最高裁判所調査官

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目次
1 総論
2 最高裁判所調査官の配置
3 最高裁判所の首席調査官,上席調査官及び裁判所調査官の職務
4 最高裁判所調査官の能力に関する最高裁判所判事の感想
5 家庭裁判所調査官とは異なること
6 東京高裁判事の身分を有する最高裁判所調査官であっても,東京高裁の裁判官会議構成員とはされていないこと
7 関連記事その他

1 総論
(1) 最高裁判所調査官は,最高裁判所に所属する裁判所調査官であって,最高裁判所の事件の審理及び裁判に関して必要な調査その他法律において定める事項をつかさどります(裁判所法57条2項)。
(2) 最高裁判所調査官に充てられる判事は,東京高等裁判所判事又は東京地方裁判所判事です。
(3)ア 最高裁判所調査官は本来,裁判官以外の職員であるものの,昭和24年6月1日法律第177号によって追加された裁判所法付則3項に基づき,常に裁判官をもって充てられています。
イ 「最高裁判所とともに」(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)180頁及び181頁には以下の記載があります。
    たとえば裁判所の中でも、司法行政に従事する有資格事務官と判事、判事補の格差の問題があったのです。裁判をするかどうか、で形式的に区分することとして発足したのですが、事務総局等司法行政事務部門で有資格者が不可欠である以上、事務官への任命により昨日までの判事の待遇を下回る給与とすることは実務上不可能で、昭和二四年六月には、最高裁判所調査官、研修所教官や司法行政上の職に、判事、判事補を、そのままの身分で充てることができるようにされています。
(4) 現代ビジネスHPの「最高裁判所という「黒い巨塔」〜元エリート裁判官が明かす闇の実態」(2016年9月29日付)には以下の記載があります。
    最高裁長官は、裁判部門の補助官、スタッフであり、やはりエリートコースとされている30名ほどの最高裁判所調査官についても、そのトップに位置する首席調査官を通じて影響を及ぼすことが可能である。
    つまり、最高裁長官は、大法廷事件の裁判長となるのみならず、支配や統治の根幹に関わる裁判を含む重要な裁判全般についても、首席、上席という調査官のヒエラルキー、決裁制度を通じて、コントロールしようと思えばすることができるのだ。


2 最高裁判所調査官の配置
(1)ア 最高裁判所の各調査官室の裁判所調査官の配置を以下のとおり掲載しています。
・ 令和3年4月8日実施
・ 令和2年4月1日実施
・ 平成31年4月1日実施
・ 平成30年4月1日実施
・ 平成29年4月1日実施
・ 平成28年4月1日実施
・ 平成27年9月10日実施
・ 平成27年4月1日実施
イ 民事調査官室が三つ,行政調査官室が一つ,刑事調査官室が二つあります。
(2)ア 民事調査官は,行政事件,労働事件等を除く民事事件(知財事件を含む。)の調査に係る事務を担当します。
イ 刑事調査官は,刑事事件の調査にかかる事務を担当します。
ウ 行政調査官は,行政事件(知財事件は除く。),労働事件,行政処分の違法を理由とする国家賠償請求事件及び裁判官分限事件を担当します。
(3)ア 昭和25年5月,行政調査官室が民事調査官室が分離し,昭和35年12月に民事調査官室が二つになり,昭和36年9月に三つになりました。
イ 刑事調査官室は昭和23年頃に三つになったものの,二つになった時期は不明です。
ウ 「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)214頁が参考になります。


