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弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通権(AIリライト)

弁護士への相談と選任を手続段階から探す

現在の状況読む箇所と確認する事項
逮捕直後・まだ勾留前当番・72時間援助・私選から国選への移行。当番接見,援助,私選の契約を区別し,利用条件・費用を弁護士会等に確認する。
被疑者に勾留状が発せられた被疑者国選弁護人。請求先,資力申告等の条件を確認する。逮捕直後に当然に選任される制度ではない。
起訴された被告人国選弁護人と国選弁護人の費用を確認する。
家族から選任したい・面会したい弁護人を選任できる者と弁護人との接見交通を確認する。家族の面会と弁護士の接見は別である。

在宅で捜査を受けている場合も,私選弁護人の選任を検討できる。利用する制度と契約・選任の状態を確認し,弁護士への相談と弁護人としての選任を混同しない。

刑事事件全体の分岐と,立場別の確認事項は,刑事事件とは―民事事件との違い,手続の流れと立場別の対応を参照されたい。

第1 弁護人制度の位置付け

1 弁護人と弁護人依頼権

弁護人は,被疑者又は被告人の防御権を具体的に行使し,刑事手続において法律上の援助をする者である。
日本国憲法34条は,身体を拘束される者に直ちに弁護人へ依頼する権利を保障し,同法37条3項は,刑事被告人が資格を有する弁護人へ依頼でき,自ら依頼できないときは国が弁護人を付することを定めている。

刑事訴訟法は,公訴提起前の者を主として被疑者,公訴提起後の者を被告人として,弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通の仕組みを定めている。
私費で選任する私選弁護人と裁判所又は裁判官が付する国選弁護人は,選任の経路が異なるが,いずれも刑事訴訟法上の弁護人である。

2 本記事の対象時点

本記事の調査基準日は令和8年9月7日であり,同日施行中の法令を対象とする。
被疑者国選弁護制度の対象が勾留状の発せられた事件全般へ拡大された後の制度及び令和7年6月1日に施行された拘禁刑の用語を反映している。
第2の3の弁護人選任届に関する方式・効力は,令和8年10月11日時点の施行中の刑事訴訟法及び刑事訴訟規則を確認して補足した。

第2 私選弁護人の選任

1 弁護人を選任できる者

被疑者又は被告人は,いつでも弁護人を選任できる。
法定代理人,保佐人,配偶者,直系の親族及び兄弟姉妹も,本人とは独立して弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条)。

2 弁護人となる者

弁護人は,原則として弁護士の中から選任しなければならない。
簡易裁判所又は地方裁判所では,裁判所の許可を得たときに限り弁護士でない者を弁護人に選任できるが,地方裁判所では別に弁護士である弁護人がいることも必要である(刑事訴訟法31条)。

3 弁護人選任届の提出先と効力

公訴提起前の選任が第一審にも効力を有するためには,選任権者と弁護人が連署した書面を,事件を取り扱う検察官又は司法警察員へ差し出すことが必要である(刑事訴訟法32条1項,刑事訴訟規則17条)。
規則17条は第一審への効力の条件を定めたものであり,起訴前の選任関係が届出なしでは一切成立しないことを定めた規定として一般化してはならない。
紙の選任届では,規則60条により選任権者と弁護人の双方の署名押印を原則とする。署名不能時の代書又は押印不能時の指印は,規則61条の方式による。

公訴提起後の選任は,弁護人と連署した書面を裁判所へ差し出して行い,審級ごとにする必要がある(刑事訴訟法32条2項,刑事訴訟規則18条)。
この段階では,同規則60条の2第2項2号により,弁護人又は弁護人となろうとする者は署名押印に代えて記名押印をすることができるが,記名だけで押印を欠く書面まで許容されるわけではない。

準抗告等の緊急申立てでは,選任届原本の提出先,到達の有無及び裁判所が選任の事実を確認できる状態かを,申立て前に確認する必要がある。
選任届の写しを保存して申立書へ添付することは確認を円滑にするが,原本を法定の提出先へ差し出す要件の代わりになるとは限らない。
詳しくは,弁護人選任届の署名押印と申立資格を参照されたい。

