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共犯者を同じ弁護士が弁護する場合の利益相反――国選・私選の違いと対応(AI作成)

第1 同じ弁護士が共犯者双方を弁護できるか

1 この記事の対象

本記事は,日本法上の共犯事件において,1人の弁護士が複数の被疑者又は被告人を同時に弁護するときの利益相反を扱う。主な問題は,同一弁護が許される条件,認否が一致している場合の扱い,国選弁護と私選弁護の違い,受任後に対立が判明した場合の対応である。

利益相反の有無は,単に全員が同じ罪名で捜査又は起訴されているかではなく,一方に有利な弁護活動が他方に不利となるかによって判断する。本記事は一般的な制度及び実務上の判断要素を説明するものであり,特定の事件について受任の可否又は採るべき弁護方針を示すものではない。

2 先に示す結論

共犯者間に重要な事実又は処分上の利害の対立があるときは,同じ弁護士が双方を十分に弁護することはできない。否認と自白が対立する場合だけでなく,犯行の発案,主導性,実行行為,取得利益等の量刑事情が対立する場合も含まれる。

他方,共犯事件であることだけから直ちに利益相反が確定するわけではない。ただし,捜査の進展,証拠開示,処分交渉又は公判準備によって対立が生じやすいため,将来の重要な対立を合理的に排除できない場合は,最初から各人に別の弁護士を付けることが安全な原則である。

第2 利益相反を規律する法令と会規

1 弁護人選任権と同一弁護人の問題は別であること

日本国憲法37条3項は刑事被告人が資格を有する弁護人を依頼する権利を保障し,刑事訴訟法30条1項は被告人又は被疑者がいつでも弁護人を選任できると定める。しかし,弁護人を選任できることと,利害の対立する複数人が同じ弁護人を選べることは別問題である。弁護人の選任と権限を考えるときも,各依頼者に対する忠実な弁護が同時に可能かを先に確認する必要がある。

利益相反を避ける目的は,弁護人が一方を守るために必要な主張,反対尋問,証拠請求又は交渉を,他方への不利益を理由に控える事態を防ぐことにある。形式上弁護人が付いていても,このような自己抑制が生じれば,各被疑者又は被告人が独立した弁護を受ける利益は損なわれる。

2 国選弁護人には刑事訴訟規則29条5項が直接適用されること

刑事訴訟規則29条5項は,「被告人又は被疑者の利害が相反しないときは,同一の弁護人に数人の弁護をさせることができる。」と定める。同項は国選弁護人の選任に関する規定であり,同一の国選弁護人を付けられるのは,利害が相反しない場合に限られる。

したがって,裁判所は選任時の資料だけでなく,選任後に判明した供述の食い違い,争点及び量刑事情にも目を向ける必要がある。本人らが同じ弁護人を希望し,又は異議を述べないことは考慮事情になり得るが,客観的に生じた重大な対立を当然に解消するものではない。

3 私選弁護人には弁護士職務基本規程が重要であること

弁護士職務基本規程28条3号は,依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件を,原則として弁護士が職務を行い得ない事件に含める。同号には双方の同意による例外があるが,32条は受任時に辞任の可能性その他の不利益を説明することを求め,42条は受任後に現実の利害対立が生じたときに各依頼者へ事情を告げ,辞任その他の適切な措置を採ることを求めている。刑事弁護については,46条の最善弁護義務も問題となる。

同意を得たという一事だけで,その後の確認が不要になるわけではない。対立の内容が受任時に具体化していなかった場合や,後から協力供述,責任転嫁又は量刑上の競合が生じた場合には,当初の同意を根拠として双方弁護を続けることはできない。

また,弁護士法23条は弁護士に職務上知り得た秘密を保持する権利と義務を課している。一方から得た秘密を他方の弁護に利用できず,かといって利用しなければ他方の最善の弁護ができないという状態は,弁護士の守秘義務と忠実な弁護の双方に関わる。

4 会規違反と訴訟法上の効果を分けること

弁護士職務基本規程に反するかという問題と,行われた訴訟行為が無効になるか,又は判決が破棄されるかという問題は区別しなければならない。前者は受任,辞任及び懲戒に関する職業倫理上の問題であり,後者は適用される訴訟規則,防御権の侵害,裁判所による是正の要否及び判決への影響を検討する問題である。

