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裁判所の令和4年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象,調査の基準日及び資料の対象期間

裁判所の予算については,概算要求,当初予算,補正予算及び決算という四つの数字が公表されている。
本記事は,このうち令和4年度分について,四つを同じ物差しで並べ,(項),(目)及び細目の水準まで下りて比較したものである。

調査の基準日は令和8年9月6日であり,資料の対象期間は令和3年8月(概算要求)から令和5年7月(決算)までである。
金額は,特記しない限り千円単位である。

なお,裁判所の予算がどのような手続で決まるのか,二重予算とは何か,附記が0件であることをどう読むのかについては,裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことで扱っている。
本記事は,そこと重ならないよう,令和4年度の数字の比較に絞る。
本記事はAIを用いて公表資料を突き合わせたものである。

2 四つの数字は別のものである

裁判所の予算を語るとき,次の四つは別の数字である。

①概算要求額は,令和3年8月に最高裁判所が作成し,内閣に送付する見積書類の額である。
②当初予算額は,令和4年3月に成立した予算の額である。
③補正後予算額(改予算額)は,当初予算に補正予算を加減した額である。
④決算額(支出済歳出額)は,実際に支出された額である。

「裁判所の予算は3228億円である」と書くとき,それが②なのか③なのかで12億円ずれる。
そして②と④では56億円ずれる。

3 結論

第一に,総額ではほぼ通っている。
要求本体323,553,561千円に対し,当初予算は322,813,550千円であり,充足率は99.77%である。

第二に,内訳では割れている。
裁判手続等のデジタル化関係経費は,要求2,126百万円に対し予算717百万円であり,33.7%である。
民事局が要求したIT化関係経費に限れば,1,542,261千円に対し248,946千円であり,16.1%である。

第三に,満額が付いた費目も使い切っていない。
(項)裁判費は13目のうち12目で要求額と予算額が一致するが,決算の執行率は,保証金が0.0%,身柄拘束者食糧費が10.6%,裁判旅費が55.6%である。

第四に,補正予算で積んだ金は,その年度に使われていない。
補正予算で付いたIT関係及び器具関係の1,157,490千円は,翌年度繰越額と一円単位で一致する。
年度内の支出はない。

これらをまとめると,令和4年度の裁判所予算は,総額では要求どおりに近いが,新規に構築する経費が落ち,付いた経費も予定どおりには執行されていない,という形になる。

第2 四系列の全体像

1 総額の比較

四つの数字を並べると,次のとおりである。

系列額(千円)要求本体比
概算要求(要求本体)323,553,561100.00%
概算要求(要望枠を含む)331,720,387
当初予算322,813,55099.77%
補正後予算324,021,001100.14%
決算(支出済歳出額)317,158,05498.02%

概算要求には,要求本体のほかに要望枠がある。
要望枠8,166,826千円を加えた331,720,387千円と比べると,当初予算の充足率は97.31%となる。
充足率を示すときは,どちらを分母にしたかを明示する必要がある。

補正後予算が要求本体を上回っているのは,補正予算で物価高騰に伴う光熱水料等が積まれたためである。

2 決算は三つに分かれる

決算では,予算がそのまま支出されるわけではない。

令和4年度の歳出予算現額332,138,774,222円は,次の三つに分かれる。

①支出済歳出額 317,158,054,053円
②翌年度繰越額 6,190,027,235円
③不用額 8,790,692,934円

翌年度繰越額は,決算報告書の備考欄で二つに分かれている。
明許繰越額が6,106,654,235円,事故繰越額が83,373,000円である。
繰越明許費は,あらかじめ国会の議決を経て翌年度に使うことを認められたものであり,事故繰越は,年度内に支出負担行為をしたが避けがたい事故のために支出が終わらなかったものである。
この内訳はCSVにはなく,決算報告書のPDFにしかない。

支出済歳出額を歳出予算現額で割った執行率は95.49%である。

3 二つの等式で拾い落としを検算する

決算資料を読むときは,次の二つの等式が成り立つことを確かめるとよい。

第一の等式は,歳出予算現額=支出済歳出額+翌年度繰越額+不用額である。
令和4年度では,317,158,054,053円+6,190,027,235円+8,790,692,934円=332,138,774,222円となり,一円単位で一致する。

