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刑事事件の上訴及び不服申立て-控訴・上告・抗告等の期間と手続(AI作成)

第1 この記事の対象と上訴・不服申立ての全体像

1 この記事の対象

この記事は,刑事訴訟法第三編及び第四編に定められた控訴,上告,抗告,異議申立て,準抗告,特別抗告及び非常上告を中心に,申立権者,期間,審理方法及び裁判の種類を説明するものである。
略式命令に対する正式裁判請求,刑の執行に関する異議,少年事件の抗告及び再審手続の詳細は,それぞれ別の制度であるため,必要な範囲に限って触れる。

法令及び統計の基準日は令和8年9月7日である。
情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律には未施行部分があるため,現在の手続と将来施行される制度を区別する。

2 判決に対する上訴と決定等に対する不服申立て

判決に対する上訴は,第一審判決に対する控訴と,控訴審判決に対する上告に分かれる。
これに対し,決定又は命令に対する不服申立てには抗告及び異議申立てがあり,裁判官又は捜査機関の一定の処分に対しては準抗告がある。

対象主な不服申立て原則的な申立先又は審級一般的な期間
第一審判決控訴高等裁判所判決宣告日から14日
高等裁判所の第一審又は第二審判決上告最高裁判所判決宣告日から14日
裁判所の決定通常抗告・即時抗告直近上級裁判所通常抗告は一般期間なし,即時抗告は3日
高等裁判所の決定異議申立て決定をした高等裁判所即時抗告の規定が準用される場合は3日
裁判官の一定の裁判準抗告管轄地方裁判所3日
検察官・司法警察職員等の一定の処分準抗告管轄裁判所法定の一般期間なし
抗告裁判所等の決定特別抗告最高裁判所5日
確定判決非常上告最高裁判所検事総長のみが申立て,期間の定めなし

即時抗告及び特別抗告の期間には再審関係の例外がある。
再審請求について刑事訴訟法447条1項又は448条1項によりされた決定に対する即時抗告と,その抗告裁判所の決定に対する特別抗告は,同法450条の3により,いずれも14日である。

第2 上訴に共通する規則

1 上訴することができる者

検察官及び被告人は,上訴することができる(刑事訴訟法351条)。
被告人以外の者で裁判を受けた者も,自己に関する裁判について上訴することができ,法定代理人又は保佐人は被告人のため独立して上訴することができる(同法352条・353条)。

勾留理由の開示があったときは,その開示を請求した者も,被告人のため勾留に対して上訴することができる(刑事訴訟法354条)。
原審における代理人又は弁護人も,被告人のため上訴することができるが,被告人の明示した意思に反して上訴することはできない(同法355条・356条)。

2 期間の計算

上訴期間は裁判の告知を受けた日から進行するが,日を単位とする期間では初日を算入しないのが原則である(刑事訴訟法55条・358条)。
末日が日曜日,土曜日,国民の祝日又は年末年始の法定除外日に当たる場合は,時効期間を除き,その日を期間に算入しない。

法定期間は,所在地間の距離又は交通事情を理由として当然に延びるものではない。
特に,判決宣告によって進行する上訴期間には,刑事訴訟法56条の距離による延長が適用されない。

3 上訴の放棄と取下げ

検察官又は被告人は,上訴を放棄し,又は取り下げることができる(刑事訴訟法359条)。
法定代理人,保佐人又は刑事訴訟法354条の者が放棄又は取下げをするには,被告人の書面による同意が必要である(同法360条)。

死刑又は無期の拘禁刑に処する判決に対する上訴は放棄できない(刑事訴訟法360条の2)。
上訴の取下げ後に同じ裁判へ再度上訴することはできないため,放棄又は取下げは確定時期と拘禁の根拠を確認して行う必要がある。

