第1 民訴法303条の目的
1 濫用的控訴への手続的対応
民事訴訟法303条は,控訴の提起が訴訟の完結を遅延させることだけを目的とすると認められる場合に,控訴裁判所が控訴人へ金銭の納付を命じる制度を定める。
2 敗訴見込みだけでは足りない
控訴理由が弱い,又は最終的に棄却されたというだけで,直ちに濫用となるものではない。遅延目的を認めるに足りる事情が必要である。
第2 金銭納付命令
1 命令の内容
裁判所は,控訴の提起により生ずる訴訟費用の担保として相当な金額を定め,納付を命じる。命令の根拠,金額及び期限を確認する。
2 不納付の効果
期間内に納付しない場合の控訴却下など,条文所定の効果が生じ得る。命令を受けた場合は,不服申立ての可否と期限を直ちに確認する。
第3 濫用判断の資料
1 控訴理由と訴訟経過
同一主張の反復,明白な手続妨害,提出時期,理由書の内容及びそれまでの訴訟経過が判断資料となり得る。
2 正当な権利行使との区別
新たな証拠,法令解釈上の争点又は第一審手続の重大な問題がある場合,その内容を具体的に示し,単なる遅延目的ではないことを明らかにする。
第4 代理人弁護士の懲戒との区別
1 当事者の控訴と弁護士の職務行為
303条の命令は訴訟法上の制度であり,代理人弁護士の懲戒とは別問題である。濫用的控訴があったから自動的に弁護士が懲戒されるわけではない。
2 懲戒判断
弁護士の懲戒は,依頼者への説明,事件の見通し,控訴理由の検討,虚偽資料の利用その他の具体的職務行為を,弁護士法及び弁護士職務基本規程に照らして判断する。
第5 根拠資料及び注意
民事訴訟法303条(e-Gov法令検索)を確認した。
公開された懲戒事例は事案固有の事情に基づくため,見出しや結論だけを一般化してはならない。