目次第1 本記事の結論と資料状態第2 平成13年度の件数をどう読むか1 新受・既済・破棄件数2 「上告成功率」と読んではならない理由3 自判と差戻し第3 原判決に反復して現れる十の誤り第4 公式全文を確認した代表8判決第5 上告・抗告実務への落とし込み1 入口から確認する2 主張・証拠・推論を対応させる3 自判か差戻しかを先に設計する第6 旧法判例を現行事件に使う翻訳手順第7 関連記事第8 出典・確認範囲・限界
第1 本記事の結論と資料状態
平成13年度の最高裁民事破棄判決等は,破棄判決60件,破棄決定10件である。重要なのは件数自体より,原判決の誤りを,①手続入口,②法的根拠,③判断枠組み,④主要事実,⑤証拠評価,⑥理由・主文,⑦自判・差戻しという順序で監査できる点にある。
本記事の年度全体の整理は,矢尾渉「最高裁民事破棄判決等の実情―平成13年度」(判例時報1783号・1784号・1786号・1787号・1789号,5回連載,合計109頁)に基づく。これは最高裁判決そのものではなく,事件を発見し分類するための二次資料である。解説部分には筆者の見解が含まれるため,判旨と区別する。
代表8事件については,裁判所ウェブサイトの公式全文PDFを通読した。これらは【裁判所公式全文確認済み】である。他方,平成12年(受)第1956号事件等,年次論文本文で把握したが裁判所公式全文を確認できていない事件は【判例時報論文本文確認済み/一次資料未確認】として扱う。判例秘書は照会しておらず,照会0件,ヒット不明,本文確認0件である。
第2 平成13年度の件数をどう読むか
1 新受・既済・破棄件数
新受事件は,上告事件2293件,上告受理事件2314件の合計4607件であり,並行申立てを調整した年次論文上の新受件数は3327件である。既済事件は,旧法上告82件,新法上告2183件,上告受理2089件の合計4354件であり,並行申立てを一件として調整すると3028件である。
判決又は決定による終局処理の調整後件数は2945件で,破棄判決は60件,その割合は約2・04%である。破棄決定は10件であり,許可抗告既済53件に対する割合は約18・9%である。
破棄判決60件の結果は,差戻し24件,自判39件で,双方に該当する事件が3件ある。旧法事件24件,新法事件36件であり,新法事件は上告8件,上告受理28件である。職権破棄9件,論旨に基づく破棄53件で,重複が2件ある。民集登載18件,集民のみ14件,いずれにも登載されないものが28件である。
2 「上告成功率」と読んではならない理由
約2・04%は,平成13年度に判決又は決定で終局処理された事件を分母とし,破棄判決だけを分子とした年度集計比率である。依頼者の事件が破棄される確率を示すものではない。分母には棄却・却下・不受理等が含まれ,上告と上告受理申立ての並行事件も調整されている。
破棄決定10件の約18・9%は,許可抗告既済53件を分母とする別の比率である。破棄判決60件と破棄決定10件を足し,2945件で割って一つの「成功率」にすることは,手続と分母を混同する。
3 自判と差戻し
法律判断を訂正した後,原審が適法に確定した事実だけで結論を出せるときは自判が可能である。正しい判断枠組みによる事実認定,抗弁・再抗弁の審理又は損害額の算定が残るときは差戻しとなる。破棄を求める書面では,違法の指摘だけでなく,訂正後に残る争点を示す必要がある。
第3 原判決に反復して現れる十の誤り
①手続入口を本案より後に回す誤り:訴えの利益,当事者適格,既判力,不服申立ての利益及び抗告権者を,本案の正誤とは別に確認する。
②当事者が主張していない合意を判決の基礎にする誤り:請求原因,抗弁及び再抗弁の主要事実を準備書面の引用箇所まで対応させる。平成12年(受)第1956号事件はこの論点の探索材料であるが,今回の資料状態は【一次資料未確認】である。
③推論の鎖を示さず経験則を用いる誤り:認定事実,当時可能だった検査・行為,予見可能性,実際の措置及び結果を時系列でつなぐ。典型所見が一つ欠けることだけで結論を出さない。
④信義則を自由な割合調整に使う誤り:周知,情報格差,管理可能性,異常利用の検知時点,回収可能性及び最終負担者を先例と比較する。
⑤対称的な類推を当然視する誤り:不足の場合の法定責任があることから,超過の場合にも反対方向の請求権があるとは限らない。制度目的と不利益を受ける者を確認する。
⑥特別の期間と一般の消滅時効を二者択一にする誤り:通知・除斥期間,請求権の時効,形成権の行使期間,起算点,完成猶予・更新及び経過措置を別々に検討する。
⑦担保取引の四層を一つに潰す誤り:契約・担保権の成立と範囲,目的債権の特定,第三者対抗要件,取立て・実行・倒産時の処遇を分ける。
⑧未確立の選択肢を説明対象から外す誤り:患者の強い関心,相当数の実施例,適応可能性,医師の知識及び紹介可能性を具体的に確認する。
⑨事実・アイデアと創作的表現を混同する誤り:共通部分を,事実・アイデア,ありふれた表現,創作的表現に分解し,依拠性と本質的特徴の直接感得可能性を別に論証する。
⑩法定の方式を実質的合意で代替する誤り:合意の存在,契約上の効力及び法定の規範的効力を区別し,書面・署名又は記名押印・当事者権限を証拠化する。
第4 公式全文を確認した代表8判決
判決主題実務上の学び
最三小判平成13年3月13日
平成12年(受)第192号労働協約の方式実質的合意と労働組合法14条の規範的効力を分ける。
最三小判平成13年3月27日
平成7年(オ)第1659号ダイヤルQ2無断利用信義則上の請求制限は,情報格差,管理可能性及び異常利用の検知時点等の事実に結び付ける。