第1 家事事件の書類交付等申請書とは
家事事件の書類交付等申請書は,家庭裁判所の事件について,調停調書・審判書などの交付や,確定・送達に関する証明を求めるための書面である。裁判所によって「申請書」「家事事件等書類交付等申請書」など名称や様式が異なる。
申請前に確認したいのは,何に使うか,どの文書が必要か,どの裁判所の事件かの3点である。調停調書の謄本が必要なのか,審判書と確定証明書が必要なのかを確認せずに申請すると,提出先が求める書類がそろわないことがある。
この記事は,当事者本人が自分の家事事件の書類を取り寄せる場合を中心に,東京家庭裁判所の申請書・記載例と,大阪家庭裁判所の正本送達・執行文付与等用の記載例を使って説明する。第三者による請求や,記録全体の閲覧・謄写には,別の条件や手続がある。
家事事件の具体例,調停・審判の違い,申立先の調べ方については,家庭裁判所の総合案内を参照されたい。
第2 調停調書・審判書・証明書の違い
1 提出先に必要な文書を確認する
最初に,役所,年金事務所,金融機関,登記の担当者など,実際に提出する先へ必要書類を確認する。裁判所に聞くときも,「事件の書類を全部ほしい」という伝え方より,「何の手続に使う,どの文書を何通ほしい」という伝え方の方が申請を整理しやすい。
| 文書 | 確認する内容 |
|---|---|
| 調停調書 | 成立した合意等を記載した調書。提出先が正本・謄本のどちらを求めるか,必要通数を確認する。 |
| 審判書 | 裁判官の判断を記載した書面。審判の内容を示す文書と,確定を証明する文書は区別する。 |
| 確定証明書 | 審判等が確定したことに関する証明。審判書を持っているだけで,必ず代用できるわけではない。 |
| 送達証明書 | 書類の送達についての証明。自分が謄本を受け取ったこととは別である。 |
| 不成立・取下証明書 | 事件が不成立又は取下げで終了したことなどの証明。使用目的と必要な証明事項を確認する。 |
正本と謄本は,申請書でも選択欄が分かれている。どちらも「裁判所の書類のコピー」と考えて任意に選ぶのではなく,提出先の指定に従って申し込む必要がある。
2 強制執行のための申請は,単なる謄本取得と分ける
大阪家庭裁判所の「家事事件等書類交付等申請書(正本送達・執行文付与等用)」には,正本の送達,執行文の付与,送達証明,確定証明等の欄がある。通常の謄本交付と,強制執行の準備のためにどの項目を申請するかは区別しなければならない。
執行文が常に必要とは限らず,必要な書類は債務名義の種類や求める執行手続によって異なる。裁判所の財産開示手続の案内にある執行文の要否と,実際に申し立てる執行裁判所の案内を確認する必要がある。
第3 書類交付と記録の閲覧・謄写の違い
1 当事者による裁判書・調書等の交付には許可不要の規定がある
家事審判事件の記録の閲覧等については,家事事件手続法47条が定めている。同条6項によれば,当事者は,審判書その他の裁判書の正本・謄本・抄本や,事件に関する事項の証明書について,家庭裁判所の許可を得ないで交付を請求できる。審判を受ける者が審判後に請求する場合も同様である。
家事調停事件についても,同法254条4項は,裁判書,成立した合意又は所定の終了事項を記載した調書,事件に関する事項の証明書について,当事者が家庭裁判所の許可を得ずに交付を請求できると定めている。
したがって,当事者が自分の調停調書等を取り寄せる場合に,「家事事件の書類はすべて裁判官の許可がなければもらえない」と考えるのは正確ではない。ただし,申請者の立場や事件との関係を確認できる資料が必要になる場合がある。
2 相手方の提出書面や調査報告書を見たい場合は別に確認する
上記の交付の扱いを,事件記録中のすべての資料に広げることはできない。相手方の提出書面,添付資料,調査報告書などの閲覧・謄写については,審判事件か調停事件か,申請者が当事者か第三者か,記録の内容などに応じて許可の取扱いが異なる。
家庭裁判所調査官の報告書を確認したい場合には,家庭裁判所調査官の調査・報告書の案内も参照されたい。調停調書を取得する申請書だけで,事件記録全体の閲覧まで済むとは限らない。
第4 申請書の書き方と準備する情報
1 事件番号・申請者・必要な文書を特定する
裁判所から届いた呼出状,調停調書,審判書などで,裁判所名と事件番号を確認する。事件番号は,年,事件符号,番号を省略せず転記する。調停と審判で事件番号が異なる場合には,必要な書類がどちらの事件のものかを担当係へ確認する。
| 記入する欄 | 書く内容・確認事項 |
