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労働・社会保険

令和8年12月1日施行の改正公益通報者保護法に基づき,民間企業で対応が必要な事項(AI作成)

目次

第1 施行日と企業対応の全体像

1 令和8年12月1日施行
2 法定の公益通報と社内通報制度の範囲
3 301人以上と300人以下の違い
4 規程改定だけでは足りない理由

第2 改正法が企業実務を変える六つの点

1 フリーランス及び契約終了後1年以内の者の追加
2 内部公益通報対応体制の周知
3 通報妨害の禁止
4 通報者探索の禁止
5 通報後1年以内の解雇・懲戒に関する推定
6 刑事罰及び行政措置の強化

第3 施行までに民間企業が実施する事項

1 適用判定と責任体制の確定
2 規程・契約・雛形の横断改定
3 窓口・周知・通知
4 従事者指定と情報管理
5 受付・調査手順
6 人事・契約判断の報復防止
7 記録・評価・行政調査への備え

(続きを読む...)令和8年12月1日施行の改正公益通報者保護法に基づき,民間企業で対応が必要な事項(AI作成)

東弁リブラ2026年7・8月号掲載の竹内浩史 元裁判官寄稿の「プロ野球界を救った東京高裁決定」を踏まえた東京高裁平成16年9月8日決定の論評(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と射程
第2 本決定の概要と事案

1 事案と手続の経緯
2 決定の結論・合議体・掲載

第3 本決定の判断構造

1 被保全権利——団体交渉権と義務的団交事項
2 保全の必要性——「団交に応じていた」ことと将来の見通し

第4 寄稿の叙述に対する論評

1 労働法の観点——義務的団交事項の説明と使用者性
2 民事保全の観点——理由中で権利を認めつつ棄却する手法
3 スポーツ法の観点——当事者適格と「救った」という評価
4 裁判の独立と法曹倫理の観点

第5 実務への示唆
出典

第1 本記事の対象と射程
本記事は,東弁リブラ2026年7・8月号掲載の寄稿「プロ野球界を救った東京高裁決定」(寄稿者は39期の竹内浩史 元裁判官。以下「本寄稿」という。)を踏まえ,そこで取り上げられた東京高裁平成16年9月8日決定(平成16年(ラ)第1479号)[裁1]を,決定文に即して検討し,あわせて本寄稿の叙述を論評するものである。本決定は,団体交渉を求め得る地位を仮に定めることを求めた仮処分の抗告審であり,集団的労働法(団体交渉・不当労働行為)と民事保全とが交錯する。

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残業代請求訴訟の仮執行による仮払い-遅延損害金・源泉徴収・逆転後の返還(AIリライト)

目次第1 結論と対象範囲1 仮払い後の取扱い2 最初に区別する三つの支払経路第2 仮払い後の遅延損害金1 控訴審は仮払いを考慮しない2 実体法上は弁済の提供の効果が生じる第3 確定判決と逆転後の返還1 確定後の二重執行を防ぐ方法2 原判決又は仮執行宣言が取り消された場合第4 源泉徴収と所得区分1 残業代元本,遅延損害金及び付加金2 任意の仮払いと強制執行を区別する第5 所得年分と税務訂正1 通常の未払残業代は本来の支給年分に属する2 支払時の源泉徴収と所得の帰属年分は別である3 逆転敗訴後は会社側と従業員側を分けて処理する第6 仮払い前後の実務確認1 支払前の確認事項2 支払後の確認事項第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令及び裁判例2 国税庁資料及び文献
第1 結論と対象範囲
1 仮払い後の取扱い

残業代請求訴訟で仮執行宣言付判決に基づく支払をした場合,その支払には実体法上の効果が生じるため,元本に充当された部分については,原則として支払日の翌日以後の遅延損害金は発生しないと考えられる。
もっとも,控訴審は仮執行による給付を考慮しないで本案の当否を判断し,原判決又は仮執行宣言が取り消されたときは民事訴訟法260条2項の原状回復が問題となる。

税務上は,残業代元本,遅延損害金及び付加金を分ける必要がある。
残業代元本は給与所得であり,会社には原則として支払時の源泉徴収義務がある一方,遅延損害金は雑所得,付加金は一時所得として扱われ,通常は給与所得の源泉徴収の対象とならない。

2 最初に区別する三つの支払経路

本記事でいう「仮払い」には,仮執行宣言付判決を受けた会社が強制執行を避けるために任意に支払う場合と,従業員が現実に強制執行して取り立てる場合がある。
これらに加え,仮執行とは別に,控訴審係属中の弁済又は供託として支払う場合もある。

支払の法的根拠が違えば,控訴審での取扱い,源泉徴収額を執行手続上差し引けるか,返還請求の根拠及び遅延損害金の停止時点が変わり得る。
したがって,振込書面,送金案内,供託原因,受領書及び執行記録に,何に基づく支払であるかを残すことが重要である。

第2 仮払い後の遅延損害金
1 控訴審は仮払いを考慮しない

最高裁平成24年4月6日第二小法廷判決(平成22年(受)第754号,民集66巻6号2535頁)は,仮執行宣言に基づく給付があっても,控訴審はその事実を考慮せず,請求の当否を判断すべきであるとした。
その上で,給付によって生じた実体法上の効果は,仮執行宣言が効力を失わないことを条件とし,確定判決に基づく強制執行の手続で考慮されると判示した。

裁判所PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-82179.pdf

この判例は,控訴審の審理対象と,仮払いの実体法上の効果を区別したものである。
控訴審判決の主文に仮払い済みの額が反映されていないことだけから,その額を重ねて受領できるわけではない。

2 実体法上は弁済の提供の効果が生じる

知財高裁令和6年4月24日判決(令和5年(ネ)第10052号,令和5年(ネ)第10080号及び令和6年(ネ)第10002号)は,仮執行に基づく仮払金について,実体法上は弁済の提供の効果があり,その額が支払うべき元利金を上回るとして,仮払日の翌日以後の遅延損害金を認めなかった。
残業代事件の裁判例ではないものの,仮払いと遅延損害金の関係を直接示す近時の公刊裁判例として参考になる。

裁判所PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93156.pdf

したがって,仮払額が支払日時点の元本,遅延損害金及び費用を全て満たす場合,通常はその翌日以後の遅延損害金は発生しない。
一部だけを支払う場合は,支払合意又は充当指定の内容を確認し,特段の定めがなければ民法489条の費用,利息,元本の順序を踏まえて,元本に充当された額を計算する必要がある。

民法:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089/

第3 確定判決と逆転後の返還
1 確定後の二重執行を防ぐ方法

仮払い後も控訴審判決の主文が全額の支払を命じる形になった場合,支払済み部分は確定判決に基づく執行の段階で調整する。
従業員が同じ部分について強制執行を申し立てたときは,会社は支払資料を示して執行の対象額を争い,必要に応じて民事執行法35条の請求異議の訴え及び執行停止を検討する。

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高年齢者雇用安定法の60歳・65歳・70歳ルールと制度の沿革(AIリライト)

第1 現行法の全体像1 この記事の対象と基準日2 60歳未満の定年は禁止される3 65歳までの雇用確保措置は義務である4 70歳までの就業確保措置は努力義務である第2 65歳までの高年齢者雇用確保措置1 三つの措置2 希望者全員を対象とする原則と例外3 継続雇用先の範囲4 契約期間・賃金・勤務時間5 行政上の措置と個別契約上の効果第3 70歳までの高年齢者就業確保措置1 五つの選択肢2 創業支援等措置の手続第4 制度の沿革1 60歳定年の努力義務から義務化まで2 65歳までの雇用確保措置3 希望者全員の継続雇用4 70歳までの就業機会第5 高年齢雇用継続給付1 制度の対象2 最大支給率3 賃金自体の保障とは別の制度である第6 継続雇用制度と個別の労働契約1 津田電気計器事件最高裁判決2 判決の射程第7 統計から見た企業の対応1 令和4年就労条件総合調査2 令和7年高年齢者雇用状況等報告3 二つの統計は分母が異なる第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法定指針・基本方針4 行政資料5 統計
第1 現行法の全体像
1 この記事の対象と基準日

高年齢者雇用安定法は,正式には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という。
本記事では,令和8年10月8日現在の法令等に基づき,定年を定める場合の最低年齢,65歳までの雇用確保義務,70歳までの就業確保の努力義務及び高年齢雇用継続給付を整理する。

同法は,船員職業安定法上の船員には適用されない。
また,国家公務員及び地方公務員には,定年の引上げ及び継続雇用制度等を定める同法第2章などが適用されない(同法7条)。

2 60歳未満の定年は禁止される

事業主が定年を定める場合,その年齢は原則として60歳を下回ることができない(高年齢者雇用安定法8条)。
これは60歳定年を義務付ける規定ではなく,定年を定めるならば原則として60歳以上にしなければならないという最低年齢の規定である。

3 65歳までの雇用確保措置は義務である

65歳未満の定年を定めている事業主は,①定年の引上げ,②継続雇用制度の導入,③定年の廃止のいずれかを講じなければならない(同法9条1項)。
この高年齢者雇用確保措置は企業規模にかかわらない法的義務であるが,直ちに65歳定年制を採用しなければならないという意味ではない。

4 70歳までの就業確保措置は努力義務である

65歳以上70歳未満の定年を定めている事業主又は70歳未満までの継続雇用制度を導入している事業主は,65歳から70歳までの就業機会を確保するよう努めなければならない(同法10条の2)。
65歳までの措置が雇用の確保を内容とする法的義務であるのに対し,70歳までの措置は雇用以外の選択肢も含む努力義務である。

第2 65歳までの高年齢者雇用確保措置
1 三つの措置

65歳未満定年の事業主が選択できる高年齢者雇用確保措置は,①定年を65歳まで引き上げること,②65歳までの継続雇用制度を導入すること,③定年制を廃止することである。
継続雇用制度には,定年後に改めて雇用契約を締結する再雇用制度と,同一の雇用契約を定年後も存続させる勤務延長制度が含まれる。

2 希望者全員を対象とする原則と例外

継続雇用制度を選ぶ場合,原則として定年後も働くことを希望する者全員を対象にしなければならない。
平成25年4月1日の改正法施行前に労使協定で設けた対象者基準を老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢に合わせて用いることができた経過措置は,令和7年3月31日に終了した。

もっとも,心身の故障により業務に堪えない場合又は勤務状況が著しく不良で職責を果たせない場合など,就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当するときは,継続雇用しないことができる。
この場合も,年齢に関する事由を用いることはできず,継続雇用しないことについて客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であることを要する(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A」Q1-1)。

3 継続雇用先の範囲

65歳までの継続雇用制度には,自社で引き続き雇用する制度のほか,法令上の特殊関係事業主が引き続き雇用する制度も含まれる。
この仕組みを利用するには,元の事業主と特殊関係事業主との間で,定年後の雇用を約する契約を締結する必要がある(高年齢者雇用安定法9条2項)。

出向元が本人を再雇用した上で在籍出向を継続する場合は,雇用主は出向元のままである。これに対し,特殊関係事業主が本人と直接に再雇用契約を結び,出向元との雇用関係が終了する場合は,定年前と同じ職場で働いても定年後の関係は在籍出向ではない。
両者の区別と必要書類は,出向中の社員が定年を迎える場合の再雇用―出向継続・業務変更・内示書・条件不合意の実務(AI作成)で整理している。

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有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルール(AI作成)

