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刑事控訴審・上告審の終局区分別統計―平成12年~令和7年の破棄・棄却の推移と控訴審の破棄自判に関する最高裁判例(AI作成)

第1 この記事の対象と基準日

この記事は,高等裁判所(控訴審)及び最高裁判所(上告審)における刑事訴訟事件の終局区分別既済人員を,司法統計年報に基づき平成12年から令和7年まで一覧にするものである。
あわせて,控訴審が原判決を破棄して自判する場合及び上訴に関する最高裁判例を整理する。

数値の基準日は令和8年9月18日であり,同日時点で裁判所ウェブサイトに掲載されている司法統計年報(刑事編)平成27年版から令和7年版まで,及び平成12年から平成27年までを集計した推移表PDFによる。
令和8年10月18日に,本記事の全ての表の数値を,司法統計年報の各年版の第3表・第6表と照合した。

この記事で示す割合は,その年に終局した被告人の総数を分母とする全国の集計値であり,個別の事件で控訴又は上告が認められる見込みを示すものではない。

第2 刑事上訴審の終局区分別統計

1 統計の単位と範囲

(1) 既済人員という単位

以下の数値は,司法統計年報(刑事編)の「刑事訴訟事件の種類及び終局区分別既済人員」の表(高等裁判所は第6表,最高裁判所は第3表)による。
単位は事件数ではなく,その年に終局した被告人の人数(既済人員)である。

(2) 高等裁判所の数値の範囲

高等裁判所の平成28年以降の数値は「控訴審」の行であり,再審を含まない。
平成27年の第6表では,控訴審の総数は6078人で後記の推移表PDFの値と一致し,再審は0人であった。

(3) 最高裁判所の数値の範囲

最高裁判所の平成28年以降の数値は「上告審」の行(第一審判決に対するもの及び第二審判決に対するもの)の合計であり,非常上告及び再審を含まない。
平成27年の第3表では,上告審の合計は1891人で後記の推移表PDFの値と一致した。
第一審判決に対するもの(跳躍上告)は,平成27年に1人(上告棄却)であり,平成28年以降は,平成30年に2人(上告棄却),令和4年に1人(上告棄却),令和6年に1人(取下げ)で,それ以外の年は0人である。

(4) 数値の出所と検算

平成12年から平成27年までの数値は,司法統計年報を基に作成した刑事訴訟事件の終局区分別既済人員の推移表(高裁及び最高裁)(平成12年から平成27年まで)を基にし,各年版の司法統計年報の第3表・第6表と照合した。
平成16年,平成19年及び平成20年の最高裁判所の総数及び上告棄却は,推移表が第一審判決に対するもの(跳躍上告)を含んでいなかったため,これを加えた司法統計年報の値によっている。
平成28年から令和7年までの数値は,裁判所ウェブサイトに掲載されている各年の司法統計年報(刑事編)のExcelファイルから転記した。
各行について,内訳の合計が総数と一致することを確認している。

2 高等裁判所(控訴審)の推移

(1) 年次別の終局区分

① 総数及び破棄自判の内訳

年総数破棄自判・有罪破棄自判・無罪破棄自判・その他
平成12年7,186992120
平成13年7,6291,17890
平成14年8,3471,261210
平成15年8,8751,288120
平成16年9,1701,250220
平成17年9,2641,203120
平成18年9,3441,454200
平成19年8,4221,159170
平成20年7,962998130
平成21年7,258792200
平成22年6,856719210
平成23年7,005669100
平成24年6,618554150
平成25年6,108547110
平成26年5,890537110
平成27年6,078549210
平成28年5,910623240
平成29年6,098547250
平成30年5,710518311
令和元年5,828494220
令和2年5,332470120
令和3年5,331484150
令和4年4,82038060
令和5年4,639371160
令和6年4,928385120
令和7年5,04036390
平成12年~平成27年の合計122,01215,1502470
平成28年~令和7年の合計53,6364,6351721

