古川正孝裁判官(14期)の経歴


生年月日 S11.9.11
出身大学 京大
退官時の年齢 65 歳
H13.9.11 定年退官
H2.4.1 ~ H13.9.10 大阪高裁12民判事
S58.7.1 ~ H2.3.31 大阪地裁24民部総括
S55.4.1 ~ S58.6.30 大阪高裁判事
S53.4.1 ~ S55.3.31 札幌地裁3民部総括
S50.4.1 ~ S53.3.31 高松地家裁丸亀支部判事
S47.4.10 ~ S50.3.31 大阪地裁判事
S47.4.1 ~ S47.4.9 大阪地裁判事補
S45.4.10 ~ S47.3.31 富山地家裁高岡支部長
S44.4.21 ~ S45.4.9 富山地家裁高岡支部判事補
S40.4.16 ~ S44.4.20 大阪地家裁判事補
S37.4.10 ~ S40.4.15 名古屋家地裁判事補

(殿山ダム水害訴訟に関する大阪高裁判決)
*1の1 大阪高裁平成12年12月22日判決(担当裁判官は17期の井筒宏成14期の古川正孝及び37期の和田真。判例体系に掲載)は,関西電力が日置川(ひきがわ)上流に設置した殿山ダム(昭和32年5月運転開始。有効貯水容量は1379万5000トン)において平成2年9月の台風19号に伴い実施した放流による下流域の浸水被害について,関西電力と二級河川管理者である和歌山県に対してした損害賠償請求がいずれも棄却された事例です。
*1の2 大阪高裁平成12年12月22日判決は,例えば,「原判決別図第2の流域平均雨量、貯水位、流量の変化からも明らかなとおり、6門のゲートを全て開放せざるを得ない状況になった(山中注:この場合の放流量は毎秒3000トンになります。)のは、19日17時から20時までの異常な降雨による。たとえ、台風の上陸が確実視され、大雨・洪水警報が発令されていたとしても、右のような、特異な降雨状況をたどることまで予測することは通常できない。」とか,
「河川法52条に基づく指示(山中注:洪水調節のための指示)が、前記のとおり緊急・例外的な措置であると考えられる点等を総合考慮すると、(山中注:従前から豪雨の都度洪水が発生する日置川の現状にかんがみ,台風の上陸が確実視され,日置川周辺に大雨・洪水警報が発令された段階で,)知事(実際上は、被控訴人県の土木部河川課長等)が、河川法52条の指示を行わなかったことが裁量権を逸脱した著しく不合理なものであるとは認められない。」と判示しています。
*1の3 四国最大のダムである早明浦ダム(有効貯水容量は2億8900万㎥であり,殿山ダムの20倍以上です。)の場合,計画最大放流量は毎秒2000㎥(つまり,2000トン)です(国土交通省四国地方整備局HPの「早明浦ダム定期報告書 概要版」18頁参照)。
(殿山ダム)
*2の1 Wikipediaの「殿山ダム」には以下の記載があります。
① 1990年平成2年)および1997年(平成9年)の水害に対しては、被害に見舞われた流域住民が殿山ダムを管理する関西電力、そして日置川を管理する和歌山県を相手取り、損害賠償をめぐって訴訟を起こす事態になった。裁判では原告側の敗訴という結果となっているが、このように水害の度に殿山ダムの責任を問う声が上がるのは、殿山ダムが日置川水系唯一のダムであるためでもあり、関西電力も殿山ダムの改修や運用の見直しを行っている。
② 殿山ダムが完成した当時は電力不足という時代背景もあって、発電を最優先し水位を満水位近くで維持する運用がとられていた。
(中略)
殿山ダムのオリフィスゲート(山中注:ダムの比較的浅い位置に設置される放流ゲートのこと。)は任意の開度で固定しておくことができなかった。これでは、たとえ1門ずつ開いていったとしても、1門あたりの放流量が最大525立方メートル毎秒と大きいため、下流はたちまち大洪水である。関西電力は低水位運用の開始に合わせてオリフィスゲートを部分開操作(パーシャル操作ともいう)できるよう改修を行った。
(中略)
関西電力は課題であった部分開時の振動および噴流の問題を研究・解決し、2006年平成18年)にようやく全門の部分開操作を可能とした。

