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弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通権(AIリライト)

第1 弁護人制度の位置付け

1 弁護人と弁護人依頼権

弁護人は,被疑者又は被告人の防御権を具体的に行使し,刑事手続において法律上の援助をする者である。
日本国憲法34条は,身体を拘束される者に直ちに弁護人へ依頼する権利を保障し,同法37条3項は,刑事被告人が資格を有する弁護人へ依頼でき,自ら依頼できないときは国が弁護人を付することを定めている。

刑事訴訟法は,公訴提起前の者を主として被疑者,公訴提起後の者を被告人として,弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通の仕組みを定めている。
私費で選任する私選弁護人と裁判所又は裁判官が付する国選弁護人は,選任の経路が異なるが,いずれも刑事訴訟法上の弁護人である。

2 本記事の対象時点

本記事の調査基準日は令和8年9月7日であり,同日施行中の法令を対象とする。
被疑者国選弁護制度の対象が勾留状の発せられた事件全般へ拡大された後の制度及び令和7年6月1日に施行された拘禁刑の用語を反映している。

第2 私選弁護人の選任

1 弁護人を選任できる者

被疑者又は被告人は,いつでも弁護人を選任できる。
法定代理人,保佐人,配偶者,直系の親族及び兄弟姉妹も,本人とは独立して弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条)。

2 弁護人となる者

弁護人は,原則として弁護士の中から選任しなければならない。
簡易裁判所又は地方裁判所では,裁判所の許可を得たときに限り弁護士でない者を弁護人に選任できるが,地方裁判所では別に弁護士である弁護人がいることも必要である(刑事訴訟法31条)。

3 選任の方式と効力

公訴提起前にした弁護人の選任は,弁護人と連署した書面を事件を取り扱う検察官又は司法警察員へ差し出した場合に限り,第一審でも効力を有する(刑事訴訟法32条1項,刑事訴訟規則17条)。
公訴提起後の選任も弁護人と連署した書面を差し出して行い,その選任は審級ごとにする必要がある(刑事訴訟法32条2項,刑事訴訟規則18条)。

一つの事件についてした選任は,公訴提起後に同じ裁判所へ追起訴されて併合された他の事件にも原則として効力を有するが,被告人又は弁護人が異なる申述をしたときは例外となる(刑事訴訟規則18条の2)。

4 弁護人の数と主任弁護人

被疑者の弁護人は各被疑者につき3人までであるが,管轄裁判所が特別の事情を認めて許可した場合は3人を超えることができる(刑事訴訟規則27条)。
被告人の弁護人については,特別の事情があるときに裁判所が各被告人につき3人までに制限できる(刑事訴訟法35条,刑事訴訟規則26条)。

被告人に数人の弁護人がいるときは,その一人を主任弁護人とする(刑事訴訟法33条,刑事訴訟規則19条)。
主任弁護人は被告人が単独で又は全弁護人の合意により指定し,主任弁護人がないときは裁判長が指定する。

第3 国選弁護人

1 被告人国選弁護人

被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任できないときは,裁判所は被告人の請求により弁護人を付さなければならない。
ただし,被告人以外の者が選任した弁護人がいるときは,この請求による国選弁護の対象外となる(刑事訴訟法36条)。

死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる事件は必要的弁護事件であり,弁護人がなければ開廷できない。
この場合に弁護人が出頭しないとき,在廷しなくなったとき又は弁護人がいないときは,裁判長が職権で弁護人を付さなければならない(刑事訴訟法289条)。

必要的弁護事件以外で被告人が国選弁護人を請求するには,資力申告書を提出しなければならない。
資力が50万円以上である場合は,資力申告書の提出に加えて,あらかじめ所定の弁護士会へ私選弁護人の選任を申し出ていることが必要である(刑事訴訟法36条の2,36条の3及び同基準額を定める政令2条)。

被告人が未成年者,70歳以上,耳が聞こえない者若しくは口がきけない者である場合,心神喪失若しくは心神耗弱の疑いがある場合又は裁判所がその他必要と認める場合は,弁護人がいなければ裁判所が職権で弁護人を付すことができる(刑事訴訟法37条)。

