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裁判所

立退料の増額・減額と引換給付判決―申立事項の解釈と不意打ち防止(AI作成)

目次

第1 金額の相当性と判決できる範囲を分ける1 正当事由の判断2 申立事項の判断第2 最高裁昭和46年判決が扱った申出1 申出には範囲の限定があった2 判決の前提を一般的な上限規則にしない第3 増額を検討するときの確認順序1 現実の意思を記録から読む2 不明な部分について判決の効果を比較する3 被告の防御機会を確認する第4 減額は原告に有利でも自動的には許されない1 原告の申立てに含まれるか2 被告に何が予告されていたか第5 訴訟代理人が残す記録第6 出典及び関連記事1 一次資料と確認範囲2 関連記事

立退料の金額を裁判所が判断する場面では,金額の相当性と,その条件で明渡しを命じられるかを分けて検討する必要がある。申出額を超える判決も,申出額より少ない判決も,金額の大小だけで一律に処理できない。

第1 金額の相当性と判決できる範囲を分ける
1 正当事由の判断

借地借家法6条は土地の更新拒絶について,同法28条は建物の更新拒絶・解約申入れについて,使用の必要性その他の事情とともに,財産上の給付の申出を正当事由の判断要素にしている。土地と建物では対象条文が異なる。

最高裁昭和46年11月25日第一小法廷判決は,旧借家法の店舗明渡しの事案で,立退料の提供を他の事情と総合して正当事由を判断することを示した。金銭の提供だけが独立の正当事由になるわけではなく,借家人の損失を必ず全額補償するという制度でもない。

2 申立事項の判断

民事訴訟法246条は,当事者が申し立てていない事項について裁判所が判決することを禁じている。立退料として相当な額が分かっても,その額を条件とする明渡しが申立ての範囲に含まれるかは,別に検討しなければならない。

本記事では,①原告が現実に求める権利保護の範囲,②意思が不明な部分を補う合理的な解釈,③被告に予告された不利益の範囲,の順に整理する。この手順は,法務省の令和3年司法試験の出題の趣旨・採点実感が説明する検討を実務の確認事項へ整理したものである。

第2 最高裁昭和46年判決が扱った申出
1 申出には範囲の限定があった

最高裁昭和46年11月25日第一小法廷判決(昭和41年(オ)第1005号,民集25巻8号1343頁)は,賃貸人が300万円,又はそれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う意思を表明した事案を扱った。

判決は,500万円の支払との引換えに店舗明渡しを認めた原審の判断を是認した。原文の申出は,裁判所が相当と考える金額を無制限に受け入れるというものではない。「格段の相違のない一定の範囲内」という限定を落とすと,判決の前提が広がってしまう。

2 判決の前提を一般的な上限規則にしない

同判決から,裁判所があらゆる事案で申出額を自由に超えられるとはいえない。他方,格段の相違を超える増額を,どのような申立てでも一律に禁止した判決として扱うこともできない。

法務省の令和3年司法試験の公式解説は,申出の内容が異なる問題について,この判決だけで結論を出さず,訴状と期日の陳述から原告の意思を具体的に検討することを求めている。最高裁の当該事案での判断と,申立てが異なる場合の解釈を分けて読む必要がある。

第3 増額を検討するときの確認順序
1 現実の意思を記録から読む

まず,請求の趣旨,準備書面,口頭弁論期日の陳述を読み,原告がどの条件まで明渡しを求めているかを確認する。特定額を上限として明渡しを求めるのか,裁判所の判断による別の額を含めるのか,申出の範囲を明らかにする。

「必要なら増額を検討する」という発言と,特定の増額を受け入れて支払う意思の確定は,同じではない。交渉の用意を表した文言から,具体的な支払意思を直ちに認定しない。

2 不明な部分について判決の効果を比較する

原告の意思がなお不明な場合は,必要な立退料を条件とする判決ができないときに,どのような判決になるかを先に特定する。申出額では正当事由を補完できないという前提なら,比較対象は請求棄却となる。

その上で,請求棄却と増額を条件とする明渡判決を比較し,通常の原告がどちらを望むかを検討する。引換条件は,原告に対する独立の金銭支払命令とは区別されるため,明渡しを実現するための選択肢が残るという効果が問題になる。

