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裁判所の令和5年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象,基準日及び資料の対象期間

この記事は,裁判所所管の一般会計について,令和5年度の①概算要求,②当初予算,③補正予算及び④決算の四つを並べ,どこで金額が動き,最終的にいくらが使われずに終わったのかを整理するものである。
対象期間は令和5年度(令和5年4月1日から令和6年3月31日まで)であり,経年の比較に必要な範囲で令和2年度から令和6年度までの決算を用いる。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,数値は同日から翌7日までに取得した。
本記事は,公表資料をAIで機械的に集計し,その結果を整理したものである。

金額は原則として千円単位で示し,決算の欄については財務省の原表に合わせて円単位で示す。
(項)別及び(目)別の数値は,裁判所ウェブサイトの「決算の概要」には掲載されていないため,財務省の歳出決算報告書によった。

裁判所の予算がどのような手続で決まるのか,内閣が最高裁判所の要求を減額したときにどうなるのか(二重予算),そして令和2年度から令和8年度まで財政法19条の附記が0件であることについては,別の記事で詳しく扱っている。
本記事は手続論には立ち入らず,令和5年度に実際に動いた金額を追うことに絞る。
手続の全体像は裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことを参照されたい。

2 四つの系列

令和5年度の裁判所所管の金額は,次のとおり動いた。

系列金額(千円)概算要求等額に対する割合
① 概算要求等額329,816,061
② 当初予算額322,216,78097.70%
③ 補正後の改予算額326,876,43799.11%
④ 決算(支出済歳出額)309,396,12293.81%

①の概算要求等額は,要求本体321,123,794千円に「重要政策推進枠」の要望額8,692,267千円を加えたものである。
要望額は要求本体の枠外に置かれるものであるから,両者を区別せずに一つの「要求額」として扱うと,充足率が実際より低く見える。

②と①の差は7,599,281千円である。
もっとも,この差を「内閣が最高裁判所の要求を削った」と書くことはできない。
理由は前記の別記事で述べたとおりであり,本記事では差があるという事実の記述にとどめる。

3 この記事で新たに示すこと

要求と当初予算だけを並べると,令和5年度は要求の97.70%が付いた年ということになる。
しかし決算まで見ると,実際の支出は要求の93.81%にとどまる。
そして,使える予算333,066,464千円のうち,13,238,876千円が翌年度に繰り越され,10,431,466千円が使われずに終わっている。

とりわけ,補正予算で(項)裁判費に積まれた3,555,186千円は,その年度に1円も執行されていない。
この金額は,決算に記載された財政法14条の3第1項の繰越明許費の額と1円単位で一致する。

第2 決算はどの欄でできているか

1 金額の欄

決算の金額の欄は,次の九つである。

区分金額(円)
歳出予算額(=補正後の改予算額)326,876,437,000
前年度繰越額6,190,027,235
予備費使用額
流用等増△減額
予算決定後移替増△減額
歳出予算現額333,066,464,235
支出済歳出額309,396,122,470
翌年度繰越額13,238,876,033
不用額10,431,465,732

ただし,**この九つが揃って並ぶのは,財務省が公表するCSVだけである。**印刷された二つの決算書は,同じ令和5年度でも金額の欄が八つずつしかなく,しかも欠けている欄が違う。一般会計歳入歳出決算の科目別表は歳出予算現額を載せず,決算参照の科目別内訳は予算決定後移替増△減額を載せない。
本記事が以下でCSVによっているのは,このためである。
資料によって欄の数が違うことそのものについては,予算・決算の数値をどこから取るかで扱っている。

〈歳出予算現額=支出済歳出額+翌年度繰越額+不用額〉は1円単位で成立する。

歳出予算現額の側は,本来は五項の足し算である。
すなわち,歳出予算額,前年度繰越額,予備費使用額,流用等増△減額及び予算決定後移替増△減額の五つを足したものが歳出予算現額である。

令和5年度の裁判所所管では,後の三項が(項)のレベルでいずれも0であるため,結果として〈歳出予算額+前年度繰越額=歳出予算現額〉という二項の式でも1円単位で閉じる。**閉じるのは三項が0だからであって,この二項の式が一般に成り立つわけではない。**他の所管では後の三項に値が入る。
もっとも,(目)のレベルまで下りると,(項)の内部で流用が行われている(第5の5で述べる)。