2 被疑者国選弁護人

被疑者に勾留状が発せられており,貧困その他の事由により自ら弁護人を選任できないときは,裁判官が被疑者の請求により弁護人を付さなければならない。
勾留を請求された段階の被疑者も請求できるが,被疑者以外の者が選任した弁護人がいる場合又は被疑者が釈放された場合は対象外である(刑事訴訟法37条の2)。

現在の被疑者国選弁護制度は,勾留状が発せられた事件について罪名又は法定刑による対象事件の限定を置いていない。
逮捕されたが勾留を請求されていない段階では,同条による国選弁護人を請求することはできない。

被疑者が国選弁護人を請求する場合も資力申告書の提出が必要であり,資力が50万円以上であるときは,これに加えてあらかじめ所定の弁護士会へ私選弁護人の選任を申し出ていることが必要である(刑事訴訟法37条の3)。

死刑又は無期拘禁刑に当たる事件で国選弁護人を付する場合又は既に付している場合には,裁判官は,特に必要があると認めるとき,職権でもう一人の弁護人を付すことができる(刑事訴訟法37条の5)。

被疑者国選弁護人の選任は,被疑者が釈放されたときに効力を失う。
ただし,その釈放が勾留の執行停止によるときは効力を失わない(刑事訴訟法38条の2)。

3 候補者の指名と裁判所による選任

国選弁護人は弁護士の中から選任され,裁判所又は裁判官が付する(刑事訴訟法38条1項)。
日本司法支援センターは,裁判所若しくは裁判長又は裁判官の求めに応じ,国選弁護人等契約弁護士の中から候補者を指名して通知し,その通知を受けた裁判所側が国選弁護人を選任する(総合法律支援法30条1項6号,刑事訴訟規則29条及び29条の3)。

4 国選弁護人の費用

国選弁護人の報酬及び費用は刑事手続の訴訟費用に含まれるため,国選弁護人であれば常に本人の最終負担がないとは限らない(総合法律支援法39条,刑事訴訟費用等に関する法律2条)。
刑の言渡しをするときは,被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させるのが原則であるが,被告人が貧困のため納付できないことが明らかなときは例外となる(刑事訴訟法181条1項)。

5 国選弁護人に支給される報酬及び費用

国選弁護人に支給される報酬及び費用は,日本司法支援センターと国選契約弁護士との契約約款及び報酬・費用の算定基準に基づいて定まる(総合法律支援法36条)。
被疑者段階では接見等の回数及び弁護期間,被告人段階では公判期日等の回数及び実質審理時間等が主要な労力指標とされ,身体拘束からの解放,示談,無罪その他の一定の成果について加算が設けられている。

ただし,法テラスから国選弁護人へ支給される報酬及び費用の算定と,被告人が訴訟費用を最終的に負担するかどうかは別の問題である。
また,報酬又は費用の独立した支給項目になっていない活動であっても,国選弁護人の職務として不要であることを意味しない(日本司法支援センター法律事務取扱規程4条14号及び15号)。

現行の算定方法については,法テラス「国選 手続の流れ」及び「国選弁護人の報酬・費用―接見,身柄釈放,保釈,謄写,交通費,通訳及び14営業日の請求期限」を参照されたい。

第4 弁護人との接見交通

1 接見交通権の内容

身体の拘束を受けている被疑者又は被告人は,弁護人又は弁護人を選任できる者の依頼を受けて弁護人になろうとする者と,立会人なしで接見し,書類又は物を授受できる(刑事訴訟法39条1項)。
接見交通権は,身体を拘束された者が弁護人へ相談し,助言その他の援助を受ける機会を確保するための権利である。

弁護人との接見交通と家族その他の一般面会は,法的根拠及び制限の仕組みが異なる。
一般面会が制限されていることだけを理由として,弁護人との接見交通も同じように扱うことはできない。

2 公訴提起前の接見指定

検察官,検察事務官又は司法警察職員は,捜査のため必要があるとき,公訴提起前に限って接見又は授受の日時,場所及び時間を指定できる。
ただし,その指定は,被疑者が防御を準備する権利を不当に制限するものであってはならない(刑事訴訟法39条3項)。