ただし,これは意思の不明な部分を補う解釈である。原告が明確に示した上限を,原告に有利に見えるという理由で取り払う手順ではない。高額条件が交渉へ与える影響など,反対方向の事情も確認する。

3 被告の防御機会を確認する

増額すると被告が受ける金額は多くなるが,それだけで全ての手続上の問題が解消するとは限らない。明渡しを求める範囲,金額の評価資料,期日での説明と被告の反論・立証機会を記録に即して確認する。

第4 減額は原告に有利でも自動的には許されない
1 原告の申立てに含まれるか

立退料を減らせば原告の負担は軽くなる。しかし,特定額の支払との引換えを条件に申し立てている場合に,より少額を条件とする判決がその申立てに含まれるかは,原告の意思の解釈を要する。「一部認容だから当然に許される」とだけ説明しない。

2 被告に何が予告されていたか

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裁判所支部の機能拡充と地域司法アクセス―新設・弁護士偏在・デジタル化の課題(AI作成)

目次

第1 裁判所支部の機能拡充とは何か1 支部の数と利用できる機能は別である2 現在の組織数と取扱事件第2 支部新設と人員配置に関する裁判所側の説明1 新設・復活は人口だけで決まらない2 非常駐庁は近隣庁からの出張で対応するという説明3 高裁支部の出張開廷を求める地域の要望第3 家裁支部・家裁出張所での課題1 家裁調査官の配置と出張による対応2 受付出張所でも出張調停等が行われる3 日弁連が求める人的・物的基盤の充実第4 弁護士ゼロ・ワン支部と司法アクセス1 ゼロ・ワン支部の意味と最新の地図2 人数の改善だけではアクセスの充足を判断できない第5 民事裁判のデジタル化は何を改善し,何を残すか1 民事訴訟のデジタル化と他の手続の区別2 機動的審理運営と地域司法への影響3 対面の必要性と利用支援第6 地域の利用環境を確認する観点第7 関連記事と出典1 関連記事2 出典
第1 裁判所支部の機能拡充とは何か
1 支部の数と利用できる機能は別である

裁判所支部の機能拡充とは,支部を新設することだけでなく,既存支部で取り扱える事件,裁判官・調査官の配置,開廷や相談の機会,設備及び手続利用の支援を充実させることである。
支部が近くにあっても,必要な事件を本庁でしか扱わず,開廷日が限られ,必要な調査が別の庁からの出張に依存する場合には,地域住民の利用に負担が残る。

他方,専門的な事件を特定の庁で取り扱うことには,人員と経験を確保する意義もある。
身近な場所で利用できることと,適切な事件処理を行う体制をどう両立するかが,地域司法アクセスの課題である。

2 現在の組織数と取扱事件

裁判所データブック20261頁によれば,地裁支部・家裁支部は各203庁である。
このうち合議事件を扱う支部は地裁・家裁ともに63庁,少年保護事件の審判事務を扱う家裁支部は102庁である。
支部の存在と,すべての事件類型を支部で扱うこととは一致しない。

全国の支部名と権限は,地方裁判所支部及び家庭裁判所支部を参照されたい。
個々の事件での提出先・本庁集約・開廷頻度は,全国の地方裁判所支部における本庁集約と開廷頻度で扱っている。

第2 支部新設と人員配置に関する裁判所側の説明
1 新設・復活は人口だけで決まらない

平成27年5月22日の衆議院法務委員会答弁は,支部を含む裁判所の配置について,人口動態,交通事情,事件数の動向,IT技術の進展等を考慮し,アクセスと司法サービスの質を総合して,国民の利便性を確保する見地から検討するものと説明した。
当時,複数地域に設置要望があることを認識しつつ,直ちに新設・復活が必要な状況とは考えていないと答弁し,必要があれば新設・統廃合を含めて見直すとしている。

これは平成27年当時の答弁であり,個々の地域の現在の人口,交通事情,事件動向についての判断を示すものではない。
支部新設の必要性を検討するには,最新の地域資料を基に,実際に司法サービスを利用する人の負担まで確認する必要がある。

2 非常駐庁は近隣庁からの出張で対応するという説明

令和7年4月10日の参議院法務委員会答弁は,裁判官又は家裁調査官が常駐していない庁では,近隣庁に配置された職員が実情に応じて出向き,事件を担当する体制を取っていると説明した。
全支部への裁判官常駐については,国の予算で運営する公的機関として,業務量に見合った配置を考える必要があるとの立場を述べている。