九つの欄が何を意味するか,二本の恒等式がどのように働くか,そして令和2年度から令和6年度までの裁判所所管の九欄を並べるとどう見えるかについては,決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式で扱っている。
本記事は令和5年度の数値を四つの系列と突き合わせることに絞る。

2 執行率92.89%

支出済歳出額を歳出予算現額で割った執行率は92.89%である。
繰越率は3.97%,不用率は3.13%となる。

ここで注意を要するのは,分母をどれに取るかで数字の意味が変わることである。
当初予算額を分母にすれば96.02%,補正後の改予算額を分母にすれば94.65%,前年度繰越を含む歳出予算現額を分母にすれば92.89%となる。
前年度から受け入れた6,190,027千円は当年度の予算措置ではないが,当年度に使える金額ではあるから,「使い残しがどれだけあったか」を見るときは歳出予算現額を分母にするのが実態に近い。

第3 (項)別の執行率

(項)も(目)も,法律が直接に定めた区分ではない。
予算決算及び会計令14条1項は,歳出予算及び継続費の(項)の区分を財務大臣が定めるものとしている。
同条2項は,歳出予算及び継続費の(目)の区分及び各目の細分を,各省各庁の長が財務大臣に協議して定めるものとしている。
財政法20条2項が最高裁判所長官を各省各庁の長に含めているから,以下に並ぶ六つの(項)は財務大臣が定めたものであり,第5で扱う(目)は最高裁判所長官が財務大臣に協議して定めたものである。

1 執行率は項によって割れる

(項)別に分解すると,執行率は59.86%から98.96%まで開く。

補正後前年度繰越歳出予算現額支出済翌年度繰越不用額執行率
最高裁判所76,425,061316,78476,741,84570,577,4133,288,1782,876,25491.97%
下級裁判所205,593,200567,876206,161,076204,017,5592,143,51798.96%
検察審査費281,032281,032250,95330,07989.30%
裁判費28,399,418276,30828,675,72621,859,8174,168,6562,647,25376.23%
裁判所施設費16,169,7265,029,05921,198,78512,690,3815,782,0422,726,36259.86%
裁判所予備経費8,0008,0008,0000%
326,876,4376,190,027333,066,464309,396,12213,238,87610,431,46692.89%

単位は千円である。
裁判所予備経費を除き,各項でも〈補正後+前年度繰越=支出済+翌年度繰越+不用額〉が1円単位で成立する。

執行率が最も低いのは裁判所施設費の59.86%であるが,その主たる原因は繰越であって不用ではない。
同項は前年度から5,029,059千円を受け入れ,さらに5,782,042千円を翌年度へ送っている。
庁舎の新営及び大規模修繕は複数年度にまたがるため,単年度の当初予算額だけを見ても施設整備の規模は測れない。

裁判費の執行率76.23%も,翌年度繰越4,168,656千円が主な理由である。
その内訳は第4で述べる。

下級裁判所は翌年度繰越が0で,執行率は98.96%である。
同項は人件費が中心であり,繰り越す余地が乏しい。
裁判所の予算のうち,どの職種に何人分の人件費が計上されているかについては,裁判所職員の予算定員の推移が参考になる。

2 裁判所予備経費は全額が不用である

(項)裁判所予備経費8,000千円は,令和5年度に1円も使われていない。
それでも毎年同額が計上されるのは,置くこと自体が法律上の義務だからである。

裁判所法83条は,1項で「裁判所の経費は、独立して、国の予算にこれを計上しなければならない。」と定め,2項で「前項の経費中には、予備金を設けることを要する。」と定めている(引用部分の読点は条文の原文のままである。)。
すなわち,使われるかどうかにかかわらず計上しなければならない性質の経費である。
決算に0が並ぶことをもって「使われていない予算がある」と指摘する対象にはならない。