第1 この記事が扱う有期労働契約1 契約期間の定めがある労働契約2 契約期間より先に契約単位を確定する3 1回の契約期間の上限第2 締結時及び更新時に明示される事項1 令和6年4月から追加された明示事項2 更新上限を新設又は短縮する場合3 現行の雇止め基準第3 契約期間途中の解雇及び退職1 使用者による期間途中の解雇2 労働者による期間途中の退職第4 無期転換申込権1 発生要件及び申込みができる期間2 申込みの効果及び無期転換後の労働条件3 無契約期間による通算の中断4 申込権の事前放棄及び特例第5 雇止めを制限する労働契約法19条1 雇止め法理の適用要件2 更新期待の合理性を判断する事情3 更新上限及び不更新条項4 雇止め理由とは別の禁止規定第6 主要裁判例が示す区別1 雇止め法理の形成と法定化2 有期契約の更新と無期契約への移行3 期間途中の解雇と期間満了第7 待遇及び実務上の確認事項1 有期契約労働者の待遇2 使用者及び労働者が確認する資料第8 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例3 厚生労働省資料第1 この記事が扱う有期労働契約1 契約期間の定めがある労働契約

有期労働契約とは,契約の終了日が定められた労働契約である。「契約社員」「パート」「アルバイト」「嘱託」等の呼称ではなく,労働契約に期間の定めがあるかによって判断する。派遣労働者の場合,原則として労働契約上の使用者は派遣元であるため,派遣先との労働者派遣契約の終了と,派遣元との有期労働契約の終了を区別する必要がある。

本記事は,民間企業等における有期労働契約について,契約期間の上限,令和6年4月以降の労働条件明示,期間途中の解雇・退職,無期転換及び雇止めの順に,令和8年8月15日現在の制度を整理するものである。個別事案では契約書,就業規則,更新経過及び使用者の説明によって結論が変わるため,本記事は特定の事案に対する法的助言を目的とするものではない。

2 契約期間より先に契約単位を確定する

短期又は一日単位の勤務では,契約期間の上限や雇止めを検討する前に,各勤務ごとに独立した契約が成立するのか,将来の勤務枠まで含む包括的・継続的な有期契約が成立するのかを確定する必要がある。労働契約は当事者の合意により成立し(労働契約法6条),署名押印は一般的な成立要件ではない。

各回の新たな募集・依頼・承諾,双方の拒否の自由,勤務日の変動,他の労働者への代替及び回ごとの条件変更は,一勤務ごとの契約を示す事情となり得る。固定曜日の継続担当,勤務枠の恒常的確保,シフトへの自動的な組込み,将来分の一括合意及び更新を期待させる具体的説明は,包括的な契約を示す事情となり得る。

確定済みの一勤務を使用者が取り消す場合は,成立済みの有期契約の期間途中の終了として労働契約法17条が問題になり得る。これに対し,将来分の包括契約がなく,まだ個別の依頼・承諾もない勤務を依頼しない場合は,終了対象となる契約が存在するかを先に確認する。短期契約が反復されたときは,契約単位が短いという理由だけで同法19条の適用可能性がなくなるものではない。

医師のスポット勤務に即した判断事情及び証拠は,スポット勤務医師の労働契約は一勤務ごとか―定期非常勤との区別,確定シフトの取消し・雇止め・証拠(AI作成)参照。

3 1回の契約期間の上限

労働基準法14条により,1回の有期労働契約の期間は原則として3年を超えることができない。高度の専門的知識等を有する労働者及び満60歳以上の労働者については5年までとすることができ,一定の事業の完了に必要な期間を定める契約については,その事業の完了に必要な期間を定めることができる。

この上限は1回の契約期間に関するものであり,更新後を含む通算契約期間の一般的上限ではない。1回の契約期間,更新回数又は通算契約期間について使用者が設ける更新上限,労働契約法18条の通算5年ルールは,それぞれ別の制度である。

第2 締結時及び更新時に明示される事項1 令和6年4月から追加された明示事項

労働基準法15条及び労働基準法施行規則5条により,使用者は,労働契約の締結時に賃金,労働時間,契約期間その他の労働条件を明示しなければならない。令和6年4月1日以降は,全ての労働者について,就業場所及び業務の「変更の範囲」を締結時と有期労働契約の更新時に明示する必要がある。

有期労働契約については,更新上限,すなわち通算契約期間又は更新回数の上限の有無及び内容を,契約締結時と更新時ごとに明示する必要がある。無期転換申込権が発生する契約の更新時には,無期転換を申し込むことができる旨及び無期転換後の労働条件を明示しなければならない。申込権を行使しない意向を労働者が示した場合も,申込権が発生する更新時ごとの明示が必要である。具体的な記載例は,厚生労働省の令和6年4月からの労働条件明示ルール変更案内及び改正労働基準法施行規則等に係るQ&Aで確認できる。

2 更新上限を新設又は短縮する場合

契約締結後,契約の変更又は更新に際して更新上限を新設し,又は従前の上限を短縮しようとする場合,使用者は,あらかじめその理由を労働者に説明しなければならない。説明方法は法令上限定されていないが,説明した内容及び時期を後から確認できるよう,書面等の記録を残すことが紛争防止に資する。

更新上限を労働条件通知書に記載しなかったことだけから,直ちに私法上の上限が存在しないという結論が生じるとは限らない。他方,明示又は説明を欠いたことは,労働基準法上の問題となるほか,更新上限に関する合意の有無や,後述する更新期待の合理性を判断する事情になり得る。

3 現行の雇止め基準

厚生労働大臣は労働基準法14条2項に基づき,有期労働契約の締結,更新,雇止め等に関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)を定めている。令和6年4月1日以降の現行基準は,次の5項目で構成される。

①契約締結後に更新上限を新設し,又は短縮する場合の事前の理由説明,②3回以上更新した者又は雇入れから1年を超えて継続勤務した者に対する原則30日前までの雇止め予告,③労働者が請求した場合の雇止め理由証明書の遅滞ない交付,④1回以上更新し,かつ,1年を超えて継続勤務した者を更新する場合に契約期間をできる限り長くする努力義務,⑤無期転換後の労働条件を定める際に均衡を考慮した事項について説明する努力義務である。

30日前予告の対象からは,あらかじめ当該有期労働契約を更新しない旨が明示されているものが除かれる。雇止め理由証明書には,単なる「契約期間満了」ではなく,担当業務の終了,事業縮小,能力・勤務成績等,更新しなかった実質的な理由を記載することが求められる。これらの手続に違反したことだけで雇止めが当然に無効となるわけではないが,労働契約法19条による雇止めの審査とは別に履行すべき基準である。

第3 契約期間途中の解雇及び退職1 使用者による期間途中の解雇

労働契約法17条1項は,使用者が有期労働契約の期間途中に労働者を解雇するためには「やむを得ない事由」が必要であると定める。この要件は,期間の定めのない労働契約における労働契約法16条の解雇権濫用法理よりも厳格であり,使用者は,残りの契約期間を含めて雇用を継続することが困難な事情を具体的に示す必要がある。

同条2項は,使用者に対し,労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定め,その契約を反復更新しないよう配慮することも求めている。有期契約であれば終了させやすいとは限らず,期間途中の解雇と期間満了時の雇止めでは要件が異なる。

有期労働契約に試用期間を設ける場合の契約設計,期間途中の解雇及び期間満了時の取扱いについては,有期雇用契約における試用期間-設定と契約終了の法的整理(AI作成)を参照されたい。

2 労働者による期間途中の退職

労働者側が期間途中に退職する場合は,労働契約法17条1項ではなく,民法628条が基本となる。同条は,当事者にやむを得ない事由がある場合,直ちに契約を解除できるとする一方,その事由が一方当事者の過失によって生じた場合の損害賠償も定めている。

もっとも,一定の1年を超える有期労働契約については,労働基準法137条により,契約開始から1年を経過した後,労働者は使用者に申し出ることによっていつでも退職できる。一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約及び労働基準法14条1項各号に該当する契約は,この取扱いから除かれる。

これらの法定解除とは別に,労使が合意すれば,契約期間中でも合意した日をもって退職できる。また,労働者が一定の予告により期間途中に退職できる旨の,労働者に有利な契約条項又は就業規則がある場合は,その適用を確認する。有期契約であることだけで,合意退職や約定に基づく中途退職まで否定されるものではない。

派遣労働者については,派遣元との労働契約の終了と,派遣元・派遣先間の個別派遣契約の終了は別である。退職後に派遣先へ入社する際の雇用制限,紹介手数料及び中途解約等の費用については,派遣社員の直接雇用-雇用禁止条項,紹介手数料及び紹介予定派遣(AI作成)を参照されたい。

第4 無期転換申込権1 発生要件及び申込みができる期間

労働契約法18条により,同一の使用者との間で二つ以上の有期労働契約が締結され,契約期間を通算して5年を超える場合,労働者は期間の定めのない労働契約の締結を申し込むことができる。通算対象となるのは,平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする有期労働契約である。

申込権は,通算契約期間が5年を超えることになる契約の初日から発生する。例えば,1年契約を5回更新して6年目の契約を締結する場合,6年目の契約の初日から満了日まで申込みができる。5年を経過した日の翌日に自動的に無期契約へ変わる制度ではなく,労働者の申込みが必要である。申込みをしないままさらに更新した場合も,その後の更新ごとに申込権が発生する。

「同一の使用者」は原則として労働契約の当事者である法人又は個人事業主を単位として判断する。1回限りの完成事業型契約が5年を超えても,「二以上の有期労働契約」という要件を満たさないため,同条による申込権は発生しない。この点は厚生労働省の労働契約法施行通達にも明記されている。
同一法人との契約が続く限り,職種,部署,勤務地,役職又は契約名称の変更だけで通算契約期間が当然にリセットされるものではない。法人格の異なる会社への転籍・再雇用又は事業譲渡等では,契約当事者,実態及び脱法目的の有無を個別に確認する。

2 申込みの効果及び無期転換後の労働条件

労働者が無期転換を申し込むと,使用者はその申込みを承諾したものとみなされ,拒否することはできない。ただし,申込み時の有期労働契約が直ちに無期契約へ変わるのではなく,その契約の満了日の翌日から無期労働契約が始まる。口頭による申込みが一律に排除されているわけではないが,申込日及び内容を確認できる書面又は電子メール等によることが望ましい。

無期転換後の労働条件は,契約期間を除き,原則として申込み時の有期労働契約と同一である。就業規則,労働協約又は個別合意に別段の定めがある場合はその定めが問題となるが,無期転換は当然に正社員化,昇給又は職務・勤務地限定の解除を意味しない。反対に,無期転換を理由として不合理に不利益な条件を設けることが当然に許されるわけでもなく,現行の雇止め基準5条は,他の労働者との均衡を考慮した事項について説明する努力義務を定めている。

3 無契約期間による通算の中断

有期労働契約の間に一定の無契約期間があると,その前の契約期間が通算されないことがある。直前までの通算契約期間が1年以上である場合は6か月以上の無契約期間が必要であり,1年未満の場合は次のとおりである。

直前までの通算契約期間通算を中断する無契約期間2か月以下1か月以上2か月超4か月以下2か月以上4か月超6か月以下3か月以上6か月超8か月以下4か月以上8か月超10か月以下5か月以上10か月超6か月以上

休職,育児休業その他の在籍したままの不就労期間は,労働契約が終了していないため,通常は無契約期間に当たらない。クーリング期間の計算例は,厚生労働省の無期転換ルールハンドブック2025で確認できる。

同一の使用者との間で引き続き有期労働契約を締結する場合,従前と異なる契約書を作成し,又は「更新」ではなく「新規契約」「再契約」と呼んだだけでは,通算契約期間が当然に中断するものではない。
通算から除外されるためには,労働契約法18条2項及び関係省令が定める無契約期間等を確認する必要がある。