4 上訴権の回復と在監者の提出

自己又は代理人の責めに帰することができない事由によって上訴期間内に上訴できなかった者は,その事由がやんだ日から上訴期間に相当する期間内に,上訴権回復を請求できる(刑事訴訟法362条・363条)。
単なる失念又は法令の不知で当然に回復される制度ではないため,期間徒過の原因と解消時期を具体的に明らかにする必要がある。

刑事施設にいる被告人が,期間内に上訴申立書を刑事施設の長又はその代理者へ提出したときは,期間内に上訴したものとみなされる(刑事訴訟法366条)。
提出日を争う余地を減らすため,書面の写しと提出記録を確保することが実務上有用である。

第3 控訴

1 控訴申立てと控訴趣意書

地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決に対する控訴は,判決宣告日から14日以内に,第一審裁判所へ控訴申立書を提出して行う(刑事訴訟法372条・373条)。
控訴の裁判権は高等裁判所にあり,簡易裁判所の刑事判決に対する控訴も高等裁判所が扱う(裁判所法16条1号)。

控訴理由は,控訴申立書とは別の控訴趣意書に記載する。
控訴裁判所が指定する提出期限は,その通知が送達された日の翌日から起算して少なくとも21日後でなければならず,控訴趣意書は簡潔に控訴理由を明示する必要がある(刑事訴訟規則236条・240条)。

刑事訴訟法377条又は382条の2に基づく主張では,必要な事実を疎明する資料を添付する。
場合により,検察官又は弁護人の保証書をもって疎明資料に代えることができるが,どの控訴理由でも一律に保証書を添付すれば足りるわけではない(同法376条2項)。

2 控訴理由

刑事訴訟法377条及び378条は,法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと,判決に関与できない裁判官が関与したこと,審判の公開に関する規定への違反,判決理由の欠如又は理由の食い違い等を控訴理由として定める。
これらは,違反が判決へ影響したことを個別に明らかにすることを要しない絶対的控訴理由である。

刑事訴訟法379条は訴訟手続の法令違反,同法380条は法令適用の誤りについて,それぞれ判決に影響を及ぼすことが明らかであることを要求する。
同法382条も,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認を控訴理由としている。

これに対し,刑事訴訟法381条の量刑不当は,同じ「明らかな判決影響性」を条文上の要件とするものではない。
量刑不当を主張する者は,刑が不当であることを信ずるに足りる事実を,訴訟記録及び原裁判所で取り調べた証拠に現れている事実から援用しなければならない。

再審請求ができる事由又は判決後の刑の廃止・変更若しくは大赦も控訴理由となる(刑事訴訟法383条)。
第一審の弁論終結前に存在したが記録等に現れていない事実を新たに主張する場合は,同法382条の2の要件を確認する必要がある。

即決裁判手続による判決については,被告人が有罪である旨を陳述した事実を争うことを理由として控訴することができない(刑事訴訟法403条の2)。
即決裁判手続の判決であっても,法令適用又は量刑等の適法な控訴理由まで失われるわけではない。

3 事実誤認の審査方法

最高裁平成24年2月13日第一小法廷判決(平成23年(あ)第757号・刑集66巻4号482頁)は,控訴審が事実誤認を理由に第一審判決を破棄するには,第一審判決の事実認定が論理則・経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要があるとした。
控訴審は,第一審の証拠評価を離れて一から心証を作り直すのではなく,控訴趣意に即して第一審判断の不合理性を審査する。

事実誤認を主張するときは,単に控訴人側の事実認定を示すだけでは足りない。
第一審判決が重視した証拠,その推認過程及び反対証拠の評価を特定し,どの判断が論理則又は経験則に反するのかを控訴趣意書に示す必要がある。

4 控訴審における事実の取調べ

控訴裁判所は,控訴趣意書に包含された事項を調査し,必要があると認めるときは職権で控訴理由を調査できる(刑事訴訟法392条)。
また,控訴裁判所は必要があるときに事実の取調べをすることができるが,第一審で提出できた証拠が無条件に控訴審で取り調べられるわけではない(同法393条)。

