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採用時の年齢制限と人材紹介会社への指示-「35歳以下」等の条件が許される場合と許されない場合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 この記事の対象

本記事は,事業主が中途採用,ヘッドハンティング又は人材紹介を行う際に,「35歳以下」,「40歳未満」又は「若手中心」などの年齢条件を設け,又は人材紹介会社にそのような条件で候補者を探索するよう指示できるかを整理するものである。
法令及び行政資料の基準日は令和8年9月16日である。

2 先に押さえるべき結論

労働施策総合推進法9条により,事業主は,募集及び採用について,原則として年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
求人票を「年齢不問」としながら,人材紹介会社だけに年齢による足切りを指示することも,この原則を免れる方法にはならない。

年齢制限が許されるのは,同法施行規則1条の3第1項各号の例外に該当する場合である。
なかでも「長期勤続によるキャリア形成」を理由とする例外は,期間の定めのない労働契約であることに加え,職業経験を条件とせず,新卒者と同等の訓練・育成体制,配置及び処遇で育成することを要する。
したがって,他社で就業中の経験者を即戦力として採用するヘッドハンティングに「35歳以下」という上限を設けることは,通常,この例外によって正当化しにくい。

募集条件を決める際は,「新しい仕事を覚えられること」,「長く勤務できること」,「管理職でない職位から勤務できること」などの目的を,年齢ではなく,職務内容,必要な能力,経験,技能,勤務条件及び本人の意思に置き換える必要がある。

第2 年齢制限禁止の原則

1 求人広告だけでなく実際の選考にも適用される

労働施策総合推進法9条は,募集及び採用の両方を対象としている。
求人票に年齢条件を書かなければよいというものではなく,応募受付,書類選考,面接及び採否判断のいずれにおいても,法定の例外がないまま年齢を理由に候補者を排除することは許されない。

厚生労働省のリーフレットは,求人票を年齢不問としながら年齢を理由に応募を断り,又は採否を決めることも法の規定に反すると説明している。
「35歳未満歓迎」のように歓迎条件として表現しても,実際に一定年齢以上を採用しないのであれば,実質的な年齢制限として扱われる。

2 人材紹介会社を利用する場合にも適用される

年齢制限禁止は,事業主による直接募集だけでなく,公共職業安定所,民間の職業紹介事業者及び求人広告を通じた募集・採用にも広く適用される。
ヘッドハンティング会社に対し,「求人票には書かないが,実際は35歳以下に限る」,「同業者なら40歳未満までよい」などと指示しても,適法な例外がなければ,年齢による実質的な選別であることに変わりはない。

人材紹介会社が候補者の年齢情報を保有し,又は検索条件に年齢項目を設けることと,求人企業が年齢を理由に候補者を排除することは区別する必要がある。
厚生労働省のQ&Aは,年齢情報の収集,提供又は検索機能それ自体を同法9条が直接規制するものではない一方,事業主が例外事由なしに年齢を理由として選考することは法に反すると説明している。

3 行政上の対応と私法上の問題は分ける

厚生労働大臣は,法の施行に必要な限度で,事業主に対して助言,指導又は勧告をし,報告又は資料の提出を求めることができる。
具体的な相談窓口は,都道府県労働局又はハローワークである。

他方,求人企業と人材紹介会社との契約上,年齢条件に従わなかったことが債務不履行になるかは,行政法上の適法性とは別の私法上の問題である。
法令に反する年齢による足切りを実施しなかったことを,そのまま契約違反と評価することは相当でない。
もっとも,人材紹介会社が,適法な求人要件の確認,候補者探索,面接調整,フォロー又は報告を怠ったかは,別に検討できる。

第3 年齢制限が認められる六つの例外

ハローワークインターネットサービス「年齢制限該当事由について」は,求人申込み(仮登録)画面で選択する例外事由を,aからfまでの記号及び略称で示している。
画面上の略称は法令上の要件を省略した表示であるため,略称を選択するだけでなく,次の実質的要件を満たす必要がある。