更新上限後の再雇用をあらかじめ予定しながら,無期転換申込権の発生を避けるために形式的な無契約期間を設けた疑いがある場合は,使用者の同一性,業務の継続性,再雇用の約束及び制度の目的を含め,契約関係の実態を確認する必要がある。
厚生労働省の「無期転換ルールQ&A」も,契約更新上限を設けた上で形式的にクーリング期間を設定し,期間経過後の再雇用を約束して雇止めを行う場合,その雇止めが客観的に合理的な理由を欠くものとされる可能性があると説明している。

4 申込権の事前放棄及び特例

厚生労働省の労働契約法施行通達は,無期転換申込権が発生する前に,申込権を行使しないことを更新の条件とするなど,将来の申込権を放棄させる意思表示について,労働契約法18条の趣旨を没却し,公序良俗に反して無効と解されるとしている。申込権が発生した後の放棄についても,権利内容及び不利益を理解した自由な意思に基づくかを個別に確認する必要があり,定型書式への署名だけで一律に判断することはできない。

有期雇用特別措置法に基づく認定計画の対象となる高度専門職及び定年後継続雇用者には,通算契約期間の算定に関する特例がある。高度専門職については年収1,075万円以上等の要件があり,特定有期業務の期間中,最長10年まで無期転換申込権が発生しない。定年後継続雇用者についても,第二種計画の認定を受けた事業主等に定年後引き続いて雇用される期間が対象である。制度の対象と申請手続は,厚生労働省の無期転換ルール及び有期雇用特別措置法の案内で確認できる。

科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2又は大学教員任期法7条の対象となる研究者・教員等については,労働契約法18条1項の「5年」が「10年」と読み替えられる。しかし,大学で有期雇用されていることだけで一律に10年となるわけではない。任期を定める根拠,所属する教育研究組織,職位,担当業務,必要な資格・実務経験及び任期規程を確認する必要がある。

最高裁令和6年10月31日第一小法廷判決(令和5年(受)第906号)は,実務上の知識・経験を有する者を大学院の実務家教員として任用した事案について,大学教員任期法4条1項1号の要件を充足し,同法7条による10年の特例が適用され得ると判断した。同判決は,同号を殊更に厳格に解すべきではなく,最新の実務経験・知見を不断に採り入れることが望ましい教育上の役割にも着目して原判決を破棄し,差し戻したものである。したがって,判決は全ての大学教員を10年特例の対象としたものでも,雇止めの有効性を最終判断したものでもない。

大学教員任期法の10年特例と同判決の射程は,「大学教員の有期雇用と無期転換―大学教員任期法の10年特例と最高裁令和6年10月31日判決(AI作成)」で詳しく整理する。

第5 雇止めを制限する労働契約法19条1 雇止め法理の適用要件

有期労働契約は原則として期間満了により終了するが,労働契約法19条は,一定の場合に使用者の雇止めを制限する。同条が対象とするのは,①過去に反復更新された契約について,雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できる場合,又は②契約期間満了時に更新されるものと労働者が期待することについて合理的な理由がある場合である。

労働者は,契約期間満了日までに更新を申し込むか,期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結を申し込む必要がある。雇止めに異議を述べ,就労継続の意思を明らかにする行為も申込みと評価され得る。これらの要件を満たし,使用者の更新拒絶に客観的に合理的な理由がなく,社会通念上相当と認められない場合,使用者は従前の有期労働契約と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなされる。その効果は有期契約の更新であり,当然に無期契約又は正社員契約が成立するわけではない。

ただし,19条によって成立した更新後の有期契約は,18条の通算契約期間にも組み込まれる。例えば,1年契約が5年で満了する時点で使用者が6年目の更新を拒絶しても,19条により従前と同一条件で6年目の契約申込みを承諾したものとみなされれば,通算契約期間が5年を超えることになる。労働者は,その6年目の契約期間中に18条1項の無期転換申込みをすることができる。

19条の適用だけで自動的に無期契約へ転換するわけではない。まず更新申込みと19条の要件・効果を確定し,更新によって通算期間が5年を超えるかを再計算し,その後に18条の申込みの有無と始期を確認する。この順序を飛ばして,「満了時にちょうど5年だから18条は無関係」と結論付けないことが重要である。

更新時に賃金又は所定労働日数を引き下げる条件が提示された場合は,変更後の条件についての合意の成否と,従前の条件による更新申込みに対する拒絶が労働契約法19条によって制限されるかを分けて検討する必要がある。単に条件が折り合わなかったというだけで契約終了と判断せず,同条の適用要件及び申込みの有無を確認する。新しい契約書が作成されている場合も,署名の有無と併せて,従前の条件による更新を求めた時期,異議又は留保の内容,説明・交渉の経過を確認することが有用である(労働契約法8条・19条)。

定年後再雇用における更新条件の切下げと雇止めの具体例,更新前の対応については,定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるかを参照されたい。

定年後再雇用の制度については高年齢者雇用安定法に関するメモ書き,通常の労働者との待遇差については業務内容が変わらない定年後再雇用社員の賃金水準の目安も参照されたい。

2 更新期待の合理性を判断する事情

更新期待の合理性は,契約期間満了時を基準として,契約書の文言だけでなく,契約関係の全体から判断される。主な事情は,①業務が恒常的か臨時的か,②職務内容及び正社員との相違,③更新回数及び通算勤務期間,④更新手続が実質的な審査を伴っていたか又は形式化していたか,⑤採用時及び更新時の説明・言動,⑥同種労働者の更新・雇止め実績,⑦更新上限又は不更新条項の設定時期・内容・運用,⑧更新基準と実際の運用が一貫していたかである。

初回の契約でも,採用時の具体的な説明等によっては更新期待が成立する余地がある。他方,更新回数が多いことだけで労働契約法19条の適用が決まるわけではなく,業務の性質,更新審査及び契約締結時からの説明を含む総合判断となる。

3 更新上限及び不更新条項

採用時から更新上限が明確に示され,実際にも一貫して運用されている場合,上限を超える更新期待は認められにくくなる。他方,長期間の反復更新によって更新期待が形成された後に上限を新設し,労働者が不更新条項のある契約書に署名した場合も,従前の更新期待が当然に消滅するわけではない。署名しなければ直近の更新を受けられない状況,説明内容,例外運用及び労働者が雇用継続を求めた経過等を併せて検討する必要がある。

福岡地裁令和2年3月17日判決(平成30年(ワ)第1904号)は,約30年間に29回更新された契約について,平成25年以降の契約書に5年後は更新しない旨が記載されていた事案を扱った。同判決は,不更新条項のある契約書への署名だけから契約終了の明確な意思を認定せず,従前の形骸化した更新,例外を含む制度及び雇用継続を求めた経過等を踏まえて合理的な更新期待を認め,一般的な人件費削減等の理由では雇止めの合理性を肯定するには不十分であると判断した。これは個別事案の判断であり,全ての更新上限又は雇止めを無効とするものではない。

無期転換申込権の発生を避ける動機があったことだけで,更新上限又は雇止めが直ちに無効になると断定することもできない。もっとも,厚生労働省は,無期転換ルールの適用を免れる意図で申込権発生前に雇止め等を行うことは労働契約法18条の趣旨に照らして望ましくなく,従前の更新実績等によっては雇止めが許されない場合があると説明している。

4 雇止め理由とは別の禁止規定

労働契約法19条の更新期待が認められない場合でも,妊娠・出産,育児休業,介護休業又は正当な労働組合活動等を理由とする不利益取扱いが許されるわけではない。雇止めの理由が男女雇用機会均等法,育児介護休業法又は労働組合法等の禁止規定に抵触しないかは,労働契約法19条とは別に検討する必要がある。

第6 主要裁判例が示す区別1 雇止め法理の形成と法定化

最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決(昭和45年(オ)第1175号,民集28巻5号927頁)は,反復更新された有期契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態にあった事案で,雇止めに解雇法理を類推した。最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決(昭和56年(オ)第225号,裁判集民事149号209頁)は,実質的に無期契約と同視できない場合でも,更新期待に合理性があるときは雇止めが制限され得ることを示した。労働契約法19条1号及び2号は,これらの判例法理を条文化したものである。

2 有期契約の更新と無期契約への移行

最高裁平成28年12月1日第一小法廷判決(平成27年(受)第589号)は,3年の更新限度後に無期契約へ移行できる制度について,規程の内容,本人の認識,職務の性質及び無期契約へ移行しなかった者の実績等を踏まえ,当然に無期契約へ移行したとはいえないとした。有期契約が更新される期待と,期間満了後に無期契約へ移行できる期待は同一ではなく,労働契約法18条の要件又は別の合意がないまま無期契約が成立するとは限らない。

3 期間途中の解雇と期間満了

最高裁令和元年11月7日第一小法廷判決(平成30年(受)第755号)は,有期労働契約の期間途中の解雇が労働契約法17条1項に反して無効であっても,その後に契約期間が満了した場合,契約が終了したかを別途判断しなければならないとした。期間途中の解雇が無効であることから,契約期間満了後も当然に地位が継続するわけではなく,満了後については更新の合意又は労働契約法19条の要件を検討する必要がある。

第7 待遇及び実務上の確認事項1 有期契約労働者の待遇

有期契約労働者と通常の労働者との待遇差については,短時間・有期雇用労働法8条の不合理な待遇差の禁止及び9条の差別的取扱いの禁止が中心となる。期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めていた旧労働契約法20条は,働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)により令和2年4月1日から削られ,現在の同法20条は船員に関する特例の規定であるため,現在の待遇差を労働契約法20条によって説明するのは適切でない。通常の労働者への転換措置及び説明義務を含む制度の詳細は,同一労働同一賃金で整理している。

無期転換後の労働者は,契約期間の定めがなくなるため,「有期雇用労働者」ではなくなる。もっとも,週の所定労働時間が通常の労働者より短ければ短時間労働者として同法の対象となり得るほか,労働契約法,就業規則の合理性その他の規制がなくなるわけではない。

2 使用者及び労働者が確認する資料

使用者側では,①契約開始日,更新日,通算契約期間及び無契約期間を記録すること,②契約書及び労働条件通知書に更新基準・更新上限・変更の範囲を明示すること,③申込権が発生する更新時に無期転換申込機会及び転換後の労働条件を明示すること,④更新上限を新設又は短縮する前に理由を説明すること,⑤雇止め前に更新期待,禁止される理由,30日前予告及び理由証明への対応を確認することが基本となる。労働条件の一般的な明示事項は,労働基準法に関するメモ書きも参照されたい。

労働者側では,契約書,労働条件通知書,就業規則,更新通知,評価資料及び更新に関する電子メール等を保存し,更新又は無期転換を希望する場合は,申込日と内容を確認できる方法で意思を表示することが有用である。雇止め後の申込みは「遅滞なく」行う必要があり,契約満了日が迫っている場合は,行政相談又は法律相談を含む早期の確認が必要となる。

第8 出典・参考資料1 法令・告示

①e-Gov法令検索「労働基準法」14条,15条及び137条

②e-Gov法令検索「労働契約法」6条,8条及び16条~19条

③e-Gov法令検索「民法」628条

④e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」8条,9条,13条及び14条

⑤e-Gov法令検索「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」

⑥e-Gov法令検索「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」15条の2及びe-Gov法令検索「大学の教員等の任期に関する法律」7条

⑦厚生労働省「有期労働契約の締結,更新,雇止め等に関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号,令和5年厚生労働省告示第114号による改正後)

2 裁判例

①最高裁判所第一小法廷昭和49年7月22日判決(昭和45年(オ)第1175号,民集28巻5号927頁,裁判所ウェブサイト)

②最高裁判所第一小法廷昭和61年12月4日判決(昭和56年(オ)第225号,裁判集民事149号209頁,裁判所ウェブサイト)

③最高裁判所第一小法廷平成28年12月1日判決(平成27年(受)第589号,裁判所ウェブサイト)

④最高裁判所第一小法廷令和元年11月7日判決(平成30年(受)第755号,裁判所ウェブサイト)