一つの事件についてした選任は,公訴提起後に同じ裁判所へ追起訴されて併合された他の事件にも原則として効力を有するが,被告人又は弁護人が異なる申述をしたときは例外となる(刑事訴訟規則18条の2)。

確認する点内容
選任権者本人又は法30条2項の独立の選任権者
起訴前の提出先事件を扱う検察官又は司法警察員
起訴後の提出先事件が係属する裁判所
効力・審級起訴前は規則17条の条件で第一審へ及び,起訴後は審級ごとに選任

書式・各欄の意味・家族等による選任は,弁護人選任届の書式・書き方・提出先を参照されたい。
不備と申立資格は上記の専門記事が,勾留前援助から国選への移行は,72時間援助中の弁護人選任届が扱っている。

4 弁護人の数と主任弁護人

被疑者の弁護人は各被疑者につき3人までであるが,管轄裁判所が特別の事情を認めて許可した場合は3人を超えることができる(刑事訴訟規則27条)。
被告人の弁護人については,特別の事情があるときに裁判所が各被告人につき3人までに制限できる(刑事訴訟法35条,刑事訴訟規則26条)。

被告人に数人の弁護人がいるときは,その一人を主任弁護人とする(刑事訴訟法33条,刑事訴訟規則19条)。
主任弁護人は被告人が単独で又は全弁護人の合意により指定し,主任弁護人がないときは裁判長が指定する。

第3 国選弁護人

1 被告人国選弁護人

被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任できないときは,裁判所は被告人の請求により弁護人を付さなければならない。
ただし,被告人以外の者が選任した弁護人がいるときは,この請求による国選弁護の対象外となる(刑事訴訟法36条)。

死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる事件は必要的弁護事件であり,弁護人がなければ開廷できない。
この場合に弁護人が出頭しないとき,在廷しなくなったとき又は弁護人がいないときは,裁判長が職権で弁護人を付さなければならない(刑事訴訟法289条)。

必要的弁護事件以外で被告人が国選弁護人を請求するには,資力申告書を提出しなければならない。
資力が50万円以上である場合は,資力申告書の提出に加えて,あらかじめ所定の弁護士会へ私選弁護人の選任を申し出ていることが必要である(刑事訴訟法36条の2,36条の3及び同基準額を定める政令2条)。

被告人が未成年者,70歳以上,耳が聞こえない者若しくは口がきけない者である場合,心神喪失若しくは心神耗弱の疑いがある場合又は裁判所がその他必要と認める場合は,弁護人がいなければ裁判所が職権で弁護人を付すことができる(刑事訴訟法37条)。

2 被疑者国選弁護人

被疑者に勾留状が発せられており,貧困その他の事由により自ら弁護人を選任できないときは,裁判官が被疑者の請求により弁護人を付さなければならない。
勾留を請求された段階の被疑者も請求できるが,被疑者以外の者が選任した弁護人がいる場合又は被疑者が釈放された場合は対象外である(刑事訴訟法37条の2)。

現在の被疑者国選弁護制度は,勾留状が発せられた事件について罪名又は法定刑による対象事件の限定を置いていない。
逮捕されたが勾留を請求されていない段階では,同条による国選弁護人を請求することはできない。

被疑者が国選弁護人を請求する場合も資力申告書の提出が必要であり,資力が50万円以上であるときは,これに加えてあらかじめ所定の弁護士会へ私選弁護人の選任を申し出ていることが必要である(刑事訴訟法37条の3)。

死刑又は無期拘禁刑に当たる事件で国選弁護人を付する場合又は既に付している場合には,裁判官は,特に必要があると認めるとき,職権でもう一人の弁護人を付すことができる(刑事訴訟法37条の5)。

