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司法面接・代表者聴取とは-刑訴法321条の3の証拠能力と供述の信用性(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

この記事は,司法面接的手法による聴取及び児童虐待対応における代表者聴取について,刑事訴訟法321条の3による録音・録画記録媒体の証拠能力と,録音・録画された供述の信用性を区別して説明するものです。
法令及び公表資料の確認基準日は,令和8年9月9日です。

2 先に結論

刑事訴訟法321条の3は,一定の対象者について,聴取の全過程を同時に録音・録画し,供述者の負担を軽減する措置及び供述内容への不当な影響を避ける措置が特に採られ,聴取に至るまでの事情等を考慮して相当と認められる場合に,記録媒体を伝聞法則の例外として証拠にできることを定めています。
ただし,同条により証拠能力が認められることは,録音・録画された供述が真実であるとの認定を意味しません。
実務では,証拠能力という入口の判断と,供述をどの程度信用できるかという証明力の判断を分けた上で,録音・録画の内容だけでなく,最初の被害開示から録音・録画された聴取までの経過も検討する必要があります。

第2 司法面接と代表者聴取

1 司法面接とは

司法面接的手法による聴取は,供述者の年齢,心身の状態その他の特性に応じて不安又は緊張を緩和し,自由な語りを促すとともに,誘導をできる限り避けて供述内容への不当な影響を防ぐための聴取方法です。
刑事訴訟法321条の3第1項2号は,この二つの方向の措置を法律上の要件として示しています。

2 代表者聴取とは

児童虐待対応における代表者聴取は,児童相談所,警察及び検察の各機関が別々に同じ内容を尋ねるのではなく,事前協議を踏まえて代表者一人が聴取する運用です。
こども家庭庁の令和7年12月改正版「こども虐待対応の手引き」は,これを「協同面接(代表者聴取)」と呼び,被害を受けたこどもの負担軽減及び供述の信用性の確保を目的とする取組として説明しています。

3 両者の関係

代表者聴取は主として関係機関間の役割分担を示す言葉であり,司法面接的手法は聴取の方法を示す言葉です。
したがって,代表者一人が一度だけ聴取したという形式のみで,刑事訴訟法321条の3の要件が当然に満たされるわけではなく,必要な措置が実際に採られたかを個別に確認する必要があります。

第3 刑事訴訟法321条の3の要件

1 対象者

(1) 列挙された犯罪の被害者

同条1項1号イ及びロは,刑法上の一定の性犯罪,児童福祉法違反,児童買春・児童ポルノ禁止法違反及び性的姿態撮影等処罰法違反等の被害者を対象としています。
実際の事件では,適用対象となる罪名及び条項を現行法の条文で照合する必要があります。

(2) 精神の平穏を著しく害されるおそれがある者

同号ハは,列挙された犯罪の被害者以外でも,犯罪の性質,供述者の年齢,心身の状態,被告人との関係その他の事情により,公判準備又は公判期日に再び供述すると精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者を対象としています。
このため,対象者は,こども,精神に障害がある人又は性犯罪の被害者だけに限定されていません。

2 聴取の全過程の同時録音・録画

記録媒体には,聴取の開始から終了までの供述及びその状況が,録音と録画を同時に行う方法で記録されている必要があります。
一部を抜粋した映像又は編集後の映像だけでは,聴取の全過程が記録されているという条文上の要件を確認できません。

3 聴取時に特に採るべき措置

(1) 十分な供述のための措置

同条1項2号イは,供述者の年齢,心身の状態その他の特性に応じ,不安又は緊張を緩和することその他の十分な供述をするために必要な措置を採ることを求めています。
一般的な配慮があったというだけでなく,当該供述者の特性に応じた措置が特に採られたかが問題となります。

(2) 不当な影響を避ける措置

同号ロは,供述者の特性に応じ,誘導をできる限り避けることその他の供述内容に不当な影響を与えないために必要な措置を採ることを求めています。
国会答弁では,聴取者の資格又は所属は法律上限定されておらず,聴取者の肩書だけでなく,必要な措置が実際に採られたかが要件になると説明されています。