|---|---|
| 宛先 | その事件を扱った家庭裁判所。本庁・支部・出張所も確認する。 |
| 事件番号 | 手元の裁判所書類から,年・事件符号・番号を転記する。 |
| 文書・通数 | 調停調書,審判書,確定証明書等を選び,正本・謄本の別と必要通数を指定する。 |
| 交付・送達等 | 自分が受け取る申請か,相手方等への正式な送達を求める申請かを区別する。 |
| 申請者 | 氏名,住所,日中連絡できる電話番号等を,その裁判所の様式に従って記入する。 |
| 収入印紙・郵便料 | 文書の種類,ページ数,通数,送付方法に応じて必要額を確認する。 |
東京家庭裁判所の記載例では,調停調書の謄本について,事件番号,必要通数,日付,申請人欄を記入し,「交付」と「謄本」を選ぶ例が示されている。様式にある受領欄や裁判所の処理欄は,申請時に全部埋める欄ではない。
2 郵送先・返信用封筒・本人確認資料を確認する
東京家庭裁判所の謄本交付の記載例では,郵送申請の場合,申請書,収入印紙,返信用切手,返信先を記載した返信用封筒を送ることとされている。氏名・住所が調書又は審判書と異なる場合には,つながりの分かる戸籍謄本や戸籍の附票等のコピーが必要とされており,身分証明書のコピーだけで当然に代用できるものではない。
来庁申請については,記入した申請書,必要な収入印紙,身分証明書等を持参する案内がある。郵送と来庁で必要なものを混同せず,代理人による申請や氏名・住所の変更がある場合には,先に担当係へ確認する必要がある。
第5 費用と申請先の調べ方
1 謄本と証明書の手数料を混同しない
令和8年10月11日に確認した東京家庭裁判所の謄本交付の記載例では,収入印紙は「謄本のページ数×150円×必要な通数」と案内されている。例えば,2ページの謄本を2通取り寄せる場合は600円となる。ページ数が分からなければ,申請前に担当係へ確認する方法がある。
一方,裁判所の家事事件Q&Aは,審判の確定証明書について,手数料として150円分の収入印紙,郵送取得の場合には返送用の郵便切手が必要と案内している。これを根拠に,どの謄本も何通でも一律150円と考えてはいけない。
返信用の郵便料は,枚数や送付方法によって異なる。東京の記載例には切手額の案内があるが,他の裁判所や異なる文書にそのまま当てはめず,申請先の最新案内で確認する必要がある。
2 終了した事件の担当窓口を確認する
申請先は,原則としてその事件を扱った家庭裁判所である。新規の申立受付と,終了した事件の書類交付を扱う窓口が分かれている場合がある。
大阪家庭裁判所本庁の公式窓口案内では,終了した家事事件の各種交付申請・記録の閲覧等について,「家事記録係」が案内されている。大阪家裁の本庁・各支部・出張所の区別を確認し,公式の担当窓口案内から該当する係を調べる必要がある。
第6 よくある確認事項
1 事件番号が分からない場合
まず,裁判所からの郵便,調停・審判の書面,代理人から受け取った資料を探す。それでも分からなければ,事件を扱った裁判所へ連絡し,申請者の氏名,おおよその時期,事件の種類など,何を伝えれば事件を特定できるかを確認する。番号を推測して申請書へ書くべきではない。
2 確定証明書が必要と言われた場合
手元に審判書があるか,その審判が確定したか,提出先がどの証明書を求めているかを分けて確認する。裁判所のQ&Aでは,審判が確定すると家庭裁判所で確定証明書を取得できると説明されている。審判書を受け取った日だけから確定の有無を決めず,審判をした裁判所へ確認する必要がある。
3 養育費などの支払がない場合
単に調停調書を取り寄せるだけでは,履行勧告や差押えの申立ては済まない。まず,決められた内容,支払期日,未払額を整理し,履行勧告を求めるか,強制執行を検討するかを判断する。その上で,必要な正本,送達証明書等を確認する。
調停・審判の制度そのものについては,家事調停の実務案内と家事審判の実務案内を参照されたい。
第7 公式書式・参照資料
東京家庭裁判所・その他の書式例
東京家庭裁判所・申請書について
東京家庭裁判所・申請書(令和8年6月のファイル)
東京家庭裁判所・謄本交付申請書の記入例(令和8年6月のファイル)
大阪家庭裁判所・その他の書式例
大阪家庭裁判所・正本送達申請及び送達証明申請の記載例
裁判所・家事事件の手続案内Q&A
e-Gov法令検索・家事事件手続法
書式・記載例・法令の参照日は令和8年10月11日である。申請先の裁判所が配布する最新の書式と案内を優先して確認する必要がある。