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大阪地裁,京都地裁及び神戸地裁の事務分配規程から見る共犯事件の配点(AI作成)

大阪地裁,京都地裁及び神戸地裁の本庁刑事部では,共犯者が別々の起訴状で起訴された事件について,公開されている事務分配等規程の定め方が異なる。本記事は,各庁の事務分配等規程の原本を比較し,刑事訴訟法上の関連事件,配付後の部間移動,弁論の併合・分離及び裁判官の忌避との関係を整理するものである。

調査基準日は令和8年8月3日である。京都地裁及び神戸地裁については令和8年度規程を用いたが,大阪地裁について入手できた最新の全文は令和7年度規程であるため,大阪地裁の記述を令和8年度の現行規程と断定するものではない。

第1 三地裁の違い

1 結論の比較

公開規程上の三地裁の差は,関連事件を同じ部へ集めることを定める段階と,その規定の文言にある。大阪地裁は関連事件の同一部配付を許容し,神戸地裁はこれを義務付け,京都地裁は同一被告人の複数事件について初回配付の集中を義務付ける一方,別被告人である共犯者の関連事件については配付後の集約を明記している。

裁判所最初の配付段階配付後の処理比較した年度
大阪地裁相関連する事件は同一部に配付することができる。具体的な配付準則は本庁刑事部裁判官の協議に委ねる。異なる部に係属した関連事件等は,関係部の協議により一部へ移すことができる。令和7年度
京都地裁同一被告人に対する公判請求事件は同一部又は係へ配付する。別被告人である共犯者を初めから同一部へ配付する明文はない。関連事件が異なる部又は係に係属した後は,関係部等の協議により,原則として先に係属した部又は係へ移すことができる。令和8年度
神戸地裁相関連する事件は同一部に配付する。異なる部に係属した関連事件は,関係各部の協議により一部へ移すことができる。令和8年度

公開規程の文言だけを比べれば,神戸地裁が最も強く関連事件の同一部配付を求めている。したがって,「大阪では共犯者を同じ部へ配点するが,神戸ではしない」という一般的な結論を,公開規程から導くことはできない。

2 規程の比較だけでは実際の頻度は分からない

各規程は,事件を順次に配付し,又は一定の割合で配付する仕組みを定めているのであり,各事件を独立した無作為抽選で配るとは定めていない。被告人数による件数算入,関連事件の調整,除斥等による振替え,配付停止及び部別の負担調整もあるため,大阪地裁では11分の1,神戸地裁では3分の1の確率で同じ部になるという計算はできない。

実際の頻度を比較するには,共犯者ごとの受付日,最初の配付部,関連性が判明した時点,振替理由,配付後の部間移動及び弁論の併合・分離を追跡できる匿名化データが必要である。そのような三庁横断の配付実績は,今回確認した公開資料には含まれていなかった。

第2 事務分配と関連事件の法的な位置付け

1 配点は裁判所内部の司法行政事務である

裁判所法29条2項は,地方裁判所の司法行政事務を裁判官会議の議によって行い,地方裁判所長がこれを総括すると定める。各年度の事務分配等規程は,この枠組みの下で,受け付けた事件をどの部へ配付するかを定める庁内規程である。

最高裁判所事務総長通達「事件の受付及び分配に関する事務の取扱いについて」(令和8年4月1日現在)第4の1は,記録編成後,裁判事務分配の定めに従って速やかに配布することを求める。しかし,共犯者が別々に起訴された場合に同じ部へ配るかという実体基準は,各庁の規程等に委ねられている。

2 「相関連する事件」は刑事訴訟法9条に接続する

刑事訴訟法9条1項は,一人が数罪を犯した場合,数人が共に同一又は別個の罪を犯した場合及び数人が通謀して各別に罪を犯した場合を関連事件とする。同一の犯罪事実について共犯者が別々の起訴状で起訴されれば,被告人が異なるため別個の事件であるが,通常は同項2号の関連事件となる。

伊丹俊彦・合田悦三編代『逐条実務刑事訴訟法』(立花書房,平成30年)8頁~14頁も,事件の個数は犯罪事実及び被告人の数によって決まり,数個の事件が同法9条所定の関係にあるときに関連すると説明し,共同正犯,教唆犯,従犯及び必要的共犯を同項2号の例として挙げる。したがって,各地裁規程の「相関連する事件」又は「関連事件」は,意味が白紙の内部用語ではなく,まず刑事訴訟法9条との対応を踏まえて読む必要がある。

もっとも,各庁の事務分配等規程にいう関連事件の具体的な適用範囲が刑事訴訟法9条所定の関連事件と完全に一致するか,また,受付段階でどの範囲の事件に同一部配付を適用するかは,公開資料から確認できない。

