任意保険の示談代行


目次
第1 総論
第2 自賠責保険の支払基準を下回ることはないこと
第3 示談金における主な項目

第3 任意保険の示談代行を利用できない場合
第4 ガイドラインが定めるところの,任意保険会社の初期対応等
第5 ガイドラインが定めるところの,任意保険会社の一括払い
第6 任意保険会社との示談の形式(示談書及び免責証書)
1 総論
2 示談書
3 免責証書
第7 自動車保険約款における被害者の直接請求権
第8 裁判所に訴訟を提起した場合,事前交渉提示額より下がる場合があること
第9 任意保険とは別に人身傷害補償保険からの給付があるかもしれないこと
第10 自賠責保険の被害者請求をすることを前提として,加害者との間で示談をする場合の取扱い
第11 自動車保険約款における被害者の直接請求権

第12 保険会社のインターネット上の苦情窓口
第13 関連記事その他

第1 総論
1 示談代行制度とは,任意保険会社が被保険者に対して保険金の支払責任を応限度において,任意保険会社の費用により,被保険者の同意を得て,被保険者のために折衝,示談又は調停若しくは訴訟の手続(弁護士の選任を含む。)を行う制度をいいます。
    示談代行制度は,昭和49年に発売されたFAP保険(Family Automobile Policy)の対人賠償に初めて導入されました。
2 判決等により損害賠償額が確定した場合,被害者は,加害者の任意保険会社に対して直接,損害賠償請求をすることができます。
    そのため,保険会社の社員が行う示談交渉は保険会社自身の損害賠償債務についての交渉となる点で弁護士法72条に定める「他人の法律事務」ではないという理屈により,示談代行は,非弁護士による法律事務の取扱いを禁止する弁護士法72条には違反しないとされています。
3 任意保険の示談代行制度を利用した場合であっても,対物賠償責任保険又は対人賠償責任保険を使用せずに自分で損害賠償額を支払った場合,ノンフリート等級は下がりません。
4 交通事故・損害賠償請求ネット相談室HP(LSC総合法律事務所)「任意保険における示談代行サービスとは?」には,「通常保険会社が提示してくる損害賠償の金額は,裁判で認められる損害賠償の金額はかなり低額で,だいたい裁判基準の6割から7割程度であるといわれています。」と書いてあります。
5 最初の交通事故(第1事故)の治療中に再び交通事故(第2事故)にあった場合,第1事故の保険会社は対応を中断し、第2事故の保険会社が対応を引き継ぐことになっており、全損害額が確定した後、第2事故の保険会社が第1事故の保険会社と協議の上、寄与度割合を決定して求償していくようです(弁護士ブログの「また事故に遭っちゃったよ」参照)。

第2 自賠責保険の支払基準を下回ることはないこと
1 平成14年3月11日付の国土交通省自動車交通局保障課長通知「自動車損害賠償保障法及び関係政省令の改正等に伴う事務の実施細目について」(国土交通省HPの告示・通達検索参照)に基づき,任意保険会社は,被害者と初期に接触した時点で,一括払の金額は自賠責保険支払限度額内では自賠責保険の「支払基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示)(自動車損害賠償保障法16条の3)による積算額を下回らないことを記載した書面を交付することにより,任意保険会社の支払額は自賠責保険の「支払基準」を下回らないことが義務づけられています。
    これは,任意保険会社が過失相殺なり損害算定なりについて厳しい主張をする場合がありますところ,被害者が自賠責保険会社に自分で請求手続をとれば,「支払基準の水準で損害賠償額の支払を受けられるのに,任意保険会社から直接,賠償金を受け取ることにより,「支払基準」に達しない賠償しか受けられなくなるという事態を回避するためのものです。
    つまり,任意保険会社が示談をする場合,自賠責保険の「支払基準」(自動車損害賠償保障法16条の3)を下回る金額で被害者と示談することはできません。
2 例えば,むち打ちで90日間,2日に1回のペースで通院した場合,裁判基準の通院慰謝料は48万円である(3.5日に1回のペースで通院した場合と同じです。)のに対し,自賠責保険基準の通院慰謝料は4200円×90日=37万8000円です。
    そのため,この場合,被害者の過失割合が25%とすれば,過失相殺後の裁判基準の通院慰謝料は48万円×0.75=36万円となりますから,自賠責保険基準の通院慰謝料の方が高いこととなります。
3 一般のHPとしては,「自賠責保険金の支払基準」の記載が分かりやすいです。

