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刑事控訴審で原判決を破棄した後の自判と差戻し―刑訴法400条と実務(AI作成)

第1 刑訴法400条の構造

1 差戻し又は移送

刑事訴訟法400条本文は,原判決を破棄する場合に,事件を原裁判所へ差し戻し,又は原裁判所と同等の他の裁判所へ移送することを定める。

2 直ちに判決できる場合の自判

同条ただし書は,控訴裁判所が訴訟記録及び取り調べた証拠によって直ちに判決できる場合に自判を認める。自判の可否は,控訴審で追加の事実審理が必要かと関係する。

第2 差戻しが必要となる事情

1 第一審での審理が必要な場合

重要な証人尋問,争点整理又は裁判員裁判を含む第一審手続を改めて行う必要がある場合は,差戻しが問題となる。

例えば,東京高裁令和元年12月6日判決(平成31年(う)第201号)は,裁判員裁判の第一審が,公判前整理手続で構成裁判官だけの見解として罪の不成立を表明した後,その見解を変更して有罪とした訴訟手続を違法として,刑事訴訟法397条1項,379条により第一審判決を破棄した。
同判決は,因果関係の有無と量刑を改めて判断する必要があり,法令の適用及び刑の量定を裁判員の参加する合議体で行うこととした裁判員法の趣旨に照らすと,裁判員の参加する合議体で審理と評議を尽くすのが相当であるとして,400条本文により事件を差し戻した。
詳しくは,東名高速あおり運転事件の控訴審判決と裁判員法6条―公判前整理手続での見解表明,差戻し後の懲役18年及び上告棄却で扱っている。

2 二審制と防御権

控訴審が新たな重要事実を認定して直ちに有罪又は重い判断をすることが,当事者の防御機会や第一審の審判を受ける利益を害しないかを検討する。

第3 自判が選ばれる場合

1 記録から直ちに結論を出せる場合

量刑の変更,法令適用の訂正又は証拠関係が尽くされている場合には,自判が選ばれることがある。

東京高裁令和元年8月29日判決(平成29年(う)第2214号,判例秘書の判例番号 L07420462)は,統合失調症にり患していた被告人が自動車を発進させて横断歩道上の歩行者らに衝突させた殺人等の事件で,故意と責任能力を認めた第一審判決を事実誤認により破棄した。
同判決は,被告人の事理弁識能力と行為制御能力が著しく低下していたにとどまらず,これらの能力が残っていたことについても合理的な疑いがあるとして,心神喪失者の行為であって罪とならないとし,400条ただし書により自ら無罪を言い渡した。

2 破棄理由との対応

原判決のどの誤りを是正し,控訴審がどの証拠に基づいてどの主文を言い渡すかを判決理由で確認する。

第4 統計の読み方

1 過去の比率を現行実務と同一視しない

平成18年終局事件の集計では破棄後の自判が多数であったが,古い全国集計であり,現在の個別事件の見通しを直接示すものではない。
平成12年から令和7年までの全国の高等裁判所における破棄自判及び破棄差戻し・移送の人員は,刑事控訴審・上告審の終局区分別統計―平成12年~令和7年の破棄・棄却の推移と控訴審の破棄自判に関する最高裁判例に掲載している。

2 近時の高裁資料

東京高裁の令和7年途中集計では,破棄自判と破棄差戻し・移送の件数が示されている。母集団,期間及び終局区分を確認して用いる必要がある。

第5 根拠資料及び関連記事

刑事訴訟法400条(e-Gov法令検索)を確認した。
東京高裁令和元年12月6日判決(裁判所HP)及び東京高裁令和元年8月29日判決(判例秘書)も確認した。
近時の数値は,東京高裁の刑事控訴―破棄率,審理期間,保釈抗告及び大型記録事件(令和7年度)を参照されたい。