第二の等式は,歳出予算現額=歳出予算額+前年度繰越額+予備費使用額+流用等増△減額+予算決定後移替増△減額である。
決算書の列は,この五項で組まれている。

さらに,先頭の歳出予算額も一つの数ではない。
決算報告書は,これを当初予算額,予算補正追加額,予算補正修正減少額及び予算移替増△減額の四つに分けて示している。
令和4年度の裁判所所管では,322,813,550,000円+4,477,464,000円△3,270,013,000円+0円=324,021,001,000円である。

もっとも,「予算決定後移替増△減額」が0であることは,移替がなかったことを意味しない。
移替は,予算が決まる時点までのものと決まった後のものとで,現れる欄が違うためである。
令和4年度の裁判所所管は,決算報告書の予算移替の欄も0であり,二か所ともに0である。

どの欄がどの階層で0になるかという仕組みは,決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式で扱っている。
本記事は,令和4年度の裁判所所管でその欄がいくらであったかだけを述べる。

令和4年度の裁判所所管では,予備費使用額,流用等増△減額及び予算決定後移替増△減額が,いずれも合計で0である。
したがって,322,813,550千円+1,207,451千円+8,117,773千円=332,138,774千円となり,こちらも一致する。

合計が0であっても,(目)まで下ろすと0でない欄がある。
令和4年度の裁判所では,流用等増△減額として(項)最高裁判所の(目)休職者給与に+28,096千円,(目)退職手当に△28,096千円が立っている。

理由は,決算報告書の備考欄に書かれている。
(目)休職者給与の欄には「休職者が多かったため」(目)退職手当から流用した旨が記載されている。
そして,(項)最高裁判所の不用額については「定年退職者数及び自己都合等退職者数が予定を下回ったこと等により、退職手当を要することが少なかったこと等のため」とある。
すなわち,退職者が見込みより少なく余った金を,休職者が見込みより多かった費目へ回した,という動きである。

この備考欄はCSVには入っておらず,決算報告書のPDFにしかない。
流用の有無だけであればCSVで足りるが,何が起きたのかはPDFを開かないと分からない。

行数と流用の件数は一致しない。
一回の流用が出す側と受ける側の二行を作るため,令和4年度の二行は一件の流用である。

予備費使用額の欄については,所管によって欄の意味が変わる注記が付くことがある。
そこで,裁判所所管について二つの点を確かめた。
第一に,裁判所所管の頁にはその注記が付いていない。
第二に,同じ決算報告書に載っている予備費の使用の内訳を通して見ても,裁判所は一度も現れない。
すなわち,令和4年度に裁判所所管へ予備費が使われた事実はない。

第二の等式が合わないときは,補正予算の号数を拾い落としているか,前年度繰越額以下の四項目のいずれかを見落としている。
逆に,この等式が閉じれば,その年度の補正が何本あったかを資料の側から確認したことになる。

第3 概算要求から当初予算へ

1 項別の充足率

(項)別に充足率を出すと,次のとおりである。

(項)充足率
最高裁判所102.39%
下級裁判所98.75%
検察審査費100.00%
裁判費92.66%
裁判所施設費110.60%
裁判所予備経費100.00%

最高裁判所と裁判所施設費は,要求額を上回っている。
要求額より予算額が大きい費目があるときは,まず組替えを疑うのが安全である。
概算要求の段階と予算の段階とで,同じ経費が別の(項)又は別の事項に整理し直されることがあるためである。

2 主要経費別の充足率

主要経費別に見ると,次のとおりである。

経費充足率
民事事件関係97.3%
刑事事件関係99.0%
家庭事件関係98.8%
施設整備関係82.9%
裁判手続等のデジタル化関係33.7%

事件関係の経費は,いずれも97%を超えている。
これに対し,裁判手続等のデジタル化関係だけが33.7%であり,突出して低い。

3 落ちたのは三件だけである

細目まで下りると,何が落ちたかが特定できる。

民事局が要求したIT化関係経費は1,542,261千円であり,当初予算は248,946千円である。

差の1,293,315千円の内訳は,次の三件である。

①e事件管理システムの先行開発等 1,112,100千円
②要件定義及び調達支援等 105,397千円
③mints改修等 75,818千円

①から③までの合計は1,293,315千円であり,差額と一円単位で一致する。
すなわち,落ちたのはこの三件だけであり,それ以外は付いている。

他方,ウェブ会議の運用支援経費,Microsoft365のライセンス料,セキュリティソフトの利用料など,既に動いている仕組みを維持するための経費は,ほぼ満額で通っている。

