイトでは,職業紹介事業者の手数料や就職実績等を確認できます。
令和7年4月1日からは,常用就職の紹介実績が多い上位5職種について,職種別の紹介手数料実績の公開も制度化されました。ただし,対象職種の常用就職件数が10件以下である場合は公開対象外です。

契約審査では,紹介会社自身の届出手数料表及び公開実績を確認した上で,同じ職種と報酬水準のサービス内容を比較します。
公表値は交渉材料になりますが,その値を超えれば直ちに違法又は無効になるというものではありません。

2-4 発生時点,算定基礎及び返戻金

「採用時」だけでは,内定通知,候補者の承諾,雇用契約締結又は入社日のいずれを指すかが不明確です。
紹介手数料の発生時点は,候補者が現実に就業を開始した時点とするのか,採用内定を候補者が承諾した時点とするのかを明記します。

想定年収を算定基礎にする場合は,基本給,固定手当,固定残業代,賞与,業績連動給,通勤手当及び入社一時金の取扱いを定めます。
「月例賃金の何か月分」など別の算定方法を使う場合も,税抜額,消費税,端数処理及び支払期日を特定します。

返戻金制度は,入社後の早期離職等に応じて紹介手数料の全部又は一部を返す制度です。
退職日だけでなく,労働者の自己都合退職,求人企業の都合による解雇,労働条件の相違,候補者の重要な経歴詐称及び紹介会社の責任の有無を分けて定めます。

3 直接採用・中抜きを対象とする違約金

3-1 条項の目的と限界

紹介会社が候補者の探索,面談,選考調整及び条件交渉に費用をかけても,求人企業が不採用と連絡した後に候補者と直接契約すれば,成果報酬を免れることができます。
このような意図的な迂回採用を防ぐことは,紹介会社の正当な契約上の利益です。

他方で,候補者の転職先を広く長期間拘束し,紹介との因果関係がない採用まで対象とし,又は求人企業の関係会社を無限定に含める条項は,必要な範囲を超えます。
候補者が紹介前から求人企業へ応募していた場合,求人企業が候補者を既に具体的に認識していた場合及び紹介会社が明示的に候補者を解放した場合の除外も必要です。

3-2 令和7年4月1日以後の明示義務

令和7年4月1日から,職業紹介事業者が違約金規約を設けている場合,求人企業から職業紹介の申込みを受理する時点までに,違約金の額,発生条件,解除方法その他の内容を分かりやすく明示する取扱いが始まりました。
厚生労働省の案内は,「違約金」という名称に限らず,サービス利用に関連して求人企業が負担する金銭を対象とし,金額を確定できない場合には算定方法を示すよう求めています。

契約締結後も,同じ内容を求人企業が再確認できる状態にします。
ウェブページの目立たない箇所に規約へのリンクを置くことや,詳細を表示しないままスクロールと同意を求めることだけでは,十分な明示と評価されない場合があります。

この明示義務は手続面の規制です。
明示をしたからといって,過大な違約金や他の法律に反する条項が当然に有効になるわけではありません。反対に,明示方法に問題がある場合は,行政上の問題に加え,契約への組入れ,合意内容及び予測可能性をめぐる民事上の争いも生じます。

3-3 公序良俗と損害賠償額の予定

民法90条は,公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為を無効とします。
違約金の目的,紹介会社が提供した役務,契約違反の態様,通常の紹介手数料,対象期間,対象者の範囲,求人企業の交渉力及び労働者の職業選択への影響を総合して,条項の合理性を検討します。

民法420条は,当事者が債務不履行について損害賠償額を予定できることを定め,違約金は損害賠償額の予定と推定します。
したがって,「違約金」「紹介手数料」「損害賠償」の名称を付け替えるだけでは足りず,何をしたときに,どの損害について,いくらを支払う合意であるかを整合させる必要があります。

3-4 求職者本人に負担させる条項

本稿の条項例は,紹介会社と求人企業との事業者間契約を対象とします。
職業安定法は,有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収できる場合を限定しており,求人企業向けの条項をそのまま求職者本人へ転用することはできません。