第3 三地裁の規程の内容

1 大阪地裁は許容規定と内部準則を置く

大阪地裁令和7年度規程20条1項は,相関連する事件を同一部に配付することができるとし,その配付に関する準則を本庁刑事部裁判官の協議によって定める。許容形の規定であるが,具体的な裁量行使を方向付ける準則の存在が規程本文に明記されている。

同条2項は,関連し,又は併合審理するのが相当な事件が異なる部に係属しているとき,関係部の協議によって一部へ移すことを認める。最初の配付と,配付後に判明した関連事件の集約の双方に対応する構造である。

もっとも,20条1項の準則本文は公開規程に添付されておらず,別起訴の共犯者について,受付時にどの資料から関連性を認定し,どのような例外を設けるかは確認できなかった。また,令和8年度規程の全文を入手できていないため,本記事が直接確認した大阪地裁の規律は令和7年度のものである。

2 京都地裁は同一被告人の集中と関連事件の事後集約を分ける

京都地裁令和8年度規程16条1項は,同一被告人に対する公判請求事件を同一部又は係へ配付する。これは,同じ被告人に対する追起訴等を同じ部へ集める規定であり,別の被告人である共犯者を当然に含むものではない。

同条2項は,関連事件が異なる部又は係に係属した後,関係部又は係の協議によって一部へ移すことを認め,原則として先に係属した部又は係への集約を予定する。裁判員裁判対象事件と非裁判員合議事件では後者を前者へ,合議事件と一人制事件では後者を前者へ移すという優先関係も定めている。

したがって,公開規程上,京都地裁は「同一被告人」を最初の配付段階で集中させ,「別被告人間の関連事件」は複数部への係属が生じた後の調整で扱う構造が明確である。ただし,公開されていない受付実務において,別起訴の共犯者を最初から考慮していないとまで断定することはできない。

3 神戸地裁規程は関連事件の同一部配付を義務形で定める

神戸地裁令和8年度規程24条3項は,相関連する事件を同一部に配付すると定める。「できる」とする大阪地裁と異なり,規程の文言は義務形である。同条4項は,この配付によって部別件数に差が生じた場合に,その直後の新件で調整する仕組みを置く。

この義務文言は,令和5年度版令和6年度版令和7年度版及び令和8年度版で連続して確認できる。したがって,令和8年度に新設された規定ではなく,少なくとも令和5年度以降,関連事件の同一部配付を定める文言が継続している。

同規程33条は,関連事件が異なる部に係属したとき,関係各部の協議によって一部へ移すことを認める。34条は,配付された事件をその部で処理することが相当でないとき,当該部の申出と常任委員会の承認によって他部へ移すことを認めており,一般的な配付替えの申出主体を当該部と明記している。

第4 別起訴の共犯事件に規程を適用するときの問題

1 受付時に関連性を把握できることが前提となる

共犯者が同じ犯罪事実について別々に起訴されれば,刑事訴訟法9条上は関連事件となるのが通常である。しかし,同一部配付の規定を受付時に作動させるには,後から起訴された事件と先行事件との関係が,起訴状その他の受付資料から把握できなければならない。

公開規程には,関連性を示す情報を検察庁から受けるのか,起訴状,事件簿又は庁内照合によって把握するのか,受付時に判明しなかった場合に遡って配付を修正するのかという手順が書かれていない。規程上は同一部配付が義務であっても,関連性が後から判明すれば,最初は別部へ配付され,その後に部間移動の検討が始まることがあり得る。

2 同じ庁でも別部係属が生じ得る理由は一つではない

公開規程上,同一部への配付が予定されている関連事件であっても,個別事例において別々の部への係属が生じる可能性はある。その場合も,直ちに「共犯事件を関連事件に含めない運用」であると結論付けることはできない。少なくとも,①受付時に共犯関係を識別できなかった場合,②受付資料から関連性が明らかでなかった場合,③除斥等による振替え又は特別な配付調整が働いた場合,④配付後に一部の事件が移された場合,⑤実務上「関連」と呼ばれた事件が刑事訴訟法9条の関連事件に当たらなかった場合,⑥規程どおりでない処理があった場合を区別する必要がある。

個別事例についてどの説明が当てはまるかは,事件番号,起訴日,起訴状,配付票及び部間調整記録を確認しなければ確定できない。「相関連する事件」の意味だけが唯一の説明であるとするのは,公開資料から導ける範囲を超える。

第5 最初の配付,部間移動及び弁論の併合・分離

1 三つの段階は法的性質が異なる

本件では,最初の配付,配付後の部間移動及び弁論の併合・分離を区別する必要がある。

段階内容主な根拠法的性質
最初の配付受け付けた起訴事件を担当部へ割り当てる。各庁の事務分配等規程司法行政事務
配付後の部間移動異なる部に係属した関連事件等を一部へ移す。各庁の事務分配等規程庁内の事務分配調整
弁論の併合・分離受訴裁判所が公判の審理単位をまとめ,又は分ける。刑事訴訟法313条,刑事訴訟規則210条訴訟上の裁判

