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労働・社会保険

減給の制裁の上限と解釈例規―労働基準法91条の「1回の額」・「総額」と,降格・出勤停止・賞与との違い(AI作成)

目次第1 労働基準法91条が定める二つの上限1 条文と本記事の対象2 「1回の額」と「総額」は別々の上限である3 平均賃金と賃金総額の算定4 計算例第2 「基本給の10%以内」型の規程の点検1 1件の非違行為について月々の割合で減給する定め2 上限を超える定めの効力と罰則3 モデル就業規則の規定例第3 同条の減給に当たる措置と当たらない措置1 職務の変更を伴う格下げと,職務をそのままにした降給2 出勤停止と昇給停止3 遅刻・早退の賃金控除と賞与からの減額第4 同条の制限を受けないことと懲戒処分の相当性第5 関連する山中弁護士ブログの記事第6 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政解釈4 公的資料5 文献

第1 労働基準法91条が定める二つの上限

1 条文と本記事の対象

労働基準法91条は,「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と定めている。
本記事は,同条の「1回の額」と「総額」の意味,平均賃金及び賃金総額の算定方法,並びに同条の制限を受ける措置と受けない措置の区別を,行政解釈に沿って説明するものである。
本記事で取り上げる行政解釈は,旧労働省の通達等であり,厚生労働省労働基準局編『労働基準法解釈総覧(改訂16版)』に収録されているものである。
本記事の記載は,令和8年9月11日時点の法令及び公表資料に基づく。

就業規則に定める制裁は減給に限られない。
「労働基準法の施行に関する件」(昭和22年9月13日発基第17号)は,就業規則に定める制裁は減給に限定されるものではなく,譴責,出勤停止,即時解雇等も,制裁の原因となる事案が公序良俗に反しない限り禁止する趣旨ではないとしている。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は,表彰及び制裁の定めをする場合には,その種類及び程度に関する事項を就業規則に記載しなければならない(労働基準法89条9号)。
最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決(フジ興産事件)も,「使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」としている。

2 「1回の額」と「総額」は別々の上限である

同条の上限は二つある。
一つは,1回の減給の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないという上限であり,もう一つは,1賃金支払期の減給の総額がその期の賃金総額の10分の1を超えてはならないという上限である。
二つの関係について,行政解釈は,「法第九十一条は、一回の事案に対しては減給の総額が平均賃金の一日分の半額以内、又一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額が、当該賃金支払期における賃金の総額の十分の一以内でなければならないとする趣旨である。」としている(昭和23年9月20日基収第1789号)。

この解釈例規の問いは,1件の非違行為について日を替え,又は月を替えれば減給を繰り返せるのではないかというものであった。
回答は,1回の事案に対する減給の総額を平均賃金の1日分の半額以内とするものであるから,1件の非違行為について減給を何回かに分け,又は複数の月にわたって続けても,その合計は平均賃金の1日分の半額を超えられない。
「10分の1」は,1賃金支払期に複数の非違行為があり,それぞれについて減給する場合に,その合計を抑える上限である。

3 平均賃金と賃金総額の算定

平均賃金は,算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を,その期間の総日数で除した金額である(労働基準法12条1項本文)。
賃金締切日がある場合は,直前の賃金締切日から起算する(同条2項)。

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派遣元・派遣先管理台帳の不備-指導,改善命令,事業停止,許可取消し及び罰則(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 管理台帳に関する違反の範囲1 派遣元管理台帳2 派遣先管理台帳3 作成義務の例外を誤らない第3 指導・助言,報告及び立入検査1 指導・助言は派遣元と派遣先の双方が対象となる2 報告徴収と立入検査3 行政調査時に提出する資料第4 派遣元事業主に対する行政処分1 改善命令2 事業停止命令3 許可取消し4 処分命令違反には別の罰則がある第5 派遣先管理台帳の不備に対する効果1 派遣先にも指導・助言と罰則がある2 勧告・公表の対象条文を区別する3 派遣元への影響を分けて考える第6 刑事罰と両罰規定1 30万円以下の罰金2 両罰規定第7 不備が見つかったときの是正手順1 原記録を保全して対象を確定する2 補正記録を別に残す3 派遣元・派遣先間で差異を照合する4 再発防止策を運用に組み込む第8 関連記事第9 出典1 法令2 厚生労働省資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,派遣元管理台帳又は派遣先管理台帳について,未作成,記載漏れ,保存期間不足又は派遣元への通知漏れが判明した場合の行政上・刑事上の効果と,実務上の是正手順を説明するものである。
令和8年9月10日現在の労働者派遣法及び厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の令和8年7月31日適用版を基礎とする。

厚生労働省は同年10月1日適用版の業務取扱要領も公表しているため,同日以後の調査又は処分では適用版を改めて確認する必要がある。
本記事でいう「不備」には,単なる誤字だけでなく,法定事項の全部又は一部を作成・記載しないこと,所定期間保存しないこと及び派遣先が所定事項を派遣元へ通知しないことを含む。

2 結論

派遣元管理台帳の作成・記載・保存義務違反と,派遣先管理台帳の作成・記載・保存・通知義務違反は,いずれも30万円以下の罰金の対象となり得る。
法人等の従業者が業務に関して違反行為をした場合は,行為者だけでなく法人等にも罰金刑を科す両罰規定がある。

行政対応は一律ではない。
厚生労働大臣又は都道府県労働局長による指導・助言は派遣元及び派遣先の双方を対象とし得るが,改善命令,事業停止命令及び許可取消しは,派遣元事業主の事業運営又は許可に対する制度である。
したがって,派遣先管理台帳の一つの記載漏れが直ちに派遣元の許可取消し又は派遣先の事業停止になる,という関係にはない。

不備を発見したときは,事実に反する作成日を記載して遡及的に整った外観を作らず,原記録を保存した上で,判明日,対象者,対象期間,確認資料,補正内容,補正者及び再発防止策を記録することが重要である。

第2 管理台帳に関する違反の範囲
1 派遣元管理台帳

労働者派遣法37条は,派遣元事業主に対し,事業所ごとに派遣元管理台帳を作成し,派遣労働者ごとに法定事項を記載することを求めている。
同条2項は,対象となる労働者派遣の終了日から3年間の保存を求めている。

違反となり得るのは,台帳を一切作成しない場合だけではない。
対象者又は派遣期間が欠けている,法定事項の一部を記載していない,出来事の都度記載すべき苦情処理や教育訓練等を記録していない,派遣終了後3年を経過する前に廃棄した,必要な電磁的記録を表示・出力できないなど,作成・記載・保存義務を実質的に果たしていない場合も問題となる。

2 派遣先管理台帳

労働者派遣法42条は,派遣先に対し,就業場所ごとに派遣先管理台帳を作成し,派遣労働者ごとに法定事項を記載し,3年間保存することを求めている。
派遣先は,日ごとの始業・終業時刻,休憩時間,実際に従事した業務,責任の程度及び就業場所等の所定事項を,原則として1か月ごとに1回以上派遣元へ通知する必要もある。

個別派遣契約に記載された予定をそのまま転記するだけでは,日々の就業実績を記録したことにならない。
勤怠,入退館記録,業務日報又は請求明細と異なる定型値を記載し続けている場合は,形式上欄が埋まっていても,実態を正確に記録しているかを確認する必要がある。

3 作成義務の例外を誤らない

労働者派遣法施行規則35条3項は,派遣先の事業所等における派遣労働者数と派遣先が雇用する労働者数の合計が5人以下である場合について,派遣先管理台帳の作成・記載義務の例外を定めている。
「派遣労働者が5人以下」であれば常に作成不要という基準ではない。

例外に該当すると判断した場合は,事業所等の範囲,判定時点,派遣労働者数,派遣先雇用労働者数及び合計人数を記録する。
台帳作成の例外に該当しても,労働時間管理,苦情処理,契約遵守その他の義務が当然に消滅するものではない。

第3 指導・助言,報告及び立入検査
1 指導・助言は派遣元と派遣先の双方が対象となる

労働者派遣法48条1項により,厚生労働大臣は,労働者派遣事業の適正な運営又は適正な派遣就業を確保するために必要があると認めるとき,労働者派遣をする事業主及び派遣を受ける者に対して指導・助言をすることができる。
この権限は,原則として都道府県労働局長が行使する。

厚生労働省の業務取扱要領は,違法行為が軽微である場合に直ちに行政処分又は司法処分を行わず自主的改善を促す場面のほか,法の趣旨に反する行為の改善や違法行為の予防にも指導・助言を用いると説明している。
したがって,指導を受けたことと,刑罰又は許可取消しを受けたことは同じではない。

2 報告徴収と立入検査

労働者派遣法50条により,厚生労働大臣は必要な限度で,派遣元及び派遣先に必要事項の報告を求めることができる。
同法51条1項による立入検査では,関係者への質問や帳簿・書類その他の物件の検査が行われ得る。

業務取扱要領は,検査対象となる重要書類の例として,派遣元管理台帳,派遣先管理台帳及び労働者派遣契約を明示している。
報告をしない,又は虚偽の報告をすること,立入検査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又は質問に答弁せず若しくは虚偽の陳述をすることは,台帳の元の不備とは別の罰則対象となり得る。

3 行政調査時に提出する資料

台帳だけを切り離して提出すると,作成単位,更新時期及び実績との一致を説明できないことがある。
対象期間の基本契約,個別契約,派遣元から派遣先への通知,勤怠,派遣元への月次通知,請求書,苦情記録,変更契約及び訂正履歴をそろえ,どの資料から各記載を確認できるかを示す。

欠落がある場合は,不存在を隠すために資料を作り替えず,欠落期間,原因,代替資料の有無及び現在の補正状況を説明する。
提出した版,提出日,提出先及び説明内容を記録し,後の説明と矛盾しないようにする。

第4 派遣元事業主に対する行政処分

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派遣先が確認する労働者派遣契約書のチェックポイント-基本契約,個別契約,期間満了,中途解約及び直接雇用

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 契約審査を始める前にそろえる書類1 締結済みの基本契約2 対象期間の個別契約及び変更契約3 法定通知,管理台帳及び実績資料4 直接雇用を検討するときの追加資料第3 基本契約のチェックポイント1 契約当事者,許可及び適用範囲2 基本契約と個別契約の優先関係3 契約期間,更新及び解約4 派遣料金,請求及び不就労時間5 安全衛生,苦情及び損害賠償6 秘密保持,個人情報及び成果物7 直接雇用,職業紹介及び紹介手数料第4 個別契約の法定事項を確認する1 業務内容及び責任の程度2 就業場所,組織単位及び指揮命令者3 派遣期間,就業日及び就業時間4 安全衛生及び苦情処理5 中途解除時の雇用安定措置6 直接雇用に関する紛争防止措置7 派遣元・派遣先責任者その他の事項第5 期間満了及び更新のチェックポイント1 四つの終了日を分ける2 更新の意思決定及び書面化3 期間制限及び抵触日の確認4 期間満了後の処理第6 中途解約及び欠員補充のチェックポイント1 誰の事情で何を終了するかを特定する2 退職と個別契約の終了を同一視しない3 派遣先都合の中途解除4 費用負担及び終了合意第7 直接雇用を検討するときのチェックポイント1 派遣元との雇用関係終了後の雇用制限2 雇用関係継続中の採用3 事前通知,職業紹介及び手数料4 通常派遣から紹介予定派遣への変更5 直接雇用前の最終確認第8 派遣先用の最終チェックリスト1 契約締結前2 更新・期間満了前3 中途解約・交代時4 直接雇用時第9 関連記事第10 出典1 法令2 厚生労働省資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,労働者派遣を受け入れる企業が,派遣元から提示された基本契約及び個別契約を確認する際の実務上のチェックポイントを説明するものである。
令和8年9月10日現在の労働者派遣法,同法施行規則,厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の令和8年10月1日適用版及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」を基礎とする。
令和8年10月4日に,労働者派遣契約,管理台帳,通知及び中途解除に関する該当箇所を現行要領と照合し,参照ページと説明を更新した。その他の制度説明の基準日は上記のとおりである。

2 結論

派遣先が確認すべき「労働者派遣契約書」は一通ではない。
継続取引の共通条件を定める基本契約と,具体的な業務,責任の程度,就業場所,組織単位,派遣期間及び就業時間等を定める個別契約を分け,両者の優先関係及び変更方法まで確認する必要がある。

契約開始時だけでなく,期間満了前,中途解約を検討するとき及び派遣労働者の直接雇用を検討するときにも,読み直すべき条項が異なる。
特に,①基本契約の有効期間,②個別契約の派遣期間,③派遣労働者と派遣元との雇用期間,④実際の派遣就業期間並びに⑤派遣先との直接雇用の開始日は,別の日付として管理すべきである。

派遣労働者が派遣元を退職し,又は派遣先での就業を終えたことだけで,派遣元と派遣先との個別契約が当然に終了するとは限らない。
また,派遣元との雇用関係終了後の雇用禁止と,適法な職業紹介に基づく紹介手数料又は派遣先都合の中途解約に伴う費用負担は,別の問題として検討する必要がある。

第2 契約審査を始める前にそろえる書類
1 締結済みの基本契約

最初に,派遣元と派遣先との間で現在有効な基本契約を特定する。
雛形,修正履歴付きの交渉稿,社内承認前のクリーン版及び署名欄が空白の最終案は,契約内容の候補又は交渉経過を示すにとどまり,その文面で契約が成立したことを単独では証明しない。

書面契約であれば契約日,署名又は記名押印,別紙及び覚書を確認し,電子契約であれば締結完了証明書,署名者,締結日時及び原本データを確認する。
商号変更,合併,会社分割又は事業譲渡があった場合は,旧商号と現商号の法人の同一性,契約上の地位の承継,通知先及び振込先も確認する。

2 対象期間の個別契約及び変更契約

次に,受入れを検討する派遣就業に対応する個別契約を特定する。
同じ派遣元との取引でも,業務,就業場所,組織単位,派遣期間又は人数が異なれば,確認すべき個別契約も異なる。

「直近」「最新版」等のファイル名だけで現行契約と決めず,契約期間,更新契約,注文書,覚書及び変更合意を時系列に並べる。
派遣期間の延長,業務又は就業場所の変更,指揮命令者の変更及び人数の変更が,元の個別契約の訂正で処理されたのか,新たな個別契約又は変更契約で処理されたのかを確認する。

3 法定通知,管理台帳及び実績資料

個別契約は予定された就業条件を示す書類であり,実際に誰が,いつ,どの業務に従事したかは,派遣元から派遣先への通知,派遣先管理台帳,勤怠記録及び請求書と照合する必要がある。
個別契約に人数だけが記載され,派遣労働者の氏名が記載されていないこともあるため,労働者派遣法35条の通知によって対象者を確認する。

派遣先管理台帳では,就業日,始業・終業時刻,休憩時間,実際の業務,責任の程度,就業場所,苦情処理等を確認する。
契約書と台帳又は勤怠記録が異なる場合は,直ちに契約書又は台帳の一方を正しいと決めず,変更合意,残業,休日就業,応援勤務,記載漏れその他の原因を調査する。

4 直接雇用を検討するときの追加資料

派遣先が派遣労働者の直接雇用を検討するときは,基本契約及び個別契約だけでは足りない。
①派遣元と派遣労働者との労働契約の種類及び終了日,②就業条件明示書,③職業紹介契約及び手数料表,④直接雇用に関する覚書,⑤派遣元の有料職業紹介事業の許可又は届出の状況並びに⑥採用提案及び本人の応募の経緯を確認する。

派遣元との雇用関係が終了する日,個別契約が終了する日及び派遣先での就業開始日は同一とは限らない。
口頭の了解だけで進めず,各日付と必要な通知・合意を書面又は電子メールで確認する。

第3 基本契約のチェックポイント
1 契約当事者,許可及び適用範囲

基本契約の当事者名,本店所在地,代表者及び通知先が現在の法人情報と一致するかを確認する。
派遣元については労働者派遣事業の許可番号を確認し,直接雇用に伴う職業紹介を予定する場合は有料職業紹介事業の許可又は届出を別に確認する。

基本契約が,どの事業所,部門,関連会社及び個別契約に適用されるかも確認する。
グループ会社を一括して「派遣先」と扱う条項がある場合は,各法人が契約当事者となるのか,単に利用可能な事業所を示すのかを明確にする。

2 基本契約と個別契約の優先関係

基本契約の一般条項と個別契約の就業条件が矛盾した場合に,どちらを優先するかを確認する。
個別契約を優先する条項があっても,労働者派遣法26条及び同法施行規則22条の必要事項を欠くことが許されるわけではない。

注文書,電子メール又は業務システム上の操作で契約を変更できる範囲も確認する。
契約変更は書面による当事者双方の合意に限ると定めている場合,現場担当者間の口頭了解だけでは変更の効力が争われるおそれがある。

3 契約期間,更新及び解約

基本契約の始期・終期,自動更新の有無,更新拒絶の通知期限及び基本契約全体を終了させる解約条項を確認する。
基本契約の有効期間と個別契約の派遣期間は別であり,基本契約が終了しても既存の個別契約にどこまで条項が残るか,又は個別契約が終了しても基本契約が継続するかを確認する。

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派遣元・派遣先管理台帳-法定記載事項,通知及び保存期間(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 二つの管理台帳の役割1 派遣元管理台帳2 派遣先管理台帳3 個別契約及び通知書との違い第3 派遣元管理台帳の作成単位と記載時期1 事業所ごと・労働者ごとに作成する2 原則として派遣前に記載する事項3 出来事の都度記載する事項第4 派遣元管理台帳の法定記載事項1 本人・雇用区分及び派遣先2 派遣期間・就業条件及び実績3 苦情・紹介予定派遣及び責任者4 例外業務・社会保険・教育訓練・雇用安定措置第5 派遣先管理台帳の作成単位と例外1 事業所等ごと・労働者ごとに作成する2 小規模事業所等の作成不要の場合第6 派遣先管理台帳の法定記載事項1 本人・派遣元及び雇用区分2 就業実績,業務及び場所3 苦情・紹介予定派遣・教育訓練及び責任者4 期間制限の例外及び社会保険第7 派遣先から派遣元への通知1 定期通知の対象事項2 通知の頻度と方法3 通知内容の照合第8 保存期間と電磁的保存1 保存期間は3年間である2 派遣元管理台帳の起算日に関する注意3 電磁的記録による作成・保存第9 点検方法と証拠上の限界1 対象者と期間を合わせて照合する2 台帳だけでは証明できない事項3 社内点検用チェックリスト第10 関連記事第11 出典1 法令2 厚生労働省資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳について,作成主体,作成単位,法定記載事項,記載時期,派遣元への通知,保存期間及び電磁的保存の方法を説明するものである。
令和8年9月10日現在の労働者派遣法,同法施行規則及び厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の令和8年7月31日適用版を基礎とする。

2 結論

派遣元管理台帳は派遣元が雇用管理のために作成し,派遣先管理台帳は派遣先が就業実態を把握して派遣元へ通知するために作成する。
両者は記載事項が重なるが同じ帳票ではなく,一方の写しを保存するだけでは,他方の法定義務を当然に履行したことにはならない。

保存期間はいずれも3年間であり,原則として対象となる労働者派遣の終了日が起算点となる。
派遣先は,就業日,始業・終業時刻,休憩時間,業務及び就業場所等の所定事項を,原則として1か月ごとに1回以上派遣元へ通知し,派遣元から請求されたときは遅滞なく通知する。

第2 二つの管理台帳の役割
1 派遣元管理台帳

労働者派遣法37条は,派遣元事業主に対し,派遣就業について派遣元管理台帳を作成し,派遣労働者ごとに法定事項を記載することを求める。
厚生労働省の業務取扱要領は,派遣元管理台帳を,派遣元が派遣労働者の雇用主として適正な雇用管理を行うためのものと説明している。

予定された派遣条件だけでなく,苦情処理,教育訓練,キャリアコンサルティング及び雇用安定措置も記録する。
派遣先から通知された就業実績が予定と異なる場合は,通知を受ける都度,異なる実績を記載する必要がある。

2 派遣先管理台帳

労働者派遣法42条は,派遣先に対し,派遣就業について派遣先管理台帳を作成し,派遣労働者ごとに法定事項を記載することを求める。
同要領は,派遣先管理台帳の目的を,就業日・労働時間等の実態を的確に把握するとともに,記載内容を派遣元へ通知し,派遣元の適正な雇用管理に役立てることとしている。

派遣先管理台帳は,個別派遣契約に記載された予定を転記するだけの書類ではない。
実際の就業日,始業・終業時刻,休憩時間及び従事した業務等を記録する必要がある。

3 個別契約及び通知書との違い

個別派遣契約は,派遣元・派遣先が具体的な派遣の予定条件を定める契約である。
派遣元から派遣先への労働者派遣法35条の通知は,その条件の下で実際に派遣される労働者の氏名,有期・無期の別及び社会保険等の加入状況等を知らせるものである。

これに対し,管理台帳は継続的な記録であり,日々の実績,苦情及び措置等が後から追加される。
個別契約,法35条の通知及び両管理台帳を対象者・期間ごとに照合することで,予定と実績の差が分かる。

第3 派遣元管理台帳の作成単位と記載時期
1 事業所ごと・労働者ごとに作成する

派遣元管理台帳は,派遣元事業主の事業所ごとに作成し,派遣労働者ごとに記録する。
厚生労働省の業務取扱要領は,雇用管理を円滑に行うため,有期雇用労働者と無期雇用労働者に分けて作成するものとしている。

労働基準法上の労働者名簿又は賃金台帳と合わせて調製することはできる。
もっとも,各帳票の法定記載事項及び保存期間が満たされていることを確認し,名称を統合したことだけで履行済みと判断しない。

2 原則として派遣前に記載する事項

派遣元管理台帳は,記載事項が確定する都度記載する。
苦情処理,教育訓練,キャリアコンサルティング,雇用安定措置の希望聴取及び実施内容を除く基本的な事項は,労働者派遣をする際にはあらかじめ記載しておく必要がある。

後から一括して台帳を作る運用では,派遣開始時点の契約,通知及び雇用状況を正確に再現できないおそれがある。
個別契約及び法35条の通知を起点として台帳を作成し,変更が生じる都度履歴を残す。

3 出来事の都度記載する事項

苦情の申出及び処理はその都度,教育訓練及びキャリアコンサルティングは実施の都度,雇用安定措置は希望の聴取又は措置実施の都度記載する。
派遣先から就業実績の通知を受け,予定された就業時間等と異なるときは,通知を受ける都度,その実績を記載する。

単に最新値で上書きすると,いつ,なぜ変更されたか分からなくなる。
変更前の値,変更日,根拠となる通知及び入力者を追跡できる形で管理することが望ましい。

第4 派遣元管理台帳の法定記載事項
1 本人・雇用区分及び派遣先

派遣元管理台帳の記載事項は,労働者派遣法37条1項及び同法施行規則31条に定められている。
本人及び雇用区分に関する事項は,①派遣労働者の氏名,②協定対象派遣労働者であるか否か,③無期雇用又は有期雇用の別及び有期の場合の労働契約期間並びに④60歳以上の者であるか否かである。

(続きを読む...)派遣元・派遣先管理台帳-法定記載事項,通知及び保存期間(AI作成)

派遣労働者の退職・欠員補充・労働者派遣契約の途中解除(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 最初に分ける四つの日付と三つの契約1 四つの日付2 三つの契約3 法26条上の労働者派遣契約第3 派遣労働者が退職するとき1 無期労働契約2 有期労働契約3 派遣先は退職日を決める当事者ではない第4 退職しても個別派遣契約が当然終了しない理由1 個別契約は通常,派遣人数と就業条件を定める2 個人の派遣就業終了と会社間契約の終了3 解除は将来に向かって効力を生ずる第5 欠員補充の判断と手続1 最初に基本契約と個別契約を読む2 派遣元から連絡する事項3 派遣先が補充を不要とするとき第6 派遣先都合による個別契約の途中解除1 契約で定めるべき雇用安定措置2 事前申入れは一律に30日前ではない3 新たな就業機会と費用負担4 解除理由の明示第7 派遣元側の雇用処理1 派遣契約終了と解雇は別である2 雇用安定措置第8 証拠化と実務手順1 取得する資料2 時系列表を作る3 終了合意に記載する事項第9 関連記事第10 出典1 法令2 厚生労働省資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,派遣就業中の労働者が退職する場合に,派遣元と派遣労働者との労働契約,派遣元と派遣先との個別派遣契約,欠員補充及び契約途中の解除をどのように区別して処理すべきかを説明するものである。
令和8年9月10日現在の民法,労働基準法,労働契約法,労働者派遣法及び厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の令和8年10月1日適用版を基礎とする。
令和8年10月4日に,労働者派遣契約,管理台帳,通知及び中途解除に関する該当箇所を現行要領と照合し,参照ページと説明を更新した。その他の制度説明の基準日は上記のとおりである。

2 結論

派遣労働者の退職,その労働者の派遣就業の終了及び派遣元・派遣先間の個別派遣契約の終了は,同じ出来事ではない。
派遣労働者が派遣元を退職しても,個別派遣契約が当然に消滅するとは限らず,派遣元が代替労働者を派遣するのか,派遣先が欠員補充を不要とするのか,個別派遣契約を合意解除するのかを別に決める必要がある。

派遣先の都合で契約期間満了前に個別派遣契約を解除するときは,労働者派遣法29条の2及び派遣先指針に基づく雇用安定措置が問題となる。
他方,派遣労働者自身の退職を契機として契約を終了する場合は,派遣先都合の解除と機械的に同一視せず,退職の原因,代替派遣の可否及び当事者間の合意を確認する。

第2 最初に分ける四つの日付と三つの契約
1 四つの日付

最初に,①派遣元へ退職を申し出た日,②派遣元との雇用契約が終了する日,③派遣先での最終就業日及び④個別派遣契約が終了する日を分ける。
派遣先がその労働者を直接雇用するときは,⑤直接雇用の開始日も加え,日付の前後関係を一覧表にする。

退職申出日と雇用終了日は同日とは限らず,最終就業日と雇用終了日も一致するとは限らない。
有給休暇の取得,貸与品の返却,引継ぎ,社会保険及び雇用保険の手続がある場合は,最後に出勤した日だけで雇用終了日を決めない。

2 三つの契約

確認する契約は,①派遣元と派遣労働者との労働契約,②派遣元と派遣先との基本契約及び③具体的な派遣期間・人数・就業条件を定める個別派遣契約である。
派遣先が直接雇用する場合は,④派遣先と労働者との新しい労働契約及び⑤職業紹介又は紹介手数料に関する合意も加わる。

各契約は当事者が異なる。
一つの契約が終了したことから,他の契約も当然に終了したと推論せず,各契約の期間,解除条項,更新条項,欠員補充条項及び変更方法を確認する。

3 法26条上の労働者派遣契約

厚生労働省の業務取扱要領は,継続的な基本契約と,個々の就業条件を定める個別契約を併用する方式では,労働者派遣法26条の「労働者派遣契約」は後者の個別契約であると説明している。
したがって,中途解除時の法定措置を検討するときは,基本契約の解約日だけでなく,対象となる個別派遣契約の期間及び終了処理を特定する必要がある。

第3 派遣労働者が退職するとき
1 無期労働契約

期間の定めのない雇用について,民法627条1項は,各当事者がいつでも解約を申し入れることができ,原則として申入れの日から2週間を経過することにより雇用が終了すると定める。
もっとも,就業規則又は労働契約に退職手続が定められていることがあるため,派遣労働者は派遣先だけに退職意思を伝えるのではなく,雇用主である派遣元に明確に申し出て,受領日及び退職日を記録する必要がある。

「法律上は必ず1か月前」と一律に説明することは正確ではない。
1か月前という期間が,派遣元の就業規則,派遣元・派遣先間の中途解除条項又は基本契約の更新拒絶条項のいずれに書かれているかを確認する。

2 有期労働契約

期間の定めのある雇用では,民法628条により,やむを得ない事由があるときは期間途中でも直ちに解除できるが,その事由が一方当事者の過失により生じた場合には損害賠償の問題が生じ得る。
労働契約法17条1項は,使用者が有期労働契約の期間途中で労働者を解雇するには,やむを得ない事由を要すると定める。

労働基準法137条は,一定の事業の完了に必要な期間を定める契約等の例外を除き,1年を超える有期労働契約を締結した労働者について,契約初日から1年経過後は使用者へ申し出ることにより退職できる旨を定める。
契約期間,開始日,同法14条1項の例外該当性及び退職理由を確認せず,「有期だから辞められない」又は「いつでも即日退職できる」と決めない。