第3 示談金における主な項目
1 任意保険会社が示談交渉で示す示談金のうち,金額の大きな項目は通常,以下のとおりです(重次法律事務所HP「交通事故」参照)。
    ただし,自賠責保険の後遺障害等級認定がない場合,④後遺障害逸失利益及び⑤後遺障害慰謝料を支払ってもらうことはできません。
① 治療費
② 休業損害
③ 入院慰謝料及び通院慰謝料
④ 後遺障害逸失利益
→ 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間によって計算します。
⑤ 後遺障害慰謝料
2(1) 義肢,歯科補てつ,義眼,眼鏡(コンタクトレンズを含む。),補聴器,松葉杖等の買換費用は治療関係費に含まれますから,物損に関する示談が成立している場合であっても請求できます。
    自賠責保険の場合,眼鏡(コンタクトレンズを含む。)は5万円が上限とされていますが,任意保険の場合,こうした上限はありません。
(2) 眼鏡等は身体の機能を補完するために必要なものである点で眼鏡等の損傷は人損ですし,交通事故時と同じ眼鏡等を再調達するのに必要な費用が損害となる点で減価償却は不要です。
3 痛み,しびれ等の後遺障害が14級に該当する場合,労働能力喪失期間は2年から5年であり,12級に該当する場合,労働能力喪失期間は5年から10年です。
4 弁護士に依頼して訴訟を提起して判決をもらった場合,遅延損害金(年5%)及び弁護士費用(損害額の10%)を追加で支払ってもらえます。
    ただし,訴訟を提起した後に和解をした場合,遅延損害金の半分ぐらいがプラスされますものの,弁護士費用(損害額の10%)を加害者から支払ってもらうことはできません。


第4 任意保険の示談代行を利用できない場合
1(1) 任意保険会社は加害者に対して保険金の支払責任を負う限度において示談代行するものですから,以下の事故については,任意保険会社に法律上の関係がないことから,弁護士法72条との関係で,示談代行してくれません。
① 無責事故
→ 被保険者に責任がない場合をいいます。
② 免責事故
→ 保険約款所定の免責事由に該当し,保険会社に保険金支払義務がない場合をいいます。
③ 自賠内事故
→ 被保険者の負担する賠償額が自賠責保険の支払額の範囲内の場合をいいます。
④ 保険金額超過事故
→ 被保険者が負担する法律上の損害賠償額が,任意保険の保険限度額と自賠責保険によって支払われる額の合計額を超えることが明らかな場合をいいます。
    例えば,対人・対物の限度額が無制限でない場合,死亡又は重度の後遺障害事故であれば保険金額超過事故となる結果,示談代行をしてもらえなくなる場合があります。
(2) ソニー損保のコミュニケーションサイト「保険会社が示談代行できない事故~もらい事故には弁護士特約で備える~」が載っています。
2 示談代行は,以下の場合もできないこととなっています。
① 損害賠償請求権者(被害者)が保険会社の示談代行に同意しない場合
→ この場合,被保険者は保険会社の協力,援助を受けながら交渉することとなりますものの,通常は,保険会社の顧問弁護士が加害者の代理人に就任して示談交渉をしてくれます。
② 被保険自動車に自賠責保険契約が締結されていない場合
③ 被保険者が正当な理由なく保険会社の求める協力要請を拒否した場合

