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逮捕状を持った警察に居留守を使うとどうなるか-自宅への立入り,ドアの開扉及び不在の場合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,警察官が逮捕状を執行するため自宅を訪ねた場面を対象とし,①在宅しているのに応答しない場合,②施錠されたドアを開けて立ち入る場合,③実際には本人が不在である場合を区別して説明するものである。捜索差押許可状による証拠物の捜索や,逮捕後の身柄手続は,必要な範囲で両者との違いだけを扱う。

結論として,居留守を使えば警察が立ち入れず,逮捕状の期限が切れるという関係にはない。警察官は,逮捕のために必要があり,その住居内に被疑者が現在する高度の蓋然性を基礎付ける合理的な事情があるときは,逮捕状とは別の捜索状がなくても住居内へ入り,被疑者を捜索できる。ただし,逮捕状があるだけで,あらゆる住居へ入り,どのような方法でもドアを破壊し,証拠を自由に探せるわけではない。

本記事は,令和8年8月16日現在の法令を前提とする一般的な制度説明である。個別事件では,令状の種類,記載内容,執行時に警察官が把握していた情報及び現場で採られた措置を個別に確認する必要がある。

第2 逮捕状で自宅に立ち入る法的根拠

1 刑事訴訟法220条1項1号による被疑者の捜索

刑事訴訟法220条1項1号は,検察官,検察事務官又は司法警察職員が逮捕状により被疑者を逮捕する場合において必要があるときは,人の住居又は人の看守する邸宅,建造物若しくは船舶内に入り,被疑者を捜索できると定めている。同条3項は,この処分について別の令状を必要としないとするため,玄関を開けないこと自体によって住居への立入りを阻止できるものではない。

もっとも,この権限の目的は,逮捕状の名宛人である被疑者を発見して逮捕することにある。逮捕状だけを根拠として,事件の証拠を求めて引出し,収納箱又は端末の内容を一般的に捜索できるわけではない。逮捕の現場における捜索・差押えは同条1項2号の別の要件に基づき,住居内の証拠を対象とする計画的な捜索は原則として捜索差押許可状の問題となる。

2 被疑者が現在する高度の蓋然性

札幌地方裁判所令和3年11月4日判決(令和2年(わ)第934号)は,逮捕状により住居等へ入って被疑者を捜索するには,被疑者が現在する高度の蓋然性が必要であり,立入り時点でこれを判断するに足りる合理的な事情がなければならないとした。同事件では,警察官がホテル客室に被疑者がいると判断して立ち入ったものの,実際には人違いであり,確認可能であった防犯カメラ映像を十分に確認しなかったこと等から,高度の蓋然性を基礎付ける合理的事情がないとして立入りを違法とした。

この判決は,立ち入った結果として被疑者がいなかったことだけで,遡って立入りが違法になるとはしていない。判断の基準時は立入り時であり,その時点で把握していた訪問先,出入り,車両,目撃情報その他の事情が問題となる。他方,住民票上の住所であることや呼び掛けに応答しないことだけで,常に高度の蓋然性が認められると一律にいうこともできない。

3 本人の自宅以外の住居への立入り

刑事訴訟法220条1項1号は「被疑者の住居」に限定せず,「人の住居」等と定めている。したがって,親族宅,知人宅又はホテル客室であっても,被疑者が現在する高度の蓋然性を基礎付ける合理的事情があり,逮捕のために必要であれば,立入りの対象となり得る。反対に,第三者の住居であることは権限を当然に否定しないが,令状の名宛人と異なる居住者の利益が関係するため,所在確認と令状呈示を適切に行う必要性が高い。

第3 施錠されたドアを開けられる場合

1 錠を外すなどの必要な処分

刑事訴訟法222条1項は,同法220条による捜索について同法111条1項前段を準用している。このため,警察官は,逮捕のために住居内の被疑者を捜索する際,錠を外し,封を開き,その他必要な処分をすることができる。管理者から鍵を借りて開ける方法,補助錠を外す方法又は物理的な開扉措置は,この規定との関係で検討される。

「必要な処分」は無制限な権限ではない。被疑者が在室する高度の蓋然性,応答を求めた状況,逃走その他の切迫性,より侵害の小さい開扉方法の有無,建物及び居住者に生ずる損害並びに逮捕状執行の実効性を踏まえ,目的達成に必要で社会通念上相当な範囲でなければならない。犯罪捜査規範126条も,逮捕に当たり必要な限度を超えて実力を行使しないよう注意し,あらかじめ時期及び方法等を考慮することを求めている。