4 聴取に至るまでの事情等を考慮した相当性

同条1項2号の措置を採って聴取した場合でも,裁判所は,聴取に至るまでの事情その他の事情を考慮し,記録媒体を証拠とすることが相当であると認めなければなりません。
最高検察庁及び警察庁の令和5年12月12日付け文書は,聴取前の誘導又は暗示によって供述者の記憶が大幅に変容していた場合,録音・録画された聴取だけでは事前の変容が分からず,信用性の判断を誤らせる危険があると説明しています。
同文書は,被害の開示等の情報開示から代表者聴取等までの期間について,誘導又は暗示による記憶への影響を防ぐとともに,情報開示の状況等を報告書等によって適切に証拠化することが重要であるとも示しています。

5 証人尋問の機会

裁判所は,記録媒体を取り調べた後,訴訟関係人に対し,その供述者を証人として尋問する機会を与えなければなりません。
したがって,同条は,供述者が公判で一切尋問されないことを当然に認める制度ではありません。
もっとも,同条2項により録音・録画された供述は刑事訴訟法295条1項前段との関係で公判期日の供述とみなされるため,裁判長は,訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り,重複する尋問等を制限できます。

第4 証拠能力と供述の信用性

1 二つの判断を分ける

証拠能力は,その証拠を事実認定の資料として用いることが許されるかという入口の問題です。
供述の信用性又は証明力は,証拠能力がある証拠からどの程度の事実を認定できるかという評価の問題であり,刑事訴訟法318条により裁判官の自由な判断に委ねられています。
刑事訴訟法321条の3の要件が満たされても,個別の供述内容が真実であることまで保証されるわけではありません。

2 録音・録画から確認する事項

録音・録画については,①聴取の冒頭から終了まで連続しているか,②自由な語りを促す質問が先行しているか,③選択肢を示す質問又は確認的な質問が早い段階から反復されていないか,④聴取者が供述者の述べていない情報を持ち込んでいないか,⑤休憩,退室,第三者の関与又は画面外の出来事がないかを確認します。
また,供述の具体性,一貫性又は感情表現だけを取り出すのではなく,供述の核心部分が客観的証拠及び独立した他の証拠と整合するか,供述の変化に合理的な説明があるか,反対方向の事実又は代替仮説が残らないかを検討します。

3 録音・録画前の経過から確認する事項

録音・録画の前に,家族,学校,児童相談所,医療機関,警察その他の関係者が何を尋ね,何を説明し,供述者がどのように応答したかを時系列で整理します。
初回の自発的な開示内容,その後に追加又は変化した事項,質問者が前提として示した情報,供述者が閲覧した画像又はメッセージ及び各接触の記録の有無は,相当性と信用性の双方に関係し得ます。
録音・録画が聴取開始後の質問方法を検証できる資料であっても,それ以前の情報接触まで自動的に明らかにするものではないからです。

4 心理学研究の位置付け

構造化された司法面接手順に関する研究は,開かれた質問を増やし,選択肢を示す質問又は暗示的な質問を減らすことが,こどもから得られる情報の質を改善し得ると報告しています。
また,研修を受けただけでは推奨される質問方法が実際の聴取で維持されないことがあり,継続的な監督及びフィードバックが重要であるとの指摘もあります。
これらは適切な聴取方法を考えるための一般的知見であり,特定事件の供述が真実であることを直接証明する資料ではありません。

第5 弁護実務における検討手順

1 低負荷の資料から時系列を作る

まず,起訴状,証拠等関係カード,開示済みの供述調書・報告書,録音・録画記録媒体及び客観証拠から,初回開示,関係者との接触,代表者聴取,捜査機関による追加聴取及び公判供述の時系列を作ります。
未開示資料については当然に開示されると決めつけず,争点との関連性及び開示制度上の根拠を検討した上で,被害開示の記録,初期対応記録,関係機関の協議記録,聴取計画,逐語反訳,原記録の技術情報等の開示を求めるかを判断します。

