目次
1 総論
2 必要的保釈(権利保釈)
3 任意的保釈(権利保釈)
4 義務的保釈
5 保釈に関する検察官の意見
6 保釈保証金及び保釈の手続
7 保釈の判断に対する抗告審
8 被告人の保釈に関する統計
9 保釈者等の視察に関する犯罪捜査規範の条文
10 出国確認の留保,カルロス・ゴーンの密出国及び国外逃亡被疑者等の追跡
11 GPS端末の実証事件に係る業務委託
12 保釈保証金に関する弁護士会照会
13 債務者が刑事事件の弁護人に対して預託金返還請求権を有する場合における債権回収方法
14 保管金事務処理システム
15 保釈保証金の還付
16 関連記事その他
1 総論
(1) 保釈とは,勾留を観念的には維持しながら,保釈保証金の納付を条件として被告人に対する勾留の執行を停止して,その身体拘束を解く裁判及びその執行をいいます。
(2) 保釈は,被告人が召喚を受けても出頭しなかったり,逃亡したりした場合には,保証金を没収することとして被告人に経済的・精神的負担を与えて被告人の出頭を確保する制度です。
(3) 保釈の種類としては,①必要的保釈(刑訴法89条),②任意的保釈(刑訴法90条)及び③義務的保釈(刑訴法91条)の3種があります。
(4) 勾留されている被告人又はその弁護人,法定代理人,保佐人,配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹は,保釈の請求をすることができます(刑訴法88条1項)。
2 必要的保釈(権利保釈)
(1) 裁判所は,保釈の請求があった場合,以下の事由がある場合を除き,保釈を許す必要があります(刑訴法89条)。
① 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
② 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③ 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④ 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑤ 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥ 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
(2) 禁錮以上の刑に処する判決の宣告があったときは,必要的保釈の適用がなくなります(刑訴法344条)。
罪証隠滅の対象を「重要な情状事実」まで広げ(これは経緯や常習性を含むので余罪含め何でもありとなる。)、罪証隠滅の方法を「虚偽の証人の捏造」まで広げ、その実効性も緩い審査にした結果の「全件罪証隠滅主義」が、裁判所の多数派の認識だと思われる。
— 心の貧困 (@mental_poverty) December 26, 2020
権利保釈裁量保釈で思い出したけど、〇年目のとき、高裁に保釈請求したんだけど、テンプレ使い回しで権利保釈について論じた保釈請求書をそのまま出して、書記官から「先生、控訴審では権利保釈ないですよぉ(ニチャア)」ってご教示の電話いただいたことある。
— しばたろう (@shiba_lawyer226) April 10, 2023
3 任意的保釈(権利保釈)
(1) 義務的保釈の対象とならない場合でも,被告人に対して必要以上の苦痛を与えないため,公判廷への出頭を確保できる場合,裁判所の自由裁量により,職権で保釈してもらえます(刑訴法90条)。
(2) 被告人が甲,乙,丙の三個の公訴事実について起訴され,そのうち甲事実のみについて勾留状が発せられている場合において,裁判所は,甲事実が刑訴法89条3号に該当し,従って,権利保釈は認められないとしたうえ,なお,同法90条により保釈が適当であるかどうかを審査するにあたっては,甲事実の事案の内容や性質,あるいは被告人の経歴,行状,性格等の事情をも考察することが必要であり,そのための一資料として,勾留状の発せられていない乙,丙各事実をも考慮することを禁ずべき理由はありません(最高裁昭和44年7月14日決定)。
4 義務的保釈
(1) 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは,裁判所は,保釈請求権者の請求により,又は職権で,決定を以て勾留を取り消し,又は保釈を許さなければなりません(刑訴法91条1項)。
(2) 憲法38条2項は不当に長い抑留,拘禁後の自白の証拠能力を否定しており,直接的ではないにせよ不当に長い被告人の拘禁を禁止する趣旨を表しているといえます。
