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構内専用車の事故と損害賠償―フォークリフト・ショベルローダ,自賠責の加入義務及び政府保障事業(AI作成)

第1 構内事故では責任と保険を分けて確認する

1 最初に確認する四つの問題

工場・倉庫・作業場でフォークリフトやショベルローダによる人身事故が起きた場合,公道を走らない車両であることだけから,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)が適用されないとはいえない。

確認する順序は,①自賠法上の自動車か,②運行によって他人の生命又は身体を害したか,③自賠責保険・共済の契約締結義務があるか,④自賠責を利用できない場合に政府保障事業の対象になるか,である。
事故場所,車両の構造・用途,保険契約及び責任を負う者を,それぞれ別に整理する必要がある。

2 人身損害と物損を区別する

自賠法3条は,運行によって他人の生命又は身体を害した場合の責任を定める。
貨物,建物,他の車両などの損傷は,同条の対象ではない。
物損では民法上の不法行為責任等を別に検討し,対物賠償保険の対象も確認する。

また,自賠法3条の責任を負う運行供用者と,実際に車両を操作した運転者は必ずしも一致しない。
会社所有の車両,借用車両,無断使用などでは,所有名義だけで請求先を決めず,使用権限,管理状況及び事故時の運行との関係を確認する。

従業員が会社の車両を私用で無断使用した場合でも,会社の運行供用者責任が直ちに否定されるわけではない。
最高裁第三小法廷昭和39年2月11日判決(昭和38年(オ)第903号,民集18巻2号315頁)は,農業協同組合が終業後の無断使用を禁じていたものの,鍵の管理が必ずしも厳格でなく,運転手による無断運転の例も稀でなかった事案で,所有者と運転者との間に雇傭関係等の密接な関係があり,日常の運転及び管理の状況から客観的外形的に所有者のためにする運行と認められるときは,所有者は自賠法3条の責任を負うとした原審の判断を正当とした。
同判決は構内専用車の事案ではないが,構内専用車でも,鍵の保管方法,使用ルールの周知及び過去の無断使用への対応が,同じ判断の資料になると考えられる。
従業員による社用車の私用・無断運転と会社の責任,保険及び従業員への求償は,従業員が社用車を私用・無断で運転した事故と会社の責任で扱っている。

第2 構内専用車でも自賠法3条の責任が問題になる

1 自動車と運行の意味

自賠法2条の自動車は,道路運送車両法2条2項の自動車及び同条3項の原動機付自転車を引用した定義である。
ただし,農耕作業のために製作された小型特殊自動車は自賠法2条の定義から除かれるため,特殊車両という名称だけで一括して扱わない。

自賠法2条2項の運行は,人又は物を運ぶかどうかにかかわらず,自動車をその装置の用い方に従って用いることである。
事故車両の走行,荷役装置の使用,事故の発生過程及び受傷との関係を調べる。
車両が停止していたという一事だけで結論を出すことはできない。

3条ただし書による免責には,自己及び運転者が運行に関する注意を怠らなかったこと,被害者又は運転者以外の第三者に故意・過失があったこと,車両に構造上の欠陥・機能の障害がなかったことの証明が必要である。
「運転者に過失がない」という一つの事情だけで免責が成立するわけではない。

車両の故障が事故の原因となった場合でも,構造上の欠陥・機能の障害がなかったことを理由とする免責は容易に認められない。
東京高裁昭和48年5月30日判決(昭和47年(ネ)第2164号,判例秘書の判例番号 L02820309)は,ブレーキの故障による追突事故で,構造上の欠陥又は機能の障害とは,運行当時の自動車に関する機械工学上の知識と経験によって発生の可能性をあらかじめ検知できないものを除く,自動車自体に内在していたものをいうとし,有資格の整備実務者が注意深く点検しても検知できない故障であったという免責の主張を退けた。
同判決は,このように解しても,責任の原因は製造者又は専門整備業者等にあり,運行供用者はこれらの者に求償できると述べている。
大分地裁昭和47年3月2日判決(昭和43年(ワ)第187号,判例秘書の判例番号 L02750192)も,構造上の欠陥又は機能の障害には,保有者らにとって日常の整備点検によって発見できないものも含むとした。
フォークリフト等の故障が疑われる事故では,運行供用者の免責の可否とは別に,製造者,リース会社及び整備業者との契約,点検記録及び修理履歴を確認する。

2 最高裁昭和48年7月6日判決

最高裁第二小法廷昭和48年7月6日判決(昭和47年(オ)第650号,集民109号473頁)は,会社の作業所で従業員が運転していた会社所有のショベルローダにひかれた死亡事故について,会社が自賠法3条の責任を負うとした原審の判断を是認し,上告を棄却した。

