目次第1 本記事の対象と結論第2 民法の法定利率の仕組み1 令和2年3月31日までは年5%2 令和2年4月1日以後は年3%から始まる変動制3 法務省が公表している各期の法定利率4 令和11年4月1日以後の見通しの考え方第3 遅延損害金の利率は「遅滞の最初の時点」で決まる1 民法419条1項2 改正法の経過措置3 途中で法定利率が変わっても利率は変わらない第4 商事法定利率(年6分)の廃止1 商法514条の削除と整備法4条3項2 無保険車傷害保険金を年6分とした最高裁平成24年4月27日判決3 自賠責保険の被害者請求に係る債務は商行為によって生じた債務ではない第5 場面ごとの当てはめ1 交通事故の加害者に対する損害賠償請求2 自賠責保険の被害者請求3 離婚に伴う慰謝料4 契約上の金銭債務第6 計算例1 元本1,000万円・3年間(1,095日)2 元本1,000万円・500日間第7 請求の趣旨・判決主文での利率の書き方1 最高裁令和4年1月28日判決の主文2 請求の趣旨の記載例第8 約定利率と上限規制1 民法419条1項ただし書2 利息制限法4条3 消費者契約法9条1項2号第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料
第1 本記事の対象と結論
本記事は,金銭債務の遅延損害金に適用される法定利率が年3%になるのか年5%になるのかを,民法404条,419条1項及び民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号。以下「改正法」という。)の附則に沿って整理するものである。
調査基準日は令和8年9月19日である。
条文はe-Gov法令検索で,裁判例は裁判所HPの裁判例検索で,法定利率の一覧は法務省のホームページで確認した。
結論は次のとおりである。
① 遅延損害金の利率は,債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で決まり,その後に法定利率が変わっても影響を受けない(民法419条1項)。
② 遅滞の責任を負ったのが令和2年3月31日以前であれば年5%,令和2年4月1日以後であれば年3%である(改正法附則17条3項)。
③ 令和2年4月1日以後の法定利率は3年ごとに見直される変動制であるが,令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期も年3%であり,令和11年4月1日以後の利率はまだ決まっていない(法務省の公表)。
④ 商事法定利率の年6分(商法514条)は削除されたが,令和2年3月31日以前に遅滞した商行為によって生じた債務には,なお年6分が適用される(民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号。以下「整備法」という。)4条3項)。
⑤ 交通事故の加害者に対する損害賠償請求では,原則として事故日が令和2年3月31日以前か令和2年4月1日以後かで利率が決まる。
⑥ これに対し,自賠責保険会社に対する被害者請求は,請求後の「必要な期間」が経過するまで遅滞にならないため,令和2年3月31日以前の事故でも年3%となることがある。
⑦ 請求の趣旨や判決主文では,最高裁令和4年1月28日判決の主文と同じく「年3パーセントの割合による金員」と%で表示すればよい。
遅延損害金の起算日,自賠責保険,既払金の充当などの論点は,ハブ記事である遅延損害金に関するメモ書き及び第9の関連記事で扱う。
第2 民法の法定利率の仕組み
1 令和2年3月31日までは年5%
改正前の民法404条は,「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。」と定めていた(e-Gov法令検索・民法(令和2年3月1日施行時点))。
年5分は年5%と同じ意味である。
改正前の民法419条1項本文は,金銭債務の不履行による損害賠償の額を「法定利率によって定める。」としていたから,遅延損害金の利率も年5%の固定であった。
2 令和2年4月1日以後は年3%から始まる変動制
改正法は令和2年4月1日に施行された(最高裁令和4年1月28日判決の理由中にも「改正法の施行日である令和2年4月1日」との記載がある)。
現行の民法404条2項は,「法定利率は、年三パーセントとする。」と定める。
同条3項は,「前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。」と定める。
(1) 基準割合と1%未満の切捨て
各期の法定利率は,法定利率に変動があった直近の期(直近変動期)の基準割合と当期の基準割合との差を,直近変動期の法定利率に加算し,又は減算して決まる(民法404条4項)。
その差に「一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。」とされているから,基準割合が1%以上動かない限り,法定利率は変わらない。
基準割合は,各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの60か月の短期貸付けの平均利率の合計を60で除した割合(0.1%未満切捨て)として,法務大臣が告示する(同条5項)。
(2) 最初の変動までの読替え
法定利率に初めて変動があるまでは,「直近変動期」は改正法の施行後最初の期(令和2年4月1日から令和5年3月31日までの期)と,「直近変動期における法定利率」は「年三パーセント」と読み替えられる(改正法附則15条2項)。
そのため,現時点では,第一期の基準割合と各期の基準割合との差が1%以上になるかどうかで変動の有無が決まる。
(続きを読む...)遅延損害金の利率は年3%か年5%か―令和2年4月1日の経過措置,商事法定利率の廃止及び3年ごとの見直し(AI作成)