最高裁判所判例解説

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目次
1 総論
2 昭和時代の説明
3 最高裁判所裁判官経験者の説明
4 最高裁判所調査官経験者の説明
5 情報公開手続における最高裁判所の説明
6 一般財団法人法曹会
7 関連記事その他

1 総論
(1) 最高裁判所判例解説は最高裁判所調査官が作成してるものであり,最高裁判所の判例集に搭載された判例について,その要旨と参考条文を掲げ,事案の概要,一審及び二審の要旨,上告理由の概要並びに判決についての論点ごとの解説をしたものです。
(2) 最高裁判例のうち,最高裁判所判例集(民集・刑集)に掲載されたものについては,「法曹時報」に「最高裁判所判例解説」として掲載され,その後,その解説は,年度ごとに民事篇と刑事篇に分けて「最高裁判所判例解説 民事篇(刑事篇)」というタイトルの本にまとめられます(同志社大学司法研究科図書室の「図書室だより」第11号(2007年8月)参照)。
(3) 京都大学法学部図書室HP「判例をさがす」には以下の記載があります。
◯『最高裁判所判例解説 民事篇・刑事篇』[法曹会](判解・調査官解説)
判例解説資料の中でも、事件を担当した最高裁判所調査官が執筆した『最高裁判所判例解説』を「判例解説」もしくは「調査官解説」と呼び、最も重要な資料とされています。『法曹時報』掲載の判例解説を単行本化したものであるため、まだ単行本化されていない年度の事件についての判例解説については『法曹時報』の掲載記事から確認できます。法学部図書室内の所定のPCで、記事の検索・全文閲覧が可能です。
(4) 最高裁判所判例解説は,単に「調査官解説」とか「判例解説」ともいわれますところ,一般財団法人法曹会で販売されています(法曹会HP「最高裁判所判例解説」参照)。
(5) 日本の最高裁判所(日本評論社)245頁には「1967年度から「鹸高裁判所調査官室編」が消えて、単に「最高裁判所判例解説」と表記されるようになったが、その後は、むしろ調査官解説の制度的椎威が高まる過程をたどった。」と書いてあります。


2 昭和時代の説明
(1) 法曹時報における連載開始当初の説明

    法曹時報第6巻第2号(昭和29年2月1日発行)55頁には,最高裁判所調査官室名義で作成された「最高裁判所判例」の「まえがき」として以下の記載があります。
    このたび、多数読者の御要望にこたえて、最高裁判所判例欄を新設し、昭和二十八年十二月以降の最高裁判所判例のうち重要と思われるものを紹介することとした。
    収載については、読者の理解、利用等の便宜を考えて、裁判書の全文をそのまま掲載する方式を採らず、とくに当該事件についての調査を担当された最高裁判所調査官をわずらわして、判示事項、裁判の要旨等を摘示し、かつ当該裁判についての解説を掲げることとした。愛読を希望する。
(2) 昭和40年発行の書籍の説明
    刑事の最高裁判所調査官が著した「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)183頁には以下の記載があります。
(山中注:判示事項及び判決(決定)要旨の案が最高裁判所の判例委員会をパスして)最高裁判例が出るとなると、その事件の調査を担当した調査官が、その判例の解説を書く。これが毎月、法曹時報に載っている最高裁判例解説であるこというまでもないが、この解説は判例委員会の日から大体二週間位のうちに書き上げなければならない。これは最高裁調査官の公務の傍らにやる仕事であるが、最高裁判例の意味内容を誤りなく解説することは責任の重い仕事である。

3 最高裁判所裁判官経験者の説明
(1) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)93頁には以下の記載があります。
    最高裁の判決は、その事件で下級審を拘束するほか、判例としてどこまで下級審の指針となるかが、大きな問題である。各小法廷からの委員で構成する判例委員会が、いわゆる判決の「判示事項」「判決要旨」を決めて最高裁判例集を作るが、さらにその事件の調査を担当した調査官が個人の資格で「判例解説」を発表し、判決の〃射程〃を知るための資料を提供する。下級審の判断上のポイントとして注目されるものだ。
(2) 滝井繁男 元最高裁判所判事が執筆した「最高裁判所判事の任を終えて-調査官の仕事について思うこと」(法の支配147号(2007年10月発行))には以下の記載があります。
    当初,調査官は最高裁におかれている判例委員会で,前月の判例のうち判例集への登載(原文ママ)するものとその判断事項,要旨を決めてから二週間以内に解説を書いて提出するということになっていたらしい。既に事件の報告書ができており,近時は審議にも調査官が立ち上がっているのだから,このような短期間に解説を書き上げることが不可能とは思えない。現に昭和46年頃までは,この解説はほぼ判決の順に公表され,各年度ごとに合本された判例解説もその翌年には出されていたのである。それが昭和47年度には合本の発刊が翌々年になり始め,その後は遅れた年度には4年から5年後になるということもあった。その原因の多くは,発足当初のものに比べてその解説が詳細にわたるものが多くなって,解説が全て揃うのに時間がかかるようになってきたことにある。
(3) 
「憲法裁判における調査官の役割」(藤田宙靖 元最高裁判所判事へのインタビュー)7頁及び8頁(リンク先の末尾301頁及び302頁)には,最高裁判所調査官解説に関して以下の記載があります。
・ 一般論としては、よくできている。
・ 自分が関与した事案について、重点の置き所が、自分が考えていた点とややずれていると感じる例も無いではない。また、他の小法廷が判断した事案については、読んでも、それが小法廷でなされた審議の正確な解説かどうかはわからない。
・ (多数意見等を正確に説明し,その背景も正確にしているものが多いかどうかは)調査官による。客観的な説明が多いが(上記一般論)、中には、私見を出すものもある。
・ 調査官解説を頭から信じてはいけない。
・ 判決文で書くべきと考えられることが多くなっているから、最近の最高裁判決は、長文化している。
・ 審議の際、どこまで判決で書くべきかを審議することがある。例えば、多数意見では○○まで書く、補足意見では△△まで書き、調査官解説では××まで書かせる、というような配分を考えることがある。
・ 裁判官は調査官解説を事前に見ていない。
・ 首席調査官が事前に見ているかどうかはわからない。
・ 調査官室が関与しているかどうかはわからない。
・ 調査官解説は、調査官から転任後に公表されるケースもあることからわかるように、基本的にはあくまで個人的見解である。
(4) 《講演録》最高裁生活を振り返って(講演者は前最高裁判所判事・弁護士の田原睦夫)には以下の記載があります(金融法務事情1978号26頁及び27頁)。
① 調査官解説には、裁判官は一切関与しません。調査官が在官中に書くときは、場合によっては上席に相談することもあるようですが、最高裁から転出した後はそれもありません。
② 調査官解説はあくまで調査官の個人的意見でしかないし、私など、意見を書いた立場の者が読むと、「ん?」というのがそこそこあるというのが実情です。
(5) 古賀克重法律事務所ブログ「最高裁裁判官から見た弁護活動のポイントとは、大橋正春元最高裁判事講演会」によれば,最高裁判所調査官の職務は,①調査報告書の作成,②最高裁判所裁判官の審議への陪席及び③最高裁判所判例解説の作成みたいです。