同判決は,自賠法2条2項の運行が道路運送車両法上の運行より広く,工場敷地内や公園等道路以外の場所のみで自動車を当該装置の用い方に従い用いる場合も含むとした。
そして,会社の主張どおり作業所内のみで用いていたとしても,自賠法3条の責任は免れないとした。
また,同法10条によって自賠責の付保義務が適用されないことと3条の責任とは別個の問題であり,3条の適用が排除されることにはならないとした。

したがって,被害者側は「構内車だから自賠法を使えない」と判断せず,車両の自動車該当性,運行,被害者の他人性及び運行供用者を確認する必要がある。
会社側も,構内でしか使わないという理由だけで,事故に対する民事責任がないと考えるべきではない。

被害者の他人性では,被害者が運転補助者に当たるかも問題になる。
自賠法2条4項は,運転の補助に従事する者も運転者に含めており,運転者及び運転補助者は3条の「他人」に含まれないと解されている。
最高裁第三小法廷昭和57年4月27日判決(昭和54年(オ)第174号,集民135号793頁)は,作業現場でブルドーザーをダンプカーの荷台に積み込む際,ダンプカーを操作する同僚に具体的な指示をしていた先任者がブルドーザーごと転倒して死亡した事案で,先任者は運転補助者としてダンプカーの運行について「他人」に当たらないと解される余地があるとして,原判決のうち請求を認容した部分を破棄して高松高裁に差し戻した。

これに対し,最高裁第二小法廷平成11年7月16日判決(平成9年(オ)第317号,集民193号493頁)は,工事現場でクレーン車により鋼管くいを荷下ろしする際に好意で玉掛けを手伝ったトラック運転者について,荷下ろし作業を指示・監視すべき立場にも手伝う義務を負う立場にもなく,その作業が鋼管くいの落下の原因ともなっていないとして,クレーン車の運転補助者に当たらず「他人」に含まれるとした。
構内の荷役作業で被害者が誘導,合図又は玉掛け等をしていた場合は,作業の分担,指示の有無,作業を手伝う義務の有無及びその行為と事故との関係を確認する。

3 登録や税務上の扱いだけでは決まらない

昭和48年判決は,会社が主張するように運転免許や自動車登録が不要であり,税法上は減価償却資産のうち機械設備として扱われているとしても,そのことは自賠法3条の適用を左右するものではないとした。
固定資産台帳の勘定科目やナンバープレートの有無は確認資料であるが,自賠法上の責任の有無を直接決めるものではない。

これは,税務上の資産区分を一律に決める判決ではない。
民事責任の判断と,会計・税務上の処理は目的と根拠を分け,車両の仕様,使用状況,契約及び帳簿資料を共有して検討する必要がある。
修理費,保険金,全損・除却等の処理は,事業用車両の交通事故の会計・税務を参照されたい。

第3 自賠法10条の付保義務の例外

1 道路以外の場所だけで使用する車両

自賠法5条は,自賠責保険又は共済の契約を締結した車両でなければ運行の用に供してはならないと定める。
これに対し,同法10条は,道路以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車等について,5条などの適用を除外する。

10条の道路には,道路法上の道路,自動車道に加え,一般交通の用に供する場所も含まれる。
私有地,駐車場又は工場の敷地であるという名称だけから,道路以外の場所と決めることはできない。
出入口,通行者,入場管理,通行の実態及び車両の通常の使用範囲を確認する。

2 未登録・保安不適合・未付保とは別の問題である

保安基準に適合しないこと,登録又はナンバーがないこと,自賠責に加入していないことと,10条の構内専用車に当たることは別である。
公道を適法に走行できない車両であるという事情だけから,付保義務が除外されるとはいえない。

特に電動キックボードやペダル付き原動機付自転車では,販売時の「公道走行不可」という表示だけで自賠法の適用を除外しない。
構造・性能と実際の用途・走行場所を確認する。
車両区分と事故後の保険確認は,電動キックボード・モペット事故の責任と保険で説明している。

第4 政府保障事業では事故場所も確認する

1 構内専用車の事故がすべて対象になるわけではない

政府保障事業は,自賠責による救済を受けられない一定の人身被害を国がてん補する制度である。
ただし,自賠法72条1項2号は,同法10条の自動車の運行によって責任が生ずる場合を除外している。

