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大腿骨骨折の障害者手帳と障害年金――「3級」の違いと人工骨頭の認定基準(AI作成)

第1 「3級」は制度ごとに意味が異なる

1 結論

大腿骨骨折について検索すると,身体障害者手帳3級と障害年金3級が同じ状態を指すように見えることがある。しかし,両者は目的,等級表及び認定機関が異なる別制度であり,一方の3級が他方の3級を意味するものではない。

身体障害者手帳の下肢障害3級は,原則として「一下肢の機能を全廃したもの」であり,大腿骨骨折又は人工骨頭置換という傷病名・手術名だけでは該当しない。これに対し,日本年金機構の障害認定基準は,一下肢の三大関節中一関節以上に人工骨頭又は人工関節を挿入置換した状態を障害厚生年金3級とする。ただし,障害厚生年金を受けるには,この障害状態に加え,厚生年金加入中の初診日及び保険料納付要件等を満たす必要がある。

2 4制度の比較

制度主な目的大腿骨骨折に関する「3級」人工骨頭の扱い
身体障害者手帳福祉サービスの利用等一下肢の運動性と支持性をほとんど失った状態術後経過が安定した時点の実際の機能で判定する
障害基礎年金所得保障3級はなく,1級・2級のみ人工骨頭だけを理由とする3級はない
障害厚生年金所得保障1級・2級に加えて3級がある一下肢の三大関節中一関節以上への挿入置換は3級とする
自賠責後遺障害交通事故損害の填補身体障害者手帳又は障害年金とは別の等級表で判定する人工骨頭の有無と股関節可動域等により別に判定する

身体障害者手帳は都道府県,指定都市又は中核市が交付し,手帳に基づく福祉サービスの内容は自治体等によって異なる。障害年金は国民年金法又は厚生年金保険法に基づく給付であり,自賠責後遺障害は交通事故の損害填補のための認定である。したがって,まず何の制度を利用しようとしているのかを区別する必要がある。

第2 身体障害者手帳の認定基準

1 手帳3級は一下肢全体の機能全廃である

身体障害者障害程度等級表は,下肢不自由の3級として「一下肢の機能を全廃したもの」を掲げる。厚生労働省の身体障害認定基準は,これを下肢の運動性と支持性をほとんど失った状態とし,具体例として,下肢全体の筋力低下のため患肢で立位を保持できないもの,大腿骨又は脛骨の骨幹部偽関節のため患肢で立位を保持できないものを示している。

したがって,大腿骨頸部骨折,転子部骨折又は骨幹部骨折という診断名だけで3級になるわけではない。人工骨頭置換を受けたこと,杖を使用していること又は股関節の動きが低下したことだけでも足りず,下肢全体の運動性と支持性を公的基準に沿って評価する必要がある。

高齢であること自体は身体障害者手帳の認定除外事由ではない。身体障害認定基準は,加齢現象に伴う身体障害についても,日常生活能力の回復可能性又は身体障害の程度に着目して認定できるとしており,年齢ではなく術後に残った機能障害を評価する。

2 股関節一関節の障害は4級・5級・7級で判定する

股関節一関節については,機能全廃が4級,著しい障害が5級,軽度の障害が7級である。身体障害認定基準は,股関節の機能全廃について各方向の連続した可動域が10度以下又は徒手筋力テストが2以下,著しい障害について可動域が30度以下又は徒手筋力テストが3に相当する状態を例示している。

もっとも,例示された数値だけで機械的に決めるものではなく,機能障害全般を総合して判定する。7級相当の障害が一つだけである場合は身体障害者手帳の交付対象にならないが,肢体不自由について7級相当の障害が二つ以上ある場合等は総合等級を検討することになる。

3 人工骨頭を一律4級とする取扱いは平成26年に改められた

平成26年3月までの取扱いでは,股関節又は膝関節に人工関節等を置換した場合は一律4級とされていた。しかし,医療技術の進歩によって日常生活能力が改善している例が多いことを踏まえ,平成26年4月1日以降の新規申請では,人工関節等の置換術後の状態を評価し,股関節・膝関節について4級,5級,7級又は非該当のいずれかを認定する仕組みに改められた。