⑤福岡地方裁判所令和2年3月17日判決(平成30年(ワ)第1904号,裁判所ウェブサイト)

⑥最高裁判所第一小法廷令和6年10月31日判決(令和5年(受)第906号,大学教員任期法7条の10年特例,裁判所ウェブサイト)

3 厚生労働省資料

①厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります」及び「令和6年4月施行の改正労働基準法施行規則等に係るQ&A」

②厚生労働省「有期契約労働者の無期転換サイト」及び「無期転換ルールハンドブック2025」

③厚生労働省「労働契約法の施行について」の一部改正について(平成30年12月28日基発1228第17号)

④厚生労働省「無期転換ルール及び有期雇用特別措置法」

⑤厚生労働省「無期転換ルールQ&A」

労働者名簿,賃金台帳及び記録の保存(AIリライト)

第1 制度の概要と本記事の基準日1 本記事の対象2 各事業場ごとの作成義務第2 労働者名簿1 作成対象と訂正義務2 記載事項第3 賃金台帳1 作成及び記入の時期2 記載事項3 記載事項の例外及び補充4 様式と一体調製第4 電子データによる作成及び保存1 電子化に必要な機能2 本社等で一括管理する場合第5 労働関係記録の保存1 保存対象2 5年と3年の関係3 保存期間の起算日4 3年を超える保存の検討第6 違反に対する罰則1 30万円以下の罰金2 事業主に対する両罰規定第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 厚生労働省資料3 関連記事
第1 制度の概要と本記事の基準日
1 本記事の対象

本記事は,使用者が作成する労働者名簿及び賃金台帳の対象者,記載事項,様式,電子化並びに労働関係記録の保存期間を説明するものである。
内容は,令和8年9月2日現在の労働基準法及び労働基準法施行規則に基づく。

2 各事業場ごとの作成義務

使用者は,労働者名簿及び賃金台帳を,企業全体で一つではなく各事業場ごとに調製しなければならない(労働基準法107条及び108条)。
労働者名簿は日々雇い入れられる者を作成対象から除くのに対し,賃金台帳は日々雇い入れられる者についても作成する点が異なる。

第2 労働者名簿
1 作成対象と訂正義務

使用者は,各事業場ごとに,日々雇い入れられる者を除く各労働者について労働者名簿を調製しなければならない(労働基準法107条1項)。
記載事項に変更があった場合には,遅滞なく訂正しなければならない(同条2項)。

2 記載事項

労働者名簿の記載事項は,次のとおりである(労働基準法107条1項,労働基準法施行規則53条1項及び様式第19号)。
① 氏名
② 生年月日
③ 履歴
④ 性別
⑤ 住所
⑥ 従事する業務の種類
⑦ 雇入れの年月日
⑧ 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇である場合は,その理由を含む。)
⑨ 死亡の年月日及びその原因

常時30人未満の労働者を使用する事業では,⑥の従事する業務の種類を記載する必要はない(労働基準法施行規則53条2項)。

第3 賃金台帳
1 作成及び記入の時期

使用者は,各事業場ごとに賃金台帳を調製し,賃金計算の基礎となる事項,賃金額その他の法定事項を,賃金支払の都度,遅滞なく労働者各人別に記入しなければならない(労働基準法108条及び労働基準法施行規則54条1項)。
給与計算システムにデータが存在するだけでは足りず,法定事項を各労働者について確認できる賃金台帳として整える必要がある。

2 記載事項

賃金台帳の記載事項は,次のとおりである(労働基準法施行規則54条1項)。

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労働協約(AIリライト)

第1 総論
第2 労働協約の有効期間
第3 労働協約の規範的部分及び債務的部分

1 規範的部分
2 債務的部分

第4 労働協約の規範的効力の限界

1 労働組合の目的を逸脱した締結
2 既に発生した権利の遡及的処分の禁止
3 発生時点と処分内容を分ける
4 会社回答と組合の承諾
5 稼働率条項の一部無効と残部の効力

第5 労働協約の拡張適用

1 工場事業場単位の拡張適用(労働組合法17条)
2 拡張適用の限界
3 地域的拡張適用(労働組合法18条)

第6 ユニオン・ショップ協定
第7 就業規則と一体となった労働協約
第8 労働協約と労使協定の違い

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時間外労働,休日労働及び深夜労働と残業代請求(AIリライト)

目次

第1 この記事の対象と割増率の全体像1 対象範囲と基準日2 割増率と支払総額第2 労働時間に当たるか1 使用者の指揮命令下という基準2 待機,仮眠及び休憩中の対応3 労働時間の記録4 在宅勤務の打刻と残業許可制第3 法定労働時間と36協定1 1日8時間及び1週40時間2 36協定の役割と残業命令3 時間外労働の上限第4 時間外労働,休日労働及び深夜労働の区別1 法定内残業と法定時間外労働2 法定休日と所定休日3 深夜労働と割増率の重なり4 月60時間超と代替休暇第5 残業代の計算1 基本となる計算式2 基礎賃金から除外される手当3 出来高払制その他の請負制4 端数処理第6 適用除外と固定残業代1 管理監督者2 その他の適用除外と高度プロフェッショナル制度3 医療機関の宿日直許可4 固定残業代の判断第7 未払残業代を請求するときの確認事項1 請求の基礎となる資料2 請求手段と停止基準3 消滅時効と付加金4 遅延損害金第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・運用資料
第1 この記事の対象と割増率の全体像
1 対象範囲と基準日

この記事は,労働基準法上の時間外労働,休日労働及び深夜労働の区別,割増賃金の計算並びに未払残業代を請求するときの確認事項を扱うものである。
調査の基準日は令和8年9月15日であり,同日現在の法令を前提とする。
実際の計算では,労働契約,就業規則,賃金規程,変形労働時間制等の有無及び各賃金支払期に適用される法令を個別に確認する必要がある。

一般に「残業代」と呼ばれるものには,所定労働時間を超えた労働に対する通常の賃金と,労働基準法37条による割増賃金とが含まれる。
所定労働時間を超えたからといって,直ちに法定の割増率が適用されるわけではない。

2 割増率と支払総額

次の表の「割増率」は通常の1時間当たり賃金へ上乗せする割合であり,「未払時の合計率」は通常の賃金部分も支払われていない場合の合計である。
既に月給等によって通常の賃金部分が支払われているかどうかにより,追加して支払う額は異なる。

労働の区分法定の割増率通常の賃金部分も未払の場合の合計率

法定内残業0%100%
月60時間以内の法定時間外労働25%以上125%以上
月60時間を超える法定時間外労働50%以上150%以上
法定休日労働35%以上135%以上
深夜労働25%以上125%以上
月60時間以内の法定時間外労働かつ深夜労働50%以上150%以上
月60時間を超える法定時間外労働かつ深夜労働75%以上175%以上
法定休日労働かつ深夜労働60%以上160%以上

法定休日には1日8時間という時間外労働の区分を重ねず,法定休日の35%と深夜の25%だけを必要に応じて重ねる。
月60時間の算定には法定休日労働の時間を含めない。
就業規則又は労働契約が法定率より高い率を定めている場合は,その定めも確認する必要がある。

第2 労働時間に当たるか
1 使用者の指揮命令下という基準

最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決は,労働基準法上の労働時間を,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であるとした。
該当性は,労働契約,就業規則等の名称又は定めだけで決まるのではなく,労働者の行為を使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に評価できるかによって決まる。

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就業規則とは―記載事項・作成届出・周知・変更・懲戒の基本(AIリライト)

第1 就業規則の二つの役割

1 労働基準法上の作成・届出ルール
2 労働契約法上の労働条件としての効力

第2 作成・届出義務が生じる事業場

1 常時10人以上かは事業場ごとに判断する
2 10人未満でも労働契約上の効力が生じ得る

第3 就業規則に記載する事項

1 必ず記載する事項
2 制度を設ける場合に記載する事項
3 賃金規程などの別規程も就業規則の一部になり得る

第4 作成・変更・届出の手続

1 過半数組合又は過半数代表者から意見を聴く
2 過半数代表者の選出方法
3 労働基準監督署への届出と電子申請
4 本社一括届出

第5 周知と労働契約上の効力

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年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権(AIリライト)

目次第1 年次有給休暇が発生する要件と日数1 6か月の継続勤務と8割以上の出勤2 通常の労働者の付与日数3 短時間労働者の比例付与4 出勤率の計算と出勤したものとみなされる日第2 労働者による年次有給休暇の取得1 年休は使用者の承認によって発生するものではない2 利用目的は原則として労働者の自由である3 半日単位年休と時間単位年休4 欠勤後の振替,退職前の取得及び労働義務のない日5 退職代行の通知を受けた場合の勤務日別の確認第3 使用者による年5日の取得義務1 対象となる労働者2 使用者の時季指定と労働者の意見3 年次有給休暇管理簿と罰則第4 計画年休1 労使協定で計画的に付与できる範囲2 年休が不足する労働者と計画日の変更3 所定休日及び会社休業日との区別第5 使用者の時季変更権1 事業の正常な運営を妨げる場合2 直前の申出と事後の時季変更3 代替要員の確保と具体的事情4 長期連続年休と集中的訓練第6 年休中の賃金,不利益取扱い,買上げ及び時効1 年休中の賃金2 不利益取扱い3 未取得年休の買上げ4 年休権の時効第7 労災保険の休業給付及び健康保険の傷病手当金との関係1 労災保険の休業補償給付等2 健康保険の傷病手当金第8 実務上確認すべき事項1 労働者が確認する事項2 使用者が確認する事項3 関連記事第9 出典1 法令2 行政資料3 裁判例
第1 年次有給休暇が発生する要件と日数
1 6か月の継続勤務と8割以上の出勤

本記事は,令和8年9月2日現在の法令及び公表資料に基づき,労働基準法上の年次有給休暇を整理したものである。
使用者は,雇入れの日から6か月間継続して勤務し,その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に,原則として10労働日の年次有給休暇を与えなければならない(労働基準法39条1項)。
雇用形態が正社員か,契約社員か,パートタイマーかによって,この権利の有無が決まるものではない。

継続勤務は,契約の形式だけでなく,実質的に使用関係が続いているかによって判断される。
そのため,有期労働契約が更新された場合や,同じ使用者の下でパートタイマーから正社員へ転換した場合も,実質的な使用関係が継続していれば,転換前の期間を通算するのが原則である。

2 通常の労働者の付与日数

週5日以上勤務する労働者,週所定労働時間が30時間以上の労働者又は年間所定労働日数が217日以上の労働者については,継続勤務年数に応じて次のとおり付与される(厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」)。

継続勤務年数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上付与日数10日11日12日14日16日18日20日

各基準日前の1年間について8割以上出勤したときに,次の年の年休が発生する。
したがって,6か月経過時に10日が発生した後は,原則として1年ごとに出勤率と付与日数を判定する。

3 短時間労働者の比例付与

週所定労働日数が4日以下で,週所定労働時間が30時間未満の労働者には,週又は年間の所定労働日数に応じて比例付与が行われる。
法定の付与日数は次のとおりである。

週所定労働日数年間所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上4日169日~216日7日8日9日10日12日13日15日3日121日~168日5日6日6日8日9日10日11日2日73日~120日3日4日4日5日6日6日7日1日48日~72日1日2日2日2日3日3日3日

勤務日数が年度によって定まらない場合は,基準日における労働契約の内容を確認する必要がある。
また,週4日以下でも週所定労働時間が30時間以上であれば,比例付与ではなく通常の労働者の日数表が適用される。

4 出勤率の計算と出勤したものとみなされる日

出勤率は,原則として,出勤日数を全労働日で除して計算する。
業務上の負傷又は疾病による療養のために休業した期間,産前産後休業期間,育児休業・介護休業期間及び年次有給休暇を取得した日は,出勤したものとみなされる(労働基準法39条10項)。