これから構築するものが落ち,既に稼働しているものが残る,というのが令和4年度の査定の形である。
民事裁判のデジタル化の内容そのものについては,榎本光宏 最高裁判所デジタル審議官「裁判所のデジタル化の現状と将来(民事訴訟を中心に)」の論評及びmints後の裁判記録の保存期間で扱っている。

第4 当初予算から補正予算へ

1 補正は二本あり,裁判所所管は第二号だけである

令和4年度の一般会計補正予算は二本ある。
第1号は令和4年5月17日に閣議決定され,同月31日に成立した。
第2号は同年11月8日に閣議決定され,同年12月2日に成立した。

このうち,裁判所所管の計上があるのは第2号だけである。
第1号の歳出は127行あるが,その所管は財務省,経済産業省及び国土交通省の三つだけであり,裁判所は一行もない。

なお,第1号の冊子を「裁判所」で検索すると一箇所ヒットする。
しかし,これは巻末の「コード番号について」という凡例であり,所管コードの一覧(03 裁判所)である。
計上ではない。

予算書のPDFを語句検索して所管名がヒットしても,それを直ちに計上と読むことはできない。
凡例,コード表及び目次には,全所管が並ぶからである。
計上の有無は,明細の行数で数える必要がある。

2 補正第二号の中身

補正第2号における裁判所所管は,追加4,477,464千円,修正減少3,270,013千円,差引1,207,451千円である。
追加額のうち最大のものは,物価高騰に伴う光熱水料1,458,713千円である。

IT関係の名称が付いているのは,次の二件だけである。

①司法情報システム緊急開発費 276,308千円(全額が繰越明許費)
②裁判支援機器緊急整備費 11,228千円

そして,委員手当は3,105千円の減額補正である。
減らした理由は,決算の側に書かれている(第5の3)。
補正予算は増額だけを行うものではない。
同じ補正の中で,増える費目と減る費目とがある。

3 補正で付いた金は年度内に使われていない

補正予算で付いたIT関係及び器具関係の三件は,313,306千円,567,876千円及び276,308千円であり,合計1,157,490千円である。
この1,157,490千円は,決算上の翌年度繰越額と一円単位で一致する。
すなわち,年度内の支出はない。

年度の途中で積んだ経費が,その年度に使われるとは限らない。
補正予算の額を「その年度に使われた額」と読むと,実態を誤ることになる。

第5 決算

1 項別の執行率

決算額を歳出予算現額で割ると,次のとおりである。

(項)決算÷現額
最高裁判所96.68%
下級裁判所98.55%
検察審査費88.31%
裁判費87.27%
裁判所施設費71.26%
裁判所予備経費0.00%

裁判所施設費の執行率が71.26%と低いのは,工事が翌年度へ繰り越されることがあるためである。

2 裁判費の目別

(項)裁判費について,査定で減らされたのは(目)裁判庁費だけである。
15,498,077千円から13,947,433千円へ,1,550,644千円の減であり,90.0%である。
残る12目は,要求額と予算額が一致している。

ところが,決算の執行率を見ると,次のようになる。

(目)執行率
保証金0.0%
身柄拘束者食糧費10.6%
少年補償金22.2%
少年補導委託費40.6%
刑事補償金52.4%
裁判旅費55.6%

要求どおり満額が付いた費目であっても,9割を使い切った目は一つもない。

3 不用額の理由

不用額の理由は,決算報告書に(項)単位で記載されている。
令和4年度の裁判所所管では,六つの(項)のうち五つに理由が付いている。
(項)裁判所予備経費は,予算額八,000千円が全額不用であるが,理由の記載はない。

ここで資料を取り違えないようにしたい。
不用額の理由が載る資料は二つあり,収録の範囲が違う。
令和4年度の裁判所所管でいえば,歳入歳出決算の表に現れるのは最高裁判所,下級裁判所,裁判費及び裁判所施設費の四つで,歳出決算報告書には(項)検察審査費を加えた五つの理由がある。