最高裁令和3年4月14日第二小法廷決定は,共同事務所の利益相反を扱った民事事件であり,共犯弁護を直接判断したものではない。同決定は,弁護士職務基本規程違反が懲戒原因となり得ることと,その違反だけで訴訟行為の効力が左右されることを分けており,両者を同一視しないための参考になる。

第3 利益相反が生じる具体的な場面

1 認否だけでなく量刑と処分の利害まで確認すること

利益相反の確認では,次の対応関係が特に重要である。

場面対立の例確認すべき弁護活動
認否・共謀一方が共謀を認め,他方が否認する供述の信用性を争う反対尋問,共謀を否定する証拠請求
役割・量刑発案者,主導者,実行行為者又は利益取得者を互いに相手方とする各人に有利な事実の主張立証,量刑資料の提出
捜査協力一方が他方に関する供述又は証拠の提供によって処分上の利益を求める供述助言,協議・合意,捜査機関との交渉
被害弁償一方の責任割合を小さくする説明が他方の負担を重くする示談条件,弁償額,謝罪内容の調整
上訴方針一方の控訴理由が他方の供述又は確定判断を攻撃する控訴趣意,再審を見据えた主張,記録の利用

判断の中心は,各人の説明に相違があるという形式ではなく,その相違が弁護活動の選択を実質的に制約するかである。軽微な記憶の差まで直ちに利益相反と扱う必要はないが,一方に有利な主張を尽くすと他方の犯罪成立,役割又は量刑評価を悪化させる関係にあるときは,同一弁護の継続は困難になる。

2 認否の一致と本人の同意だけでは足りないこと

全員が公訴事実を認めていても,誰が計画し,誰が実行を主導し,誰が利益を多く得たかは量刑を左右する。したがって,「全員が認めているから対立はない」と判断することはできない。

私選弁護について双方の同意を検討するときは,対立し得る具体的事項,別の弁護士を選ぶ選択肢,共有できない秘密,後に辞任が必要となる可能性及び辞任に伴う不利益を説明する必要がある。他方,刑事訴訟規則29条5項には本人の同意による例外が規定されていないため,国選弁護で本人らが同意していることだけを許容根拠にはできない。

3 協議・合意制度と企業事件では対立が早く表面化すること

刑事訴訟法350条の2以下の協議・合意制度では,被疑者又は被告人が他人の刑事事件について供述,証拠提出その他の協力を行うことと引換えに,検察官が一定の処分をすることが合意の対象となる。合意には弁護人の同意が必要であり,協議も弁護人を含めて行うため,一方が他方の事件への協力によって利益を受ける可能性があるときは,各人に独立した助言をする必要性が特に高い。

企業事件で会社が役職員の弁護士費用を負担する場合も,費用負担者と依頼者を区別しなければならない。会社,役職員相互又は退職者の間で,調査への協力,責任の所在及び処分交渉の利害が分かれる可能性があるため,誰を依頼者として誰の秘密と利益を守るのかを受任時に明確にする必要がある。

第4 同一国選弁護人に関する主要裁判例

1 福岡高裁昭和25年11月21日判決

福岡高裁昭和25年11月21日判決(高刑集3巻4号579頁)は,窃盗の共犯として起訴された2人のうち,一方が公訴事実を認め,他方が共謀を全面的に否認した後も,同一の国選弁護人が双方を弁護した事案である。

同判決は,当時の刑事訴訟規則29条2項に反するものとし,利害が相反する各被告人の審理を分離しても双方弁護の違法は解消しないとして,原判決を破棄した。現在は同じ内容の規律が同条5項に置かれている。審理を別々に進める措置だけでは,同じ弁護人が双方に忠実でなければならない問題や,双方から得た秘密の問題が残ることを示す裁判例である。

2 名古屋高裁平成9年9月29日判決

名古屋高裁平成9年9月29日判決(平成9年(う)第129号,高刑集50巻3号139頁)は,2人の被告人が公訴事実を認め,同一の国選弁護人にも異議を述べなかったものの,第一審で両名に死刑が言い渡された事件である。両名の供述は,殺人及び強盗殺人の発案,決行の主導,致死行為並びに取得金の分配等について相互に対立していた。