この説明から,裁判所側が業務量を配置判断の要素にしていることは分かる。
しかし,個別支部の必要人数,出張の十分性,利用者が希望する時期に手続を利用できるかは,この答弁だけでは判断できない。
定員,実際の在籍人数,担当裁判官,開廷日割を区別して調べる必要がある。
下級裁判所の裁判官の配置定員も参照されたい。

3 高裁支部の出張開廷を求める地域の要望

鹿児島県弁護士会の平成18年3月2日付け申入書は,福岡高裁宮崎支部が扱う鹿児島地裁管内の民事控訴事件について,鹿児島地裁での出張開廷等の対策を求めた。
当時の移動負担に加え,名瀬支部を第一審とする事件では離島からの移動が控訴の利用を妨げかねないことを理由としている。
同書が引用する平成15年の地域司法計画は,鹿児島への高裁支部の新設又は移転と,宮崎支部の裁判官が鹿児島で審理する方式とを別の案として述べている。

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裁判所支部・簡易裁判所・家裁出張所の統廃合史―昭和63年・平成2年の再編と支部新設(AI作成)

目次

第1 裁判所の統廃合を読む際の区別1 支部,簡易裁判所,家裁出張所は別の組織である2 廃止と事務移転,決定と開庁を区別する第2 昭和63年の簡易裁判所・家裁出張所の再編1 昭和62年法律第90号による簡易裁判所の統合2 併置された家裁出張所37庁の統合第3 平成2年4月の地家裁支部41庁の廃止1 併設簡易裁判所は存続した2 20か所で家裁出張所を設置した3 最高裁側の説明と日弁連のコメント第4 苫小牧支部・相模原支部の新設1 新設の決定と実際の開庁2 再編の主な経過第5 現在の裁判所配置へどうつながるか1 令和8年の組織数2 出張所の名称だけでは審理場所は決まらない第6 関連記事と出典1 関連記事2 出典
第1 裁判所の統廃合を読む際の区別
1 支部,簡易裁判所,家裁出張所は別の組織である

昭和63年の簡易裁判所等の統合と,平成2年の地方裁判所・家庭裁判所支部の統合は,別の再編である。
同じ庁舎に地裁支部,家裁支部及び簡易裁判所が置かれていても,支部だけが廃止され,簡易裁判所が残ることがある。
旧家裁支部の所在地に家裁出張所が設置される場合もあり,「裁判所がなくなった」という表現だけでは,何が廃止され,何が存続したのか分からない。

制度の違いは,裁判所支部とは―本庁・支部・出張所の違いと管轄・提出先の調べ方で整理している。
本記事は,昭和63年・平成2年の再編と,その前後の支部新設について,法令・国会答弁等から確認できる経過を説明するものである。

2 廃止と事務移転,決定と開庁を区別する

法令上の組織を廃止することと,組織を残したまま他庁で事務を取り扱うことは,区別する必要がある。
支部新設についても,方針を決定した年,規則を改正した時点,庁舎を整備して実際に開庁した年が一致するとは限らない。
沿革資料を読むときは,日付がどの段階を指すのかを確認することが重要である。

本記事が扱う地家裁支部・簡裁・家裁出張所の再編と,高裁支部の設置・廃止は別の経過である。臨時司法制度調査会の高裁支部原則廃止の提言,函館支部の廃止及び那覇支部の設置は,高等裁判所支部の設置・廃止の歴史で整理している。提言と実施,対象となる組織を区別して読む必要がある。

第2 昭和63年の簡易裁判所・家裁出張所の再編
1 昭和62年法律第90号による簡易裁判所の統合

下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律は,昭和62年9月11日法律第90号である。
同法は,簡易裁判所の設立・管轄に関する別表を改め,廃止庁の事件について受入簡易裁判所への引継ぎ等の経過措置を定めた。

昭和62年8月21日の衆議院法務委員会では,小規模独立簡易裁判所101庁の統合について説明が行われた。
最高裁側の答弁によれば,事件数と交通事情だけで一律に決めたのではなく,人口の動向,管内の交通事情,今後の事件増加の見込み等を考慮し,対象候補から統合を見送った庁もあった。

