裁判所関係国賠事件

Pocket

目次
第1 総論
第2 裁判所関係国賠事件の報告について定めた文書
1 事務総局の局長の通達
2 事務総局の局の課長の事務連絡
第3 裁判所関係国賠事件に関する法務省の依頼文
第4 裁判所関係国賠事件に関する裁判例
1 成年後見人に関するもの
2 破産管財人に関するもの
第5 国家賠償請求事件における国の勝訴状況
第6 最高裁判所への報告事務に関する通達(裁判所関係国賠事件以外に関するもの)
第7 関連記事その他
1 予防司法支援制度
2 公務員の法解釈の誤りが直ちに過失につながるわけではないこと
3 外部資料の記載
4 関連資料
5 関連記事

第1 総論
1(1) 最高裁昭和57年3月12日判決は,以下のとおり判示しています。
   裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によつて是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによつて当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があつたものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるわけのものではなく、右責任が肯定されるためには、当該裁判官が違法又は不当な目的をもつて裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。
(2) 裁判所関係国賠事件において担当裁判官の証人尋問が実施されない限り,「違法又は不当な目的を持って裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情」を原告が立証することは不可能と思います。
2 最高裁判所が,下級裁判所に対して事件報告を求めることは,下級裁判所裁判官に対して何ら審理上の圧力を加えるものではないとされています(最高裁昭和36年9月26日決定参照)。
3 裁判所に対する国賠請求及び弁護士に対する懲戒請求については,従前の事件処理を通じて特に高度の信頼関係を構築できている方に限り極めて例外的な場合に受任することがある程度であって,初回相談では一切取り扱っていません「弁護士会副会長経験者に対する懲戒請求事件について,日弁連懲戒委員会に定型文で棄却された体験談(私が情報公開請求を開始した経緯も記載しています。)」参照)。


第2 裁判所関係国賠事件の報告について定めた文書
1 事務総局の局長の事務連絡
   裁判所職員の行為について国家賠償請求訴訟を提起した場合の報告を定めた局長の通達を以下のとおり掲載しています。
 裁判所職員の事件処理上の違法行為を理由とする国家賠償請求事件及び告知事件の報告について(平成16年7月1日付の最高裁判所民事局長,刑事局長,行政局長及び家庭局長通達)
→ ①の通達は平成29年9月30日まで適用されていたものです。
② 裁判所職員の事件処理上の違法行為を理由とする国家賠償請求事件及び告知事件の報告等について(平成29年7月3日付の最高裁判所民事局長,刑事局長等の通達)
→ ②の通達は平成29年10月1日以降に適用されているものです。
2 事務総局の局の課長の事務連絡
   裁判所職員の行為について国家賠償請求訴訟を提起した場合の報告を定めた課長の事務連絡を以下のとおり掲載しています。
③ 国家賠償法1条1項又は同法2条1項に基づく損害賠償請求事件(国を被告とし,かつ,原告に訴訟代理人が選任されている事件を除く。)の報告(平成27年3月26日付の最高裁判所行政局第一課長の書簡)
→ 行政事件等の報告に関する最高裁行政局第一課長の書簡(平成26年3月25日付)を変更しています。
④ 「裁判所職員の事件処理上の違法行為を理由とする国家賠償請求事件及び告知事件の報告等について」の発出について(平成29年7月3日付の最高裁民事局第一課長等の事務連絡)
→ ②平成29年7月3日付の局長通達の補足説明です。

第3 裁判所関係国賠事件に関する法務省の依頼文
1 裁判所職員の事件処理上の違法行為を理由とする国家賠償請求事件の処理について(平成7年11月20日付の最高裁判所民事局第一課長,刑事局第一課長等の事務連絡)につき,引用元となった法務省訟務局総務課長の依頼文は以下のとおりです(1,2を①,②に変えています。)。
  平素,標記の国家賠償請求事件(以下「裁判所関係国賠事件」という。)の処理につきまして,特段の御配慮をいただき,誠にありがとうございます。
  ところで,昨今の裁判所関係国賠事件は,裁判官の訴訟指揮の違法や執行官の職務執行の違法を主張して訴えを提起するものが増える傾向にある等,従来に増して事実関係の正確な把握に努める必要が生じております。他方,受訴裁判所の答弁書提出期限は,国に送達後ほぼ1か月程度となっているところ,上記期限と調査回報書の当局への到着時期とが極めて接近しているため,第1回期日前の訴訟準備が極めて不十分なまま期日に臨まざるを得ない等の実情にあります。
  つきましては,裁判所関係国賠事件の一層の適正・迅速処理を図るために,その処理に当たりましては,下記の点につき御配慮いただきたくお願いいたします。