3 派遣先は退職日を決める当事者ではない

派遣労働者の雇用主は派遣元である。
派遣先は本人の転職意思を尊重しつつも,派遣元への退職申出を代行したり,派遣元との雇用終了前の就労を当然の前提として採用日を決めたりしない。

直接雇用を予定するときは,派遣元との雇用終了日,個別派遣契約の終了日又は合意解除日,職業紹介手続及び直接雇用開始日を相互に整合させる。
形式上別の求人へ応募させても,実際の採用提案及び交渉経過が消えるわけではない。

第4 退職しても個別派遣契約が当然終了しない理由
1 個別契約は通常,派遣人数と就業条件を定める

労働者派遣法26条は,派遣契約の締結に際し,業務内容,就業場所,指揮命令者,派遣期間,就業日及び就業時間等を定め,内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めることを求めている。
紹介予定派遣を除く通常の派遣では,派遣先は契約締結に際して派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないよう努めなければならない。

個別契約が一人の派遣を予定していても,契約上の給付が特定の個人だけによる履行なのか,同等の要件を満たす代替労働者によって履行できるのかは,契約文言及び業務の性質による。
対象労働者の退職だけで契約終了と決めず,派遣人数,資格・技能,交代手続及び派遣先の受入条件を読む。

(続きを読む...)派遣労働者の退職・欠員補充・労働者派遣契約の途中解除(AI作成)

労働者派遣契約書と管理台帳の確認方法-基本契約・個別契約・通知書の違い(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 最初に区別すべき六種類の書類1 基本契約2 個別契約3 派遣元と派遣労働者との労働契約及び就業条件の明示4 派遣元から派遣先への通知5 派遣元管理台帳6 派遣先管理台帳第3 契約書を読む順序1 締結済み文書と交渉資料を分ける2 当事者と許可・商号を確認する3 基本契約と個別契約の優先関係を確認する4 日付を一枚の表にする第4 個別契約で確認する法定事項1 業務,責任及び就業場所2 指揮命令,派遣期間及び就業時間3 安全衛生,苦情処理及び契約解除時の雇用安定4 派遣終了後の直接雇用をめぐる紛争防止措置第5 管理台帳と通知の照合1 予定と実績を分ける2 有期・無期及び期間制限を照合する3 保存期間と起算日4 台帳から分かることと分からないこと第6 中途終了,交代及び直接雇用1 派遣労働者の退職と個別契約の終了2 直接雇用を検討するときの資料3 一般派遣と紹介予定派遣4 派遣先が団体交渉上の使用者となる場合第7 実務用チェックリスト1 契約書の確認2 帳票及び実態の確認3 文書の形式及び管理第8 関連記事第9 出典1 法令2 厚生労働省資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,派遣先又は派遣元が労働者派遣に関する契約書及び帳票を確認する際に,どの書類を,どの順序で,何のために読むべきかを説明するものである。
令和8年9月10日現在の労働者派遣法,同法施行規則及び厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の令和8年10月1日適用版を基礎とする。
令和8年10月4日に,労働者派遣契約,管理台帳,通知及び中途解除に関する該当箇所を現行要領と照合し,参照ページと説明を更新した。その他の制度説明の基準日は上記のとおりである。

2 結論

労働者派遣に関する書類は,一通の「派遣契約書」だけでは完結しない。
①派遣元と派遣先との基本契約,②個々の派遣についての個別契約,③派遣元と派遣労働者との労働契約及び就業条件明示書,④派遣元から派遣先への通知,⑤派遣元管理台帳並びに⑥派遣先管理台帳を,当事者,対象期間及び作成目的を分けて確認する必要がある。

基本契約は継続的な取引条件を定めることが多いが,労働者派遣法26条の意味で中心となるのは,具体的な就業条件を定める個別契約である。
管理台帳は,実際の派遣就業及び雇用管理の記録として重要であるが,基本契約の締結,個別契約の変更又は派遣労働者の退職を単独で証明する書類ではない。

第2 最初に区別すべき六種類の書類
1 基本契約

基本契約は,派遣元と派遣先が継続して取引する場合に,共通して適用する派遣料金の決定方法,秘密保持,損害賠償,契約期間,更新,中途解除,直接雇用時の取扱い等を定める契約であることが多い。
もっとも,労働者派遣法が「基本契約」という名称の契約を必須としているわけではない。
厚生労働省の業務取扱要領は,基本契約と個別契約を締結する方式では,法26条の意味における労働者派遣契約は,具体的な就業条件を定める個別契約であると説明している。

2 個別契約

個別契約は,具体的な労働者派遣について,業務内容,責任の程度,就業場所,組織単位,指揮命令者,派遣期間,就業日及び就業時間等を定める契約である。
同じ基本契約の下でも,派遣労働者,業務,派遣期間又は就業場所が異なれば,確認すべき個別契約も異なる。

「直近」と表示された契約書でも,その後の更新契約又は変更契約が存在することがある。
ファイル名,作成日又はメールの送信日だけで現行版と決めず,契約期間,更新の有無,署名押印又は電子契約記録,後日の覚書及び実際の履行状況を確認する。

3 派遣元と派遣労働者との労働契約及び就業条件の明示

派遣労働者の雇用主は派遣先ではなく派遣元である。
派遣元と派遣労働者との労働契約は,派遣元と派遣先との個別契約とは当事者が異なる。
派遣元は,労働者派遣をしようとするとき,あらかじめ派遣労働者に対し,派遣をする旨,具体的な就業条件及び期間制限に抵触する最初の日等を明示しなければならない(労働者派遣法34条)。

派遣期間と,派遣元との雇用期間は同じとは限らない。
派遣就業が終了しても派遣元との雇用契約が継続する場合があり,反対に,派遣元との雇用契約の終了が企業間の個別契約を当然に消滅させるとも限らない。

4 派遣元から派遣先への通知

派遣元は,労働者派遣をするとき,派遣労働者の氏名,協定対象派遣労働者であるか,有期雇用又は無期雇用の別,60歳以上であるか及び社会保険等の加入状況を派遣先へ通知する(労働者派遣法35条)。
この通知は,個別契約で定めた人数及び就業条件の下で,実際に誰が派遣されるかを派遣先に伝えるものである。

個別契約が「一名」と定めていても,派遣労働者の氏名まで契約本文に記載する方式とは限らない。
個別契約と法35条の通知を組み合わせて,対象者及び期間を確認する。

5 派遣元管理台帳

派遣元管理台帳は,派遣元が,派遣先で就業する派遣労働者の雇用主として適正な雇用管理を行うために,派遣労働者ごとに作成する台帳である(労働者派遣法37条)。
氏名,有期・無期の別,派遣先,派遣期間,実際の就業時間,業務,苦情処理,教育訓練,キャリア・コンサルティング及び雇用安定措置等が記録される。

6 派遣先管理台帳

派遣先管理台帳は,派遣先が,労働日,労働時間その他の派遣就業の実態を把握し,その一部を派遣元に通知して,派遣元の雇用管理に役立てるために作成する台帳である(労働者派遣法42条)。
派遣労働者ごとに,氏名,派遣元,就業日,始業・終業時刻,休憩時間,従事した業務,責任の程度,就業場所,苦情処理等を記載する。

第3 契約書を読む順序
1 締結済み文書と交渉資料を分ける

最初に,署名押印済み契約書又は電子署名・締結ログのある契約と,雛形,修正案,コメント付き交渉稿及び最終案を分ける。
相手方が修正案へ回答したこと,変更履歴を削除したクリーン版が作られたこと,又はファイル名に「最終」とあることだけでは,その文面で契約が成立したことの証明にはならない。

契約書本体のほか,契約締結を示す電子メール,電子契約サービスの完了証明書,署名欄,契約日,別紙及び覚書を確認する。
契約成立が争われる場合は,その後の発注,派遣料金の請求・支払及び同じ条項を前提とした連絡も検討するが,履行事実だけから契約書の全文が合意されたと即断しない。

2 当事者と許可・商号を確認する

派遣元又は派遣先の商号が変更され,合併,会社分割又は事業譲渡が行われていることがある。
旧商号と現商号の法人が同一であるか,契約上の地位が承継されたか,通知先及び振込先が変更されたかを確認する。

派遣元については,労働者派遣事業の許可番号を確認する。
直接雇用時に職業紹介及び紹介手数料が問題となる場合は,有料職業紹介事業の許可,手数料表及び実際の職業紹介行為を別に確認する。

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人材紹介の紹介手数料・違約金-直接採用条項の有効性と条項例(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 紹介手数料と違約金は別の問題である2 結論3 最初に確認する資料第2 紹介手数料の法的な仕組み1 有料職業紹介には原則として許可が必要である2 上限制手数料と届出制手数料3 手数料率の「相場」の見方4 発生時点,算定基礎及び返戻金第3 直接採用・中抜きを対象とする違約金1 条項の目的と限界2 令和7年4月1日以後の明示義務3 公序良俗と損害賠償額の予定4 求職者本人に負担させる条項第4 裁判例から分かること1 派遣先による直接雇用を妨げた事例2 派遣先への紹介手数料請求が認められた事例3 内定承諾後の採用取消しで手数料が認められた事例4 意図的な迂回交渉で違約金が認められた事例5 裁判例の読み方と確認状況第5 労働者派遣からの直接雇用との違い1 雇用関係終了後の雇用制限は禁止されている2 派遣契約に定める紛争防止措置3 通常派遣から紹介予定派遣への変更4 退職・欠員補充・途中解除とは別に整理する第6 紹介手数料・違約金条項の例1 条項例を使う前提2 紹介手数料条項3 直接採用・迂回採用条項4 採用取消し及び返戻金条項5 違約金条項6 派遣契約に置く場合第7 契約審査と紛争対応の実務1 求人企業側の確認事項2 紹介会社側の確認事項3 証拠と消滅時効第8 関連記事第9 主な法令・資料
第1 この記事の対象と結論
1 紹介手数料と違約金は別の問題である
人材紹介会社が求人企業に請求する金銭には,採用が成立したときの紹介手数料と,紹介会社を外した直接採用,虚偽の不採用連絡その他の契約違反に伴う違約金がある。
紹介手数料は職業紹介という役務の対価であり,違約金は契約違反への対応であるから,発生原因も有効性の判断方法も同じではない。

本稿は,有料職業紹介事業者と求人企業との契約を中心に,紹介手数料の法的な仕組み,直接採用・中抜き条項の有効性,令和7年4月1日以後の明示義務及び条項例を整理する。
労働者派遣から派遣先が直接雇用する場面は別の法規制があるため,第5節で区別する。
2 結論
紹介手数料率や違約金額には,すべての契約に通用する一律の「相場」や安全圏はない。
紹介手数料は,紹介会社が選択して届け出た手数料制度,求人企業へ明示した手数料表,契約上の発生時点及び算定基礎に従って判断する。

直接採用・中抜きへの違約金条項も当然に無効ではないが,紹介会社の正当な利益を守る範囲を超え,長期間又は広範囲に転職を妨げる内容や,労働者派遣法が禁止する,派遣元との雇用関係終了後の直接雇用制限を金銭で実現する内容は,無効となる可能性がある。
反対に,紹介を受けた求人企業が紹介会社を意図的に外し,本来の手数料を免れようとした場面では,契約条項に基づく請求が認められた裁判例がある。

したがって,金額だけでなく,対象となる候補者,禁止行為,対象期間,関係会社の範囲,発生要件,算定式,除外事由及び契約申込み時の明示方法を具体化する必要がある。
令和7年4月1日以後に求人企業から職業紹介の申込みを受ける場合,違約金等を定めている紹介会社は,その内容を求人企業に誤解が生じないよう明示しなければならない。
3 最初に確認する資料
紛争の結論は,基本契約だけでは決まらない。
基本契約,個別の求人申込書,手数料表,返戻金制度,利用規約,申込画面と同意記録,候補者を紹介したメール,面接記録,採否連絡,内定通知書,労働条件通知書,紹介会社と候補者との契約並びに実際の入社日を一式で確認する。

ウェブサイトの規約を使う場合は,申込当時の規約本文と版,求人企業が確認できた画面,チェック操作,送信日時及び改定履歴を保存する。
単にウェブサイトのトップページへのリンクを示しただけでは,金額や発生条件について十分な明示があったかが争われやすくなる。
第2 紹介手数料の法的な仕組み
1 有料職業紹介には原則として許可が必要である
職業安定法4条1項は,職業紹介を,求人及び求職の申込みを受け,求人者と求職者との間の雇用関係の成立をあっせんすることと定義している。
この有料職業紹介事業を行うには,原則として厚生労働大臣の許可が必要である。

事業者が用いる名称ではなく,実際に雇用成立へ向けたあっせんをしたかで判断される。
業務委託,採用支援又は情報提供という名称であっても,求人者と求職者の意思疎通を加工し,雇用成立を実質的に仲介して対価を受ける仕組みであれば,職業紹介事業の規制を検討する必要がある。

(続きを読む...)人材紹介の紹介手数料・違約金-直接採用条項の有効性と条項例(AI作成)

派遣社員の直接雇用-雇用禁止条項,紹介手数料及び紹介予定派遣(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日
2 結論

第2 区別すべき四つの法律関係

1 派遣元と派遣労働者との労働契約
2 派遣元と派遣先との派遣契約
3 派遣先と派遣労働者との直接雇用契約
4 職業紹介と紹介手数料

第3 雇用禁止条項と労働者派遣法33条

1 派遣元との雇用関係が終了した後
2 派遣元との雇用関係が終了する前
3 「正当な理由」の範囲

第4 派遣労働者の退職と派遣契約

1 労働契約の種類と退職できる時期
2 派遣労働者の退職と個別派遣契約の終了
3 契約成立日と就業開始日

(続きを読む...)派遣社員の直接雇用-雇用禁止条項,紹介手数料及び紹介予定派遣(AI作成)

有期雇用契約における試用期間-設定と契約終了の法的整理(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 試用期間を置けば解雇しやすくなるわけではないこと第2 有期契約と試用期間の二つの組合せ1 有期契約の中に別の試用期間を置く場合2 有期契約そのものを適性判断の期間とする場合3 無期契約への移行条件を明確にすること第3 試用期間を設定するときに書面で分ける事項1 契約期間と試用期間を別々に記載すること2 終了場面まで区別して記載すること3 評価基準と運用を一致させること4 長さと延長を自動的に決めないこと第4 試用期間中に雇用を終了する場合1 労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」2 試用契約における留保解約権の限界3 採用後14日以内は自由解雇期間ではないこと第5 試用結果を契約期間満了時に扱う場合1 期間満了と雇止めの制限2 更新申込み又は異議を遅らせないこと第6 紛争になったときに先に確認する資料1 共通して確認する資料2 使用者側と労働者側で確認する事実3 高負担の調査へ進む条件第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政機関の解説及び掲載資料4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,有期労働契約の契約期間内に別の試用期間を置く場合と,有期労働契約そのものを適性判断のために用いる場合を区別し,令和8年9月6日現在の法令及び裁判例に基づいて,設定時と契約終了時の問題を整理する。
有期労働契約の期間,更新,雇止め及び無期転換の一般的な制度は,有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルール(AI作成)で別に扱っている。

2 試用期間を置けば解雇しやすくなるわけではないこと

試用期間の設定可否及び長さを一律に定める一般的な条文はなく,中央労働委員会サイトに掲載された令和7年度労使関係セミナー資料も,設定の可否及び長さ等について現行法上特別の規制はないと整理している。
もっとも,契約書に「試用期間」と書くだけで,契約期間途中の解雇又は期間満了時の雇止めが容易になるわけではない。

有期労働契約に試用期間を設けるときは,①契約の存続期間,②適格性を評価する期間,③試用期間中に雇用を終了する場合,④契約期間満了後の更新又は無期契約への移行を分けて設計する必要がある。
特に,試用期間中の解雇は有期労働契約の期間途中の解雇であるから,少なくとも労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」が必要となる。

第2 有期契約と試用期間の二つの組合せ
1 有期契約の中に別の試用期間を置く場合

例えば,契約期間を令和8年4月1日から令和9年3月31日までの1年間とし,そのうち最初の3か月を試用期間とする設計がある。
この場合,試用期間の満了は1年間の労働契約の満了ではなく,試用期間を通過した後も同じ有期労働契約が残りの期間について続くのが基本である。

試用期間満了後に無期契約又は別の職種へ移行させる予定がある場合は,同じ有期契約が続く場面と,新しい契約を締結する場面を区別しなければならない。
「本採用」という一語だけでは,試用終了後も同じ有期契約が続くのか,無期契約又は正社員契約へ切り替わるのかが明らかにならない。

2 有期契約そのものを適性判断の期間とする場合

「まず6か月の有期契約を締結し,適性があれば無期契約へ移行する」という設計では,6か月が契約の存続期間なのか,無期契約に付された試用期間なのかが問題となり得る。
最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決(平成元年(オ)第854号,民集44巻4号668頁,神戸弘陵学園事件)は,新規採用の際に設けた期間の趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断することにある場合,期間満了によって契約が当然に終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り,その期間を契約の存続期間ではなく試用期間と解するのが相当であるとした。

同判決では,契約期間が「一応」1年と説明されたこと,長期勤務を期待させる発言があったこと,1年で当然に終了すると記載した契約書への署名が就労開始後であったこと等が問題となり,原判決が破棄されて更に審理するため差し戻された。
したがって,契約書の名称だけでなく,募集時及び面接時の説明,契約締結の時期,期間を定めた業務上の理由,無期契約への移行手続並びに実際の運用を整合させることが重要となる。

3 無期契約への移行条件を明確にすること

最高裁平成28年12月1日第一小法廷判決(平成27年(受)第589号,福原学園事件)は,1年の有期労働契約を締結し,更新限度を3年とした事案を扱った。
同事件の規程は,勤務成績を考慮して使用者が任用を必要と認め,かつ,労働者が希望した場合に無期の職種へ異動できると定めており,最高裁は,3年の経過だけで当然に無期労働契約へ移行したとする原審の判断を破棄した。

同判決は,期間満了後の無期契約への移行が自動であるのか,使用者の判断及び労働者の希望を要するのかを,規程と契約締結時の認識から区別したものである。
もっとも,この判断は,更新に関する労働契約法19条の適用を一般に否定するものではなく,契約の更新と無期契約への移行は別の問題である。

第3 試用期間を設定するときに書面で分ける事項
1 契約期間と試用期間を別々に記載すること

労働基準法15条及び労働基準法施行規則5条により,使用者は,労働契約の締結時に,契約期間,更新する場合があるときの基準,更新上限がある場合の内容,賃金,労働時間,就業場所及び業務並びに退職に関する事項等を明示しなければならない。
試用期間中に賃金,職務又は勤務場所を異ならせる場合は,その労働条件も明確にする必要がある。

労働契約法4条2項は,期間の定めに関する事項を含む労働契約の内容について,労働者と使用者ができる限り書面で確認するものとしている。
本記事では,有期契約に試用期間を置く場合,法令上の明示事項と同じ書面又は相互に参照できる書面に,契約期間と試用期間を別々に記載することを基本形とする。

2 終了場面まで区別して記載すること

設定時に区別する事項は,①有期契約の開始日と満了日,②試用期間の開始日と満了日,③評価の目的・項目・時期,④試用期間中の労働条件,⑤試用期間満了後も同じ有期契約が続くのか,⑥有期契約を更新する可能性及び判断基準,⑦無期契約又は正社員契約への移行制度がある場合の申込み・判断・契約締結の手続である。
「試用期間中又は満了時に不適格と判断したときは契約を終了する」とだけ定めても,期間途中の解雇に関する労働契約法17条1項を排除することはできない。

3 評価基準と運用を一致させること

適格性の評価は,担当業務と採用時に示した職務要件に結び付け,評価者,中間面談,指導又は支援,説明の機会及び最終判断日をあらかじめ設計することが考えられる。
評価記録には「能力がない」「協調性に欠ける」という結論だけでなく,いつ,どの業務について,何を求め,どのような行動と結果があり,本人がどのように説明したかを残すことが有用である。

評価資料は解雇を正当化するためだけの記録ではない。
契約内容との不一致,教育又は情報の不足,評価者ごとの基準の違いを早期に発見し,契約を続けられるかを判断する資料でもある。

4 長さと延長を自動的に決めないこと

中央労働委員会サイト掲載の前記セミナー資料は,採用後3か月から6か月程度を試用期間とすることが企業実務では一般に行われていると説明する一方,適格性の評価に必要な期間を超えて労働者を長期間不安定な状態に置くことは適当でないと整理している。
3か月又は6か月であれば当然に有効となるわけではなく,職務内容,採用時に確認できた事項,実際の観察機会及び有期契約全体の長さに照らして設定する必要がある。

延長についても,判断を先送りするために自動的に行うのではなく,就業規則又は契約上の根拠,採用時に予見できなかった事情,観察できなかった項目,延長期間及び延長後の判断日を確認することが考えられる。
延長が有期契約の満了日を越える場合は,試用期間の延長だけでは処理できず,契約更新又は新しい契約の問題となる。

第4 試用期間中に雇用を終了する場合

(続きを読む...)有期雇用契約における試用期間-設定と契約終了の法的整理(AI作成)

休職期間中の無給と休業手当の区別――民法536条2項,労働基準法26条及び就業禁止条項(AI作成)

目次

第1 無給扱いと休業手当を区別する第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 実務書3 裁判例

私傷病により労務を提供できず,契約上も有給とする定めがない場合,原則として賃金は発生しない。もっとも,会社の側が就労を拒んでいる場面を,これと同じ無給扱いにすることはできない。以下では,休職を命じた場合と労務の受領を拒む場合との違い,及び就業規則の就業禁止条項の限界を整理する。

第1 無給扱いと休業手当を区別する

私傷病のため労務を提供できず,契約上も有給とする定めがない場合,原則として賃金は発生しない。
この原則は欠勤中にも当てはまるが,療養の必要性と発令要件を確認して適法な無給休職を命じ,合理的な復職手続を明確にしておけば,欠勤扱いのまま復帰の申出に対して労務の受領を拒否する場合に比べ,賃金紛争のリスクを低減し得ると考えられる。
休職中の取扱いの契約上の根拠を明らかにし,休職事由の消滅を確認する手順と医学的資料を整えられるためである。
ただし,この差が現れるのは,本人が療養期間中に就業を申し出た場合である。
会社の判断による号の休職を先に命じることには,長期欠勤を要件とする号との接続の問題が伴うため,発令の時期は,休職事由の号の選び方で整理した点と併せて検討する。

もっとも,民法536条2項の帰責性の問題があるため,会社が就労を拒否している場面を,当然に同じ無給扱いにすることはできない。
休職命令が有効であっても,復職可能な状態となった社員の受入れを正当な理由なく拒む場合や,必要な確認を超えて判断を引き延ばす場合には,賃金請求の問題が残る。
復職の申出を受けたときは,他の業務への配置可能性も含めて速やかに検討し,確認中の期間を当然に無給としないことが必要である。

欠勤中の社員との面談で,会社が「無理して働く必要はない」「療養に専念した方がよい」と勧めることにも注意を要する。本人が就業を希望していた場合,会社が就労を控えさせたと評価される材料になり得るからである。就業の可否は主治医と産業医等の意見を聴いて判断するという形をとり,本人が「軽い仕事ならできる」等と述べたときは,その場で可否を答えず,発言をそのまま記録して検討する。

労働基準法26条は,使用者の責に帰すべき事由による休業について,平均賃金の60%以上の休業手当を定めている。
最高裁昭和62年7月17日判決(昭和57年(オ)第1189号,民集41巻5号1283頁)は,同条の「使用者の責に帰すべき事由」は,民法536条2項の債権者の責めに帰すべき事由よりも広く,使用者側に起因する経営,管理上の障害を含むとした。
したがって,会社による就労の拒否が民法536条2項の帰責事由に当たれば賃金全額の支払が問題となり,同項の帰責事由に当たらない場合でも,労働基準法26条の休業手当の支払義務が残ることがある。

もっとも,この判決と,同日の最高裁昭和62年7月17日判決(昭和57年(オ)第1190号,民集41巻5号1350頁)は,いずれも労働組合の部分ストライキによってスト不参加者の労働が無価値となった事案であり,1350頁の判決は不参加者の賃金請求権を,1283頁の判決は休業手当請求権を,当該事案ではいずれも否定している。私傷病による就労の拒否に,その結論をそのまま移すことはできない。
なお,民法536条2項は,平成29年法律第44号による改正(令和2年4月1日施行)で,「反対給付を受ける権利を失わない」から「反対給付の履行を拒むことができない」へ文言が改められており,上記の判決はいずれも改正前の規定についてのものである。

会社が休職を命じたという形式だけで支給の有無は決まらず,休業の実質的な理由を確認する必要があり,民法上の賃金請求が成立する場合の額を当然に60%へ減らす規定でもない。

就業規則に「傷病者に対する就業禁止」等の条項が置かれていることがある。この種の条項は,労働安全衛生規則61条1項の内容をそのまま採り入れた項,会社が心身の状況を判断して就業を禁止できるとする項,及びその期間を無給とする項の組合せになっていることがある。

このうち法令の内容を採り入れた部分の対象は,同項が定める疾病等に限られる。会社の判断による就業禁止を定める部分は,これに対応する法令上の根拠がなく,就業可能であると主張する労働者の労務の受領を会社の判断で拒む場面となるため,前記の民法536条2項及び労働基準法26条の問題が正面から生じる。

無給とする定めがあっても,就業を禁止する措置自体が正当と認められなければ,賃金支払義務は残る。また,労働基準法26条の定める基準は同法13条により労働契約をもって下回ることができないから,規則に無給と定めたことだけを理由に休業手当の支払を免れることもできない。

賃金・休業手当の支払義務を判断した後は,税務上の取扱いも区別する。国税庁「No.1905 労働基準法の休業手当等の課税関係」は,使用者の責に帰すべき事由による労働基準法26条の休業手当を,給与所得として扱うとしている。給与担当者は,通常の賃金と同様に,給与計算及び源泉徴収の対象となる支払として処理する。

これに対し,業務上の傷病による療養のため労働できず,賃金を受けない場合の労働基準法76条の休業補償は,非課税である。「休業手当」と「休業補償」は,名称が似ていても原因,法的根拠及び課税関係が異なる。私傷病で休職している社員に会社が独自に支払う金銭まで,「病気のための支払」という理由だけで非課税にしてはならず,支払の根拠と性質を個別に確認する。

弁護士が支払義務を検討し,税理士又は給与担当者が税務処理を確認するときは,休業の原因,労務提供の可否,支払の根拠,対象期間及び金額を共有する。無給扱いが適切かという労働法上の判断と,支払う金銭が課税されるかという税務上の判断を分けることが重要である。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)で整理している。

復職の申出を受けた場合の配置可能性の検討は,元の仕事ができない社員の配置可能性――片山組事件と職種限定合意(AI作成)で整理している。

無給期間の生活を支える傷病手当金は,休職中の傷病手当金――待期,通算1年6か月,退職後の継続給付及び2年の時効(AI作成)で整理している。

傷病手当金の支給要件,金額の計算及び退職後の継続給付を含む制度全体は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係で整理している。

第3 出典・参考資料

(続きを読む...)休職期間中の無給と休業手当の区別――民法536条2項,労働基準法26条及び就業禁止条項(AI作成)

主治医に何を伝え何を尋ねるか――勤務情報提供書,就業の可否,制限の程度と再評価の時期(AI作成)

第1 医師に伝える仕事と尋ねる事項

1 主治医,産業医等及び事業主の役割
2 診療情報提供への同意と追加照会
3 製造業・危険作業で具体化する事項

第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令に基づく指針2 公的な解説・行政資料3 実務書

「療養を要する」「就労可能」とだけ記載された診断書では,就業の可否を判断する材料が足りない。会社が実際の作業と実施可能な配慮を伝えたうえで,制限の内容と,その制限を続ける期間とを分けて尋ねる必要がある。以下では,主治医に提供する情報と,尋ねる事項を整理する。

第1 医師に伝える仕事と尋ねる事項

治療と就業の両立支援指針5(1)~(3)は,仕事の情報を主治医に伝えて意見を得た上で,産業医等の意見,本人の意向及び職場の状況を踏まえて事業主が判断する流れを示している。

