目次
第1 弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)
第2 刑訴法411条に関するメモ書き
第3 上告に関する刑事訴訟法の条文
第4 関連記事その他
第1 弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)
(令和5年3月24日更新)
55 最高裁令和5年3月24日判決(自判)
死亡後間もないえい児の死体を隠匿した行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとされた事例
昨日記者の人が言ってたところによると、最高裁での破棄自判無罪は戦後25件目だそうです
— スドー🍞 (@stdaux) March 25, 2023
54 最高裁令和4年11月21日判決(差戻し)
殺人の公訴事実について、自殺の主張は客観的証拠と矛盾するなどとして有罪の第1審判決の結論を是認した原判決に、審理不尽の違法、事実誤認の疑いがあるとされた事例
53 最高裁令和4年6月9日判決(自判)
他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間
52 最高裁令和4年2月18日判決(差戻し)
準強制わいせつ被告事件について,公訴事実の事件があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し有罪とした原判決に,審理不尽の違法があるとされた事例
51 最高裁令和4年1月20日判決(自判)
ウェブサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードが不正指令電磁的記録に当たらないとされた事例
50 最高裁令和3年9月7日判決(差戻し)
被告人は心神耗弱の状態にあったとした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し何ら事実の取調べをすることなく完全責任能力を認めて自判をした原判決が,刑訴法400条ただし書に違反するとされた事例
49 最高裁令和3年7月30日判決(差戻し)
違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
48 最高裁令和2年10月1日判決(差戻し)
数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額
47 最高裁令和2年1月23日判決(差戻し)
犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した第1審判決を控訴裁判所が何ら事実の取調べをすることなく破棄し有罪の自判をすることと刑訴法400条ただし書
46 最高裁平成30年3月19日判決(自判)
子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
45 最高裁平成29年3月10日判決(自判)
置き忘れられた現金在中の封筒を窃取したとされる事件について,封筒内に現金が在中していたとの事実を動かし難い前提として被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人による窃取を認定した第1審判決及び原判決の判断が論理則,経験則等に照らして不合理で是認できないとされた事例
44 最高裁平成28年12月19日判決(自判)
被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後訴訟能力の回復の見込みがないと判断される場合と公訴棄却の可否
43 最高裁平成28年12月5日判決(自判)
土地につき所有権移転登記等の申請をして当該登記等をさせた行為が電磁的公正証書原本不実記録罪に該当しないとされた事例
42 最高裁平成28年3月18日判決(差戻し)
自動車運転過失致死の公訴事実について防犯カメラの映像と整合しない走行態様を前提に被告人を有罪とした原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
41 最高裁平成26年7月24日判決(自判)
傷害致死の事案につき,懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第1審判決及びこれを是認した原判決が量刑不当として破棄された事例
40 最高裁平成26年3月28日判決(自判)
暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において暴力団関係者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為が,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たらないとされた事例
39 最高裁平成26年3月28日判決(自判)
暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において暴力団関係者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為が,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たらないとされた事例
38 最高裁平成24年9月7日判決(差戻し)
前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いることが許されないとされた事例
37 最高裁平成24年4月2日判決(差戻し)
併合罪の一部である証拠隠滅教唆の事実につき重大な事実誤認の疑いが顕著であるとして原判決を破棄して差し戻した事例
36 最高裁平成24年2月13日判決(自判)
覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
35 最高裁平成23年7月25日判決(自判)
通行中の女性に対して暴行,脅迫を加えてビルの階段踊り場まで連行し,強いて姦淫したとされる強姦被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例
34 最高裁平成22年12月20日判決(自判)
観賞ないしは記念のための品として作成された家系図が,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たらないとされた事例