(項)検察審査費の三三,三七八,九五六円は,狭いほうの資料には現れない。
しかし,歳出決算報告書の側には理由が書かれている。
「検察審査会議に係る支給額が予定を下回ったこと等により、検察審査員旅費を要することが少なかったこと等のため」である。
両方に載っていないのは,(項)裁判所予備経費だけである。

二つの資料の収録範囲がどう違うか,何を基準に載せているかは,決算に書かれている「理由」の探し方-一般会計歳入歳出決算と決算参照で収録範囲が違うで扱っている。
本記事は,令和4年度の裁判所所管について六つのうち五つに理由が付いているという事実を述べるにとどめる。

(項)不用額(円)理由として名指しされた(目)
最高裁判所2,459,344,014退職手当
下級裁判所2,385,142,885委員手当
裁判費2,546,745,042裁判庁費
裁判所施設費1,358,082,037施設整備費
検察審査費33,378,956検察審査員旅費

理由の文言は,次のとおりである。

(項)裁判費……「契約価格が予定を下回ったこと、業務内容の見直しによる業務計画の変更をしたこと等により、裁判庁費を要することが少なかったこと等のため」
(項)下級裁判所……「調停事件及び労働審判事件の処理件数が予定を下回ったこと等により、委員手当を要することが少なかったこと等のため」
(項)裁判所施設費……「契約価格が予定を下回ったこと及び事業規模の縮小による事業計画の変更をしたことにより、施設整備費を要することが少なかったこと等のため」

ここに二つのことが見える。

第一に,(目)裁判庁費は,概算要求の段階で唯一減らされた費目であり,決算では不用額の理由として名指しされている。

ただし,名指しされた理由は,執行率が低いからではない。
同目の執行率は92.0%であり,(項)裁判費の一三目のうち高いほうから三番目である。
名指しされるのは,額が大きいためである。

(項)裁判費の不用額二,546,745,042円のうち,(目)裁判庁費が一,041,320,620円を占める。
これは四〇.九%であり,一三目のうち最大である。
執行率が0.0%の(目)保証金の不用額は一〇,000,000円で,占率は〇.四%にすぎない。

すなわち,率が低い目と,不用額が大きい目とは別である。
決算の理由が名指しするのは後者であり,(目)裁判庁費は,査定で一,550,644千円減らされたうえで,なお(項)裁判費の不用額の四割を生んでいる。

なお,執行率と不用率は,足しても一〇〇%になるとは限らない。
翌年度繰越があると,その分だけ差が出るためである。

(項)裁判費の一三目のうち,翌年度繰越があるのは(目)裁判庁費だけである。
その額は276,308千円で,現額の一.七%に当たる。
残る一二目は繰越が0であるから,執行率と不用率を足すと一〇〇%になる。

この276,308千円は,第4で挙げた補正予算で付いた器具関係の額と同じである。
補正で積んだ金が年度内に使われず,翌年度へ回ったものが,(目)裁判庁費の繰越として現れている。

第二に,(目)委員手当は,補正予算で三,105千円の減額補正を受けた費目である。
その理由が,決算では「調停事件及び労働審判事件の処理件数が予定を下回ったこと」と書かれている。
補正の段階で減らし,それでもなお使い残した,という順序が読める。

もっとも,理由の文言はいずれも「等」を伴う定型である。
(項)裁判費の理由は,令和2年度,令和4年度,令和5年度及び令和6年度の決算報告書で一字も違わない。
いずれも「契約価格が予定を下回ったこと、業務内容の見直しによる業務計画の変更をしたこと等により、裁判庁費を要することが少なかったこと等のため」である。
これは本記事が五年度分を突き合わせて確かめたものである。

ただし,まったく動かないわけでもない。
令和3年度だけは「契約価格及び庁舎維持管理における光熱水料が予定を下回ったこと等により、裁判庁費を要することが少なかったこと等のため」となっており,光熱水料が名指しされている代わりに,業務計画の変更が落ちている。
五年度のうち四年度が同文で,一年度だけ違う。