 所管裁判所(違法行為を行ったとされている職員が当時所属していた裁判所)の担当者は,法務省からの調査回報依頼通知を受け取ったときは,速やかに担当の法務局又は地方法務局に連絡し,訴訟準備の打合せの要否等について協議する。
  なお,法務局側の連絡窓口は,法務局の場合は訟務管理官,地方法務局の場合は(総括)上席訟務官である。
② 所管裁判所の担当者は,原記録の閲覧謄写等訴訟の準備に必要な資料の利用について,可能な限り協力する。
2 平成29年度(最情)答申第62号(平成30年2月23日答申)には以下の記載があります。
    国家賠償請求事件についての調査結果文書には,請求原因事実の認否及び反論を記載し,その根拠事実を証する資料の写しを添付するから,本件対象文書の添付資料は,実質上当事者の立場にある裁判所が以後の訴訟手続において想定される主張の根拠事実を証する資料と評価した文書といえ,その標題を開示するだけでも,主張の方向性や立証事項の多寡を含む国の総合的な訴訟対応方針を推認することができる。

第4 裁判所関係国賠事件に関する裁判例
1 成年後見人に関するもの
   東京高裁平成29年4月27日判決(判例秘書に掲載)は,以下のとおり判示しています。
   家庭裁判所は,成年後見人の後見事務の監督に関して,いつでも,成年後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め,または後見の事務若しくは被後見人の財産の調査をするとともに,被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命じることができるなどの広範な権限を有しているところ,成年後見人の後見事務の監督についても,独立した判断権を有し,かつ,独立した判断を行う職責を有する裁判官の職務行為として行われるものであることに鑑みれば,裁判官による成年後見人の後見事務の監督につき職務上の義務違反があるとして国家賠償法上の損害賠償責任が肯認されるためには,裁判官が違法若しくは不当な目的をもって権限を行使し,または裁判官の権限の行使の方法が甚だしく不当であるなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使し,または行使しなかったものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。
2 破産管財人に関するもの
(1) 大阪地裁平成29年4月21日(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています(大阪高裁平成29年10月26日(判例秘書に掲載)によって支持されています。)。
   国賠法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を与えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責めに任ずることを規定するものと解するのが相当である(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照)。そして,裁判官がした争訟の裁判につき国賠法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには,上記裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在するだけでは足りず,当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である(最高裁昭和57年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁参照)。そして,上記特別の事情とは,当該裁判の性質,当該手続の性格,不服申立制度の有無等に鑑みて,当該裁判官に違法な裁判の是正を専ら上訴又は再審によるべきものとすることが不相当と解されるほどに著しい客観的な行為規範への違反がある場合をいうものと解すべきであり,この理は,争訟の裁判に限らず,破産手続における裁判及び破産手続における破産管財人に対する監督権限の行使等の,手続の進行や同手続における裁判所の判断に密接に関連する裁判以外の行為にも妥当すると解するのが相当である。
(2) 大阪地裁平成29年4月21日判決(判例秘書に掲載)が取り扱った「事案の概要」は,控訴審判決としての大阪高裁平成29年10月26日判決(判例秘書に掲載。担当裁判官は32期の田川直之裁判官,45期の安達玄裁判官及び47期の高橋伸幸裁判官)によれば以下のとおりですが,大阪高裁平成29年10月26日判決記載の「当裁判所の判断」は「事案の概要」よりも短いですし,国賠請求部分((3)の部分)に関しては,「その他,控訴人の当審における主張・立証を勘案しても,上記認定・判断を左右するに足りない。」という記載しかありません。
   本件は,控訴人が,被控訴人Y1に対し,
  (1)被控訴人Y1は,控訴人から100万円を借り入れるに際し,これを返還する意思がなかったにもかかわらず,これを秘して,控訴人から100万円を借り入れたのであるから,被控訴人Y1の行為は詐欺に該当するとして,不法行為に基づく損害賠償として,上記借入金相当額100万円,弁護士費用相当額10万円の合計110万円及びこれに対する平成24年7月17日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(以下「請求①」という。),