33 最高裁平成22年4月27日判決(差戻し)
殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
直感的・印象的判断と呼ばれるものですね。基軸となる事実がない中で、矛盾しない事実や証明力の低い事実を量的に重ねた場合に誤判に陥る危険が高いとされています。東電OL事件の控訴審が典型で従前はこれがスタンダードでしたが、間接事実総合考慮に関する最判平成22年4月27日が警鐘を鳴らしました。 pic.twitter.com/SOSG8dtdEu
— 弁護士西愛礼@元裁判官 (@Yoshiyuki_JtoB) January 16, 2023
刑事事件の事実認定手法って、法律審であるはずの最高裁がたぶん一番クリアにしてると思うんだけど、補足意見と反対意見でバチバチの争いを見せている最三判H22.4.27(一審二審有罪を破棄差戻し、後に無罪確定)、刑事裁判官出身の堀籠幸男裁判官の反対意見に対する補足意見、読み応えがある。
— venomy (@idleness_venomy) January 30, 2024
32 最高裁平成21年12月7日判決(差戻し)
旧株式会社日本債券信用銀行の平成10年3月期の決算処理における支援先等に対する貸出金の査定に関して,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によることも許容されるとして,資産査定通達等によって補充される平成9年7月31日改正後の決算経理基準を唯一の基準とした原判決が破棄された事例
31 最高裁平成21年10月16日判決(差戻し)
被告人の検察官調書の取調べ請求を却下した第1審の訴訟手続について,同調書が犯行場所の確定に必要であるとして,その任意性に関する主張立証を十分にさせなかった点に審理不尽があるとした控訴審判決が,刑訴法294条,379条,刑訴規則208条の解釈適用を誤っているとされた事例
30 最高裁平成21年9月25日判決(差戻し)
被告人と本件犯行とを結びつける共犯者の供述の証拠価値に疑問があり,原判決には,審理を尽くさず,ひいては重大な事実誤認をした疑いが顕著であるとして,原判決を破棄し事件を原審に差し戻した事例
29 最高裁平成21年7月16日判決(自判)
財産的権利等を防衛するためにした暴行が刑法36条1項にいう「やむを得ずにした行為」に当たるとされた事例
28 最高裁平成21年4月14日判決(自判)
満員電車内における強制わいせつ被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例
私自身、あの界隈の方々については、痴漢冤罪事件として著名な名倉事件最高裁判決(最高裁判所第三小法廷判決平成21年4月14日、刑集第63巻4号331頁)で冤罪防止の観点から「被害者」供述の信用性評価について慎重な判断を求めた那須補足意見を批判したあたりから全く信用はしていないです。
— 弁護士戸舘圭之 (@todateyoshiyuki) August 28, 2022
27 最高裁平成21年3月26日判決(自判)
軽犯罪法1条2号所定の器具に当たる催涙スプレー1本を専ら防御用として隠して携帯したことが同号にいう「正当な理由」によるものであったとされた事例
26 最高裁平成20年7月18日判決(自判)
旧株式会社日本長期信用銀行の平成10年3月期に係る有価証券報告書の提出及び配当に関する決算処理につき,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によったことが違法とはいえないとして,同銀行の頭取らに対する虚偽記載有価証券報告書提出罪及び違法配当罪の成立が否定された事例
25 最高裁平成20年4月25日判決(差戻し)
統合失調症による幻覚妄想の強い影響下で行われた行為について,正常な判断能力を備えていたとうかがわせる事情があるからといって,そのことのみによって被告人が心神耗弱にとどまっていたと認めるのは困難とされた事例
24 最高裁平成18年10月12日判決(自判)
祖父母による未成年者誘拐事件につき懲役10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例
23 最高裁平成16年12月10日判決(差戻し)
窃盗の犯人による事後の脅迫が窃盗の機会の継続中に行われたとはいえないとされた事例
22 最高裁平成16年10月29日判決(差戻し)
被告会社が土地を造成し宅地として販売するに当たり地方公共団体から都市計画法上の同意権を背景として開発区域外の排水路の改修工事を行うよう指導された場合においてその費用の見積金額を法人税法22条3項1号にいう「当該事業年度の収益に係る売上原価」の額として損金の額に算入することができるとされた事例
21 最高裁平成16年9月10日判決(差戻し)
銀行の頭取が信用保証協会の役員と共謀して同協会に対する背任罪を犯したと認めるには合理的な疑いが残るとされた事例
20 最高裁平成16年2月16日判決(自判)
被告人のみの控訴に基づく控訴審において裁判所が第1審判決の理由中で無罪とされた事実を第1審に差し戻すことが職権の発動の限界を超え許されないとされた事例
19 最高裁平成15年11月21日判決(自判)
自動車の保管場所の確保等に関する法律11条2項2号,17条2項2号の罪の主観的要件
18 最高裁平成15年1月24日判決(自判)
黄色点滅信号で交差点に進入した際,交差道路を暴走してきた車両と衝突し,業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について,衝突の回避可能性に疑問があるとして無罪が言い渡された事例
17 最高裁平成14年3月15日判決(差戻し)
業務上横領罪における不法領得の意思を肯定した控訴審判決が審理不尽,事実誤認の疑いなどにより破棄された事例
16 最高裁平成13年7月19日判決(差戻し)
請負人が欺罔手段を用いて請負代金を本来の支払時期より前に受領した場合と刑法246条1項の詐欺罪の成否
15 最高裁平成13年1月25日判決(自判)
交通事故による休業損害補償金として自動車共済契約による共済金を騙し取ったとされた事件において詐欺の故意が認められないとして無罪が言い渡された事例
14 最高裁平成11年10月21日判決(自判)
監禁,強姦事件につき,監禁罪の成立を認めた点で第一,二審判決には事実誤認があるとして破棄自判した事例