② 破棄差戻し・移送,控訴棄却,取下げ及びその他

年破棄差戻し・移送控訴棄却取下げその他
平成12年34,7471,40131
平成13年74,9141,50516
平成14年105,3881,64126
平成15年105,8111,73321
平成16年135,9681,88829
平成17年156,0591,94134
平成18年165,8511,95845
平成19年125,6031,59536
平成20年205,3101,57744
平成21年124,8921,50834
平成22年104,7081,36434
平成23年64,9411,35326
平成24年114,7451,25142
平成25年114,3341,18124
平成26年104,1411,15239
平成27年194,3211,14424
平成28年224,1471,06430
平成29年154,49298237
平成30年264,16393932
令和元年144,28598429
令和2年253,85094827
令和3年143,83695725
令和4年253,57880625
令和5年193,41378931
令和6年203,67181921
令和7年133,83580317
平成12年~平成27年の合計18581,73324,192505
平成28年~令和7年の合計19339,2709,091274

(2) 期間ごとの割合

平成12年から平成27年までに終局した12万2012人のうち,破棄自判で有罪となったのが1万5150人(12.42%),破棄自判で無罪となったのが247人(0.20%),破棄差戻し・移送が185人(0.15%),控訴棄却が8万1733人(66.99%),取下げが2万4192人(19.83%),その他が505人(0.41%)である。
平成28年から令和7年までに終局した5万3636人のうち,破棄自判で有罪となったのが4635人(8.64%),破棄自判で無罪となったのが172人(0.32%),破棄自判のその他が1人,破棄差戻し・移送が193人(0.36%),控訴棄却が3万9270人(73.22%),取下げが9091人(16.95%),その他が274人(0.51%)である。

令和7年に終局した5040人のうち,破棄自判で有罪となったのが363人(7.20%),破棄自判で無罪となったのが9人(0.18%),破棄差戻し・移送が13人(0.26%),控訴棄却が3835人(76.09%),取下げが803人(15.93%),その他が17人(0.34%)である。
破棄(破棄自判及び破棄差戻し・移送)の合計が総数に占める割合は,平成28年の11.32%から令和7年の7.64%まで,おおむね低下している。

3 最高裁判所(上告審)の推移

(1) 年次別の終局区分

① 総数及び破棄自判の内訳

年総数破棄自判・有罪破棄自判・無罪破棄自判・その他
平成12年1,941100
平成13年1,997010
平成14年2,495100
平成15年2,783320
平成16年2,965010
平成17年2,828000
平成18年2,779200
平成19年2,542000
平成20年2,498030
平成21年2,311030
平成22年2,150010
平成23年2,208110
平成24年2,313010
平成25年2,017200
平成26年1,974420
平成27年1,891000
平成28年1,957101
平成29年2,106010
平成30年1,993410
令和元年2,091300
令和2年1,881000
令和3年1,852100
令和4年1,685211
令和5年1,591010
令和6年1,608000
令和7年1,656200
平成12年~平成27年の合計37,69214150
平成28年~令和7年の合計18,4201342

② 破棄差戻し・移送,上告棄却,取下げ及びその他

年破棄差戻し・移送上告棄却取下げその他
平成12年11,37155810
平成13年21,4335529
平成14年11,7906949
平成15年12,1596099
平成16年42,23971011
平成17年02,1856376
平成18年12,1366346
平成19年32,0165185
平成20年22,0124765
平成21年91,8464503
平成22年21,7114306
平成23年01,7604388
平成24年21,8954096
平成25年01,68731810
平成26年31,6183407
平成27年01,5653179
平成28年11,5973516
平成29年01,7763272
平成30年11,7022805
令和元年01,7423388
令和2年31,5183546
令和3年21,5782638
令和4年41,4072664
令和5年21,3382446
令和6年01,3342668
令和7年01,3972525
平成12年~平成27年の合計3129,4238,090119
平成28年~令和7年の合計1315,3892,94158

(2) 期間ごとの割合

平成12年から平成27年までに終局した3万7692人のうち,破棄自判で有罪となったのが14人,破棄自判で無罪となったのが15人,破棄差戻し・移送が31人,上告棄却が2万9423人(78.06%),取下げが8090人(21.46%),その他が119人(0.32%)である。
平成28年から令和7年までに終局した1万8420人のうち,破棄自判で有罪となったのが13人,破棄自判で無罪となったのが4人,破棄自判のその他が2人,破棄差戻し・移送が13人,上告棄却が1万5389人(83.55%),取下げが2941人(15.97%),その他が58人(0.31%)である。

令和7年に終局した1656人のうち,破棄自判で有罪となったのが2人,上告棄却が1397人(84.36%),取下げが252人(15.22%),その他が5人であり,破棄自判で無罪となった人及び破棄差戻し・移送となった人はいない。
最高裁判所で破棄自判の無罪となった人は,平成28年から令和7年までの10年間で4人にとどまる。

