メインコンテンツへスキップ
       

裁判所の令和6年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象,基準日及び資料の対象期間

本記事は,裁判所所管の令和6年度予算について,概算要求額,当初予算額,補正後予算額及び決算額という4つの数字を同じ表に並べ,金額がどこで動いたかを確認するものである。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,資料の対象期間は令和2年度から令和8年度までである。
中心に置くのは令和6年度であり,前後の年度は比較のために用いる。
金額は,特記しない限り千円単位である。
本記事の数値は,裁判所ウェブサイトに掲載された公式PDFと,財務省「予算書・決算書データベース」のCSVから取得したものであり,条文はe-Gov法令検索の本文によっている。
記事の作成にはAIを用いている。

2 結論

令和6年度の概算要求等額は340,893,828千円であり,当初予算額は330,979,009千円である。
要求等額に対する当初予算額の割合は97.09%となる。
しかし,この2つだけを比べて「約3%削られた」と書くと,二重に不正確になる。

第1に,その年度の予算は当初予算では終わらない。
令和6年度は補正予算第1号で23,470,369千円が追加され,補正後予算額は354,449,378千円になった。
これに前年度からの繰越13,238,876千円が加わり,予算現額は367,688,254千円である。

第2に,実際に支出された額は332,296,053千円である。
概算要求等額と比べれば97.48%,補正後予算と比べれば93.75%,予算現額と比べれば90.37%になる。
分母をどこに置くかで数字の印象は逆転する。

そして,本記事が最も強調したいのは次の点である。
要求どおり満額で計上された経費が,そのまま使われているとは限らない。
(項)裁判費のうち保証金は,令和6年度も1円も支出されていない。

3 この記事が扱わない範囲

裁判所の予算がどのような手続で決まるか,財政法19条の附記(二重予算)が令和2年度から令和8年度まで0件であること,及び8月末という送付期限の根拠については,裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことで扱っている。
本記事は,その手続を前提として,令和6年度の金額が実際にどう動いたかだけを追う。

したがって,要求額と予算額の差についても,本記事では「内閣が減額した」とは書かない。
財政法19条の附記が0件である以上,公表資料から減額の事実を確認することはできず,他方で最高裁判所が納得していたことも確認できないからである。
本記事では,この差を単に「差」と呼ぶ。

第2 4つの数字を並べる

1 総額

系列金額(千円)資料での欄名
概算要求等額340,893,828概算要求等額(財務省の概算要求・要望額の表)
当初予算額330,979,009令和6年度成立予算額(補正予算のCSV)
補正後予算額354,449,378改令和6年度予算額(同上)
予算現額367,688,254歳出予算現額(決算のCSV)
決算(支出済歳出額)332,296,053支出済歳出額(同上)

本記事でいう「補正後予算額」は,資料の欄名ではない。
「当初予算額」は決算参照の歳入決算明細書に欄名として現れるが,本記事は歳出について使っており,歳出の側では補正予算の資料が「令和6年度成立予算額」としている。
資料を開いたときにどの列を見ればよいかを右の欄に示した。

概算要求等額の内訳は,概算要求額332,440,556千円と,重要政策推進枠の要望額8,453,272千円である。
財務省が公表する概算要求・要望額の表でも,裁判所所管は要求と要望が別欄になっている。
両者を合算した数字と,概算要求額だけの数字は別物であるから,どちらを分母にするかを先に決める必要がある。

決算の内訳は,支出済歳出額332,296,053千円,翌年度繰越額25,894,428千円及び不用額9,497,772千円である。
執行率は,支出済歳出額を予算現額で除して90.37%となる。

2 項別に見ると像が変わる

要求等額当初予算補正後決算決算÷補正後決算÷要求等額
最高裁判所90,538,88985,167,74987,800,12783,603,78895.22%92.34%
下級裁判所206,681,894206,921,337213,264,491208,123,54497.59%100.70%
検察審査費281,653281,194281,998272,92496.78%96.90%
裁判費25,676,98823,962,22636,930,87724,166,90565.44%94.12%
裁判所施設費17,706,40414,638,50316,163,88516,124,21899.75%91.06%
裁判所予備経費8,0008,0008,0004,67158.39%58.39%
合計340,893,828330,979,009354,449,378332,296,05393.75%97.48%