そのため,自賠法3条の責任が成立することと,政府保障事業によるてん補を受けられることは別に判断する必要がある。
構内専用車による構内事故について,付保義務がなく,かつ3条の責任が成立するからといって,政府保障事業も当然に利用できると結論してはならない。

2 最高裁平成5年3月16日判決

最高裁第三小法廷平成5年3月16日判決(平成3年(オ)第260号,集民168号21頁)は,自賠法10条の道路以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車であっても,その本来の用途から外れて道路上を走行中に事故が発生し,自賠責の被保険者以外の者が同法3条の責任を負う場合には,同法71条の政府の自動車損害賠償保障事業の適用があるとした。

同判決は,この自動車に当たるフォークリフトの事故が道路上を走行中に発生したものであるとして,政府保障事業の適用を認めた原審の判断を是認し,上告を棄却した。
また,被害者の相続人に自賠法72条1項による損害のてん補をし,そのてん補額の限度で責任者に対する損害賠償請求権を代位取得したとする請求を認めた原審の判断も是認している。

この判決を用いる場合は,本来の構内用途と事故時の道路上走行を分けて確認する。
道路以外の場所で起きた事故について,同じ判決から政府保障事業の適用を直ちに導くことはできない。

3 他の給付と物損の確認

政府保障事業は車両や貨物の修理費などの物損を対象としない。
また,自賠法73条により,健康保険・労災保険等の他法令給付や責任者からの賠償との調整がある。
どの給付がどの損害に対応するかを,支払者,金額,期間及び費目ごとに整理する。

制度の請求窓口,必要書類及び時効については,政府保障事業と無保険車傷害特約を参照されたい。
受付手続の現行案内は,国土交通省「政府保障事業」で確認する。

第5 相談・事故対応で残す資料

1 車両・現場・管理状況

被害者側と会社側のいずれでも,修理,返却又は廃棄の前に,車名,型式,車台番号,装置,銘板,車両全体及び損傷箇所を記録する。
現場図,出入口,入場制限,事故地点,車両の進路,荷役作業の内容,防犯カメラ及び目撃者の情報も保存する。

所有者,借主,実際の管理担当者,操作した者及び使用を指示・許可した者を分け,鍵の保管,使用ルール,無断使用の有無,通常の運行範囲及び道路への出入りを確認する。
現場担当者は事故状況と映像,車両管理担当者は仕様・整備・使用履歴,保険担当者は証券・約款・事故通知を揃え,法務担当者へ集約するとよい。
これは事案を整理するための実務上の提案である。

2 請求先と保険を別々に照会する

自賠責,任意の自動車保険,施設賠償責任保険その他の業務用保険は,証券,適用約款,対象車両,被保険者及び対象事故をそれぞれ確認する。
自賠責の加入義務が除外されることだけで,他の保険も使えないと判断しない。
逆に,会社が何らかの賠償保険に加入していることだけで,車両事故が補償されるとは限らない。

診療記録,休業資料,給付・既払金の明細と,請求先ごとの期限も管理する。
事故状況又は責任者が争われる場合や,保険会社から対象外と回答された場合には,結論の根拠となる条項と事実を確認し,示談前に請求先・請求額を検討する必要がある。

第6 出典と判決の適用範囲

法令は,自動車損害賠償保障法2条・3条・5条・10条・72条・73条及び道路運送車両法2条を参照する。

裁判例は,最高裁第二小法廷昭和48年7月6日判決の原文(昭和47年(オ)第650号,集民109号473頁)及び最高裁第三小法廷平成5年3月16日判決の原文(平成3年(オ)第260号,集民168号21頁)による。

昭和48年判決はショベルローダ,平成5年判決はフォークリフトの事故を扱う。
電動キックボードの個別製品について,自動車該当性や保険の補償範囲を判断した判決ではない。
車両の仕様・用途,事故の場所・態様及び当該保険契約に即して適用を検討する必要がある。

運行供用者及び運転補助者については,最高裁第三小法廷昭和39年2月11日判決の原文(昭和38年(オ)第903号,民集18巻2号315頁),最高裁第三小法廷昭和57年4月27日判決の原文(昭和54年(オ)第174号,集民135号793頁)及び最高裁第二小法廷平成11年7月16日判決の原文(平成9年(オ)第317号,集民193号493頁)による。
構造上の欠陥又は機能の障害については,判例秘書で本文を確認した東京高裁昭和48年5月30日判決(昭和47年(ネ)第2164号,判例秘書の判例番号 L02820309)及び大分地裁昭和47年3月2日判決(昭和43年(ワ)第187号,判例秘書の判例番号 L02750192)による。