画面上の記号・略称法令上の例外事由画面上設定できる年齢条件
a「定年を上限」施行規則1条の3第1項1号。定年年齢を上限として,その年齢未満の者を無期労働契約の対象として募集・採用する場合定年年齢を上限とする場合に限る
b「法令の規定により年齢制限がある」同項2号。労働基準法等の法令に年齢制限がある場合下限だけを設定できる
c「キャリア形成」同項3号イ。無期労働契約の対象として,長期勤続によるキャリア形成の観点から若年者等を募集・採用する場合上限だけを設定できる
d「技能・ノウハウの継承」同号ロ。特定職種で労働者数が相当程度少ない特定年齢層を,技能・ノウハウの継承のため無期労働契約の対象として募集・採用する場合30歳から49歳までの範囲内で,上限と下限の双方を設定する
e「芸術・芸能の分野」同号ハ。芸術・芸能分野における表現の真実性等の要請がある場合上限と下限の双方を設定できる
f「高年齢者等の特定年齢層の雇用促進」同号ニ。60歳以上の高年齢者,就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)又は国の雇用促進施策の対象者に限定して募集・採用する場合60歳以上の下限,又は国の施策の対象年齢を設定する

複数の例外に形式上該当し得る場合も,画面では一つを選択する。
同サービスは,a又はbよりcからfまでを優先し,cからfまでの間では,eよりfを,fよりc又はdを優先すると説明している。
もっとも,画面上の選択順位は法的要件を緩和するものではなく,選択した例外の要件を客観的に説明できなければならない。

1 「定年を上限」-定年年齢を上限とする場合

定年が定められており,期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用するときは,定年年齢を上限とすることができる。
定年が60歳である会社が「60歳未満」を条件とする例がこれに当たる。

上限は実際の定年年齢と一致する必要があり,業務の習熟に時間がかかることを理由として,定年より低い年齢を上限にすることはできない。
また,有期労働契約にはこの例外を使うことができない。

2 「法令の規定により年齢制限がある」場合

労働基準法その他の法令によって特定年齢層の就労が禁止又は制限されている業務では,その法令に対応する年齢条件を設けることができる。
危険有害業務又は警備業務に関する法定年齢が典型であり,単なる社内方針又は業界慣行はこれに当たらない。

3 「キャリア形成」-長期勤続によるキャリア形成を図る場合

若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として採用し,長期勤続によるキャリア形成を図る場合は,上限年齢を設けられることがある。
厚生労働省資料は,ここでいう若年者等について基本的には35歳未満を想定するものの,必ずしも35歳未満に限られず,おおむね45歳未満を目安とすると説明している。

ただし,この例外を使うには,①期間の定めのない労働契約であること,②対象者の職業経験を不問とすること,③新卒者以外の者も新卒者と同等の訓練・育成体制,配置及び処遇で育成することが必要である。
ここでいう「職業経験を不問」とは,募集職種の経験だけを問わなければ足りるという意味ではなく,職業に就いた経験そのものを求人条件にしないことをいう。
厚生労働省のQ&Aは,「同業経験三年以上」,「経験者優遇」又は「経験があれば尚よい」といった条件も,3号イに基づく年齢制限とは両立しないと説明している。
職務が広範囲又は専門的であること自体では結論は決まらない。未経験者を長期的に育成する募集であればこの例外を用い得るが,同業経験者等を求める即戦力採用の年齢上限を正当化する例外ではない。
また,職業経験を通じてのみ取得できる技能又は実務経験を要する資格を条件とする場合も,この例外による年齢制限を設けることができない。

4 「技能・ノウハウの継承」が必要な場合

特定の職種における特定年齢層の労働者数が相当程度少なく,技能・ノウハウの継承が必要な場合は,その年齢層に限定して,期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用できることがある。

厚生労働省資料によれば,対象は30歳から49歳までの範囲にある特定の年齢層で,年齢幅は5歳から10歳までとし,その年齢層の人数が上下の同じ幅の年齢層と比べて2分の1以下であることが必要である。
単に「若手が少ない」,「平均年齢を下げたい」又は「将来の管理職候補が必要」という抽象的な理由だけでは足りない。

5 「芸術・芸能の分野」で表現の真実性が求められる場合

演劇,映画その他の芸術・芸能分野において,表現の真実性等のために特定年齢の者を募集・採用する必要がある場合は,年齢制限が認められる。
商品又はサービスの主要顧客が若いというだけでは,この例外には当たらない。

6 「高年齢者等の特定年齢層の雇用促進」を図る場合

60歳以上の高年齢者,就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)又は特定年齢層の雇用を促進する国の施策の対象者に限定して募集・採用する場合は,年齢条件を設けられる。
国の施策を利用せず,事業主が独自に特定年齢層を優遇したいというだけでは,この例外を使うことはできない。