配付規程に基づく部間移動は,弁護人の請求によって当然に生じる訴訟上の権利ではない。他方,弁論の併合・分離については,当事者が受訴裁判所に意見又は請求を示し,裁判所が訴訟上の裁判として判断する。

2 併合は原則裁量であるが必要的分離がある

刑事訴訟法313条1項は,裁判所が適当と認めるときに弁論を分離し,又は併合できると定める。刑事訴訟規則210条は,被告人の防御が相反する場合等,被告人の権利保護のため必要があるとき,裁判所が請求又は職権で弁論を分離しなければならないとする。

併合には,共通証拠の重複取調べを避け,証人負担を軽減し,事実認定及び共犯者間の量刑の均衡を図りやすいという利益がある。これに対し,分離には,防御方針の相反を避け,一部被告人の事情による審理遅延又は複雑化の波及を防ぐという利益がある。共犯関係があるという一事だけで,常に併合又は常に分離のいずれかが決まるものではない。

第6 同一部配付と予断排除に関する裁判例

1 配点及び併合の基本判例

最高裁昭和49年7月18日第一小法廷決定・昭和48年(あ)第2460号・集刑193号145頁は,東京地裁の裁定合議委員会について,公正な事務分配のために裁判官会議決議で設けられたものであり,事務分配は当該裁判所固有の行政事務に属するとした。併合案作成に必要な事前調査も同委員会の職務に属し,司法行政資料から担当裁判官が事件について知識を得ても,それだけで予断を抱いたことにはならないとした。

最高裁昭和41年4月8日第二小法廷判決・昭和40年(あ)第461号・集刑159号37頁は,必要的共犯の関係にある被告人らの事件が別々に同一裁判所へ係属し,併合審理の請求があっても,必ず併合しなければならないものではないとした。併合の可否は受訴裁判所の裁量に属し,極端な裁量権濫用の場合を除いて違法の問題を生じないというのが判例上の出発点である。

最高裁昭和54年7月24日第三小法廷判決・昭和51年(あ)第798号・刑集33巻5号416頁の判決原本は,多数の被告人を複数の群に分け,裁定合議委員会案を踏まえて裁判官会議が配点した経緯を認定している。本判決の中心判旨は国選弁護人の解任等であるが,大規模関連事件を一つの部へ一括配付せず,適正規模の群に分けて処理した実例を確認できる。

2 共犯者の先行審理と忌避に関する判例群

最高裁判例は,共犯者事件を先に審理した裁判官が事件内容の知識を得たという一事だけでは,憲法37条1項の公平な裁判所の保障に反せず,又は刑事訴訟法21条の忌避原因にならないという立場を一貫している。今回,裁判所HPの判決・決定原本及び裁判例詳細画面で確認した判例は次のとおりである。

裁判例事件番号・掲載誌確認した判断
最高裁昭和28年10月6日第三小法廷判決昭和28年(あ)第2392号・刑集7巻10号1888頁共犯者との弁論分離後,共犯者の審理から知識を得た裁判官が後に被告人を審理しても,公平な裁判所の裁判でないとはいえない。
最高裁昭和31年9月18日第三小法廷決定昭和31年(し)第23号・刑集10巻9号1347頁共犯関係にある事件の審理から知識を得た一事では,忌避理由にならない。
最高裁昭和32年7月30日第三小法廷判決昭和32年(あ)第1146号・集刑119号1139頁分離された共犯者らの先行審理による知識があっても,公平な裁判所の保障に反しない。
最高裁昭和36年6月14日第一小法廷決定昭和36年(し)第21号・刑集15巻6号974頁同一犯罪事実の共犯者に先に有罪判決をしたことだけでは,忌避原因にならない。
最高裁昭和42年8月17日第一小法廷決定昭和42年(し)第37号・集刑164号13頁共犯者の公判審理により事件内容の知識を得たことだけでは,忌避理由にならない。
最高裁昭和60年12月20日第三小法廷決定昭和60年(し)第140号・集刑241号555頁分離された共犯者事件の審理に関与しただけでは,忌避原因にも憲法違反にもならない。

また,最高裁昭和53年2月14日第一小法廷決定・昭和53年(し)第11号・集刑209号101頁は,被告事件を担当する裁判官が勾留に対する準抗告の裁判に関与したこと等だけでは,直ちに不公平な裁判をするおそれがあるとはいえないとした。これに対し,三地裁の事務分配規程は,法定の除斥・忌避より広い予防措置として,当該事件の勾留等に関与した裁判官が所属する部を避ける振替規定を置いている。