4 最高裁判所調査官経験者の説明
・ 15期の木谷明 元最高裁判所調査官に対するインタビューをベースとした「最高裁判所調査官制度の内容-オーラル・ヒストリーを手がかりに」には,「調査官解説」として以下の記載があります(法学セミナー2017年5月号64頁)。
    最高裁の判例が出ると、その事件を担当した調査官が雑誌『法曹時報』(法曹会発行)に最高裁判所判例解説(「調査官解説」)を書くことになっている。調査官解説は本来の公務でないから裁判所では書けず、帰宅後あるいは土曜・日曜に書く。木谷は勤務時間が終わったらすぐ帰宅するように心がけていた。調査官解説には、かなり文献が引用されているが、これらは報告書を作る段階で集めたコピー、資料を利用する。大体、報告書に出ており、主要な文献も添付している。自宅に関連する文献を置いておく必要はなく、報告書を持ち帰ればよい。
    調査官解説では、「~と思われる」という表現が多用される。それは解説の書き方の常道みたいなものであり、判決は裁判官によるもので、調査官解説であるのに断定する訳にいかないからである。
    調査官解説の執筆は職務ではないからチェックされない。木谷は、上司の首席・上席調査官から何か言われたことは一切なかった。

5 情報公開手続における最高裁判所の説明
(1) 平成31年3月4日付の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所内において,本件開示申出に係る文書を探索したが,該当文書は存在しなかった。なお,最高裁判所判例解説は,各最高裁判所調査官が個人として執筆・投稿しているものである。よって,最高裁判所として,最高裁判所調査官が最高裁判所判例解説に記事を投稿する際の注意事項を記載した文書を作成し,交付する必要はない。
(2) 本件開示申出に係る文書は,「最高裁判所調査官が最高裁判所判例解説に記事を投稿する際の注意事項が書いてある文書」です。

6 一般財団法人法曹会
(1) 一般財団法人法曹会の住所は,「東京都千代田区霞が関1丁目1番1号 法曹会館」です。
(2) 平成20年頃までは,法曹会の会長は最高裁判所長官であり,副会長は検事総長でしたが,その後は,法曹会の会長は元最高裁判所長官であり,副会長は元検事総長となっています(Wikipediaの「法曹会」参照)。
(3) 法曹会館は結婚式場としても利用されています(法曹会HPの「The HOSO Weddings」参照)。

7 関連記事その他
(1) 「最高裁判所に対する民事上訴制度の運用」には以下の記載があります(判例タイムズ1520号9頁)。
    受理決定(山中注:上告審として事件を受理する決定)がされた事件の7割から8割は破棄判決がされており,2 割から3 割は,原審の判断を維持して上告棄却判決をする場合であっても受理決定がされている(受理された事件の7割近くは,最高裁の判例集〔最高裁民事判例集又は最高裁裁判集民事〕に登載されている。)が,この数値からも,総合的な判断がされていることがうかがわれる。
(2) 「判例とその読み方(三訂版)」108頁には以下の記載があります。
    注意しておく必要があるのは、この解説(山中注:最高裁判所判例解説のこと。)はあくまで調査官の個人としての立場で書かれたものだということである。それゆえ、判旨の解釈、その判例としての適用範囲などについて述べられたところも、あくまで執筆者である調査官の私見であって、その裁判をした大法廷または小法廷の見解ではない。かつて、最高裁判所から差し戻された事件の差戻審において、調査官の差戻判決の解説中の破棄理由に関する部分があたかも裁判所の見解であるかのように誤解されて若干のトラブルを生んだことがあるが、これは判例解説に対する理解不足に起因するものである。そのことは十分承知してこれを読まれる必要があるが、しかし、その点にさえ留意すれば、この解説が判例理解の有力な手がかりであることはたしかである。
(3) 判例秘書HPに「最高裁判所判例解説INTERNET」が,ウエストローHPに「日本法総合オンラインサービス〈Westlaw Japan〉に最高裁判所判例解説 絶賛発売中」が載っています。
(4) 以下の資料を掲載しています。
・ 法令・判例等検索システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は第一法規株式会社)
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所調査官
・ 歴代の最高裁判所首席調査官
 歴代の最高裁判所民事上席調査官
 歴代の最高裁判所刑事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所行政上席調査官
 最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトル
 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)

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