使用者が正当な理由なく就労を拒否した期間について,最高裁平成25年6月6日判決は,無効な解雇によって就労できなかった日を全労働日と出勤日数の双方に算入すべきものとした(平成23年(受)第2183号・民集67巻5号1187頁)。
他方で,使用者の責めに帰すべき事由による休業日を含め,労働者に就労義務がなかった日を全労働日に含めるかは,休業の原因と法的性質を区別して判断する必要がある。

第2 労働者による年次有給休暇の取得
1 年休は使用者の承認によって発生するものではない

年休権は,労働基準法所定の要件を満たすことによって法律上発生する。
労働者が休む日を指定すると,使用者が適法に時季変更権を行使しない限り,その日の就労義務が消滅するのであり,使用者の承認を得て初めて年休になるものではない(最高裁昭和48年3月2日判決・昭和41年(オ)第848号・民集27巻2号191頁)。

もっとも,就業規則で年休申請の期限や手続を定めることは,使用者が事業運営への支障を検討するための合理的な範囲で認められる。
期限に遅れた申請が当然に無効になるわけではないが,直前の申請は,使用者が時季変更権を判断する余裕や代替要員を確保する可能性に影響する。

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職場のハラスメント防止-種類・事業主の措置義務・主要最高裁判例(AIリライト)

目次

第1 この記事の対象と法制度の全体像1 基準日と対象2 法律上の類型と通称の区別3 四つの判断枠組み第2 法律上の主なハラスメント1 パワーハラスメント2 セクシュアルハラスメント3 妊娠・出産及び育児・介護休業等に関するハラスメント4 フリーランスに対するハラスメント第3 パワーハラスメントの三つの要素1 優越的な関係を背景とした言動2 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動3 就業環境が害されること4 職場及び労働者の範囲第4 パワーハラスメントの六つの代表的類型1 身体的な攻撃及び精神的な攻撃2 人間関係からの切り離し3 過大な要求及び過小な要求4 個の侵害第5 事業主が講ずべき措置1 方針の明確化と周知・啓発2 相談体制の整備3 事後の迅速かつ適切な対応4 プライバシー保護と不利益取扱いの禁止5 匿名性と反論機会を両立させる調査方法6 相談窓口の設置と実効性は別である7 行政上の援助と紛争解決第6 精神障害の労災認定との関係1 令和5年認定基準2 パワーハラスメントの評価3 ハラスメントを理由とする休職と休職期間満了による退職第7 主要最高裁判例1 最高裁平成27年2月26日第一小法廷判決2 最高裁令和4年6月14日第三小法廷判決3 最高裁令和4年9月13日第三小法廷判決4 最高裁令和7年9月2日第三小法廷判決(停職処分)5 最高裁令和7年9月2日第三小法廷判決(懲戒免職処分)6 各判決の射程第8 令和8年10月1日施行の改正1 カスタマーハラスメント対策2 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 行政資料3 裁判例4 解説資料
第1 この記事の対象と法制度の全体像
1 基準日と対象

本記事は,令和8年9月23日現在の法令及び公表資料に基づき,職場のハラスメントの法的区分,パワーハラスメントの判断要素,事業主の措置義務,調査実務,精神障害の労災認定並びに主要最高裁判例を整理するものである。
令和8年10月1日に施行される改正については,現行制度と区別して第8で取り上げる。

職場のハラスメントという名称だけで,民事上の違法性,労災認定,懲戒処分の有効性又は事業主の措置義務違反が直ちに決まるものではない。
それぞれの制度ごとに,適用される法令,指針及び判断要素を確認する必要がある。

2 法律上の類型と通称の区別

職場のハラスメントについては,主として,①パワーハラスメント,②セクシュアルハラスメント,③妊娠・出産に関するハラスメント,④育児・介護休業等に関するハラスメントの防止措置が法律上定められている。
また,業務委託の相手方であるフリーランスに対しては,特定の発注事業者に別の措置義務が定められている。

アルコールハラスメント,時短ハラスメントその他の通称は,問題となる言動の特徴を示すことはあっても,それ自体が独立した法律上の類型であるとは限らない。
通称だけで結論を出さず,実際の言動と当事者の関係を各法令の要件に当てはめる必要がある。

3 四つの判断枠組み

実務では,少なくとも,①事業主に防止措置義務があるか,②個別の言動について民事上の責任が生じるか,③精神障害が労災として認定されるか,④行為者に対する懲戒処分等が有効かを区別する必要がある。
例えば,パワーハラスメント防止措置の対象となる言動と,精神障害の労災認定で心理的負荷を評価する出来事とは,目的も判断方法も同一ではない。

第2 法律上の主なハラスメント
1 パワーハラスメント

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2第1項(令和8年10月1日からは同法31条1項。文言は同じ)は,職場における優越的な関係を背景とした言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されることのないよう,事業主が必要な措置を講じなければならないと定めている。
この三つの要素は,第3で説明する。

同条2項は,労働者が相談したこと又は事業主による事実確認に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止している。
同法30条の3は,国,事業主及び労働者の責務を定めている。

2 セクシュアルハラスメント

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条1項は,職場における性的な言動に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受け,又は性的な言動により就業環境が害されることのないよう,事業主が必要な措置を講じなければならないと定めている。
被害を受ける者の性別を問わず,同性に対する言動も対象となり得る。

同条2項は,相談又は事実確認への協力を理由とする不利益取扱いを禁止している。
同条3項は,他の事業主から事実確認等に必要な協力を求められた場合に,事業主がこれに応ずるよう努めることを定めている。

3 妊娠・出産及び育児・介護休業等に関するハラスメント

男女雇用機会均等法11条の3第1項は,女性労働者が妊娠又は出産に関する制度若しくは措置を利用したこと,妊娠したこと又は出産したこと等に関する言動により就業環境が害されることのないよう,事業主が必要な措置を講じなければならないと定めている。
同条2項は,相談又は事実確認への協力を理由とする不利益取扱いを禁止している。

育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律25条1項は,育児休業,介護休業その他の制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されることのないよう,事業主が必要な措置を講じなければならないと定めている。
同条2項は,相談又は事実確認への協力を理由とする不利益取扱いを禁止している。
同法28条に基づく指針(平成21年厚生労働省告示第509号)は,制度等の利用の申出等又は利用を阻害する言動を典型例として挙げる一方,「ただし、労働者の事情やキャリアを考慮して、早期の職場復帰を促すことは制度等の利用が阻害されるものに該当しないこと。」としている。
この記載は,育児休業を最長2歳まで延長した平成29年10月の改正に合わせて加えられたものであり,同改正の概要資料は,職場復帰のタイミングは労働者の選択に委ねられることに留意が必要であるとしている。
経緯と現在の手続は,平成29年10月の厚生労働省制度変更―育児休業の2歳までの延長,厚生年金保険料率の固定,療養病床の光熱水費及び最低賃金の現在で整理している。

4 フリーランスに対するハラスメント

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律14条は,特定業務委託事業者に対し,業務委託に係る特定受託業務従事者について,性的な言動,妊娠又は出産に関する言動及び取引上の優越的な関係を背景とした言動による就業環境の侵害を防ぐため,相談対応その他の必要な体制整備等を義務付けている。
同条2項は,相談又は事実確認への協力を理由とする契約解除その他の不利益取扱いを禁止している。

この制度は,雇用される労働者を対象とする前記各法とは対象者及び義務主体が異なる。
契約の名称だけで判断せず,法律上の定義を確認する必要がある。

第3 パワーハラスメントの三つの要素
1 優越的な関係を背景とした言動

優越的な関係を背景とした言動とは,言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することが困難である関係を背景として行われるものをいう。
典型は上司から部下への言動であるが,同僚又は部下であっても,業務上必要な知識若しくは経験を持つ者である場合又は集団による行為で抵抗が困難な場合等には該当し得る。

2 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動

業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動かどうかは,言動の目的,言動を受けた労働者の問題行動の有無及び内容,言動の態様,頻度及び継続性,労働者の属性及び心身の状況,行為者との関係等を総合して判断される。
客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示又は指導は,パワーハラスメントには当たらない。

3 就業環境が害されること

就業環境が害されるとは,言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ,就業環境が不快なものとなったため,能力の発揮に重大な悪影響が生じる等,就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいう。
判断に当たっては,平均的な労働者の感じ方を基準としつつ,言動の内容及び状況を個別に検討する。

(続きを読む...)職場のハラスメント防止-種類・事業主の措置義務・主要最高裁判例(AIリライト)

労働安全衛生法の概要,労働時間の状況把握及び令和7年改正(AIリライト)

第1 この記事の対象及び労働安全衛生法の目的1 この記事の対象2 法律の目的3 主な規制分野第2 事業者及び注文者等の責務1 事業者の責務2 仕事を他人に請け負わせる者の配慮3 安全衛生管理体制第3 労働時間の状況の把握義務1 把握義務の目的及び対象者2 把握方法及び記録の保存3 労働基準法上の労働時間との違い第4 労働災害防止計画1 法律上の根拠2 第14次労働災害防止計画第5 令和7年改正及び近時の施行事項1 令和7年法律第33号の概要2 小規模事業場のストレスチェック3 熱中症を生ずるおそれのある作業への対応第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 所管行政機関の解説・運用資料3 裁判例
第1 この記事の対象及び労働安全衛生法の目的
1 この記事の対象

この記事は,令和8年9月2日現在の法令及び厚生労働省の公表資料に基づき,労働安全衛生法の目的と主な規制,労働時間の状況の把握,第14次労働災害防止計画及び令和7年改正の施行状況を整理するものである。
安全管理者,衛生管理者,産業医,健康診断及び残業代の個別論点は,後掲の関連記事で詳しく取り扱う。

2 法律の目的

労働安全衛生法1条は,労働基準法と相まって,労働災害防止のための危害防止基準の確立,責任体制の明確化及び自主的活動の促進等により,職場における労働者の安全と健康を確保し,快適な職場環境の形成を促進することを目的としている。
労働災害が発生した後の補償だけでなく,危険又は健康障害を発生させないための管理体制及び具体的措置を定める法律である。

3 主な規制分野

労働安全衛生法が定める主な事項は,次のとおりである。
①事業場の規模及び業種に応じた安全衛生管理体制並びに安全委員会及び衛生委員会の設置である。
②機械,爆発性物質,電気,作業方法等による危険及び原材料,ガス,粉じん,騒音,振動等による健康障害を防止する措置である。
③雇入れ時等の安全衛生教育及び一定の危険又は有害な業務についての就業制限である。
④作業環境測定,健康診断,長時間労働者に対する面接指導その他の健康確保措置である。
⑤国が重点的に取り組む事項を定める労働災害防止計画である。

第2 事業者及び注文者等の責務
1 事業者の責務

労働安全衛生法3条1項は,事業者に対し,法令上の最低基準を守るだけでなく,快適な職場環境の実現及び労働条件の改善を通じて,労働者の安全と健康を確保するよう求めている。
個別の義務は事業場の業種,規模,設備及び作業内容によって異なるため,法律だけでなく,労働安全衛生法施行令及び労働安全衛生規則も確認する必要がある。

2 仕事を他人に請け負わせる者の配慮

令和7年法律第33号による改正後の労働安全衛生法3条3項は,建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者に対し,施工方法,作業方法,工期,納期等について,安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮することを求めている。
令和7年改正により,令和7年5月14日から,この配慮規定が建設工事以外の仕事を他人に請け負わせる者にも広く適用されることが明確化された。

3 安全衛生管理体制

総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者,産業医,安全衛生推進者及び衛生推進者の選任要件は,職種ごとに対象業種,事業場の労働者数,資格,専任又は専属の要否及び職務が異なる。
これらの詳細は,総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医並びに安全衛生推進者及び衛生推進者を参照されたい。

