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刑事控訴審の未決勾留日数の算入―控訴棄却・原判決破棄の場合(AI作成)

第1 未決勾留日数算入の基本

1 裁定算入と法定通算を区別する

刑法21条は,未決勾留日数の全部又は一部を本刑に算入することが「できる」と定めている。これは,裁判所が判決で算入日数を定める裁定算入である。

刑事訴訟法495条は,これとは別に,一定の日数を当然に本刑へ通算する法定通算を定めている。同条1項によれば,上訴提起期間中の未決勾留日数は,上訴申立後の日数を除いて全部通算される。

2 上訴申立後の日数が全部通算される場合

刑事訴訟法495条2項によれば,上訴申立後の未決勾留日数が全部通算されるのは,①検察官が上訴を申し立てた場合,または②検察官以外の者が上訴を申し立て,その上訴審で原判決が破棄された場合である。

したがって,被告人だけが控訴し,控訴棄却となった場合は,同項による全部通算ではなく,刑法21条による裁定算入が問題となる。

第2 控訴棄却の場合

1 「60日控除」ではなく,算入日数を確認する

「60日控除」という言い方は,60日を本刑に算入するという意味なのか,控訴審の未決勾留の全期間から60日を差し引いた残りを算入するという意味なのかが曖昧である。

少なくとも,法令は「全期間から60日を控除する」という計算式を定めていない。判決主文も,通常は「当審における未決勾留日数中○日を原判決の刑に算入する」と,実際に算入する日数を示す。

2 第二東京弁護士会の2020年資料

第二東京弁護士会「上訴審弁護について」は,被告人控訴の棄却事案では60日前後,具体的には50日から70日程度が算入されることが多い旨を紹介している。

ただし,これは2020年時点の弁護士会広報誌に掲載された実務上の説明であって,法令上の基準でも,一律に適用される計算式でもない。

3 2024年の裁判所公表例

福岡高裁令和6年3月6日判決は,被告人の量刑不当の控訴を棄却し,当審における未決勾留日数中110日を原判決の刑に算入した。

札幌高裁令和6年7月16日判決は,訴訟手続の法令違反及び事実誤認を理由とする控訴を棄却し,当審における未決勾留日数中60日を原判決の刑に算入した。

いずれも裁判所ウェブサイトで公表された判決であるが,算入日数を60日または110日とした個別の理由までは判決文に記載されていない。また,裁判所ウェブサイトに掲載される裁判例は全件ではない。この2例からも,60日が固定された上限または標準日数ではないことが分かる一方,算入日数を予測する一般式までは導けない。

4 実務上の結論

被告人控訴の棄却事案については,「控訴申立てから判決前日までの全日数-60日」と機械的に計算すべきではない。まず,判決主文に記載された算入日数を確認し,法定通算となる日数と裁定算入の日数を分けて把握する必要がある。

第3 原判決破棄の場合

1 被告人側の控訴で原判決が破棄された場合

検察官以外の者が控訴を申し立て,控訴審で原判決が破棄された場合,上訴申立後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項2号により全部通算される。破棄自判の場合だけでなく,条文上は「原判決が破棄されたとき」が要件である。

2 差戻しの場合

同条4項は,上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留について,上訴中の未決勾留日数に準じて通算すると定める。差戻し後も身柄拘束が続く場合は,この規定に加え,保釈及び勾留取消しの要否も別に検討する。

3 検察官控訴の場合

検察官が控訴を申し立てた場合は,結果が控訴棄却であるか原判決破棄であるかにかかわらず,上訴申立後の未決勾留日数が同条2項1号により全部通算される。

第4 弁護側の確認事項

1 日数表を作る

第一審判決日,控訴申立日,記録到着日,控訴趣意書提出期限,控訴審期日,判決日及び身柄拘束の中断を一覧化する。検察官控訴の有無及び原判決が維持されたか破棄されたかも併記する。

2 判決主文と根拠条文を照合する

控訴棄却判決では,主文の算入日数と,理由末尾に掲げられた刑法21条を確認する。破棄判決または検察官控訴では,刑事訴訟法495条による法定通算の範囲を確認する。

3 審理経過を記録する

記録送付,控訴趣意書提出期限の指定・延長,事実取調べ及び期日指定の経過を記録する。保釈または勾留取消しの判断に必要な事情と,未決勾留日数算入の問題を混同しないようにする。

4 他の刑の執行との重複を除く

控訴審の勾留中に,別の懲役刑又は拘禁刑が執行されている場合,その競合する期間を更に当該事件の本刑に重ねて算入することはできない。
最高裁昭和32年12月25日大法廷判決は,現実の拘禁が刑の執行による期間の二重算入を否定した。最高裁昭和61年10月21日判決及び最高裁平成23年7月21日判決も,刑の執行と重なる未決勾留日数を裁定算入した部分を破棄している。

先の刑の執行が継続していれば,その期間は先の刑の服役として進行する。先の刑の終了後の勾留は区別して検討する必要がある。
他事件で既に法定通算の対象となる期間との重複にも注意する必要がある。最高裁昭和52年7月1日判決は,他事件で法定通算される期間と暦上重なる日数の重ねての算入・通算を否定している。後段併合罪関係がある場合及び既に算入が言い渡されている場合の注意点については,受刑中に別件で逮捕・勾留された場合の刑期―併合罪と未決勾留日数の算入を参照されたい。

第5 根拠資料及び注意

本記事は,2026年9月16日時点のe-Gov法令検索に掲載された刑法21条及び刑事訴訟法495条,第二東京弁護士会の2020年資料並びに裁判所ウェブサイトで公表された上記2判決を確認して作成した。

上記2判決は,近時の公表例を比較するために確認したものであり,2024年以降の全裁判例を網羅したものではない。個別事件では,実際の身柄拘束期間,上訴申立人,判決結果,判決主文及び他の刑の執行との重複の有無を記録に基づいて確認する必要がある。

他刑の執行等との重複については,上記の昭和32年・昭和61年・平成23年の最高裁判決,最高裁昭和52年7月1日第二小法廷判決・昭和52年(あ)第167号・刑集31巻4号681頁と,刑法23条・45条・50条・51条及び刑事訴訟法482条も確認した(令和8年10月5日)。