被疑者国選弁護人の選任は,被疑者が釈放されたときに効力を失う。
ただし,その釈放が勾留の執行停止によるときは効力を失わない(刑事訴訟法38条の2)。

3 候補者の指名と裁判所による選任

国選弁護人は弁護士の中から選任され,裁判所又は裁判官が付する(刑事訴訟法38条1項)。
日本司法支援センターは,裁判所若しくは裁判長又は裁判官の求めに応じ,国選弁護人等契約弁護士の中から候補者を指名して通知し,その通知を受けた裁判所側が国選弁護人を選任する(総合法律支援法30条1項6号,刑事訴訟規則29条及び29条の3)。

大阪の被疑者国選弁護人選任事務処理手順書(平成30年6月1日改訂)8頁~9頁は,法テラスへの送信・受信確認と,候補者の指名後に裁判官が選任する段階を分けている。
14頁は,選任通知を留置施設,検察庁の当直及び法テラスへ送る取扱いを記載している。
送信完了,受信,候補指名,裁判官の選任及び通知の到達は,それぞれ別の確認事項であり,当番弁護士として接見したことだけで国選選任が完了したとはいえない。

同手順書3頁には,資力50万円以上の場合の不在・不受任通知等の確認も記載されている。
50万円を一律の利用上限とせず,資力申告,弁護士会への申出及び通知を確認する必要がある。
旧資料の連絡先・FAX・時刻を現在の共通手順として流用せず,現在の担当窓口に確認する。
詳しくは,大阪地裁の令状事務―勾留意見書,休日保釈,国選選任と開示資料の読み方で整理している。

4 国選弁護人の費用

国選弁護人の報酬及び費用は刑事手続の訴訟費用に含まれるため,国選弁護人であれば常に本人の最終負担がないとは限らない(総合法律支援法39条,刑事訴訟費用等に関する法律2条)。
刑の言渡しをするときは,被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させるのが原則であるが,被告人が貧困のため納付できないことが明らかなときは例外となる(刑事訴訟法181条1項)。

負担の裁判が確定した後でも,貧困のため完納できない場合には,その裁判の確定後20日以内に,全部又は一部の執行免除を申し立てる制度がある(刑事訴訟法500条)。
判決時の不負担の判断と,確定後の執行免除は,手続と期限が異なる。
納付告知を受けてから20日を数えるのではないため,判決内容と確定日を弁護人と確認する必要がある。

申立書では,完納できない具体的な理由を示す必要があり,収入,資産,扶養及び生活費・医療費等を整理する。
申立先は原則として負担の裁判を言い渡した裁判所であるが,上訴審で事件が終結したときは,全部の訴訟費用についてその上訴裁判所となる(刑事訴訟規則295条の2・295条の4)。
詳しくは,刑事事件の裁判の執行―訴訟費用免除を参照されたい。

5 国選弁護人に支給される報酬及び費用

国選弁護人に支給される報酬及び費用は,日本司法支援センターと国選契約弁護士との契約約款及び報酬・費用の算定基準に基づいて定まる(総合法律支援法36条)。
被疑者段階では接見等の回数及び弁護期間,被告人段階では公判期日等の回数及び実質審理時間等が主要な労力指標とされ,身体拘束からの解放,示談,無罪その他の一定の成果について加算が設けられている。

ただし,法テラスから国選弁護人へ支給される報酬及び費用の算定と,被告人が訴訟費用を最終的に負担するかどうかは別の問題である。
また,報酬又は費用の独立した支給項目になっていない活動であっても,国選弁護人の職務として不要であることを意味しない(日本司法支援センター法律事務取扱規程4条14号及び15号)。

現行の算定方法については,法テラス「国選 手続の流れ」及び「国選弁護人の報酬・費用―接見,身柄釈放,保釈,謄写,交通費,通訳及び14営業日の請求期限」を参照されたい。

6 資力基準と当番・72時間援助・私選から国選への移行

資力50万円は,国選弁護を一律に受けられなくなる上限ではない。
基準額以上の場合には,所定の弁護士会への私選弁護人選任の申出という追加の手続が問題となり,自ら選任できない事情と区別して確認する必要がある(刑訴法37条の2・37条の3,資力に関する政令1条・2条)。

