第1 最高裁判例の実務上の位置付け
1 同種事件の法解釈を統一する機能
最高裁判例は,同種事件における法解釈の統一に大きな役割を持つ。下級審は通常,最高裁が示した法解釈を踏まえて判断する。
2 すべての判示が同じ重みではない
結論に必要な判示か,傍論か,大法廷か小法廷か,その後に同趣旨の判例が反復されたかを区別する。事案の差異を無視して一文だけを一般化してはならない。
第2 法的な拘束力が明文で生じる場面
1 差戻し・移送後の拘束力
民事訴訟法325条3項等により,差戻し又は移送を受けた裁判所は,その事件について上級審が示した判断に拘束される。これは一般的な先例性とは別の,個別事件における拘束力である。
2 刑事事件
刑事訴訟法413条等にも破棄差戻し後の拘束に関する規律がある。どの判断が拘束力を持つかは,破棄理由と不可分な判断の範囲を個別に検討する。
第3 最高裁判例と異なる判断
1 理論上の可能性と実務上の例外性
社会状況又は法制度の変化により判例変更が問題となることはある。しかし,下級審が単に最高裁判例に納得できないというだけで異なる判断をするのは相当でない。
2 検討すべき事情
判例の時期,大法廷・小法廷の別,少数意見,その後の立法,関連判例との整合性及び学説・下級審裁判例の展開を検討する。
第4 下級審判決を引用する方法
1 法源としてではなく説得資料として扱う
下級審判決は,事案と理由付けが近いときに重要な説得資料となるが,同順位の裁判所を一般に拘束するものではない。
2 事案比較を行う
裁判所名,裁判年月日,事件番号,掲載誌又は公開URLを示し,事実関係・争点・規範・当てはめのどこが自分の事件と共通するかを書く。
第5 根拠資料及び注意
裁判所法(e-Gov法令検索),民事訴訟法(e-Gov法令検索)及び刑事訴訟法(e-Gov法令検索)を確認した。
本記事は「最高裁判例に反する判断が常に許される」ことを意味しない。個別事件の拘束力と一般的な先例性を区別する必要がある。