この再編は昭和63年5月に実施された。
平成2年3月29日の参議院法務委員会でも,昭和63年5月1日付けで廃止された簡易裁判所の職員の再配置が説明されている。
「101庁」という小規模独立簡裁の数字を,事務移転庁,大都市の簡裁の集約等まで含む全期間・全区分の廃止総数と読み替えてはならない。

2 併置された家裁出張所37庁の統合

同日の国会答弁では,統合対象の簡易裁判所101庁のうち,家裁出張所が併置されている庁が37庁であり,簡易裁判所の統合に合わせて家裁出張所も統合することが説明された。
当時の説明は,家裁出張所が,利用者の地理的な利便のため,既存の簡易裁判所の庁舎や人員を活用して出張処理をする仕組みであることを前提としていた。

簡易裁判所の再編は,簡易裁判所の事件だけでなく,同じ場所で提供されていた家事手続へのアクセスにも影響したのである。
ただし,出張所の統合と,後に説明する地家裁支部41庁の廃止とは,対象も時期も異なる。

第3 平成2年4月の地家裁支部41庁の廃止
1 併設簡易裁判所は存続した

平成2年3月27日衆議院法務委員会の答弁は,同年4月1日からの支部の適正配置により41支部を廃止する一方,その支部に併設されていた簡易裁判所は存続すると説明している。

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裁判所の本庁と支部の回付―移送との違い・合意管轄条項・不服申立て(AI作成)

目次

第1 本庁と支部の「回付」とは1 同じ地方裁判所の内部で担当を変える措置2 支部の設置と事務分配の根拠3 高裁支部と家庭裁判所支部の事務分配第2 最高裁昭和44年3月25日決定1 事件と判断の対象2 回付に対する訴訟法上の不服申立て第3 民事訴訟の移送との違い1 移送決定には民事訴訟法の規定が適用される2 「回付」という名称だけで判断しない第4 合意管轄条項で本庁での審理は確保できるか1 裁判所を合意することと内部の審理場所は別である2 専属的な合意があっても移送の問題は残る第5 本庁での審理を希望する場合の実務1 上申書についての公表された説明2 伝えるべき事情と確認事項第6 関連記事と出典1 関連記事2 出典
第1 本庁と支部の「回付」とは
1 同じ地方裁判所の内部で担当を変える措置

本庁から支部へ,支部から本庁へ,又は同じ地方裁判所の支部相互間で事件を回すことは,一般に「回付」と呼ばれる。
地方裁判所の支部は,本庁とは別個の地方裁判所ではない。
同じ地方裁判所の内部で,どの庁・部が事件を取り扱うかという事務分配の問題である。

例えば,東京地方裁判所本庁と立川支部との間の回付と,東京地方裁判所から横浜地方裁判所への移送とは,法的な仕組みが異なる。
裁判所から事件を別の場所に回す旨の連絡を受けたときは,移動先の庁名だけでなく,「回付」か「移送決定」かを確認する必要がある。

2 支部の設置と事務分配の根拠

裁判所法31条1項は,地方裁判所の事務の一部を取り扱わせるため,最高裁判所がその管轄区域内に支部又は出張所を設けることができると定めている。
家庭裁判所については,同法31条の5がこの規定を準用する。
下級裁判所事務処理規則6条1項は,地家裁等における裁判事務の分配,裁判官の配置及び代理順序を,毎年あらかじめ当該裁判所の裁判官会議の議によって定めるとしている。

支部の一覧と事件別の取扱いは,地方裁判所支部及び家庭裁判所支部を参照されたい。
地図上の支部管轄だけでは,合議事件,裁判員裁判,労働審判,執行事件等の提出先が決まらない場合がある。

3 高裁支部と家庭裁判所支部の事務分配

高裁支部の設置は裁判所法22条によるが,どの地域・事件を担当するかは,下級裁判所事務処理規則6条の事務分配の問題でもある。高裁の本庁・支部間の内部的担当と,別の裁判所への訴訟法上の移送は区別する必要がある。高裁6支部の一覧と取扱事件を参照されたい。
名古屋高裁昭和29年11月25日決定(昭和29年(ラ)第42号)の裁判要旨は,家裁支部係属事件について,本庁への送付を促すことはできても管轄移送の申立てはできないとする。これは家庭裁判所支部の事件についての判断であり,高裁支部についての判決そのものではない。以下の昭和44年最高裁決定も,地方裁判所支部を対象とした判断として読む必要がある。