総額では要求等額の97.09%だが,項ごとに見ると幅がある。
概算要求等額に対する当初予算額の割合は,(項)下級裁判所が100.12%,(項)検察審査費が99.84%,(項)最高裁判所が94.07%,(項)裁判費が93.32%,(項)裁判所施設費が82.67%である。
(項)下級裁判所は要求等額を239,443千円上回って計上されている。
他方,総額の差9,914,819千円のうち8,439,041千円は,(項)最高裁判所の5,371,140千円と(項)裁判所施設費の3,067,901千円で占められている。
差の85.12%が2つの項に集中しているのであって,全体が一律に97.09%まで圧縮されたわけではない。

(項)下級裁判所だけは,決算額が概算要求等額を上回っている。
補正予算第1号で職員基本給1,474,769千円,期末手当550,533千円及び勤勉手当1,005,305千円などが追加されているためである。
給与の改定に伴う追加と読むことはできるが,各目明細書に人事院勧告という文言はないので,本記事では改定の根拠まで断定しない。

(項)裁判費の決算額は,補正後予算の65.44%にとどまる。
補正で積まれたデジタル化関係の経費が,ほぼそのまま翌年度へ繰り越されたためである。

(項)裁判所施設費は,補正後予算と比べれば99.75%でほぼ満額執行に見える。
しかし,前年度繰越5,782,042千円を含む予算現額21,945,927千円と比べると73.47%にとどまる。
前年度繰越が大きい項では,分母を補正後予算にするか予算現額にするかで評価が20ポイント以上変わる。
年度をまたいで比較するときは,どちらの分母を使うかを先に固定してから並べることになる。

3 決算による検算

財務省の決算CSVから裁判所所管の78行を合算すると,次の2つの等式がいずれも差0円で成立する。
なお,この5つの項目がそろっているのはCSVである。
決算参照のPDFでは,裁判所所管の頁(内部80頁から85頁まで)の表が8欄で,予算決定後移替増△減額の欄が立っていない。
移替のない所管では,その欄ごと落ちる。
9つの欄の意味と2本の恒等式そのものは,決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式にまとめてある。
歳出予算額354,449,378,000円+前年度繰越額13,238,876,033円+予備費使用額0円+流用等増△減額0円+予算決定後移替増△減額0円=歳出予算現額367,688,254,033円
支出済歳出額332,296,053,276円+翌年度繰越額25,894,428,345円+不用額9,497,772,412円=歳出予算現額367,688,254,033円

この分解には副産物がある。
歳出予算現額が当初予算額と補正予算第1号と前年度繰越額の和で尽きているから,令和6年度に補正予算第2号が存在しないことが確認できる。
実際,財務省の予算書・決算書データベースでも,令和6年度の補正予算は第1号だけである。

前年度繰越額13,238,876,033円は,令和5年度決算の翌年度繰越額と一致する。
年度をまたいだ検算は,この繰越額の連鎖で行うことができる。

第3 補正予算で積んだ金は,その年度には使われていない

1 「裁判手続等のデジタル化等」169億円

令和6年度補正予算第1号の主な事業は,「裁判手続等のデジタル化等」169億円である。
裁判所が公表している執行状況によれば,この169億円の令和6年度中の支出済額は1億円にとどまり,167億円が翌年度へ繰り越された。
繰り越された167億円は,令和7年度に164億円が支出されている。

補正予算は年度の途中,多くは12月に成立する。
そこで積まれた経費が年度内に契約から支払まで到達するとは限らない。
補正予算額をその年度の支出額と読み替えることはできない。

2 目レベルで見た繰越

繰越がどの目で生じたかは,決算の目レベルで確認できる。

予算現額(円)支出済歳出額(円)翌年度繰越額(円)
裁判費裁判庁費35,491,501,00019,608,077,05813,670,274,000
下級裁判所法廷等器具整備費3,198,477,000552,029,0652,554,802,000
最高裁判所情報処理業務庁費3,846,323,0002,620,646,5611,166,898,000
下級裁判所情報処理業務庁費537,805,000441,957,39269,535,000
検察審査費庁費46,700,00043,655,435804,000

(項)下級裁判所の(目)法廷等器具整備費では,補正予算第1号の追加額2,554,802,000円と翌年度繰越額が完全に一致する。
補正で積んだ分が1円も使われないまま,そのまま翌年度へ回ったということである。