同判決は,一方に有利な事情を主張立証すれば他方に不利となる関係があり,同一弁護人が各被告人に有利な主張立証をしなかったことを重視した。その上で,両名の利害は相反し,刑事訴訟規則に反する同一選任が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとして,両名について原判決を破棄し,事件を差し戻した。

この判決の射程は,利益相反を否認事件だけに限定しなかった点にある。認否と同一弁護人への希望が一致していても,刑の選択に重大な影響を与える役割分担が対立し,弁護活動が現実に抑制された場合には,同一国選弁護は許されない。

3 裁判例から直ちに一般化できないこと

福岡高裁判決と名古屋高裁判決は,いずれも重要な対立が現実化し,同一弁護による弁護活動の制約と判決への影響が認められた事案である。これらから,共犯事件であれば常に別の弁護人でなければならないという形式的な結論までは導けない。

反対に,認否が一致し,異議がないという事情だけから同一弁護を許容することもできない。事件ごとに,対立する事項の重要性,一方の主張が他方へ与える不利益,弁護活動が抑制される危険及び裁判結果への影響を具体的に確認する必要がある。

第5 受任前と受任直後の確認手順

1 各人から独立して事情を聴くこと

最初の確認では,①各人の認否及び共謀の成否,②発案,準備,実行及び利益分配に関する説明,③他の共犯者の供述を争う可能性,④捜査協力又は協議・合意を希望する可能性,⑤被害弁償の負担及び方針,⑥会社,家族その他の第三者が弁護士費用を負担する場合の依頼者関係を,各人ごとに聴取する必要がある。

共同面談から始めると,他の共犯者の面前で自由に説明できず,対立を見落とすおそれがある。また,同一弁護士が受任判断のために双方から秘密を得た後は,一方だけの弁護へ移ること自体が難しくなるため,情報を取得する前に相談者,依頼者及び秘密の取扱いを明確にする必要がある。

2 低負担の資料で対立の有無を更新すること

受任時点の説明だけで判断を固定せず,まず各依頼者から独立して事情を聴き,依頼者が現に保有する書類を確認する。起訴後又は証拠開示が進んだ後は,入手できた起訴状,公判記録,供述調書その他の証拠及び処分交渉の状況を順に確認し,新しい資料によって認否,役割又は捜査協力の見通しが変わったときは,利益相反の評価も更新する必要がある。

裁判所,検察官その他の第三者が保有する書類は,弁護人がいつでも当然に取得できるものではない。手続段階ごとの閲覧,謄写又は証拠開示の可否を確認し,まだ入手できない資料がある段階では,将来判明し得る対立を見落としていないかを保守的に評価する必要がある。

一方に必要な助言又は主張を,他方への不利益又は秘密保持を理由に差し控えざるを得ないと判明した時点が,同一受任を続けないための停止基準となる。重大な対立が合理的に予測できるのに,実際の供述衝突又は公判上の不利益が生じるまで待つべきではない。

3 別弁護人による共同防御の範囲を限定すること

各共犯者に別の弁護士が付き,争点又は証拠の一部について共同して防御することはあり得る。この場合でも,各弁護士の依頼者は別であり,情報共有の範囲,利用目的,共同作業を止める条件及び各依頼者の同意を個別に確認しなければならない。

同じ法律事務所内で担当者だけを分ける方法も,当然に利益相反を解消するものではない。弁護士職務基本規程56条から59条までの共同事務所に関する規律,事務所内で既に共有された秘密及び各担当者が独立して最善の弁護を行えるかを確認する必要がある。

第6 受任後に利益相反が顕在化した場合の対応

1 共同活動を止めて各依頼者へ説明すること

対立が判明したときは,まず,共同面談,共同方針の確定及び新たな秘密の共有を止める。その上で,他方の秘密を開示しない範囲で,各依頼者に対立の性質,弁護活動への影響,別弁護人を選ぶ必要性及び担当変更に伴う手続上の影響を説明する。

国選弁護では,裁判所が同一選任を維持してよいかを判断できるよう,守秘義務に反しない範囲で利害相反の発生を伝え,別の国選弁護人の選任等を求める必要がある。私選弁護でも,単に同意書を取り直すのではなく,各人が独立した助言を受けられる状態を確保することが先決である。