産業医等がいない場合は主治医から提供された情報を参考とするのであって,会社だけで医学的な判断を代行するという意味ではない。

なお,令和7年5月14日に公布された労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)により,労働者数50人未満の事業場についてもストレスチェックの実施が義務化される。施行日は公布後3年以内の政令で定める日とされており,現時点では未施行であるが,小規模事業場の健康管理体制は今後変わることになる。

「療養を要する」「就労可能」との記載だけでは判断に必要な情報が不足する場合,次の事項を確認する。

質問は休職又は就業のどちらかへ誘導せず,実際の作業と実施可能な配慮を示した上で行う。

確認する事項
医師に伝える情報・尋ねる内容

①作業内容と負荷
実際の作業,作業時間,反復の程度,通勤,安全上の危険を伝える。

②可能な勤務の条件
通常勤務,時間短縮,作業の変更等について,就業の可否と必要な条件を尋ねる。

(続きを読む...)主治医に何を伝え何を尋ねるか――勤務情報提供書,就業の可否,制限の程度と再評価の時期(AI作成)

休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)

第1 会社の規程と本人の適用条件1 再欠勤・再休職の通算と適用する規程2 通算規程の変更と判決の射程第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的な解説・行政資料4 実務書

休職を命じる場面では,どの休職事由を適用するかによって,休職期間の上限だけでなく,期間が満了したときの効果まで変わることがある。長期欠勤を要件とする号と,会社の判断による号とが併記された規程では,先にどちらを使うかが,後に退職へ至る経路を左右する。以下では,規程の確認事項と,二つの号の接続の問題を整理する。

第1 会社の規程と本人の適用条件

厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)16頁は,休職の定義,期間の制限及び復職等について労働基準法に定めはないと説明している。

したがって,同モデルの空欄を埋めた期間が法律上の標準になるわけではなく,まず自社の就業規則,雇用契約及び適用対象を確認する。

労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していた場合の契約内容への取込みを定めている。

実務上は,休職事由,必要な欠勤日数,勤続期間による違い,申請又は命令の手続,休職期間及び再休職時の通算規定に加え,休職中の賃金の取扱いと復職手続の適用対象を確認し,今回の事実がどの条項に該当するかを記録しておくのが適切である。
欠勤中の社員に休職者向けの復職条項をそのまま適用できるとは限らないため,休職への移行に命令を要するのか,自動的に移行するのかを確認するとともに,診断書提出や医師面談については健康管理に関する別の条項の有無と適用条件も確認する。

休職事由が複数の号に分かれている場合,どの号を適用するかによって,休職期間の上限だけでなく,期間満了時の効果も変わることがある。長期欠勤を要件とする号については満了時に退職とする一方,会社の判断による号については満了時に復職を命じるものとする規程もあるため,退職に至る経路がどの号を経由するかを,発令の時点で確認する。また,会社の判断による号について満了時に条件を付けずに復職を命じる旨を定める一方,復職の基準を別の条項で列挙している規程では,満了時に基準を満たさず療養がなお必要な場合の扱いが文言上定まらないため,発令の時点でこの点の解釈と理由を整理しておく。

あわせて,会社の判断による号の休職を先に命じると,その期間の不就労は労働義務が免除された状態であって「欠勤」ではないため,長期欠勤を要件とする号の日数が積み上がらなくなることがある。早期に休職を命じるほど後にその号を適用できなくなるという関係が生じ得るので,二つの号の接続を先に確認する。本人が診断書を提出して療養している期間は,休職を命じなくても就労しない状態に変わりはないから,会社の判断による号の休職を先に命じる実益は,主として,その期間中に本人が就業を申し出た場合の取扱いにあり(休職期間中の無給と休業手当の区別参照),休職を命じる時期は,この実益と二つの号の接続の問題とを比べて決めることになる。なお,通知書に規程の文言の読替えを記載しても,就業規則の内容が変わるわけではない。会社の解釈を示すのであれば,その理由も併せて記載する。

長期欠勤を要件とする号の日数を数えるときは,欠勤期間の途中に入った年次有給休暇の日にも注意する。労働基準法39条6項の労使協定による計画年休日は,協定で対象外としていない限り,私傷病で欠勤中の社員についても年休の日となり,欠勤には当たらないと考えられる。本人が残りの年休を使った日も同様である。そのため,要件を満たす日はその分だけ後ろにずれ得る。規程に数え方の定めがないときは,発令前に数え方を決め,その理由とともに記録しておく。

休職制度の不備が見つかった場合でも,今回の事案に対応するために休職期間を短縮したり,再休職の通算条件や復職要件を不利益に変更したりして,そのまま適用できるわけではない。

労働契約法9条及び10条により,合意のない就業規則による不利益変更は原則として認められず,例外的に変更が認められるには,変更後の規則の周知に加え,不利益の程度,変更の必要性,内容の相当性及び交渉の状況等に照らした合理性が必要となる。

現在適用される規程とその周知状況を確認する作業と,将来に向けて制度を整備する作業を分け,就業規則の変更では変更しないとした個別合意の有無も確認する必要がある。

東京高裁平成7年8月30日判決(平成6年(ネ)第2275号・富国生命事件)は,復職後に約3か月通常勤務をしていた社員について,未治癒で症状が再燃する可能性があるだけでは当該規則の休職事由に当たらないとして,会社の控訴を棄却した。

この判決は当該就業規則と勤務状況についての判断であり,病気なら休職させられるとも,本人が働きたいと言えば必ず就業させるとも述べていない。

なお,同事件では,会社が業務外の傷病として扱う一方,労働者側は業務起因性を争っていた。事案の位置づけを確認せずに引用すると,争点を取り違えることになる。

1 再欠勤・再休職の通算と適用する規程

一度復職して再び欠勤・休職した場合には,前後の期間を通算する条件を条文ごとに確認する。「欠勤日数の通算」と「休職期間の通算」は別の定めである。通常勤務を何か月続ければ前の期間を数えなくなるのか,同一又は類似の理由による再欠勤を特別に通算するのか,起算日・終了日と適用する版を確認する。

東京地裁平成20年12月19日判決(平成18年(ワ)第19368号,野村総合研究所事件,判例秘書L06332761)では,通常勤務による通算の区切りを3か月から6か月とする改定と,同一又は類似の理由による欠勤の通算条項が問題となった。改定当時の必要性,制度及び組合の対応等に基づく固有の検討であり,どの会社でも6か月又は無期限の通算を採用・適用できるという基準ではない。

2 通算規程の変更と判決の射程

同事件では,旧規程の適用を求める確認請求は,休職中で将来の復職等が不確実であることから確認の利益がないとして却下された。判決は仮にその点を措いても改定は合理的であるとする実体面の判断も示している。請求の却下とその補充的判断を区別し,変更後の規程が全ての将来事例で有効だとしたものとして引用しない。

当該改定は労働契約法施行前の平成18年のものである。現在,通算の区切りを延ばす等の不利益変更をする場合は,前記の労働契約法9条・10条に従って周知と合理性を検討する。現在の事件でどの版を適用するかは,改定日・周知日,個別合意,欠勤・休職・復職の経過及び経過措置を対応させて判断する必要がある。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)で整理している。

就業規則の記載事項・作成届出・周知・変更は,就業規則とは―記載事項・作成届出・周知・変更・懲戒の基本(AIリライト)で説明している。

通知書に記載すべき事項は,休職通知書に記載すべき事項――適用条項,期間,賃金,復職手続及び満了時の取扱い(AI作成)で整理している。

休職に入る日と年次有給休暇の関係は,休職と年次有給休暇の関係――休職前の取得,年5日の時季指定,出勤率及び2年の時効(AI作成)で整理している。

就業規則の不利益変更の考え方を定年制の新設に当てはめた場合については,就業規則による定年制の新設――既存の従業員に適用できるか,労働契約法10条と合理性の判断要素で整理している。

(続きを読む...)休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)

休職と年次有給休暇の関係――休職前の取得,年5日の時季指定,出勤率及び2年の時効(AI作成)

第1 年休・欠勤・休職の日付を分ける第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令

休職に入れば労働義務のない日となるため,年次有給休暇を取得することも,使用者が時季を指定して与えることもできなくなる。休職の開始日を決める場面では,年休の残日数,次の基準日の出勤率及び時効を併せて確認しておく必要がある。

第1 年休・欠勤・休職の日付を分ける

診断書の作成日,療養を要するとされた期間の初日,実際の欠勤開始日及び就業規則上の休職開始日は,同じとは限らない。

年休の申出と残日数,欠勤期間の算定方法及び休職への移行条件を別々に確認し,開始日と満了予定日を計算する。

最終出勤日,欠勤開始日,休職開始日,休職期間の満了予定日,他の休職事由へ移行する場合の移行日,退職日及び社会保険の資格喪失日は,いずれも別の概念である。これらを一覧にして定義し,通知書,社会保険の届出及び賃金計算の各書面をその一覧に合わせる。同一の事案について書面ごとに日付が食い違うと,後に事実関係の確認が困難になる。また,当初の休職期間を規程より短く定めて後に発令し直すと,起算日が後ろにずれて満了時期が当初の想定より遅くなることがあるため,発令前に勤続年数と適用条項を確定させる。

労働基準法39条5項は,原則として労働者の請求する時季に年休を与える仕組みを定めている。

病気による欠勤を自動的に年休へ振り替えたり,年休を全て消化した日を当然の休職開始日としたりせず,本人の申出と適用規程を確認することが必要である。

欠勤中に計画年休日が来た場合(協定で対象外とされていない場合)や本人が残りの年休を使った場合,その日は欠勤ではなく年休となり,長期欠勤を要件とする休職事由の日数計算に影響する。

休職開始日を計算するときは,所定労働日,会社休日,1日年休,半日年休及び欠勤を日ごとの表にして確認する。半日年休を当然に1日の欠勤へ切り上げたり,所定労働日を基礎とする年休日数を暦日数へ機械的に置き換えたりしてはならない。

就業規則が「欠勤が一定期間に達したとき」と定める場合と「一定期間を超えたとき」と定める場合を区別し,年休取得日又は半日年休の残りの時間が欠勤期間の連続性,起算日及び休職開始日にどのように影響するかを,規程の文言と実際の勤務記録に沿って確認する。

この点は,休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)で整理している。

他方,同法39条7項は,年10労働日以上の年休が付与される労働者について,そのうち5日を,基準日から1年以内の期間に,労働者ごとに時季を定めて与えなければならないとしており,この義務は同法120条1号の罰則の対象とされている。同条8項により,同条5項又は6項の規定によって既に与えた年休の日数(5日を超えるときは5日)については,時季を定めて与えることを要しない。

休職に入れば労働義務のない日となり,使用者が時季を指定して年休を与えることはできなくなるほか,本人が請求して取得することもできない。労働基準法施行規則24条の7の年次有給休暇管理簿により,当該労働者の基準日と当年度の取得実績を休職開始前に確認しておく必要がある。

また,同法39条10項が出勤したものとみなすのは,業務上の負傷若しくは疾病による療養のための休業,育児休業,介護休業及び産前産後の休業の各期間であり,私傷病による欠勤及び休職の期間はこれに含まれない。欠勤が長期化すると次の基準日に全労働日の8割以上出勤したという要件を満たさないことがある。他方,年次有給休暇の請求権は,労働基準法115条により2年で時効消滅する(賃金の請求権と異なり,同法143条3項による当分の間の読替えの対象ではない。)。年休を消化せずに残すかどうかを本人が判断する場面では,次の基準日の出勤率と併せて,この点も説明するのが適切である。

未消化の年休を多く残したまま休職に入ると,休職期間の満了や退職の場面で,その消化又は代償を求められることがある。年次有給休暇の買取りは,労働基準法39条が定める年次有給休暇の趣旨に反するため,原則として許されないと解されている。残日数の多い労働者について休職を検討するときは,休職開始前の取得の意向を確認し,回答期限を定めて書面で受け取っておくのが適切である。

年5日の時季指定義務の具体的な計算方法及び時季変更権については,年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権(AIリライト)で整理している。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)で整理している。

年休の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権は,年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権(AIリライト)で整理している。

第3 出典・参考資料
1 法令

②e-Gov法令検索「労働基準法」13条,19条,24条,26条,39条,115条,120条,143条

⑪e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」5条1項1号の3,24条の7

元の仕事ができない社員の配置可能性――片山組事件と職種限定合意(AI作成)

第1 他の業務への配置可能性配置可能性を工程・動作ごとに確認する第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 公的な解説・行政資料

傷病により従前の業務を通常どおり遂行できなくなった社員について,元の仕事ができないという一事から労務の受領を拒むことはできない。他方,職種を限定する合意がある場合には,別の業務への配置を一方的に命じることもできない。以下では,この二つの制約の関係を整理する。

第1 他の業務への配置可能性

最高裁平成10年4月9日第一小法廷判決(平成7年(オ)第1230号・片山組事件)は,職種等を限定しない契約について,現に命じられた業務を十分にできなくても,現実に配置される可能性のある他の業務を遂行でき,その提供を申し出ている場合には,契約に沿った労務提供があるとした。

最高裁は,他業務への配置可能性を十分に検討しなかった原判決を破棄し,差し戻している。

同事件は自宅治療を命じられた期間の賃金等が問題となったものであり,休職期間満了時の復職要件を直接判断した事件ではない。

実務上は,契約上の職種限定,本人の能力・経験,企業の規模及び実際の配置・異動の状況を確認し,元の仕事ができないという理由だけで検討を終えないことが重要である。

治療と就業の両立支援指針5(5)ウは,職場復帰の可否について,①主治医の意見を求め,②これを産業医等に提供して意見を聴取し(産業医等がいない場合は主治医から提供を受けた情報を参考とし),③本人の意向を確認し,④復帰予定の職場の意見を聴取した上で,⑤これらを総合的に勘案し,配置転換も含めた職場復帰の可否を判断する,という順序を示している。

ただし,同判決から,存在しない仕事を常に新設する義務まで導くことはできない。

配置可能性を工程・動作ごとに確認する

他の業務への配置可能性は,「事務」「検査」「軽作業」といった職務名だけでは判断できない。現に存在する職務について,担当工程,必要な動作,危険要因及び実施可能な配慮を整理し,社員の現在の機能と照合する。

確認段階具体的に記録する事項

①職務の洗出し雇用契約上の職種・勤務地の範囲,本人の能力・経験,各事業場に現に存在する職務,欠員及び過去の配置・異動の実情。
②工程・動作立位・座位・歩行の時間,重量と取扱回数,持上げ高さ,前屈・中腰・ひねり,両手操作,階段・段差,暑熱・振動,車両・危険機械及び緊急時の退避。
③必要な機能歩行・平衡,握力・巧緻性,疼痛と疲労,注意・判断・反応速度及び作業後又は翌日までの回復。
④実施可能な配慮補助具,二人作業,工程変更,作業量又は時間の短縮,休憩,監督,危険作業の除外及び一時的な配置変更。
⑤判断と見直し可能な職務と不可能な職務,その理由,配慮の実施可能性,実施期間及び再評価日。

座って行う検査又は事務補助であっても,長時間座位,作業場所までの歩行,製品又は書類の持運び,段差,機械への接近若しくは緊急避難が必要であれば,当然に安全な軽作業となるわけではない。仕事の名称ではなく,実際の工程全体を確認する必要がある。

「軽作業がない」と判断する場合は,検討した職務・事業場,危険要因,業務分担の変更,補助具,二人作業,短時間勤務及び配置転換の可否と,採用できない具体的理由を記録する。主治医又は産業医等には,この職務情報を示した上で,通常業務,軽減業務,禁止業務及び再評価時期について意見を求める。

一時的な配慮又は既存業務の再配分を検討することと,会社に恒常的な新職務を創設することとは区別する。また,現時点で配置困難であっても,症状又は職場条件が変化する可能性があるときは再評価日を定める。

他方,最高裁令和6年4月26日第二小法廷判決(令和5年(受)第604号)は,職種や業務内容を限定する合意がある場合,労働者の同意を得ずにされた異なる職種等への配置転換命令について,使用者が命令権を有することを前提として権利濫用に当たらないとした原審の判断には違法があるとして,原判決を破棄し差し戻した。

同判決は私傷病休職の事件ではないが,休職回避のために別業務への配置を検討する際にも,限定合意に反する命令をすることと,本人との合意によって別業務に従事する可能性を検討することを区別する必要がある。

職種限定があることだけから,他業務の検討が全て不要になるとも,元の職務ができなければ直ちに退職となるともいえない。

労働基準法施行規則5条1項1号の3及び厚生労働省の改正案内によれば,令和6年4月1日以降,契約締結時及び有期契約更新時の労働条件明示では,就業場所及び従事すべき業務の変更の範囲も対象となっている。

労働条件通知書だけでなく,採用時の説明や個別合意も確認するのが適切であり,この改正は全ての在職者に休職開始時の通知書再交付を一律に命じる制度ではない。

障害者である労働者については,障害者雇用促進法36条の3の措置も検討対象となるが,過重な負担となる場合の例外がある。

(続きを読む...)元の仕事ができない社員の配置可能性――片山組事件と職種限定合意(AI作成)

休職中の傷病手当金――待期,通算1年6か月,退職後の継続給付及び2年の時効(AI作成)

第1 傷病手当金の申請と時効第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 公的な解説・行政資料

休職中の社員の生活を支えるのは,多くの場合,健康保険の傷病手当金である。会社が休職と呼ぶ期間と給付の対象となる期間は一致しないため,待期の数え方,支給期間の通算,退職後の継続給付及び時効を,それぞれ分けて確認する必要がある。

支給要件,金額の計算,支給期間の数え方,退職後の継続給付並びに障害年金,出産手当金,労災保険及び雇用保険との調整の詳細は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係で整理しており,本記事では,休職中の社員について会社が確認すべき点に絞って説明する。

第1 傷病手当金の申請と時効

健康保険法99条は,被保険者が療養のため労務に服することができない場合,連続する3日間の待期を経た4日目以降の対象日について傷病手当金を支給する仕組みを定めている。

協会けんぽの案内では,待期には年次有給休暇や公休日も含まれるとされており,会社が休職と呼ぶ期間の初日から数えるとは限らない。

また,傷病手当金は療養のため労務に服することができない場合の給付であるから,主治医が就業可能とする一方で会社の判断により就業させない期間について,この要件を当然に満たすとはいえない。労務不能の判定は保険者が行うが,就業を止めるかどうかを検討する際は,賃金請求の問題だけでなく,本人が賃金も給付も受けられない状態となる可能性も併せて確認する必要がある。

1日当たりの額は,原則として,支給開始月以前の直近の継続した12か月間の標準報酬月額の平均額を30で除した額の3分の2である。

加入期間が12か月未満の場合には別の算定規定があり,端数処理もあるため,単純に現在の手取り給与の3分の2として案内しないことが重要である。計算例と,加入期間が12か月未満の場合に用いる平均額は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第4で示している。

健康保険法108条により,報酬を受けられる期間は傷病手当金との調整が行われ,報酬額が傷病手当金より少なければ差額支給の対象となる。

したがって,給与が少しでも出れば必ず全額不支給になるとは限らず,年休を含め,対象日ごとの給与の取扱いを正確に確認する。

年次有給休暇の付与日数,年休賃金及び傷病手当金との調整については,年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権を参照されたい。

同一の傷病についての支給期間は,支給開始日から通算して1年6か月であり,会社の休職可能期間とは別である。

実務上は,休職制度が終了する日と給付が終了する日を,別々に説明することが重要である。

例えば,「傷病手当金は1年6か月出るので,無理して働く必要はない」といった説明は,本人に,雇用も1年6か月続くと受け取られるおそれがある。

休職期間が3か月等と短い規程では,後に休職期間満了による退職が争われたときの材料にもなるので,給付の期間と休職期間を並べて示すのが適切である。

また,健康保険法104条は,資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者が,その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けているときは,被保険者として受けることができるはずであった期間,継続して同一の保険者からその給付を受けることができるとしている。

休職期間の満了により退職する可能性がある場合も,退職すれば当然に給付が終了すると案内せず,被保険者期間の長さと,資格喪失時に傷病手当金を受けているか,報酬を受けているために支給が停止されているにとどまるかを確認する必要がある。

協会けんぽは,退職日に出勤したときは継続給付を受ける条件を満たさないとしている。また,退職後にいったん労務可能となった場合は,治癒しているか否かを問わず,同一の傷病により再び労務不能となっても傷病手当金は支給されない。

休職期間の満了日に挨拶や引継ぎのための出社を求めると,本人の継続給付を失わせることになる。継続給付の要件は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第6で整理している。

健康保険法193条及び協会けんぽのFAQ問2によれば,傷病手当金は労務不能であった日ごとにその翌日から2年で時効となる。

このため,休職の終了まで申請を待つ運用は避け,対象期間の勤務・給与の記録を確認して申請を進めるのが適切である。

健康保険法施行規則84条は,申請に必要な療養担当者の意見と,労務に服さなかった期間や報酬等についての事業主の証明を定めている。

実務上は,本人,医療機関及び会社の担当部分を開始時に説明し,勤務・給与の記録に基づいて申請書を作成できる体制を整えるのが適切である。

休職期間中も使用関係が続く限り被保険者資格は失われず,事業主と被保険者は,賃金の支給が停止される前の標準報酬に基づく保険料を折半して負担する(健康保険法161条,昭和26年3月9日保文発第619号)。無給の期間に給与から控除できない本人負担分の支払方法と,復職後の給与から立替金を控除する場合の制約は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項の第6の3で整理している。

健康保険法55条1項により,同一の傷病について労災保険の相当する給付を受けられる場合には,健康保険の給付との調整が問題となる。

私傷病として傷病手当金を申請した後に業務上の傷病と判断された場合も,保険者及び労働基準監督署に手続を確認し,会社だけで返還額を確定したり,申請を一律に止めたりしないことが適切である。業務上か業務外かの判断がつかない間も,労災保険の請求と並行して傷病手当金を申請することができ,健康保険の給付を受ける権利の時効は労災保険の決定を待たずに進むので,申請を止めると本人が給付を失うおそれがある。関係する裁判例は,傷病手当金とは―支給要件,金額の計算,退職後の継続給付及び障害年金・失業保険との関係の第7の3で説明している。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項で整理している。

社会保険の加入・保険料・資格取得喪失は,社会保険の加入・保険料・資格取得喪失と士業の適用で説明している。

(続きを読む...)休職中の傷病手当金――待期,通算1年6か月,退職後の継続給付及び2年の時効(AI作成)

休職通知書に記載すべき事項――適用条項,期間,賃金,復職手続及び満了時の取扱い(AI作成)

目次

第1 休職通知で伝える事項第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 公的な解説・行政資料5 実務書

休職を命じるときは,適用する条項と期間だけでなく,賃金の取扱い,連絡の方法,復職の手続及び満了時の取扱いを,交付した日付とともに書面で残しておく必要がある。後に効力が争われる場面では,発令時にどの条項を適用し,本人に何を説明したかが確認されることになり,書面に残っていない事項は,発令の時点で会社がそのように判断していたことを示しにくくなるからである。

第1 休職通知で伝える事項

治療と就業の両立支援指針5(5)アは,長期休業の開始前に,制度,賃金,手続,休業可能期間及び職場復帰の手順を説明する対応を示している。

同アは,これらの情報提供とともに休業申請書類を提出させて休業を開始することを示しており,また,治療の見込みが立てやすい傷病の場合には,休業開始の時点で主治医や産業医等の専門的な助言を得ながら休業終了の目安も把握することを示している。休職への移行に本人の申請を要するのか,会社の命令によるのかは規程ごとに異なるため,自社の手続と照合する。

説明の食い違いを防ぐため,次の事項を通知書又は説明書にまとめ,本人に交付した内容と日付を残す。

項目通知・説明する内容①根拠と開始日適用する規程,休職事由,休職開始日及びその算定の基礎。②期間満了予定日,延長の有無と条件,再休職時の通算方法。診断書の記載期間を超えて期間を定める場合は,その期間を定めた根拠。③金銭給与の取扱い,傷病手当金の申請手順,社会保険料の本人負担分及び住民税の支払方法。④連絡担当窓口,連絡方法,予定する連絡時期,病状により連絡が難しい場合の相談方法。⑤復職期間の途中でも復職を申し出られること,復職を申し出る時期,必要な資料,医師の意見を踏まえた判断の手順,及び申出を受けてから会社が判断するまでに通常要する期間の目安。⑥試し出勤制度の有無,目的,対象者,申出方法,実施前に定める条件・提出書類及び正式な復職判定との関係。⑦満了時の取扱い適用規程の内容と,復職の可否を判断するための確認事項。

発令日,本人への交付日・到達日,休職開始日及び満了日は区別する。年休,半日年休,会社休日又は欠勤期間の算定が確定していない段階では,休職開始日及び満了日を確定した日付として記載せず,算定中であることと確定後の通知方法を示す。

算定根拠を確認した後,開始日,満了日及び計算過程を書面で通知する。当初の案から変更した場合は,変更理由,説明日及び本人に交付した最終版を記録する。

新たな診断書が提出され,療養を要する期間が従前より長くなっても,既に通知した休職期間が当然に変更されるわけではない。会社は,就業規則の適用条項,延長又は区分変更の可否,休職満了日,必要な復職手続及び本人への説明を別に検討する。

反対に,休職期間が満了するからといって,医学的に復職可能になるわけでもない。診断書の療養期間,主治医の復職意見,産業医等の意見及び会社の人事判断を分け,通知内容を変更するときは変更日と根拠を書面に残す。

もっとも,記載を増やすほど紛争を防げるわけではない。会社の規程の解釈を通知書に詳しく書いても就業規則の内容は変わらず,本人に交付した書面の文言は,後に個別に取り上げられることもある。療養中の本人が読む負担も考え,本人に交付する書面には,適用条項,期間の根拠,本人が取り得る手続及び会社が行う対応を正確に記載し,規程の解釈を検討した経過は社内の記録として残す方法もある。

治療と就業の両立支援指針4(4)ア(イ)④は,試し出勤制度を,長期休業者の円滑な職場復帰を支援するために事業主が自主的に設ける勤務制度と位置付けている。
会社に制度がある場合は,休職開始時に,制度の目的,対象者,申出窓口,申出時期及び提出を求める資料を説明し,具体的な利用可否と実施条件は休職開始時に固定せず,回復状況,職務内容及び医学的意見を踏まえて実施前に決めることを明確にする。

実施する場合は,開始前に本人の意向並びに主治医及び産業医等の意見を確認し,目的,期間,出勤日,時間,場所,行う活動と禁止業務,指揮命令者,給与,交通費及び社会保険上の取扱い,事故時の連絡・受診方法,健康情報の取扱者,中止基準及び評価日を個別の実施計画に記載する。
この計画は休職開始時の一般的な制度説明と区別し,実施条件を変更した場合は変更内容と本人への説明日も記録する。

試し出勤の実施計画は,復職可能と判断した後に必要に応じて作成する職場復帰支援プランとは,目的と作成時点が異なる。
試し出勤の結果は復職判断の資料の一つであり,主治医及び産業医等の意見,本人の意向,復帰予定職場の意見,実際の職務及び配置転換の可能性等と併せて総合的に検討する。

自然退職条項では,「退職するための条件」と「条件が成立した場合の退職日」を分けて記載する。例えば,適用規程が「休職期間の満了時までに休職事由が消滅しないときは,満了日をもって退職する」と定めている場合,満了した事実だけで足りるわけではない。他方,その条項が有効に適用され,満了時に退職要件が成立していれば,規程上の退職日は満了日となる。「休職満了日=自然退職日ではない」とだけ記載するのは,条件と日付の区別が伝わりにくい。

このような規程であることを確認した上での説明例は,「休職期間の満了日は○年○月○日です。満了時までに休職事由が消滅せず,就業規則第○条の退職要件を満たす場合は,同条により満了日をもって退職となります。復職を希望する場合の申出・資料提出の手順は次のとおりです。」となる。満了日,適用条項及び復職手順は,実際の規程と計算結果に合わせて記載する。

満了前に復職申出と必要な資料を確認し,主治医・産業医等の意見,本人の意向,実際の職務,配置可能性及び必要な配慮を踏まえて審査する。その結果と理由,適用条項,満了日,退職要件の成否及び要件が成立する場合の退職日を,書面で説明する方法が適切である。会社内部の決裁日,通知の作成日,本人への到達日及び規程上の退職日を混同しない。