同じ目の残りも数字で追える。
当初予算690,436,000円に補正2,554,802,000円を加え,流用による減46,761,000円を差し引くと予算現額3,198,477,000円になる。
当初予算分から流用分を引いた643,675,000円は,支出済552,029,065円と不用額91,645,935円に分かれる。
当初予算分は使い,補正分は全部繰り越したという切り分けが,決算の数字だけで確認できる。

3 繰越の可否を分けるのは繰越明許費の指定である

もっとも,これを「補正で積んだ分は翌年度へ回る」と一般化することはできない。
同じ(目)法廷等器具整備費でも,令和2年度は補正予算第2号で152,600千円を積みながら,決算の翌年度繰越額は0円であり,不用額が128,859,055円計上されている。

分かれ目は,各目明細書に繰越明許費の指定があるかどうかである。
令和6年度の補正各目明細書は,積算内訳に「うち繰越明許費」の欄を置き,そこに「裁判支援機器緊急整備費」を掲げているのに対し,令和2年度補正予算第2号の同じ目には繰越明許費の記載がなく,積算内訳は備品費だけである。
同じ令和2年度補正予算第2号でも,(目)裁判庁費には「うち繰越明許費」の欄があり,「司法情報システム緊急整備費」に592,392千円が計上されている。
決算では1,332,855,312円が繰り越されている。

同じ補正予算の中でも,目によって繰越の可否が違う。
補正予算を追うときは,各目明細書の「うち繰越明許費」の記載を先に見ることになる。
記載がなければ,その追加額は年度内に使い切るか,不用額になる。

4 3つの金額を混同しない

繰越明許費の指定額,補正予算の追加額及び実際の繰越額は,3つとも別の数字である。
(目)裁判庁費では,繰越明許費の指定額が16,778,743千円,補正の追加額が12,968,651千円,実際の翌年度繰越額が13,670,274千円であり,三者三様になる。
繰越明許費の欄に並ぶ金額を,補正の追加額の内訳として読むことはできない。

なお,令和6年度の翌年度繰越額25,894,428,345円は,決算報告書の備考によれば全額が明許繰越額である。
事故繰越等は含まれていない。

第4 満額で計上されたことと,使われたことは別である

1 (項)裁判費の目別執行率

令和6年度の(項)裁判費は13の目からなり,そのうち12の目は,概算要求額と当初予算額が1円単位で一致していた。
その満額計上された経費が決算でどれだけ使われたかを見ると,像が変わる。

予算額(千円)支出済歳出額(千円)執行率
保証金10,0000.0%
身柄拘束者食糧費4246816.0%
少年補償金10,0211,82318.2%
少年補導委託費140,28750,45236.0%
裁判旅費277,277152,69855.1%
委員等旅費1,368,0861,052,80777.0%
執行官旅費43,85835,65381.3%
諸謝金2,039,1161,683,24382.5%
賠償償還及払戻金289,012255,90088.5%
特別送達料682,204607,35389.0%
証人等旅費182,046171,18594.0%
刑事補償金565,701547,64296.8%

(目)保証金の積算内訳は,各目明細書によれば「仮支弁金」である。
要求どおり10,000千円が計上されながら,令和6年度の支出は0円であった。
保証金の執行率は令和2年度も令和5年度も0.0%であり,少なくとも令和2年度から恒常的に0である。

裁判旅費は44.9%,委員等旅費は23.0%が不用額になっている。
(項)下級裁判所の(目)委員手当も4.8%が不用額になっており,民事調停委員及び家事調停委員の手当は決算段階で約5%が残る。

もっとも,執行率の低さと不用額の大きさは別である。
(項)裁判費の不用額3,262,353,752円のうち,2,213,149,942円は上の表に載っていない(目)裁判庁費である。

予算現額支出済翌年度繰越不用額支出済÷現額不用率項の不用額に占める割合
裁判庁費35,491,501,00019,608,077,05813,670,274,0002,213,149,94255.2%6.2%67.8%
諸謝金2,039,116,0001,683,243,357355,872,64382.5%17.5%10.9%
委員等旅費1,368,086,0001,052,807,341315,278,65977.0%23.0%9.7%
裁判旅費277,277,000152,698,361124,578,63955.1%44.9%3.8%

この表の(目)裁判庁費の翌年度繰越額13,670,274,000円は,第3の2で(項)裁判費の繰越として挙げたものと同じである。
第3では繰越の側から,ここでは不用の側から,同じ目の同じ4つの数字を見ていることになる。