第3 労働時間の状況の把握義務
1 把握義務の目的及び対象者

平成31年4月1日以降,事業者は,長時間労働者に対する医師の面接指導等を適切に実施するため,労働安全衛生法66条の8の3及び労働安全衛生規則52条の7の3に基づき,労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。
ここでいう労働時間の状況の把握は,労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間,労務を提供し得る状態にあったかを健康確保の観点から把握するものである。

厚生労働省の働き方改革関連法に関するパンフレット6頁~7頁によれば,対象には,管理監督者,事業場外労働のみなし労働時間制の適用者及び裁量労働制の適用者も含まれる。

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職業安定法と採用活動-職業紹介,求人情報,社員紹介及び公正採用選考(AIリライト)

目次

第1 この記事の対象と基準日1 この記事で扱う事項2 最初に区別すべき三つの場面第2 職業紹介の定義及び許可・届出1 職業紹介の定義2 有料職業紹介及び無料職業紹介3 職業紹介に関する最高裁判例第3 募集情報等提供及び求人情報の表示1 募集情報等提供事業2 求人情報の的確な表示3 令和6年4月から追加された明示事項4 令和7年4月からの金銭等の提供及び利用料金の表示5 インターネット上の募集広告に表示する事項第4 社員紹介制度1 社員紹介と職業紹介事業の区別2 紹介した社員に対する報奨3 中間搾取の禁止との関係第5 公正な採用選考1 適性及び能力に基づく選考2 性別,年齢及び障害に関する規制3 履歴書様式及び採用時の質問第6 応募者の個人情報1 職業安定法上の取扱い2 要配慮個人情報及び第三者提供3 身元調査,SNS及びAIを利用した選考第7 出典1 法令及び省令2 裁判例3 法令に基づく指針4 所管行政機関の解説及び資料5 文献及び関連記事
第1 この記事の対象と基準日
1 この記事で扱う事項

この記事では,採用活動のうち,職業紹介と募集情報等提供の区別,求人情報の表示,社員紹介制度,公正な採用選考及び応募者の個人情報の取扱いを説明する。
法令及び行政資料は令和8年9月2日現在の内容に基づく。
募集後の面接,健康情報,内定,試用期間及び本採用拒否については,「中途採用における使用者側の留意点――募集・選考・内定・試用期間の実務(AI作成)」で詳しく説明している。

2 最初に区別すべき三つの場面

採用に関するサービスは,①求人者と求職者との雇用関係の成立をあっせんする職業紹介,②求人情報又は求職者情報を提供する募集情報等提供,③使用者が自ら労働者を募集する直接募集に大別できる。
名称が求人サイト,スカウト又は社員紹介であるかではなく,誰が,どの情報を,どのように選別,加工又は伝達し,雇用関係の成立にどこまで関与するかを確認する必要がある。

第2 職業紹介の定義及び許可・届出
1 職業紹介の定義

職業安定法4条1項は,職業紹介を,求人及び求職の申込みを受け,求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることと定義している。
単に求人情報を掲載するだけの場合と異なり,事業者が求人者又は求職者を選別し,両者の意思疎通を中継し,又は採用条件の調整に関与する場合は,職業紹介に該当する可能性がある。

厚生労働省の「職業紹介事業と募集情報等提供事業の区分」は,提供する情報を事業者の判断で選別すること,求人者又は求職者に応じて情報を加工すること及び意思疎通の内容を加工することなどを区分上の考慮要素として示している。
検索条件に従った機械的な絞込み又は利用者の閲覧履歴に基づく表示が直ちに職業紹介となるわけではないが,サービスの実態を個別に確認する必要がある。

2 有料職業紹介及び無料職業紹介

有料職業紹介事業を行うには,職業安定法30条に基づく厚生労働大臣の許可が必要である。
無料職業紹介事業についても同法33条の許可が原則であるが,学校等は33条の2,特別の法律により設立された法人等は33条の3,地方公共団体は29条に,届出等の特則が設けられている。33条の4は,公共職業安定所が学校等による職業紹介を援助する旨の規定である。

したがって,無償であれば常に許可又は届出が不要になるわけではない。
サービスの反復継続性,利用料その他の対価,事業者の関与方法及び適用される主体別の特則を確認する必要がある。

有料職業紹介の許可や届出手数料表があることと,特定の求人者に手数料の支払義務があることは別である。手数料に関する規制(職業安定法32条の3)及び明示義務(32条の13)を踏まえ,個別契約の料率,算定基礎,対象となる採用及び支払条件を確認する。手数料表の上限が,そのまま合意した料率になるわけではない。

派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合の紹介手数料及びその他の費用については,派遣社員の直接雇用-雇用禁止条項,紹介手数料及び紹介予定派遣(AI作成)で説明している。

有料職業紹介における紹介手数料,直接採用・中抜き時の違約金,令和7年4月以後の明示義務及び条項例については,人材紹介の紹介手数料・違約金-直接採用条項の有効性と条項例(AI作成)で説明している。

3 職業紹介に関する最高裁判例

最高裁昭和29年3月11日判決(昭和27年(あ)第3626号,刑集8巻3号240頁)は,職業安定法上の雇用関係について,必ずしも民法上の雇用契約に限られないとの趣旨を示した。
職業紹介に該当するかを契約の名目だけで判断できないことを示す判例である。

最高裁平成6年4月22日判決(平成3年(オ)第1943号,民集48巻3号944頁)は,求人企業から依頼を受けて対象者を探索し,転職を勧誘して雇用関係の成立をあっせんするいわゆるスカウト行為が職業紹介に含まれ得ることを前提として,手数料に関する契約の効力を判断した。
同判決が参照した当時の定義規定は旧5条1項であり,現行法では4条1項に置かれている。

第3 募集情報等提供及び求人情報の表示
1 募集情報等提供事業

募集情報等提供とは,求人情報又は求職者情報を労働者になろうとする者又は求人者等に提供する事業であり,令和4年10月施行の改正職業安定法により規律が整備された。
求職者に関する情報を収集して募集情報等を提供する特定募集情報等提供事業者は,職業安定法43条の2に基づく届出を要する。

特定募集情報等提供事業者には,労働者になろうとする者への金銭等の提供に関する規制,事業概況報告,事業情報の公開,苦情処理及び個人情報の適正な管理等が課される。
制度の全体像及び届出様式は,厚生労働省の「募集情報等提供事業」で確認できる。

2 求人情報の的確な表示

職業安定法5条の4は,求人者,職業紹介事業者及び募集情報等提供事業者等に対し,求人等に関する情報について虚偽又は誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めている。
また,正確かつ最新の内容に保つための措置を講じなければならない。

求人を終了したのに掲載を続けること,実際の業務と著しく異なる名称を用いること,又は固定残業代を基本給と区別せずに表示することは,応募者に誤解を生じさせる原因となる。
求人情報の掲載後も,募集の終了,労働条件の変更及び求人者からの訂正依頼を反映する運用が必要である。

3 令和6年4月から追加された明示事項

令和6年4月1日から,求人時に明示すべき労働条件として,①従事すべき業務の変更の範囲,②就業場所の変更の範囲及び③有期労働契約を更新する場合の基準が追加された。
更新上限がある場合は,通算契約期間又は更新回数の上限も明示する必要がある。

厚生労働省の「令和6年4月より,募集時等に明示すべき事項が追加されます」には,求人票の記載例が掲載されている。
求人広告,職業紹介事業者への求人申込み及び自社ウェブサイトの募集要項を同じ基準で点検するのが実務上有用である。

4 令和7年4月からの金銭等の提供及び利用料金の表示

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安全衛生管理体制の選任基準-総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医等(AIリライト)

第1 選任制度の全体像1 この記事の対象2 常時使用する労働者数の数え方3 六つの役割の比較4 選任期限及び届出第2 総括安全衛生管理者1 選任が必要となる事業場2 資格及び職務第3 安全管理者1 選任が必要となる業種及び規模2 資格3 専属と専任4 職務,巡視及び権限第4 衛生管理者1 選任人数及び資格2 専属,専任及び衛生工学衛生管理者3 職務,巡視及び権限第5 産業医1 選任人数,専属及び欠格事由2 資格要件3 職務,情報提供,勧告及び権限4 巡視及び50人未満の事業場第6 安全衛生推進者及び衛生推進者1 選任が必要となる事業場2 能力,専属及び周知3 職務及び能力向上教育第7 未選任の罰則及び統括安全衛生責任者との違い1 未選任の罰則2 統括安全衛生責任者との違い第8 労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタントの試験区分第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 行政資料及び試験案内
第1 選任制度の全体像
1 この記事の対象

事業者は,事業場の業種及び常時使用する労働者数に応じて,総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者,産業医,安全衛生推進者又は衛生推進者を選任する必要がある。
本記事は,令和8年9月2日現在の労働安全衛生法,労働安全衛生法施行令及び労働安全衛生規則に基づき,これらの選任基準,資格,職務,巡視,届出及び罰則を整理するものである。

選任義務は,企業全体の人数ではなく,工場,支店,店舗等の「事業場」を単位として判断する。
同じ会社に複数の事業場がある場合,各事業場について業種及び労働者数を確認する必要がある。

2 常時使用する労働者数の数え方

厚生労働省は,「常時使用する労働者の数」とは,日雇労働者,パートタイマー等の臨時的労働者を含む,常態として使用する労働者の数であるとしている。
派遣中の労働者は,原則として派遣先と派遣元の双方で数えるが,安全管理者については選任義務が派遣先事業場にだけ課されるため,派遣先において数える。

3 六つの役割の比較
役割主な選任対象主な役割総括安全衛生管理者業種に応じて常時100人,300人又は1000人以上安全管理者,衛生管理者等を指揮し,安全衛生業務を統括する。安全管理者法定の業種で常時50人以上安全に関する技術的事項を管理する。衛生管理者全業種で常時50人以上衛生に関する技術的事項を管理する。産業医全業種で常時50人以上医学的立場から労働者の健康管理等を行う。安全衛生推進者安全管理者の選任対象業種で常時10人以上50人未満安全及び衛生に関する業務を担当する。衛生推進者上記以外の業種で常時10人以上50人未満衛生に関する業務を担当する。

安全管理者,衛生管理者及び産業医は,いずれも常時50人以上のすべての事業場で一律に必要となるわけではない。
安全管理者は業種による限定があるのに対し,衛生管理者及び産業医は業種を問わず必要となる点に注意を要する。

4 選任期限及び届出

総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医は,選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任し,遅滞なく所轄労働基準監督署長へ報告する必要がある。
令和7年1月1日以降,これらの選任報告を含む労働安全衛生関係の一部手続は,原則として電子申請によることが義務化されている。

安全衛生推進者及び衛生推進者も,選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任する必要があるが,労働基準監督署長への選任報告は不要である。
ただし,選任した者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示するなどして,関係労働者に周知しなければならない。

第2 総括安全衛生管理者
1 選任が必要となる事業場

総括安全衛生管理者の選任基準は,次のとおりである。

業種常時使用する労働者数林業,鉱業,建設業,運送業及び清掃業100人以上製造業(物の加工業を含む。),電気業,ガス業,熱供給業,水道業,通信業,各種商品卸売業,家具・建具・じゅう器等卸売業,各種商品小売業,家具・建具・じゅう器小売業,燃料小売業,旅館業,ゴルフ場業,自動車整備業及び機械修理業300人以上その他の業種1000人以上
2 資格及び職務

総括安全衛生管理者には,特別の免許又は国家資格は要求されていない。
もっとも,事業の実施を実質的に統括管理する権限及び責任を有する者を選任しなければならないため,形式的な肩書だけで判断することはできない。