3 最高裁判所の首席調査官,上席調査官及び裁判所調査官の職務
(1) 最高裁判所首席調査官の職務
・ 最高裁判所首席調査官の職務は,最高裁判所上席調査官を補佐する者の指名のほか,最高裁判所調査官の事務の総括として以下のものがあります(最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)1項)。
① 調査官及び上席調査官の事務の指定
② 調査官及び上席調査官の調査にかかる事務に関する相談及び調整
③ 判例集及び裁判集に係る案件の整理
④ 最高裁判所の裁判所調査官の事務の補助を行う裁判所書記官及び裁判所事務官に対する指導
⑤ 最高裁判所の訟廷事務の運用に関する助言及び協力
⑥ その他最高裁判所の裁判所調査官の事務の総括に係る事務
(2) 最高裁判所上席調査官の職務

・ 最高裁判所上席調査官の職務は以下のとおりです(最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)3項)。
① 首席調査官の事務の一般的補佐
② 調査官の調査にかかる事務に関する相談及び調整
③ 判例集及び裁判集に係る案件の整理
④ 各上席調査官及び調査官の事務の補助を行う裁判所書記官及び裁判所事務官に対する指導
⑤ 最高裁判所の訟廷事務の運用に関する助言及び協力
⑥ その他最高裁判所の裁判所調査官の事務の整理に係る事務
(3) 最高裁判所調査官の職務
ア 最高裁判所調査官の職務は,①調査報告書の作成,②最高裁判所裁判官の審議への陪席及び③最高裁判所判例解説の作成であり,典型的な調査報告書は,事案の説明,争点,1審判決と原審,上告の趣旨,論旨の検討,処理方針という構成をとり,必要な文献・判例も添付され,数十ページになるものもあれば,2~3枚のものもあるそうです(古賀克重法律事務所ブログ「最高裁裁判官から見た弁護活動のポイントとは、大橋正春元最高裁判事講演会」参照)。
イ 最高裁判所調査官の職務につき,北海道大学HPに載ってある「憲法裁判における調査官の役割」(藤田宙靖 元最高裁判所判事へのインタビュー)には以下の記載があります。
① 調査官室で審議案件の調査報告書を作成するやり方について(リンク先2頁・末尾296頁)
通常の審議事件:担当調査官が作成して,上席調査官がチェックする。
憲法事件:担当調査官が作成して,上席調査官のチェックを経た上,首席調査官が最終チェックする。
行政事件:行政調査官全員の検討会を行ってから報告書を作成する。
② 最高裁判所裁判官の個別意見について(リンク先4頁・末尾298頁)
・ 通常は裁判官が自ら書く。
・ 裁判官から調査官に頼むこともある。例えば、「この部分○○を書きたいが、調べて補足してくれ」と依頼することもある。また、「××について文章にしてくれ」と依頼することがある。
・ 理系の研究室で、教授が、准教授、講師、助教や院生をアシスタントとして使うことに似ているのかもしれない。
ウ 最高裁判所調査官は,最高裁判所の判例委員会の幹事を命じられることがあります(判例委員会規程6条2項)。
エ 自由と正義2013年6月号に「特集1 元判事・調査官が語る最高裁判所」が載っていますところ,その中の「昭和末期の最高裁判所調査官室のある情景」(筆者は塚原朋一 元最高裁判所調査官)には,最高裁昭和59年5月29日判決に関する審理経過が非常に詳しく書いてあります。


4 最高裁判所調査官の能力に関する最高裁判所判事の感想
・ 「最高裁判所調査官制度の内容-オーラル・ヒストリーを手がかりに」には以下の記載があります(法学セミナー2017年5月号56頁)。
    最高裁調査官の能力について、元最高裁裁判官の福田博は、あくまで最高裁の在職期間に限っての話として、「調査官のうち、5%から1割は私よりも能力がある。それを含めて3割が調査官として非常に優秀」と評価する。「あとの5割くらいはまあ普通」とし、残りの2割については「ずっと法律屋をやっていなかった私でもやっていけるかなと思い」、そのうちの5%くらいについては「明らかに私の方がよくできるだろう……。この人たちが調査官になっているのは間違いじゃないか」とした。