なお,(項)裁判費の13の目のうち,翌年度繰越額が0でないのは(目)裁判庁費だけである。
残る12の目は繰越が0円なので,執行率と不用率を足すと100%になる。
(目)裁判庁費だけは,予算現額の38.5%を翌年度へ繰り越しているため,100%から執行率を引いても不用率にはならない。

(目)裁判庁費の不用率は6.2%で,この4目のうち最も低い。
それでも(項)裁判費の不用額の67.8%を占めるのは,予算現額が他の目より1桁大きいからである。
決算が名指ししているのは,率が低い目ではなく,額が大きい目である。

(目)裁判庁費と(目)裁判旅費は,支出済を予算現額で割るとどちらも55%台になるが,中身は正反対である。
裁判庁費は38.5%を翌年度へ繰り越しており,使わなかったのは6.2%にすぎない。
裁判旅費は繰越が0円で,44.9%がそのまま不用額になっている。
支出済を予算現額で割った数字だけを並べると,この2つが同じものに見える。

そして,決算報告書に書かれている理由も,この目を名指ししている。
歳出の決算報告書を作製するのは各省各庁の長であり(財政法37条1項),同法20条2項は各省各庁の長に最高裁判所長官を含めている。
理由を書いているのは財務省ではなく,裁判所の側である。

不用額を生じたのは、契約価格が予定を下回ったこと、業務内容の見直しによる業務計画の変更をしたこと等により、裁判庁費を要することが少なかったこと等のため

(項)別の不用額の理由は,令和6年度の裁判所所管では4項に記載がある。
(項)最高裁判所は基礎年金等国家公務員共済組合負担金,(項)下級裁判所は職員基本給,(項)裁判費は裁判庁費,(項)裁判所施設費は施設整備費を,それぞれ名指ししている。
(項)検察審査費及び(項)裁判所予備経費には記載がない。
理由がどの資料のどこに載るか,2つの資料で収録の範囲が違うことは,決算に書かれている「理由」の探し方にまとめてある。

2 満額の目は令和7年度から崩れる

令和6年度の(項)裁判費は13の目からなり,そのうち(目)裁判庁費を除く12の目が満額であった。
令和7年度には,諸謝金,郵便関係及び刑事補償金の3目が満額でなくなり,満額の目は9目になっている(裁判庁費については算出していない)。
令和8年度には,満額の目は5目まで減っている。

変曲点は,令和6年度から令和7年度への移行時にある。
令和7年度では諸謝金が94.5%,刑事補償金が64.6%に,令和8年度では執行官旅費が71.5%,裁判旅費が73.5%,保証金が50.0%になっている。

もっとも,これを分母をそろえた比率として読むことはできない。
目の構成は年度によって入れ替わっており,令和7年度以降は(目)特別送達料に代えて郵便関係の目が立っている。
目の総数が同じ13であっても,同じ目を追っているとは限らない。

3 低執行は「どの目」を決めるが「いつ」を決めていない

決算で余っていた経費が予算に反映された,という説明は,半分しか成り立たない。

令和7年度に減額された目は,いずれも令和5年度決算又は令和6年度決算で執行率が低かった目である。
この限りでは,低執行が「どの目を削るか」の選択条件になっているとみることができる。

しかし,令和2年度決算で執行率が80%を下回った目は9つあったのに,令和3年度の補正予算第1号では(項)裁判費の事件費目が1円も修正減少されていない。
同補正の各目明細書は,「諸謝金外11目」について追加額0,修正減少額0,差引額0と記載するにとどまり,修正減少されたのは人件費関係と庁費の一部だけである。
保証金は令和2年度から恒常的に執行率0であるにもかかわらず,実際に減額されたのは令和7年度の補正予算が最初である。

低執行が続いていることは,削る目を選ぶ条件にはなっているが,いつ削るかまでは決めていない。
本記事では,時期を決めた要因までは特定できていない。

第5 流用の理由は決算報告書に書かれている

令和6年度の裁判所所管では,予備費の使用額は0円であり,予算決定後の移替も0円である。
年度途中の異動は,目の間の流用が5件あるだけである。
減額された2目((項)最高裁判所の(目)庁費及び(項)下級裁判所の(目)法廷等器具整備費)から,増額された3目へ動いており,項ごとの合計はいずれも0である。