自然退職の通知は,適用条項により生じる効果を説明する通知なのか,通知自体が終了要件となるのかを区別する。「会社が後日退職を決めた日が必ず退職日になる」とも,「通知がなくてもどの規程でも満了日で終了する」とも一律には説明できない。満了後に審査・通知する場合も,会社側の手続の遅れだけを本人の復職不能の根拠とせず,満了時の状態,復職申出の経緯,規程及び個別の合意を確認する。

以上の通知・記録の方法は,本記事が提案する実務上の手順である。厚生労働省「退職・解雇に関するルール」が説明する休職期間満了と労務提供能力の関係も踏まえ,開始時に将来の自然退職を無条件で確定しないことが重要である。

満了時の退職条項を説明することと,将来の退職扱いの有効性を確定することは別である。

実務上は,開始時の通知だけで結論を固定せず,満了時の状態と適用規程,現実的な配置可能性を改めて確認し,解雇による場合は労働契約法16条等の規制を検討する必要がある。

通知書を受け取ったことの確認と,不利益な労働条件変更や将来の退職への同意は区別する。

給与や復職後の勤務条件を変更する合意を求める場合は,変更前後の内容,不利益の程度及び選択肢を説明し,検討の機会を確保するのが適切である。

最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決(平成25年(受)第2595号・山梨県民信用組合事件)は,賃金・退職金の不利益変更への同意について,署名等だけでなく,不利益の内容・程度,経緯,情報提供・説明等から,自由意思に基づくものと認める合理的理由が客観的に存在するかを判断すべきものとし,原判決を破棄して差し戻した。

説明書や合意書を修正した場合は,旧案と最終案の相違点,説明日及び交付した版も記録する。

合意の有無だけでなく,労働契約法8条~12条に基づき,就業規則を下回る条件となっていないか等も別途確認する必要がある。

診断書の作成日,療養期間,復職可能日及び休職期間の区別は,休業診断書をどう読むか――作成日,療養期間,専門科検査,復職可能日及び産業医意見の区別(AI作成)で整理している。

第2 関連記事

休職の開始時に確認すべき事項の全体像は,社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)で整理している。

(続きを読む...)休職通知書に記載すべき事項――適用条項,期間,賃金,復職手続及び満了時の取扱い(AI作成)

休職・欠勤中の社員に受診を命じられるか――指示に従う義務の根拠,指定医の受診及び拒まれた場合の対応(AI作成)

第1 受診を求める場面と拒まれた場合の対応

1 指定医の受診と診療情報提供への同意を分ける
2 拒否と条件付き同意への対応
3 協成事件から分かることと分からないこと

第2 関連記事第3 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 実務書

社員が療養中で,会社が医学的な資料を得たい場面では,本人に受診や情報提供を求めることになる。本人が応じない場合に,何を根拠にどこまで求められるかは,休職中か欠勤中かによって使える条項が異なり,裁判例の射程も限られている。以下では,その順序と限界を整理する。

第1 受診を求める場面と拒まれた場合の対応

本人が受診や追加の情報提供に応じない場合も,確認の目的,不足している事項及び規程上の根拠を示し,より限定した確認方法を検討する。

検討の順序としては,裁判例を参照する前に,自社の規程に,休職者に限らず適用される健康管理上の条項がないかを確認する。傷病による欠勤が一定日数以上に及ぶ場合の診断書提出義務,会社が必要と認めた場合に指定医の診断を受けさせることができる旨の定め,健康管理上必要と認めたときに受診及び結果の報告を命じることができる旨の定めが置かれていることがある。復職手続に関する条項が休職者にしか及ばないのに対し,これらは在籍者一般に及ぶ形で置かれていることが多い。その場合,拒否したときの効果が定められているかも併せて確認する。

精神的不調による欠勤が疑われるときは,直ちに懲戒の問題として処理しないことが重要である。

受診や資料提出が進まないときは,本人が拒否しているのか,病状,費用,予約事情又は説明の不明確さによって対応できないのかを確認する。

必要性を説明し,質問範囲の限定や提出時期の調整等を検討した経緯も記録する。

受診命令の有効性,取得できる医療情報の範囲,労務提供能力及び懲戒・雇用終了の有効性は,それぞれ検討すべき問題である。

受診を求める措置そのものの適否は,懲戒の適否とは別に検討する。最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決(昭和58年(オ)第1408号・集民147号237頁)は,健康管理規程等により労働契約上その健康回復を目的とする健康管理従事者の指示に従う義務がある職員について,当該検診が疾病の治癒回復という目的との関係で合理性ないし相当性を肯定し得る限り,病院又は担当医師の指定及び実施時期の指示を含めて,これに従う義務があるとした。

したがって,受診を求める場合は,①労働契約上その指示に従う義務の根拠と,②求める検査又は面談が目的との関係で合理性・相当性を有することを,それぞれ確認する必要がある。

もっとも,就業規則に定めがなければおよそ求められないというわけではない。東京高裁昭和61年11月13日判決(昭和59年(行コ)第74号・労働判例487号66頁。裁判所HP未掲載)は,休職中の従業員が自らの疾病は業務に起因すると主張したのに対し,会社が専門医を指定して受診を指示した事案について,就業規則等に指定医受診の定めがないことを前提としつつ,労使間における信義則ないし公平の観念に照らし合理的かつ相当な理由のある措置であるとして,指定医の受診を指示することができ,労働者はこれに応ずる義務があるとした。同判決は,最高裁昭和63年9月8日第一小法廷判決(昭和62年(行ツ)第32号,第33号・労働判例530号13頁。裁判所HP未掲載)により維持されている。

ただし,同事件で合理的かつ相当な理由が認められたのは,業務起因性の有無が以後の処遇に直接影響したことに加え,本人が当初提出した診断書を作成した医師自身が,会社に対して業務に起因するものではないと説明したという食い違いがあったためである。また,同事件は労働組合法7条の不当労働行為の成否が争われたものであり,受診の指示に関する判断は理由中でされている。会社と主治医の判断が食い違っていない段階について,同判決から一般に指定医の受診を求め得るとまでいうことはできない。

会社が自らの判断のために指定医の受診を求めるときは,費用を会社負担とし,主治医の受診とは建付けを分けておくと,措置の相当性を説明しやすい。

最高裁平成24年4月27日第二小法廷判決(平成23年(受)第903号・日本ヒューレット・パッカード事件)は,当該精神的不調の下での欠勤について,健康診断や治療・休職等の検討を経ずに行った諭旨退職を,懲戒事由を欠くものとして無効とした。

この判決は,あらゆる受診拒否や欠勤を免責する判断ではなく,当該欠勤の原因・経緯と会社の対応を踏まえたものである。

なお,労働安全衛生法68条及び同規則61条による就業禁止は,病気一般を対象とするものではなく,規則に定める疾病等に該当するかが問題となる。

同規則による就業禁止には,あらかじめ産業医その他専門の医師の意見を聴く必要があり,安全確保の措置を検討することと,無給休職の根拠・期間を決めることは分けて考えるべきである。

この点,治療と就業の両立支援指針2は,同法68条及び同規則61条1項の就業禁止について,これらの規定が「当該労働者の疾病の種類,程度及びこれらについての産業医等の意見を勘案の上,可能な限り配置転換,作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにし,やむを得ない場合に限り就業を禁止するものとする趣旨であり,種々の条件を十分に考慮して慎重に判断すべきものである」としている。同指針は,労働安全衛生法62条が,中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たって特に配慮を必要とする者について,心身の条件に応じた適正な配置を求めていることにも言及している。

1 指定医の受診と診療情報提供への同意を分ける

会社が指定する医師の診察を受けることと,主治医が保有する診療情報を会社の産業医等へ提供することは,別の行為である。受診指示に労働契約上の根拠がある場合でも,それだけで主治医に対する無制限の照会に同意したことにはならない。

病歴その他の健康情報は要配慮個人情報に当たり得る。会社が主治医への照会を求める場合は,①復職判断又は就業上の配慮という利用目的,②不足している情報,③質問項目,④対象期間,⑤提供先と実際の取扱者,⑥保存期間,⑦本人経由の意見書等の代替方法を具体化し,判断に必要な範囲を超えて取得しないことが重要である。

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」も,主治医の診断書だけでは情報が不足する場合,産業医等が労働者の同意を得た上で,職場復帰支援に必要な内容を主治医から収集する流れを示している。

2 拒否と条件付き同意への対応

(続きを読む...)休職・欠勤中の社員に受診を命じられるか――指示に従う義務の根拠,指定医の受診及び拒まれた場合の対応(AI作成)

試し出勤が有効な場合と有効でない場合-疾患別・職種別の復職判断(AI作成)

第1 試し出勤の有効性は疾患名ではなく確認できる事実で決まる1 結論2 本記事の対象と基準時3 五つの条件を満たす場合に有効性が高い第2 疾患と職務を掛け合わせる判断方法1 疾患名から一律の結論を出さない2 疾患側の四つの軸3 職務側の四つの軸4 変動性と危険性の四象限第3 休職原因となった疾患ごとの分析1 うつ病,適応障害,不安障害等のメンタルヘルス不調2 がん及びがん治療後3 脳卒中,脳外傷及び高次脳機能障害4 心疾患及び循環器疾患5 糖尿病6 肝疾患7 難病その他の症状が変動する慢性疾患8 腰痛,頸肩腕障害その他の筋骨格系疾患9 疾患別分類に載っていない疾患第4 職種及び職務負荷ごとの分析1 一般事務,経理,IT及び知識労働2 接客,電話,窓口,営業及び苦情対応3 介護,看護,製造,建設,運搬その他の身体負荷が高い仕事4 運転,高所,危険機械,医療安全その他の安全上重要な仕事5 夜勤,交替制,不規則勤務,出張及び長時間労働6 在宅勤務及びハイブリッド勤務7 管理職,専門職及び職種限定のある社員第5 有効な試し出勤の設計1 仮説,観察事項及び判断後の対応を先に決める2 実際の職務との一致を示す3 中止基準を失敗扱いしない4 一回の結果を合否にしない5 試し出勤を行わない方がよい場合第6 法的な位置付けと裁判例1 試し出勤は一律の法定義務ではない2 東京高裁平成28年9月12日判決3 東京地裁八王子支部平成6年5月25日判決4 片山組事件最高裁判決第7 医学研究から分かることと分からないこと1 直接分かること2 直接分からないこと第8 実務上の確認順序1 実施前2 実施中3 実施後第9 出典1 法令2 法令に基づく指針3 所管行政機関の解説・運用資料4 裁判例5 医学文献
第1 試し出勤の有効性は疾患名ではなく確認できる事実で決まる
1 結論

試し出勤が有効であるのは,復職可否を判断するために残っている具体的な不確実性を,安全な方法で減らせる場合である。
例えば,通勤を継続できるか,現実の職場で注意・集中を保てるか,作業後の疲労が翌日までに回復するか,勤務条件を調整すれば安定して働けるかが,診察や自宅生活だけでは分からない場合には,目的を絞った試し出勤が役立つ。

反対に,試し出勤をしても判断に必要な情報が増えない場合,実際の職務と異なる活動しか行わない場合又は試すこと自体に許容できない危険がある場合には,試し出勤の有効性は低い。
一度出勤できたことを完全復職の証明としたり,予定を一部こなせなかったことを復職不可の自動的な根拠としたりする運用も適切ではない。

本記事でいう「有効」とは,制度又は合意の法的な有効・無効ではなく,復職判断に必要な情報を得る方法として有用であるという意味である。
試し出勤中の給与,最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金については,「休職中の試し出勤制度―給与・最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金の取扱い(AI作成)」で扱っている。

2 本記事の対象と基準時

本記事は,民間企業における私傷病休職中の社員について,正式な復職決定の前に行う職場での試し出勤を中心に,模擬出勤及び通勤訓練も必要に応じて扱う。
令和8年9月2日現在の法令,公表資料及び医学文献に基づく整理であり,就業規則,労働契約,疾患の状態及び職務内容によって個別の結論は異なる。

3 五つの条件を満たす場合に有効性が高い

試し出勤の有効性が高いのは,①確認したい事項が具体的であること,②復職後に予定される職務又は職場環境と対応していること,③安全に中止又は変更できること,④必要な配慮を試して比較できること,⑤結果を一回の合否ではなく他の資料と合わせて評価することという五つの条件を満たす場合である。
この五条件は前記指針の文言をそのまま列挙したものではなく,本記事が公的資料及び医学研究を横断して整理した実務上の評価枠組みである。

厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」は,試し出勤制度を,長期休業者の勤務時間又は勤務日数を短縮して円滑な復帰を支援し,本人と職場の不安を解消して具体的な準備を行うための事業主の自主的な制度としている。
したがって,単に出勤日数を消化させるのではなく,何を確認し,どの条件を整えるための期間であるかを決める必要がある。

第2 疾患と職務を掛け合わせる判断方法
1 疾患名から一律の結論を出さない

同じ疾患でも,症状,治療内容,副作用,後遺症,回復経過及び日内・日間の変動は人によって異なる。
また,同じ「事務職」でも,定型入力を自分のペースで行う仕事と,締切の下で複数案件を判断しながら顧客対応をする仕事とでは,必要な能力及び失敗時の影響が異なる。

前記指針は,疾病を理由に安易に就業を禁止せず,主治医及び産業医等の意見を勘案して,可能な限り配置転換,作業時間の短縮その他の措置を検討する一方,就業による増悪,再発及び労働災害を防止することを就業の前提としている。
このため,診断名の一覧表ではなく,社員の現在の機能と具体的な職務負荷を照合する必要がある。

2 疾患側の四つの軸

疾患側では,①症状及び機能制限が現在どの程度安定しているか,②一日の中又は日ごとの変動があるか,③治療及び服薬による時間的制約又は副作用があるか,④負荷による増悪又は重大な事故の可能性があるかを確認する。

医学的な就業可否は主治医等が判断する事項であり,会社が試し出勤によって診断又は治療効果を判定するものではない。
会社が確認するのは,医学的意見で許容された範囲内で,具体的な職務及び配慮が継続可能かという職務適合の事実である。

3 職務側の四つの軸

職務側では,①身体的負荷,②認知的・心理的負荷,③勤務時間及び通勤を含む時間的負荷,④失敗が本人,同僚,顧客又は公衆に与える危険の大きさを確認する。

厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針・解説及び疾病別留意事項」の様式例は,立位,重量物,暑熱・寒冷・屋外,振動工具,不特定多数との対面,病原体,呼吸用保護具,単独作業,高所,危険な機械操作,自動車運転,残業,出張及び夜勤を職務情報として主治医に伝える構造である。

(続きを読む...)試し出勤が有効な場合と有効でない場合-疾患別・職種別の復職判断(AI作成)

試し出勤を拒否・中止・失敗した社員の復職可否-協力義務,判断資料及び休職期間満了(AI作成)

第1 試し出勤の拒否・中止・失敗だけで復職不可とは決まらない

1 最初に確認すべき結論

2 三つの問題を分ける

3 本記事の対象と基準時

第2 試し出勤への協力を求める範囲

1 就業規則と個別計画が出発点となる

2 両立支援は社員本人の申出と対話を基礎とする

3 一般的な協力義務と個別の法的義務を区別する

4 障害に関係する場合は合理的配慮の手続を重ねる

第3 拒否・中止・失敗を同じ事実として扱わない

1 試し出勤を拒否した場合

2 試し出勤を中止した場合

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休職中の試し出勤制度―給与・最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金の取扱い(AI作成)

第1 試し出勤で最初に区別すべきこと1 この記事の対象と結論2 模擬出勤,通勤訓練及び職場での試し出勤第2 制度の法的位置付けと実施手順1 令和8年4月からの法定指針2 開始前に書面で決める事項第3 給与と最低賃金1 実際の労務提供がない場合2 実際の労務提供がある場合3 最低賃金と従前の契約賃金は別の問題である第4 労災と通勤災害1 職場で事故が起きた場合2 通勤訓練中の事故第5 傷病手当金1 出勤した事実だけで直ちに支給が止まるわけではない2 労務不能の判断と報酬による調整を分ける3 申請時に会社が残す記録第6 就業規則と個別計画の点検事項1 制度規程に置く基本事項2 実施中に越えてはならない境界第7 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例・行政裁決3 法令に基づく指針4 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料5 関連記事
第1 試し出勤で最初に区別すべきこと
1 この記事の対象と結論

本記事は,私傷病で休職中の社員が正式な復職決定の前に行う模擬出勤,通勤訓練及び職場での試し出勤について,令和8年9月1日現在の法令及び公表資料に基づき,給与,最低賃金,労災・通勤災害並びに傷病手当金の取扱いを整理するものである。
短時間勤務等による正式な復職後は通常の就労であり,休職中の試し出勤とは区別する。

「試し出勤」という名称だけで無給か有給か,労災保険が適用されるか,又は傷病手当金が支給されるかが決まるわけではない。
使用者の指示の有無,行った作業の内容,会社の事業への有用性,時間及び場所の拘束,賃金又は報酬の有無,主治医等の意見並びに制度の目的を具体的に確認する必要がある。

2 模擬出勤,通勤訓練及び職場での試し出勤

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は,正式な職場復帰決定前の取組を,①図書館やデイケア等で軽作業を行う模擬出勤,②自宅から職場付近まで移動して帰宅する通勤訓練,③本来の職場等へ試験的に継続して出勤する試し出勤に分けている。
この区別は,会社施設へ入ったかどうかだけでなく,実際の業務を行ったかを検討する出発点となる。

職場に滞在しても,私物の読書や体調記録だけで,使用者が業務上の指示をせず,成果を会社が利用しない場合は,労務提供に当たらないことがある。
反対に,資料作成,電話対応,データ入力,顧客対応又は同僚の業務補助等を命じ,通常業務の一部として成果を受け取る場合は,「訓練」と呼んでいても労務提供と評価される可能性が高くなる。

第2 制度の法的位置付けと実施手順
1 令和8年4月からの法定指針

労働施策総合推進法27条の3第1項は,治療を受ける労働者について,事業主が相談対応の体制整備その他の必要な措置を講ずる努力義務を定めている。
同条2項に基づく「治療と就業の両立支援指針」は令和8年4月1日から適用され,試し出勤制度を,長期間休業した労働者の円滑な職場復帰を支援するため,勤務時間又は勤務日数を短縮して試し出勤等を行う自主的な勤務制度と位置付けている。

同指針は,支援を労働者本人の申出から始めることを基本とし,事業主が措置を一方的に判断しないこと,主治医及び産業医等の意見を踏まえること,本人の同意を得た上で必要な健康情報を共有することを求めている。
試し出勤も,会社が一方的に命じる適性試験ではなく,治療と就業の両立を支える個別の計画として実施するのが適切である。

2 開始前に書面で決める事項

本記事では,試し出勤の制度根拠を就業規則等で定め,個々の社員については開始前に実施計画を作成する形を基本とする。
私傷病休職の開始時の取扱いは,私傷病休職の開始時に使用者が確認すべき事項で整理している。

実施計画では,①目的,②開始日及び終了予定日,③出勤日,滞在時間及び場所,④行う活動と禁止する業務,⑤指揮命令者,⑥給与,交通費及び社会保険上の取扱い,⑦事故時の連絡及び受診手順,⑧主治医又は産業医等の意見,⑨健康情報を扱う者の範囲,⑩中止基準,⑪評価日,⑫正式な復職判断とは別手続であることを明確にする。
実施中に予定外の業務を依頼した場合は,その時点から労働時間,賃金,災害補償及び傷病手当金への影響を再検討する必要がある。

第3 給与と最低賃金
1 実際の労務提供がない場合

模擬出勤又は通勤訓練として,社員が任意に生活リズムや通勤可能性を確認するだけで,会社の指揮命令下における作業を行わない場合は,その時間について当然に賃金請求権が発生するとは限らない。
もっとも,就業規則,労働契約又は実施計画で手当,交通費その他の支給を約束したときは,その定めに従うことになる。

無給で行う場合は,会社の利益となる仕事をさせないことを実際の運用でも徹底しなければならない。
名称だけを「リハビリ」「見学」又は「試し」としながら,通常業務の一部を割り当てる運用は,無給とする根拠にはならない。

2 実際の労務提供がある場合

(続きを読む...)休職中の試し出勤制度―給与・最低賃金,労災・通勤災害及び傷病手当金の取扱い(AI作成)

定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるか(AI作成)

第1 条件変更を断っただけで契約終了になるわけではない第2 契約途中の変更・更新拒絶・変更への同意を分ける1 契約途中では勤務表だけを変えても足りない2 更新時には労働契約法19条の要件を確認する3 署名があっても同意の経緯を確認する第3 結論が分かれた西田通商事件と東光高岳事件1 西田通商事件――週5日から週3日への変更と雇止め無効2 東光高岳事件――更新期待を認めた上で更新拒絶を有効とした例3 二つの判決から確認できる比較の視点第4 65歳までの雇用確保と同一労働同一賃金との関係1 65歳までの雇用確保は旧賃金の当然の保障とは異なる2 本人の前年との比較と通常の労働者との比較は別である第5 労働者が更新前に行う確認と記録1 旧条件での更新希望と就労意思を伝える2 手元の資料を先にそろえ,説明を求める3 就労を拒まれた期間の賃金と時効を確認する第6 会社側の提案準備と,交渉・手続へ進む判断第7 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例3 所管行政機関のQ&A・改正案内4 法律事務所の事件紹介
第1 条件変更を断っただけで契約終了になるわけではない

定年後再雇用の契約更新時に,会社が勤務日数や賃金を引き下げる条件を提案することは,一律に禁止されていない。
しかし,労働者がその提案に同意しなかったという理由だけで,会社が従前の条件による更新を自由に拒絶できるわけではない。
変更の合意が成立するかという問題と,労働契約法19条によって雇止めが制限されるかという問題を分けて考える必要がある。

週5日勤務を週3日に減らし,月給を日数に比例して減らす場合も,日給・時給が変わらないことだけでは結論は決まらない。
西田通商事件では,このような変更を拒否した労働者の雇止めが無効とされた一方,東光高岳事件では,事情の異なる条件変更の提案について更新拒絶が有効とされている。

本記事は,令和8年8月31日現在の法令と確認できた裁判例に基づき,民間企業の定年後の有期再雇用契約を更新する場面を扱う。
定年直後に初めて再雇用契約を結ぶ場面や,勤務日数の最低保証がない変動シフトについては前提が異なるため,まず契約上の日数・時間・賃金を確認する。

第2 契約途中の変更・更新拒絶・変更への同意を分ける
1 契約途中では勤務表だけを変えても足りない

労働契約法8条は,労使の合意による労働条件の変更を認めている。
契約上,週5日勤務と月給が定められている場合に,会社が勤務表を週3日に書き換えただけで,契約上の日数と賃金も当然に変更されたことにはならない。

同意のない就業規則による不利益変更は,同法9条の原則と10条の例外に従って判断する。
10条では,変更後の就業規則の周知に加え,不利益の程度,変更の必要性,内容の相当性,労働組合等との交渉状況その他の事情に照らした合理性が問題となる。
就業規則の変更によっては変更しないと個別に合意した条件には,同条ただし書の検討も残る。

また,同法12条により,就業規則の基準に達しない条件を定めた個別契約は,その部分について無効となり,就業規則の基準による。
したがって,会社と本人が合意したかだけでなく,適用される再雇用規程・賃金規程との関係も確認する。

2 更新時には労働契約法19条の要件を確認する

更新時に新条件で合意できなかった場合は,労働者の旧条件による更新申込みを会社が拒絶してよいかが問題となる。
労働契約法19条による保護を検討する順序は,次のとおりである。

①反復更新の実態から雇止めを無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合(1号),又は更新への期待に合理的な理由がある場合(2号)に当たるか。
②労働者が,契約満了日までに更新を申し込み,又は満了後遅滞なく有期契約の締結を申し込んだか。
③会社の拒絶が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないか。

これらの要件を満たすと,会社は「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」とされる。
更新期待があるだけで旧条件の更新が決まるわけではないが,新条件を提示しただけで同条の適用を避けられるわけでもない。
更新期待・不更新条項・無期転換の一般的な説明は,有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルールを参照されたい。

3 署名があっても同意の経緯を確認する

最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決(平成25年(受)第2595号,山梨県民信用組合事件)は,不利益変更への同意について,労働者の自由意思に基づくと認めるに足りる客観的に合理的な理由があるかを慎重に判断すべきであるとした。
不利益の内容・程度,同意に至る経緯,事前の情報提供や説明等が問題となる。

これは退職金の変更に関する破棄差戻し判決であり,再雇用契約への署名を一律に無効としたものではない。
再雇用の更新でも,署名の有無に加え,変更後の勤務日数・年収・賞与が説明されたか,検討の機会があったか,異議や留保をどのように伝えたかを確認することが考えられる。

第3 結論が分かれた西田通商事件と東光高岳事件
1 西田通商事件――週5日から週3日への変更と雇止め無効

横浜地裁令和6年6月27日判決(令和4年(ワ)第1403号,労働判例1346号17頁)は,定年後の再雇用者に対し,週5日・基本賃金月額20万0998円から,週3日・月額12万0599円への変更が提案された事案である。
労働者は旧条件での更新を求めたが,会社は契約を更新しなかった。
裁判所HP未掲載であり,判例秘書で判決本文を確認した。

裁判所は,再雇用に関する規程,契約内容,更新の経過等から,雇用継続への合理的期待を認めた。
契約書に,更新時には個別合意の上で労働条件を変更することがあると記載されていても,合意できなければ当然に契約が終了するとは扱わなかった。

日給・時間給に換算した賃金単価は変わらなかったが,裁判所は,月額約12万円で家計を維持することや,空いた曜日に別の仕事を確保することの難しさを考慮した。
会社の業績悪化についても,雇止め後に別の労働者を再雇用し,役員報酬を増額した事情や,本人が売上げに直結しない業務にも従事していた事情を検討し,提示条件を不合理と判断した。

結論として,雇止めを無効とし,旧条件による契約の更新を認め,労働者の地位確認及び未払賃金の請求を認容した。
ただし,鈴悠法律事務所の事件紹介には控訴後和解と記載されており,本判決の判断がそのまま確定したと扱うことはできない。

2 東光高岳事件――更新期待を認めた上で更新拒絶を有効とした例

東京高裁令和6年10月17日判決(令和6年(ネ)第2731号,労働判例1323号5頁)は,定年後再雇用の契約満了と吸収合併が重なり,存続会社の制度に合わせた条件変更が提案された事案である。
提案には,週4日から週5日に勤務を増やしながら基本賃金を約15%減らす案と,週4日勤務のまま賃金を月額換算で約51%減らす案があり,業務内容を修正した案も提示された。
裁判所HP未掲載であり,判例秘書及び掲載誌の判決本文を確認した。

高裁は,労働契約法19条2号の更新期待は,同一条件での更新への期待に限らず,条件変更を伴う更新への期待も含むとした。
その上で,65歳までの継続雇用を原則とする規程等から更新期待を認め,労働者の旧条件による更新申込みを会社が拒絶したと判断した。

もっとも,高裁は,従前と同一の条件で更新されるとの期待に合理的理由があるとは認め難いとした。
被吸収会社の経営悪化,存続会社の再雇用者との条件統一の必要性,他の再雇用者の同意,担当事業からの撤退予定,事前説明と複数案の提示等を検討し,存続会社自体の業績が堅調であることや大幅な減額も考慮した上で,更新拒絶を有効として控訴を棄却した。

原審の東京地裁令和6年4月25日判決(令和4年(ワ)第6348号,労働判例1318号27頁。裁判所HP未掲載。判例秘書により確認)は,19条2号の更新期待を同一条件によるものに限定していたが,高裁はこの限定を採用していない。
また,高裁判決は約51%の減額を一般的に許容したものでも,低い条件の契約が本人の同意なしに成立するとしたものでもない。

3 二つの判決から確認できる比較の視点

本記事では,両判決の分岐を,次の資料を比較する際の視点として整理する。
いずれも個別の事情を組み合わせた判断であり,一つの事情があれば必ず有効・無効になるという基準ではない。

(続きを読む...)定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるか(AI作成)

昼休みの電話番・来客対応は労働時間になるか―休憩と残業代の判断・立証(AI作成)