平成26年4月版の東京地裁の国選関係マニュアルには,旧制度の対象事件や,当時の連絡時刻・書類の引継ぎが記載されている(総合資料415頁~418頁,430頁~446頁及び460頁~461頁)。
現在は勾留状が発せられた事件について罪名・法定刑による対象限定はないため,旧版の対象事件をそのまま適用することはできない。

当番・私選から国選へ移る場面では,現在の選任関係,本人の請求意思,資力申告等の必要書類,候補者の指名,裁判所の選任及び選任通知の受領を,順に確認することが有用である。
候補者に指名される予定であることだけで国選弁護人への選任が完了したとはいえず,旧資料にある17時などの時刻も,請求権が消滅する法定期限ではない。
具体的な確認事項は東京地裁の令状資料から考える休日・夜間の刑事弁護で整理している。

当番接見,勾留前の法律援助,通常の私選弁護及び被疑者国選は,費用の根拠と刑事訴訟法上の選任関係が異なる。
法律援助を利用して活動していても,そのことだけで私選弁護人選任又は国選弁護人選任が成立するわけではない。

勾留前援助中に弁護人選任届を提出するか,国選候補者としての継続希望をどの書式で知らせるかは,地域・時期の制度設計により異なる。
選任届の提出により私選弁護人がいる状態になると,国選選任の前提に影響することがあるため,他地域の書式をそのまま流用せず,所属弁護士会,法テラス地方事務所及び裁判所の現行手順を確認する必要がある。
詳しくは,72時間援助中の弁護人選任届―当番弁護士から被疑者国選へ移るときの注意点(AI作成)を参照されたい。

第4 弁護人との接見交通

1 接見交通権の内容

身体の拘束を受けている被疑者又は被告人は,弁護人又は弁護人を選任できる者の依頼を受けて弁護人になろうとする者と,立会人なしで接見し,書類又は物を授受できる(刑事訴訟法39条1項)。
接見交通権は,身体を拘束された者が弁護人へ相談し,助言その他の援助を受ける機会を確保するための権利である。

弁護人との接見交通と家族その他の一般面会は,法的根拠及び制限の仕組みが異なる。
一般面会が制限されていることだけを理由として,弁護人との接見交通も同じように扱うことはできない。

2 公訴提起前の接見指定

検察官,検察事務官又は司法警察職員は,捜査のため必要があるとき,公訴提起前に限って接見又は授受の日時,場所及び時間を指定できる。
ただし,その指定は,被疑者が防御を準備する権利を不当に制限するものであってはならない(刑事訴訟法39条3項)。

最高裁平成11年3月24日大法廷判決は,捜査機関が接見の申出を受けたときは原則としていつでも機会を与えるべきであり,接見指定は接見を認めると取調べの中断等により捜査へ顕著な支障が生じる場合に限られるとした。
同判決は,その場合も,捜査機関が弁護人等と協議してできる限り速やかな接見の日時等を指定し,被疑者が防御を準備できる措置を採るべきであると判示した。

最高裁平成12年6月13日判決は,弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は,弁護人の選任を目的とし,今後の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって,憲法上の保障の出発点を成すものであるから,これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要であるとした。
同判決は,初回の接見の申出を受けた捜査機関は,接見指定の要件が具備された場合でも,弁護人となろうとする者と協議して,即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し,これが可能なときは,留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り,引致後直ちに行うべき手続及びこれに引き続く指紋採取,写真撮影等の所要の手続を終えた後,比較的短時間であっても,時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであるとした。
その上で,このような場合に取調べを理由としてその時点での接見を拒否するような指定をし,初回の接見の機会を遅らせることは,被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するものであるとした。

したがって,接見指定の適否は,①刑事訴訟法39条3項本文の「捜査のため必要があるとき」に当たるか(平成11年大法廷判決)と,②その要件がある場合でも,指定の内容が同項ただし書に反して防御の準備をする権利を不当に制限していないか(初回接見については平成12年判決)の二段階で確認する必要がある。
取調べ中であること又は間近い時に取調べの確実な予定があることは①の問題であり,それだけで②の適否まで決まるわけではない。

