第1 家族の世話で生活が苦しくなったとき
1 名前に当てはまるかより、生活への影響を伝える
家族の介護や日常の世話を続ける中で、学校に行けない、眠れない、働く時間を確保できないという困り事が生じることがある。
相談の出発点は、自分が「ヤングケアラー」に該当するかを一人で判定することではなく、いま何に困り、どのような生活を望んでいるかを伝えることである。
家事や家族の世話をすること自体が、すべて過度の負担になるわけではない。
本人の年齢、心身の状態、世話の内容・頻度、休息や学習への影響を合わせて考える必要がある。
家族への思いを大切にすることと、本人が休み、学び、将来を選べることは、両方を支援の目的にできる。
2 身体介護だけでなく、見守りや生活の世話も対象になる
令和6年改正後の子ども・若者育成支援推進法15条1項は、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者を、支援の対象として明記している。
こども家庭庁等の令和6年6月12日付け通知は、きょうだいの世話、精神面の支え、家族のための通訳なども視野に入れている。
性別によって対象を限定する仕組みではなく、男性が担うケアも、本人の負担に即して把握する必要がある。
第2 現行法の支援と年齢の考え方
1 相談・生活環境・修学・就業を支える制度である
同法15条は、関係機関等が相談・助言、医療や療養、生活環境の改善、修学・就業などの支援に努めることを定める。
同条2項は家族等への援助も定め、16条は状況把握、関係機関の連携、適切な機関への誘導と継続的支援を求めている。
根拠条文は、子ども・若者育成支援推進法で確認できる。
これらは支援の枠組みを定める条文であり、ヤングケアラーと呼ばれることで一定額の給付や特定のサービスが自動的に受けられるという意味ではない。
介護保険、障害福祉、生活困窮者支援などの制度については、それぞれの対象要件、申請手続、地域の提供体制を確認する必要がある。
相談の際には、使える制度の一覧だけでなく、誰が申請を手伝い、いつから実際の負担を減らせるかまで確認したい。
2 18歳で一律に支援が終わるわけではない
令和6年の通知は、おおむね30歳未満を中心に、状況によっては40歳未満も対象となり得るという考え方を示している。
したがって、高校を卒業した、成人になったという理由だけで、支援の相談を諦める必要はない。
ただし、18歳未満の児童に対する制度と、18歳以上の若者に対する制度は同一ではない。
同通知が説明する要支援児童等のサポートプランの取扱いを、そのまま成人全員への同じ義務や給付制度として説明することはできない。
進学、就職、転居などで担当窓口が変わるときは、現在の担当者に、次の担当者と引継ぎの日程を確認することが実務上重要である。
第3 相談先の探し方と、最初に伝えること
1 学校・自治体・支援団体から相談できる
在学中であれば、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど、話しやすい人を入口にできる。
自治体のヤングケアラー相談窓口、こども家庭センター、地域の支援団体なども相談先になるが、開設状況や対象年齢は地域によって異なる。
こども家庭庁の相談窓口検索では、地域のほか、電話・SNS等の相談方法や「18歳以上も対応」などの条件を使って探せる。
成人の場合は対象年齢を確認し、匿名相談や本人以外からの相談の可否も、各窓口の案内で確かめるとよい。
窓口に連絡したときは、担当外と言われた場合にも、事情に合う次の窓口を一緒に探してほしいと伝えることができる。
2 メモは相談を助けるが、準備が整うまで待つ必要はない
相談を整理するためのメモとして、家族構成、世話の内容、1日の時間帯、学校・仕事への影響、睡眠や体調、利用中のサービス、家計の困り事、本人が減らしたい負担を書いておくと役立つ。
ここで挙げた項目は実務上の整理例であり、相談のためにすべてを記入しなければならない条件ではない。
家族の診断名や収入を正確に知らなくても、分かる範囲で状況を伝えて相談を始められる。
家族に知られることが心配な場合には、誰に何を伝える予定なのか、連絡方法をどうするのかを、最初に相談員と確認しておくとよい。
本人が家族の前では話しにくい事情について、別に話せる時間を設けられるか確認することも大切である。