総括安全衛生管理者は,安全管理者,衛生管理者又は労働安全衛生法第25条の2第2項に基づく技術的事項を管理する者を指揮するとともに,労働者の危険又は健康障害を防止する措置,安全衛生教育,健康診断その他の健康保持増進措置,労働災害原因の調査及び再発防止対策等を統括管理する。
総括安全衛生管理者が旅行,疾病等により職務を行うことができないときは,代理者を選任する必要がある。

第3 安全管理者
1 選任が必要となる業種及び規模

安全管理者は,常時50人以上の労働者を使用する事業場のうち,次の業種で選任する必要がある。
①林業,鉱業,建設業,運送業及び清掃業
②製造業(物の加工業を含む。),電気業,ガス業,熱供給業,水道業,通信業,各種商品卸売業,家具・建具・じゅう器等卸売業,各種商品小売業,家具・建具・じゅう器小売業,燃料小売業,旅館業,ゴルフ場業,自動車整備業及び機械修理業

2 資格

安全管理者は,安全管理者選任時研修を修了し,大学又は高等専門学校の理科系課程卒業後2年以上,高等学校又は中等教育学校の理科系課程卒業後4年以上等の産業安全の実務経験を有する者のほか,労働安全コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者から選任する。
学歴,専攻,実務経験及び研修の組合せには細かな要件があるため,個別の候補者について法令及び研修実施機関の案内を確認する必要がある。

3 専属と専任

安全管理者は,原則としてその事業場に専属の者を選任する。
安全管理者を2人以上選任する場合において,そのうち1人を労働安全コンサルタントから選任するときは,当該コンサルタントについて専属要件の例外が認められる。

「専属」はその事業場に所属することを意味し,「専任」は通常の勤務時間を専ら安全管理者の職務に充てることを意味する。
次の事業場では,安全管理者のうち少なくとも1人を専任とする必要がある。

業種等常時使用する労働者数等建設業,有機化学工業製品製造業及び石油製品製造業300人以上無機化学工業製品製造業,化学肥料製造業,道路貨物運送業及び港湾運送業500人以上紙・パルプ製造業,鉄鋼業及び造船業1000人以上その他の安全管理者選任対象業種2000人以上で,過去3年間の休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場
4 職務,巡視及び権限

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労働者派遣法の基本-禁止業務,期間制限,派遣契約及び違法派遣(AIリライト)

第1 労働者派遣法の対象と基本構造

1 この記事の対象と基準日
2 派遣元,派遣先及び派遣労働者の関係
3 労働者供給,請負及び在籍型出向との違い

第2 労働者派遣法の沿革

1 制定から対象業務の原則自由化まで
2 平成15年,平成24年及び平成27年改正
3 令和2年以降の均等・均衡待遇

第3 禁止又は制限される労働者派遣

1 港湾運送業務,建設業務及び警備業務
2 病院等における医療関係業務
3 日雇派遣
4 労働争議中の派遣及び有害業務

第4 労働者派遣契約

1 法定の記載事項
2 基本契約と個別契約
3 派遣労働者を特定する行為
4 中途解除と費用負担

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従業員の健康診断-対象者・検査項目・費用・事後措置(AIリライト)

第1 本記事の対象と基準日第2 職場の健康診断の種類1 一般健康診断2 特殊健康診断第3 健康診断の対象となる労働者1 「常時使用する労働者」2 短時間・有期契約の労働者3 派遣労働者第4 雇入時の健康診断1 目的と時期2 検査項目3 3か月以内の健康診断結果の利用第5 定期健康診断1 実施頻度と検査項目2 項目を省略できる場合3 現行の血糖検査第6 労働者の受診義務と他の医師の利用第7 健康診断の費用と受診時間の賃金1 法定健康診断の費用2 受診に要する時間の賃金第8 結果の通知・保存・医師の意見及び事後措置1 結果の通知と5年間の保存2 医師等の意見の聴取3 就業上の措置と保健指導第9 労働基準監督署への結果報告第10 健康情報の取扱い1 収集・保管・使用の範囲2 取扱者と社内共有の限定第11 健康診断に関する裁判例1 最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決2 千葉地裁平成12年6月12日判決第12 令和9年4月1日からの改正第13 人間ドックの税務と関連記事1 人間ドック費用の給与課税2 関連記事第14 出典・参考資料1 法令・告示・通達2 裁判例3 行政資料
第1 本記事の対象と基準日

本記事は,一般の事業場における雇入時の健康診断と定期健康診断を中心に,対象者,検査項目,費用,結果に基づく事後措置及び健康情報の取扱いを整理するものである。
有害業務ごとの特殊健康診断は種類が多く,業務ごとに根拠法令と項目が異なるため,本記事では概要にとどめる。

本記事は,令和8年9月2日現在施行されている法令及び同日までに公表された行政資料に基づく。
令和9年4月1日からの検査項目の変更は公布済みであるが,まだ施行されていないため,第12で現行制度と区別して説明する。

第2 職場の健康診断の種類
1 一般健康診断

労働安全衛生法66条1項に基づく一般健康診断には,雇入時の健康診断,定期健康診断,特定業務従事者の健康診断,海外派遣労働者の健康診断等がある。
事業場附属の食堂又は炊事場で給食業務に従事する労働者には,雇入れ又は配置換えの際の検便も必要である。

種類主な対象実施時期雇入時の健康診断常時使用する労働者雇入れの際定期健康診断常時使用する労働者1年以内ごとに1回特定業務従事者の健康診断深夜業を含む業務等に常時従事する労働者配置換えの際及び6か月以内ごとに1回海外派遣労働者の健康診断6か月以上海外へ派遣する労働者派遣前及び帰国後給食従業員の検便事業場附属の食堂又は炊事場の給食従事者雇入れ又は配置換えの際
2 特殊健康診断

労働安全衛生法66条2項及び3項等に基づく特殊健康診断は,有機溶剤,鉛,特定化学物質,電離放射線,石綿等の有害業務に伴う健康障害を早期に把握するためのものである。
定期健康診断だけを実施しても,該当する有害業務の特殊健康診断に代えることはできない。

第3 健康診断の対象となる労働者
1 「常時使用する労働者」

雇入時の健康診断と定期健康診断の対象は,「常時使用する労働者」である。
対象となるかは正社員,契約社員,パートタイマー又はアルバイトという名称ではなく,契約期間と週所定労働時間によって判断する。

2 短時間・有期契約の労働者

短時間労働者については,次の①及び②の両方を満たす場合,法定の一般健康診断の対象となる。

①期間の定めのない労働契約により使用される者,又は有期契約であっても,契約期間が1年以上である者,更新により1年以上使用される予定の者,又はすでに1年以上引き続き使用されている者であること。
特定業務に従事する短時間労働者については,この期間は6か月である。
②1週間の労働時間数が,同じ事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

①を満たし,週所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満であっても,おおむね2分の1以上である者については,一般健康診断を実施することが望ましいとされている。
この判断基準は,健康保険・厚生年金保険の加入要件とは別のものである。

3 派遣労働者

派遣労働者の雇入時健康診断や定期健康診断などの一般健康診断は,原則として派遣元事業者が実施する。
これに対し,派遣先の有害業務に係る特殊健康診断は派遣先事業者が実施するため,両者の連絡調整が必要である。

第4 雇入時の健康診断
1 目的と時期

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令和8年10月1日施行の改正同一労働同一賃金ガイドラインに基づき,民間企業で対応が必要な事項(AI作成)

第1 改正の対象と企業対応の出発点

1 令和8年10月1日に変わるもの
2 対象となる労働者を先に分類する
3 最初に作成すべき待遇一覧表

第2 新たに明記された六つの待遇と記載が拡充された待遇

1 六つの新規項目
2 賞与及び病気休職・病気休暇
3 六項目以外の待遇も点検する

第3 雇入れ時の明示と待遇差の説明方法

1 労働条件通知書等への追加事項
2 説明資料に必要な内容
3 説明不足が実体判断にも影響する

第4 待遇差を判断する法的枠組み

1 待遇ごとに性質・目的を認定する
2 規程と人事運用の実態を一致させる
3 抽象的な人材確保目的は免責理由にならない
4 定年後再雇用及び無期転換

(続きを読む...)令和8年10月1日施行の改正同一労働同一賃金ガイドラインに基づき,民間企業で対応が必要な事項(AI作成)

「労働者性」の判断基準-労基法・労契法・労組法の違いと主要判例(AIリライト)

第1 この記事の対象と調査の基準日1 この記事が扱う労働者性2 契約書の名称だけでは決まらないこと第2 労基法・労契法上の労働者の定義1 労働基準法9条と同法11条2 労働契約法2条1項第3 昭和60年報告の判断枠組み1 使用従属性の2つの柱2 指揮監督下の労働を示す事情3 報酬の労務対償性4 判断を補強する要素第4 労基法上の主要な最高裁判例1 結論だけでなく判断事実を比較すること第5 業種・働き方に応じた判断1 建設業の手間請け従事者と芸能関係者2 フリーランスとチェックリスト3 プラットフォーム就労と検討中の論点第6 労組法上の労働者性1 労基法とは目的が異なること2 平成23年報告の6つの判断要素3 労組法上の主要な最高裁判例4 労働者性と使用者性を分けること5 プラットフォーム配達員の例第7 労災保険・雇用保険その他の法律との関係1 労災保険と特別加入2 在宅勤務者の雇用保険3 労働安全衛生法と最低賃金法の定義上の除外第8 労働者性を検討するための資料1 判断要素と客観資料を対応させること2 外形的な取扱いの限界第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例・労働委員会命令・行政処分3 所管行政機関の報告・解説・運用資料4 文献
第1 この記事の対象と調査の基準日
1 この記事が扱う労働者性

この記事は,労働基準法・労働契約法上の労働者と,労働組合法上の労働者の定義,判断要素及び主要な裁判例を整理するものである。
税務,健康保険・厚生年金保険及びフリーランス法との横断的な関係は,税務・労働法・社会保険におけるフリーランスの労働者性で別に整理している。

この記事は,令和8年9月2日現在の法令,裁判例及び公開行政資料に基づく。
厚生労働省の「労働基準法における『労働者』に関する研究会」は同日現在で検討中であり,後述の「これまでの議論の整理(案)」は現行法を変更する最終報告ではない。

2 契約書の名称だけでは決まらないこと

請負,委任,準委任,業務委託又はフリーランスという契約名称だけで,労働者性は決まらない。
契約条項と実際の運用が異なるときは,仕事を断る自由,具体的な指示,時間・場所の拘束,報酬の計算方法,代替性,機械器具・経費の負担及び損益の帰属等の就労実態を総合して判断する。

労働者性と,労働契約がどの期間について成立したかは別の問題である。例えば,医師が確定済みの当直中は病院の指揮命令下で診療する労働者であっても,将来の当直依頼を自由に断れることなどから,将来の勤務枠を含む継続契約が成立していない場合がある。反対に,将来のシフトを断る自由があるという一事情だけで,実施済みの勤務中の労働者性が否定されるわけではない。スポット勤務における契約単位の判断は,スポット勤務医師の労働契約は一勤務ごとか―定期非常勤との区別,確定シフトの取消し・雇止め・証拠(AI作成)参照。

第2 労基法・労契法上の労働者の定義
1 労働基準法9条と同法11条

労働基準法9条は,労働者を,職業の種類を問わず,事業又は事務所に使用される者で,賃金を支払われる者と定義している。
同法11条は,賃金を,名称にかかわらず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものと定義している。

したがって,労基法上の中心的な問いは,①他人の指揮監督下で労務を提供しているか及び②その労務の対償として報酬を受けているかである。
契約当事者が使用する名称や,請求書・開業届の有無は,この問いに代わるものではない。