控訴審で新たな証拠を提出する場合は,証明しようとする事実,第一審で請求できなかった理由,証拠の信用性及び原判決への影響を区別して説明することになる。
判決後の示談,弁償,治療又は生活環境の変化等は量刑判断に関係し得るが,個別事情によって評価が変わる。

5 控訴審の裁判と不利益変更禁止

控訴理由がないときは控訴棄却判決となり,控訴理由があるときは原判決を破棄する(刑事訴訟法396条・397条)。
破棄後は,原裁判所へ差し戻し,他の裁判所へ移送し,又は控訴裁判所が自ら判決することがある(同法400条)。

最高裁令和5年6月20日第一小法廷決定(令和4年(あ)第680号)は,第一審の無罪判決を法令適用の誤りを理由に破棄した事案について,具体的事情の下では,新たな事実の取調べをせずに控訴裁判所が有罪判決をしたことが刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとした。
同決定は,無罪判決を破棄する場合に常に事実の取調べが不要であるとしたものではない。

被告人が控訴した事件及び被告人のために控訴した事件では,原判決より重い刑を言い渡すことができない(刑事訴訟法402条)。
最高裁令和6年10月7日第三小法廷決定(令和4年(あ)第1059号・刑集78巻5号281頁)は,被告人のみが上訴した事件で,没収を追徴へ変更したことが具体的事情の下で同条に違反しないとした。

最高裁令和7年7月7日第三小法廷決定(令和6年(あ)第1161号・刑集79巻5号159頁)は,第一審判決を破棄した控訴審判決に刑事訴訟法379条・397条の解釈適用の誤りがあるとしつつ,被告人側の上告について同法411条による破棄をしなかった。
法令違反が認められても,それだけで必ず上告審における職権破棄となるわけではないことを示す例である。

6 令和7年の控訴審統計

令和7年司法統計年報刑事編の第61表及び第62表によれば,控訴審の終局総人員は5,041人であり,破棄は385人であった。
破棄の内訳は破棄自判372人,差戻し・移送13人であり,終局総人員に占める破棄人員の単純比は約7.6%である。

この統計は人員を単位としており,控訴申立ての理由,控訴した主体及び一部破棄の内容を一つの数字で示すものではない。
したがって,約7.6%を個別事件の控訴成功率として用いることはできない。

第4 上告及び上告受理申立て

1 上告理由と職権破棄

高等裁判所が第一審又は第二審としてした判決に対する上告は,判決宣告日から14日以内に,原裁判所である高等裁判所へ上告申立書を提出して行う(刑事訴訟法405条,414条・373条)。
上告理由は,憲法違反若しくは憲法解釈の誤り又は判例違反に限定されている(同法405条)。

刑事訴訟法405条の上告理由がなくても,重大な法令違反,甚しい量刑不当,重大な事実誤認,再審事由又は判決後の刑の廃止・変更若しくは大赦があり,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる場合,最高裁判所は同法411条により職権で原判決を破棄できる。
事実誤認又は量刑不当の主張自体が405条の上告理由になるわけではなく,411条による破棄を求める主張として扱われる点を区別する必要がある。

判例違反がある場合は原則として原判決を破棄するが,判例を変更して原判決を維持することが相当な場合等には刑事訴訟法410条2項が適用される。
最高裁平成15年4月23日大法廷判決(平成13年(あ)第746号・刑集57巻4号467頁)は,従前の判例を変更しながら原判決を維持した例である。

2 上告受理申立てと上告審の審理

法令の解釈に関する重要な事項を含む事件については,最高裁判所が上告審として事件を受理できる(刑事訴訟法406条)。
上告受理申立ては通常の上告と区別され,最高裁判所が申立てを受理した範囲で上告があったものとみなされる。