2 証拠能力の争点を要件ごとに分ける

証拠能力については,①供述者が同条1項1号の対象者に当たるか,②聴取の全過程が同時に録音・録画されているか,③同項2号の措置が特に採られたか,④聴取前の経過を含めて証拠とすることが相当か,⑤取調べ後に証人尋問の機会が与えられるかを分けて検討します。
一つの問題点から直ちに全要件の充足又は不充足を結論付けず,条文上のどの要件に関係する事実かを特定することが重要です。

3 信用性の検討表を作る

信用性については,質問ごとの類型,質問者が持ち込んだ情報,供述の追加・変化,客観的裏付け,反対方向の証拠及び合理的な代替仮説を,供述事項ごとに対応させます。
録音・録画の印象又は供述者の態度だけで評価せず,供述内容と独立した証拠との関係を明示する必要があります。

4 専門家への相談を段階化する

初期段階では,争点となる質問場面及び事前接触を絞り込み,一般的知見で説明できる範囲と,当該供述者又は当該面接に即した専門的評価が必要な範囲を分けます。
専門家へ相談する場合は,単に供述が信用できるかを尋ねるのではなく,どの質問又は事前接触がどの供述部分へどのように影響し得るか,評価の前提と限界を示してもらえるかを検討します。
費用及び供述者の負担を伴う追加調査は,既存記録だけでは判断できず,かつ,結論への影響が大きい論点に絞ることが相当です。

5 供述を提出する側でも原記録を保全する

検察官又は被害者側の支援に当たる弁護士にとっても,初回開示から代表者聴取までの経過を正確に記録し,重複聴取及び誘導を避け,原記録を完全な状態で保存することは重要です。
この作業は,証拠能力の要件を説明するだけでなく,後日の信用性評価において聴取過程を検証可能にする基礎となります。

第6 裁判例を参照する際の注意

1 施行前の裁判例

刑事訴訟法321条の3は令和5年12月15日に施行されたため,それより前の代表者聴取に関する裁判例は,主として同法321条1項2号等の従来の伝聞例外又は供述の信用性を検討したものです。
その聴取方法に関する評価は参考になり得ますが,結論を同法321条の3の要件判断へそのまま移すことはできません。

2 同条の適用裁判例

同条の適用裁判例を参照するときは,裁判年月日又は掲載誌の情報だけでなく,事件番号,主文,判示内容及び上訴関係を判決本文その他の一次資料で確認する必要があります。
二次資料の要約だけで,当該裁判例が同条のどの要件をどの事実に基づいて判断したかを一般化するのは避けるべきです。

第7 法令・公的資料

1 法令

e-Gov法令検索・刑事訴訟法

2 立法経過

法務省・性犯罪に対処するための刑法等の一部を改正する法律案

衆議院・第211回国会本会議第24号(令和5年5月9日)

衆議院・第211回国会法務委員会第17号(令和5年5月17日)

3 行政の運用資料

こども家庭庁・児童虐待事案に係るこどもの心理的負担等に配慮した面接の実施に当たっての記憶の汚染防止等の留意点について

こども家庭庁・こども虐待対応の手引き(令和7年12月改正版)

4 学術文献

① Michael E. Lamb, Yael Orbach, Irit Hershkowitz, Phillip W. Esplin and Dvora Horowitz, Structured forensic interview protocols improve the quality and informativeness of investigative interviews with children: A review of research using the NICHD Investigative Interview Protocol, Child Abuse & Neglect 31巻1201頁~1231頁(2007年), DOI: 10.1016/j.chiabu.2007.03.021

② Yael Orbachほか, Assessing the value of structured protocols for forensic interviews of alleged child abuse victims, Child Abuse & Neglect 24巻733頁~752頁(2000年), DOI: 10.1016/S0145-2134(00)00137-X

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