  (2)被控訴人Y1は,控訴人に刑事上の処分を受けさせる目的で,実際には控訴人が暴力団とは全く関係がなく,被控訴人Y1から金銭を脅し取ろうとしたこともなかったにもかかわらず,捜査機関に対し,控訴人が暴力団の関係者であり,被控訴人Y1に法外な金銭支払の要求を内容とする契約書を書かせて金員を脅し取ろうとしたなどと述べて,虚偽の告訴をしたことにより,控訴人は,逮捕・勾留されて接見禁止付きで身柄を拘束され,これによって精神的苦痛を被ったとして,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料100万円,弁護士費用相当額10万円の合計110万円及びこれに対する平成24年9月7日(上記勾留の満了日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(以下「請求②」という。),
  (3)被控訴人Y1の訴訟代理人であるT弁護士(以下「T弁護士」という。)は,被控訴人Y1の破産事件において破産管財人に就任していたのであるから,本件において被控訴人Y1の訴訟代理人を務めることは,弁護士職務基本規程27条5号の類推適用により違法であり,被控訴人Y1がT弁護士に本件訴訟における訴訟行為を行うことを委任し,T弁護士がこれを受任したことは,控訴人に対する共同不法行為に該当し,これによって精神的苦痛を被ったとして,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料20万円,弁護士費用相当額2万円の合計22万円及びこれに対する平成28年7月22日(本件訴訟の原審における第1回口頭弁論期日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「請求③」という。)とともに,
   控訴人が,被控訴人国に対し,①被控訴人Y1が控訴人から暴行を受けたとされる刑事事件の控訴審において,大阪高等裁判所の裁判官は,控訴人の弁護人が,被控訴人Y1による虚偽告訴を立証するために行った証拠調べの請求を全て却下したにもかかわらず,虚偽告訴がされたことをうかがわせる証拠はないと判断して,控訴人の控訴を棄却する旨の判決をしたこと(以下「第1行為」という。),②被控訴人Y1が申し立てた破産事件において,神戸地方裁判所の裁判官は,控訴人が被控訴人Y1の破産債権者であることを職務上熟知していたにもかかわらず,被控訴人Y1の破産手続開始の決定をするに際し,故意に控訴人を破産債権者として取り扱わず,また,被控訴人Y1が代表取締役を務め,被控訴人Y1に先行して破産手続開始の決定を受けていたA株式会社(以下「A」という。)の債権者集会期日とは異なる日を,被控訴人Y1の第1回債権者集会期日に指定したこと(以下「第2行為」という。),③被控訴人Y1の破産申立てに際して提出された報告書には,Aが破産するに至った経緯についての記載がなかったところ,被控訴人Y1の破産管財人作成に係る業務要点報告書には,破産手続開始に至った経緯について「申立書記載のとおり」としか記載されていなかったにもかかわらず,神戸地方裁判所の裁判官は,破産管財人に対し,上記報告書の是正を命じなかったこと(以下「第3行為」という。),④控訴人は,被控訴人Y1の破産手続において,免責不許可事由がある旨主張していたにもかかわらず,破産管財人は,免責に関する意見書において具体的な理由を記載しないまま免責不許可事由はないとのみ記載した上,免責不許可事由に関する調査結果を裁判所に提出していなかったところ,神戸地方裁判所の裁判官は,破産管財人による上記調査の懈怠について何らの是正を命じなかったこと(以下「第4行為」という。),⑤大阪高等裁判所の裁判官は,控訴人の申立てに係る被控訴人Y1及びAの破産管財人の各報酬決定に対する抗告事件において,被控訴人Y1の破産管財人による具体的な理由の記載が一切ない「免責に関する意見書」のみに基づいて,破産管財人が必要な調査をしていることが明らかであると判示し,また,Aの破産管財人が税務申告を行った形跡がないにもかかわらず,破産管財人には税務申告を怠るなどの事情は認められない旨判示し,さらに,控訴人の申立てに係る記録の謄写申請に対し,同裁判所の裁判所書記官がした拒絶処分に対する異議事件(2件)において,謄写申請対象部分の特定がされていないとの理由で,上記各異議申立てをいずれも却下したこと(以下「第5行為」という。),⑥神戸地方裁判所の裁判官は,控訴人が破産債権者として述べた被控訴人Y1の免責についての意見を完全に無視して,免責不許可事由に該当する事実は認められないとして,免責許可決定をしたこと(以下「第6行為」という。),⑦大阪高等裁判所の裁判官は,控訴人が申し立てた被控訴人Y1についての免責許可決定に対する抗告事件において,被控訴人Y1に免責不許可事由が存在することは明らかであったにもかかわらず,控訴人が述べた被控訴人Y1の免責に係る意見を完全に無視した破産管財人や,神戸地方裁判所の裁判官の違法な職務執行を全く是正せず,著しく経験則に反する事実認定をして,控訴人の抗告申立てを棄却する旨の決定をしたこと(以下「第7行為」という。)が,いずれも違法な行為であって,控訴人に精神的苦痛を与えたとして,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく損害賠償として,慰謝料100万円,弁護士費用相当額10万円の合計110万円及びこれに対する平成28年1月20日(被控訴人Y1の免責不許可決定が確定した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。