4 統計を読むときの限界

(1) 割合が示すもの

割合は,その年に終局した被告人の総数を分母として本記事で計算したものであり,個別の事件で控訴又は上告が認められる確率を示すものではない。
第6表及び第3表は,控訴又は上告を申し立てたのが検察官か被告人側かを区別していない。

(2) 理由別の表の重複計上

司法統計年報には,控訴理由別及び破棄理由別の表もあるが,二つ以上の理由がある場合はそれぞれの理由欄に計上されている。
理由別の数値を合計しても,破棄された人数にはならない。

(3) 年報の更新と東京高裁の集計

令和6年の司法統計年報(刑事編)については,令和8年9月17日付で正誤表及び更新版が掲載されており,本記事は更新版のExcelファイルを用いた。
東京高裁の令和7年の途中集計による破棄率等は,東京高裁の刑事控訴-破棄率,審理期間,保釈抗告及び大型記録事件(令和7年度)(AI作成)で扱っており,全国の年報とは母集団及び集計期間が異なる。

5 最高裁が破棄自判無罪とした例(平成29年3月10日判決)

(1) 判決の内容

最高裁平成29年3月10日判決(第二小法廷,平成27年(あ)第63号,集刑321号1頁)は,窃盗被告事件について,第1審の有罪判決(懲役1年,3年間執行猶予)を維持した広島高裁平成26年12月11日判決(平成26年(う)第1号)及び第1審判決をいずれも破棄し,被告人を無罪とした。
同判決は,置き忘れられた現金在中の封筒を窃取したとされる事件について,封筒内に現金が在中していたとの事実を動かし難い前提として,被告人以外に現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に窃取を認定した第1審判決及び原判決の判断が,論理則,経験則等に照らして不合理で是認できないとして,刑事訴訟法411条3号により両判決を破棄したものであり,反対意見が付されている。

(2) 原審の裁判長と関連資料

広島高裁判決の裁判長は高麗邦彦裁判官であり,陪席裁判官は辛島明裁判官及び國分進裁判官である。
事件の経過は,煙石博さんの無罪を勝ちとる会のウェブサイトに広島高裁判決の写し等が掲載されているほか,現代ビジネスの記事でも紹介されている。

第3 控訴審の破棄自判と上訴に関する最高裁判例

1 無罪判決に対する検察官上訴

最高裁大法廷昭和25年9月27日判決(昭和24年新(れ)第22号,刑集4巻9号1805頁)は,下級審の無罪又は有罪判決に対し検察官が上訴し,有罪又はより重い刑の判決を求めることは,被告人を二重の危険にさらすものではなく,憲法39条に違反しないとした。
同判決は,一審の手続も控訴審の手続も上告審の手続も,同じ事件においては継続する一つの危険の各部分にすぎないとの考え方を前提としている。

2 第1審無罪判決を控訴審が破棄して有罪とする場合

(1) 昭和47年判決

最高裁昭和47年6月15日判決(第一小法廷,昭和44年(あ)第2560号,集刑184号637頁)は,検察官の控訴に基づき第1審の無罪判決を破棄して自ら有罪とした控訴審判決に対する上告を棄却したものである。
同判決の裁判要旨は,第1審で無罪を言い渡された被告人に対し,控訴裁判所が事実の取調べの上で無罪判決を破棄し,自ら有罪の判決を言い渡すこと,及びこの場合にその控訴審判決に対して上訴で事実誤認等を争う途が閉ざされていることは,憲法31条ないし40条又はその精神に反するものではないとしている。
刑事訴訟法405条が定める上告理由は憲法違反又は憲法解釈の誤り及び判例違反であり,事実誤認は,同法411条3号により,判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときの職権破棄の対象となるにとどまる。

(2) 令和3年決定

最高裁令和3年5月12日決定(第一小法廷,令和2年(あ)第343号,刑集75巻6号583頁)は,原審が被告人質問を実施したが被告人が黙秘し,他に事実の取調べが行われなかった事案で,第1審が無罪とした公訴事実を原審が認定して直ちに自ら有罪の判決をしても,刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとした。
控訴審で破棄した後に自判するか差し戻すかの考え方は,刑事控訴審で原判決を破棄した後の自判と差戻し―刑訴法400条と実務(AI作成)で扱っている。