第4 補正予算で積んだ35億円は,その年度に1円も使われていない

1 令和5年度の補正は第1号だけである

令和5年度の裁判所所管の補正は第1号のみであり,差引で4,659,657千円の増額であった。
このことは,当初予算額322,216,780千円に補正第1号の差引額を加えると,決算の「歳出予算額」欄326,876,437千円と1円単位で一致することから確認できる。
一致する以上,第2号以降の補正は存在しない。

補正の内訳は次のとおりである。

補正差引(千円)積まれたものの中身
裁判費+3,555,186全額が(目)裁判庁費の「司法情報システム緊急開発費」
裁判所施設費+1,538,630施設整備費+1,524,396(各所新営及び特別修繕),施設施工旅費+8,593,施設施工庁費+5,641
最高裁判所+7,330追加340,042と修正減少△332,712の差引(人件費の増減)
下級裁判所△441,489追加827,032と修正減少△1,268,521の差引(人件費の減額補正)

補正というと増額の印象があるが,下級裁判所については人件費が減額補正されている。
補正予算を「上積み」とだけ理解すると,この動きを見落とす。

2 繰越の区分で確定する

令和5年度の翌年度繰越額13,238,876,033円は,財務省の決算において財政法上の区分ごとに内訳が示されている(繰越の区分そのものと,年度をまたぐ連鎖については決算はどの欄でできているかで扱っている)。

区分金額(円)
財政法14条の3第1項の繰越明許費最高裁判所3,288,177,641
裁判費3,555,186,000
裁判所施設費5,782,042,392
(小計)12,625,406,033
財政法42条ただし書の事故繰越裁判費613,470,000
合計13,238,876,033

裁判費の繰越明許費3,555,186,000円は,補正予算で裁判費に積まれた3,555,186千円と1円単位で一致する。
すなわち,補正予算で措置された「司法情報システム緊急開発費」は,その年度に1円も執行されず,全額が令和6年度へ繰り越された。

なお,裁判費の翌年度繰越4,168,656千円のうち残る613,470,000円は事故繰越である。
これは当初予算分又は前年度繰越分の執行が年度内に終わらなかったものであり,裁判所所管で事故繰越が立っているのは裁判費だけである。

裁判手続のデジタル化に関する予算の全体像については,令和8年度概算要求に基づく,裁判手続のデジタル化の説明を参照されたい。

3 繰越明許費が年度をまたいで連鎖している

令和5年度の前年度繰越6,190,027千円のうち276,308千円は(項)裁判費に入っており,これは令和4年度補正(第2号)の「司法情報システム緊急開発費」と同額である。
同じ名称の繰越明許費が,令和4年度補正から令和5年度へ,令和5年度補正から令和6年度へと連鎖している。

繰越の連鎖は,年度をまたいで次のように閉じる。

区分金額
令和4年度決算の翌年度繰越額6,190,027,235円
令和5年度決算の前年度繰越額6,190,027,235円
令和5年度決算の翌年度繰越額13,238,876,033円
令和6年度の歳出予算現額から当初及び補正を差し引いた額13,239百万円

補正予算の報道で「デジタル化に○○億円」と示されても,その金額がその年度に執行されるとは限らない。
繰越明許費として措置されている場合には,翌年度以降の執行になる。

4 退職手当が32億円繰り越された理由

(目)退職手当の翌年度繰越は3,231,659,641円である。
当初予算では,裁判所所管で繰越明許費に指定されていたのは(項)裁判所施設費だけであった。
補正予算の各目明細書には,改令和5年度予算額のうち繰越明許費として「退職手当(定年引上げに伴う勤務意思確認の翌年度以降に係る定年退職年度前の退職手当に限る。)」6,233,644千円が指定された旨が記載されている(事項名は原文のままである。)。

すなわち,補正で新たに繰越明許費に追加指定されたものであり,実際に繰り越されたのは指定額の51.8%である。
背景には国家公務員の定年引上げ(令和5年4月から)があるものと考えられるが,因果関係は資料に明記されていない。

第5 (目)別に見ると実務に近い数字が出る

1 翌年度繰越がある目は六つだけである

翌年度繰越額13,238,876,033円は,次の六つの(目)に集中している。

歳出予算現額(円)支出済(円)翌年度繰越(円)
裁判所施設費施設整備費20,108,046,34012,014,705,0005,478,020,773
裁判費裁判庁費23,113,105,00017,720,778,5264,168,656,000
最高裁判所退職手当15,755,678,00012,216,397,0973,231,659,641
裁判所施設費施設施工庁費1,021,628,895646,775,547285,240,507
最高裁判所情報処理業務庁費2,815,847,0002,446,986,11656,518,000
裁判所施設費施設施工旅費69,110,00028,900,62218,781,112