流用5件の一覧と,それが財政法33条1項及び2項の構造の現れであること,並びに(項)別の決算書では「流用等増△減額」欄が構造上0になることについては,裁判所の予算は誰が決めているのかで扱われている。
本記事が補うのは,その理由がどこに書かれているかである。

財政法33条4項は,同条1項ただし書又は2項の規定により移用又は流用した経費の金額について,歳入歳出の決算報告書においてこれを明らかにするとともに,その理由を記載しなければならないと定めている。
そのため,流用の理由を推測する必要はない。
令和6年度に増額された3目については,財務省の決算参照(科目別内訳)の備考欄に,次のとおり記載されている。
備考欄には,理由に続けて流用元の目と金額も記載されている。
減額された2目の側には,備考欄の記載がない。

流用等増△減額(円)流用元の目決算報告書に記載された理由
最高裁判所修習資金貸与金78,700,000庁費修習資金の貸与を受けた司法修習生が増加したため
最高裁判所裁判官等法服費3,934,000庁費被服費が高騰したため
下級裁判所国有財産管理処分庁費46,761,000法廷等器具整備費省庁別宿舎の解体撤去に要する経費が増加したため

財務省の決算CSVには,流用等増△減額の数字しか入らない。
理由まで必要なときは,決算参照のPDFを見ることになる。

流用で増額された(目)修習資金貸与金を含め,司法修習関係の目の執行率は高い。
修習給付金が98.1%,修習資金貸与金が99.0%,司法修習生研修委託費が98.4%,司法修習生旅費が81.9%である。
(項)裁判費の事件費目と比べると,はるかに実勢に近い予算になっている。

第6 歳入は予算の1.85倍である

令和6年度の裁判所主管の歳入は,歳入予算額72,873,836千円に対し,収納済歳入額が134,933,540,346円であった。
超過額62,059,704,346円のうち61,942,982,080円,すなわち99.8%が,(目)雑収という1つの目で生じている。

(目)雑収の収納済歳入額は,次のように推移している。

年度収納済歳入額(円)
令和2年度60,120,324,422
令和3年度64,772,985,765
令和4年度76,982,610,638
令和5年度102,130,583,851
令和6年度129,234,956,080

5年間で2.15倍になっており,令和6年度は裁判所主管の歳入の95.8%を占める。

財務省の決算参照の増減理由の欄には,相続人がいないために国庫に帰属した相続財産が理由として挙げられている。
もっとも,記載は「等のため」という形になっているから,129,234,956,080円の全部を相続財産に帰することはできない。
相続財産管理の実務については,国庫帰属した不動産のその後で民法959条による帰属後の管理と処分を扱っている。

第7 定員

1 総数と事務官の増員

令和6年度の概算要求における定員は25,570人であり,予算定員は25,539人である。
差引31人の減となる。

注目すべきは,裁判所事務官の増員が概算要求の51人から予算の20人になっていることである。
この数字は各目明細書には現れないが,国会会議録に残っている。

令和6年4月4日の参議院法務委員会において,最高裁判所長官代理者は,令和6年度の概算要求について,裁判手続等のデジタル化の検討及び準備,記録の管理の適切な運用の確保並びに裁判手続に関する各種法制の検討への関与といった事務に対応するため,裁判所事務官51人の増員を要求したと述べている。
同じ委員会の反対討論では,概算要求では51人の増員要求をしていたものが本予算では20人の増員要求にとどまったという指摘がされている。

2 定員法の説明と予算の説明

もっとも,定員法の説明と予算の説明は系統が異なる。

令和6年4月2日の参議院法務委員会における法務大臣の趣旨説明は,裁判所事務官を44人増員し,技能労務職員等を75人減員して,差引31人の減少になるとしている。
44人増と20人増は,差引が同じ31人減であり,差はどちらも24人である。
この31人は,裁判所職員定員法2条の員数の差(21,744人−21,713人)と一致する。
国会会議録と法令という別系統の資料が同じ値を示しているので,どちらかの読み違いであれば一致しない。
技能労務職員から事務官への振替と考えられるが,直接の記載は確認できていない。

裁判所職員定員法2条は,裁判官以外の裁判所の職員の員数を定めている。

もっとも,この員数は年度の初日には変わらない。
定員法の改正法は,毎年4月に入ってから施行されているので,年度の初めのうちは前年度の員数がなお効力を有する。
e-Gov法令検索で各時点の条文を引くと,次のとおりである。