そこで,刑訴法91条はそれに基づいて勾留による拘禁が不当に長くなったときに裁判所に義務的に勾留の取消又は保釈を許すことを命じたものです。
5 保釈に関する検察官の意見
(1) 裁判所は,保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには,検察官の意見を聴く必要があります(刑訴法92条1項)。
(2) 公訴提起後第1回公判期日前に弁護人が申請した保釈請求に対する検察官の意見書の謄写を許可しなかった裁判官の処分が許されないことがあります(最高裁平成28年10月25日決定)。
求意見に関する手続が迅速になされることは被告人に対しても利益であることは間違いないだろうが、それを裁判所が弁護士サイドには秘して行い、弁護士へのFAX送信は絶許というのは、あまりにも不正義ではないか。
検察には保釈請求書一式がまるごとファクスされている https://t.co/FLCx1px8Eo
— venomy (@idleness_venomy) November 17, 2022
検察庁が理想とする公判は、被告人が認めて何事もなく1回結審することです。なので捜査検事はなるべく自白を得ようと躍起になる。保釈すると息を吹き返すから徹底して身柄拘束を続ける。捜査重視・公判軽視の基本的な姿勢は、私がPだった90年代から今に至るまで、殆ど変わっていないと思います
— 弁護士 市川 寛 (@imarockcaster42) April 9, 2023
6 保釈保証金及び保釈の手続
(1)ア 裁判所は,保釈を許す場合,保釈保証金の金額を定める必要があります(刑訴法93条1項)。
イ 保釈保証金の金額は,犯罪の性質及び情状,証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して,被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければなりません(刑訴法93条2項)。
(2) 裁判所は,保釈を許す場合,被告人の住居を制限し,その他適当な条件を付けることができます(刑訴法93条3項)。
実務上は,召喚された場合の出頭,旅行制限,罪証隠滅を疑われる行為の禁止,善行保持,再犯禁止等の条件が付されることが多いです。
(3) 保釈を許す決定は,保釈保証金の納付があった後でなければ,これを執行することができません(刑訴法94条1項)。
(4) 裁判所は,保釈請求者でない者に保釈保証金を納付することを許すことができます(刑訴法94条2項)。
(5)ア 裁判所は,有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができます(刑訴法94条3項)。
イ 保釈の保証書には,保証金額及びいつでもその保証金を納める旨を記載しなければなりません(刑訴規則87条)。
電子納付なら、保釈保証金も365日納付可能なので、年末年始でも簡単に納付できて、すぐに身柄が解放されると思っていました。
裁判所に聞いたら、受領書の発行が年明けになるから、仮に大晦日に保釈保証金を電子納付しても被告人が外に出られるのは1月4日らしい。
危なかった!現金一択!
— 弁護猫 (@72Judicial) December 27, 2022
7 保釈の判断に対する抗告審
・ 受訴裁判所によってされた刑訴法90条による保釈の判断に対して,抗告審としては,受訴裁判所の判断が委ねられた裁量の範囲を逸脱していないかどうか,すなわち,不合理でないかどうかを審査すべきであり,受訴裁判所の判断を覆す場合には,その判断が不合理であることを具体的に示す必要があります(最高裁平成26年11月18日決定)。
1年目の裁判官が認めた保釈許可決定に、検察官が準抗告し、定年間近の裁判長がいる合議体が取り消した。不可能な逃亡や罪証隠滅のおそれについては想像力逞しく、身体拘束により被告人に生じる不利益は無視・無関心を貫いて。1年目の裁判官が、こうした裁判所の空気に慣れないことを強く願います。
— じーこ (@jiko25jiko) October 27, 2021
8 被告人の保釈に関する統計
(1) 裁判所HPの「刑事事件Q&Aの更新について」に保釈に関する統計が載っています。
(2) 最高裁判所の開示文書を以下のとおり掲載しています。
・ 勾留及び保釈に関する統計文書(令和4年8月の開示文書)
・ 通常第一審における終局人員のうち保釈された人員の保釈の時期(昭和59年から平成28年まで)
(被告人の保釈の取消しに関する統計)
・ 勾留された被告人の保釈の取消しに関する統計(令和4年分)
・ 勾留された被告人の保釈の取消しに関する統計(令和3年)
・ 勾留された被告人の保釈の取消しに関する統計(令和2年)