情報処理業務庁費の繰越56,518,000円は,補正予算で同目に積まれた56,518千円と一致する。
裁判費の裁判庁費と同じ型であり,補正で積んだ額がそのまま翌年度へ送られている。

2 不用額の大きい目

(項)別の不用理由は,財務省の決算に原文が記載されている。

不用額(円)決算に記載された理由
最高裁判所2,876,254,377基礎年金給付に要する費用が予定を下回ったので、基礎年金等国家公務員共済組合負担金を要することが少なかったこと等のため
下級裁判所2,143,517,385契約価格が予定を下回ったので、法廷等器具整備費を要することが少なかったこと等のため
裁判費2,647,253,147契約価格が予定を下回ったこと、業務内容の見直しによる業務計画の変更をしたこと等により、裁判庁費を要することが少なかったこと等のため
裁判所施設費2,726,361,674契約価格が予定を下回ったので、施設整備費を要することが少なかったこと等のため

四つの項のうち三つで「契約価格が予定を下回った」ことが主たる理由とされている(表中の引用部分の読点は,いずれも決算の原文のままである。)。

この別表は,決算の本文に「1項5億円以上のものについて所管別、組織別及び項別の不用額及び不用理由を示せば、下表のとおりである。」(数字は原文のままである。)と記されているとおり,**不用額が5億円以上の項に限って掲載される**ものである。
したがって,検察審査費の不用額30,079,149円と裁判所予備経費の8,000,000円がこの別表にないのは,掲載の基準額に達していないからであって,理由が公表されていないからではない。

**現に,検察審査費の理由は別の資料に載っている。**歳出決算報告書には備考欄があり,ここに(項)ごとの不用理由が記載されている(**この欄はCSVには収録されておらず,PDFにしかない**)。備考欄には,五億円という掲載の基準の記載が無く,これを大きく下回る検察審査費についても理由が記載されている。

不用額を生じたのは、検察審査会議に係る支給額が予定を下回ったこと等により、検察審査員旅費を要することが少なかったこと等のため

上の表の四つの理由も,歳出決算報告書には冒頭に「不用額を生じたのは、」を付した形で同じ文言が載っている。**すなわち,この二つの資料は掲載の範囲が違うだけで,内容は同じである。**

理由がどちらの資料にも記載されていない(項)は,**裁判所予備経費だけである。**予算額8,000,000円が全額不用となっているが,その理由は書かれていない。

もっとも,**備考欄にも事実上の下限があるとみられる。**裁判所所管で理由が無いのは裁判所予備経費だけであり,同項は裁判所所管で唯一,不用額が1,000万円を下回る(項)である。
この下限を五年度にわたって数えた結果は,決算に書かれている「理由」の探し方にある。

**そして,備考欄の掲載の基準は,決算のどこにも記載されていない。**歳入歳出決算の別表が「1項5億円以上」と自ら述べているのとは違う。

不用額の大きい(目)は次のとおりである。裁判所所管の(目)は七五あり,そのうち不用額の大きい順に一〇を挙げた。この一〇の(目)で,不用額10,431,465,732円の七五.2%を占める。

歳出予算現額(円)不用額(円)不用率
裁判所施設費施設整備費20,108,046,3402,615,320,56713.0%
裁判費裁判庁費23,113,105,0001,223,670,4745.3%
最高裁判所基礎年金等国家公務員共済組合負担金8,145,935,000966,418,00011.9%
下級裁判所法廷等器具整備費1,905,268,000583,305,71030.6%
下級裁判所委員手当6,749,527,000520,631,5087.7%
下級裁判所庁費5,622,756,000511,101,9899.1%
裁判費諸謝金2,059,409,000392,502,94419.1%
最高裁判所修習給付金2,393,879,000384,026,09916.0%
裁判費刑事補償金565,701,000323,192,39957.1%
裁判費委員等旅費1,365,456,000321,030,18923.5%