第5 国家賠償請求事件における国の勝訴状況
1 首相官邸HPの「国家賠償訴訟の実情」によれば,平成7年から平成11年までの間の国家賠償訴訟の結果につき,国側が全部勝訴した事件の割合は約90%とのことです。
2 平成20年10月10日付の内閣答弁書には以下の記載があります。
   過去十年間において国家公務員の違法行為を理由として国家賠償法第一条第一項に基づき提訴され、国の敗訴(一部敗訴を含む。)が確定した訴訟の全件数及びその賠償額の合計等については、調査に膨大な作業を要するため、お答えすることは困難であるが、法務省において、平成十九年一月から平成二十年六月までの間について取り急ぎ調べたところ、現時点で確認できる範囲では、平成十九年に確定した右件数は十八件、認容された賠償額の元本の合計額は一億三千六百六万七千五百十八円であり、平成二十年一月から六月までの間に確定した右件数は十一件、認容された賠償額の元本の合計額は千五百六十一万五千九百三十三円であった。

第6 最高裁判所への報告事務に関する通達(裁判所関係国家賠償事件以外に関するもの)
・ 裁判事務に関連して,最高裁判所へ報告を要する事項及び外部機関へ通知等を要する事項のうち,規則,通達等に根拠があるものを記載した一覧表(平成31年4月時点)
・ 最高裁判所への報告及び外部機関への通知等に関する事務フローの確認について(平成27年12月22日付の最高裁判所総務局第三課長の事務連絡)
・ 民事訴訟事件及び行政訴訟事件の鑑定等の報告について(平成20年3月28日付の最高裁判所民事局長及び行政局長の通達)
・ 平成26年10月22日付の最高裁判所民事局第一課長等の事務連絡(原発損害賠償訴訟の報告依頼)
・ 非公表情報の裁判所外への提供及び電子メールの利用に係る特例について(平成27年7月31日付の最高裁判所情報政策課長通達)