2 一方だけの辞任で解消するとは限らないこと

同じ弁護士が双方から秘密を聴取した後では,一方だけを辞任して他方の弁護を続けても,辞任した依頼者の秘密を利用できないために残った依頼者への弁護が制約され,又は秘密を利用したとの疑いを生じさせる。日弁連の公式解説書は,共犯者双方の受任後に利害対立が生じた場合,一方だけを辞任すればよいとは限らないとの考え方を示している。

もっとも,必要な措置は,受任の時期,取得した秘密の範囲,対立の重大性及び依頼者への不利益によって異なる。したがって,常に機械的に双方から辞任すると決めるのではなく,秘密を利用せずに独立した弁護を続けられるかを厳格に検討し,できない場合は双方からの辞任を含む措置を採る必要がある。

3 判断経過を記録し,再評価すること

受任時の利益相反確認,説明した不利益,同意の範囲,その後に得た資料及び再評価の結果は記録しておく必要がある。記録の目的は形式的な免責ではなく,どの情報に基づいて各依頼者への最善の弁護が両立すると判断したかを後から検証できるようにすることにある。

同意があっても,新たな供述,証拠又は処分交渉によって前提が変われば再評価が必要になる。共犯弁護の利益相反は,受任時に一度だけ確認する事項ではなく,捜査段階から上訴段階まで継続して確認すべき事項である。

第7 私選共犯弁護に関する近時の懲戒例

1 令和6年7月10日効力発生の戒告

日本弁護士連合会の懲戒処分公告には,1人の弁護士が私選弁護人として共犯関係にある2人を受任し,一方の依頼者が供述内容と他方の利益を優先しているのではないかとの疑念を伝えた後も,その依頼者の弁護人を辞任しなかった事案が掲載されている。懲戒処分は戒告であり,令和6年7月10日に効力を生じた。

公告は,利益相反が顕在化した後に辞任すべきであったとして,弁護士職務基本規程28条3号,42条及び46条に反し,弁護士法56条1項の品位を失うべき非行に当たるとした。これは,私選弁護では刑事訴訟規則29条5項が直接適用されないことと,職業倫理上の受任・辞任義務及び懲戒責任が生じ得ることが両立する具体例である。

2 この懲戒例の射程

この公告から,同じ弁護士が共犯者双方を受任した場合に常に懲戒処分になると一般化することはできない。処分の中心は,共犯関係という形式だけでなく,供述内容と利益の対立が具体化し,依頼者自身が疑念を示した後も辞任しなかった点にある。

他方,受任時に双方が同意していたとしても,顕在化後の対応を省略できないことは明確である。同意,異議の有無及び認否だけを見るのではなく,弁護人が各依頼者のために必要な主張及び助言を独立して行えるかを継続的に確認する必要がある。

第8 出典・参考資料

1 法令・会規

日本国憲法37条3項(e-Gov法令検索)

刑事訴訟法30条及び350条の2から350条の5まで(e-Gov法令検索)

刑事訴訟規則29条5項(最高裁判所,令和8年5月21日更新,資料上15頁・PDF15頁)

弁護士法23条及び56条(e-Gov法令検索)

⑤ 日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説 弁護士職務基本規程〔第3版〕』日本弁護士連合会,2017年,87頁~90頁,126頁~129頁及び136頁

2 裁判例・懲戒公告

福岡高裁昭和25年11月21日判決・高刑集3巻4号579頁(裁判所HP掲載,事件番号は裁判所HPの判決PDFでは確認できない)

名古屋高裁平成9年9月29日判決・平成9年(う)第129号・高刑集50巻3号139頁・判例時報1619号41頁・判例タイムズ954号298頁(裁判所HP掲載)

最高裁令和3年4月14日第二小法廷決定・令和2年(許)第37号(裁判所HP掲載)

④ 日本弁護士連合会「懲戒処分公告」『自由と正義』2025年1月号87頁(令和6年7月10日効力発生,宮崎県弁護士会,戒告。誌面原本確認)

3 文献

① 高中正彦,加戸茂樹,市川充,安藤知史及び吉川愛『弁護士倫理のチェックポイント』弘文堂,2023年,214頁

② 南川学『刑事弁護読本―判例と文献で読み解く刑事裁判の現在地』現代人文社,2025年,84頁

③ 後藤貞人編著『否認事件の弁護(上)―その技術を磨く』現代人文社,2023年,63頁及び70頁