接見指定の適否を後から検討できるようにするためには,待機した時間の合計だけでなく,申出から実施までの経過を時刻ごとに残すことが有用である。
例えば,次の項目を一つの時系列記録にまとめることが考えられる。

段階・項目記録する内容
接見の申出申出の日時,連絡・訪問の方法,申出先と担当者,初回接見か,選任や助言のために希望した時間。
受領と応答申出を受けた者と時刻,回答した者と時刻,回答の具体的な内容。受領と判断・回答を同じ時刻として扱わない。
指定の理由現に取調べ中なのか,間近い時の確実な予定なのか,その他どのような理由が説明されたか。説明された事実と弁護人の推測を分ける。
調整の経過希望する接見時間,即時又は近接した時点での短時間接見等の提案,それに対する回答,代替の日時及び協議の経過。
指定と実施指定された日時・場所・時間,実際の接見開始・終了,実施されなかった場合の理由と再申出の経過。
防御準備への影響本人の状態,必要な助言や打合せの内容,接見の遅れにより準備できなかった事項と公判等への具体的な支障。

第4の4で挙げる事件ごとの身体拘束の状態や選任範囲も,関係する場合は併せて記録する。
この記録は法定の様式ではなく,指定の根拠,調整の可能性及び防御への影響を検討するための整理例である。
待機時間の長さだけで違法性を決めず,前記の二段階の判断に対応させて,接見日時等の協議や必要な救済を検討する。

3 保護室収容中の未決拘禁者との面会

最高裁平成30年10月25日第一小法廷判決は,保護室に収容中の未決拘禁者について弁護人から面会の申出があった事案を扱った。
同判決は,申出を告げてもなお保護室収容の要件へ該当することが明らかな特段の事情がない限り,刑事施設の長は直ちに申出の事実を本人へ告げ,その反応等を確認した上で面会の許否を判断すべきであるとした。

同判決は,上記の特段の事情がないのに申出を本人へ告げず,保護室収容中であることだけを理由として面会を許さない措置は,接見交通権を侵害し,国家賠償法1条1項の適用上違法となると判示した。
この判断は,保護室収容中という具体的な場面について示されたものである。

4 起訴済み事件と余罪の身柄拘束が競合する場合

起訴済みの被告事件について,余罪の捜査があるというだけで接見指定を行うことはできない。
最高裁昭和41年7月26日第三小法廷決定(昭和41年(し)第39号,刑集20巻6号728頁)は,この場面の接見拒否と準抗告を扱っている。
ただし,余罪についても現に逮捕・勾留されている場合は,同じ問題として扱えない。

最高裁昭和55年4月28日第一小法廷決定(昭和55年(し)第39号,刑集34巻3号178頁)は,被告事件の勾留と余罪被疑事件の逮捕・勾留が競合するときは,被告事件の防御権を不当に制限しない限り,接見指定権を行使できるとした。
さらに,最高裁平成13年2月7日第二小法廷決定(平成13年(し)第48号)は,両事件の勾留が競合する場合に,被告事件だけの弁護人として選任された者にも,この限定の下で指定権を行使できるとした。

指定への対応では,①事件ごとの起訴・逮捕・勾留の状態,②弁護人の選任範囲,③接見申出と指定の日時・時間,④指定の理由,⑤公判期日や本人との打合せに生じる具体的な支障を整理する。
「起訴後だから一切指定できない」「余罪捜査があれば常に指定できる」という説明はいずれも正確ではない。
指定の根拠と防御権への影響を分け,必要に応じて接見日時等の協議や準抗告を検討する。

第5 利益相反と国選弁護人の解任

1 複数の被疑者又は被告人を弁護する場合

被告人又は被疑者の利害が相反しないときは,同一の弁護人が数人を弁護できる(刑事訴訟規則29条5項)。
共犯者間の利益相反については,共犯者の弁護人の利益相反で扱っている。