したがって,ここから読めるのは支出が伸びなかった大まかな向きであって,その年度に固有の事情ではない。
理由が書かれていることと,理由が分かることとは別である。

4 査定の結果と執行の結果は別である

これらの経費は,事件が起きて初めて支出されるものである。
刑事補償金は刑事補償法に基づく補償が決定されたときに,少年補償金は少年の保護事件に係る補償に関する法律に基づく補償が決定されたときに,それぞれ支出される。
保証金は,訴訟上の担保に関する経費である。

したがって,予算額は「起きるかもしれない事件」の見積であり,執行率の低さがそのまま無駄を意味するわけではない。
他方で,要求どおり付いたことが,そのまま手当ての十分さを意味するわけでもない。

もっとも,これらの目は,年度によって大きく振れるものと,ほとんど振れないものとに分かれる。
刑事補償金は,令和4年度から令和6年度まで歳出予算現額が565,701千円で同じであるのに,執行率は令和4年度が52.4%,令和5年度が42.9%,令和6年度が96.8%である。
令和2年度は56.7%,令和3年度は67.2%であり,五年度で42.9%から96.8%まで振れている。

これに対し,保証金は,令和2年度から令和6年度まで五年度連続で,歳出予算現額10,000千円に対する支出済歳出額が0円である。
身柄拘束者食糧費は9.0%から16.0%,裁判旅費は46.5%から55.9%,少年補導委託費は32.4%から41.7%の範囲に収まっている。

したがって,単年度の執行率をその目の性格として一般化することはできない。
令和4年度の刑事補償金が52.4%であったことは,令和4年度に決定された補償の額がその程度であったという事実にとどまる。

査定の結果(要求額と予算額の差)と,執行の結果(予算額と決算額の差)は,別の現象である。
記事や意見書で「予算が足りない」と書くときは,どちらの差を問題にしているのかを区別する必要がある。

第6 定員

概算要求の段階では,家庭裁判所調査官2人及び裁判所事務官65人の増員要求であり,速記官の振替減及び定員合理化減との差引きはプラスマイナスゼロであった。

成立したのは,家庭裁判所調査官2人増,裁判所事務官39人増及び技能労務職員等67人減であり,差引26人減である。
要求と成立の差は,事務官の26人だけである。
減員側は,要求時と同じである。

この差引26人減は,条文の側からも確かめられる。
裁判所職員定員法2条は,裁判官以外の裁判所の職員の員数を定めている。
ただし,同条は「執行官、非常勤職員、二箇月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者」を除いている。
この員数は,令和4年4月21日まで21,801人であり,令和四年法律第三十号により21,775人となった。
その差は26人であり,国会答弁から得た数字と一人単位で一致する。

ただし,同法の改正法は令和4年4月22日に公布され,同日から施行されている。
したがって,令和4年度の四月一日から四月二十一日までは,改正前の21,801人であった。
「令和4年度の定員」は,年度を通じて一つの数ではない。

あわせて,同法1条の判事補の員数は897人から857人になっている。
ただし,裁判官の定員は本記事の主題ではない。

また,同条の員数は予算定員とは基数が違う。
右のとおり除かれる者があるためである。

なお,概算要求定員表の「新規増員」欄の数字と,国会答弁で示された人数とは一致しない。
これは欄の集計の切り口が違うためであり,どちらかが誤っているわけではない。

裁判官の配置定員については,下級裁判所の裁判官の配置定員(令和7年4月)―平成28年との比較と現在員との違いで扱っている。

第7 数字を読むときの前提

1 「削られた」とは書けない

財政法19条は,内閣が国会,裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合に,その送付に係る歳出見積についてその詳細を歳入歳出予算に附記し,あわせて国会がこれらの機関に係る歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記することを求めている。
附記の対象は,最高裁判所が内閣へ送付した歳出見積であって,各目明細書その他の資料ではない。
令和2年度から令和8年度までの当初予算書及び補正予算書(当初7本,補正10本)には,この附記が一件もない。

もっとも,この「一件もない」は,数えた冊のすべてが同じ重みを持つという意味ではない。
補正予算10本のうち,令和2年度補正(第1号),令和4年度補正(第1号)及び令和8年度補正(第1号)の三本は,裁判所所管の計上そのものがない。
それぞれ全体で884行,127行及び55行あるが,所管が裁判所である行は0行である。