現行の身体障害認定基準は,人工骨頭又は人工関節について,置換術後の経過が安定した時点の機能障害の程度により判定すると明記する。このため,古い判決,診断書又はウェブ記事に「人工骨頭なら身体障害者手帳4級」と書かれていても,それを現行の一般基準として用いることはできない。

第3 障害年金の認定基準

1 障害基礎年金には3級がない

障害の原因となった病気又はけがの初診日に国民年金に加入していた場合は,原則として障害基礎年金を検討する。障害基礎年金の等級は1級及び2級であり,3級はないため,人工骨頭を挿入置換したという障害厚生年金3級の基準をそのまま適用することはできない。

初診日に厚生年金保険の被保険者であった場合は,障害厚生年金を検討する。障害厚生年金には1級,2級及び3級があり,3級より軽い一定の障害には障害手当金の制度がある。骨折後に退職していても,制度の分岐では手術日や請求日ではなく,原因傷病の初診日にどの年金制度に加入していたかが重要となる。

2 人工骨頭・人工関節は障害厚生年金3級となる

日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」は,一下肢の三大関節中一関節以上に人工骨頭又は人工関節を挿入置換したもの,又は両下肢の三大関節中一関節以上にそれぞれ挿入置換したものを3級と認定する。ただし,置換後も一下肢の用を全く廃した程度以上である場合,又は両下肢に一層重い機能障害がある場合は,上位等級を認定する。

人工骨頭又は人工関節の挿入置換日が初診日から1年6か月以内である場合,障害の程度を認定する時期は挿入置換日となる。1年6か月を超えてから置換した場合はこの特例によらないため,通常の障害認定日又は事後重症による請求の時期を個別に確認する必要がある。

「人工骨頭なら3級」という説明は,以上の障害厚生年金の障害状態に関する基準を短く表したものである。初診日に厚生年金保険の被保険者であること,保険料納付要件を満たすことその他の受給要件まで省略してよいという意味ではない。

3 人工骨頭以外の機能障害・偽関節も別に評価する

人工骨頭を入れていない場合でも,障害厚生年金3級の可能性が当然に消えるわけではない。現行基準には,一下肢の三大関節中二関節の用を廃したもの,長管状骨に偽関節を残して運動機能に著しい障害を残すもの等が3級の例として定められている。

一方,大腿骨又は脛骨に偽関節が残っていても運動機能に著しい障害がない場合は,障害手当金相当として扱われる。下肢の状態を評価する際は,関節可動域及び筋力だけでなく,片足立ち,屋内外歩行,立ち上がり並びに階段昇降も確認対象となるため,骨折名や手術名だけで結論を出すことはできない。

第4 申請前に確認する時期と資料

1 身体障害者手帳は術後経過が安定してから申請する

身体障害者手帳は,身体障害者福祉法15条の指定医師が作成した診断書・意見書を添えて申請し,都道府県知事等が障害程度を審査して交付する。人工骨頭又は人工関節については術後経過が安定した時点の機能で判定するため,手術直後の一時的な可動域低下又は筋力低下をそのまま固定的障害として申請するものではない。

申請を検討する場合は,まず居住地の福祉担当窓口に指定医師,必要書類及び申請時期を確認する。その上で,股関節の各方向の可動域,徒手筋力テスト,患肢での立位保持,歩行距離,起立保持時間及び階段昇降の状況を診療記録と診断書・意見書で対応させることが重要である。

2 障害年金は初診日から順に確認する

(1) 初診日と保険料納付要件

最初に確認するのは,大腿骨骨折又はその原因傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた初診日である。初診日に厚生年金保険へ加入していたかを確認した後,初診日の前日において,公的年金加入期間の3分の2以上が納付済み又は免除済みであるか,初診日に65歳未満で初診日のある月の前々月までの1年間に未納がないかを確認する。

(2) 診断書・初診日の証明・申立書

障害年金の請求では,年金請求書,所定様式の医師の診断書及び病歴・就労状況等申立書が基本資料となる。初診時の医療機関と診断書作成医療機関が異なる場合は,初診日を確認するための受診状況等証明書も必要となる。