2 国選弁護人の解任事由

裁判所は,①私選弁護人が選任されるなど国選弁護人を付する必要がなくなったとき,②被告人と弁護人の利益が相反し職務継続が相当でないとき,③心身の故障その他の事由により職務遂行が不可能又は困難となったとき,④弁護人が任務に著しく反して職務継続が相当でないとき,又は⑤弁護人への暴行若しくは脅迫その他被告人の責めに帰すべき事由により職務継続が相当でないときに,国選弁護人を解任できる(刑事訴訟法38条の3第1項)。

解任に先立って弁護人の意見を聴かなければならず,解任に当たって被告人の権利を不当に制限してはならない(刑事訴訟法38条の3第2項及び3項)。
公訴の提起前は,裁判官が付した弁護人の解任は,裁判官が行う(刑事訴訟法38条の3第4項)。
国選弁護人は,辞任の申出をした場合であっても,裁判所が辞任の申出について正当な理由があると認めて解任しない限り,その地位を失わない(最高裁昭和54年7月24日第三小法廷判決)。
そのため,被告人からの暴行,脅迫等によって職務の継続が困難になった国選弁護人が辞任を申し出るときは,同条1項5号に当たる具体的な事実を示して,裁判所(公訴提起前は裁判官)の解任を求めることになる。
弁護士に対する業務妨害への対策全般は,弁護士に対する業務妨害と対策――日弁連の宣言,濫用的懲戒請求,国選弁護人の解任及び法律事務所のカスハラ対策(AI作成)で扱っている。
弁護人の職務規律については,刑事弁護に関する弁護士職務基本規程で扱っている。

第6 関連する刑事手続の記事

当番接見から勾留前援助を経て被疑者国選へ移る際の選任関係は,72時間援助中の弁護人選任届―当番弁護士から被疑者国選へ移るときの注意点(AI作成)で扱っている。
身体拘束の各段階は,逮捕及び勾留で扱っている。
起訴後の身柄解放は保釈,選任届の形式・準抗告時の資格確認・控訴後の保釈請求は弁護人選任届の署名押印と申立資格,第一審判決後の手続は刑事事件の上訴及び不服申立て-控訴・上告・抗告等の期間と手続(AI作成)を参照されたい。

選任・接見交通権の制度と,弁護人がどのような活動に努めるべきかという職務上の規律は区別する必要がある。
最善の弁護,必要な接見,身体拘束からの解放,防御権の説明は,刑事弁護人の基本義務―46条・47条・48条を参照されたい。

第7 出典・参考資料

1 法令

①日本国憲法34条及び37条
②刑事訴訟法30条~39条,181条及び289条
③刑事訴訟法第三十六条の二の資産及び同法第三十六条の三第一項の基準額を定める政令2条
④総合法律支援法30条及び39条
⑤刑事訴訟費用等に関する法律2条

2 最高裁判所規則及び制度運用資料

①最高裁判所,刑事訴訟規則(令和8年5月21日現在)17条・18条・60条・60条の2第2項2号及び18条の2
②日本司法支援センター,国選 手続の流れ(令和8年9月6日閲覧)

3 裁判例

①最高裁平成11年3月24日大法廷判決(平成5年(オ)第1189号,民集53巻3号514頁)
②最高裁平成30年10月25日第一小法廷判決(平成29年(受)第990号,民集72巻5号940頁)
③最高裁昭和54年7月24日第三小法廷判決(昭和51年(あ)第798号,刑集33巻5号416頁)
④最高裁平成12年6月13日第三小法廷判決(平成7年(オ)第105号,民集54巻5号1635頁)

⑤最高裁昭和41年7月26日第三小法廷決定(昭和41年(し)第39号,刑集20巻6号728頁)
⑥最高裁昭和55年4月28日第一小法廷決定(昭和55年(し)第39号,刑集34巻3号178頁)
⑦最高裁平成13年2月7日第二小法廷決定(平成13年(し)第48号)