・ 勾留された被告人の保釈の取消しに関する統計(2019年)
・ 勾留された被告人の保釈の取消しに関する統計(平成30年)
(被告人の保釈に関する人員数)
・ 被告人の保釈に関する人員数(令和5年分)
・ 被告人の保釈に関する人員数-裁判所種別(令和4年)
・ 被告人の保釈に関する人員数-裁判所種別(令和3年)
・ 被告人の保釈に関する人員数-全裁判所及び裁判所種別(令和2年)
・ 被告人の保釈に関する人員数-全裁判所及び裁判所種別(平成14年~平成30年)
・ 被告人の保釈に関する人員数-全裁判所及び裁判所種別(令和元年)
勾留及び保釈に関する統計文書(令和4年8月の開示文書)1/5を添付しています。 pic.twitter.com/90x6EO4EsV
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) August 7, 2022
R020824 答申書(被告人カルロス・ゴーンの保釈請求及び準抗告に関与している裁判官の氏名が分かる文書(例えば,既済事件一覧表の抜粋))を添付しています。 pic.twitter.com/FZBTVPJKQE
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) September 5, 2020
趙誠峰弁護士「今私たちがすべきことは、保釈問題事例の増加をとらえて裁判官の保釈判断を批判することではなく、今もなお保釈無事故率が99%台を維持していることを理由に裁判官に対してもっと保釈を認めるように強く求めることである。」(刑事法ジャーナル64号) https://t.co/JfHRp3zD8F
— 弁護士西愛礼@元裁判官 (@Yoshiyuki_JtoB) January 10, 2023
朝日新聞6/28付の記事にあるこの表、とてもわかりやすいです。https://t.co/Ifa2KKz4qI pic.twitter.com/bqEfn6cjSP
— 趙 誠峰/CHO Seiho (@cho_seiho) June 28, 2024
刑事訴訟実務に精通した被害者が「自白しないと保釈が認められない」ということを全世界に向けて明らかにしたので、「保釈を得るためにやむを得ず第一回後半期日の罪状認否で捜査段階での主張を曲げて自白した」と主張しやすくなったのでは。 https://t.co/9xZYLCIs93
— 💩 (@un_co_the2nd) December 11, 2024
9 保釈者等の視察に関する犯罪捜査規範の条文
第十七章 保釈者等の視察
(保釈者等の視察)
第二百五十三条 警察署長は、検察官から、その管轄区域内に居住する者について、保釈し、又は勾留の執行を停止した者の通知を受けたときは、その者に係る事件の捜査に従事した警察官その他適当な警察官を指定して、その行動を視察させなければならない。2 前項に規定する視察は、一月につき、少なくとも一回行うものとする。
(事故通知)
第二百五十四条 前条に規定する視察に当たり、その者について次の各号の一に該当する理由があるときは、これを前条に規定する通知をした検察官に速やかに通知しなければならない。一 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。二 罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。三 被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。四 住居、旅行、治療等に関する制限その他保釈又は勾留の執行停止について裁判所又は裁判官の定めた条件に違反したとき。五 その他特に検察官に通知する必要があると認められる理由があるとき。
(視察上の注意)
第二百五十五条 第二百五十三条(保釈者等の視察)に規定する視察は、穏当適切な方法により行うものとし、視察中の者又はその家族の名誉及び信用を不当に害することのないように注意しなければならない。
(視察簿)
第二百五十六条 第二百五十三条(保釈者等の視察)に規定する視察を行つたときは、視察簿(別記様式第二十四号)により、これを明らかにしておかなければならない。
「証拠隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」
ここに裁判所の人権意識が現れている…
なお、刑事訴訟法60条1項では、
「おそれ」
ではなく、
「疑うに足りる相当な理由」
と規定しています https://t.co/kvAtSCURAv
— 弁護士 高木良平 (@ryouheitakaki) July 21, 2020