労働基準法16条は,使用者が労働契約の不履行について違約金を定め,又は損害賠償額を予定する契約をすることを禁止しています。
この規定は通常の紹介会社・求人企業間契約に直ちに適用されるものではありませんが,採用後の労働者に転嫁する合意を作れば,別の問題になります。

4 裁判例から分かること

4-1 採用内定を使用者側が撤回した事例

東京地裁令和2年11月6日判決(平成30年(ワ)第24534号,判例時報2501号87頁)は,人材紹介会社を通じた採用について,求人企業が候補者へ詳細な労働条件を示し,候補者も誓約書等を提出した後,書類の不一致を理由に採用を取り消した事例です。

契約には,入社時に成功報酬が発生する条項とは別に,求人企業の責めに帰すべき事由により内定を取り消した場合の手数料条項がありました。
裁判所は,採用合意が成立しており,取り消した理由にも客観的合理性がないとして,想定年収580万円の25%に消費税を加えた156万6000円の請求を認めました。

この判決からは,入社時の成功報酬と求人企業による内定取消し時の負担を別に定め,発生要件を具体化する重要性が分かります。
もっとも,個別事案の認定に基づく第一審判決であり,あらゆる内定取消し条項を有効とするものではありません。

4-2 紹介会社を外して採用しようとした事例

東京地裁令和3年3月17日判決(令和元年(ワ)第34017号)は,求人企業が紹介を受けた助産師に対し,紹介会社を介すると費用がかかるとして,不採用と報告した後に直接連絡する案を示した事例です。
候補者は結局採用されませんでしたが,契約には,紹介会社の書面同意なく候補者と直接連絡・交渉しない義務と,紹介から1年以内に求人企業又は関係先が候補者を採用することを制限する義務があり,契約違反時に12か月分の賃金相当額を支払う条項がありました。

裁判所は,紹介会社を外して費用を免れようとする明確な働きかけを認定し,条項にはそのような行為を抑止する合理的な目的があるなどとして,247万5200円の請求を認めました。

通常の紹介手数料見込額より高い違約金が認められた事例ですが,この金額や倍率が一般的な相場又は安全圏になったわけではありません。
第一審判決であり,候補者への具体的な働きかけなど特徴的な事実を離れて一般化することはできません。

4-3 派遣先による直接雇用を妨げた事例

東京地裁平成9年11月26日判決(平成7年(ワ)第23207号,判例時報1646号106頁)は,契約の名称は車両運行管理でしたが,実質は運転手の労働者派遣であると認定された事例です。
派遣先が担当者を雇用した場合に基本料金6か月分を支払う条項について,裁判所は,労働者派遣法33条2項の規制を潜脱し,派遣先の雇用を事実上制約するものとして効力を否定しました。

サービスの名称や金銭条項の形式ではなく,実態と経済的効果が判断されます。
派遣労働者の直接雇用を対象とする金銭条項は,通常の職業紹介における迂回採用条項と同じ発想では設計できません。

4-4 派遣先への紹介手数料請求が認められた事例

東京地裁令和3年10月6日判決(令和2年(ワ)第17208号・令和3年(ワ)第1625号)は,労働者派遣と有料職業紹介の両方について許可を持つ会社が,派遣先による派遣労働者の直接雇用を理由に紹介手数料を請求した事例です。
契約は,派遣期間中又は終了直後に直接雇用する場合,別途の職業紹介手続を行い,想定年収の25%を紹介手数料とする内容でした。

裁判所は,通知や紹介手続が直接雇用の成立条件になっているとは解さず,当時の労働者派遣法施行規則が予定する措置であり,派遣会社が職業紹介の許可を有することなどから,月額基本給17万円を基礎とする68万円の請求を認めました。

この事例も,派遣先の直接雇用には常に紹介手数料が発生するという一般原則を示したものではありません。
許可の有無,実際の職業紹介行為,派遣契約の条項及び直接雇用を妨げる経済的効果を個別に確認する必要があります。