年度年度当初の員数改正後の員数改正法の施行日
令和5年度21,775人21,744人令和5年4月14日
令和6年度21,744人21,713人令和6年4月12日
令和7年度21,713人21,666人令和7年4月18日
令和8年度21,666人21,540人令和8年5月7日

したがって,令和6年度の員数を1つ挙げるのであれば,令和6年4月12日以降の21,713人である。
令和6年4月1日から同月11日までは21,744人であった。

同条は執行官,非常勤職員,2か月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を除いているので,冒頭に掲げた予算定員25,539人とは基数が異なる。

もっとも,各目明細書の(目)職員俸給の積算内訳を足すと,両者の関係は数字で確かめられる。

職員俸給の人員裁判官秘書官一般職の俸給表の準用職員
最高裁判所1,114人15人15人1,084人
下級裁判所24,425人3,811人8人20,606人
合計25,539人3,826人23人21,690人

予算定員25,539人から裁判官3,826人を引くと21,713人になり,定員法2条の令和6年4月12日以降の員数と一致する。
(項)最高裁判所の裁判官15人は最高裁判所長官1人と最高裁判所判事14人であり,(項)下級裁判所の裁判官3,811人は定員法1条の高等裁判所長官8人,判事2,155人,判事補842人及び簡易裁判所判事806人の合計である。
最高裁判所の裁判官の員数が定員法1条に現れないのは,裁判所法5条3項が最高裁判所判事の員数を14人と定め,下級裁判所の裁判官の員数は別に法律で定めるとしているからである。
したがって,予算は改正後の員数で組まれている。
なお,同条が除いている非常勤職員は,各目明細書でも(目)非常勤職員手当として別に計上されている(医員51人,看護師30人)。
同法1条が定める下級裁判所の裁判官の員数は,令和5年4月14日に判事補が857人から842人になった後,令和8年9月7日まで動いていない(高等裁判所長官8人,判事2,155人,判事補842人,簡易裁判所判事806人)。
定員の長期的な推移については,裁判所職員の予算定員の推移にまとめてある。

第8 同じ表を自分で作る手順

本節は令和6年度の表を作るのに必要な範囲にとどめる。
どの資料をどう使い分けるかは,予算・決算の数値をどこから取るか-概算要求書,予算書,各目明細書,決算書及び決算検査報告の使い分けにまとめてある。

概算要求書及び各目明細書は,裁判所ウェブサイトの「裁判所の予算・決算・財務書類」に年度ごとに掲載されている。
概算要求書(説明資料)の入手先と構成については,最高裁判所の概算要求書(説明資料)で整理されている。

決算を目レベルまで分解するには,財務省の予算書・決算書データベースの決算CSVを使う。
令和6年度分のアドレスは https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/csv/DL202477001.zip であり,パスに現れる数字は年度の開始年の西暦である。
決算は当該年度のアーカイブ頁に掲載されるのであって,翌年度の頁ではない。

補正予算が何号まであったかは,https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/dlpdf/DL202421001.pdf の末尾の号数を変えて順に開けば確認できる。
存在しない号数は応答が404になるから,決算の歳出予算現額を当初予算額と補正予算額と前年度繰越額に分解する方法と合わせて,2つの経路で確かめられる。

流用の理由,明許繰越と事故繰越の別及び不用額の理由は,CSVではなく決算参照のPDFにある。
令和6年度分のアドレスは https://www.bb.mof.go.jp/server/2024/dlpdf/DL202477001.pdf である。
裁判所の会計事務そのものの資料については,裁判所の会計執務資料の三部作の解説がある。

なお,令和7年度の決算は,本記事の基準日である令和8年9月6日の時点では,財務省のデータベースに掲載されていない。
財政法39条1項は,内閣が歳入歳出決算に歳入決算明細書等を添えて翌年度の11月30日までに会計検査院へ送付しなければならないと定め,同40条1項は,会計検査院の検査を経た決算を翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とすると定める。
もっとも,40条1項は「常例とする」と定めるにとどまり,実際の提出はこれより早い。
令和2年度から令和6年度までの決算参照の表紙には,提出された国会の回次が印刷されている。