裁判所所管が一行も載っていない冊に裁判所の附記がないのは当然であるから,この三本の0件には証拠力がない。
附記の有無を語れるのは,当初予算書七本と,裁判所所管の計上がある補正予算書七本の,合わせて十四本である。

したがって,本記事では「内閣が裁判所の要求を削減した」とは書かず,「概算要求額に対する予算額の充足率」という事実の記述にとどめている。
「減額」は財政法19条の法律用語であるから,単なる差を指して用いることは避けている。

2 「納得していた」とも書けない

他方で,附記が0件であることから,最高裁判所が予算に納得していたと読むこともできない。

予算決算及び会計令11条の2は,最高裁判所長官が同令9条の規定による減額の通知を受けた場合において増額の必要を認めたときに,その減額された歳出見積に係る予定経費増額要求明細書を作製し,予定経費要求書とともに財務大臣へ送付しなければならないと定めている。
同令11条の3第1項は,財務大臣がその送付を受けたときに,財政法19条に基づく附記事項を作成しなければならないと定めている。

増額要求明細書は,単独で送るものではなく,予定経費要求書に添えて送るものである。
増額を求めるかどうかの判断は,予定経費要求書を作る時点で最高裁判所の側にあると考えられる。
ただし,条文が定めているのは送付の態様であって,判断の時点そのものではない。

すなわち,附記に至るまでには,最高裁判所が明細書を出すという判断が挟まる。

もっとも,明細書を出さなければ附記が生じないかどうかは,条文の読み方が分かれる。
財政法19条自体は,内閣が減額した場合に附記することを定めるだけで,明細書の送付を要件としていない。
明細書を要件にしているのは予算決算及び会計令11条の3である。
したがって,政令が法律を具体化していると読めば附記は明細書が出たときに限られ,19条の義務は減額があれば生じ政令は事務の割振りにすぎないと読めばそうはならない。
本記事は,このどちらが正しいかを決めていない。
いずれの読みでも「附記が0件であることから最高裁判所が納得していたとは読めない」という結論は動かないためである。
この点の詳細は,裁判所の予算は誰が決めているのかで扱っている。

3 予算書の「要求額」欄は概算要求額ではない

予算書本体のうち裁判所所管の部分は,「令和4年度裁判所所管 甲号 予定経費要求書」という表題である。
これは,財政法20条2項が各省各庁の長に作製と送付を求めている予定経費要求書である。
この「要求額」欄に入っているのは,政府が国会へ提出した予算案の額であって,8月末の概算要求額ではない。

令和4年度でいえば,この欄の額は322,813,550千円であり,当初予算額と一致する。
概算要求額と比較するつもりで予算書の「要求額」欄を引くと,同じ数字を二回並べることになる。

財務省の予算書・決算書データベースには,令和7年度に限り国会提出時の版が別に置かれている。
これを成立後の版と突き合わせると,欄の性格が分かる。

裁判所所管については,歳出79行及び歳入17行が完全に一致し,「要求額」欄の合計はいずれも335,192,439千円である。
すなわち,提出の時点で既にこの額が入っており,成立によって動いていない。

もっとも,動かないのは裁判所所管だからである。
同じ二つの版を全所管で突き合わせると,額が違う行がある。
国会が修正した所管では,提出時の額と成立額が分かれる。
所管をまたぐ比較は,予算・決算の数値をどこから取るかで扱っている。

したがって,この欄が指す額は版によって変わる。
提出時の版では政府が国会へ提出した予算案の額,成立後の版では成立額である。
国会が修正しなかった所管では,両者が一致する。
令和7年度の裁判所所管が一致したのは,この所管が修正の対象でなかったためである。

いずれの版でも,8月末の概算要求額ではない。
「予定経費要求書という書類だから成立額が入る」という説明は,条文からは出てこない。
令和4年度の裁判所所管については,この欄の額と当初予算額とが一致することを実際に確かめている。