「「無罪推定の原則」と被疑者・被告人の身柄拘束(逮捕,勾留)とは無関係です。」
すごいな。。
これじゃ話がまったく噛み合わないわけだ。。。 https://t.co/1hR3FKKbjo
— 弁護士戸舘圭之オフィシャル/とってぃ/袴田事件弁護団 (@todateyoshiyuki) March 10, 2021
10 出国確認の留保,カルロス・ゴーンの密出国及び国外逃亡被疑者等の追跡(1) 出国確認の留保
ア 外国人が国外に出国する場合,入国審査官から出国の確認を受けなければならず,出国の確認を受けなければ出国できません(入管法25条)。
イ 長期3年以上の罪で訴追されていたり,勾留状等が発せられたりしている場合,24時間以内で出国確認を留保されます(入管法25条の2)。
ウ 外国人被告人の出国確認留保の通知に係る事務の取扱いについて(平成12年8月28日付の最高裁判所刑事局長,家庭局長通達)を掲載しています。
(2) カルロス・ゴーンの密出国
ア 41期の島田一 東京地裁14刑部総括は,平成31年3月5日,保釈金10億円でカルロス・ゴーンの保釈を許可し,同年4月25日,保釈金5億円で被告人カルロス・ゴーンの保釈を再び許可しました(外部HPの「保釈をめぐる事件経過一覧」参照)。
イ カルロス・ゴーンは,保釈条件に違反して国籍国であるレバノンに出国していたことが令和元年12月31日に発覚しました。
そのため,同日付で15億円の保釈保証金が没取されました。
ウ カルロス・ゴーンの国外出国に対する高野隆弁護士のコメントが,同人のブログの「彼が見たもの」(2020年1月4日付)に載っています。
エ igaki.workブログに「カルロス・ゴーン氏が逃げた理由、日本の刑事司法の10個の闇。」(2020年1月5日付)が載っています。
オ 佐々木聖子出入国在留管理庁長官は,令和2年1月30日の参議院予算委員会において以下の答弁をしています。
入管法上、一定の罪につき訴追されていること又は逮捕状、勾留状等が発せられているなどの一定の事由があるとして関係機関から当庁に対して通知があった外国人が出国しようとした場合には、入国審査官は二十四時間に限り当該外国人の出国の確認を留保する、つまり出国をさせないことができることとされており、そのことが出国の審査ブースで分かる仕組みになっています。
仮にカルロス・ゴーン被告人が出国確認手続を経ていれば、出国を止める体制ができておりました。
(3) 国外逃亡被疑者等の追跡
令和元年警察白書の「第2部 本編」→「第4章 組織犯罪対策」→「第3節 来日外国人犯罪対策」→「第3項 国際組織犯罪に対処するための取組」には,「国外逃亡被疑者等の追跡」として以下の記載があります。
国外逃亡被疑者等の数の推移は、図表4-18のとおりである。
警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、出入国在留管理庁に手配するなどして、出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認等を行っており、所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約(注2)等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして、確実な検挙に努めている。
このような取組の結果、平成30年中は、出国直前の外国人被疑者17人のほか、国外逃亡被疑者113人(うち外国人64人)を検挙した。
このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。
(4) 犯人が他人を教唆して自己を蔵匿させ又は隠避させたときは,刑法103条の罪の教唆犯が成立します(最高裁令和3年6月9日決定。なお,先例として,最高裁昭和35年7月18日決定参照)。
(5) 逃亡犯罪人引渡法に基づく仮拘禁許可状の発付に対して特別抗告をすることはできません(最高裁令和5年11月6日決定)。
(6) 逃亡犯罪人引渡法に関する書式例(平成12年10月31日付の法務大臣訓令)を掲載しています。
41期修習生が「春の集会」で問題提起した「外国人は同じことをしても量刑重い」問題というのがあってな。昭和の終わりの話や https://t.co/ct3lD0XkQE
— くまちん(弁護士中村元弥) (@1961kumachin) August 15, 2021
香港の保釈制度について、簡潔にまとめた高野隆先生のブログが素晴らしい。 https://t.co/LGDiNtnASk
— 香港のおじさん律師 (@Prawnman21) August 16, 2020