決算提出された国会召集日会期終了日
令和2年度第207回国会(臨時会)令和3年12月6日令和3年12月21日
令和3年度第210回国会(臨時会)令和4年10月3日令和4年12月10日
令和4年度第212回国会(臨時会)令和5年10月20日令和5年12月13日
令和5年度第216回国会(臨時会)令和6年11月28日令和6年12月24日
令和6年度第219回国会(臨時会)令和7年10月21日令和7年12月17日

5年度とも臨時会であり,いずれも翌年の秋から冬に開かれている。
40条1項が常例として挙げる「翌年度開会の常会」は,令和6年が第213回国会で1月26日召集,令和7年が第217回国会で1月24日召集である。
決算の提出は,いずれもその前に行われている。
令和7年度決算も,この形であれば令和8年の秋以降になると考えられる。
ただし,掲載時期を予告する資料は確認できていない。

第9 未確認事項

(目)雑収129,234,956,080円の内訳は確認できていない。
決算参照の増減理由が「等のため」という記載であるため,相続財産以外に何がどれだけ含まれるかは分からない。

令和7年度以降に義務的な性格の経費が減額された時期の理由も確認できていない。
執行率の低さは削る目を選ぶ条件になっているが,令和3年度には同種の減額がされていないから,時期を決めた要因は別にある。

令和8年度に(目)執行官旅費が29,966千円まで下げられた理由も確認できていない。
令和5年度から令和7年度までの支出済歳出額は32,374千円,33,571千円及び35,653千円であり,令和8年度の予算額はその全部を下回る。
実績の水準に合わせたという説明では足りない。
執行官の人数そのものの推移は,執行官数の推移にまとめてある。

第10 出典・参考資料

1 法令

財政法(昭和22年法律第34号)19条,20条,33条,37条,39条,40条
裁判所法(昭和22年法律第59号)5条
裁判所職員定員法(昭和26年法律第53号)1条,2条

条文はいずれもe-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/ )で取得した本文による。

2 予算書,決算書及び概算要求書

財務省「予算書・決算書データベース」(https://www.bb.mof.go.jp/hdocs/bxsselect.html )に掲載された,令和6年度一般会計歳入決算明細書及び歳出決算報告書(科目別内訳)のCSV版,令和6年度歳入歳出決算参照(科目別内訳),令和6年度一般会計補正予算(第1号)並びに令和2年度から令和8年度までの一般会計予算
裁判所ウェブサイト「令和6年度予算」(https://www.courts.go.jp/about/yosan_kessan/vcmsFolder_1269/vcms_1269.html )に掲載された,令和6年度歳出概算要求書,令和6年度一般会計歳出予算各目明細書及び令和6年度一般会計歳出予算補正(第1号)各目明細書
裁判所ウェブサイト「令和7年度予算」(https://www.courts.go.jp/about/yosan_kessan/07yosan/index.html )及び「令和8年度予算」(https://www.courts.go.jp/about/yosan_kessan/08yosan/index.html )に掲載された,令和7年度歳出概算要求書,令和8年度歳出概算要求書並びに各年度の一般会計歳出予算各目明細書
裁判所ウェブサイト「裁判所の決算」(https://www.courts.go.jp/about/yosan_kessan/kessan/index.html )に掲載された,令和6年度裁判所決算の概要及び令和6年度補正予算の主な事業の執行状況(一般会計)(令和6年度決算時点)

決算の金額は,CSVの裁判所所管の全行を合算し,歳出予算現額及び支出済歳出額の2つの等式で検算した数値である。

3 国会会議録

第213回国会 参議院法務委員会 第3号(令和6年4月2日)
第213回国会 参議院法務委員会 第4号(令和6年4月4日)

国会の会期は,衆議院ウェブサイトの国会会期一覧(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/kaiki.htm )による。
決算が提出された国会の回次は,各年度の決算参照の表紙の記載による。

いずれも国会会議録検索システム(https://kokkai.ndl.go.jp/ )で全文を取得し,発言番号を特定して確認した。

4 関連記事

裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったこと
予算・決算の数値をどこから取るか-概算要求書,予算書,各目明細書,決算書及び決算検査報告の使い分け
決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式
決算に書かれている「理由」の探し方-一般会計歳入歳出決算と決算参照で収録範囲が違う
最高裁判所の概算要求書(説明資料)
裁判所職員の予算定員の推移
裁判所の会計執務資料の三部作の解説
国庫帰属した不動産のその後
執行官数の推移
司法修習生研修委託費