(項)別の不用理由に挙げられた費目は,いずれもその項で最大の不用額を出した(目)と一致する。

なお,支出済歳出額を歳出予算現額で割った比率だけを並べると,中身の違う(目)が同じものに見える。

支出済÷現額翌年度繰越率不用率
(項)裁判費・裁判旅費55.9%0.0%44.1%
(項)裁判所施設費・施設整備費59.8%27.2%13.0%

二つの(目)は支出の割合がほぼ同じであるが,裁判旅費は繰越が0円で残りがすべて不用となったのに対し,施設整備費は四分の一以上を翌年度へ繰り越しており,不用は一三.0%にとどまる。
**繰越がある(目)とない(目)とでは,同じ比率の意味が違う。**

3 刑事補償金は,4年続けて大きく余った後に一転している

(目)刑事補償金は,令和5年度に565,701,000円のうち242,508,601円しか支出されておらず,不用率は57.1%である。
令和2年度から令和6年度までを並べると,次のようになる。

年度歳出予算現額(円)支出済(円)不用率
令和2年度641,027,000363,606,92643.3%
令和3年度506,960,000340,477,36332.8%
令和4年度565,701,000296,481,52847.6%
令和5年度565,701,000242,508,60157.1%
令和6年度565,701,000547,642,5253.2%

令和2年度から令和5年度までは,4年続けて三割から六割が使われずに終わっている。
ところが令和6年度は一転してほぼ満額が執行されている。

令和7年度予算では刑事補償金が365,339千円へ減額されているが,この減額と不用実績との因果関係は,いずれの公表資料にも記載されていない。
4年続いた不用実績と減額査定とは整合するものの,直後の令和6年度に実需が跳ねていることからすると,単年度の実績を理由とする説明は成り立ちにくい。
減額後の予算で足りたかどうかは,令和7年度決算の公表を待つほかない。

4 委員手当は,予算額が動かないまま不用率だけが振れる

(目)委員手当は,調停委員,調停官,専門委員,精神保健審判員等に支給される手当である。
令和5年度は6,749,527,000円のうち520,631,508円が不用となり,不用率は7.7%であった。

年度歳出予算現額(円)支出済(円)不用率
令和2年度6,703,781,0005,715,556,30014.7%
令和3年度6,752,417,0006,429,837,8944.8%
令和4年度6,749,312,0006,118,600,1009.3%
令和5年度6,749,527,0006,228,895,4927.7%
令和6年度6,741,160,0006,419,922,6464.8%

歳出予算現額は五年間ほぼ67億4千万円で動いていないのに,不用率は4.8%から14.7%まで振れる。
手当は開かれた期日の回数と人数によってしか支給されないから,予算額は上限にすぎない。
「予算が付いた」ことと「その分の期日が開かれた」ことは別である。

概算要求の段階で民事調停委員手当の要求額が減り続けていることについては,最高裁判所の概算要求書(説明資料)で扱っている要求書の様式から追うことができる。

5 (目)別の不用理由は公表されていない

財務省の歳出決算報告書の備考欄に記載されるのは,①(項)別の不用理由と,②(目)別の流用の理由の二つだけである。
(目)別の不用理由は記載されていない。
したがって,修習給付金16.0%,委員等旅費23.5%,諸謝金19.1%といった不用の理由は,公表資料からは分からない。

他方,流用の理由は読み取ることができる。

流用金額(円)備考欄に記載された理由
最高裁判所(目)児童手当から(目)職員基本給へ14,319,000職員俸給等に不足を生じたため
最高裁判所(目)児童手当から(目)職員諸手当へ14,005,000通勤手当等に不足を生じたため
最高裁判所(目)児童手当から(目)休職者給与へ14,945,000休職者が多かったこと等のため
下級裁判所(目)職員基本給から(目)職員諸手当へ10,251,000通勤手当に不足を生じたため

(項)最高裁判所の三件は,いずれも(目)児童手当からの流用である。
三件の合計43,269,000円は,(目)児童手当の流用等増△減額△43,269,000円と一致する。
すなわち,児童手当の使い残しが,職員の俸給,通勤手当及び休職者給与の不足に充てられている。