第1 昼休みの電話番は,対応義務の実態で判断する第2 昼休み全体の待機と単発の対応を分ける1 電話が鳴らなくても待機義務が続く場合2 自由な休憩中に一度だけ対応した場合3 当番表がなくても実際の指示と運用を確認する第3 大星ビル管理事件の判断と昼休みへの射程1 実作業のない仮眠時間も労働時間とした理由2 契約上の手当と法定割増賃金は別に判断した第4 休憩不足と残業代を別々に計算する1 実労働時間が8時間を超えると必要な休憩も変わる2 勤務時間帯と実際の休憩による四つの設例3 25%割増の対象と既払額を確認する第5 当番の実態と時間をどの資料で示すか1 従業員は手元の資料から指示・時間・控除を具体化する2 会社は自動控除と実際の当番を照合する3 追加調査へ進む条件と調査を広げない基準第6 時効の確認と昼当番の運用改善1 賃金の時効と記録保存期間を混同しない2 会社は対応を引き継ぎ,勤務途中に休憩を確保する第7 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料
第1 昼休みの電話番は,対応義務の実態で判断する

昼休み中に電話や来客への対応を求められ,労働から離れることが保障されていない場合は,実際に対応していない待機時間も労働時間となる。
厚生労働省も,昼当番として電話・来客対応をする時間は勤務時間に含まれ,昼休みが費やされた場合には別途休憩を与える必要があると説明している(昼当番に関するQ&A)。

ただし,本来自由に休める時間に単発の対応をした場合と,昼休み全体にわたり応答を求められた場合とでは,計上する時間の範囲が異なる。
①労働時間に含める範囲,②法定休憩の不足,③通常賃金及び割増賃金の不足を分けて確認する必要がある。

本記事は,令和8年8月31日現在の法令等を基に,民間事業場の通常の日中勤務を扱うものである。
公務員,管理監督者等の適用除外,変形労働時間制等に固有の問題は対象とせず,計算例は1日8時間・1週40時間制を前提とする。

第2 昼休み全体の待機と単発の対応を分ける
1 電話が鳴らなくても待機義務が続く場合

12時から13時まで電話当番を命じられ,電話が鳴れば直ちに応答しなければならない場合,通話が5分で終わったからといって,残り55分を当然に休憩とすることはできない。
食事ができたことや,その日に来客がなかったことだけでは,対応義務が解除されていたとはいえない。

厚生労働省の「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」問6も,電話・来客への対応が要求される場合には,実際の対応がない時間も労働時間に該当すると説明している。
客が途切れたときに休んでよいという運用でも,来店があれば即座に業務へ戻る必要があるなら,労働から離れることを保障した休憩ではないとされている(同資料20頁~21頁〔PDF27頁~28頁〕)。

2 自由な休憩中に一度だけ対応した場合

同じ問6は,外出等が自由で,電話・来客対応を義務付けられていなかった時間を休憩としている。
そのような休憩中に顧客対応を余儀なくされた場合には,その対応に要した時間を労働時間として扱うと説明している。

したがって,対応の前後に自由な休憩へ戻れたのか,対応後も電話のそばで待つよう求められたのかを区別する必要がある。
「1件電話を受けた」という事実だけから,昼休み全部又は通話時間だけのいずれかに決めることはできない。

なお,この参考事例集は,脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定に用いる業務参考資料である。
休憩の実態を整理する参考にはなるが,それ自体が民事の賃金請求について裁判所を拘束する基準というわけではない。

3 当番表がなくても実際の指示と運用を確認する

労働時間適正把握ガイドラインは,明示又は黙示の指示による業務を労働時間とし,即時の業務対応を求められ,労働から離れることが保障されない待機も含めている(1頁~2頁)。
書面の当番表がなくても,受付に残るよう求められたことや,電話に出ないと注意されたことなど,実際の運用が問題となる。

反対に,別の担当者が応答し,本人は対応不要で自由に休めたのであれば,自分の判断で事務所に残ったというだけで労働時間にはならない。
外出の可否,応答しなかった場合の扱い,交代要員の有無及び上司の認識を組み合わせて確認するのが相当である。

第3 大星ビル管理事件の判断と昼休みへの射程
1 実作業のない仮眠時間も労働時間とした理由

労働基準法上の労働時間は,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,労働契約や就業規則等の定めではなく,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかによって客観的に定まる(最高裁判所第一小法廷平成12年3月9日判決。三菱重工業長崎造船所事件)。
同判決は,業務の準備行為等を事業所内で行うことを義務付けられ,又は余儀なくされたときは,特段の事情のない限り指揮命令下に置かれたものと評価でき,社会通念上必要と認められる限り労働時間に当たるとした。

最高裁判所第一小法廷平成14年2月28日判決(平成9年(オ)第608号・第609号,民集56巻2号361頁。大星ビル管理事件)は,ビル管理会社の従業員の仮眠時間を扱ったものである。
最高裁は,実作業をしていないことだけで使用者の指揮命令下から離れたとはいえず,労働からの解放が保障されているかによって判断するとした。

同事件では,仮眠室での待機と警報・電話等への即時対応が義務付けられ,実質的にその義務がないといえる事情もなかったため,仮眠時間全体の労働時間性が認められた(判決7頁~8頁)。
昼休みそのものの判決ではないが,対応のない時間にも役務提供の義務が続くかという判断の参考になる。

判決は,実作業の必要が生じることが皆無に等しいなど,実質的な義務付けがない場合も検討している。
ただし,ある日にたまたま電話が鳴らなかったことと,実質的に対応義務がなかったこととは別である。

当番制を導入した後も,当番日以外の従業員に対し,当番が応答しない場合に限って個人の携帯電話へ転送する運用がとられることがある。
この場合は,転送が実際に生じた頻度や,転送されたときに直ちに応答することを求められていたかを確かめ,実作業の必要が生じることが皆無に等しいといえるかを検討することになる。
転送がごくまれで,応答しなくても不利益な扱いを受けない運用であれば,当番日以外の昼休みは休憩と評価されやすいと考えられるが,当番日は前記のとおり対応義務の実態で判断する。
飲食店等が営業の合間の閉店時間帯を休憩時間としている場合も,同じ観点から検討することになる。

2 契約上の手当と法定割増賃金は別に判断した

同判決は,労働基準法上の労働時間であることから,当然に労働契約所定の賃金請求権が生じるわけではなく,賃金についての合意内容を確認するとした。
一方で,明確な支払規定がないというだけで無給と解釈することも相当ではないと述べている(判決9頁)。

同事件では,月給や泊り勤務手当等を踏まえ,契約の定めだけに基づく追加の時間外勤務手当等の請求は認められなかったが,労働基準法13条・37条による法定割増賃金の支払義務は別に判断された。
昼当番についても,労働時間に当たるかを確定した後,雇用契約,賃金規程及び既払額を確認する必要がある。
月給制又は当番手当の支給があるという理由だけで,法定割増賃金の不足がないと判断することはできない。
定額の手当を残業代の支払に充てていると会社が主張する場合に,その手当が割増賃金の支払と認められる要件は,固定残業代が有効になる要件―判別可能性・対価性と最高裁7判決,職務手当型の規程の点検で説明している。

主文は原判決を破棄して東京高裁へ差し戻すものであり,最高裁が請求額をそのまま全額認めたものではない(判決9頁~13頁)。

第4 休憩不足と残業代を別々に計算する
1 実労働時間が8時間を超えると必要な休憩も変わる

労働基準法34条1項・3項は,実労働時間に応じた休憩を勤務の途中に与え,自由に利用させることを求めている。
最低時間は次のとおりであり,終業後に休ませることを勤務途中の休憩の代わりにはできない。

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社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)

目次

第1 最初に確認する休職の根拠と就業の可否第2 就業規則と休職開始日の確認1 会社の規程と本人の適用条件2 年休・欠勤・休職の日付を分ける第3 診断書と具体的な仕事を照合する1 医師に伝える仕事と尋ねる事項2 他の業務への配置可能性3 本人が受診等に応じない場合4 医療情報の取得と共有の範囲第4 業務上の傷病の可能性を確認する第5 休職通知で伝える事項第6 給与・傷病手当金・社会保険料1 無給扱いと休業手当を区別する2 傷病手当金の申請と時効3 社会保険料と立替金の精算第7 休職中の連絡と復職の準備第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 公的な解説・行政資料5 実務書
第1 最初に確認する休職の根拠と就業の可否

社員から療養を要する診断書が提出されたときは,休職の必要性と,会社の制度上いつから休職にするかを分けて確認することが重要である。

本記事では,民間企業の使用者が休職開始時に確認する事項を,①就業規則,②具体的な就労能力,③業務上の傷病の可能性,④休職通知,⑤金銭負担,⑥連絡と復職の準備の順に整理する。

以下で述べる手順は,法令上の義務ではなく,公開されている法令,裁判例及び行政資料を踏まえた提案である。

令和8年9月6日現在,労働施策総合推進法27条の3に基づく治療と就業の両立支援措置は,同年4月1日から事業主の努力義務となっている。

同時に適用された厚生労働省の治療と就業の両立支援指針は,長期休業の開始前に,賃金を含む制度,休業可能期間及び復帰手順を本人に説明する流れを示している。

この努力義務は,希望どおりの有給休職を一律に認める義務ではない。

他方,労働契約法5条の安全配慮義務は別に問題となるため,努力義務だから個別の健康上の危険に対応しなくてよいということにもならない。

本人から診断書や休職の申出がない場合でも,過重な業務が続き,体調悪化や欠勤等を会社が把握しているときは,申出を待つだけで対応を終えてはならない。

最高裁平成26年3月24日第二小法廷判決(平成23年(受)第1259号・東芝事件)は,過重な業務が続き体調悪化が認められる状況では,精神的健康に関する情報の積極的な申告を期待し難いことを前提に,業務軽減等の配慮をする必要があると述べている。

なお,この説示は理由中のものであり,同判決の裁判要旨は過失相殺に関するものである。同事件については,差戻後の控訴審判決(東京高裁平成28年8月31日判決・平成26年(ネ)第2150号)が別にある。

勤務時間,担当業務,欠勤及び本人の具体的な訴えを記録し,医師への相談や業務負担の軽減等の必要性を検討することになる。

もっとも,安全確保のために対応を始めることと,就業規則に基づく無給の休職を発令することは,別々に根拠を確認する必要がある。

第2 就業規則と休職開始日の確認
1 会社の規程と本人の適用条件

休職の定義,期間の制限及び復職等について労働基準法に定めはない。まず自社の就業規則,雇用契約及び適用対象を確認し,休職事由,必要な欠勤日数,勤続期間による違い,申請又は命令の手続,休職期間及び再休職時の通算規定を確認する。規程によっては,「欠勤」の定義や休職期間との通算の定めがなく,長期の欠勤から就業を再開する場合の手続も置かれていないことがあるため,これらの定めの有無も併せて確認する。

休職・復職・満了時の扱いを就業規則によって定める場合は、その規定が労働契約の内容となる根拠も確認する。労働契約法7条は、合理的な労働条件を定める就業規則を労働者に周知していた場合、原則としてその内容が労働契約の内容になると定める。就業規則に書かれているというだけで足りず、周知、合理性、個別合意及び適用対象を確認する。

休職事由が複数の号に分かれている場合,どの号を適用するかによって,休職期間の上限だけでなく,期間が満了したときの効果も変わることがある。会社の判断による号の休職を先に命じると,長期欠勤を要件とする号の日数が積み上がらなくなることもあるため,二つの号の接続を先に確認する。本人が診断書を提出して療養している期間は,休職を命じなくても就労しない状態に変わりはない。そのため,会社の判断による号の休職を先に命じる実益は,主として,その期間中に本人が就業を申し出た場合の取扱い(後記第6の1)にあり,休職を命じる時期は,この実益と二つの号の接続の問題とを比べて決めることになる。

詳細は,休職事由の号の選び方――満了時の効果,欠勤要件の通算及び就業規則の不利益変更(AI作成)で整理している。

2 年休・欠勤・休職の日付を分ける

診断書の作成日,療養を要するとされた期間の初日,実際の欠勤開始日及び就業規則上の休職開始日は,同じとは限らない。年休の申出と残日数,欠勤期間の算定方法及び休職への移行条件を別々に確認し,開始日と満了予定日を計算する。

診断書に記載された療養期間は,その期間が経過すれば就業できるとの判断まで示すものとは限らない。治療と就業の両立支援指針5(5)アも,治療の見込みが立てやすい疾病については,休業開始の時点で主治医や産業医等の助言を得ながら休業終了の目安を把握することを示している。診断書の期間を超えて休職期間を定める場合は,症状の経過,予定されている検査及び医師の意見を確認する時期等,その期間を定めた根拠を記録しておく。あわせて,期間の途中でも復職を申し出られることを本人に示しておけば,後に就業可能とする診断書が提出されたときも,休職期間の設定の当否ではなく,復職の申出に速やかに対応したかという問題として検討しやすくなる。

休職に入れば労働義務のない日となるため,年次有給休暇を取得することも,使用者が時季を指定して与えることもできなくなる。休職開始前の取得の意向,次の基準日の出勤率及び2年の時効を併せて確認しておく必要がある。

詳細は,休職と年次有給休暇の関係――休職前の取得,年5日の時季指定,出勤率及び2年の時効(AI作成)で整理している。

第3 診断書と具体的な仕事を照合する
1 医師に伝える仕事と尋ねる事項

治療と就業の両立支援指針5(1)~(3)は,仕事の情報を主治医に伝えて意見を得た上で,産業医等の意見,本人の意向及び職場の状況を踏まえて事業主が判断する流れを示している。産業医等がいない場合は,主治医から提供された情報を参考とする。

「療養を要する」「就労可能」との記載だけでは判断に必要な情報が不足するため,実際の作業と負荷,可能な勤務の条件,制限の程度と期間,及び再評価の時期を分けて尋ねる。質問は,休職又は就業のどちらかへ誘導しない。

休職・復職面談では,通勤への支障,服薬による眠気・ふらつき,通常業務のうち支障のある作業及び本人が希望する配慮を,就業判断に必要な範囲で確認する。

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弁護士国民年金基金の給付請求―老齢年金・未支給年金・遺族一時金の必要書類,電子申請及び5年時効(AI作成)

第1 給付請求の全体像

1 結論

2 最初に区別する四つの手続

第2 老齢年金の請求

1 基金から届く請求書

2 基本となる添付書類

3 電子申請の準備と利用できない場合

4 年金の支払月と支払日

第3 受給者又は加入員が死亡した場合

1 まず死亡連絡をする

2 未支給年金

3 遺族一時金

4 未支給年金と遺族一時金を同時に確認する

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弁護士国民年金基金の資格喪失と再加入―弁護士法人・企業内弁護士・海外転居時の手続(AI作成)

第1 資格喪失と再加入を判断する基準

1 弁護士であることだけでは加入資格は決まらない

2 主な場面ごとの資格喪失日と次の手続

3 資格喪失届は原則として14日以内である

第2 弁護士法人及び企業内弁護士になった場合

1 基金資格を失う起点は厚生年金の資格取得日である

2 資格喪失届に添付する資料

3 後に独立して第1号被保険者へ戻る場合

第3 海外へ転出する場合と帰国する場合

1 在外加入を続けるには三つの手続を組み合わせる

2 在外加入中の掛金と弁護士業務

3 帰国時にも在外加入をいったん喪失して国内加入を申し出る

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障害者手帳・障害年金の認定と労務提供能力は同じか―雇用紛争で区別すべき四つの判断層(AI作成)

第1 結論と本記事の射程

1 障害等級と労務提供能力は同じ判断ではない

2 個別判決の当否とは分けて検討する

第2 障害者手帳と障害年金が判定しているもの

1 精神障害者保健福祉手帳

2 障害年金

3 二つの認定が接続する場面

第3 雇用紛争で区別すべき四つの判断層

1 第1層―行政上の認定

2 第2層―診断・症状・治療

3 第3層―日常生活・社会生活上の機能

4 第4層―具体的職務についての労務提供能力

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能力不足・協調性不足による普通解雇―改善指導・配置転換・解雇回避措置と裁判例(AI作成)

第1 能力不足・協調性不足による普通解雇の判断枠組み

1 本記事の対象

2 労働契約法16条と就業規則

3 回数・期間による安全基準はない

第2 雇用契約上の能力・職務・評価基準を確定する

1 一般職と職務限定・高度専門職

2 採用時資料と変更範囲の明示

3 相対評価だけでは足りない

第3 能力不足を具体的な事実と業務影響で示す

1 評価語を事実へ置き換える

2 業務への影響を確認する

3 使用者側の原因を切り分ける

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問題社員対応の基本手順―事実確認・注意指導・改善機会・記録化から処分まで(AI作成)

目次

第1 問題社員対応の出発点

1 「問題社員」は法律上の類型ではないこと

2 最初に問題の種類と保護される事情を分けること

第2 事実確認は結論を決める前に行うこと

1 調査対象を具体的な事実に置き換えること

2 原資料を保全してから関係者を聴取すること

3 本人の説明と反証の機会を確保すること

第3 注意指導は事実・基準・改善方法を示して行うこと

1 業務上の指導と懲戒処分を区別すること

2 指導書に含める内容

3 指導の方法がハラスメントにならないようにすること

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労災保険の未収債権200億円超と民間委託―第三者行為災害の求償・費用徴収・返納金はどう回収されるか(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と「200億円超」の意味

1 対象資料と記事の射程
2 200億円超は4種類を含む収納未済額である
3 令和8年度からの契約

第2 回収対象となる4種類の債権

1 第三者行為災害の求償債権
2 費用徴収債権
3 返納金債権と利得償還金債権
4 労働保険料の滞納とは別である

第3 民間委託による回収の流れ

1 4種類に共通する納入督励
2 弁護士が行う債権回収
3 費用徴収債権を弁護士折衝の対象から外す理由
4 第三者行為災害に関する法務相談
5 訴訟提起は契約の対象外である

第4 接触率40%・回収率10%の読み方

1 接触率40%
2 回収率10%

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税務・労働法・社会保険・フリーランス法における労働者性の判定(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 同じ人でも制度ごとに結論が異なる
2 調査の基準時と用語

第2 制度横断の判定地図

1 各制度が問うもの
2 判定を一つのチェック数で決めない

第3 労働基準法・労働契約法・労災保険法

1 条文と使用従属性
2 昭和60年報告の判断要素
3 最高裁判例が示す事実評価
4 令和8年の見直しは未確定である

第4 労働組合法

1 労働基準法より広い概念である
2 個人事業者の外観があっても肯定される

第5 所得税上の給与所得・事業所得・雑所得

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高次脳機能障害者を支援するための諸制度――令和8年4月施行の支援法,障害者手帳,障害年金,労災及び障害福祉サービス(AI作成)

第1 この記事が扱う範囲1 検討の対象と時点2 「高次脳機能障害」という語の三つの用法3 使える制度の一覧第2 高次脳機能障害者支援法1 成立の経緯と施行の時期2 政令が定める定義と四つの除外3 高次脳機能障害者支援センター4 地域協議会,専門的な医療機関及び司法手続における配慮5 国会審議で確認された適用範囲6 令和8年度診療報酬改定による退院支援の義務付け第3 診断の基準と障害者手帳1 行政的診断基準の令和5年版2 精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準3 手帳を要する制度と要しない制度第4 障害年金1 器質性精神障害としての認定基準2 等級判定ガイドラインと考慮要素の借用3 就労している場合の評価4 支分権の消滅時効第5 労働者災害補償保険及び公務災害1 四つの能力による障害等級の認定2 画像所見がない場合の第14級の9第6 障害福祉サービス,医療及び介護保険1 障害者総合支援法による給付2 支給量の決定に対する司法審査3 自立支援医療と介護保険との関係第7 就労及び差別の解消1 合理的配慮と法定雇用率2 障害を理由とする差別の解消第8 自動車の運転第9 相談窓口及び期間の制約1 支援センターと大阪府内の窓口2 期間に関する制約の整理出典1 法令2 行政通知3 認定基準・診断基準4 裁判例5 公的資料第1 この記事が扱う範囲1 検討の対象と時点

この記事は,記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等の認知機能の障害を負った人が利用できる公的な制度を,令和8年8月21日の時点で整理するものである。令和8年4月1日に高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)が施行され,同法に基づく実施要綱及び関係通知が同年4月から5月にかけて発出されたことにより,従前は予算事業と個別の給付制度に分かれていた支援の枠組みが,一つの法律を頂点とする体系に組み替えられた。もっとも,実際に金銭給付やサービスを受ける根拠となるのは,従前と同じく障害者手帳,障害年金,労働者災害補償保険及び障害者総合支援法であり,支援法はこれらを置き換えるものではない。

この記事では,交通事故の加害者に対する損害賠償請求を扱わない。高次脳機能障害を理由とする後遺障害等級の認定と,その等級を前提とする賠償額の算定については,高次脳機能障害で後遺障害等級7級4号を認定してもらうための具体的な主張立証方法で扱っている。ここで取り上げるのは,加害者がいるかどうかにかかわらず利用できる制度,すなわち脳血管疾患,低酸素脳症,脳炎,脳腫瘍等の疾病によって障害を負った場合にも同じように使える制度である。厚生労働省は,同法の対象となる患者数を令和4年の調査に基づき全国で約23万人と推計している。本記事はAIを用いて作成し,一次資料への到達性を優先した。記載内容は,令和8年8月時点でe-Gov法令検索により確認した現行条文,厚生労働省,内閣府,日本年金機構及び国立障害者リハビリテーションセンターが公表している通知及び資料,並びに裁判所ウェブサイト及び国立国会図書館国会会議録検索システムで確認した裁判例及び議事録に基づく。

2 「高次脳機能障害」という語の三つの用法

制度を調べるときに最初につまずくのは,「高次脳機能障害」という語が,法令上の定義,行政的な診断基準,個々の給付制度の認定基準という三つの層でそれぞれ別に定義されており,除外される範囲も一致していないことである。第一の層は高次脳機能障害者支援法2条1項及び同法施行令(令和8年政令第60号)1条であり,これは支援法の対象を画する。第二の層は,平成13年度に開始された高次脳機能障害支援モデル事業に由来する行政的診断基準であり,医師が診断書に「高次脳機能障害」と記載するときの基準として機能する。第三の層は,障害年金の障害認定基準,労災保険の障害等級認定基準といった,給付ごとの物差しである。

三つの層は目的が違うため,一方に該当することが他方に該当することを意味しない。支援法施行令1条は認知症を明文で除外しているが,障害年金の障害認定基準は「症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)」という区分の中に認知症も併せて含めている。逆に,労災保険の障害等級認定基準は,画像所見が得られない場合であっても第14級の9として等級を認める余地を明文で残しているのに対し,行政的診断基準は検査所見を診断の要件として掲げている。他方,自賠責保険の後遺障害認定は,CT・MRIによる異常所見の存在を重視する方針を維持しており,損害保険料率算出機構の報告書(平成30年5月)も,拡散テンソル画像,SPECT,PET等の検査のみで,脳の器質的損傷の有無や障害の程度を確定的に示すことはできないとしている。画像所見のない事案では,行政上の支援の対象となることと,自賠責保険で後遺障害等級が認められることとの差が特に大きくなる。制度ごとに使う物差しが違うという前提を置かずに一つの基準だけで判断すると,本来受けられる給付を取りこぼすことになる。

3 使える制度の一覧

以下は,この記事で取り上げる制度を,利用したい場面ごとに整理したものである。実施主体と根拠条文を併記したのは,令和8年4月15日障精発0415第1号が各自治体に対して相談窓口の明確化と周知を求めていることからも分かるとおり,窓口が明確でないことが制度利用の入口の問題として認識されているためである。

場面制度(実施主体)根拠相談先を確保する高次脳機能障害者支援センター(都道府県知事又は指定都市市長が指定し,又は自ら実施)高次脳機能障害者支援法19条1項障害があることを公証する精神障害者保健福祉手帳(都道府県知事)精神保健福祉法45条麻痺・失語がある身体障害者手帳(都道府県知事)身体障害者福祉法15条生活費を得る障害基礎年金・障害厚生年金(厚生労働大臣)国民年金法30条,厚生年金保険法47条業務上の負傷による場合障害補償給付(労働基準監督署長)労働者災害補償保険法15条通院の自己負担を下げる自立支援医療(精神通院医療。市町村)障害者総合支援法5条25項生活訓練・機能訓練を受ける自立訓練(市町村の支給決定)同法5条12項住まいを確保する共同生活援助(市町村の支給決定)同法5条18項施設・病院から地域へ移る地域移行支援(市町村の地域相談支援給付決定)同法5条21項就労に向けた訓練を受ける就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援(市町村の支給決定)同法5条13項ないし15項職場で配慮を受ける合理的配慮の提供(事業主)障害者雇用促進法36条の2ないし36条の4事業者から配慮を受ける合理的配慮の提供(事業者)障害者差別解消法8条2項外出を支援してもらう移動支援事業(市町村)障害者総合支援法5条27項,77条1項8号日中の居場所を得る地域活動支援センター(市町村)同法5条28項,77条1項9号

注 支給決定を要する制度については,市町村への申請と障害支援区分の認定が前提となる場合がある。

第2 高次脳機能障害者支援法1 成立の経緯と施行の時期

高次脳機能障害者支援法は,衆議院厚生労働委員長提出の法律案として令和7年12月5日に同委員会で起草・可決され,同月8日に衆議院本会議,同月16日に参議院本会議で可決されて成立し,同月24日に令和7年法律第96号として公布された。施行日は令和8年4月1日であり(附則1項),国は施行後3年を目途として施行の状況について検討を加え,必要があると認めるときは所要の措置を講ずるものとされている(附則2項)。提出者である田畑裕明議員は,同委員会において,超党派の議員連盟を設立して関係者からのヒアリングを重ねた結果として本案を取りまとめた旨を説明しており,内閣提出法案ではなく議員立法として成立した経緯がある。

法律は全4章31条から成り,第1章に目的,定義,基本理念及び責務を,第2章に個別の支援施策を,第3章に高次脳機能障害者支援センター等を,第4章に雑則を置く。基本理念(3条)として掲げられているのは,①意思を尊重しつつ自立及び社会参加の機会が確保され,尊厳を保ちつつ他の人々と共生することを妨げられないこと,②社会的障壁の除去に資すること,③個々の性別,年齢,障害の状態及び生活の実態に応じ,関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に,意思決定の支援に配慮しつつ,医療の提供から地域での生活支援を経て社会参加の支援に至るまで切れ目なく行われること,④居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるようにすること,の四つである。

2 政令が定める定義と四つの除外

同法2条1項は「高次脳機能障害」を,疾病の発症又は事故による受傷による脳の器質的病変に起因すると認められる記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害,失語,失行,失認その他の認知機能の障害として政令で定めるものと定義し,同条2項は「高次脳機能障害者」を,高次脳機能障害がある者であって,高次脳機能障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものと定義する。原因となる疾病や受傷の種類を限定していないため,厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長は,令和7年12月5日の衆議院厚生労働委員会において,循環器病対策基本法が循環器病という疾患に着目しているのに対し,本法は原疾患を問わず高次脳機能障害のある者の支援を対象としている旨を説明している。

政令に委任された部分を定めるのが高次脳機能障害者支援法施行令1条であり,同条は,記憶障害以下の認知機能の障害から,①先天性疾病による認知機能の障害,②周産期における胎児又は新生児が受けた脳の損傷による認知機能の障害,③介護保険法5条の2第1項に規定する認知症に該当する認知機能の障害,④発達障害者支援法2条1項に規定する発達障害に該当する認知機能の障害の四つを除いている。除外されているのはこの四つだけであり,進行性の疾患を原因とする場合が一律に除外されているわけではない。この点は,後述する行政的診断基準の平成16年版が「進行性疾患」を除外項目に掲げていたのと異なっており,除外項目から進行性疾患を落とした令和5年版の診断基準と整合する定め方になっている。

3 高次脳機能障害者支援センター

同法19条1項は,都道府県知事が,①高次脳機能障害者及びその家族その他の関係者に対する専門的な相談,情報の提供又は助言,②円滑な社会生活を促進するための特性に対応した専門的な支援,③関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対する情報の提供及び研修,④これらの機関及び団体との連絡調整,⑤これらに附帯する業務を,高次脳機能障害者支援センターに行わせ,又は自ら行うことができると定める。指定は申請により行われ(同条2項),都道府県知事は,地域の実情を踏まえつつ,可能な限り身近な場所で必要な支援を受けられるよう適切な配慮をするものとされている(同条3項)。センターについては,役職員等の秘密保持義務(20条),報告の徴収等(21条),改善命令(22条)及び指定の取消し(23条)が置かれている。指定都市においては,31条及び施行令2条により,指定都市市長が同様の事務を処理する。