3 判例の射程

これらの判例から,共犯者事件を常に同じ部へ配るべきであるとも,常に別の部へ配るべきであるともいえない。判例が否定しているのは,共犯者事件から知識を得たという一事だけで直ちに除斥・忌避又は憲法違反になるという主張であり,具体的な偏見の外形又は防御相反まで問題にならないとするものではない。

したがって,個別事件で検討すべき事項は,①公開規程に適合した配付であったか,②関連性がどの時点で把握されたか,③具体的な防御相反又は不公平の外形があるか,④部間移動と弁論の併合・分離のどちらを問題にしているかである。配付規程上の疑義から,直ちに公判手続の無効又は裁判官の忌避が導かれるわけではない。

第7 公開資料から残る確認事項

1 運用を確定するために必要な資料

大阪地裁については,令和8年度事務分配等規程の全文及び令和7年度規程20条1項にいう配付準則を確認する必要がある。京都地裁及び神戸地裁については,関連事件を受付時に識別する手順,配付票の様式及び別部へ配付された後の協議基準が必要である。

さらに,三庁の実際の違いを数量で示すには,共犯者別起訴事件について,受付日,被告人,罪名,共犯関係,事件種別,最初の配付部,振替理由,部間移動及び弁論併合・分離を匿名化した集計が必要となる。公開規程は制度設計を示すが,実際の運用頻度を示す統計ではない。

2 神戸地裁規程の引用条番号のずれ

神戸地裁令和7年度規程では,一時保護状関係の第28条が新設され,後続条文が一条ずつ繰り下がった。しかし,令和8年度規程32条末尾の「第29条の例による」及び35条冒頭の「第29条から前条まで」は旧条番号のままであり,文脈上はそれぞれ第30条を指すべき改め忘れである可能性が高い。

この点は,神戸地裁事務分配等規程における引用条文の改め忘れで年度間の条文対照を掲載している。もっとも,神戸地裁による公式訂正又は公式説明は今回確認できなかったため,規程制定権者の見解は未確認である。

第8 出典

1 法令,規則及び通達

刑事訴訟法9条,20条,21条及び313条(e-Gov法令検索,令和8年8月3日確認)。

裁判所法29条2項(e-Gov法令検索,令和8年8月3日確認)。

日本国憲法37条1項(e-Gov法令検索,令和8年8月3日確認)。

刑事訴訟規則210条(令和8年5月21日現在,裁判所HP,実頁146頁)。

最高裁判所事務総長通達「事件の受付及び分配に関する事務の取扱いについて」(平成4年8月21日総三第26号,令和8年4月1日現在,6頁)。

2 三地裁の事務分配等規程

大阪地方裁判所「令和7年度 裁判事務分配,裁判官の配置,開廷日割,代理順序に関する規程」13条~21条,特に20条(42頁)。

京都地方裁判所「令和8年度事務分配等規程」15条~17条,特に16条(10頁~11頁)。

神戸地方裁判所「令和8年度事務分配等規程」24条,30条~35条(14頁~19頁)。

大阪地裁の事務分配等京都地裁の事務分配等及び神戸地裁の事務分配等(各年度規程原本の掲載ページ)。

3 裁判例

最高裁昭和49年7月18日第一小法廷決定・昭和48年(あ)第2460号・集刑193号145頁

最高裁昭和41年4月8日第二小法廷判決・昭和40年(あ)第461号・集刑159号37頁

最高裁昭和54年7月24日第三小法廷判決・昭和51年(あ)第798号・刑集33巻5号416頁

共犯者の先行審理と公平性又は忌避に関する裁判例は,本文第6の2に掲げた最高裁昭和28年10月6日判決,最高裁昭和31年9月18日決定,最高裁昭和32年7月30日判決,最高裁昭和36年6月14日決定,最高裁昭和42年8月17日決定及び最高裁昭和60年12月20日決定である。

多数被告人のグループ別審理について,東京高裁昭和47年4月12日判決・昭和45年(う)第1129号・高刑集25巻2号167頁は,東大事件で被告人を10名前後の群にまとめ,統一公判方式を採らなかったことを違法でないとした。関連する公判運営の経過を含む裁判例として,東京高裁昭和50年1月23日判決・昭和45年(う)第1130号・高刑集28巻1号1頁及び東京高裁昭和50年3月27日判決・昭和47年(う)第981号・高刑集28巻2号132頁の各判決原本も確認した。

4 文献

伊丹俊彦・合田悦三編代『逐条実務刑事訴訟法』立花書房,平成30年,8頁~14頁,747頁~751頁。

司法研修所監修『刑事第一審公判手続の概要』38頁以下。