2 労働契約法2条1項

労働契約法2条1項は,労働者を,使用者に使用されて労働し,賃金を支払われる者と定義する。
同項は労基法9条のように「事業又は事務所」に使用されることを要件としていないが,その他の基本的な判断枠組みは労基法上の労働者性と共通すると解されている。

第3 昭和60年報告の判断枠組み
1 使用従属性の2つの柱

労働基準法研究会の昭和60年12月19日報告は,「指揮監督下の労働」と「報酬の労務対償性」からなる使用従属性を中心とし,事業者性や専属性等を補強要素とする判断枠組みを示した。
個々の要素の有無を数えるのではなく,契約,仕事の性質及び実際の運用を踏まえて総合判断する。

2 指揮監督下の労働を示す事情
判断要素主に確認する事実評価上の留意点仕事の依頼等に対する諾否の自由個別の仕事を断れるか,拒否時の不利益,過去の拒否実績契約上は断れても,拒否後に発注を停止する運用があれば実質的な自由は乏しい業務遂行上の指揮監督作業内容・方法の指示,報告,検査,評価,規律及び不利益措置注文内容,安全上の注意又は施設利用時間の指定のように,請負等でも必要となる指示かどうかを分ける時間的・場所的な拘束始業・終業時刻,休憩,休日,勤務場所の指定及び勤怠管理業務の性質から当然に必要な制約か,労務の利用に対する管理かを確認する代替性本人の判断で補助者又は代替者を使えるか,代替実績本人が自ら労務を提供しなければならないことは,指揮監督関係を補強する
3 報酬の労務対償性

時給,日給又は月給のように労務提供の時間を基礎とし,欠勤控除や残業手当に相当する仕組みがあることは,報酬の労務対償性を肯定する方向に働く。
他方,成果物の完成と検収に対して報酬が発生し,成果未完成の危険を受託者が負う仕組みは,独立した事業者性を示す事情となり得る。

報酬が時間単価で計算されることは重要な事情であるが,それだけで労働者性が決まるものではない。

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公益通報者保護法と公益通報制度―通報先・証拠保全・令和7年改正(AI作成)

1 総論
2 令和4年6月1日施行の改正公益通報者保護法の概要
3 令和7年改正法の概要(令和8年12月1日施行)
4 通報先の選択,証拠保全及び紛争対応

(1) 通報先の選択
(2) 通報書面及び証拠の作り方
(3) 不利益な取扱いを争う場合の主張立証
(4) 事業者が通報を受けた場合の初動
(5) 通報者の動機・不正の目的と資料持出し―スターサージカル事件

5 消費者庁の指針に関するパブコメへの意見
6 消費者庁の指針及びその解説

(5) コーポレートガバナンス・コード原則2-3と内部通報制度

7 消費者庁が指針に関して内閣法制局に説明していた内容
8 公益通報制度に関する弁護士会の懲戒事例
9 裁判所の公益通報制度,関連裁判例その他

1 総論
公益通報者保護法の保護を受けるための要件は,通報先と通報者の立場によって異なります。本稿はAIで作成したものであり,令和4年6月1日施行改正後の現行法,令和8年12月1日に施行される令和7年改正法,通報先の選択,証拠保全,不利益な取扱いを争う場合の立証及び事業者の初動対応を整理します。

(1) 公益通報者保護法(平成16年6月18日法律第122号)は平成18年4月1日に施行されました。
(2) 公益通報者保護制度は,国民生活の安心や安全を脅かすことになる事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から,労働者,派遣労働者,通報日前1年以内の退職者及び役員が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく,勤務先等における一定の法令違反を通報した場合に,解雇その他の不利益な取扱いから保護する制度です。通報先には,①事業者内部,②処分又は勧告等をする権限を有する行政機関等及び③一定の要件を満たす場合の報道機関等があり,通報先ごとに保護要件が異なります(e-Gov法令検索「公益通報者保護法」及び消費者庁HPの「通報者の方へ」参照)。

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男女雇用機会均等法の内容・改正経過・主要判例(AIリライト)

第1 男女雇用機会均等法の対象と全体像

1 法律の目的と適用場面
2 労働基準法等との役割分担

第2 性別差別及び不利益取扱いの禁止

1 直接差別
2 間接差別
3 ポジティブ・アクション
4 婚姻,妊娠及び出産等を理由とする不利益取扱い

第3 事業主が講ずべき措置

1 職場のセクシュアルハラスメント
2 妊娠・出産等に関するハラスメント
3 母性健康管理,均等推進者及び派遣先

第4 令和8年10月1日施行の改正

1 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策
2 指針が定める十一の措置
3 条番号の繰下げ

第5 紛争解決及び履行確保

1 自主的解決,労働局長の援助及び調停
2 報告徴収,企業名公表及び過料

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個人事業主の廃業手続―税務・貸倒れ・労働保険・社会保険

目次

第1 廃業時は届出・最後の申告・廃業後の清算を分ける

第2 税務署へ提出する主な書類

1 個人事業の開業・廃業等届出書
2 所得税の青色申告の取りやめ届出書
3 消費税・源泉所得税関係の届出

第3 最後の所得税申告

1 廃業日までの売上げと必要経費
2 消費税の事業用資産のみなし譲渡

第4 廃業後に生じた費用・貸倒れ

1 所得税法63条の特例
2 廃業後の売掛金の貸倒れ
3 更正の請求の特例
4 所得税と消費税を混同しない

第5 青色申告の承認は承継されない

第6 労働保険・社会保険と従業員対応

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労働保険の加入・保険料・労災給付・雇用保険の手続(AIリライト)

第1 労働保険の仕組み1 労災保険と雇用保険2 保険関係の成立と主な届出第2 労働保険料1 保険料の計算と負担2 令和8年度の保険料率3 年度更新と分割納付4 メリット制第3 労災保険1 給付の対象2 労働者の過失と給付制限3 業務災害・通勤災害・複数就業者4 事故発生後の報告と請求5 第三者行為災害6 特別加入7 請求権の時効と不服申立て8 業務上災害に関する主な裁判例第4 雇用保険1 被保険者となる労働者2 基本手当の受給資格3 離職証明書と離職票4 待期・給付制限・受給期間5 育児に関する給付6 教育訓練休暇給付金第5 労働保険事務組合第6 出典・参考資料1 法令2 行政資料3 裁判例4 文献
第1 労働保険の仕組み
1 労災保険と雇用保険

労働保険は,労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険の総称である。保険給付はそれぞれ別に行われるが,保険関係の成立,保険料の申告・納付等は,原則として一体的に取り扱われる。

労働者を1人でも使用する事業は,原則として労働保険の適用事業となる。法人の役員,個人事業主又は業務委託先であっても,契約上の名称だけで決まるものではなく,実態として使用従属関係の下で労務を提供しているかにより労働者性を判断する。

2 保険関係の成立と主な届出

労災保険及び雇用保険の保険関係は,法律上の要件を満たした日に成立する。事業主が届出をしていないことは,労働者の保険給付請求権を直ちに失わせるものではないが,成立届を提出せず,又は保険料を納付しないまま事故が発生した場合,政府から事業主に費用徴収が行われることがある。

一元適用事業における主な届出期限は,次のとおりである。

① 保険関係成立届は,保険関係成立日の翌日から10日以内
② 概算保険料申告書は,保険関係成立日の翌日から50日以内
③ 雇用保険適用事業所設置届は,設置日の翌日から10日以内
④ 雇用保険被保険者資格取得届は,資格取得日の属する月の翌月10日まで

一定の法人には,労働保険に関する所定の手続について電子申請が義務付けられている。令和8年度の年度更新では,電子申請義務の対象法人に申告書の紙様式を送付しない取扱いが採られている。

第2 労働保険料
1 保険料の計算と負担

労働保険料は,原則として,労働者へ支払う賃金総額に保険料率を乗じて算定する。基本給及び賞与だけでなく,通勤手当等も賃金総額に含まれる。

労災保険料は全額を事業主が負担する。雇用保険料は,失業等給付・育児休業給付に係る部分を労働者と事業主が負担し,雇用保険二事業に係る部分を事業主だけが負担する。

2 令和8年度の保険料率

令和8年度(令和8年4月1日から令和9年3月31日まで)の一般の事業の雇用保険料率は13.5/1000であり,労働者負担が5/1000,事業主負担が8.5/1000である。
農林水産・清酒製造の事業は合計15.5/1000(労働者6/1000,事業主9.5/1000),建設の事業は合計16.5/1000(労働者6/1000,事業主10.5/1000)である。
ただし,園芸サービス,牛馬の育成,酪農,養鶏,養豚,内水面養殖及び特定の船員を雇用する事業には一般の事業の料率が適用される。
厚生労働省「令和8年度雇用保険料率のご案内」で対象期間,業種区分及び労使の負担を確認する必要がある。
平成28年度の一般の事業の料率は合計11/1000(労働者負担4/1000)であったように,料率は年度ごとに変わるので,過去の期間の保険料を精算するときは対象年度の料率を使う。
平成28年4月の引下げを含む当時の制度変更と現在の値は,平成28年4月の厚生労働省制度変更で整理している。

令和8年度の労災保険率は令和7年度から変更されていない。法律事務所が含まれる「その他の各種事業」の労災保険率は3/1000である。

3 年度更新と分割納付

事業主は,前年度に支払った賃金総額に基づく確定保険料と,当年度に支払う見込みの賃金総額に基づく概算保険料を,年度更新で申告・納付する。令和8年度の年度更新期間は,令和8年6月1日から同年7月10日までである。

継続事業について,労災保険及び雇用保険の双方が成立している場合は概算保険料が40万円以上,いずれか一方だけが成立している場合は20万円以上であれば,原則として3回に分割して納付できる。労働保険事務組合に事務を委託している事業には金額要件がなく,有期事業は事業期間が6か月以上で,概算保険料が75万円以上であることを要する。

4 メリット制

労災保険のメリット制は,一定規模以上の事業について,過去の災害率に応じて労災保険率又は保険料額を増減させる制度である。継続事業では,原則として,平均使用労働者数が100人以上の事業,又は20人以上100人未満で災害度係数が0.4以上となる事業が対象となる。

「その他の各種事業」の労災保険率を前提とする継続事業では,20人以上100人未満の範囲で災害度係数0.4以上の要件を満たさないため,法律事務所については平均100人以上が実質的な適用基準となる。一括有期事業及び単独有期事業には,確定保険料額,建設事業の請負金額又は立木伐採量による別の基準があるため,「20人未満の事業にはメリット制が一切適用されない」と一般化するのは正確でない。

最高裁令和6年7月4日判決(令和5年(行ヒ)第108号,民集78巻3号662頁)は,メリット制適用事業主には労災保険給付支給処分の取消しを求める原告適格がないとした。同判決は,客観的に労災保険給付の要件を満たさない給付はメリット保険料決定の基礎とならないとの制度構造も示しており,事業主は保険料認定決定に対する争訟で労災該当性を争い得る。

第3 労災保険

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労働基準法に関するメモ書き(AIリライト)

第1 本記事の対象

1 労働基準法と労働契約法の役割
2 現行法,経過措置及び制度検討の区別

第2 労働条件の明示

1 労働条件通知書と雇用契約書
2 電子的な明示と令和6年4月施行の追加事項

第3 賃金の決定,変更及び支払

1 賃金を減額する場合の法的な経路
2 賃金支払の5原則とデジタル払い
3 賃金債権の譲渡と給与ファクタリング

第4 賃金請求権の消滅時効,付加金及び記録保存

1 賃金請求権は原則5年,当分の間3年
2 付加金の請求期間と記録保存期間

第5 労働者名簿,賃金台帳,出勤記録及び年休管理簿

1 「法定4帳簿」は便宜的な呼称であること

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