13 最高裁平成9年9月18日判決(自判)
保護処分決定が抗告審で取り消された事件について家庭裁判所が少年法20条により検察官送致決定をした場合に同法45条5号に従って行われた公訴提起の効力
12 最高裁平成9年6月16日判決(自判)
刑法36条1項にいう「急迫不正の侵害」が終了していないとされた事例
11 最高裁平成8年9月20日判決(自判)
死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に当たるとはいい難いとして原判決及び第一審判決が破棄され無期懲役が言い渡された事例
10 最高裁平成6年12月6日判決(自判)
複数人が共同して防衛行為としての暴行に及び侵害終了後になおも一部の者が暴行を続けた場合において侵害終了後に暴行を加えていない者について正当防衛が成立するとされた事例
9 最高裁平成4年7月10日判決(自判)
夜間無灯火で自車の進行車線を逆行して来た対向車と正面衝突した事故につき自動車運転者の過失が否定された事例
8 最高裁平成3年11月14日判決(自判)
デパートの火災事故につきこれを経営する会社の取締役人事部長並びに売場課長及び営繕課員に業務上過失致死傷罪が成立しないとされた事例
7 最高裁平成2年5月11日判決(自判)
業務上過失致死事件につき禁錮10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例
6 最高裁平成元年11月13日判決(自判)
刑法36条1項にいう「巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為」に当たるとされた事例
5 最高裁平成元年10月26日判決(自判)
小学四年生の少女に対する強制わいせつ事件につき被告人が犯人であるとする右少女の供述等の信用性を肯定した原審の有罪判決が破棄され第一審の無罪判決が維持された事例
4 最高裁平成元年7月18日判決(自判)
公衆浴場法8条1号の無許可営業罪における無許可営業の故意が認められないとされた事例
3 最高裁平成元年6月22日判決(差戻し)
共犯者の供述に信用性を認めた原判決が破棄された事例
2 最高裁平成元年4月21日判決(自判)
業務上過失致死事件につき被告人車が轢過車両であると断定することに合理的な疑いが残るとして破棄無罪が言い渡された事例
1 最高裁平成元年4月21日判決(差戻し)
恐喝の事実につき審理不尽ないし事実誤認の疑いがあるとして原判決を破棄差戻した事例
一審無罪判決を検察官の言うとおり破棄有罪にしてあげたのに、アッサリ最高裁から引っくり返される朝山芳史、栃木力元裁判官は、どんな気持ちなんかな。東弁か二弁か知らんが、是非、講師として読んでいただきたい。
— カール=レーフラー (@hirohika777) October 17, 2021
乳腺外科医に関する最高裁令和4年2月18日判決https://t.co/ai1mMHHMHg
によって破棄差戻しとなった東京高裁令和2年7月13日判決(懲役2年の実刑)の担当裁判官
33期の朝山芳史https://t.co/TG5cTfgxv8
42期の伊藤敏孝https://t.co/KEVAiGTxpH
55期の高森宣裕https://t.co/qAH7QpQorK https://t.co/4uQDoGIXUJ— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) February 18, 2022
第2 刑訴法411条に関するメモ書き
1(1) 刑事訴訟法411条3号は,判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認あることを疑うに足る顕著な事由があつて,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときも原判決を破棄することを許した趣旨です(二俣事件(昭和25年1月6日発生の殺人事件)に関する最高裁昭和28年11月27日判決)。
(2) 刑事訴訟法411条は,最高裁判所が職権として調査することができる旨を定めたに過ぎないものであって,上告趣意書に含まれていない事項についても職権として調査しなければならない旨を定めたものではありません(非常上告事件に関する最高裁昭和30年9月29日判決)。
2(1) 東弁リブラ2010年3月号の「上告審の弁護活動について」には以下の記載があります。
上告審が411条により控訴審判決を破棄できるのは,411条各号所定の事由があり,かつ,控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときに限られており(「著反正義」といわれます),きわめて高いハードルがあります。実際,上告審での破棄事例は,事実誤認であれば,主要な訴因について全部無罪とすべき(またはその疑いがある)場合が大半,量刑不当であれば,死刑/無期懲役,実刑/執行猶予の境界を分ける場合が大半で,しかも,全事件中に占める破棄事例の割合はきわめて少ないものとなっています。
(2)ア 最高裁令和4年4月21日判決は,検察官上告に基づき,傷害罪の成立を認めた第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例であって,先例として最高裁平成24年2月13日判決を引用しています。
イ 最高裁令和5年9月11日判決は,検察官上告に基づき,強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例であって,先例として最高裁平成24年2月13日判決を引用しています。
第3 上告に関する刑事訴訟法の条文
第四百五条 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
第四百六条 最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。
第四百七条 上告趣意書には、裁判所の規則の定めるところにより、上告の申立の理由を明示しなければならない。
第四百八条 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。
第四百九条 上告審においては、公判期日に被告人を召喚することを要しない。
第四百十条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合は、この限りでない。