第2 最高裁昭和44年3月25日決定
1 事件と判断の対象

最高裁判所昭和44年3月25日第三小法廷決定は,事件を回付する決定に対する抗告棄却決定についての特別抗告事件である。
事件番号は昭和44年(し)第3号,掲載誌は刑集23巻3号212頁であり,最高裁は抗告を棄却した。

争点は,事件回付の措置を,訴訟法に基づく不服申立ての対象にできるかという点であった。
最高裁は,地方裁判所の支部は,原則として独立の司法行政権を与えられず,外部に対しては本庁と一体をなすとした。
支部の権限と管轄区域は,裁判所内部の事務分配の基準であると判断したのである。

2 回付に対する訴訟法上の不服申立て

同決定は,本庁と支部間又は支部相互間の事件回付は訴訟法上の手続ではないため,当事者は,回付の措置に対して訴訟法に準拠する不服申立てをすることができないとした。
回付について訴訟法上の抗告を認めた東京高裁昭和42年7月14日決定を,明示的に変更している。

この判断は,地域の支部で審理を受けることの政策的価値を否定したものではない。
法律上の管轄と,内部の事務分配に伴う住民の利便とを区別し,回付について訴訟法上の不服申立てを認めないという判断である。
移動の負担や審理の必要性を担当裁判所へ具体的に伝えることまで無意味になるわけではない。

第3 民事訴訟の移送との違い
1 移送決定には民事訴訟法の規定が適用される

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訴訟手数料還付請求権の差押え―差押債権者による還付申立てと最高裁令和8年9月30日決定(AI作成)

目次

第1 結論
第2 事案と裁判の経過
第3 最高裁が還付申立てを取立権の範囲内とした理由
第4 取立権として行使できる行為の限界
第5 生命保険・MMFの最高裁判例との関係
第6 現行の費用法9条2項への読み替え
第7 差押債権者が還付を申し立てるときの確認事項
第8 債務者及び国の対応
第9 弁護士・司法書士・税理士の役割分担
第10 一次資料と確認できていない範囲
第11 関連記事

最高裁判所第二小法廷令和8年9月30日決定は、訴訟手数料還付請求権を差し押さえた債権者が、民事執行法155条1項の取立権に基づき、納付者に代わって裁判所へ還付を申し立てることができると判断した。

本決定は、差押債権者が第三債務者へ金銭の支払を請求できるだけでなく、差し押さえた債権を現実に取り立てるため不可欠な申立行為をできる場合があることを示す。他方、差押えにより債務者のあらゆる契約上・手続上の権利を代行できるわけではない。個別の行為が、債務者だけが行使できる権利ではなく、取立てに不可欠で、取立目的を超えないかを確認する必要がある。

第1 結論

本決定の実務上の結論は、次の三点である。

① 訴訟手数料還付請求権を差し押さえた債権者は、民事執行法155条1項の取立権として、裁判所に対する還付申立てをすることができる。

② その理由は、還付申立てが納付者の身分・人格と密接に結び付く行為ではなく、還付請求権を取り立てるために必要であり、要件と金額を事件記録から形式的に判断できることにある。

③ 取立権に含まれる付随行為かどうかは、権利の性質、取立てへの必要性、債務者が受ける不利益及び債務者が行使しない正当な理由を踏まえ、行為ごとに判断する。

第2 事案と裁判の経過

債務者は、民事訴訟の提起に際して手数料3万6000円を納付した後、最初にすべき口頭弁論期日の終了前に訴えを取り下げた。これにより、改正前の民事訴訟費用等に関する法律9条3項に基づく1万8000円の還付請求権が生じた。

差押債権者は、この還付請求権について債権差押命令を得た。差押命令は第三債務者である国及び債務者にそれぞれ送達され、差押債権者は、取立権に基づいて手数料還付を申し立てた。

原審の東京高等裁判所は申立てを認めなかったが、最高裁は原決定を破棄し、差押債権者に1万8000円を還付する旨の自判をした。事件番号は令和7年(許)第23号、原審は東京高等裁判所令和7年(ラ)第184号である。