*2の2 前坂俊之オフィシャルウェブサイト「高杉晋吾レポート(24)ルポ ダム難民⑧ ダム災害にさいなまれる紀伊半島⑧殿山ダム裁判の巻①」には以下の記載があります(42期の林功弁護士(令和4年8月7日死亡)は私の所属事務所の前所長でした。)。
ダム(山中注:殿山ダム)本体にはクレストゲートが六門あり、その下部にオリフイスゲートが六門ある。計12門のゲートがある。
私たちが現地に行ってみたとき、このゲートの大規模な取り換え工事を行っていた。
林功弁護士は国土研究」で説明している。
「一門開けると毎秒約500トンが流れ出る」。
単純計算すると、六門開けると3000トン流れる。一分間で一八万トン流れ、一時間で一千八十万トン流れる。例によって巨船に例えると二十二万トンの巨船が約五十隻、猛烈な噴流となって日置川に流れるということになる。
林氏の説明は続く。
「このゲートの内側の二門は開き具合の調節が出来ます。ゲートの開き方を調節して、毎秒二百トンの流量にしようというような事が出来るわけです。しかし外側の四門についてはそういう調節が不可能で、途中で自由な開閉操作は出来ない。操作できる二門も開け始めて開け終わるまでに二十分間は掛り、閉じ始めても二十分間はかかる。
ダムゲートの開閉と簡単に言うが、その開閉にはかなりの時間がかかるというのである。
(中略)
「最近になって住民の批判が鋭くなって、関西電力は若干態度を改めて、和歌山県と協議して治水に役立つように、事前に放水を行うように協定を結ぶ方向に姿勢を改めています」
だが、裁判所も、事実を調査して判決を下すのではなく、完全に、大企業や行政の立場しか耳をかさずに住民原告の全面敗訴を言い渡していた。
消防団も、河川での漁を行っている人も、ダムの放水で急激に日置川が増水し、避難する暇もなく水害の中を逃げ惑ったという証言を216人が行った。しかし裁判官はこれらの証言を一切無視し住民原告の敗訴を言い渡したのである。
(事前放流)
*3の1 庄司勝和歌山県県土整備部長は,令和2年6月19日の和歌山県議会において以下の答弁をしています。
 本県におきましては、平成23年9月の紀伊半島大水害を契機として、全国に先駆けて、洪水対策の一つとして、事前にダムの水位を低下させ空き容量を確保する事前放流を積極的に実施してきました。
 具体的には、県内の二川ダム、椿山ダム、七川ダム、殿山ダムの四つのダムにおいて、平成24年5月に、利水事業者である関西電力株式会社と事前放流に関する協定を締結しました。
 本協定に基づき、これまで計50回の事前放流を行い、下流地域における浸水被害の軽減を図るなど、住民の安全・安心の確保に努めています。
*3の2 和歌山県HPに載ってある「知事からのメッセージ 令和4年7月19日」には以下の記載があります。
 下部の利水のために貯められた水は関西電力の営業資産であって、このため、関西電力はダム建設の時も応分の負担を払っているのですが、通常はこの水を抜いて、それによってできる空間を治水のために使おうなどと考えた人はいませんでした。
 しかし、人の命にはかえられませんので、私は思い切って、関西電力に洪水が予想されるときは利水用の水も県の要請によって事前に放流してくれませんかと頼むことにしました。そして、(山中注:平成23年の紀伊半島大水害によって)ちょうど全県でズタズタになった電力供給の復旧の経過報告に来庁された当時の関西電力の八木社長に直訴したわけです。そうしたら、八木社長は「商売も大事ですが、人命にはかえられません」と一発で快諾してくれました。
(中略)
 私は、このアイデアと実際の顛末を国交省に何度も報告し、全国のほかの河川のダムでも同じような方法をとったら洪水リスクがうんと減るのではないかと進言しました。しかし、その後何年もこの方式が採用されることはありませんでした。和歌山県だけが大型台風の襲来の度ごとに、県から関電に協力要請をしてダムの水を極限まで抜き続けていたのです。他はやっていません。そしてついに悲劇が起こりました。平成30年7月豪雨で愛媛県の国管理河川の肱川が増水し、そこにある野村ダム、鹿野川ダムが洪水調整のできる量を超える増水のため、「ただし書放流」(山中注:洪水調節ができないほどダムに水が溜まった場合に行う,流入量と同じ量となる放流)のやむなきに至り、結果的には8人もの尊い人命が失われました。
*3の3 和歌山県HPに載ってある「事前放流実績(運用開始~現時点)」によれば,平成24年から令和3年までの10年間で,殿山ダムでは事前放流が12回実施されました。
*3の4 和歌山県と関西電力の以下の協定書を掲載しています。
・ 緊急時におけるダム利水容量の有効活用に関する協定書(平成24年5月29日付の,和歌山県と関西電力の協定書)→二川ダム,椿山ダム及び七川ダム
・ 緊急時におけるダム利水容量の有効活用に関する協定書(平成24年5月29日付の,和歌山県と関西電力の協定書)→殿山ダムに関するもの
*3の5 国土交通省HPに「事前放流ガイドライン」(令和2年4月の国土交通省水管理・国土保全局の文書)が載っています。


(その他)
*4の1 国土交通省の川の防災情報HP「殿山ダム 日置川水系 日置川」が載っていて,和歌山県HPに「ダム観測所:殿山ダム」が載っています。
*4の2 八ッ場あしたの会ブログ「豪雨が来たら気をつけたい。専門家が選ぶ「危険なダム ワースト10」」(2018年9月1日付)によれば,和歌山県の殿山ダムは危険なダム10位になっています。
(関連記事)
*5 以下の記事も参照してください。
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部


スポンサーリンク