(項)別の表では流用等増△減額が全項0であるが,これは項の中で流用が相殺されているためである。
(目)まで下りないと,項内の資金の移動は見えない。
なお,流用は(項)の内部でしか行われていない。(項)をまたぐ移動は令和5年度の裁判所所管には存在しない。

第6 この記事の数値をどこから取ったか

裁判所ウェブサイトが公表する「令和5年度裁判所決算の概要」に載っているのは,裁判所所管の組織計についての四つの欄だけである。
本記事が扱う(項)別及び(目)別の数値は,そこには無い。

このため,本記事は財務省の予算書・決算書データベースによった。
令和5年度の歳出決算報告書はCSVで公開されており,裁判所所管は75行である。
このCSVから積み上げた(項)別の集計は,財務省が公表する歳入歳出決算のPDFの(項)別表と1円単位で一致する。
もっとも,**(項)別の不用理由と(目)別の流用の理由が載る備考欄は,CSVには収録されておらず,PDFにしかない**(第5の2及び第5の5)。

裁判所の会計に関する内部資料の全体像については,裁判所の会計執務資料の三部作の解説で扱っている。

資料の探し方そのもの――どの資料に何が載っているか,同じ数値が複数の粒度で公表されていること,欄の数が資料によって違うこと,ファイル名の規則――については,予算・決算の数値をどこから取るかで扱っている。
本記事は令和5年度の数値を追うことに絞り,取り方には立ち入らない。

第7 未確認事項

公表資料では確認できず,本記事で断定していない事項は次のとおりである。

① 裁判費以外の項について,補正額のうちその年度に支出された額。
裁判所施設費の補正1,538,630千円は,前年度繰越5,029,059千円と混在するため,当年度に執行された分と繰り越された分を分離できない。
裁判費については金額が1円単位で一致したため確定できた。

② 令和5年度の事業別の執行状況。
裁判所ウェブサイトに掲載されている「補正予算の主な事業の執行状況」は令和6年度分及び令和7年度分だけであり,令和5年度分は公表されていない。
そのため,事業名を単位とする追跡は令和5年度についてはできない。

③ (目)別の不用理由。
第5の5のとおり,公表資料には記載されていないことを確認した。

④ 刑事補償金の減額査定と不用実績との因果関係。
いずれの資料にも記載がない。

⑤ 退職手当の歳出予算現額が令和5年度だけ低いことが定年引上げの端境期によるものかどうか。
繰越明許費の名称からの推測にとどまる。

⑥ 令和5年度の政策区分別(デジタル化,民事,刑事,家庭,施設)の決算額。
決算は(項)及び(目)までであり,概算要求の概要が用いる政策区分とは対応しない。

第8 出典・参考資料

1 法令

裁判所法(昭和22年法律第59号)83条
財政法(昭和22年法律第34号)14条の3,19条,20条,42条
予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)14条
いずれもe-Gov法令検索により令和8年9月6日現在の条文を確認した。

2 裁判所が公表する予算・決算資料

令和5年度一般会計歳出概算要求書(最高裁判所。総表,明細表及び定員表。全115頁)
令和5年度「重要政策推進枠」要望一覧(最高裁判所)
令和5年度一般会計歳出予算各目明細書(最高裁判所。第211回国会提出)
令和5年度一般会計歳出予算補正(第1号)各目明細書(最高裁判所。第212回国会提出)
令和5年度裁判所決算の概要(最高裁判所)

3 財務省が公表する予算書・決算書

令和5年度一般会計歳入決算明細書及び歳出決算報告書(科目別内訳)(財務省。CSV。(項)別及び(目)別の決算。裁判所所管は75行。**備考欄は収録されていない**)
令和5年度一般会計決算参照(財務省。第216回国会提出。全926頁。裁判所所管は第83頁から第89頁まで。歳出決算報告書の**備考欄**に,(項)別の不用理由と(目)別の流用の理由が記載されている)
令和5年度一般会計歳入歳出決算(財務省。第216回国会提出。全114頁。繰越額の区分及び不用額の理由の原文)
令和5年度予算書・決算書関連情報(財務省。年度別の一覧)

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