4-5 裁判例の射程

以上の裁判例は,いずれも事実関係と契約文言を詳しく認定した第一審判決です。
「通常手数料の何倍までなら有効」「対象期間が1年なら常に有効」といった画一的な基準を示していません。

有効性を高めるためには,通常の紹介手数料との関係を説明できる額にし,故意又は重過失による迂回行為に対象を絞り,紹介との因果関係が薄れる期間を短くし,既知候補者等の除外を置くことが有用です。
求人企業が交渉できない利用規約として提示する場合は,民法548条の2の定型約款に関する規律も別に検討します。

5 労働者派遣からの直接雇用との違い

5-1 派遣終了後の雇用制限は禁止されています

労働者派遣法33条は,派遣元事業主が派遣労働者との間で,派遣終了後に派遣先へ雇用されることを禁ずる契約をしてはならないと定めています。
派遣元と派遣先との間で,派遣終了後に派遣先がその労働者を雇用することを禁ずる契約をすることも禁止されています。

厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領は,派遣終了後の雇用制限を原則として認めず,正当な理由がある場合を極めて限定的に捉えています。
雇用禁止を高額な違約金で担保する条項も,直接雇用を事実上困難にするなら同条の潜脱と評価される可能性があります。

5-2 派遣契約に置くことができる措置

労働者派遣法施行規則22条5号は,派遣契約終了後に派遣先が派遣労働者を雇用する場合,派遣先があらかじめ派遣元へ意思を示すこと,派遣元が職業紹介できるときは職業紹介を経て雇用し,紹介手数料を支払うことその他必要な措置を定めることを認めています。

これは,契約に書けば当然に紹介手数料債務が発生するという規定ではありません。
派遣元が有料職業紹介の許可を持つか,職業紹介を実際に行うか,届出手数料表と契約が一致するか,金額が直接雇用を妨げないかを確認します。

派遣元が職業紹介の許可を持たず,実際のあっせんもしない場合は,派遣先が派遣労働者を採用することだけを理由に「紹介手数料」を請求する構成には問題があります。
必要な事務連絡や派遣契約の終了処理と,許可を要する職業紹介を区別します。

5-3 通常の職業紹介と紹介予定派遣

通常の労働者派遣が,派遣労働者の退職や派遣先の採用意思によって当然に紹介予定派遣へ変わることはありません。
紹介予定派遣は,派遣開始前又は開始時から,派遣先への職業紹介を予定して行う別の仕組みです。

派遣中又は派遣終了後の直接雇用をめぐる詳しい検討は,派遣社員の直接雇用-雇用禁止条項,紹介手数料及び紹介予定派遣(AI作成)を参照してください。
労働者派遣契約の基本事項は,労働者派遣法の基本-禁止業務,期間制限,派遣契約及び違法派遣(AIリライト)で説明しています。

6 紹介手数料・違約金条項の例

6-1 条項例を使う前提

以下は,有料職業紹介の許可を持つ紹介会社を甲,求人企業を乙とする事業者間契約のたたき台です。
個別の手数料表,職種,サービス内容,契約締結方法及び返戻金制度に合わせて修正する必要があり,そのまま利用できる完成条項ではありません。

違約金を強くするほど実効性が高まるとは限りません。
対象と根拠を絞り,求人企業が申込前に金額と発生条件を読めるようにし,同意記録を残す方が,紛争予防に役立ちます。

6-2 紹介手数料条項

第○条(紹介手数料)
1 乙が,甲から具体的に紹介を受けた候補者との間で雇用契約を締結し,当該候補者が就業を開始したときは,乙は甲に対し,紹介手数料を支払う。
2 紹介手数料は,当該候補者の想定年収の○%に消費税相当額を加えた額とする。
3 想定年収は,入社時に適用される月額基本給及び毎月固定して支給される手当の合計額の12倍に,採用時に支給が予定される賞与額を加えた額とする。時間外労働の実績により変動する手当,通勤手当及び実費弁償は含めない。
4 乙は,就業開始日の属する月の翌月末日までに,甲が指定する口座へ紹介手数料を振り込む。振込手数料は乙の負担とする。