最高裁平成11年3月24日大法廷判決は,捜査機関が接見の申出を受けたときは原則としていつでも機会を与えるべきであり,接見指定は接見を認めると取調べの中断等により捜査へ顕著な支障が生じる場合に限られるとした。
同判決は,その場合も,捜査機関が弁護人等と協議してできる限り速やかな接見の日時等を指定し,被疑者が防御を準備できる措置を採るべきであると判示した。

3 保護室収容中の未決拘禁者との面会

最高裁平成30年10月25日第一小法廷判決は,保護室に収容中の未決拘禁者について弁護人から面会の申出があった事案を扱った。
同判決は,申出を告げてもなお保護室収容の要件へ該当することが明らかな特段の事情がない限り,刑事施設の長は直ちに申出の事実を本人へ告げ,その反応等を確認した上で面会の許否を判断すべきであるとした。

同判決は,上記の特段の事情がないのに申出を本人へ告げず,保護室収容中であることだけを理由として面会を許さない措置は,接見交通権を侵害し,国家賠償法1条1項の適用上違法となると判示した。
この判断は,保護室収容中という具体的な場面について示されたものである。

第5 利益相反と国選弁護人の解任

1 複数の被疑者又は被告人を弁護する場合

被告人又は被疑者の利害が相反しないときは,同一の弁護人が数人を弁護できる(刑事訴訟規則29条5項)。
共犯者間の利益相反については,共犯者の弁護人の利益相反で扱っている。

2 国選弁護人の解任事由

裁判所は,①私選弁護人が選任されるなど国選弁護人を付する必要がなくなったとき,②被告人と弁護人の利益が相反し職務継続が相当でないとき,③心身の故障その他の事由により職務遂行が不可能又は困難となったとき,④弁護人が任務に著しく反して職務継続が相当でないとき,又は⑤弁護人への暴行若しくは脅迫その他被告人の責めに帰すべき事由により職務継続が相当でないときに,国選弁護人を解任できる(刑事訴訟法38条の3第1項)。

解任に先立って弁護人の意見を聴かなければならず,解任に当たって被告人の権利を不当に制限してはならない(刑事訴訟法38条の3第2項及び3項)。
公訴の提起前は,裁判官が付した弁護人の解任は,裁判官が行う(刑事訴訟法38条の3第4項)。
国選弁護人は,辞任の申出をした場合であっても,裁判所が辞任の申出について正当な理由があると認めて解任しない限り,その地位を失わない(最高裁昭和54年7月24日第三小法廷判決)。
そのため,被告人からの暴行,脅迫等によって職務の継続が困難になった国選弁護人が辞任を申し出るときは,同条1項5号に当たる具体的な事実を示して,裁判所(公訴提起前は裁判官)の解任を求めることになる。
弁護士に対する業務妨害への対策全般は,弁護士に対する業務妨害と対策――日弁連の宣言,濫用的懲戒請求,国選弁護人の解任及び法律事務所のカスハラ対策(AI作成)で扱っている。
弁護人の職務規律については,刑事弁護に関する弁護士職務基本規程で扱っている。

第6 関連する刑事手続の記事

身体拘束の各段階は,逮捕及び勾留で扱っている。
起訴後の身柄解放は保釈,第一審判決後の手続は刑事事件の上訴及び不服申立て-控訴・上告・抗告等の期間と手続(AI作成)を参照されたい。

第7 出典・参考資料

1 法令

日本国憲法34条及び37条
刑事訴訟法30条~39条,181条及び289条
刑事訴訟法第三十六条の二の資産及び同法第三十六条の三第一項の基準額を定める政令2条
総合法律支援法30条及び39条
刑事訴訟費用等に関する法律2条

2 最高裁判所規則及び制度運用資料

①最高裁判所,刑事訴訟規則(令和8年5月21日現在)9頁~16頁
②日本司法支援センター,国選 手続の流れ(令和8年9月6日閲覧)

3 裁判例

最高裁平成11年3月24日大法廷判決(平成5年(オ)第1189号,民集53巻3号514頁)
最高裁平成30年10月25日第一小法廷判決(平成29年(受)第990号,民集72巻5号940頁)
最高裁昭和54年7月24日第三小法廷判決(昭和51年(あ)第798号,刑集33巻5号416頁)