人工骨頭又は人工関節に関する請求では,診断書上の挿入置換部位及び手術日が,手術記録,退院時要約等の医療記録と整合しているかを申請前に確認する。より上位の等級も問題となる場合は,人工物の存在だけでなく,可動域,筋力及び日常生活動作の制限が診断書に具体的に反映されている必要がある。

(3) 交通事故では第三者行為の書類も必要となる

交通事故等の第三者行為が障害の原因である場合,日本年金機構は,第三者行為事故状況届,交通事故証明又は事故を確認できる資料,確認書等の提出を求めている。損害賠償額が既に決定しているときは,示談書等の受領額が分かる資料も必要となるため,障害年金の請求資料と交通事故賠償の資料を別々に保管しない方が確認しやすい。

第5 よくある誤解

1 人工骨頭を入れれば二つの制度で3級になるわけではない

人工骨頭の挿入置換を3級とするのは障害厚生年金の基準であり,現行の身体障害者手帳の基準ではない。身体障害者手帳3級には下肢全体の運動性・支持性をほとんど失った程度が必要であり,股関節一関節については4級,5級又は7級の機能基準を検討する。

2 古い手帳4級の情報を現行基準として使わない

平成26年改正前の資料には,人工股関節又は人工骨頭の置換を理由に身体障害者手帳4級とした記載がある。しかし,平成26年4月1日以降の新規申請では,置換後の安定した機能に応じて4級,5級,7級又は非該当を判定するため,資料の作成年月日と適用時点を確認しなければならない。

3 手帳の等級は年金審査を拘束しない

身体障害者手帳の有無又は等級は,障害年金の審査を法的に拘束しない。日本年金機構の請求案内では身体障害者手帳を障害状態の補足資料として提出する場合があるものの,障害年金は初診日,保険料納付要件及び独自の障害認定基準によって判断される。

第6 自賠責後遺障害との役割分担

1 交通事故の賠償は自賠責の等級で別に検討する

交通事故による大腿骨頸部骨折について,人工骨頭,股関節可動域,下肢短縮等を自賠責後遺障害として評価する方法は,交通事故による大腿骨頸部骨折の後遺障害等級――人工骨頭,股関節可動域及び下肢短縮で整理している。身体障害者手帳又は障害年金の等級を,自賠責の等級として読み替えることはできない。

2 可動域の測定方法は関連記事で確認する

股関節可動域の測定値,健側との比較,代償動作及び測定資料の整合は,股関節の可動域制限と後遺障害12級7号――認定基準,測定方法,代償動作及び裁判例で詳しく扱っている。身体障害者手帳と障害年金では用いる数値基準が同一ではないため,測定結果は各制度の認定基準に当てはめる必要がある。

本記事は一般的な制度情報を示すものであり,個別の申請では,初診日の年金加入記録,保険料納付記録,最新の診断書及び居住地の自治体の案内を確認する必要がある。

出典・参考資料

1 法令

身体障害者福祉法15条
国民年金法30条
厚生年金保険法47条
国民年金法施行令4条の6・別表
厚生年金保険法施行令3条の8・別表第1

2 公的基準・手続資料

①厚生労働省「身体障害者手帳
②厚生労働省「身体障害者障害程度等級表」1頁(PDF1頁)
③厚生労働省「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」平成15年1月10日障発第0110001号
④厚生労働省「『身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について』の一部改正について」平成26年1月21日障発0121第1号,厚生労働省「人工関節等置換者の障害認定基準の見直し」34頁(PDF9頁)
⑤日本年金機構「障害年金
⑥日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第3第1章第7節第2「下肢の障害」27頁~31頁(PDF1頁~5頁)
⑦日本年金機構「障害認定日
⑧日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」及び「障害厚生年金を受けられるとき

3 関連記事

①山中弁護士ブログ「交通事故による大腿骨頸部骨折の後遺障害等級――人工骨頭,股関節可動域及び下肢短縮(AI作成)
②山中弁護士ブログ「股関節の可動域制限と後遺障害12級7号――認定基準,測定方法,代償動作及び裁判例(AI作成)