上告趣意書等から上告理由がないことが明らかなときは,最高裁判所は弁論を経ないで判決により上告を棄却できる(刑事訴訟法408条)。
上告審は法律審を基本とするが,同法411条による職権調査の対象として重大な事実誤認又は量刑不当が問題となることがあるため,「事実問題を一切扱わない」と説明するのは正確ではない。

即決裁判手続による判決について,被告人が有罪である旨を陳述した事実を争う主張には,刑事訴訟法413条の2による上告審の制限がある。
上告審の手続及び弁論が開かれる場合については,最高裁判所における刑事事件の弁論期日(AIリライト)で詳しく説明している。

3 上告棄却判決の訂正と上告棄却決定への異議

上告裁判所の判決に誤りがあることを発見したときは,判決宣告の日から10日以内に判決訂正を申し立てることができる(刑事訴訟法415条1項)。
最高裁判所は,申立てによりこの10日の期間を延長できる(同条3項)。

刑事訴訟法414条・386条1項3号により上告趣意が適法な上告理由に当たらないとして決定で上告を棄却された場合は,その決定に対して異議を申し立てることができる。
最高裁昭和30年2月23日大法廷決定(昭和30年(す)第47号・刑集9巻2号372頁)は,この異議申立ては可能であるが,決定に対する判決訂正の申立ては許されないとした。

異議申立期間は即時抗告に関する規定の準用により3日である。
最高裁令和4年7月20日第三小法廷決定(令和4年(す)第428号)は,上告趣意書提出期間の最終日に弁護人が辞任し,弁護人がない状態になった事案でも,期間内不提出を理由とする上告棄却決定を違法としなかった。

上告棄却決定に対する異議の詳しい手続は,刑事事件の上告棄却決定に対する異議の申立て(AIリライト)を参照されたい。

4 令和7年の上告審統計

令和7年司法統計年報刑事編の第3表及び第76表によれば,第二審判決に対する上告の終局総人員は1,656人であり,破棄は2人であった。
そのほか,上告棄却,取下げ等によって終局しているが,この人員統計を個別事件の見通しへ直接置き換えることはできない。

最高裁判所による被告人側又は検察官側に有利な破棄判決等の一覧は,被告人に有利な最高裁破棄判決等及び検察官に有利な最高裁破棄判決等に掲載している。

第5 抗告,異議申立て,準抗告及び特別抗告

1 通常抗告と即時抗告

裁判所の決定に対しては,特に即時抗告ができる旨の規定がある場合を除き,抗告をすることができる(刑事訴訟法419条)。
ただし,管轄又は訴訟手続に関して判決前にした決定には抗告できないのが原則であり,勾留,保釈,押収等に関する裁判には例外がある(同法420条)。

勾留に関する裁判に対しては抗告できるが,犯罪の嫌疑がないことだけを理由として抗告することはできない(刑事訴訟法420条3項)。
勾留の実体要件及び勾留理由開示については,勾留に関する記事で説明している。

通常抗告には一般的な申立期間の定めがないが,抗告の利益が失われた後に申し立てることはできない(刑事訴訟法421条)。
即時抗告の一般的な申立期間は3日であり,その期間中及び申立てがあった場合は裁判の執行が停止する(同法422条・425条)。

通常抗告の申立てには原則として執行停止の効力がない。
原裁判所又は抗告裁判所は,決定により執行を停止できる(刑事訴訟法424条)。

2 高等裁判所の決定に対する異議申立て

高等裁判所の決定に対して通常抗告又は即時抗告をすることはできない。
その決定が高等裁判所でなければ通常抗告又は即時抗告が許されるものであるときは,その高等裁判所へ異議を申し立てることができる(刑事訴訟法428条)。

異議申立てには即時抗告に関する規定が準用されるため,一般的な期間は3日である。
上告棄却決定に対する異議申立てと同じ名称であっても,対象となる決定と根拠条文を確認する必要がある。