第4 「35歳以下」等の条件をどう評価するか

1 「35歳以下」は自動的に適法になる数字ではない

厚生労働省資料が例示するのは「35歳未満」であり,「35歳以下」は35歳を含むため,両者は同じではない。
もっとも,年齢の境界を「未満」から「以下」に変えれば適法又は違法が自動的に決まるものではなく,長期勤続によるキャリア形成という目的と前記の各要件を満たすかが本質である。

「35歳未満」という数字も安全港ではない。
無期雇用であっても,即戦力となる経験者を求め,新卒者と異なる選考又は育成を予定しているなら,長期キャリア形成の例外には通常当たらない。

2 経験者のヘッドハンティングでは原則に戻る

同業他社で勤務する者,特定分野の営業経験者又は管理職候補を探索するヘッドハンティングは,候補者の職業経験を積極的に評価する採用である。
そのため,「経験不問」を要件とする長期キャリア形成の例外とは,通常,両立しない。

「同業経験者なら40歳未満まで可」という基準も,それ自体は法定の例外ではない。
経験を要求しながら年齢上限も付けるのであれば,定年,法令,技能承継その他の別の例外に該当しない限り,年齢上限を外し,必要な経験及び能力を直接示すべきである。

3 年齢を別の言葉で隠しても結論は変わらない

「20代が活躍中」,「若手歓迎」又は職場の平均年齢を示すことが直ちに年齢制限になるとは限らない。
しかし,その表示又は人材紹介会社への内部指示を利用して,一定年齢以上を実際に選考対象から外すのであれば,実質的な年齢制限となる。

「年齢不問。ただし一定年齢以上は経験者に限る」とだけ示す表現は,年齢層によって異なる応募条件を課すものとして適切でない。
他方,厚生労働省のQ&Aは,①年齢不問・要業務経験の求人と,②一定年齢未満・経験不問の求人という二つの募集を組み合わせ,後者を3号イに基づく求人とすることは認めている。
条件の異なる求人は,別々の求人に分けるなど,求職者に分かりやすく示すことが適切である。
もっとも,「経験者も一定年齢未満」のように経験者にも上限年齢を設けることは,別の例外に該当しない限り認められない。

第5 人材紹介会社へ指示するときの実務

1 紹介会社も例外事由を確認する

東京労働局の有料職業紹介事業者向け自主点検表は,年齢制限のある求人について,紹介会社が施行規則1条の3第1項各号の例外に該当する理由を確認し,違法な年齢制限である場合は是正を働きかけることを求めている。
是正されない場合は,その求人を受理せず,ハローワークに情報提供するという対応も示されている。

求人企業は,人材紹介会社に年齢上限だけを伝えるのではなく,どの例外事由に該当するのか,雇用期間,定年,職務経験条件,育成方針,対象職種の年齢構成及び国の施策との関係を説明できる状態にする必要がある。
上限年齢が65歳以下である場合は,高年齢者雇用安定法20条1項により,求職者及び職業紹介事業者等に対し,その理由を書面その他の方法で提示することも必要となる。

2 探索条件と選考条件を区別する

人材紹介会社との打合せでは,市場調査のために年代別人数を集計すること,候補者候補を探索すること,候補者へ接触すること,求人企業へ推薦すること及び求人企業が採否を決めることを区別する。
単なる市場分析に年齢情報を用いることと,年齢を理由に推薦又は採用対象から排除することは同じではない。

もっとも,「探索段階だから自由」として,実際には一定年齢以上へ一切接触せず,求人企業の違法な足切りを実現する運用は相当でない。
契約書,求人票及び月間報告書には,適法な求人要件,候補者母集団,接触数,推薦数及び選考理由が追跡できるように記録することが望ましい。

3 契約書には法令遵守と条件変更の手順を置く

人材紹介契約には,①求人企業が法令に適合する求人条件を提示すること,②紹介会社が法令上の疑義を指摘できること,③条件の修正を協議すること,④適法な条件が確定するまで候補者への接触を保留できること,⑤求人要件の変更を文書又は電子メールで記録することを定めることが考えられる。

このような条項があれば,紹介会社が独断で年齢条件を無視することも,求人企業の指示に従って違法な足切りをすることも避けやすい。
契約上の役務評価も,「指定年齢に何人接触したか」だけでなく,適法な職務基準に合う候補者をどの程度探索し,推薦し,選考後のフォローをしたかによって行うことができる。