運用上の細目を定めるのは,令和8年4月7日障発0407第19号「高次脳機能障害者支援事業の実施について」の別紙1「高次脳機能障害者支援事業実施要綱」と,令和8年4月15日障精発0415第1号「高次脳機能障害者支援法の施行に伴う留意事項について」である。実施主体は都道府県又は指定都市とされ,事業の全部又は一部を団体等に委託することができる。センターは同一都道府県等の区域内に複数箇所設置することができ,指定数の上限は設けられておらず,都道府県と指定都市が同一の機関を指定することも可能である。都道府県知事等が指定をせずに自ら業務を担う場合も国庫補助の対象となり,「高次脳機能障害者支援センター」の名称を使用することは差し支えないとされている。

センターに配置される支援コーディネーターについて,留意事項通知は,社会福祉士,精神保健福祉士,保健師,作業療法士,公認心理師,言語聴覚士等のほか,高次脳機能障害者やその家族等で,自らの経験を活かして適切に相談支援を行うことができるものが想定されると述べている。当事者や家族による支援を国家資格保持者と並べて明記した点は,同種の相談支援の要綱の中では特徴的である。なお,従前の予算事業である「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」(平成19年5月25日障発0525001号)は上記の新通知により廃止されたが,実施要綱第6は経過措置を置き,センターが指定されるまでの間は従前の支援拠点機関が業務の一部又は全部を引き続き実施することができ,当該業務はセンターが指定された日をもって終了するものとしている。留意事項通知は,やむを得ない事情で直ちに指定することが困難な場合には,令和8年度内に指定することを前提として,指定手続が完了するまでの期間も国庫補助の対象とすることができるとしている。

4 地域協議会,専門的な医療機関及び司法手続における配慮

同法25条1項は,都道府県に対し,支援の体制の整備を図るため,高次脳機能障害者及びその家族,学識経験者その他の関係者並びに医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体等により構成される高次脳機能障害者支援地域協議会を置くよう努めなければならないと定め,同条2項は,協議会が,支援体制に関する課題についての情報共有,関係者の連携の緊密化及び地域の実情に応じた体制の整備に関する協議を行うものとしている。同法24条1項は,都道府県に対し,専門的に高次脳機能障害の診断,治療,リハビリテーション等を行うことができると認める病院又は診療所を確保するよう努めなければならないとし,同条2項は,国及び地方公共団体が医療機関の相互協力を推進し,医療機関に対して情報提供その他必要な援助を行うものとする。

司法手続との関係で置かれているのが15条であり,同条は,高次脳機能障害者が刑事事件若しくは少年の保護事件に関する手続その他これに準ずる手続の対象となった場合,又は裁判所における民事事件,家事事件若しくは行政事件に関する手続の当事者その他の関係人となった場合において,その権利を円滑に行使できるようにするため,個々の特性に応じた意思疎通の手段の確保のための配慮その他の適切な配慮をするものとすると定める。刑事司法の手続と民事・家事・行政の各手続を並べて配慮の対象とした点に特徴がある。これと対をなすのが29条であり,同条は,国及び地方公共団体が研修を実施すべき対象として,医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務に従事する者と並べて「捜査及び裁判に関する業務に従事する者」を挙げている。

5 国会審議で確認された適用範囲

条文だけからは判然としないのが,画像検査で脳の器質的病変を確認できない場合に法の対象となるかという問題である。令和7年12月5日の衆議院厚生労働委員会において,田村貴昭議員は,画像所見がなくても神経学的な診断等により医学的に脳に器質的病変があると診断される患者及び軽度外傷性脳損傷(MTBI)の患者が本案の対象となるかを提出者に質した。これに対し,提出者側の早稲田ゆき議員は,器質的病変の確認方法としてはMRI,CT,脳波等の検査所見によることが原則であるとした上で,受傷や疾病の事実が確認され,かつ認知障害を主たる原因として日常生活や社会生活に制約があるにもかかわらず検査所見で器質的病変を明らかにできない症例については,慎重な評価によって器質的病変が存在しているとの確認ができる場合には高次脳機能障害と診断され得るのであり,その場合には当然に本案の対象になると答弁した。

同議員は,軽度外傷性脳損傷についても,意識消失の時間の長短にかかわらず,高次脳機能障害と認められるものであれば当然に本案の対象に含まれる旨を述べている。もっとも,これは支援法の適用対象に関する立法者の説明であり,個別の給付の等級が認められるかどうかは各制度の認定基準によることに変わりはない。同じ委員会において,田村議員は,画像所見が認められない高次脳機能障害について労災保険の障害給付が請求された場合には各労働局が本省に協議することとされており,厚生労働省から示された資料によれば過去13年間の協議件数171件に対して支給決定は38件であったと述べている。この数値については政府参考人から明示の確認がされておらず,公表資料により裏付けられたものとして扱うことはできないが,法の対象となることと給付を受けられることとが同義ではないという点は,答弁の全体からうかがわれる。

6 令和8年度診療報酬改定による退院支援の義務付け

支援法自体には罰則を伴う義務規定が乏しい。センターの設置は「行わせ,又は自ら行うことができる」という規定であり,地域協議会の設置と専門的医療機関の確保は努力義務である。これに対し,実際の医療機関の行動を規律する形で置かれたのが,令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日適用)における回復期リハビリテーション病棟入院料及び特定機能病院リハビリテーション病棟入院料の施設基準である。令和8年5月8日障精発0508第1号「高次脳機能障害者への退院支援に関する診療報酬の改定等について」によれば,これらの入院料を算定する保険医療機関は,次のアからウまでの要件をいずれも満たすこととされた。

アは,当該地域において高次脳機能障害の患者に適したサービスを提供するもの,すなわち①支援法19条1項の高次脳機能障害者支援センター,②他の保険医療機関,③障害者総合支援法に基づく生活介護,自立訓練,就労継続支援,自立生活援助,共同生活援助,相談支援,計画相談支援等の障害福祉サービス等を提供する事業所又は施設,④児童福祉法に基づく指定障害児通所支援事業者,指定障害児入所施設等及び指定障害児相談支援事業者について,所在地,連絡先及び提供サービス等の情報をあらかじめ把握できる体制を整備することである。イは,基本診療料の施設基準等の別表第9に掲げる「高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害,重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合」に該当する患者の退院時に,患者又はその家族等退院後に患者の看護に当たる者に対して,アの情報を説明の上で提供できる体制を整備することである。ウは,退院後に他の保険医療機関でのリハビリテーション,介護保険によるリハビリテーション又は障害福祉サービスによるリハビリテーションへの移行を予定している患者について,同意が得られた場合には,移行先に対して3月以内に作成したリハビリテーション総合実施計画書等を文書により提供できる体制を整備することである。

同通知は,これと対応させて,高次脳機能障害者支援センターが,高次脳機能障害の患者に適した医療機関及び障害福祉サービス事業所等の情報を把握して一覧を作成し,これを医療機関に情報提供することを求めている。制度の設計としては,センターが地域の受け皿の一覧を作り,回復期リハビリテーション病棟がその一覧を退院時に患者と家族へ渡す,という流れが想定されていることになる。したがって,回復期リハビリテーション病棟から退院するに際してこの種の情報提供を受けていない場合には,施設基準の充足について医療機関に確認を求める余地があると考えられる。

第3 診断の基準と障害者手帳1 行政的診断基準の令和5年版

医師が診断書に「高次脳機能障害」と記載する際に用いられる行政的診断基準には,平成13年度の高次脳機能障害支援モデル事業に由来する平成16年版と,国際疾病分類のICD-10からICD-11への改訂に合わせて作成された令和5年版とがある。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターのウェブサイトには現在も平成16年版が掲載されており,両者は構造こそ同じであるものの,実務に影響する差異がある。

条項平成16年版令和5年版Ⅱ 検査所見MRI,CT,脳波などにより器質的病変の存在が確認されているか,あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる脳MRI,頭部CT,脳波などにより確認されているか,あるいは医学的に十分に合理的な根拠が示された診断書等により確認できるⅢ 除外項目3先天性疾患,周産期における脳損傷,発達障害,進行性疾患を原因とする者を除外先天性疾患,発達障害,周産期における脳損傷を原因とする者を除外(進行性疾患の記載なし)Ⅲ 除外項目2受傷又は発症以前から有する症状と検査所見は除外する発症又は受傷以前から症状や検査所見が存在する場合には,発症又は受傷後に新たに現れた症状や検査所見に基づき診断し,それらが十分とは言えない者を除外する軽度外傷性脳損傷記載なし単回のMTBIについて,病歴,神経心理学的検査による評価及び診断基準の対象とならない精神疾患の除外から総合的に判定する必要があると明記国際疾病分類ICD-10のF04,F06,F07が対象ICD-11ではF0に対応する大分類が消滅し,6D72,6D7,6E6に分散していることを明記

注 いずれも診断基準の本体は「Ⅰ主要症状等」「Ⅱ検査所見」「Ⅲ除外項目」「Ⅳ診断(令和5年版は診断に際しての留意事項)」の四つで構成される。

令和5年版が実務上重要なのは,解説部分において,脳損傷の存在が診断の必要条件であるとしつつ,高次脳機能障害の臨床症状を呈しながらも頭部CTや脳MRIを用いた画像診断において有意な異常所見が得られないケースが多々あるとして,「脳損傷の可視化は決して必要条件ではない」と明言した点である。同版は,画像診断で有意な異常所見が得られないケースにおいては臨床経過と神経心理学的検査の所見が極めて重要になり,ケースによっては神経心理学的検査の所見が診断の決め手になることがしばしばあると指摘している。ただし,この場合には神経心理学的検査の専門家による精密な検査施行と結果の解釈が必須であるとも述べており,検査を受けさえすれば足りるという趣旨ではない。なお,除外項目から進行性疾患が落ちた理由について,同版は,本診断基準が行政的な支援対策推進を目的とするものであるから,他の行政的支援が拡充されている病態(認知症等)については除外する形を取っていると説明している。

2 精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準

高次脳機能障害を理由として取得する手帳は,精神保健福祉法45条に基づく精神障害者保健福祉手帳である。同条1項により居住地の都道府県知事に交付を申請し,同条2項により政令で定める精神障害の状態にあると認められれば交付を受けるが,同条4項により2年ごとに,政令で定める精神障害の状態にあることについて都道府県知事の認定を受けなければならない。等級の判定は,平成7年9月12日健医発第1133号「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」によるところ,平成23年3月3日障発0303第1号による一部改正(平成23年4月1日適用)によって,「⑥器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)」の(b)として高次脳機能障害の定義が明記された。

同改正が定義するところによれば,高次脳機能障害とは,①脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認され,②日常生活又は社会生活に制約があり,その主たる原因が記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等の認知障害であるものをいい,ICD-10コードではF04,F06又はF07に該当する。等級の判定基準は,器質性精神障害によるものについて,記憶障害,遂行機能障害,注意障害及び社会的行動障害のいずれかがあり,そのうち一つ以上が高度のものを1級,一つ以上が中等度のものを2級,いずれも軽度のものを3級としている。判定は,(1)精神疾患の存在の確認,(2)精神疾患(機能障害)の状態の確認,(3)能力障害(活動制限)の状態の確認,(4)精神障害の程度の総合判定という順を追って行われるものとされており,診断書に記載された機能障害の状態と活動制限の状態の双方を審査することが求められている。

麻痺や失語がある場合には,身体障害者福祉法15条に基づく身体障害者手帳を別に申請することができ,身体症状と精神症状を併せ持つ場合には2種類以上の手帳を同時に取得することが可能である。障害者手帳の等級は制度ごとに意味が異なり,同じ「3級」でも手帳と障害年金では要件が違うことに注意を要する。この点は,別の傷病を素材とするものであるが,大腿骨骨折の障害者手帳と障害年金――「3級」の違いと人工骨頭の認定基準でも整理している。

3 手帳を要する制度と要しない制度

手帳がなければ制度を利用できないという理解は,制度の根拠規定と一致しない。手帳の所持を要件とするかどうかは制度ごとに定め方が異なっており,条文又は基本方針まで立ち返って確認する必要がある。

制度手帳の要否根拠障害福祉サービスの支給申請不要自立支援医療受給者証又はICD-10コードの記載のある医師の診断書によることができる(国立障害者リハビリテーションセンター掲載の関係通知)障害を理由とする差別の解消不要障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針が,法の対象となる障害者はいわゆる障害者手帳の所持者に限られないとし,高次脳機能障害は精神障害に含まれると明記雇用における合理的配慮の提供条文上は不要障害者雇用促進法36条の2ないし36条の4は「障害者」について定めており,37条2項の「対象障害者」とは別の概念である障害者雇用率における算定必要同法37条2項は,対象障害者たる精神障害者を精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限っている障害年金不要国民年金法30条及び厚生年金保険法47条は手帳の所持を支給要件としていない

注 手帳を取得することにより,税の控除,公共料金の減免,公営住宅の入居の優遇等を受けられる場合があるが,その範囲は自治体により異なる。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針は,法の対象範囲を説明する箇所において,法が対象とする障害者はいわゆる障害者手帳の所持者に限られないとした上で,「なお,高次脳機能障害は精神障害に含まれる。」と述べている。障害者基本法2条1号が「精神障害(発達障害を含む。)」としか規定していないのに対し,基本方針が高次脳機能障害を精神障害に含まれると明示していることは,学校や事業者との交渉において最初に確認すべき点である。

第4 障害年金1 器質性精神障害としての認定基準

障害年金における高次脳機能障害の取扱いは,国民年金・厚生年金保険障害認定基準の第3第1章第8節「精神の障害」のうち「B 症状性を含む器質性精神障害」による。同節は,症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)を,先天異常,頭部外傷,変性疾患,新生物,中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に,膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものと定義し,高次脳機能障害については,脳損傷に起因する認知障害全般を指し,日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となると定める。

等級は,高度の認知障害,高度の人格変化,その他の高度の精神神経症状が著明なため常時の援助が必要なものを1級,認知障害,人格変化,その他の精神神経症状が著明なため日常生活が著しい制限を受けるものを2級,認知障害及び人格変化は著しくないがその他の精神神経症状があり労働が制限を受けるもの又は認知障害のため労働が著しい制限を受けるものを3級とし,認知障害のため労働が制限を受けるものを障害手当金とする。同節は,脳の器質障害については精神障害と神経障害を区分して考えることはその多岐にわたる臨床症状から不能であり,原則としてそれらの諸症状を総合して全体像から総合的に判断して認定するとしており,症状を要素ごとに切り分けて評価する建て付けを採っていない。

見落としやすいのが失語の扱いである。同節は,高次脳機能障害の主な症状として失語,失行,失認のほか記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などを挙げた上で,失語の障害については本章第6節「音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定すると定めている。したがって,失語がある場合には第8節と第6節の双方が問題となり,併合認定によって上位の等級となる余地がある。また同節は,障害の状態が代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮するとしており,症状固定を前提とする後遺障害等級とは異なり,経過を通じた評価が予定されている。

制度の入口として決定的なのは,初診日にどの年金制度に加入していたかである。国民年金法30条2項は障害等級を1級及び2級とし,厚生年金保険法47条2項は1級から3級までとしているから,3級及び障害手当金は厚生年金保険にしかない。同じ障害の状態であっても,初診日に国民年金の第1号被保険者であった場合は2級に届かなければ支給されないことになる。

2 等級判定ガイドラインと考慮要素の借用

障害基礎年金の不支給割合に都道府県間の差があることが確認されたことを受けて策定されたのが,平成28年9月の「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」である。同ガイドラインは,診断書の記載項目のうち「日常生活能力の程度」の5段階評価と「日常生活能力の判定」の4段階評価を1から4の数値に置き換えた平均とを組み合わせた表1により障害等級の目安を示し,表2に掲げる考慮要素を踏まえて認定医が総合的に判定する仕組みを採る。

高次脳機能障害について注意を要するのは,表2に器質性精神障害のための独立の考慮要素欄が置かれていないことである。ガイドラインは第3の3(3)②において,障害認定基準に規定する「症状性を含む器質性精神障害」について総合評価を行う場合は,「精神障害」「知的障害」「発達障害」の区分にとらわれず,各分野の考慮すべき要素のうち該当又は類似するものを考慮して評価すると定めており,他の区分の考慮要素を借用する建て付けになっている。この規定を前提とすれば,知能検査の結果が正常範囲であるにもかかわらず社会的行動障害によって生活が破綻している事案では,発達障害の欄に置かれた「知能指数が高くても日常生活能力が低い(特に対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない)場合は,それを考慮する」という要素を,該当又は類似するものとして援用することができると整理される。

3 就労している場合の評価

就労していることが不支給の理由になるかという点については,認定基準とガイドラインの双方が明文で釘を刺している。障害認定基準第8節は,Bの(6)において,日常生活能力等の判定に当たっては身体的機能及び精神的機能を考慮の上,社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるとした上で,現に仕事に従事している者については,労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断することと定めている。

等級判定ガイドラインの表2「④就労状況」の共通事項も同旨を定めた上で,「援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも,その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する」とし,就労継続支援A型・B型及び障害者雇用制度による就労並びに就労移行支援については1級又は2級の可能性を検討するとし,障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも,これらと同程度の援助を受けて就労している場合は2級の可能性を検討するとしている。

裁判例にも同様の判断がある。東京地方裁判所令和4年3月18日判決(令和2年(行ウ)第58号)は,広汎性発達障害のほか既存障害として軽度の知的障害等がある者が障害者雇用枠で就職して定型的な作業又は単純な事務作業に従事していた事案において,判断を要するような行為については身のまわりのことであっても自発的かつ適正に行うことができず家族の援助や指導等が必要な状況にあったこと等を勘案し,就労を相当期間継続してきたことについては,本来であれば継続が困難であるところを周囲の理解や援助,指導等によって継続が可能となったものと評価することができるとして,障害等級2級に該当するとし,不支給処分を取り消すとともに,厚生労働大臣に対して2級の裁定をするよう命じた。高次脳機能障害の事案ではないが,就労の事実をどのように評価するかについての判断の型を示したものとして参照できる。

障害年金の認定において就労状況が考慮されることと,特定の職務について労務提供能力があるかを判断することは,同じ問題ではない。
障害者手帳・障害年金の認定と労務提供能力は同じかでは,行政上の認定,診断・症状・治療,日常生活・社会生活上の機能及び具体的職務についての労務提供能力を四つの判断層に分けて整理している。

4 支分権の消滅時効

障害年金には,見落とすと回復できない期間の制約がある。最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決(平成29年(行ヒ)第44号,民集71巻8号1501頁)は,厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)47条に基づく障害年金の支分権,すなわち支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利の消滅時効は,当該障害年金に係る裁定を受ける前であっても,厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行すると判示した。

この判断によれば,障害認定日に遡って等級が認められたとしても,古い支払期の分から順に時効によって消滅していくことになる。障害認定日は初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日)であるから(国民年金法30条1項,厚生年金保険法47条1項),発症又は受傷から相当の年月が経過した後に相談を受けた場合には,遡及請求が可能かどうかの検討と並行して,時効により失われる範囲を早期に確定させる必要がある。障害の程度が重いほど本人による手続が困難であり,家族が制度の存在を知るまでに時間がかかりやすいという事情があるだけに,この点は最初に確認すべき事項の一つである。

第5 労働者災害補償保険及び公務災害1 四つの能力による障害等級の認定

業務上の事由又は通勤による負傷若しくは疾病を原因とする場合の障害等級は,平成15年8月8日基発第0808002号「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」による。同基準は,脳の器質性障害を「高次脳機能障害」(器質性精神障害)と「身体性機能障害」(神経系統の障害)に区分した上で,両者の程度及び介護の要否・程度を踏まえて総合的に判断することとし,たとえば高次脳機能障害が第5級に相当し軽度の片麻痺が第7級に相当するからといって併合の方法を用いて準用等級第3級と定めるのではなく,その場合の全体病像として第1級の3,第2級の2の2又は第3級の3のいずれかに認定すべきものとしている。

高次脳機能障害の評価は,意思疎通能力,問題解決能力,作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力という四つの能力の喪失の程度によって行い,複数の障害が認められるときは原則として最も重篤なものに着目する。等級の対応は,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常に他人の介護を要するものを第1級の3,随時介護を要するものを第2級の2の2,身のまわり処理は可能であるが労務に服することができないもの(四つの能力のいずれか一つ以上が全部失われているもの又はいずれか二つ以上の大部分が失われているもの)を第3級の3,きわめて軽易な労務のほか服することができないもの(いずれか一つ以上の大部分又は二つ以上の半分程度)を第5級の1の2,軽易な労務にしか服することができないもの(いずれか一つ以上の半分程度又は二つ以上の相当程度)を第7級の3,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの(いずれか一つ以上の相当程度)を第9級の7の2,多少の障害を残すもの(いずれか一つ以上が多少失われているもの)を第12級の12とする。

手続面では,障害補償給付請求書等の裏面の診断書の傷病名の欄等に頭部外傷又は脳血管疾患等による高次脳機能障害が想定される障害が記載されている場合について,主治医に対して様式1により,家族(あるいは家族に代わる介護者)に対して様式2により障害の状態についての意見を求めることとされている。そして同基準は,高次脳機能障害の状態について家族と主治医の意見が著しく異なる場合には再度必要な調査を行うことと定めており,本人の病識が低下していることによって主治医の把握と生活実態とがずれる場合に,家族側の意見を無視して処理することは想定されていない。労災保険の給付の全体像については,労災保険の給付内容―給付の種類,金額及び令和8年改正で扱っている。

2 画像所見がない場合の第14級の9

同基準は,「通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,軽微な障害を残すもの」を第14級の9とし,これに該当するものとして「MRI,CT等による他覚的所見は認められないものの,脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき,高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの」を挙げている。画像所見が得られない場合の類型が明文で置かれている点は,前記の令和5年版診断基準が「脳損傷の可視化は決して必要条件ではない」と述べていることと方向を同じくする。

もっとも,同基準は,高次脳機能障害が脳の器質的病変に基づくものであることからMRI,CT等によりその存在が認められることが必要であるとも述べており,画像所見が不要であるという趣旨ではない。他方で同基準は,神経心理学的な各種テストの結果のみをもって高次脳機能障害が認められないと判断することなく四つの能力の障害の程度により障害等級を認定することと定め,注記において,神経心理学的な各種テスト等の検査結果は臨床判定の際の有効な手段であるが,知能指数が高いにもかかわらず高次脳機能障害のために生活困難度が高い例があると述べている。知能検査の数値が保たれていることを理由に障害を否定する判断を,基準自身が明示的に戒めている。

公務上の災害による場合は地方公務員災害補償法等によることになる。名古屋地方裁判所平成23年6月29日判決(平成20年(行ウ)第101号)は,中学校の教員が公務遂行中に脳出血により倒れて高次脳機能障害等の後遺症を負い,公務外認定処分を受けた事案において,従事した公務に量的及び質的な過重性が認められ,これにより高血圧及びもやもや病の基礎疾患が自然的経過を超えて増悪化して脳出血の発症に至ったことが推認されるとして,公務起因性を認めた。他方,岐阜地方裁判所平成23年8月4日判決(平成20年(行ウ)第1号)は障害補償の不支給処分の取消請求を棄却し,仙台地方裁判所平成24年1月12日判決(平成22年(行ウ)第25号)は,自宅療養及びそのための休業が医師の事前の指示ないし指導に基づくものでない場合であっても,医師の医学的知見に基づく判断により客観的に見て必要性が明らかであると証明された場合には休業補償給付の支給要件を満たすと解した上で,当該事案では必要性が明らかであるとは認められないとして請求を棄却している。

第6 障害福祉サービス,医療及び介護保険1 障害者総合支援法による給付

日常生活の支援は障害者総合支援法による。高次脳機能障害の事案で用いられることが多いのは,同法5条12項の自立訓練(機能訓練及び生活訓練),同条18項の共同生活援助,同条21項の地域移行支援,同条13項から15項までの就労選択支援,就労移行支援及び就労継続支援である。就労選択支援は,就労を希望する障害者等について短期間の生産活動その他の活動の機会の提供を通じて就労に関する適性,知識及び能力の評価並びに就労に関する意向及び必要な配慮の整理を行うものとして新設された。この新設によって同条の項番号が繰り下がっているため,新設前に刊行された文献の項番号をそのまま引用すると条項の指示を誤ることになる。

令和7年10月に始まった就労選択支援は,本人の希望,就労能力や適性等に合った就労先・働き方の選択を支えるサービスである。
厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年9月30日改正)は,新たに就労継続支援B型を利用する場合の原則的な事前利用と,50歳以上,障害基礎年金1級受給者等の例外を示す。A型の新規利用等の令和9年4月以降の取扱いは,同通知では予定として記されている。
本人の意思,市町村の支給決定,地域の事業所と利用順序を確認する必要があり,評価結果だけで就職先が決定するものではない。制度開始時点を含めた整理は,令和7年10月の厚生労働省制度変更を参照されたい。

施設や病院から地域へ移る場面の給付である地域移行支援,共同生活援助及び自立生活援助の内容,並びに住まいの確保に用いる住宅確保要配慮者居住支援法人等の制度については,精神科病院退院者の環境調整の諸制度――退院後生活環境相談員,地域移行支援,居住支援法人及び費用負担で詳しく扱っている。高次脳機能障害の場合も同じ給付を用いることになるが,精神科病院からの退院に固有の制度である退院後生活環境相談員及び医療保護入院者退院支援委員会は,医療保護入院又は措置入院を経ていない限り適用されない。

なお,令和8年4月15日障精発0415第1号は,各自治体に対し,支援法17条を踏まえて高次脳機能障害者やその家族その他の関係者が相談できる窓口を明確化し,関係機関等との連携を図りながら十分な支援が行われるよう相談支援体制を整備するとともに,必要な周知を進めることを求めている。同通知は地方自治法245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であり,これ自体が個々の住民に対する具体的な請求権を生じさせるものではない。

交通事故の被害者が障害福祉サービスを利用する場合に,その給付が将来介護費から差し引かれるかどうかは,交通事故の将来介護費と公的給付――日額,平均余命,余命短縮,定期金及び年金・労災・介護保険・NASVA介護料の控除で扱っている。

2 支給量の決定に対する司法審査

サービスの種類や支給量に不服がある場合の枠組みは,一連の裁判例によって形成されてきた。大阪地方裁判所平成22年4月23日判決(平成19年(行ウ)第200号)及びその控訴審である大阪高等裁判所平成22年12月14日判決(平成22年(行コ)第84号)は,重度訪問介護の支給量を1か月当たり318時間とする介護給付費支給決定の取消請求について,市町村がする支給要否決定並びに障害福祉サービスの種類及び支給量の決定は,その判断の基礎となる事実に重大な誤認があり,あるいはその判断内容が社会通念に照らして明らかに合理性を欠くこと等により,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用にわたるものと認められるような場合に限って違法になるとした上で,違法となるかどうかは,決定に至る判断の過程において,勘案事項を適切に調査せず,又はこれを適切に考慮しないことにより,その内容が,当該障害者等の個別具体的な障害の種類及び内容並びにその程度その他の具体的事情に照らして,社会通念上当該障害者等において自立した日常生活又は社会生活を営むことを困難とするものであって,同法の趣旨目的に反するのではないかという観点から検討すべきであると判示した。

この枠組みの下でも,生活場面の切り出し方が不合理であれば違法とされる。東京地方裁判所平成30年10月12日判決(平成28年(行ウ)第369号)は,午前10時から午後2時までの時間帯をボランティア対応として昼食介助及び昼食後の歯磨き介助の時間を算定せず,重度訪問介護の支給量を1か月527時間(1日当たり17時間)を超えて算定しなかったことについて,申請者が作成した利用計画案が1日24時間の常時介助を前提として2人介助を含む1日当たり27時間30分から自助努力分として4時間を差し引いた1日当たり23時間30分を求めるものとなっており,支給決定における支給量が申請者の求める時間に満たない場合にまで4時間分全部の支給量を不要とする意向であるとは解し難いこと等の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとした。

さらに,最高裁判所第一小法廷令和7年7月17日判決(令和5年(行ヒ)第276号)は,両下肢の機能の全廃及び両上肢の機能の著しい障害により1級の身体障害者手帳の交付を受け,障害支援区分4の認定を受けた上で居宅介護(身体介護月45時間及び家事援助月25時間)の支給決定を受けていた者が,同じ内容の支給決定を求めたところ却下処分を受けた事案について,処分当時65歳に達していたが介護保険法27条1項に基づく申請をしていなかったという事情の下で,処分を違法とした原審の判断には,市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果,受けることができる介護給付のうち自立支援給付に相当するものの量を算定することができないとした市の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かについて審理を尽くさなかった違法があるとして,原判決を破棄し差し戻した。これらはいずれも身体障害等の事案であり,高次脳機能障害の支給量を正面から争った裁判例を裁判所ウェブサイトで確認することはできなかったが,判断の枠組み自体は障害の種別を問わないものとして組み立てられている。