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連帯保証人の財産を仮差押えするには―主債務者の資力と保全の必要性(AI作成)

目次

第1 連帯保証人に対する仮差押えの検討1 保証債務と保全の必要性は別の問題である2 東京地裁の記載例は双方の資力を説明している第2 保証債務の根拠を示す資料1 主債務と保証契約を対応させる2 連帯の合意を資料で確認する第3 双方の資力と回収不足の調査1 主債務者側で何を確認するか2 保証人側の資力と保全対象を確認する第4 預金の仮差押えと過大な保全への注意1 預金を対象とする場合の調査を省略しない2 請求債権の記載と保全する財産の範囲を区別する第5 申立て前の確認と手続の見通し第6 出典・参考資料
第1 連帯保証人に対する仮差押えの検討
1 保証債務と保全の必要性は別の問題である

連帯保証人に金銭の支払を請求する権利があることと,その保証人の財産を今すぐ仮差押えする必要があることは別の問題である。
民事保全法13条は被保全権利と保全の必要性の疎明を求め,20条は将来の強制執行が不能又は著しく困難になるおそれを仮差押えの要件としている。
主債務者への請求状況と保証人の責任財産を確認し,なぜ保証人の財産を保全する必要があるかを検討する。
本記事の法令・裁判所掲載書式の確認日は令和8年10月8日である。

2 東京地裁の記載例は双方の資力を説明している

東京地裁の書式2-1は,連帯保証債務を被保全権利として預金債権を仮差押えする例を掲載している。
保全の必要性の欄では,主債務者からの弁済を見込めない事情と,保証人の収入・財産及び預金が引き出される危険を記載している。
保証人だけの資産不足を述べれば常に十分と考えず,主債務者側の事情も準備することが実務上重要である。

野村創の参考文献も,少なくとも東京地裁の運用として,連帯保証人単独への仮差押えでは主債務者に関する保全の必要性も検討することを説明している。
同書の「二段の保全不足」「三段の保全不足」は著者の呼称であり,法令上の独立した要件名ではない。
東京地裁の書式から,全国の裁判所が全ての保証事件で同一の資料・判断方法を採ると断定することはできないため,申立先の取扱いも確認する必要がある。

民事保全の3類型と手続全体の比較は,民事保全とはで説明している。

第2 保証債務の根拠を示す資料
1 主債務と保証契約を対応させる

主債務の成立,内容,残額,弁済期,未払状況と,保証契約の当事者・内容・範囲を確認する。
契約の成立時期や保証の種類に応じて,方式その他の保証規制が問題になる場合があり,保証書があるだけで有効性や請求範囲が確定するわけではない。
本記事は保全の準備を中心とするものであり,個別の保証契約の有効性は別に検討する必要がある。

2 連帯の合意を資料で確認する

「保証人」との記載だけで,連帯保証の合意をしたことまで当然に説明できるとは限らない。
契約書,保証書その他の資料で,どのような合意が成立したかを確認する。
主債務者・保証人への督促,返答,弁済等の経過も整理し,残額と請求内容が資料に対応するようにする。

第3 双方の資力と回収不足の調査
1 主債務者側で何を確認するか

主債務者の住所・本店等と不動産の所有関係,判明している資産,担保権や負債,支払状況などを整理する。
住所地の不動産が他人名義であることは調査資料の一つとなるが,それだけで全国の全財産が存在しないと証明したことにはならない。
判明している他の資産や回収可能性も含め,調査の範囲と分からない点を明らかにすることが重要である。

2 保証人側の資力と保全対象を確認する

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仮の地位を定める仮処分とは―仮払い・差止めの要件と本案訴訟との関係(AI作成)

目次

第1 仮の地位を定める仮処分の目的1 現在生じる重大な損害に暫定的に対応する2 仮払いと差止めでは求める措置が異なる第2 権利関係と必要性の疎明1 最終的に主張する権利関係を確認する2 判決まで待てない事情を示す第3 審尋と発令までの手続1 原則として相手方が立ち会える期日を経る2 期日を経ない例外と所要期間を区別する第4 担保,執行と本案訴訟1 担保は措置と事件に応じて判断される2 仮処分と本案の最終判断は別である第5 他の手続・和解との選択1 緊急の措置と最終解決を分けて比較する2 和解の可能性があっても必要性の検討を省略しない第6 出典・参考資料
第1 仮の地位を定める仮処分の目的
1 現在生じる重大な損害に暫定的に対応する