保釈中の逃亡や再犯で「おとがめ」の話は、馬鹿な検察官と一笑に付して終わる話ではなくて、判断者にとって、逃亡や再犯の正確な予測など不可能である中、「保釈しなければ社会的非難を受けないが保釈すればそれを受けるリスクを負う」ことが判断に影響をもたらし得るという、根の深い問題である。
— 心の貧困 (@mental_poverty) February 22, 2021
11 GPS端末の実証事件に係る業務委託
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)462頁には,「GPS端末の実証事件に係る業務委託経費」として以下の記載があります。
<要求要旨> 近時,保釈中の被告人の逃走事案が相次いで発生したことを受け,現在,法制審議会・刑事法(逃亡防止関係)部会において,保釈中の被告人の逃亡防止策の一つとして,当該被告人にGPS端末を装着させて位置情報を取得することにより逃亡を防止する制度(以下「本制度」という。)の導入についての検討が進められているところ,令和3年秋頃,これを盛り込んだ法制審議会の答申がなされる見込みである。これを踏まえ,法務省において,令和4年の通常国会に法案を提出する予定であり,遅くとも令和9年度までにその運用を開始するためには,本制度の確実な運用を実現する要求性能を備えたGPS端末を確保することが不可欠であるため,早期にその準備に着手する必要がある。 本制度で求められるGPS端末は,装着対象者が逃亡の意思を惹起した場合においても身体からの取り外しや機能の無効化が困難であり,かつ,それらの行為が行われた時は直ちに関係機関が検知可能であるなど,既存の製品には見られない性能を備えるものでなければならない。そして,令和8年度中の試行運用開始に向け,要求性能を備えたGPS端末の設計・開発等を手戻りなく効率的に行うためには,令和4年度中に既存製品の技術・ノウハウを活用してGPS端末の試作品を製作し,日常生活における様々な条件の下での検証を通じて,その技術的困難性の有無・程度,測定した位置情報等の送信間隔とバッテリーの持続時間との関係,位置の測定が不可能又は困難なエリアの有無・範囲等を把握し,それらの諸課題を解決する方策を検証する必要があることから,高度の専門的知見を有する者に対して実証実験に係る業務を委託する必要がある。 そこで,上記の業務委託に必要な経費を要求する。
金岡さんが関わった保釈の本が12月上旬に出る
(書籍の宣伝)保釈の研究書 https://t.co/z8owNBI71i
— くまちん(弁護士中村元弥) (@1961kumachin) October 28, 2021
“保釈中の被告にGPSの装着も” 改正刑事訴訟法が可決・成立 | NHK https://t.co/w9jRR5JEvI
『加害者には被害者の氏名や住所を記載しない逮捕状や起訴状を示すことを認め、個人を特定する情報を加害者に明らかにしないまま、逮捕や裁判などの刑事手続きを進められる内容』
こちらも重要ですね。— KBブラック02 (@battamonblack02) May 10, 2023
12 保釈保証金に関する弁護士会照会
(1)ア 被告人以外の者が保釈保証金若しくはこれに代わる有価証券を納付し,又は保証書を差し出すのは,直接に国に対してするのであり,それによってその者と国との間に直接の法律関係が生ずるのであって,その還付もまた国とその者との間で行なわれます(最高裁大法廷昭和43年6月12日決定)。
イ 弁護人が保釈を請求し,かつ,保釈保証金を納付した場合において,たとえ実質上の出捐者が被告人であつたとしても,国に対して保釈保証金返還請求権を有する者は,弁護人であって被告人ではありません(最高裁昭和59年6月26日判決)。
(2) 仮差押え又は差押えのために保釈保証金の有無を調べたい場合,被告人の刑事事件が係属している地方裁判所に対し,照会事項として以下のような記載をして弁護士会照会をすればいいです(弁護士会照会ハンドブック196頁及び197頁)。
・ ○○地方裁判所令和2年(わ)第○○○○号・○○被告事件の被告人○○○○の保釈保証金について,以下の事項をご回答下さい。
① 保釈保証金の金額
② 保釈保証金の提出者の氏名及び住所
③ 保釈保証金納付の方法
④ 競合する仮差押え,差押えの有無
⑤ ④で有りの場合,その債権者の氏名及び差押え金額
仮差押事件。
相談時に最初に確認すべきことは、供託金を支払う覚悟があるか、そして、供託金を支払う資力があるか。
次に、管轄とそれに応じた実費負担が可能か。
そして、弁護士報酬金を払えるか。
被保全権利や必要性といった法律論は、一番最後なのだ。
弁護修習で習わなかったのかい?