3 自立支援医療と介護保険との関係

通院医療費の負担軽減には,障害者総合支援法5条25項の自立支援医療(精神通院医療)を用いる。介護保険との関係では,年齢によって扱いが分かれる。介護保険法7条3項2号及び同法施行令2条は,第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)が要介護認定を受けるための特定疾病を16列挙しており,その13号に「脳血管疾患」が置かれている。したがって,40歳以上65歳未満の場合,脳血管疾患を原因とする高次脳機能障害であれば介護保険の給付を受け得るが,交通事故等による外傷性脳損傷を原因とする場合は特定疾病に当たらないため介護保険を利用することができず,障害福祉サービスによることになる。65歳以上であれば原因を問わず介護保険の被保険者となる。

もう一つ,介護保険法5条の2第1項の「認知症」との関係にも注意を要する。同項は認知症を,アルツハイマー病その他の神経変性疾患,脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態と定義しており,高次脳機能障害者支援法施行令1条はこれに該当する認知機能の障害を支援法の対象から除いている。脳血管疾患を原因とする事案では,同じ状態が「認知症」と評価されるか「高次脳機能障害」と評価されるかによって適用される制度が分かれ得ることになるが,行政的診断基準の令和5年版が認知症を除外する理由として他の行政的支援が拡充されていることを挙げていることからすれば,いずれの制度からも漏れることを想定した仕分けではないと考えられる。

第7 就労及び差別の解消1 合理的配慮と法定雇用率

雇用の場面では,二つの制度を区別して考える必要がある。第一は合理的配慮の提供義務であり,障害者雇用促進法36条の2は,事業主に対し,労働者の募集及び採用について,障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため,募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないと定め,同法36条の3は,採用後について,均等な待遇の確保又は有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため,障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備,援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないと定める。いずれも事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときはこの限りでないという留保が付されている。同法36条の4は,これらの措置を講ずるに当たって障害者の意向を十分に尊重すべきこと,及び障害者である労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずべきことを定める。

第二は障害者雇用率制度である。同法37条2項は,雇用義務の対象となる「対象障害者」のうち精神障害者について,精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限ると定めており,実雇用率の算定に当たっては手帳が必要になる。したがって,手帳を取得していない高次脳機能障害者について事業主が合理的配慮を提供する義務を負う一方で,その労働者は実雇用率には算入されないという状態があり得る。法定雇用率の水準及び算定方法については,令和8年7月の障害者法定雇用率2.7%への引上げ―37.5人基準,算定方法及び企業の対応で扱っている。

支援法13条1項は,国及び地方公共団体に対し,公共職業安定所,地域障害者職業センター,障害者就業・生活支援センター,社会福祉協議会,教育委員会その他の関係機関及び民間団体相互の連携を確保しつつ,個々の特性に応じた適切な就労の機会の確保及び就労の定着のための支援に努めるべきことを定め,同条3項は,事業主に対し,高次脳機能障害者の雇用に関し,その有する能力を正当に評価し,適切な雇用の機会を確保するとともに,個々の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならないと定める。また,支援法6条は,事業主が高次脳機能障害者又はその家族の雇用の継続等に配慮するよう努めるべきものとしており,本人だけでなく介護に当たる家族の就業継続を条文上取り上げている。

2 障害を理由とする差別の解消

障害者差別解消法7条は行政機関等に,同法8条は事業者に,それぞれ不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供を義務付ける。事業者による合理的配慮の提供は,令和3年法律第56号による改正により努力義務から法的義務に改められ,同改正法は令和6年4月1日に施行された。合理的配慮の提供は,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときに,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて必要かつ合理的な配慮をするというものである。

前記のとおり,同法の基本方針は高次脳機能障害が精神障害に含まれること及び対象が手帳の所持者に限られないことを明記している。もっとも,同法が求めるのは意思の表明を契機とする個別の調整であり,記憶障害や社会的行動障害のために自ら配慮を求めることが難しい場合には,その意思の表明を誰がどのように補うかという問題が残る。支援法3条3項が意思決定の支援への配慮を基本理念に掲げているのは,この局面にも関わる。成年後見制度の側からの手当てについては,令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で扱っている。

第8 自動車の運転

運転免許を維持できるかどうかは,条文を追うだけでは答えが出ない領域である。道路交通法103条1項1号は,免許の取消し又は効力の停止の事由となる病気として,イ「幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの」,ロ「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」,ハ「イ及びロに掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」を掲げ,同項1号の2は認知症であることが判明したときを掲げる。同項1号ハの政令で定める病気は,道路交通法施行令38条の2第3項が同令33条の2の3第3項各号を引用しており,同項は,1号にそう鬱病,2号に重度の眠気の症状を呈する睡眠障害を掲げた上で,3号に「前二号に掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気」を掲げる。高次脳機能障害は病名として列挙されておらず,この3号の包括的な規定への当てはめの問題となる。

手続としては,公安委員会は,免許を受けた者が同項1号から3号までのいずれかに該当することとなったと疑う理由があるときは,臨時に適性検査を行い,又は内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができ,この場合には,免許の申請又は更新の際に提出された質問票の記載内容,法101条の5の規定による報告の内容その他の事情を考慮するものとされている(法102条4項)。また,法101条の6第1項は,医師が,その診察を受けた者が法103条1項1号,1号の2又は3号のいずれかに該当すると認めた場合において,その者が免許を受けた者であることを知ったときは,診察の結果を公安委員会に届け出ることができるとし,同条3項は,刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は,この届出をすることを妨げるものと解釈してはならないと定める。届出は義務ではないが,守秘義務違反にならないことが法律上明示されている。

質問票について注意を要するのは罰則である。法117条の4第1項3号は,法89条1項(免許の申請),法101条1項(免許証等の更新の申請)又は法101条の2第1項の質問票に虚偽の記載をして提出した者を,1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定める。免許を失うことをおそれて質問票に事実と異なる記載をすることは犯罪を構成し得るのであって,運転の継続を希望する場合には,臨時適性検査又は医師の診断書の提出という手続の中で判断を求めることになる。運転の再開を支援する体制も整備されつつあり,令和8年4月7日障障発0407第1号等による高次脳機能障害支援養成研修の実施要綱は,実践研修の標準的なカリキュラムの講義科目に「自動車運転再開支援」を置き,高次脳機能障害者の自動車運転支援に関連する法制度,運転評価,課題や留意事項の理解を内容とすると定めている。

第9 相談窓口及び期間の制約1 支援センターと大阪府内の窓口

これまで見てきたとおり,制度の実施主体は国,都道府県,指定都市,市町村,労働基準監督署及び厚生労働大臣に分かれている。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターは,都道府県別の支援拠点機関の一覧を公開しており,令和8年3月現在の大阪府については,大阪府障がい者医療・リハビリテーションセンター(大阪府高次脳機能障がい相談支援センター。大阪市住吉区大領3丁目2番36号,電話06-6692-5262)及び堺市立健康福祉プラザ生活リハビリテーションセンター(指定管理者は社会福祉法人堺市社会福祉事業団。堺市堺区旭ヶ丘中町4丁3番1号,電話072-275-5019)の2機関が掲載されている。指定都市である大阪市を実施主体とする機関は,同一覧には掲載されていない。

実施要綱によれば,センターの業務には,相談支援及び情報提供のほか,診断・評価,適切なリハビリテーション及び福祉サービス等の提供並びに情報提供という専門的な支援,関係施設・関係機関等の職員,当事者及びその家族等に対する研修,並びに普及啓発活動及び地域における実態及びニーズの把握が含まれる。相談の対象は本人に限られず,家族その他の関係者及び関係機関も含まれる。都道府県等は,センターから業務の実施状況等について少なくとも年1回の報告を聴取し,業務内容について定期的に評価を行い,必要に応じて改善を促すなど,適切な運営の確保に努めるものとされている。

2 期間に関する制約の整理

制度ごとに期間の定めがあり,遅れると回復できないものがある。主なものを挙げると,①障害認定日は初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日)である(国民年金法30条1項,厚生年金保険法47条1項),②障害年金の支分権は支払期の到来時から時効が進行し,裁定を受ける前であっても進行する(最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決),③精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに都道府県知事の認定を受ける必要がある(精神保健福祉法45条4項),④高次脳機能障害者支援センターの指定については,旧支援拠点機関を指定する予定であるがやむを得ない事情により直ちに指定することが困難な場合について,令和8年度内に指定することを前提とする取扱いが示されている,⑤支援法附則2項により,国は施行後3年を目途として施行の状況について検討を加えるものとされている,となる。

このうち実務上最も影響が大きいのは②であり,発症又は受傷から年月が経過してから相談に至る事案では,遡及請求の可否を検討する前に,まず時効によって失われる範囲を確定する必要がある。高次脳機能障害は外形から判断しにくく,本人が自らの障害を認識しにくいという特性があるため,制度の存在に気付くまでに時間がかかりやすい。厚生労働省が公表した支援法の概要も,この障害が外形上判断しづらくその特性の理解も進んでいない等の理由で,患者と家族が適切な支援を受けることができず日常生活や社会生活に困難を抱えているとの指摘があることを,立法の理由として挙げている。

出典1 法令

①高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)2条・3条・6条・11条・13条・15条・17条・19条・20条・21条・22条・23条・24条・25条・29条・31条・附則(e-Gov法令検索)
②高次脳機能障害者支援法施行令(令和8年政令第60号)1条・2条(e-Gov法令検索)
③精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)45条(e-Gov法令検索)
④障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)5条12項・13項・14項・15項・18項・21項・25項・27項・28項,77条1項(e-Gov法令検索)
⑤障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)36条の2・36条の3・36条の4・37条2項(e-Gov法令検索)
⑥障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)7条・8条(e-Gov法令検索)
⑦障害者基本法(昭和45年法律第84号)2条(e-Gov法令検索)
⑧発達障害者支援法(平成16年法律第167号)2条1項(e-Gov法令検索)
⑨国民年金法(昭和34年法律第141号)30条(e-Gov法令検索)
⑩厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)36条・47条(e-Gov法令検索)
⑪労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)15条(e-Gov法令検索)
⑫介護保険法(平成9年法律第123号)5条の2第1項・7条3項2号・27条1項(e-Gov法令検索)
⑬介護保険法施行令(平成10年政令第412号)2条(e-Gov法令検索)
⑭道路交通法(昭和35年法律第105号)89条1項・101条1項・101条の5・101条の6・102条4項・103条1項・117条の4第1項(e-Gov法令検索)
⑮道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)33条の2の3・38条の2(e-Gov法令検索)
⑯身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)15条(e-Gov法令検索)

2 行政通知

①厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「「高次脳機能障害者支援法」の公布について(通知)」(障発1224第1号,令和7年12月24日)(厚生労働省)
②厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「高次脳機能障害者支援事業の実施について」(障発0407第19号,令和8年4月7日)及び別紙1「高次脳機能障害者支援事業実施要綱」(厚生労働省)
③厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長「高次脳機能障害者支援法の施行に伴う留意事項について」(障精発0415第1号,令和8年4月15日)(厚生労働省)
④厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長・精神・障害保健課長「高次脳機能障害支援養成研修の実施について」(障障発0407第1号・障精発0407第3号,令和8年4月7日)及び別添「高次脳機能障害支援養成研修実施要綱」(厚生労働省)
⑤厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長「高次脳機能障害者への退院支援に関する診療報酬の改定等について」(障精発0508第1号,令和8年5月8日)(厚生労働省)
⑥厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「「地域生活支援事業等の実施について」の一部改正について」(障発0407第31号,令和8年4月7日)(厚生労働省)
⑦厚生労働省労働基準局長「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(基発第0808002号,平成15年8月8日)(厚生労働省法令等データベースサービス)
⑧厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準についての一部改正について」(障発0303第1号,平成23年3月3日。平成7年9月12日健医発第1133号の一部改正)(国立障害者リハビリテーションセンター)

3 認定基準・診断基準

①日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第3第1章第8節「精神の障害」(令和4年4月1日改正)56頁~62頁(日本年金機構)
②厚生労働省年金局「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)1頁~10頁(厚生労働省)
③「高次脳機能障害診断基準ガイドライン」(平成16年度作成版)1頁~6頁(国立障害者リハビリテーションセンター)
④「令和5年版 高次脳機能障害 診断基準 ガイドライン」1頁~9頁(日本高次脳機能障害学会)

4 裁判例

①最高裁判所第一小法廷令和7年7月17日判決(令和5年(行ヒ)第276号,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決(平成29年(行ヒ)第44号,民集71巻8号1501頁,裁判所ウェブサイト)
③東京地方裁判所平成30年10月12日判決(平成28年(行ウ)第369号,裁判所ウェブサイト)

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確定申告しない金融所得と後期高齢者医療の保険料――令和8年法律第31号による改正と窓口負担割合への影響(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 対象と時点
2 先に結論

第2 現行制度で確定申告の有無が負担を分ける仕組み

1 保険料と窓口負担の根拠規定
2 政令が所得を市町村民税に接続している
3 地方税法313条12項から15項までの構造
4 NISA口座と預貯金の利子が入らない理由

第3 金額でみた差

1 厚生労働省が示した設例
2 設例の数値の内訳
3 均等割額の軽減がもたらす段差
4 窓口負担割合が1割から2割に変わる仕組み

第4 令和8年法律第31号による改正

1 法律の特定と経過
2 新設される138条の2から138条の6まで
3 報告の対象となる書類
4 罰則及び住民基本台帳法の改正

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中途採用における使用者側の留意点――募集・選考・内定・試用期間の実務(AI作成)

第1 中途採用で先に押さえるべき結論

1 採用の成否は入社前の設計で大きく決まること

2 「中途採用なら解雇しやすい」とはいえないこと

第2 募集前に職務と労働条件を固めること

1 不採用となる本質的要件を先に言語化すること

2 募集表示と契約時の条件明示を区別すること

3 固定残業代と年収表示を分解すること

4 紹介会社と求人媒体の運用も使用者が点検すること

第3 選考で取得する情報を必要な範囲に絞ること

1 採用の自由には現行法上の限界があること

2 面接は職務要件に結び付く共通質問で行うこと

3 健康情報と雇入時健康診断を混同しないこと

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労働組合の団体交渉と弁護士法72条――個別労働紛争・拠出金・退職代行の境界(AI作成)

目次第1 この記事が扱う問題1 労働組合による交渉が非弁行為にならない範囲2 記事の対象と確認時点第2 労働組合法6条と弁護士法72条の関係1 労働組合の交渉権限2 弁護士法72条の構成要件3 両条の関係を説明する三つの構成第3 東京高裁令和4年12月15日判決1 争われた団体交渉と拠出金2 東京地裁令和4年5月24日判決3 東京高裁令和4年12月15日判決4 判決の射程第4 個別労働紛争を交渉できる範囲1 解雇・未払賃金等も団体交渉事項となる2 訴訟係属中及び退職後の問題3 労働組合法5条の資格審査との区別4 派遣先・発注者が団交上の使用者となる場合第5 拠出金・組合費と「報酬を得る目的」1 組合費があるだけでは報酬目的にならない2 確認すべき金銭の流れ第6 交渉権限と組合員の権利を処分する権限1 最高裁平成31年4月25日判決2 和解時に明確にすべき事項3 退職代行では処理ごとの権限を確認する第7 使用者が非弁行為を疑う場合の対応1 抽象的な疑いだけによる団交拒否の危険2 最初に確認する資料と事実3 団体交渉の方法自体に問題がある場合第8 退職代行・フリーランス・社会保険労務士1 退職代行と事件周旋2 フリーランスの労働者性3 使用者側の社会保険労務士等第9 裁判例・労働委員会命令の位置付け第10 事実関係別の判断手順第11 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 労働委員会命令・公的資料4 文献
第1 この記事が扱う問題
1 労働組合による交渉が非弁行為にならない範囲

労働組合が,実際の組合員の解雇,雇止め,未払賃金その他の労働関係上の問題について,その使用者と団体交渉を行い,解決金等を含む和解を成立させることは,通常,弁護士法72条に違反しない。労働組合法6条が,労働組合の代表者又は労働組合から委任を受けた者に,組合又は組合員のために使用者と交渉する権限を与えており,東京高裁令和4年12月15日判決(令和4年(ネ)第3376号)も,このような交渉・和解を労働組合に求められた正当な業務と判断したからである。

もっとも,労働組合という名称を用いれば,あらゆる示談代行,事件紹介又は成功報酬の受領が許されるわけではない。交渉対象者が実際の組合員か,労働組合法上の労働者及び使用者の関係があるか,労働条件その他の労使問題を扱っているか,本人の意思と組合規約に基づくか,金銭が正当な組合財政か個別事件の対価か,という事実を確認する必要がある。

2 記事の対象と確認時点

本記事は,令和8年8月20日までに確認できた法令,判決,労働委員会命令及び公的資料に基づき,正当な団体交渉と弁護士法72条が禁止する非弁行為の境界を整理するものである。生成AIを用いて資料を横断検索した上で,重要な条文,判旨,金額及び件数を原資料と照合した。

労働組合一般の組織・運営,団体交渉の全手続又は退職代行サービス全般を網羅するものではない。また,個別事件における未払賃金の消滅時効,解雇の争い方及び労働委員会への申立期間は,基礎となる請求・手続ごとに別途確認を要する。団体交渉を続けていることだけで,これらの期間が当然に停止するとは限らない。

第2 労働組合法6条と弁護士法72条の関係
1 労働組合の交渉権限

日本国憲法28条は,勤労者の団結権,団体交渉権その他の団体行動権を保障する。これを受けた労働組合法6条は,次のように定めている。

労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は,労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。

条文が「労働協約の締結その他の事項」としているため,交渉権限は労働協約の締結だけに限られない。労働組合法7条2号は,使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを,正当な理由なく拒む行為を不当労働行為として禁止している。

2 弁護士法72条の構成要件

弁護士法72条は,弁護士又は弁護士法人でない者が,報酬を得る目的で,一般の法律事件について,鑑定,代理,仲裁,和解その他の法律事務を取り扱い,又はこれらを周旋することを業とすることを,法令に別段の定めがある場合を除いて禁止する。

同条の判断では,①弁護士又は弁護士法人でない者であること,②報酬を得る目的があること,③一般の法律事件に関すること,④法律事務の取扱い又は周旋に当たること,⑤業として行うこと,⑥他の法律上の根拠がないことが区別される。一般的な構成要件と最高裁判例については,AI活用に伴う弁護士法72条見直しの動き及び非弁護士との提携の禁止でも整理している。

3 両条の関係を説明する三つの構成

正当な組合活動が弁護士法72条に違反しない理由については,①労働組合法6条が弁護士法72条ただし書の「他の法律に別段の定めがある場合」に当たる,②労働組合は固有の団体交渉権を行使しており,外部者として他人の事件に介入しているのではない,③弁護士法72条の規制趣旨に照らし,正当な団体交渉は同条の「その他の法律事務」に当たらない,という説明が考えられる。

東京高裁令和4年12月15日判決は,労働組合法6条を参照しながら,主として③の説明を採った。同判決は,労働組合に正当な組合活動を超える包括的な法律事務取扱権を認めたものではなく,具体的な組合活動が弁護士法72条の規制趣旨に反するかを判断したものと理解すべきである。

第3 東京高裁令和4年12月15日判決
1 争われた団体交渉と拠出金

プレカリアートユニオン(拠出金返還等請求)事件では,労働組合に加入した組合員が,二つの勤務先との労働問題について団体交渉を受けた。組合は,一方の勤務先との間で19万円,もう一方との間で300万円を支払う内容の和解を成立させた。

組合には,組合が関与して解決した労働争議について,組合員が受領する解決金の20%を組合活動のために拠出する旨の規則があった。組合員は,19万円の解決金について3万8000円,300万円の解決金について30万円,合計33万8000円を拠出した後,団体交渉と和解は非弁行為であり,拠出金の受領も法律上の原因を欠くなどと主張して返還を求めた。

2 東京地裁令和4年5月24日判決

東京地裁令和4年5月24日判決(令和3年(ワ)第12587号,労働判例1268号13頁)は,組合が労働組合法6条に基づき組合員のために使用者と団体交渉を行ったものであり,弁護士法72条の非弁行為に当たらないとして,拠出金の返還請求を退けた。

同判決が確認したのは,組合員が実際に組合へ加入し,その雇用主との労働問題について団体交渉が行われ,組合規則に基づいて拠出金が支払われた事案である。一般人の民事紛争を有償で引き受ける場合や,弁護士への事件紹介を組合活動と称する場合を判断したものではない。

3 東京高裁令和4年12月15日判決

控訴審である東京高裁令和4年12月15日判決(令和4年(ネ)第3376号)は,控訴を棄却した。同判決は,労働組合が組合員のために雇用主と団体交渉を行って和解を成立させることは,労働組合に求められた正当な業務であり,自らの利益のためにみだりに他人の法律事件に介入しているとはいえず,組合員その他の関係者の利益を損ねてもいないと判断した。

この判示は,最高裁昭和46年7月14日大法廷判決が示した弁護士法72条の規制趣旨に対応する。同最高裁判決は,弁護士資格がなく弁護士の規律にも服しない者が,自己の利益のため,みだりに他人の法律事件へ介入することを業とする行為を防止し,当事者その他の関係者の利益と法律秩序を守ることを同条の目的としている。

4 判決の射程

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高齢者の大腿骨骨折と障害者手帳――3級・4級・5級・7級の認定基準(AI作成)

第1 大腿骨骨折の傷病名や年齢だけでは等級は決まらない

1 最初に認定経路を分ける
2 手帳の等級は障害年金・自賠責と別である

第2 3級・4級・5級・7級の違い

1 3級は一下肢全体の機能全廃である
2 4級には一下肢全体と一関節の二つの経路がある
3 5級・7級は股関節又は膝関節の機能で分かれる
4 下肢短縮は別の基準で判定する

第3 高齢者の認定で分けて考えるべき要素

1 高齢であることは認定除外事由ではない
2 骨折前の歩行能力と併存疾患を記録する
3 骨折部位により確認する関節が異なる

第4 人工骨頭・人工股関節を一律4級とする基準は廃止された

1 平成26年4月から実際の機能で判定する
2 申請時期は術後経過の安定を基準とする

第5 申請と診断書で確認する事項

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USB型フォレンジックツールを労務管理で利用する場合の法的注意点(AI作成)

第1 この記事が扱う対象第2 個人情報保護法制上の位置付け1 雇用管理分野ガイドラインの廃止と通則編への統合2 個人情報保護委員会Q&Aが示すモニタリング実施の留意点3 就業規則への明記の要否第3 場面別の法的注意点1 懲戒・解雇における証拠としての利用2 未払残業代・労災における労働時間の記録としての位置付け3 情報漏えい・営業秘密調査における秘密管理性との関係4 内部通報・ハラスメント調査における調査手法の相当性5 退職時のPC監査第4 証拠としての技術的留意点1 取得手続の記録と証拠の管理2 ツールの接続によるデータの変化3 ハッシュ値と保全用・作業用複製4 調査の目的・範囲・手法の記録第5 現在の法改正・改訂動向1 公益通報者保護法の改正2 不正競争防止法と営業秘密管理指針の改訂出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献5 ウェブ資料第1 この記事が扱う対象

対象PCにUSBメモリを挿すだけで,ファイルの閲覧・削除履歴,Web閲覧履歴,USB接続履歴及びログオン履歴等を解析できる簡易型のデジタルフォレンジック製品が,弁護士や企業の法務・人事部門に向けて販売されている。

たとえば,AOS Fast Forensics(AIデータ社が販売代理店を通じて提供する製品)は,Windows7及びWindows10を対象に,OS情報,Web履歴,ファイル閲覧履歴,USB接続履歴,イベントログ(ログイン・ログオフ時刻)等を取得できるとされ,管理者権限のあるアカウントでのログイン又は管理者パスワードの把握を前提として動作する。

年間利用料を抑え,USB1本を挿すという簡易な操作で解析が完了するため,情報漏えい対応,懲戒・解雇の証拠収集,未払残業代請求への対応,内部通報・ハラスメント調査の初動及び退職時のPC監査等,使用者(企業)の労務管理の様々な場面での活用が想定されている。

本記事は,令和8年8月18日時点で公表されている法令,行政ガイドライン及び裁判例に基づき,使用者がこの種のUSB型フォレンジックツールを労務管理その他の目的で利用する場合に,どのような法的根拠が必要となり,どのような場面でどのような限界があるかを整理するものである。

生成AIを用いて,個人情報保護法制,労働時間管理に関する行政指針,不正競争防止法制,公益通報者保護法制及び関連裁判例の一次資料を確認した上で構成した。個別の製品の性能又は導入の当否を評価するものではなく,製品カテゴリー全般に共通する法的枠組みを対象とする。

第2 個人情報保護法制上の位置付け1 雇用管理分野ガイドラインの廃止と通則編への統合

厚生労働省は,平成16年厚生労働省告示第259号として「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」を定め,平成24年厚生労働省告示第357号により全部改正し,平成27年厚生労働省告示第454号により一部改正した。

同ガイドラインは,雇用管理情報(労働者等の雇用管理のために収集,保管,利用等する個人情報で,病歴,収入,家族関係等の機微に触れる情報を含む。)の利用目的の特定,取得,個人データの管理,第三者提供及び保有個人データの開示等について事業者が遵守すべき事項を定めるものであったが,電子メールの監視,GPSによる位置情報の取得又は防犯カメラによる監視といった,モニタリングに固有の規定は置かれていなかった。

同ガイドラインは,平成29年5月30日をもって廃止された。個人情報保護委員会が同年,分野別ガイドラインの多くを「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」等4編へ一元化したことに伴うものである。

現在,雇用管理分野に固有の行政文書として個別に存続しているのは,個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」のみであり,これは健康情報の取扱いに特化した内容であって,PC・メール・GPS等のモニタリングには触れていない。

2 個人情報保護委員会Q&Aが示すモニタリング実施の留意点

雇用管理分野の専門ガイドラインが廃止された結果,従業者に対するモニタリングの実施に関する実務上の指針は,通則編ガイドラインに付属する個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」のQ5-7が担っている。

同Q&Aは,「従業者に対する監督の一環として,個人データを取り扱う従業者を対象とするビデオやオンライン等による監視(モニタリング)を実施する際の留意点」として,
①モニタリングの目的をあらかじめ特定した上で,社内規程等に定め,従業者に明示すること,
②モニタリングの実施に関する責任者及びその権限を定めること,
③あらかじめモニタリングの実施に関するルールを策定し,その内容を運用者に徹底すること,
④モニタリングがあらかじめ定めたルールに従って適正に行われているか確認を行うこと,の4点を挙げる。

同Q&Aは,これに加えて,モニタリングに関して個人情報の取扱いに係る重要事項等を定めるときは,あらかじめ労働組合等に通知し必要に応じて協議を行うことが望ましく,重要事項等を定めたときは従業者に周知することが望ましいとする。

USB型フォレンジックツールは,ファイル閲覧・削除履歴,Web閲覧履歴,USB接続履歴及びログオン履歴等を広く取得する設計であるため,目的の特定と取得する情報の範囲を対応させ,対象者,対象期間,取得・解析担当者,閲覧権限及び保管・廃棄の方法を具体化する必要がある。Q5-7は,個人データを取り扱う従業者の監督・安全管理のためのモニタリングの留意点を示すものであり,4点を満たせばあらゆる不正調査が適法になるという規定ではない。

3 就業規則への明記の要否

モニタリングの適法性は,個人情報保護法制上の要件だけでなく,労務管理の一環としての通信機器の監視・点検が許容される範囲という観点からも検討する必要がある。

この点について,企業法務の実務書は,使用者が職場のパソコン等の通信機器に関する私的使用の有無及びその程度を監視・点検できるかについて,就業規則に合理的な内容で記載して従業員に明らかにしておけば,職場における通信機器の利用権限が制限されていることが明らかになり,企業が監視・点検することは可能と解している。