2 マスターキー解錠及びドア破壊に関する裁判例の射程

最高裁判所第一小法廷平成14年10月4日決定(平成14年(あ)第413号,刑集56巻8号507頁)は,捜索差押許可状の執行を察知されれば覚醒剤を短時間で破棄隠匿されるおそれがあった事案で,令状呈示に先立ちホテル客室をマスターキーで開けて入室し,直後に令状を示した措置を,必要かつ社会通念上相当として適法とした。

大阪高等裁判所平成6年4月20日判決(平成5年(う)第793号,高刑集47巻1号1頁)は,捜索差押許可状の執行について,施錠して立入りを拒む場合には,必要な限度で錠又は扉を破壊して立ち入ることも許され得ると述べた。同事件で現実に採られた方法は,宅配業者を装って居住者に開扉させるものであり,財産的損害を生じさせない穏当な方法であったこと等から適法とされた。

いずれも証拠物を対象とする捜索差押許可状の事件であり,逮捕状による被疑者捜索を直接判断したものではない。ただし,両者に共通して刑事訴訟法222条1項及び111条1項の「必要な処分」が問題となるため,開扉方法の必要性及び相当性を考える限度で参考になる。これらの裁判例から,「逮捕状があり応答がなければ,直ちにどのようなドア破壊も許される」という結論を導くことはできない。

3 居留守と実力による妨害は別である

在室しながら応答しないという不作為と,警察官に暴行又は脅迫を加えることは区別される。応答しないことだけから直ちに公務執行妨害罪が成立するとはいえないが,適法な職務執行中の警察官に暴行又は脅迫を加えれば,刑法95条1項の公務執行妨害罪が問題となり得る。ドアを押し合うなどの実力行使は,人身事故や追加の法的問題を生じさせるため,令状の適法性に異議がある場合も,現場で実力により対抗することとは分けて対応する必要がある。

第4 逮捕状はいつ誰に示されるか

1 逮捕される被疑者への呈示

刑事訴訟法201条1項は,逮捕状により被疑者を逮捕するには,逮捕状を被疑者に示すよう求めている。例外として,令状を所持しないため示すことができず,急速を要するときは,被疑事実の要旨と逮捕状が発せられている旨を告げて執行できるが,令状はできる限り速やかに示さなければならない。

2 住居の捜索を受ける人への呈示

逮捕される被疑者への呈示とは別に,刑事訴訟法220条1項1号による住居内の捜索には,同法222条1項を通じて同法110条が適用される。札幌地裁令和3年11月4日判決は,この場面では逮捕状が捜索許可状に代わる機能を果たすため,捜索を受ける居住者に逮捕状を示す必要があるとした。

同判決は,居住者が警察官に気付いて室内へ戻ったため立入り前の呈示が困難であった可能性を認めつつ,警察官が入室して居住者らを着席させた後は呈示に支障がなかったとして,最後まで呈示しなかった捜索を違法とした。したがって,現場の危険又は切迫性により呈示より先に入室する余地があるとしても,呈示義務そのものが消えるわけではない。

第5 実際に本人が不在だった場合

1 不在の結果と立入りの適法性

本人が実際に不在であれば,その場で逮捕状を執行して身体を拘束することはできない。もっとも,立入り時点に本人が現在する高度の蓋然性を基礎付ける合理的事情があれば,捜索の結果として不在が判明したことだけで,当初の立入りが直ちに違法になるわけではない。これは札幌地裁令和3年11月4日判決が明示したところである。

他方,本人がいないことを確認し,逮捕のための被疑者捜索という目的が失われた後まで,逮捕状だけを根拠として証拠探しを継続することはできない。警察官が別に有効な捜索差押許可状を所持していれば,本人の不在にかかわらず,その令状が定める場所及び物の範囲で捜索・差押えが続くことがある。このため,現場では逮捕状だけなのか,捜索差押許可状も執行されているのかを区別する必要がある。

2 逮捕状の有効期間と再発付

刑事訴訟規則300条は,令状の有効期間を発付日から7日とし,裁判所又は裁判官が相当と認めるときは7日を超える期間を定められるとしている。刑事訴訟法200条により,有効期間を過ぎた逮捕状では逮捕できず,令状を返還しなければならない。