— ピピピーッ (@O59K2dPQH59QEJx) September 3, 2021
13 債務者が刑事事件の弁護人に対して預託金返還請求権を有する場合における債権回収方法(1) 総論
ア 債務者が実質的出捐者となって保釈保証金に充てるためのお金を刑事事件の弁護人に提供した場合,弁護士会照会によって保釈保証金の存在を確認した上で,債務者が弁護人に対して有する預託金返還請求権について差押え又は仮差押えをすることで債権回収を図ることができます。
イ 京都地裁平成19年9月25日判決の事例では,債務名義を負っている債務者が弁護人に対して有する預託金返還請求権の差押えを通じて債権回収しましたし,東京地裁平成18年1月18日判決の事例では,被告人が弁護人に対して有する預託金返還請求権の仮差押えをした後,実質上の出捐者とされた被告人の妻(被告人及びその妻はいずれも債務者でした。)から債権回収しました。
ウ 刑事事件の弁護人の立場から見た場合,保釈保証金を用意できそうな被告人の関係者が債務名義を負っているような場合,当該関係者からお金を預かるのは避けて,日本保釈支援協会の保釈保証金立替システム,又は全国弁護士協同組合連合会の保釈保証書発行事業を利用した方が無難であると思います。
(2) 京都地裁平成19年9月25日判決
ア 弁護人である被告に対する預託金返還請求権の債権差押命令を得た上での取立訴訟に関する京都地裁平成19年9月25日判決(判例秘書に掲載)の主文のうち,原告の請求を認容した乙事件の主文は以下のとおりです(条件付給付判決の主文の記載方法としても参考になります。)。
被告は,原告に対し,被告人甲野太郎にかかる大阪高等裁判所平成17年(う)第1901号偽造有印私文書行使,詐欺被告事件の上告審又はその差戻審において,被告が京都地方裁判所に提出した3750万円の保釈保証金(うち3000万円について平成17年6月27日提出,保管金提出書進行番号平成17年度第40055号,うち750万円について平成17年11月2日提出,保管金提出書進行番号平成17年度第40198号,ただし,いずれも,平成19年3月14日付け決定をもって同月8日付け保釈許可決定における保釈保証金3800万円の一部に流用[代納])の還付がなされることを条件として,3750万円及びこれに対する同還付の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 京都地裁平成19年9月25日判決の事例では,平成17年6月27日に京都地裁で保釈許可決定を受け(保釈保証金は3000万円),実刑判決後の平成17年11月2日に京都地裁で再び保釈許可決定を受け(保釈保証金は4500万円),控訴棄却判決後の平成19年3月8日に大阪高裁で3度目の保釈許可決定を受けました(保釈保証金は3800万円であり,そのうちの50万円については控訴審の弁護人が現金で納付しました。)。
ウ 京都地裁平成19年9月25日判決には「刑事弁護事件を取り扱う弁護士の法律事務所において,保釈保証金に充てるための預託金を預かり金として経理処理をしないことは,通常考え難いこと(本件各預託金についての経理処理がされていれば,預託したのが太郎,一郎,三郎その他の第三者の誰であるかが容易に判明するものと考えられる。)」という記載があります。
(3) 東京地裁平成18年1月18日判決
ア 東京地裁平成18年1月18日判決は,「将来還付される保釈保証金に対する差押えを回避するため,Yに対して連帯保証債務を負っている被告人の妻CがX(被告人及びCの間の長女)に対して6000万円を貸し付け,XがB弁護士に6000万円を送金し,保釈保証金が5000万円と決定された後に弁護士がXに1000万円を返金した後,YがB弁護士に対する預託金返還請求権の仮差押えをしてXが第三者異議の訴えを提起し,Yが供託金還付請求権確認(主位的請求)及び債権者代位(予備的請求)の訴訟を提起したという事例」において以下の判示をしました。
① 第三者異議の訴え及び供託金還付請求権確認の訴えに対するもの
・ CとXの間では,将来還付される保釈保証金に対する差押えを回避するため,Cが6000万円をいったんXに対して貸し付けることとし,その上で,XがこれをB弁護士に預託したものと認定し得ないではなく(ただし,このような手法の当否はさておくにしても,借用証書等の書面の存在がうかがわれないなどの点で必ずしも疑問が残らないというわけではない。),B弁護士に対する本件保釈保証金の返還請求権は,原告に帰属するものと認定することができるというべきである。
② 債権者代位の訴えに対するもの
・ Cと原告との間で平成15年3月20日に6000万円の消費貸借契約が締結されたものと認定できることは前記1で判示したとおりであるところ,被告は,その弁済期について,第一次的に,期限の定めがなかった旨主張するものの,この事実を認めるに足りる証拠はなく,むしろ,証拠(甲8,9)及び弁論の全趣旨によれば,Cと原告は,その際,原告がB弁護士から保釈保証金の返還を受けたときを弁済期とする旨合意したものと認められる。