これに対し,就業規則に記載がない場合は,業務との関係で監視する必要性があり,その手段・程度が相当である場合に限り合法となるとされる。さらに,就業規則の記載事項に比べて実際の情報取得が広範にされている場合には,従業員の想定範囲を超えるものとして違法となる可能性があるとも指摘されている。

USB型フォレンジックツールのように取得情報の範囲を個別の目的ごとに絞りにくいツールを用いる場合,就業規則等に記載したモニタリングの目的及び取得情報の範囲と,実際にツールが取得する情報の範囲との間に乖離が生じないよう,事前に確認しておく必要がある。

取得範囲がその乖離を超えて私的領域に及ぶときは,プライバシー侵害として不法行為を構成し得る余地があり,その違法性判断の一般的な枠組みについては,別稿「名誉毀損又はプライバシー侵害が違法となる場合」も参照されたい。

第3 場面別の法的注意点

USB型フォレンジックツールの利用が想定される主な場面として,①懲戒・解雇,②未払残業代・労災,③情報漏えい・営業秘密調査,④内部通報・ハラスメント調査,⑤退職時のPC監査が挙げられる。場面ごとに適用される法的根拠及び留意点は異なるため,以下順に整理する。

1 懲戒・解雇における証拠としての利用(1)証拠の取得手続と調査の相当性

懲戒処分又は普通解雇の効力が争われた場合,使用者は,処分の理由となった事実を主張立証する責任を負う。USB型フォレンジックツールで取得したファイル閲覧・削除履歴やWeb閲覧履歴は,この主張立証を支える客観的な証拠となり得るが,取得手続自体の相当性が争点化するおそれがある点に留意する必要がある。

最高裁判所は,所持品検査について,「検査を必要とする合理的理由に基づいて,一般的に妥当な方法と程度で,しかも制度として,職場従業員に対して画一的に実施される」ことを適法性の要件とした(最高裁判所第二小法廷昭和43年8月2日判決・昭和42年(オ)第740号,民集22巻8号1603頁)。

この判断枠組みは金品の不正隠匿摘発を目的とする身体・所持品検査に関するものであり,電子端末の内部データ調査を直接の対象とするものではないが,調査の必要性・方法・程度の相当性を審査するという骨格は,PC調査の相当性を検討する際にも参考になる。

(2)PCログで勤務実態を判断する場合の限界

PCログを,テレワーク中の怠業又は勤務時間の虚偽申告を裏付ける資料として用いる場合は,「記録があること」と「記録から勤務実態又は故意を認定できること」を区別する必要がある。

まず,解析結果の一覧又はスクリーンショットだけでなく,その基礎となった原ログ,対象端末及び利用者,取得範囲,対象期間,タイムゾーン,抽出条件並びに除外された記録を確認する。解析ツールが「操作なし」と表示した場合も,その判定条件と,スリープ,ネットワーク切断,別端末利用等の影響を確認する必要がある。

また,業務用パソコンの操作が確認できない時間があることと,その時間に労務提供がなかったことは同義ではない。電話,オンライン又は対面の会議,外出,紙資料の検討,読書,企画・構想その他パソコンを操作しない業務を捕捉できないことがある。始業・終業記録,電子メール,チャット,予定表,電話記録,入退室記録,成果物,業務報告及び当該期間の評価・業績と照合し,ログと本人の説明の双方を検証する必要がある。

(3)勤務申告との乖離と処分理由の確認

調査の結果,勤務申告との乖離が判明した場合も,直ちに故意の虚偽申告と決めるのではなく,申告方法が明確に定められ周知されていたか,管理職がどのように承認していたか,同様の申告を会社が従前どのように扱っていたか,入力又は制度理解の誤りの可能性があるかを確認する。

その上で,認定できた事実だけを懲戒又は解雇の理由とし,就業規則上の根拠,過去の同種処分及び処分の相当性を別に検討する。

問題社員対応における事実ごとの認定,弁明の機会及び処分決定前の確認事項は,問題社員対応の基本手順―事実確認・注意指導・改善機会・記録化から処分まで(AI作成)で整理している。

2 未払残業代・労災における労働時間の記録としての位置付け(1)客観的記録と自己申告の照合

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は,始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法として,使用者による現認のほか,タイムカード,ICカード,パソコンの使用時間等の客観的な記録を基礎として確認し,適正に記録することを示している。

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大腿骨骨折の障害者手帳と障害年金――「3級」の違いと人工骨頭の認定基準(AI作成)

第1 「3級」は制度ごとに意味が異なる

1 結論
2 4制度の比較

第2 身体障害者手帳の認定基準

1 手帳3級は一下肢全体の機能全廃である
2 股関節一関節の障害は4級・5級・7級で判定する
3 人工骨頭を一律4級とする取扱いは平成26年に改められた

第3 障害年金の認定基準

1 障害基礎年金には3級がない
2 人工骨頭・人工関節は障害厚生年金3級となる
3 人工骨頭以外の機能障害・偽関節も別に評価する

第4 申請前に確認する時期と資料

1 身体障害者手帳は術後経過が安定してから申請する
2 障害年金は初診日から順に確認する

(1) 初診日と保険料納付要件
(2) 診断書・初診日の証明・申立書
(3) 交通事故では第三者行為の書類も必要となる

第5 よくある誤解

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令和8年4月施行の改正女性活躍推進法――情報公表義務,算定方法及びえるぼしプラス(AI作成)

第1 この記事が扱う改正内容1 令和8年4月施行部分の中心2 法改正の背景となる数値第2 公布日,令和8年4月及び同年10月の施行事項1 施行日は一つではないこと2 法の有効期限第3 企業規模別の情報公表義務1 301人以上と101人以上300人以下の違い2 「常時雇用する労働者」の意味3 最初の公表時期4 公表場所と更新第4 男女間賃金差異の算定方法1 三つの区分と算式2 賃金と人員数の範囲3 数値の読み方と説明欄第5 女性管理職比率の算定方法1 算式と公表単位2 「管理職」の範囲第6 一般事業主行動計画への影響1 五つの基礎項目2 進行中の行動計画に関する経過措置第7 女性の健康支援とえるぼしプラス1 基本原則,行動計画及び認定制度の違い2 プラス認定の四つの基準第8 行政上の履行確保と個別の雇用差別1 未公表・虚偽公表への対応2 公表数値と差別の法的判断第9 企業が確認すべき実装事項第10 出典・参考資料1 法令2 厚生労働省・金融庁資料3 国会資料4 裁判例5 統計・文献
第1 この記事が扱う改正内容
1 令和8年4月施行部分の中心

令和8年4月1日施行の改正女性活躍推進法では,常時雇用する労働者が101人以上の一般事業主について,「男女間賃金差異」と「管理職に占める女性労働者の割合」の公表が必須となった。本記事は,令和7年法律第63号による改正のうち,企業の情報公表,一般事業主行動計画及び女性の健康支援に関する認定制度を対象とし,令和8年4月から企業が確認すべき事項を整理するものである。

今回の改正は,男女間賃金差異について一定の許容値又は達成目標を定めるものではない。女性管理職比率についても,企業が必ず達成すべき一律の法定割合は設けられていない。公表された数値は,求職者の企業選択に資するとともに,事業主が採用,配置,育成,昇進及び賃金制度の課題を分析するための情報として位置付けられる。

2 法改正の背景となる数値

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によれば,一般労働者の所定内給与額は男性37万3400円,女性28万5900円であり,単純比は約76.6%である。ただし,これは令和7年6月分の所定内給与額による統計であり,女性活躍推進法に基づいて各企業が算定する平均年間賃金の比率とは対象期間及び賃金範囲が異なる。

また,令和6年度雇用均等基本調査によれば,令和6年10月1日現在の管理職等に占める女性の割合は,部長相当職8.7%,課長相当職12.3%,係長相当職21.1%であった。政府は国会審議において,女性管理職比率,男女間賃金差異及び平均勤続年数の改善は緩やかであり,取組の加速が必要であると説明している。

第2 公布日,令和8年4月及び同年10月の施行事項
1 施行日は一つではないこと

改正法は,第217回国会で令和7年6月4日に成立し,同月11日に令和7年法律第63号として公布された。女性活躍推進法に関する改正事項は,公布日,令和8年4月1日及び同年10月1日の三つの時点に分かれる。

時点主な改正内容

令和7年6月11日女性の健康上の特性への留意を基本原則に追加,法の有効期限を令和18年3月31日まで延長
令和8年4月1日男女間賃金差異・女性管理職比率の公表対象拡大,行動計画の基礎項目追加,えるぼしプラス等の開始
令和8年10月1日プラチナえるぼし認定企業に,求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置の内容の公表を追加

女性の健康上の特性に留意する旨の法2条1項の改正及び法律の有効期限の延長は,令和8年4月ではなく公布日の令和7年6月11日に施行されている。他方,男女間賃金差異及び女性管理職比率の公表義務の拡大は,令和8年4月1日施行である。

2 法の有効期限

女性活躍推進法は,当初,令和8年3月31日までの時限法であった。令和7年改正により,有効期限は令和18年3月31日まで10年間延長された。改正法には施行後5年を経過した場合の検討条項も置かれており,情報公表の対象範囲や是正措置の在り方は,将来の見直し対象となり得る。

第3 企業規模別の情報公表義務
1 301人以上と101人以上300人以下の違い

女性活躍推進法20条及び関係省令による企業規模別の最低公表項目は,次のとおりである。

常時雇用する労働者数必ず公表する項目追加して選択する項目最低公表数

301人以上男女間賃金差異,女性管理職比率「職業生活に関する機会の提供」から1項目以上,かつ「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」から1項目以上4項目
101人以上300人以下男女間賃金差異,女性管理職比率前記二つの区分の全項目から1項目以上3項目

(続きを読む...)令和8年4月施行の改正女性活躍推進法――情報公表義務,算定方法及びえるぼしプラス(AI作成)

令和8年7月の障害者法定雇用率2.7%への引上げ―37.5人基準,算定方法及び企業の対応(AI作成)

第1 令和8年7月に変わった制度1 令和8年7月は法律本体の新たな施行ではないこと2 法定雇用率と対象事業主の変更3 除外率は令和7年4月に引き下げられていること第2 常用労働者と障害者の算定方法1 分母となる労働者数2 分子となる障害者数3 法定雇用障害者数の計算例第3 雇用状況報告と障害者雇用納付金1 令和8年6月1日報告は2.5%で判定すること2 令和8年度の納付金は月を分けて計算すること3 未達成に対する行政上の履行確保第4 雇用率算定と差別禁止・合理的配慮の違い1 雇用率算定の対象者は比較的狭いこと2 合理的配慮は全ての事業主に課されること3 職務の剝奪・変更が争われた裁判例第5 令和8年7月以後に企業が確認すべき事項第6 雇用状況の到達点と今後の制度論1 令和7年6月1日現在の雇用状況2 数量達成と雇用の質出典・参考資料1 法令・指針2 裁判例3 公的資料・統計
第1 令和8年7月に変わった制度
1 令和8年7月は法律本体の新たな施行ではないこと

令和8年7月1日,民間企業の障害者法定雇用率は2.5%から2.7%へ引き上げられ,障害者を1人以上雇用すべき事業主の範囲は,算定基礎となる労働者40.0人以上から37.5人以上へ拡大した。本記事は,この変更の法形式,対象人数の算定,令和8年度の報告・納付金及び雇用率義務とは別に存在する合理的配慮義務を説明するものである。

一般に「令和8年7月施行の改正障害者雇用促進法」と説明されることがあるが,厳密には,令和8年7月に法律本体の主要規定が新たに施行されたものではない。障害者雇用促進法43条2項を受けた同法施行令9条の本則は2.7%であり,令和5年政令第44号附則が令和8年6月30日まで2.5%に読み替えていたところ,その経過措置が終了したものである。

2 法定雇用率と対象事業主の変更

令和8年7月1日の変更は次のとおりである。民間企業の37.5人基準は単純な在籍頭数ではなく,週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者を0.5人とするなど,法令所定の方法で算定した労働者数によって判定する。

区分
令和8年6月30日まで
令和8年7月1日以後

民間企業
2.5%
2.7%

国及び地方公共団体等
2.8%
3.0%

都道府県等の教育委員会
2.7%
2.9%

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令和8年10月1日施行のカスハラ対策義務化―全事業主が整える10項目(AI作成)

第1 令和8年10月1日に何が変わるか

1 全事業主に雇用管理上の措置義務が生じる
2 令和8年10月1日以前も使用者の責任は存在する
3 統計からみる施行対応の必要性

第2 法律上のカスハラを判定する3要件

1 3要件の全てを満たす必要がある
2 要求内容と要求手段を分けて評価する
3 就業環境が害されたかは平均的な労働者を基準にする

第3 事業主が整えるべき10項目

1 方針,判断基準及び研修
2 相談,事実確認及び被害者保護
3 再発防止,悪質事案及び相談者保護

第4 現場対応の6段階と正当な苦情との線引き

1 初動から外部対応までの6段階
2 顧客の権利及び個別業法との調整
3 反復電話の終話・記録と法律事務所の対応

第5 取引先,公務部門及びフリーランス

1 自社が加害側にならないための責務
2 公務部門には別の履行確保もある

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令和8年4月施行の在職老齢年金改正―65万円基準の計算方法と注意点(AI作成)

第1 改正の結論1 令和8年度は51万円から65万円へ引上げ2 法律の62万円と実際の65万円は矛盾しない第2 誰のどの年金が調整されるか1 60歳以上の厚生年金加入者と70歳以上被用者2 支給停止の対象に含まれない部分第3 令和8年度の計算方法1 基本月額と総報酬月額相当額2 計算式と具体例3 65万円は収入が急減する「壁」ではない第4 給与,賞与,転職及び退職の注意点1 賞与は支給月だけでなく直近1年間に影響する2 変更月,退職改定及び在職定時改定第5 繰下げ受給,高年齢雇用継続給付及び税制1 繰下げ受給では支給停止相当額が増額の基礎から外れる2 65歳未満の雇用保険調整と令和9年分からの所得税第6 改正の政策目的,効果及び裁判例の射程1 就業調整の緩和と年金財政の負担2 政策判断をめぐる対立軸3 関連する最高裁判例第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 行政資料及び立法資料3 裁判例
第1 改正の結論

1 令和8年度は51万円から65万円へ引上げ

令和8年(2026年)4月1日から,在職老齢年金の支給停止調整額は,令和7年度の月額51万円から令和8年度の月額65万円へ引き上げられた。基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下であれば,老齢厚生年金の報酬比例部分は在職老齢年金によって支給停止されない。

今回の改正は,在職老齢年金を廃止したものではない。合計額が65万円を超える場合に,超過額の2分の1を老齢厚生年金から支給停止する計算構造は維持されている。改正後の実際の基準額と計算式は,日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」で確認できる。

2 法律の62万円と実際の65万円は矛盾しない

令和7年法律第74号2条は,厚生年金保険法46条3項の法定基礎額を48万円から62万円へ改めた。もっとも,この62万円は令和6年度価格による制度設計額であり,毎年度の賃金変動等を反映して改定される。

令和8年度については,国民年金法による改定率の改定等に関する政令5条が,厚生年金保険法46条3項本文の「六十二万円」を「六十五万円」と読み替える。したがって,令和8年4月以後の個別計算に用いる額は65万円であり,62万円ではない。厚生労働省の制度説明も,法律成立時の62万円と令和8年4月からの65万円を明確に区別している。

65万円は令和8年度の支給停止調整額であり,今後の年度にも固定されると考えてはならない。
年度をまたぐ就労・年金相談では,対象月の支給停止調整額を公的資料で改めて確認する必要がある。
令和8年度の金額は,厚生労働省年金局「令和8年度の年金額改定について」(令和8年1月23日)でも確認できる。

第2 誰のどの年金が調整されるか

1 60歳以上の厚生年金加入者と70歳以上被用者

原則として,60歳以後に老齢厚生年金を受けながら,厚生年金保険の被保険者として働く者が対象となる。65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受ける者にも,同じ支給停止調整額が適用される。

70歳以後は厚生年金保険の被保険者ではなく,厚生年金保険料の負担もない。しかし,厚生年金保険の適用事業所で引き続き使用され,法令所定の要件に該当する場合は,標準報酬月額及び標準賞与額に相当する額を用いて在職支給停止が行われる。厚生年金保険法46条と日本年金機構の計算説明は,70歳の前後をこのように区別している。

2 支給停止の対象に含まれない部分

計算対象となる「基本月額」は,加給年金額を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分の月額である。老齢基礎年金,経過的加算額及び繰下げ加算額は基本月額に含まれず,在職老齢年金による支給停止の対象にならない。

ただし,加給年金額は基本月額に含めないものの,計算上の支給停止額が老齢厚生年金の報酬比例部分以上となる場合には,加給年金額を含む老齢厚生年金が全額支給停止となる。したがって,「老齢基礎年金は止まらない」と「加給年金額も常に支給される」を混同してはならない。

第3 令和8年度の計算方法

1 基本月額と総報酬月額相当額

計算では,まず基本月額と総報酬月額相当額を確定する。手取り額又は基本給だけを用いる計算ではない。

①基本月額=加給年金額を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分の年額÷12

②総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12

厚生年金基金の加入期間がある場合は,基金の代行部分を国が支払うべき年金額とみなして基本月額を算出する。共済組合等からも老齢厚生年金を受ける場合は,各実施機関の老齢厚生年金を合算して基本月額と支給停止総額を計算し,各年金額に応じて停止額を割り振る。

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令和時代の社会保険の適用拡大―短時間労働者の加入要件と改正時期(AI作成)

目次

第1 この記事が扱う制度と時点

1 「社会保険」の範囲

2 制度の状態を分けて読む必要性

第2 現行制度による加入判定

1 適用事業所であること

2 最初に確認する4分の3基準

3 短時間労働者の三つの要件

4 企業規模の数え方

5 契約と勤務実績が異なる場合

第3 令和時代の適用拡大

1 令和2年改正による二段階の拡大

2 令和7年改正法の施行予定表

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業務内容が変わらない定年後再雇用社員の賃金水準の目安(AI作成)

第1 この記事が扱う対象と結論

1 対象と基準時
2 何%なら適法という基準はない
3 本記事における実務上の目安
4 市場相場と法的評価は別である

第2 現行法の判断枠組み

1 高年齢者雇用安定法は賃金率を定めていない
2 短時間・有期雇用労働法8条の均衡待遇
3 同法9条の均等待遇
4 説明義務と令和8年改正ガイドライン

第3 「業務内容が同じ」を分解する方法

1 作業だけでなく責任と権限を比べる
2 変更範囲は規程と実績の双方を見る
3 基本給を一つの性質に決めつけない

第4 主要裁判例が示すもの

1 長澤運輸事件――76%から80%は一般基準ではない
2 名古屋自動車学校事件――60%基準の否定
3 低い割合を認めた裁判例の読み方

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従業員を使用しない弁護士が企業の訴訟代理をする場合のフリーランス法(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 対象と基準時
2 結論
3 適用判断の境界

第2 対象となる弁護士

1 「従業員を使用」の基準
2 共同事務所と弁護士法人
3 判断時点と確認記録

第3 企業に課される義務

1 義務の全体像
2 取引条件の明示
3 支払期日
4 長期委託の追加義務

第4 中部電力に対する勧告

1 訴訟代理人契約を含む直接の行政執行
2 勧告から分かる明示の不備
3 勧告の射程

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退職時の定期代精算と最終給与からの控除(AI作成)

目次第1 結論と問題の分け方1 定期代は当然には控除できない2 実務上最も安全な方法第2 返還義務の有無1 通勤手当も賃金になり得る2 支給方法によって結論が異なる3 退職日と最終出勤日は区別する4 規程がない場合と不当利得第3 返還額の計算1 実際の払戻額を基準とする方法2 日割り又は月割りによる方法第4 最終給与から控除するための要件1 一方的な相殺は原則として許されない2 賃金控除協定3 本人の自由意思による合意相殺4 過払賃金の調整的相殺5 控除額と退職時の7日払6 退職代行窓口を介した相殺同意第5 関係裁判例とその射程1 通勤手当と返還に近い裁判例2 控除・相殺に関する最高裁判例3 直接裁判例の確認範囲第6 会社が行う処理の順序1 事実と規程の確認2 控除方法の確認3 規程に定める事項第7 退職者が確認する事項1 返還義務の根拠2 控除の根拠第8 税務・社会保険・労働保険1 所得税2 健康保険・厚生年金3 労働保険第9 出典・参考資料1 法令・行政資料2 裁判例3 文献
第1 結論と問題の分け方
1 定期代は当然には控除できない

退職時に,既に支給した通勤定期券代の未使用期間分を最終給与から当然に控除できるという一般的なルールはない。

会社は,まず,通勤手当規程,就業規則又は個別合意に基づき,退職者に対する返還請求権が成立するかを確認する必要がある。その上で,返還請求権を最終給与から差し引くことが労働基準法24条1項の賃金全額払の原則に反しないかを,別に検討する必要がある。

したがって,判断は,①退職者に返還義務があるか,②返還義務があるとして最終給与から控除できるか,という二段階になる。返還義務があることと,給与からの控除が許されることは同じではない。

2 実務上最も安全な方法

会社が定期券の払戻しを直接受ける方法,又は最終給与を全額支払った上で退職者から別に返還を受ける方法は,賃金控除をめぐる争いを避けやすい。

最終給与から控除する場合には,返還債務の根拠と金額を明確にした上で,賃金控除協定又は本人の自由な意思に基づく個別同意など,労働基準法24条との関係を処理する根拠が必要となる。

なお,本記事は一般的な法制度と実務上の確認事項を説明するものであり,個別事案についての法律相談ではない。結論は,実際に適用される規程の文言,周知状況,支給方法,退職日,最終出勤日及び定期券の払戻条件によって変わる。

第2 返還義務の有無
1 通勤手当も賃金になり得る

労働基準法11条は,名称を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うものを賃金とする。就業規則や賃金規程に基づいて定期的に支給される通勤手当は,一般に賃金に当たり得る。

6か月分をまとめて支給したからといって,直ちに会社の預り金になるわけではない。複数月分の一括支給は,各月の賃金の前払として構成される場合があるため,退職後の未使用分が返還対象となるかは,支給条件と返還条項から判断する必要がある。

2 支給方法によって結論が異なる
(1) 実費補填型

現実に通勤した費用,又は最も経済的かつ合理的な経路の定期券代を支給し,通勤しない期間には支給しないことが規程上明確である場合,退職後又は通勤終了後の期間について受給権が発生しないと解釈しやすい。

ただし,この場合も,どの日から不支給とするか,支給済額をどの算式で返還するかが規程に定められているかを確認しなければならない。

(2) 定額・固定給型

出勤日数や現実の交通費と切り離して毎月一定額を支給し,不支給又は返還の条件を定めていない場合,退職だけを理由として支給済額の一部が当然に不当利得になるとは限らない。

長年の運用上も欠勤や休職の際に減額していなかった場合には,固定的な賃金としての性格が強くなる。規程が不明確なまま,会社が後から実費精算型として扱うことには慎重な検討が必要である。

(3) 会社購入・現物交付型

会社が定期券を購入して従業員に交付し,長期欠勤,休職又は退職の際に回収して解約する制度であれば,定期券の所有関係と回収手続を規程に明記する必要がある。

もっとも,定期券を現物で支給すること自体についても,労働基準法24条の通貨払原則との関係で,労働協約その他の根拠を確認する必要がある。

(4) 複数月分の一括現金支給型

6か月定期券相当額などを現金で一括支給する制度では,対象となる各月の支給条件,退職時の支給停止日,返還義務,払戻手数料及び端数処理を定める必要がある。

単に「未経過分を返還する」と定めるだけでは,退職日基準か最終出勤日基準か,日割りか月割りか,交通事業者の実際の払戻額かが明らかにならない。

3 退職日と最終出勤日は区別する

有給休暇の取得により,最終出勤日から退職日まで数週間あることがある。規程が退職日の翌日から不支給と定める場合に,運用だけで最終出勤日の翌日から不支給に変更すると,返還請求の根拠を欠くおそれがある。

他方,現実の通勤を支給要件とする実費補填型の規程が最終出勤日の翌日を基準日として明示している場合には,その基準による精算が制度目的に合うことがある。

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定年再雇用社員・嘱託社員に昇給・家族手当・住宅手当を正社員と同様に行う必要性(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討する待遇と労働者の区分
2 同一労働同一賃金の規制の全体像と本記事の位置付け

第2 高年齢者雇用確保措置と待遇の適正化は別の規制体系である
第3 家族手当・住宅手当の不支給が許容された事例――長澤運輸事件

1 事案と最高裁判決の結論
2 住宅手当・家族手当に関する判示

第4 家族手当に類する手当の支給が必要とされた事例――日本郵便(大阪)事件

1 事案と最高裁判決の結論
2 扶養手当に関する判示

第5 家族手当・住宅手当の支給が必要となる場合の判断基準
第6 昇給を正社員と同様に行う必要性――名古屋自動車学校事件

1 最高裁判所令和5年7月20日判決が示した分析の視点
2 差戻控訴審・名古屋高等裁判所令和8年2月26日判決の認定
3 昇給の必要性を検討する際の着眼点

第7 令和8年10月1日施行の改正ガイドラインへの反映

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特定技能1号に退職手当を支給しないことの法的リスク――同一労働同一賃金ガイドラインの改正と報酬同等性要件(AI作成)

第1 この記事の対象
第2 同一労働同一賃金ガイドラインにおける退職手当規定の新設

1 現行のガイドラインは退職手当の判断基準を示していない
2 令和8年10月1日施行の改正で退職手当の項目が新設される
3 パートタイマーへの退職手当支給は,この規律が想定する対応の一例である

第3 特定技能1号の報酬に関する入管法上の規律

1 特定技能雇用契約における報酬同等性の要件
2 「報酬」の範囲と退職手当の位置付け
3 比較対象となる「日本人労働者」の範囲

第4 パートタイマーには支給し特定技能1号には支給しない場合の検討

1 特定技能1号自身とパート有期法との関係
2 「その他の事情」の明確化が与える影響
3 入管法上の報酬同等性要件との関係
4 労働基準法3条との関係

第5 実務上の対応

1 待遇検討票に特定技能外国人を含める
2 報酬に関する説明書の作成における留意点

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パートタイマーが正社員に転換する際の退職手当の取扱い――勤続年数の通算義務と同一労働同一賃金ガイドラインの改正(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点
2 「正社員転換」と「無期転換」の違い

第2 通常の労働者への転換を定める規定

1 パート・有期法13条
2 転換推進措置の性質

第3 退職手当と不合理な待遇差の禁止

1 パート・有期法8条
2 メトロコマース事件最高裁判決

第4 転換時の勤続年数の通算

1 法律上の一律の義務はない
2 就業規則における設計例
3 インターネット上の誤った説明

第5 税務上の勤続年数の計算との違い

1 退職所得控除額の計算原則

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労災保険の給付内容―給付の種類,金額及び令和8年改正(AI作成)

第1 この記事の対象と労災保険給付の全体像

1 この記事が扱う範囲
2 給付の4系列と3つの名称体系

第2 給付額の土台となる給付基礎日額

1 原則と複数事業労働者の合算
2 最低保障額と令和8年8月1日からの改定
3 スライド制と年齢階層別の最低・最高限度額

第3 個別の給付の内容と額

1 療養(補償)等給付
2 休業(補償)等給付
3 傷病(補償)等年金
4 障害(補償)等給付
5 遺族(補償)等給付
6 葬祭料等,介護(補償)等給付及び二次健康診断等給付
7 前払一時金及び差額一時金

第4 特別支給金及び社会復帰促進等事業の給付

1 特別支給金は保険給付ではない
2 社会復帰促進等事業による援護費等

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地震後に私物を取りに職場へ戻った際のガス爆発は労災か(AI作成)

第1 結論と記事の対象
第2 業務災害の判断枠組み

1 業務遂行性と業務起因性
2 避難と再入場は分けて考える
3 再入場禁止マニュアル違反

第3 私物の携帯電話を取りに戻った目的の評価

1 純粋な私物回収は否定方向である
2 私物であっても業務上必要な場合がある
3 店舗の鍵返却等との混合目的

第4 地震とガス爆発の位置付け

1 地震であることは一律の除外理由ではない
2 施設内にいたことだけでは足りない場合

第5 関連裁判例・裁決例とその射程

1 主要な裁判例
2 厚生労働省公開裁決例の全件確認

第6 個別事案で優先して確認する証拠

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