第8 この記事の数字を再現する手順

本記事の数字は,次の資料から取得したものである。

①概算要求額は,最高裁判所が公表する歳出概算要求書及び要望一覧による。
②当初予算額及び補正予算額は,財務省の予算書・決算書データベースによる。
③決算額は,同データベースの歳入歳出決算及び決算参照書による。
④(項)及び(目)の内訳は,裁判所所管の歳出予算各目明細書による。
⑤細目の内訳は,最高裁判所の概算要求書(説明資料)による。

このうち⑤は,裁判所ウェブサイトには掲載されておらず,情報公開請求により取得したものである。
その内容及び位置付けについては,最高裁判所の概算要求書(説明資料)で扱っている。

財務省の予算書・決算書データベースでは,年度別のアーカイブから,当初予算,補正予算及び決算のPDF並びにCSVを取得することができる。
(項)別及び(目)別の金額はCSVに収録されているため,表計算ソフトで所管を絞り込めば,本記事の各表を再現することができる。

第9 未確認事項

第一に,最高裁判所が公表する概算要求書が,財政法17条1項により内閣に送付された見積書類そのものであるかは,確認できていない。
概算要求書の公表自体は,法令上の義務ではない。

第二に,令和4年度に,予算決算及び会計令9条2項により減額された旨が明らかにされたかどうかは,公表される仕組みがない。
同条1項の通知は,財務大臣が概算の閣議決定を経たときに各省各庁の長へ行うものであり,2項はその通知の中で減額された旨を明らかにさせるものであって,独立した「減額の通知」があるわけではない。
いずれも公表を義務づける規定がなく,公表資料にも載っていない。
行政文書の開示請求という経路は残っているから,「外部からは確認できない」とまでは書いていない。

第三に,(項)裁判費以外の(目)別の決算執行率は,本記事では扱っていない。

第四に,令和3年度は概算要求の作り方が他の年度と異なる。
「要求額は、基本的に、対前年度同額といたします」とする方針の下で作られた年である。
その方針を示した資料は,「令和3年度予算の概算要求の具体的な方針について(令和2年7月21日閣議 財務大臣発言要旨)」である。
令和4年度の方針が「令和4年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について(令和3年7月7日閣議了解)」という閣議了解の形で示されているのに対し,令和3年度は閣議における財務大臣の発言要旨という形で示されている。
同資料は,「概算要求の段階で予算額を決めることはせず、その仕組みや手続きをできる限り簡素なものとします」とも述べている。
したがって,令和3年度の概算要求額と当初予算額を並べても,他の年度と同じ意味には読めない。

第10 出典・参考資料

1 法令

①財政法(昭和二十二年法律第三十四号)17条,19条,20条 e-Gov法令検索
②予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)9条,11条の2,11条の3 e-Gov法令検索
③裁判所職員定員法(昭和二十六年法律第五十三号)1条,2条 e-Gov法令検索
④刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)
⑤少年の保護事件に係る補償に関する法律(平成四年法律第八十四号)

2 予算書,決算書その他の財務省資料

財務省「予算書・決算書データベース」により,次の資料を確認した。

①令和4年度一般会計予算(1,082頁)
②令和4年度一般会計補正予算(第1号)(84頁)
③令和4年度一般会計補正予算(第2号)(746頁)
④令和4年度歳入歳出決算(項別)及び決算参照書(目別)
⑤裁判所所管歳出予算各目明細書(令和4年度当初分及び同補正第2号分)
⑥令和2年度から令和6年度までの歳入歳出決算(目別。執行率の年度間比較に用いた。)
⑦令和4年度歳出決算報告書(910頁。流用の理由,翌年度繰越額の内訳及び予備費の注記は,この資料にしかない。)
⑧令和4年度歳入歳出決算(114頁。不用額及び不用理由の表は38頁。一項五億円以上のものに限られる。)

⑦「令和3年度予算の概算要求の具体的な方針について」(令和2年7月21日閣議 財務大臣発言要旨)
⑧「令和4年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(令和3年7月7日閣議了解)

3 裁判所の公表資料

①最高裁判所「令和4年度歳出概算要求書」(125頁)
②最高裁判所「令和4年度予算の概要」
③最高裁判所「令和4年度概算要求書(説明資料)」(819頁。裁判所ウェブサイト未掲載。情報公開請求により取得)

4 国会会議録

第208回国会参議院法務委員会(令和4年4月14日,裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審議) 国会会議録検索システム

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