そして,この合意の具体的内容については,保釈保証金がB弁護士から返還されるか否かといった,将来発生するか否かが不確実な事実にかからせるものであるとすれば,それは条件に該当することになり,消費貸借契約成立の本質的要素である弁済期の合意を欠くことになるから,本件消費貸借契約が有効に成立したと強く主張する原告の主張内容からみても,結局,Cと原告の合理的意思としては,原告が保釈保証金の返還を受けたとき,又はその返還を受ける見込みのないことが確定したときを弁済期とする旨の合意をしたものと認めるのが相当であり,これに反する原告の主張は採用できない。
イ 東京地裁平成18年1月18日判決の事例における仮差押債権目録は以下のとおりでした。
5000万円
ただし,訴外Aが下記刑事事件の保釈保証金として納付するために第三債務者Bに対して預託した頭書金員の返還請求権
記
被告人 訴外A
係属裁判所 金沢地方裁判所
事件番号 平成15年(わ)第102号
罪名 商法違反
ウ 東京地裁平成18年1月18日判決では,Yは,債権者代位権に基づき,Xに対し,Cに代位して,Cに対する連帯保証債務履行請求権を保全するため,CのXに対する消費貸借契約に基づく残元金5000万円及び遅延損害金の支払を予備的に請求しましたところ,当該請求は認容されました。
R030331 法務省の意思確認文書(東京地検特捜部がアメリカ司法省に送ったゴーン元会長逃亡事件の捜査の進捗を伝える書簡がPACERというウェブサイトを通じて公表されていることにより発生した問題点について法務省が作成し,又は取得した文書)を添付しています。 https://t.co/a1EpFaVVfe pic.twitter.com/TQ96oa4USs
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) April 3, 2021
14 保管金事務処理システム
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)331頁には,「保管金事務処理システム」として以下の記載があります。
<要求要旨>
保管金事務処理システム(以下「本システム」という。)は,裁判所内の事件処理システムの一部と連携し,保管金事務(例えば,刑事事件の被告人の身柄拘束を解放する要件の一つとなる保釈保証金や強制執行手続の進行・差押え等に関係する民事執行予納金等の事務)の適正かつ迅速な処理を行うことを目的とする基盤システムであり,財務省所管の歳入金電子納付システム及び官庁会計システムと連携して,裁判所における保管金の電子受払を可能としている。
本システムは,平成17年4月から運用を開始し,平成19年度までに全ての裁判所への導入を完了している。平成22年度,平成28年度及び令和2年度にサーバ等機器等を更改し,現在までリースにより運用するとともに,安定的な稼働を維持するために必要な運用保守等を行っている。
令和4年度には,歳入歳出外現金出納官吏の廃止に係る移行支援,最高裁判所データセンタ基幹インフラ切替対応及び新民事執行事件処理システム改修対応を予定している。また,上記リース対象のソフトウェアのうち,物理サーバの仮想化及びウイルスチェックをそれぞれ担っている各ソフトウェアのバージョンアップ等作業を実施する必要がある。さらに,最高裁判所近郊における大規模災害後に確実にシステムの復旧を進める観点から,バックアップテープ等の記録媒体を遠隔地保管する必要がある。
そこで,令和4年度に要する本システムの機器等のリース経費,運用・保守経費,改修作業等経費,ソフトウェアのバージョンアップ等作業経費及びバックアップテープの保管業務に係る経費を要求する。
なお,サーバ等機器等のリースについては,併せて5箇年の国庫債務負担行為によっており,令和4年度はその2年目である。
実刑判決あると保釈も失効しますから…#弁護士 #法律事務所 #漫画 #四コマ漫画 #エッセイ漫画 #漫画が読めるハッシュタグ #マンガが読めるハッシュタグ #たぬじろう #食っていけない弁護士 pic.twitter.com/PKvlHzzGQi
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15 保釈保証金の還付
(1) 禁錮以上の刑に処する判決の宣告があったときは,保釈はその効力を失います(刑訴法343条本文)。
このときに被告人を収監する場合,言い渡した刑並びに判決の宣告をした年月日及び裁判所を記載し,かつ裁判長又は裁判官が相違ないことを証明する旨を附記して認印した勾留状の謄本が被告人に示されます(刑訴規則92条の2)。
一方で,刑訴規則91条1項2号に基づき,没取されなかった保釈保証金が還付されます。
(2) 無罪,免訴,刑の免除,刑の執行猶予,公訴棄却,罰金又は過料の裁判の告知があったときは,勾留状は,その効力を失います(刑訴法345条)。
この場合,刑訴規則91条1項1号に基づき,没取されなかった保釈保証金は還付されます。