「具体的に紹介を受けた候補者」とは,氏名その他の情報により候補者を特定できる状態で情報提供を受けた者と定義します。
匿名の経歴情報を大量に送っただけで全員を対象にする条項は,範囲をめぐる争いを招きます。

6-3 直接採用・迂回採用条項

第○条(紹介後の採用)
1 乙が候補者の紹介を受けた日から12か月以内に,当初の求人とは異なる職種,候補者からの直接応募又は第三者の紹介その他の経路により当該候補者を雇用した場合であっても,甲の紹介と雇用との間に合理的な関連性があるときは,前条の紹介手数料が発生する。
2 乙の子会社その他の関係会社が前項の候補者を雇用した場合は,甲が紹介時にその関係会社を特定して乙へ通知し,かつ,乙が当該関係会社の採用を実質的に決定し,又は仲介したときに限り,前項を適用する。
3 乙が紹介前から当該候補者を具体的に認識し,既に応募を受け,又は採用交渉を開始していた場合において,紹介を受けた日から5営業日以内に客観的資料を添えて甲へ通知したときは,前2項を適用しない。甲が書面又は電磁的方法により候補者を本条の対象から除外した場合も同様とする。

直接の連絡や交渉それ自体を全面的に禁止するより,雇用が成立した場合の手数料,事前通知及び選考状況の報告を定める方が,候補者の転職を不必要に妨げません。
対象期間の12か月は一例であり,職種,紹介の密度及び採用活動の期間に応じて短縮又は修正します。

6-4 採用取消し及び返戻金条項

第○条(採用内定の取消し)
乙が候補者に対して労働条件を明示し,候補者が採用内定を承諾した後,乙の責めに帰すべき事由により就業開始前に採用を取り消したときは,乙は甲に対し,紹介手数料とは別に,甲が当該紹介のため現実に負担した合理的な費用として○円を支払う。ただし,候補者の重要な経歴詐称その他乙が採用時に通常の調査をしても知ることができなかった重大な事由による取消しは除く。

第○条(返戻金)
1 候補者が自己の都合により入社後30日以内に退職したときは紹介手数料の○%を,31日以上90日以内に退職したときは同手数料の○%を,甲は乙に返還する。
2 乙による解雇,採用時に明示した労働条件と実際の条件との重要な相違,乙の法令違反又は乙の責めに帰すべき事由による退職については,前項の返戻を行わない。ただし,候補者の重要な経歴詐称その他客観的に合理的な解雇理由がある場合はこの限りでない。

採用取消し時に成功報酬と同額を当然に支払わせるなら,その金銭が役務の対価か,違約金か,実費の補償かを明確にします。
返戻金は紹介手数料の発生を前提とするため,発生時点と返戻条件を矛盾させないようにします。

6-5 違約金条項

第○条(迂回行為に関する損害賠償額の予定)
乙が,紹介手数料の支払を免れる目的で,候補者に対し,甲へ不採用と回答した後に乙又は前条2項の要件を満たす関係会社と直接雇用契約を締結するよう働きかけ,実際に雇用した場合は,乙は甲に対し,当該債務不履行による損害賠償額の予定として,本来支払うべき紹介手数料相当額を支払う。
前項は,乙に故意又は重大な過失がなく,採用経路の変更を遅滞なく甲へ通知した場合,又は甲の紹介と雇用との間に合理的な関連性がない場合には適用しない。

通常の紹介手数料と違約金を重ねて請求する設計にする場合は,それぞれが補う損害を区別し,二重評価にならない根拠を説明できなければなりません。
定額又は倍率を用いるときも,契約違反で通常生じる損害との関係を社内記録に残します。

6-6 派遣契約に置く場合

第○条(派遣終了後の直接雇用)
1 派遣先が派遣契約終了後に派遣労働者を雇用しようとするときは,採用手続を開始する前に派遣元へその意思を通知する。
2 派遣元が有料職業紹介事業の許可を有し,派遣労働者及び派遣先の求職・求人申込みに基づいて職業紹介を行う場合は,両者は別途締結する職業紹介契約及び適法に明示された手数料表に従う。
3 本条は,派遣終了後に派遣労働者が派遣先へ雇用されることを禁止し,又は直接雇用を雇用成立の条件により妨げるものではない。