② 第四百五条第二号又は第三号に規定する事由のみがある場合において、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項の規定は、これを適用しない。
第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二 刑の量定が甚しく不当であること。
三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。
第四百十二条 不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄控訴裁判所又は管轄第一審裁判所に移送しなければならない。
第四百十三条 前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこれらと同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、上告裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び第一審裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。
第四百十三条の二 第一審裁判所が即決裁判手続によつて判決をした事件については、第四百十一条の規定にかかわらず、上告裁判所は、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について同条第三号に規定する事由があることを理由としては、原判決を破棄することができない。
第四百十四条 前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。
第四百十五条ないし第四百十八条 (省略)
刑法・刑訴の判例を読むときは時代背景を意識する。
・終戦直後(法改正直後)で裁判所も手探りの時期
・学生運動処罰のため犯罪の成立範囲を広げ違法捜査を黙認した時期
・社会も落ち着き揺戻しで適正手続・人権尊重の傾向が見られる時期
・国民の目を意識するあまり処罰感情が法解釈を越えつつある時期— patch-packy (@PackyPatch) February 18, 2022
1 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携につき,平成31年4月1日現在のものを追加しました。https://t.co/SuiIrN1So1
2 刑事書記官実務必携から抜粋した資料を添付しています。 pic.twitter.com/fClQap3hvT
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) December 8, 2019
特に刑事事件にはこれを感じますね。調査官の熱意(→ペーパーの完成度)が変わってくるのか、あるいは裁判官の見る目が変わるのかは知らないけど。これは退官した元最高裁判事とかに聞いてみたいですね。「全件ちゃんと見てます(キリッ」と言うのかもしれないけど https://t.co/mcIhy6ESj1
— venomy (@idleness_venomy) March 24, 2023
第3 関連記事その他
1 上告審における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理かどうかの観点から行われます(最高裁平成21年4月14日判決)。
2 上告裁判所が弁護人を付する場合であって,上告審の審理のため特に必要があると認めるときは,裁判長は,原審における弁護人であった弁護士を弁護人に選任することができます(刑事訴訟規則29条4項・29条3項)。
3 上告審判決は原則として「差戻し」であって,「自判」は例外です(刑事訴訟法413条)。
4 Wikipediaの「紅林麻雄」(袴田事件発生前の昭和38年7月に警察を辞職しました。)には以下の記載があります。
自身が担当した幸浦事件(死刑判決の後、無罪)、二俣事件(死刑判決の後、無罪)、小島事件(無期懲役判決の後、無罪)、島田事件(死刑判決の後、無罪)の各事件で無実の者から拷問で自白を引き出し、証拠を捏造して数々の冤罪を作った。
(中略)
上記4事件のうち島田事件を除く3事件が一審・二審の有罪判決の後に無罪となり、島田事件も最高裁での死刑判決確定後の再審で無罪が確定した。
5 59期の前期修習等で教材として取り上げられた,鹿児島夫婦殺し事件(昭和44年1月15日に鹿児島県鹿屋市で発生した殺人事件)に関する最高裁昭和57年1月28日判決は, 被告人の自白及びこれを裏付けるべき重要な客観的証拠等の証拠価値に疑問があるとして原判決が破棄された事例です。
6 東京高裁令和6年7月18日判決(裁判長は43期の家令和典)は,東京都文京区の自宅で平成28年8月9日,妻を殺害したとして殺人罪に問われた講談社元編集次長の朴鐘顕(パク・チョンヒョン)の差し戻し控訴審において,懲役11年とした東京地裁の裁判員裁判判決を支持し,被告人の控訴を棄却しました(最高裁令和4年11月21日判決の他,産経新聞HPの「講談社元次長、差し戻し控訴審も懲役11年 妻殺害で無罪主張退ける」参照)。
7(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 刑事上訴事件記録の送付事務について(令和3年6月18日付の最高裁判所訟廷首席書記官の事務連絡)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所における刑事事件の弁論期日
・ 刑事事件の上告棄却決定に対する異議の申立て
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
・ 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 判決要旨の取扱い及び刑事上訴審の事件統計
・ 最高裁判所調査官
・ 最高裁判所判例解説
大阪地裁平成28年8月10日判決で無罪となった東住吉事件につき,大阪地裁平成11年3月30日判決(無期懲役)の裁判長をしていた,
川合昌幸裁判官(29期)の経歴 https://t.co/fka0P7Acm8— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) June 20, 2020