第5 ガイドラインが定めるところの,任意保険会社の初期対応等
・ 一般社団法人日本損害保険協会の「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」(平成24年4月作成)8頁及び9頁には,「自動車保険等において、会員会社が示談交渉を行う場合の被害者に対する初期対応」として,以下の記載があります(会員会社とは,一般社団法人日本損害保険協会に加盟する損害保険会社のことです。

ア.会員会社の担当者の案内
   被害者に担当者の所属部署名、氏名、連絡先を案内するとともに、会員会社が交渉の窓口になる場合は、被害者にその旨を説明する。
イ.請求可能項目の適切な算出のために必要となる損害調査に関する説明
   会員会社は損害賠償の観点から、被害者に対して請求可能な項目と内容を案内する。また、適切な損害調査と保険金支払の観点から、事故の状況、被害物件の損傷程度、被害者の傷害の内容・程度等、保険金の適切な算出のために必要となる各種損害調査を行う必要がある旨を被害者に説明し、損害調査への協力を求める。
ウ.事故状況等の事実関係の確認
   会員会社は被害者に対し、契約者等より確認している事故状況・事故原因等と、被害者が認識している事故状況・事故原因等に相違がないかどうか、丁寧に確認を行うとともに、双方の認識に相違がある場合は、事故現場の実地調査を行うなど、必要な確認調査を行う。
エ.お客さま情報の取扱いに関する丁寧な説明
   会員会社は被害者に対し、被害者の治療の内容・症状の程度等を確認するために必要となる診断書・診療報酬明細書等の医療情報を取得・利用することを説明し、被害者の同意の有無を確認する。被害者が同意する場合は、速やかに同意書への署名・捺印を依頼する。
オ.今後の進め方に関する打合せ
   会員会社は被害者に対し、加害者等が被害者に対して負うべき法律上の賠償責任の範囲について、具体的かつわかりやすく説明を行う。事故の最終的な解決にあたり、承諾書や示談書等の書類が必要となる旨を案内する。
   また、対人賠償事故においては、被害者より治療費・通院交通費・休業損害等の保険金内払いの必要性・要望等を十分確認し、連絡方法等、今後の進め方について丁寧な打合せを行う等、被害者保護に欠けることのないよう、適切な対応を心がける。

第6 ガイドラインが定めるところの,任意保険会社の一括払い
1 被害者の過失が概ね3割以下の交通事故の場合,加害者側の任意保険会社による一括払いを受けることができます。
2 一般社団法人日本損害保険協会の「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」(平成24年4月作成)9頁には,「一括払いに関する丁寧な説明」として,以下の記載があります(会員会社とは,一般社団法人日本損害保険協会に加盟する損害保険会社のことです。)。
   契約者等・被害者が自動車事故で受傷している場合、会員会社は契約者等・被害者に対し、人身傷害保険や対人賠償保険では自賠責保険部分を含めて保険金を支払う「一括払い」を行うことについて親切・丁寧に説明し、同意の有無を確認する。

   契約者等・被害者が「一括払い」に同意しない、もしくは任意保険引受会社において「一括払い」を行うことができない場合は、会員会社は、自賠法15条に基づく請求手続(加害者請求)や自賠法16条に基づく請求手続(被害者の直接請求)、自賠責保険の仮渡金の請求手続を案内するとともに、親切・丁寧な説明と対応を行う。