第4 本人の支援と家族の支援をつなぐ
1 家族のサービスを増やすだけでなく、本人の時間を確保する
相談後は、家族の介護・医療・障害福祉等の支援と、本人の学習、休息、友人関係、進路の支援を合わせて考える必要がある。
家族側の制度で本人を当然の介護力とみなしたままでは、サービスがあっても本人の負担が残る可能性がある。
令和6年の通知も、子どもが介護等を担っていることを踏まえた適切なサービス提供を求めている。
実務上は、どの世話を誰が代わるのか、通学や勤務の時間帯に空白が生じないか、費用と開始時期はどうなるかを具体化すると、支援が生活の改善につながりやすい。
本人の役割を減らした後に家族の生活が成り立つかを確認し、本人だけに調整や説明を任せないことも重要である。
2 生活困窮・就労・家計の問題も一緒に整理する
世話の負担に、家賃や食費の不足、家族の失業、借金、本人の進学費用などが重なる場合は、ケアだけを切り離して扱うと解決が難しくなる。
自治体の生活困窮者支援窓口や福祉事務所等への相談を含め、家族の生活基盤と本人の将来を並行して検討したい。
利用できる支援の種類や条件は個別に確認する必要があり、この記事の説明だけで給付の可否を判断することはできない。
第5 弁護士への相談が役立つ場面
1 福祉の調整に加えて、権利・手続・契約の問題を確認する
弁護士への相談を検討する場面には、給付等の申請・決定をめぐる問題、借金や保証、家族間の金銭管理、学校や勤務先との紛争などがある。
すべてを直ちに訴訟にするということではなく、書類の意味、利用できる手続、交渉の相手、期限の有無を確認するためにも法律相談を利用できる。
相談の際には、決定通知、申請書の控え、契約書、請求書、学校や勤務先とのやり取りなど、問題に関係する資料を可能な範囲で持参すると整理しやすい。
通知を受けた日や返答を求められた日を記録しておくと、期限のある手続を検討する際に役立つ。
期限は制度や手続によって異なるため、一律の日数で説明せず、実際の通知と根拠規定を確認する必要がある。
2 本人の意思と、相談・代理の立場を区別する
家族を支援する弁護士と、本人の利益を守る弁護士が、常に同じ立場で対応できるとは限らない。
とくに未成年者の代理や家族間の利害が対立する場面では、誰が相談者・依頼者で、誰の意思に基づいて対応するのかを具体的に確認する必要がある。
学校や福祉機関等との情報共有では、共有の目的、相手、必要な情報の範囲を整理し、本人への説明を丁寧に行いたい。
同意が必要となる場面と、法令上の別の根拠による共有が認められる場面を区別する必要があり、「家族の同意がなければ一切相談できない」と一律に説明することは適切ではない。
本人が安心して話せる相談環境と、具体的な案件に応じた情報管理の両方を確認することが重要である。
第6 進学・就職・成人後に支援を切らさないために
本人が進学や就職を希望していても、家を離れた後の家族の世話が決まらなければ、進路を選ぶことが難しくなる。
実務上は、卒業や転居の前に、家族の世話の代替、本人の住まい・学費・就労、相談先の引継ぎを一つの予定として整理するとよい。
引継ぎ先の名称だけでなく、初回連絡の担当者、時期、連絡がつかなかったときの窓口も確認したい。
令和8年7月23日に関係省庁が決定したヤングケアラー支援の推進に向けた連携プロジェクトは、令和8年度から令和10年度までの取組を示し、福祉・介護・医療・教育・雇用の連携や、18歳以上を含む継続支援を扱っている。
これは国の取組方針であり、記載された施策がすべての地域で同じ内容・時期に実施済みであると理解することはできない。
個別の相談では、住んでいる地域でいま利用できる支援と、今後整える予定の支援を区別して確認する必要がある。
第7 出典・関連情報
現行法はe-Gov法令検索の子ども・若者育成支援推進法、制度運用は令和6年6月12日付け関係省庁通知、今後の国の取組は令和8年の連携プロジェクトを参照した。
相談先の最新の案内は、こども家庭庁のヤングケアラー特設サイトと相談窓口検索で確認できる。
ケア責任を社会全体でどう支えるかという政策の論点については、ケア責任とジェンダー平等―日弁連の令和8年提言と賃金・労働時間・社会保障の課題も参照されたい。
本記事は令和8年10月13日現在の資料に基づく。