3 原判決が破棄された場合の未決勾留日数

最高裁平成25年11月19日判決(第三小法廷,平成25年(あ)第507号,集刑312号49頁)は,控訴審が被告人の控訴に基づいて第1審判決を破棄する場合には,控訴申立後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項2号により判決が確定して執行される際に当然に全部本刑に通算されるものであり,控訴裁判所には通算するか否かの裁量はなく,刑法21条により判決でその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡しをすべきではないとした。
同判決は,原判決のうち当審未決勾留日数を算入した部分を破棄し,その余の上告を棄却している。
控訴棄却の場合を含む算入の扱いは,刑事控訴審の未決勾留日数の算入―控訴棄却・原判決破棄の場合(AI作成)で扱っている。

第4 関連記事

刑事上訴の手続,統計及び最高裁判所の審理に関する関連記事は,次のとおりである。
①刑事事件の上訴及び不服申立て-控訴・上告・抗告等の期間と手続(AI作成)
②刑事控訴の事実誤認―刑訴法382条の審査基準と論理則・経験則違反(AI作成)
③東京高裁の刑事控訴-破棄率,審理期間,保釈抗告及び大型記録事件(令和7年度)(AI作成)
④被告人側の上告があり,最高裁が被告人に有利に原判決を破棄した刑事判決56件(平成元年以降)(AIリライト)
⑤刑事事件の上告棄却決定に対する異議の申立て(AIリライト)
⑥終局区分別既済事件数の推移表
⑦最高裁判所事件月表の一覧と読み方―令和元年5月以降の新受・既済・未済(AI作成)
⑧最高裁判所調査官とは?職務・調査報告書・判例解説を解説(AIリライト)
⑨最高裁判所判例解説(調査官解説)の意味・読み方・探し方(AIリライト)
⑩判決要旨は誰に交付されるか―広報ハンドブック,平成28年・平成29年の事務連絡,美濃加茂市長事件及び情報公開答申(AI作成)

第5 出典・参考資料

1 法令

①刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)400条,405条,411条,495条(e-Gov法令検索。令和8年10月18日確認)
②刑法(明治40年法律第45号)21条(e-Gov法令検索。令和8年10月18日確認)
③日本国憲法39条(e-Gov法令検索。令和8年10月18日確認)

2 裁判例

①最高裁判所大法廷昭和25年9月27日判決(昭和24年新(れ)第22号,刑集4巻9号1805頁,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所第一小法廷昭和47年6月15日判決(昭和44年(あ)第2560号,集刑184号637頁,裁判所ウェブサイト)
③最高裁判所第三小法廷平成25年11月19日判決(平成25年(あ)第507号,集刑312号49頁,裁判所ウェブサイト)
④最高裁判所第二小法廷平成29年3月10日判決(平成27年(あ)第63号,集刑321号1頁,裁判所ウェブサイト)
⑤最高裁判所第一小法廷令和3年5月12日決定(令和2年(あ)第343号,刑集75巻6号583頁,裁判所ウェブサイト)

3 統計

①最高裁判所「司法統計年報(刑事編)」平成27年版第3表・第6表(第3表を含むPDF,第6表を含むPDF)
②最高裁判所「司法統計年報(刑事編)」平成28年版~令和2年版第3表・第6表(Excel。平成28年版:第3表・第6表,平成29年版:第3表・第6表,平成30年版:第3表・第6表,令和元年版:第3表・第6表,令和2年版:第3表・第6表)
③最高裁判所「司法統計年報(刑事編)」令和3年版~令和7年版(Excel。令和3年版,令和4年版,令和5年版,令和6年版(令和8年9月17日更新版),令和7年版)
④刑事訴訟事件の終局区分別既済人員の推移表(高裁及び最高裁)(平成12年から平成27年まで)(PDF1頁)
⑤最高裁判所「司法統計年報(刑事編)」平成16年版・平成19年版・平成20年版第3表(平成16年版,平成19年版,平成20年版。いずれもPDF2頁。第一審判決に対するものを含む上告審の値)

4 その他の資料

①煙石博さんの無罪を勝ちとる会「広島高裁平成26年12月11日判決の写し」(PDF全21頁。判決書20頁に裁判官の署名欄)
②現代ビジネス「恐怖!地方の人気アナが窃盗犯にデッチ上げられるまでの一部始終」