3 裁判官又は捜査機関の処分に対する準抗告

受命裁判官又は受託裁判官その他の裁判官がした忌避申立ての却下,勾留,保釈,押収等に関する一定の裁判について不服がある者は,管轄裁判所へ取消し又は変更を請求できる(刑事訴訟法429条)。
この裁判官の裁判に対する準抗告は,裁判の告知日から3日以内に申し立てる。

検察官又は司法警察職員等がした接見指定,押収又は押収物還付等の処分に不服がある者も,管轄裁判所へ取消し又は変更を請求できる(刑事訴訟法430条)。
刑事訴訟法430条の準抗告には一律の3日という一般期間は定められていないが,処分が終了し,不服申立ての利益が失われれば請求できない。

準抗告には刑事訴訟法424条,426条及び427条が準用される(同法432条)。
そのため,準抗告を申し立てただけで当然に原処分の執行が停止するわけではなく,必要がある場合は執行停止の判断が問題となる。

4 特別抗告

刑事訴訟法上,通常の抗告ができない決定又は命令に対しても,憲法違反又は判例違反を理由として,最高裁判所へ特別抗告をすることができる(刑事訴訟法433条)。
一般的な申立期間は5日であるが,最高裁判所は,同法411条所定の事由があり原決定を取り消さなければ著しく正義に反すると認めるときは,職権で原決定を取り消すことができる(同法434条)。

再審請求に対する所定の決定に関する特別抗告期間は,刑事訴訟法450条の3により14日である。
したがって,5日という期間は特別抗告すべてに例外なく適用されるものではない。

5 準抗告及び特別抗告に関する近時の最高裁決定

最高裁令和7年8月14日第三小法廷決定(令和7年(し)第672号)は,接見等禁止の裁判に対する準抗告棄却決定を特別抗告審で取り消し,事件を原裁判所へ差し戻した。
接見等禁止の必要性は抽象的に判断するのではなく,事件及び関係者の具体的事情に即して判断する必要がある。

最高裁令和7年11月10日第三小法廷決定(令和7年(し)第177号・第178号・刑集79巻8号415頁)は,刑事訴訟法430条の準抗告裁判所が捜査機関の処分の当否を判断するに当たり,処分時に捜査機関が収集していた資料だけでなく,処分時の事実に関して後に収集又は提出された資料も考慮すべきであるとした。
準抗告が処分時に存在した資料だけを閉鎖的に審査する制度ではないことを示している。

最高裁令和7年11月27日第一小法廷決定(令和7年(し)第1043号)は,勾留の必要性を否定した原々裁判を取り消した準抗告決定について,原々裁判の評価が不合理である理由を実質的に示していないとして,原決定を取り消し,検察官の準抗告を棄却した。
原々裁判と異なる結論を採る場合には,その評価が不合理である理由を具体的に示すことが求められる。

第6 非常上告

1 非常上告の目的と申立権者

非常上告は,確定した刑事判決の審判が法令に違反していた場合に,検事総長が最高裁判所へ申し立てる制度である(刑事訴訟法454条)。
被告人又は弁護人が自ら申し立てる通常の不服申立てではなく,法令解釈・適用の統一を主要な目的とする。

非常上告が理由のある場合,最高裁判所は違法な部分を破棄し,又は違法である旨を宣告する(刑事訴訟法458条)。
新たな裁判が被告人に不利益となるかどうかによって処理が分かれるため,法令違反が認められれば常に被告人の刑が軽くなる制度ではない。

2 事実誤認と法令違反の区別

最高裁昭和27年4月23日大法廷判決(昭和25年(さ)第40号・刑集6巻4号685頁)は,確定判決が累犯加重の前提となる事実を誤認したとしても,その事実誤認を前提とする主張は,原則として刑事訴訟法454条の「事件の審判が法令に違反したこと」には当たらないとした。
非常上告では,確定判決が認定した事実を前提とした実体法の適用違反又は手続法上の違反と,認定事実自体の誤りを区別する必要がある。