第7 任意保険会社との示談の形式(示談書及び免責証書)
1 総論
(1)   加害者(=被保険者)側の任意保険会社と示談をする場合,被害者にも過失があるときは示談書を作成し,被害者に全く過失がないときは免責証書を作成します。
(2) 過失割合に争いがない場合,まずは物損について示談をし,症状固定となった後に人損について示談することとなります。
(3) 示談書及び免責証書は通常,3枚複写となっており,示談金の振込口座となる被害者又はその代理人弁護士の預貯金口座は2枚目及び3枚目にだけ記載されるのであって,加害者側の控えとなる1枚目には記載されません。
2 示談書
(1) 示談書とは,加害者及び被害者がお互いに対していくら支払うことで交通事故を解決するかを記載した書面であり,加害者及び被害者の両方の署名押印がなされます。
つまり,示談書の場合,加害者及び被害者の両方の署名押印が必要となる点で作成に手間が掛かります。
(2)   被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合,被害者は,加害者側の任意保険会社に対し,自動車保険約款に基づき,損害賠償金の直接請求権を取得します。
そして,被害者が加害者との間で示談書を作成した場合,加害者側の任意保険会社に対して直接,損害賠償金を支払うように請求できることとなります。
3 免責証書
(1) 免責証書とは,被害者が一方的に加害者及び任意保険会社宛に金○○円を受領することにより,加害者に対する損害賠償請求権を放棄することを宣言して署名押印する書面をいい,加害者の署名押印,及び任意保険会社の記名押印はなされません。
つまり,免責証書の場合,被害者の署名押印だけで足りますから,示談書の作成ほどは手間が掛かりません。
(2)   損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合,被害者は,加害者側の任意保険会社に対し,自動車保険約款に基づき,損害賠償金の直接請求権を取得します。
そして,被害者が免責証書を作成した場合, 加害者側の任意保険会社に対して直接,損害賠償金を支払うように請求できるということです。
(3)ア 東京海上日動火災保険株式会社と示談をする場合,免責証書の本文は以下のような文面になっています。
「上記事故によって乙の被った一切の損害に対する賠償金として,乙は「甲・丙」の保険契約に基づき丁より既払額○○万円の他に○○万円を受領後には,その余の請求を放棄するとともに,上記金額以外に何ら権利・義務関係の無いことを確認し,甲・丙および丁に対し今後裁判上・裁判外を問わず何ら異議の申立て,請求および訴えの提起等をいたしません。」
イ   甲及び丙は加害者であり,乙は被害者であり,丁は甲及び丙が被保険者となっている任意保険会社のことです。
ただし,加害者が1人だけの場合,丙はいません。


第8 裁判所に訴訟を提起した場合,事前交渉提示額より下がる場合があること
・ 以下のような事情があるため,裁判所に訴訟を提起した場合,訴訟上の和解又は判決での認容額が事前交渉提示額より下がることがあります。
① 訴訟提起後に実況見分調書,被害者のカルテ等を確認した結果,被害者に不利な事実が訴訟提起後に判明する場合があること。
→ 例えば,(a)交通事故の時に被害者がシートベルトをしていなかった事実,(b)治療中に事故の負傷部位にさらに別の事故での負傷が加わった事実,(c)後縦靱帯骨化症(OPLL)が治療の長期化・後遺障害の程度に大きく影響している事実があります。
② 早期解決ができることを条件として,訴訟では認められない可能性のある損害を任意保険会社が争っていない場合があること。
→ 例えば,介護のための家族の高額なホテル代があります。
③ 最終的に決裂した事前交渉中に,タクシー代支払の合意,休業損害額の合意といった,一部の事項だけの合意が成立していた場合
→ 訴訟提起後に合意の事実を被告が争った場合,決裂した合意の中の一部の中間的な合意については「法的に」成立していたという主張は非常に認められにくいです。

第9 任意保険とは別に人身傷害補償保険からの給付があるかもしれないこと
1 被害者に過失がある事故であっても,被害者について人身傷害補償保険が適用される場合,示談の前後を問わず,過失部分について人身傷害補償保険からの給付があります。
具体的にどのような場合に適用されるかについては,「人身傷害補償保険」を参照して下さい。
2 加害者に対する損害賠償請求訴訟をした上で,判決又は訴訟上の和解により損害賠償金を回収した場合,自分の過失部分について,金額が少ない人身傷害基準ではなく,金額が多くなる訴訟基準に基づく保険金を支払ってもらえます。
そのため,自分の過失割合が少ない場合,実質的に自分に過失がなかった場合と同額の損害賠償金を受領できることとなります(「人身傷害補償保険」参照)。
3 人身傷害補償保険の内容によっては,自分又は家族について,他の自動車に乗車中に交通事故が発生したり,歩行中や自転車運転中に交通事故が発生したりした場合であっても,過失部分について人身傷害補償保険から給付されることがあります(「人身傷害補償保険」参照)。