第6 年齢条件を職務基準へ置き換える方法

1 学習可能性は具体的な能力で示す

「年齢が高いと新しい仕事を覚えにくい」という推測を,採用条件にしてはならない。
必要なのが新しい業務を習得する能力であれば,研修内容,習得期限,必要な基礎知識,過去の学習経験,試験又は実技課題など,年齢を問わず評価できる基準に置き換える。

2 定着可能性は意思と条件の一致で確認する

「年齢が高いと退職しやすい」という一般化だけで候補者を排除することも相当でない。
想定する職務,勤務地,勤務時間,賃金,昇進可能性及び育成方針を具体的に示し,本人の転職理由及び中長期の就業意思との一致を確認する。

3 職位と賃金は年齢でなく職務内容から示す

「年長者をいきなり管理職として採用できない」,又は「前職より年収が下がる可能性がある」という事情は,年齢上限を設ける根拠にはならない。
非管理職として採用すること,担当業務,権限,評価制度,賃金幅及び昇格要件を,全年齢の候補者に共通する求人条件として明示する。

4 紹介会社への依頼文の例

紹介会社への指示は,例えば,「年齢は不問とする。法人営業三年以上,指定製品分野の顧客折衝経験,入社後六か月以内に担当業務を単独遂行できる基礎能力,非管理職としての採用及び提示年収への了解を条件とし,候補者ごとに該当事実を報告する」という形にする。
ここで挙げる経験年数又は資格も,実際の職務遂行に必要な範囲に限る必要がある。

第7 紹介会社との契約紛争での注意点

1 年齢条件の適法性を先に確認する

紹介会社が指定した年齢層の候補者へ十分に接触しなかったとしても,その年齢条件が法令上許されないものであれば,「年齢条件に従わなかったこと」だけを債務不履行の中心に据えるべきではない。
まず例外事由の有無を確認し,必要に応じて求人条件を適法な職務基準へ修正した上で,その後の役務履行を評価する。

2 年齢以外の役務は別に検証する

年齢条件に問題があっても,紹介会社のすべての義務がなくなるわけではない。
求人要件の聴取,対象市場の説明,候補者への接触,推薦理由の整理,面接設定,面接後のフォロー,求人企業へのフィードバック依頼及び定期報告が契約上の役務であれば,それぞれを分けて検証する。

検証資料としては,契約書,確認書,求人票,求人要件票,打合せ議事録,電子メール,月間報告書,候補者別の匿名化ID,接触日,返信日,推薦日,面接日及びフォロー記録が重要である。
月間報告書は集計結果だけでなく,当時送付された原本,送付メール,ファイル名及び更新履歴を保存することが望ましい。

3 改善催告は適法な基準で行う

改善を求める場合は,①適法な求人要件,②契約上の役務,③報告書から確認できる実施状況,④不足している具体的行為,⑤改善期限,⑥改善後の報告方法を記載する。
候補者の採用という結果だけでなく,紹介会社が管理できる行為を対象にすることが重要である。

第8 実務チェックリスト

1 求人企業側

求人企業は,①年齢条件を置く目的,②該当する例外事由,③無期又は有期の別,④定年年齢,⑤職業経験条件の有無,⑥新卒者と同等の育成をするか,⑦技能承継の場合の職種別・年齢層別人数,⑧上限年齢を設ける理由の提示方法を,募集開始前に確認する。
例外事由を説明できない場合は,年齢上限を外し,職務,能力,経験,技能及び勤務条件へ置き換える。

2 人材紹介会社側

人材紹介会社は,①年齢制限の存在,②例外事由の根拠資料,③求人企業への是正提案,④適法な求人要件の確定,⑤候補者への理由提示,⑥探索・接触・推薦の各段階における運用,⑦求人を受理しない場合の記録を確認する。
法令上の疑義が解消しないときは,都道府県労働局又はハローワークに確認することが望ましい。

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第10 出典

①e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」9条,33条及び35条
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132

②e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則」1条の3
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/341M50002000023

③e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」20条
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/346AC0000000068

④厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/topics/tp070831-1.html

⑤厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?―年齢にかかわりなく,均等な機会を―」(令和7年4月1日現在)
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001475014.pdf

⑥厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」(令和7年4月1日現在)
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001474761.pdf

⑦東京労働局「令和8年度 職業紹介事業者の皆様へ 自主点検のススメ」
URL:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/002618071.pdf

⑧ハローワークインターネットサービス「年齢制限該当事由について」
URL:https://www.hellowork.mhlw.go.jp/enterprise/age_limit.html