仮の地位を定める仮処分は,争いのある権利関係について,債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるために必要な場合に発せられる命令である(民事保全法23条2項)。
将来の金銭回収のため財産を確保する仮差押えや,将来の明渡し等に備えて現状を守る係争物の仮処分とは,必要性の着眼点が異なる。
判決を待つ間に何が起きるのか,その損害や危険をどの措置で避けるのかを具体的に検討する。
本記事の法令・裁判所案内の確認日は令和8年10月8日である。

2 仮払いと差止めでは求める措置が異なる

裁判所は,仮処分の目的を達するため,一定の行為を命じ,又は禁止し,給付を命ずる等の必要な処分をすることができる(民事保全法24条)。
仮払いでは必要な金員の給付,差止めでは特定の侵害行為の禁止等が問題となる。
もっとも,金銭や禁止を求めれば認められるわけではなく,権利関係と必要性を疎明し,実効性のある措置の内容を定める必要がある。

民事保全の3類型と手続全体の比較は,民事保全とはで説明している。

第2 権利関係と必要性の疎明
1 最終的に主張する権利関係を確認する

民事保全法13条は,保全すべき権利又は権利関係と保全の必要性を明らかにし,疎明することを求めている。
仮払いなら支払請求権の根拠,差止めなら行為の禁止を求める権利の根拠を検討する。
相手方が権利を争っているという事情だけでは,申立てをする側の権利や必要性を説明したことにはならない。

2 判決まで待てない事情を示す

求める措置が相手方に大きな影響を及ぼす場合には,その影響を踏まえて必要性を慎重に検討することが重要である。
仮払いでは,収入,支出,手持ち資金,他の給付,支払期限等を整理し,必要な額と期間を説明する。
差止めでは,行為の具体的な内容,頻度,継続・再発の危険,生じる損害と求める禁止の範囲を整理する。

求める措置準備する事実・資料の例検討する点当面の金員の仮払い請求権の資料,収支・資産の資料,治療や生活上の支払の資料必要な額・期間,他の給付で賄えるか侵害行為の差止め行為の日時・内容の記録,写真,通知,具体的な陳述書等現在の危険,再発可能性,禁止する行為の特定

上記は資料を検討するための例であり,全ての事件に同じ資料を提出すれば足りるという一覧ではない。
個々の権利関係と求める措置に応じて,資料の範囲と説明を組み立てる必要がある。

第3 審尋と発令までの手続
1 原則として相手方が立ち会える期日を経る

仮の地位を定める仮処分は,原則として口頭弁論又は債務者が立ち会える審尋の期日を経なければ発することができない(民事保全法23条4項本文)。
そのため,相手方に反論の機会を設けずに行う仮差押え等と,同じ日程を当然に想定することはできない。
申立ての段階から,予想される反論とその裏付け資料,期日で説明する事項を準備することが大切である。

2 期日を経ない例外と所要期間を区別する

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処分禁止の仮処分とは―登記請求権の保全,効力と仮差押えとの違い(AI作成)

目次

第1 処分禁止の仮処分の目的1 登記を取得・回復する権利を守る2 金銭回収の仮差押えと区別する第2 登記請求権と保全の必要性1 どの登記を誰に請求するかを特定する2 現状変更による権利実行の危険を示す第3 処分禁止登記と保全仮登記1 処分禁止登記によって執行する場合2 所有権以外の権利の保存・設定・変更を求める場合第4 相対的効力とその限界1 後の登記が全て絶対的に無効となるわけではない2 本案後の登記と抹消も権利の種類に応じて異なる第5 建物収去土地明渡しを保全する別の類型第6 申立て前から本案後までの確認事項第7 出典・参考資料
第1 処分禁止の仮処分の目的
1 登記を取得・回復する権利を守る

不動産について登記手続を求める訴訟を進めても,その間に名義が移転したり,抵当権等の登記がされたりすると,判決後の登記実現が複雑になる場合がある。
そこで,登記請求権を守るために処分禁止の仮処分を検討する。
民事保全法53条は,不動産に関する登記請求権を保全する処分禁止の仮処分を,処分禁止登記によって執行するものと定めている。
本記事は不動産を中心に,令和8年10月8日に確認した法令及び裁判所の書式に基づいて説明する。