第10 自賠責保険の被害者請求をすることを前提として,加害者との間で示談をする場合の取扱い
1 被害者請求権の成立には,自賠法3条による被害者の保有者に対する損害賠償債権が成立していることが要件となっており,また,当該損害賠償債権が消滅すれば,被害者請求権も消滅します最高裁平成12年3月9日判決(先例として,最高裁平成元年4月20日判決)参照)。
   そのため,自賠責保険の被害者請求をすることを前提として,加害者との間で示談をする場合,自賠法3条に基づく損害賠償請求権を放棄したり,加害者との間での清算条項を入れたりすることはできませんから,「原告は,本件事故に関して,被告が被保険者となっている自賠責保険に対する被害者請求により損害賠償金の支払を受けることができた場合,被告に対し,人損部分に関する損害賠償請求はしないものとする。」といった条項を入れるにとどめた方がいいです。
2(1) 加害者に対しては,訴訟基準の損害額×加害者の過失割合-自賠責保険からの支払額しか請求できませんから,例えば,加害者に35%の過失がある場合において,傷害部分の訴訟基準の損害額が300万円,傷害部分の自賠責保険基準の損害額が200万円の場合,300万円×0.35-120万円(自賠責保険の限度額)=-25万円となる結果,和解条項にかかわりなく,傷害部分に関する損害賠償請求をすることはできません。
  また,14級の後遺障害があるときにおいて,後遺障害部分の訴訟基準の損害額が224万5000円(慰謝料が110万円,逸失利益が114万5000円(年収500万円×労働能力喪失率5%×労働能力喪失期間5年に対応するライプニッツ係数4.58=500万円×0.229))であるとした場合,224万5000円×0.35-75万円=3万5750円となる結果,和解条項がなかったとしても,後遺障害部分に関する損害賠償請求は3万5750円しかできません。
(2) 12級以上の後遺障害が残る可能性がある場合,「訴訟基準の損害額×加害者の過失割合」と「自賠責保険からの支払額」をちゃんと比較してから,人損部分に関する損害賠償請求はしないということを表明するかどうかを決める必要があります。

第10 自動車保険約款における被害者の直接請求権
1 以下の場合,損害賠償請求権者である被害者は,加害者(=被保険者)側の任意保険会社に対し,自動車保険約款に基づき,損害賠償金の直接請求権を取得します。
① 被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合
② 被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合
③ 損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合
④ (3)に定める損害賠償額が保険証券記載の保険金額を超えることが明らかになった場合
⑤ 法律上の損害賠償責任を負担すべきすべての被保険者について、次のいずれかに該当する事由があった場合
ア.被保険者またはその法定相続人の破産または生死不明
イ.被保険者が死亡し、かつ、その法定相続人がいないこと。
2(1) ①につき,被害者が加害者に対して訴訟を提起し,訴訟上の和解が成立するなどした場合,加害者側の任意保険会社に対して直接,損害賠償金を支払うように請求できるということです。
②につき,加害者及び被害者の両方に過失がある場合に用いられる裁判外の解決方法であって,被害者が加害者との間で示談書を作成した場合,加害者側の任意保険会社に対して直接,損害賠償金を支払うように請求できるということです。
③につき,被害者に全く過失がない場合に用いられる裁判外の解決方法であって,被害者が免責証書を作成した場合, 加害者側の任意保険会社に対して直接,損害賠償金を支払うように請求できるということです。
④につき,保険金額超過事故のことであり,加害者側の任意保険会社が限度額まで保険金を支払った後,示談交渉から手を引くことになります。ただし,対人・対物無制限の自動車保険の場合,④が問題となることはありません。
⑤につき,加害者が破産したような場合,加害者側の任意保険会社に対して直接,損害賠償金を支払うように請求できるということです(被害者の先取特権につき保険法22条参照)。
(2) 対人・対物無制限の場合,④が問題となることはありません。


