目次
第1 評価への疑問を,確認できる問題に分ける1 最終評定だけで判断しない2 適用規程と期間をそろえる第2 素点・配点・調整から最終評定を追う1 評価の目的ごとに計算を確認する2 平均点調整と累積点を分ける第3 低評価の根拠を,具体的な仕事と記録に戻す1 成果の見落としと業務機会を確認する2 年休取得と勤務上の評価を混同しない第4 評価理由の説明と,個人データの開示・訂正を分ける1 まず対象資料と必要な説明を特定する2 開示の例外と,事実誤りの訂正の範囲第5 再評価申立てを,採否を回答できる形にする1 対象・理由・資料・求める対応をそろえる2 再評価と今後の改善指導は別に進める第6 見直し結果を,当期と将来の処遇へ接続する1 給与・賞与・累積点・退職金を別々に確認する2 賞与額の訂正は人事と経理で共有する第7 相談時にそろえる資料と注意点第8 出典と確認範囲
第1 評価への疑問を,確認できる問題に分ける
1 最終評定だけで判断しない
人事評価に納得できないときは,評価対象の仕事と期間,適用された基準,点数の計算及び処遇への反映を順に確認することが有用である。
自己評価より低いという事情だけで違法な評価と決まるわけではないが,会社が裁量による査定と説明するだけで,事実や計算の誤りが解消するわけでもない。
本記事は,民間企業の従業員について,給与が下がる前も含め,評価理由の確認と再評価申立ての準備を説明するものである。
法令・資料の確認基準日は令和8年10月14日であり,以下の照合表や申立ての整理方法は,一律の法定様式ではなく実務上の提案である。
疑問は,①根拠事実の誤り,②基準・配点の適用違い,③計算・点数調整の誤り,④規程所定の手続の欠落,⑤評価から給与等への反映の誤りに分けると具体化しやすい。
例えば,完了した仕事が未完了と扱われたことと,正しい成果をどの水準と評価するかは,異なる問題である。
評価,資格等級,役職,号俸及び懲戒処分も区別し,何を見直してほしいかを特定する。
2 適用規程と期間をそろえる
雇用契約書,就業規則,評価・等級規程,給与規程及び賞与規程について,対象者,評価期間,制定・改定日,周知日及び処遇の適用日を確認する。
同じ名前の規程でも年度や職種によって基準が異なる場合があり,記入例や説明資料を正式な適用基準と当然に同一視しない。
既存制度に従った個別査定を争うのか,配点や給与表を変えた制度変更を争うのかも分ける。
労働契約法7条から10条及び12条は,就業規則と契約,合意による変更,就業規則による不利益変更及び規則を下回る個別条件に関係する。
規程の周知は労働基準法106条の問題であり,個別の評価理由の説明や本人データの開示とは,対象と根拠が異なる。
等級・給与の変更の法的な検討は,人事評価・能力等級の引下げと賃金減額で扱っている。
第2 素点・配点・調整から最終評定を追う
1 評価の目的ごとに計算を確認する
同じ項目別評価でも,昇給・昇格用と賞与用とで成果や行動の重みが違えば,最終評定が異なることがある。
本人の「B評価」がどの目的の評定なのかを確認し,項目別の素点,配点,合計点,端数処理,評定区分の境界及び最終結果を一つずつ接続する。
正式な配点表,記入例及び実際の評価票が一致しない場合は,対象職種,適用版又は計算方法の違いなのかを会社へ照会する。
説明のための仮定例として,成果80点・行動60点を,給与用では半分ずつ,賞与用では成果7割・行動3割で加重する制度を考える。
給与用は70点,賞与用は74点となり,同じ項目別評価から違う総合点が生じる。
ただし,74点がどの評定になるか,いくら支給されるかは,別に区分表と給与・賞与の算式を確認しなければ決まらない。
2 平均点調整と累積点を分ける
評価者の甘辛をそろえる平均点調整がある場合は,調整前後の本人点,対象集団の範囲,集団平均,基準点,調整式,端数処理及び補正理由を確認する。
評価者の厳しさと,集団ごとの職務・成果・目標難易度の差は同じではなく,平均が違うという事実だけで一方を甘い評価者と決めることはできない。
平均点調整があるだけで当然に違法,又は公平な評価と結論付けず,制度の目的・根拠と具体的な適用を検証する。
当年の昇給結果と,昇格のための累積点も別に確認する。