目次
第1 任意保険一般が適用されない場合
第2 一定の任意保険が適用されない場合
第3 対人賠償責任保険が適用されない場合
1 総論
2 記名被保険者が被害者となる場合
3 自分の配偶者等が被害者となる場合
4 同僚災害の場合
第4 関連記事その他
第1 任意保険一般が適用されない場合
1 保険約款所定の免責事由によって損害が発生した場合,任意保険金は支払われません(保険法17条1項後段参照)。
2 以下のいずれかに該当する事由によって生じた損害については通常,保険約款所定の免責事由となっています。
① 戦争,外国の武力行使,革命,政権奪取,内乱,武装反乱その他これらに類似の事変又は暴動
② 地震若しくは噴火又はこれらによる津波
③ 核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物の放射性,爆発性その他有害な特性の作用又はこれらの特性に起因する事故
④ ③に規定した以外の放射線照射又は放射能汚染
⑤ ①から④までの事由に随伴して生じた事故又はこれらに伴う秩序の混乱に基づいて生じた事故(=随伴事故)
⑥ 被保険自動車を競技若しくは曲技のために使用すること,又は被保険自動車を競技若しくは曲技を行うことを目的とする場所において使用すること。
第2 一定の任意保険が適用されない場合
1 被保険者が免許取消期間中に運転をしたり,免許停止期間中に運転をしたり,酒気帯び運転をしたりしている時に交通事故が発生した場合,被害者保護のため,対人賠償責任保険及び対物賠償責任保険は適用されます。
しかし,人身傷害補償保険,搭乗者傷害保険,車両保険,弁護士費用特約といった自分のための保険は一切適用されません。
2 大阪府民共済の死亡共済金についていえば,酒気帯び運転中に交通事故にあった場合,事故による死亡共済金ではなく,病気による死亡共済金が出るにすぎません(大阪府民共済HPの「死亡共済金のお支払いについて」参照)。
3 台風,洪水又は高潮の場合の任意保険の適用は以下のとおりです。
① 対人賠償責任保険,対物賠償責任保険及び無保険車傷害保険
→ 随伴事故も含めて任意保険の適用がありません。
② 車両保険
→ 任意保険の適用があります。
③ 人身傷害補償保険,搭乗者傷害保険及び自損事故保険
→ 運行に起因しているといった条件が満たされている限り,任意保険の適用があります。
第3 対人賠償責任保険が適用されない場合
1 総論
・ 対人賠償保険は自賠責保険の場合ほど被害者保護が徹底されていません(保険法17条2項参照)。
そのため,対人賠償保険の保険契約者又は被保険者が傷害の故意に基づく行為により被害者を死亡させた場合,対人賠償保険が適用される(最高裁平成5年3月30日)ものの,殺人の故意に基づく行為により被害者を死亡させた場合,対人賠償保険は適用されません。
2 記名被保険者が被害者となる場合
(1) 対人賠償責任保険は,記名被保険者が加害者になった場合に保険金を支払うことを目的としていますから,記名被保険者が被害者になった場合は保険金が支払われません。
そのため,例えば,友人とドライブ中に運転を変わってもらった直後に,友人がセンターラインをオーバーして対向車と正面衝突した場合,自分の対人賠償責任保険も,対向車の自賠責保険も適用されません。
(2) この場合,自分の人身傷害補償保険等が適用されるぐらいです。
3 自分の配偶者等が被害者となる場合
(1) 対人賠償責任保険の場合,被保険自動車を運転中の者又はその父母,配偶者若しくは子が被害者となった場合は保険金が支払われません。
そのため,例えば,自分の妻が家族を乗せて被保険自動車を運転していたときに交通事故が発生した結果,自分及び家族が怪我をした場合,自分の対人賠償責任保険は,自分及び家族との関係で対人賠償責任保険は適用されません。
(2) 対人賠償責任保険の場合,被保険者の父母,配偶者又は子が被害者となった場合は保険金が支払われません。
そのため,例えば,自分の車で自分の子をはねてしまった場合,対人賠償責任保険は適用されません。
(3) 配偶者が被害者となった場合を免責事由としている趣旨は,被保険者である夫婦の一方の過失に基づく交通事故により他の配偶者が損害を被った場合にも原則として被保険者の損害賠償責任は発生するが,一般に家庭生活を営んでいる夫婦間においては損害賠償請求権が行使されないのが通例であると考えられることなどに照らし,被保険者がその配偶者に対して右の損害賠償責任を負担したことに基づく保険金の支払については,保険会社が一律にその支払義務を免れるものとする取扱いをすることにあります。
そして,この点について法律上の配偶者と内縁の配偶者を区別する理由はありませんから,「配偶者」には内縁の配偶者が含まれます(最高裁平成7年11月10日判決)。
4 同僚災害の場合
(1) 対人賠償責任保険の場合,被保険者の業務に従事中の使用人が被害者となった場合は保険金が支払われません。
そのため,例えば,保険に入っている会社名義の車が同じ会社の従業員をはねてしまった場合,対人賠償責任保険は適用されません。
(2) 対人賠償責任保険の場合,被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人が被害者となった場合は保険金が支払われません。
そのため,保険に入っている自分の車を会社の業務に使用しているときに同じ会社の従業員をはねてしまった場合,対人賠償責任保険は適用されません。
(3)ア 同僚災害については労災保険は適用されます。
ただし,労災保険では補償されない慰謝料部分については自賠責保険に請求するほか,休業損害,慰謝料及び逸失利益の不足額については運転者本人又は会社に対して損害賠償請求をする必要があります。
イ 会社が労災上乗せ保険に加入している場合,労災上乗せ保険から休業損害,慰謝料及び逸失利益の不足額を支払ってもらえます。
ウ 保険の知りたい!HPの「企業と従業員の両方のために!労災上乗せ保険に加入しよう」が参考になります。
第4 関連記事
・ 搭乗者傷害保険
・ 政府保障事業及び無保険車傷害特約
・ 自賠責保険の支払基準