有効期間内に逮捕できなかったからといって,その後の逮捕が常に断念されるわけではない。同一の被疑事実について逮捕状を再請求する場合,現行の刑事訴訟法199条3項は,以前の請求又は発付があったことを裁判所へ通知するよう求めており,裁判官が改めて審査する。札幌地裁令和3年11月4日判決の事案でも,最初の逮捕状の有効期間内に被疑者を逮捕できず,同じ被疑事実について2回再発付されていた。

反対に,逮捕状の発付後に逮捕の必要がなくなれば,有効期間が残っていても執行すべきではない。犯罪捜査規範103条は,その後の事情により逮捕状による逮捕の必要がないと認められるに至ったときは任意捜査によるべきものとし,逮捕状は有効期間内でも直ちに裁判官へ返還するよう定めている。したがって,1回の訪問時に不在であったことと,逮捕状の効力又は逮捕の必要性が失われることは同じではない。

3 警察が再度訪問し,又は別の場所で執行する可能性

逮捕状は,通常,自宅だけを執行場所として指定するものではない。本人が不在であれば,警察官が有効期間内に再度訪問し,所在が判明した別の場所で執行し,又は必要性が続く場合に再発付を請求する可能性がある。居留守によって1回の接触を遅らせても,そのことだけで逮捕を免れる法的効果は生じない。職場で逮捕される場合に会社へ知られる経路及び逮捕後の欠勤,懲戒,解雇については,逮捕されたら会社にばれるか-職場での逮捕,欠勤,懲戒及び解雇(AI作成)を参照されたい。

第6 逮捕状と捜索差押許可状の区別

逮捕状は人の身体を拘束するための令状であり,捜索差押許可状は特定の場所,身体又は物を捜索し,特定の物を差し押さえるための令状である。逮捕状には,逮捕のため必要な限度で住居へ入り被疑者を探す権限が法律上付随するが,それは証拠捜索の一般的な許可ではない。

実際の現場では,逮捕状と捜索差押許可状が同時に執行されることがある。その場合,本人が不在で逮捕状をその場で執行できなくても,別の捜索差押許可状に基づく捜索が可能なことがある。反対に,警察官が逮捕状しか所持していない場合,逮捕対象者がいないと判明した後の捜索範囲は同じではないため,令状の名称,対象者,捜索場所及び差押対象物の有無を混同してはならない。

第7 本人及び家族が確認しておく事項

逮捕状の執行に直面した本人又は同居家族は,現場の安全を損なわない範囲で,次の事項を確認・記録することが考えられる。

  • ① 警察官の所属,訪問日時及び人数を確認する。
  • ② 逮捕状だけか,捜索差押許可状その他の令状もあるかを区別し,呈示された令状の対象者及び対象範囲を確認する。
  • ③ 誰が応答し,警察官がいつ,どのような方法で開扉し,いつ誰に令状を示したかを,執行を妨げない方法で記録する。
  • ④ 錠又はドアに損傷が生じた場合は,執行後に写真,修理見積書及び警察から交付された書面を保存する。
  • ⑤ 逮捕された本人は,被疑事実の要旨と弁護人選任権の告知を受け,供述内容を決める前に弁護人への連絡を求める。家族も,逮捕先が判明した段階で弁護士に相談できる。

弁護士への連絡又は到着を待つことが,有効な逮捕状の執行を当然に停止させるわけではない。もっとも,令状の種類,立入り時点の情報,呈示の経過,開扉方法及び捜索範囲を早期に整理すれば,執行の適法性や逮捕後の対応について具体的な検討が可能となる。

第8 関連記事

早朝に自宅で逮捕状が執行される理由,夜間制限及び逮捕後の流れについては,おはよう逮捕とは何か-早朝の自宅逮捕と逮捕状のルール(AI作成)を参照されたい。

通常逮捕,緊急逮捕及び現行犯逮捕の要件並びに逮捕後72時間の手続については,被疑者の逮捕(AIリライト)を参照されたい。弁護人の選任及び接見については,弁護人を参照されたい。

出典・参考資料

1 法令・規則

2 裁判例

3 文献

  • ① 三好一幸『令状審査の理論と実務〔第三版〕』(司法協会,令和6年)39頁~61頁
  • ② 伊丹俊彦・合田悦三編集代表『逐条実務刑事訴訟法』(立花書房,平成30年)PDF413頁~432頁