5 家庭裁判所調査官とは異なること
(1) 最高裁判所調査官は,家庭裁判所調査官(裁判所法61条の2)とは異なります。
(2) 単に「裁判所調査官」という場合,特許庁又は国税庁からの出向者から任命されている,高等裁判所及び地方裁判所の裁判所調査官をいうことが多いです(「裁判所調査官」参照)。

6 東京高裁判事の身分を有する最高裁判所調査官であっても,東京高裁の裁判官会議構成員とはされていないこと
(1) 裁判所法20条2項は「各高等裁判所の裁判官会議は、その全員の裁判官でこれを組織し、各高等裁判所長官が、その議長となる。」と定めています。
   また,下級裁判所事務処理規則12条ないし20条の2に裁判官会議に関する規定がありますところ,最高裁判所調査官に充てられた判事を招集する必要はないという趣旨の規定はありませんし,そもそも最高裁判所規則で裁判所法の規定と異なる規定を定められるわけでもありません。
    しかし,東京高裁判事の身分を有する最高裁判所調査官であっても,東京高裁の裁判官会議構成員とはされていません。
(2)ア 医師が医薬品を使用するに当たって医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず,それによって医療事故が発生した場合には,これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り,当該医師の過失が推定されます(最高裁平成8年1月23日判決)。
イ 株主総会開催に当たり株主に招集の通知を行うことが必要とされるのは,会社の最高の意思決定機関である株主総会における公正な意思形成を保障するとの目的に出るものであるから,特定の株主に対する右通知の欠如は,すべての株主に対する関係において取締役の職務上の義務違反を構成します(最高裁平成9年9月9日判決。なお,先例として,最高裁昭和42年9月28日判決参照)。


7 関連記事その他
(1) 刑事の最高裁判所調査官が著した書籍として,「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)があります。
(2) 刑事訴訟法411条は,最高裁判所が職権として調査することができる旨を定めたに過ぎないものであって,上告趣意書に含まれていない事項についても職権として調査しなければならない旨を定めたものではありません(非常上告事件に関する最高裁昭和30年9月29日判決)。
(3) ヤフーニュースの「『イチケイのカラス』モデルの元裁判官が語る"絶望の司法"「弁護士出身判事、現実でも増員を」」(2021年5月5日付)(木谷明裁判官を取材したもの)には以下の記載があります。
――その当時(山中注:故平野龍一・元東大総長が論文で「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」と述べた昭和60年当時)と今ではどう変わったのでしょうか。
「裁判官が官僚的になりましたね。いい例が、裁判官や最高裁調査官が弁護人の面談申し出に応じなくなったことです。私が裁判官や調査官だった当時、弁護人が会いたいと言えば、当たり前のように会っていました。
ところが、最近は、裁判官に面談を求めても、たいてい、『言いたいことがあれば書面で出せ』と言われて面談を断られます。調査官は今では弁護人に絶対に会いません。口頭で説明されないとわからないことがたくさんあるのにねえ」
(4) 以下の資料を掲載しています。
・ 最高裁判所首席調査官等に関する規則(昭和43年12月2日最高裁判所規則第8号)
→ 最高裁判所の調査官室には,首席調査官,上席調査官及び上席調査官補佐が設置されることが分かります。
・ 最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)に,
→ 首席調査官,上席調査官及び上席調査官補佐の職務内容が書いてあります。
・ 最高裁判所民事・行政調査官室作成の「判例集・裁判集登載事項等に関する事務処理要領(平成27年7月)」
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の最高裁判所首席調査官
・ 歴代の最高裁判所民事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所刑事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所行政上席調査官
・ 最高裁判所判例解説
・ 最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトル
・ 裁判所調査官
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
 最高裁の既済事件一覧表(民事)
 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分),及び最高裁民事破棄判決等の実情
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ 最高裁判所の口頭弁論期日で配布された,傍聴人の皆様へ
・ 司法研修所の教官組別表,教官担当表及び教官名簿
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 法務総合研究所

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