最高裁令和8年7月10日第二小法廷判決(令和7年(さ)第1号)は,法定刑にない科料を科した略式命令の科料刑部分を破棄したが,正しい法定刑である罰金刑の方が科料刑より重いため,被告人のために新たな有罪判決をしなかった。
同判決は,非常上告で法令違反を是正することと,被告人に不利益な裁判を新たにすることの可否を分けている。

第7 刑事手続のデジタル化と上訴手続

令和7年法律第39号である「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」は,電磁的記録提供命令,電磁的記録の取調べその他の刑事手続のデジタル化に関する改正を定めた。
同法は,附則1条各号に掲げる一部規定を除き,令和9年3月31日までの間に政令で定める日から施行される。

上訴記録,書面提出及び送達等の具体的運用は,改正法の施行区分,最高裁判所規則及び運用システムの整備と併せて確認する必要がある。
令和8年9月7日現在の申立期間及び現行手続を,将来の電子化を理由として変更済みであるかのように扱うことはできない。

第8 関連する手続と記事

再審は,有罪の確定判決に対する非常救済手続であるが,非常上告とは申立権者,目的及び要件が異なる。
再審請求,再審開始決定及び再審関係の不服申立てについては,刑事再審の仕組みと主な再審事件の現在地(AIリライト)で説明している。

上訴審における弁護人の選任及び国選弁護人の取扱いについては,刑事事件の弁護人を参照されたい。
刑事事件記録の送付その他の書記官事務に関する資料は,刑事書記官事務必携の解説に掲載している。

第9 出典・参考資料

1 法令・規則

刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)55条・56条,351条~460条の関係条文。
裁判所法(昭和22年法律第59号)16条。
③最高裁判所「刑事訴訟規則」236条及び240条。
情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和7年法律第39号)及び附則1条。

2 裁判例

最高裁昭和27年4月23日大法廷判決・昭和25年(さ)第40号・刑集6巻4号685頁。
最高裁昭和30年2月23日大法廷決定・昭和30年(す)第47号・刑集9巻2号372頁。
最高裁平成15年4月23日大法廷判決・平成13年(あ)第746号・刑集57巻4号467頁。
最高裁平成24年2月13日第一小法廷判決・平成23年(あ)第757号・刑集66巻4号482頁。
最高裁令和4年7月20日第三小法廷決定・令和4年(す)第428号。
最高裁令和5年6月20日第一小法廷決定・令和4年(あ)第680号・刑集77巻5号155頁。
最高裁令和6年10月7日第三小法廷決定・令和4年(あ)第1059号・刑集78巻5号281頁。
最高裁令和7年7月7日第三小法廷決定・令和6年(あ)第1161号・刑集79巻5号159頁。
最高裁令和7年8月14日第三小法廷決定・令和7年(し)第672号。
最高裁令和7年11月10日第三小法廷決定・令和7年(し)第177号・第178号・刑集79巻8号415頁。
最高裁令和7年11月27日第一小法廷決定・令和7年(し)第1043号。
最高裁令和8年7月10日第二小法廷判決・令和7年(さ)第1号。

3 統計・データ

最高裁判所事務総局「令和7年司法統計年報刑事編」(令和8年6月)第3表,第61表,第62表及び第76表。

4 文献

①伊丹俊彦・合田悦三編集代表『逐条実務刑事訴訟法』(立花書房,2018年)1027頁~1202頁,1225頁~1233頁(PDF実頁1070頁~1245頁,1268頁~1276頁)。
②白取祐司『刑事訴訟法〔第11版〕』(日本評論社,2026年)電子版539頁~569頁,576頁~578頁。
③中山善房ほか編集『大コンメンタール刑事訴訟法 第3版 第9巻〔第351条~第434条〕』(青林書院,2023年)。
④『刑事弁護ビギナーズver.2.1』(現代人文社,2019年)電子版211頁~219頁。