第7 関連記事その他
1 予防司法支援制度
(1) 内閣官房HPに「国の利害に関係のある争訟等への対応に関する関係府省庁連絡会議」の議事次第及び配布資料が載っています。
   主として予防司法支援制度に関する説明が載っています。
(2) 行政機関のための予防司法支援制度利用の手引(平成29年3月付)を掲載しています。
2 公務員の法解釈の誤りが直ちに過失につながるわけではないこと
・ 最高裁平成16年1月15日判決は,以下のとおり判示しています。
   ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に,公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を遂行したときは,後にその執行が違法と判断されたからといって,直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではない(最高裁昭和42年(オ)第692号同46年6月24日第一小法廷判決・民集25巻4号574頁最高裁昭和63年(行ツ)第41号平成3年7月9日第三小法廷判決・民集45巻6号1049頁等参照)。
3 外部資料の記載
(1) 弁護士法人金岡法律事務所HPの弁護士コラム「裁判所相手の国賠、全滅」(2019年12月24日付)には以下の記載があります。
   刑事施設相手の国賠なら(金額の多寡はあれど)相当割合で違法過失が認定される自身の実績を思うと、被害者から見て同じ類の職務妨害に対し裁判所には全滅の憂き目に遭うことは、やはり、加害者の守られ方が半端ではないことに原因があると考えざるを得ない。
   判例法理とされる「当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情」を要求されては、かなりおかしな裁判官でも「そういう目的ではない」と言い抜けられる上に、事実がどうあれ立証は至難を極める。
   事実、どの事件であっても被告は基本、当該職務行為が何らかの法規範に反しているかという観点では殆ど応戦せず、「当該裁判官の違法又は不当な目的」を否定することに終始し、法規範違反について主張を戦わせようにも、裁判所も又、そこに逃げ込む。
   ついでに、多くの国賠事件が合議になるのに対し、裁判官相手の国賠は単独事件のままそそくさと進められ、上記「目的」立証のために張本人の裁判官の人証申請をしても却下される。
(2) 31期の瀬木比呂志裁判官が著した絶望の裁判所には以下の記載があります。
(90頁の記載)
   裁判長たちについても、前記のとおり、事務総局が望ましいと考える方向と異なった判決や論文を書いた者など事務総局の気に入らない者については、所長になる時期を何年も遅らせ、後輩の後に赴任させることによって屈辱を噛み締めさせ、あるいは所長にすらしないといった形で、いたぶり、かつ、見せしめにすることが可能である。さらに、地家裁の所長たちについてさえ、当局の気に入らない者については、本来なら次には東京高裁の裁判長になるのが当然である人を何年も地方の高裁の裁判長にとどめおくといった形でやはりいたぶり人事ができる。これは、本人にとってはかなりのダメージになる。プライドも傷付くし、単身赴任も長くなるからである。
(91頁の記載)
   事務総局は、裁判官が犯した、事務総局からみての「間違い」であるような裁判、研究、公私にわたる行動については詳細に記録していて、決して忘れない。たとえば、その「間違い」から長い時間が経った後に、地方の所長になっている裁判官に対して、「あなたはもう絶対に関東には戻しません。定年まで地方を回っていなさい。でも、公証人にならしてあげますよ」と引導を渡すなどといった形で、いつか必ず報復する。このように、事務総局は、気に入らない者については、かなりヒエラルキーの階段を上ってからでも、簡単に切り捨てることができる。なお、右の例は、単なるたとえではなく、実際にあった一つのケースである。窮鼠が猫を噛まないように、後のポストがちゃんと用意されているところに注目していただきたい。実に用意周到なのである。
(3) 現代ビジネスHPの「転勤を断ると出世できない…裁判官の世界はまるでサラリーマンのよう」には以下の記載があります。
   いわば、通り一遍の「評価書」を基本資料として、高裁長官案が作成され、最高裁事務総局人事局の任用課長が調整し、最高裁事務総長が承認する。それがそのまま最高裁長官案となり、裁判官の全国異動が始まるわけである。
   ただ、事務総長がチェックする最終段階で、人事案から外される裁判官もいる。
   「ある事務総長が、この裁判官は、事務総局には入れない。地方の裁判所に出せといって、高裁長官案を変更させたことがあります。
   かつて、その裁判官が、事務総局のトップに意見を言って、反感を買ったことがあった。その際、事務総局のトップは、俺の目の黒いうちは、こいつにはいい目をさせない、と言ったといいます。実に、その言葉通り、人事で冷遇したというわけです」(元裁判官)

4 関連資料
・ 法務省訟務局事務分掌規程(平成27年4月10日時点)
・ 法務局及び地方法務局訟務処理規則(平成6年12月5日付の法務省訟務局長通達)
・ 争訟事務に関する起案文例集〔訟務局用〕(第9版)の一部改正について(平成29年2月28日付の,法務省訟務局訟務企画課訟務調査室長の文書)
・ 争訟事務に関する起案文例集〔法務局・地方法務局用〕(第9版)の一部改正等について(平成29年2月28日付の,法務省訟務局訟務企画課訟務調査室長の事務連絡)
5 関連記事
・ 偶発債務集計表(平成20年度以降)
・ 裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申し出がなされた不服の処理状況
・ 裁判官の職務に対する苦情申告方法
・ 歴代の法務省訟務局長

スポンサーリンク