この条項例でも,個別の事案で紹介行為と手数料の根拠を確認します。
派遣先への通知を求めることと,通知や手数料支払がない限り雇用できないとすることは同じではありません。

7 契約審査と紛争対応の実務

7-1 求人企業側の確認事項

求人企業は,申込み前に,紹介会社の許可番号,適用される手数料表,成功報酬の発生時点,想定年収の定義,返戻金,内定取消し時の負担,直接採用条項,対象期間,関係会社の範囲,違約金の算定式及び解約方法を確認します。
営業担当者の説明と申込画面又は契約書が異なる場合は,書面で訂正又は確認を求めます。

既に知っている候補者を紹介された場合は,紹介前の応募記録や連絡履歴を添えて,契約所定の期限内に通知します。
後に直接応募があった場合も,紹介会社への採否連絡と異なる採用を秘密に進めず,紹介との関連性及び費用を先に協議します。

7-2 紹介会社側の確認事項

紹介会社は,許可,届出手数料表,契約書,ウェブ表示及び営業説明を一致させます。
令和7年4月1日以後の申込みでは,違約金等の名称,金額又は算定方法,発生条件,対象期間及び解除方法を,求人企業が申込前に確認できる画面又は書面へまとめます。

候補者の紹介時には,候補者を特定できる情報,紹介日,対象求人及び担当者を記録します。
求人企業から既知候補者との申告を受ける方法,除外判断をする責任者及び候補者を解放する手続も定めます。

請求前には,通常の紹介手数料,本条項の目的,契約違反と評価する具体的行為,紹介との因果関係及び算定根拠を整理します。
高額な請求を交渉手段として一律に用いると,条項の合理性だけでなく,事業運営全体への信用を損ないます。

7-3 証拠と消滅時効

迂回採用が疑われる場合は,不採用連絡の日時と理由,候補者との連絡,求人企業又は関係会社への入社日,求人内容,雇用条件及び紹介会社の業務内容を確認します。
候補者のプライバシーと個人情報保護に配慮し,必要な範囲を超える調査や第三者への開示は避けます。

契約上の金銭請求権には消滅時効があります。
民法166条による一般的な債権の時効期間を前提に,権利を行使できると知った時期,客観的に権利を行使できる時期,支払期日,債務承認,裁判上の請求その他の完成猶予・更新事由を個別に確認します。

請求する側も請求を受ける側も,契約締結時の明示資料と採用経過を早期に保全することが重要です。
行政上の許可・明示の問題と,民事上の契約成立・有効性・損害額の問題を分けて主張します。

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職業紹介と求人情報提供の区別,募集情報等提供事業及び公正採用選考については,職業安定法と採用活動-職業紹介・求人情報・社員紹介・公正採用選考を参照してください。
求人企業が採用時に確認すべき労働条件や内定の論点は,中途採用における使用者側の留意点――募集・選考・内定・試用期間の実務(AI作成)で説明しています。

9 主な法令・資料

職業安定法(e-Gov法令検索)
職業安定法施行規則(e-Gov法令検索)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)
民法(e-Gov法令検索)
労働基準法(e-Gov法令検索)
職業紹介事業の業務運営要領(厚生労働省)
紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります(厚生労働省)
利用料金・違約金等の支払いを巡るトラブルを未然に防止しましょう(厚生労働省)
労働者派遣事業関係業務取扱要領(厚生労働省)

裁判例は,東京地裁平成9年11月26日判決(平成7年(ワ)第23207号),東京地裁令和2年11月6日判決(平成30年(ワ)第24534号),東京地裁令和3年3月17日判決(令和元年(ワ)第34017号)及び東京地裁令和3年10月6日判決(令和2年(ワ)第17208号・令和3年(ワ)第1625号)を参照しました。
本文は令和8年9月10日現在の法令・公表資料に基づきます。