第11 保険会社のインターネット上の苦情窓口
1 保険会社のインターネット上の苦情窓口は以下のとおりです(保険契約者が苦情を伝える場合,証券番号を入力する必要があります。)。
① 東京海上日動HP「お問い合わせ」
→ 問い合わせフォームがあります。
② 三井住友海上HP「お問い合わせ」
→ 問い合わせフォームがあります。
③ あいおいニッセイ同和損保HP「「お客さまの声」にお応えするために」
→ 問い合わせフォームがあります。
④ 損保ジャパン日本興亜HP「お客さま相談室(保険金支払ご相談窓口)」
→ 電話対応だけみたいです。
⑤ AIG損保HP「事故・病気・ケガ・災害時のご連絡」
→ 電話のほか,メールによる問い合わせに対応しているみたいです。
2(1) 1番安い自動車保険教えますHP「自動車保険19社の苦情窓口とクレームの入れ方|そんぽADRセンターとは? 」が載っています。
(2) 共済相談所HP「共済相談所のご案内」に載ってある共済相談所活動報告(平成29年度)3頁によれば,1789件の苦情のうち,1240件(69.3%)が共済金関係です。

第12 関連記事その他
1 チューリッヒ保険会社HP「交通事故の示談交渉とは」が載っています。
2(1) The Goal ブログ「自動車事故の示談における,損保の恐ろしい実態」には,「自動車保険の落とし穴(朝日新書)」からの引用として,「損保会社がやっている示談交渉サービスには,真実追及とか原因究明なんて高尚な理念はありません。一言で言うなら,いかに会社側の損害を抑えられるかってことですね。」などと書いてあります。
(2) 市況かぶ全力2階建ブログ「自動車保険会社のイメージ、被害者側の弁護士目線でみるとこうなる 」が載っています。
(3) 交通事故弁護士相談Cafe「トラック事故被害に遭うと想像以上に面倒な理由について」が載っています。
3(1) 誰でも分かる交通事故示談HP「交通事故示談とは?知らなきゃ損する!示談の流れや交渉時期、時効、弁護士へ依頼のタイミング等を一挙解説!」が載っています。
(2) 元示談担当者が教える交通事故の示談術HP「事故後、相手の保険会社からの電話で言ってはいけない3つの言葉」が載っています。
4 令和2年3月31日以前に発生した交通事故の損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければなりません(最高裁平成17年6月14日判決)。
5 「自動車保険の解説 2017」56頁には,賠償責任条項11条(損害賠償請求権者の直接請求権-対人賠償)において,保険会社が支払う損害賠償額に関して「同一事故につき既に当会社が支払った保険金または損害賠償額がある場合は、その全額を差し引いた額とします。」という注記があります。
    そのため,対人賠償責任保険の場合,内払によって支払われた損害賠償金の全額が加害者に対する損害賠償請求権の金額から控除されることとなりますから,事実上,費目拘束性はないと思います。
6 以下の記事も参照してください。
・ 物損に関する示談
・ 昭和48年9月1日付の,日本損害保険協会及び日弁連交通事故相談センターの覚書(交通事故損害賠償に関するもの)
・ 交通事故でも健康保険を利用できること
・ 自賠責保険の支払基準(令和2年4月1日以降の交通事故に適用されるもの)
・ 損益相殺
・ 東京地裁民事第27部(交通部)
・ 弁護士費用特約


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