保釈保証金の国庫帰属の時期および原審裁判所が保管中の保釈保証金を上訴裁判所で没取の裁判をした場合の歳入組入れ手続等について(昭和45年7月17日付の最高裁判所刑事局長及び経理局長の通知)を添付しています。 pic.twitter.com/84Nf3himvf
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) September 13, 2020
16 関連記事その他
(1)ア 判例タイムズ1484号(2021年7月号)に「捜査に対する司法審査の在り方等に関する研究[大阪刑事実務研究会]令状1・近時における勾留及び保釈の運用等について」が載っています。
イ 全国弁護士協同組合(全弁協)HPの「保釈保証書発行事業」に,全弁協が発行している保釈保証書に関する2件の東京高裁決定が紹介されています。
ウ 二弁フロンティア2021年10月号に「トリビアではない!?東京拘置所あれこれ」が載っています。
エ 自由と正義2023年7月号21頁ないし28頁に「保釈保証書発行事業の成り立ちと利用の仕方、課題等」が載っています。
(2) 「デジタル遺品の探しかた しまいかた 残しかた+隠しかた」 36頁には,「スマホのロック解除を頼めるサービスは?」として以下の記載があります。
スマホのロック解除を請け負うサービスは、かなり少ないのが現状で、データ復旧会社でもスマホは受け付けてくれないケースがほとんどです。
なお、通信キャリア(NTTドコモやau、ソフトバンクなど)やメーカーは端末の中身に関しては非対応が原則ですので、対応を期待することはできません。
スマホのデータ復旧を検討してくれる企業もありますが、それでも確実に解錠できる保証はなく、成功報酬は20万~50万円かかることも。作業期間も半年~1年がザラで、簡単な道のりとは言いがたいです。
(3) 31期の小泉博嗣 元裁判官は,情報公開・個人情報保護審査会の第1部会の委員として,以下の文書の存否自体が行政機関情報公開法5条4号(公共の安全等に関する情報)に該当すると判断しました。
・ 保釈中の被告人が保釈保証金を没取されることなく罪証隠滅に成功した事例に関して法務省が作成し,又は取得した文書(直近の事例に関するもの)(令和元年11月12日答申(令和元年度(行情)答申第296号))
・ 保釈中の被告人が事件関係人に接触した結果,事件関係人の供述を自己に有利に変更して無罪判決を獲得した事例に関して法務省が作成し,又は取得した文書(直近の事例に関するもの)(令和元年11月12日答申(令和元年度(行情)答申第297号))
(4)ア 刑の執行猶予の言渡し取消し請求において,被請求人が選任した弁護人に対して刑の執行猶予の言渡し取消し決定の謄本が送達されても,被請求人に対する送達が行われたものと同じ法的な効果は生じません(最高裁平成29年1月16日決定)。
イ 犯人が他人を教唆して自己を蔵匿させ又は隠避させたときは,刑法103条の罪の教唆犯が成立する(最高裁令和3年6月9日決定及び最高裁令和5年9月13日決定)ものの,裁判官山口厚の反対意見が付いています。
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
① 平成30年5月7日付の参考統計表(最高裁判所事務総局刑事局)
② 通常第一審における終局人員のうち保釈された人員の保釈の時期(昭和59年から平成28年まで)
→ 刑事裁判を考える:高野隆@ブログの「人質司法の原因と対策」(平成31年1月18日付)において,「最高裁事務総局が「会内限り」という限定付きで日弁連に秘密裏に提供した統計資料」と記載されている文書に該当すると思います。
③ 刑事事件に関する書類の参考書式について(平成18年5月22日付の最高裁判所刑事局長,総務局長及び家庭局長送付)
→ 保釈許可決定等の書式が載っています。
④ 保釈保証書による代用許可の申出事例等の調査について(平成25年7月23日付の最高裁判所刑事局第二課長事務連絡)
⑤ 控訴審において実刑判決を宣告された保釈中の被告人に対する収容手続(基準)について(平成18年6月14日付の大阪高検次席検事の依命通達)
→ 基準の中身は黒塗りです。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 被疑者の逮捕
・ 被疑者及び被告人の勾留
・ 保釈保証金の没取
・ 刑事裁判係属中の,起訴事件の刑事記録の入手方法(被害者側)
・ 刑事裁判係属中の,起訴事件の刑事記録の入手方法(加害者である被告人側)
・ 刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧
実際には、刑弁族だって保釈金用意する見込みもないのに「通るまで毎日保釈請求してくれ」なんて要望は応じないだろうし、他方「国選なんて頑張らなくて良い」と言う派も「公判で『はじめまして』」で良いとまでは言わないだろうし。
穏健派間でちゃんと議論すれば妥当な解はあると思うのですよね。— 以下「本件ぎたべん」という。 (@guitar_ben) March 20, 2022