2 金銭回収の仮差押えと区別する

貸金や売掛金を回収するため,相手方の不動産を責任財産として確保したい場合は,通常,仮差押えを検討する。
これに対し,所有権移転登記や登記の抹消など,登記請求権そのものを守りたい場合は,処分禁止の仮処分が問題となる。
同じ不動産を対象にすることから手続を選ぶのではなく,最終的に金銭回収を求めるのか,登記を実現するのかを先に確認する必要がある。
金銭回収の手続は,仮差押えの総論を参照する。

民事保全の3類型と手続全体の比較は,民事保全とはで説明している。

第2 登記請求権と保全の必要性
1 どの登記を誰に請求するかを特定する

申立てでは,権利の発生原因,対象不動産,請求する登記の種類・内容,相手方を確認する。
売買等の契約と登記記録,既存の担保権,登記上の利害関係人を照合し,本案で求める内容と保全する権利を対応させる必要がある。
契約書だけでなく,現時点の登記の状態を確認することが大切である。

2 現状変更による権利実行の危険を示す

係争物に関する仮処分には,現状の変更によって権利実行が不能又は著しく困難になるおそれが必要である(民事保全法23条1項)。
相手方が登記請求に応じないことと,さらに譲渡や担保設定等によって登記の実現が難しくなる危険とは,分けて説明する必要がある。
処分の具体的な動き,関係者の説明,登記の変化等について,どの事実をどの資料で疎明するかを整理する。

第3 処分禁止登記と保全仮登記
1 処分禁止登記によって執行する場合

民事保全法53条1項の処分禁止の仮処分は,処分禁止登記によって執行される。
相手方に命令が発せられたという段階と,登記による保全執行がされた段階を区別し,実際の登記を確認する必要がある。

2 所有権以外の権利の保存・設定・変更を求める場合

不動産の所有権以外の権利の保存,設定又は変更に関する登記請求権を保全する場合は,処分禁止登記とともに保全仮登記をする(民事保全法53条2項)。
東京地裁の書式6は,根抵当権設定登記請求権を保全する,保全仮登記併用の申立ての例である。
全ての処分禁止の仮処分に同じ保全仮登記を付けるのではなく,保全する登記請求権の内容に応じて手続を選ぶ。

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裁判所事務官とは―仕事内容,書記官との違い,採用と働き方(AI作成)

目次

第1 裁判所事務官とは1 知りたいことから読む2 よくある疑問第2 裁判所事務官の仕事内容1 裁判部で裁判の進行を支える仕事2 事務局で組織を支える仕事3 正確な処理とチーム内の連携第3 裁判所書記官・家庭裁判所調査官との違い1 職務の比較2 書記官の仕事を事務官の仕事と混同しないこと3 家庭裁判所調査官は別の養成経路であること第4 裁判所事務官になるには1 総合職試験と一般職試験2 学歴・年齢の名称だけで受験資格を判断しないこと3 最終合格と採用は別の段階であること4 社会人経験者選考採用第5 採用後に裁判所書記官を目指す経路1 勤務,入所試験,養成課程を区別すること2 養成課程と研修期間第6 給与,勤務地及び働き方1 初任給と年収2 勤務希望地と採用後の異動3 勤務時間,休暇及び残業の見方第7 受験準備と関連する資料記事
第1 裁判所事務官とは

裁判所事務官は,裁判所の裁判部や事務局で働き,裁判の進行を支える事務や,総務・人事・会計等の司法行政事務を担当する裁判所職員である。裁判所書記官や家庭裁判所調査官とは,職務と養成の仕組みが異なる。
「裁判所事務官」を調べる際には,①仕事内容,②書記官等との違い,③採用試験と採用後の養成,④給与・勤務地・休暇の順に読むと,全体像をつかみやすい。本記事は,令和8年10月8日に確認した裁判所の採用案内及び法令に基づく。

配属先となる各裁判所の種類・役割と,裁判官や他の裁判所職員との関係は,裁判所とは―組織と職種の全体像を参照されたい。本記事では,事務官の職務と採用後の進路を中心に説明する。

裁判所法58条は,各裁判所に裁判所事務官を置き,上司の命を受けて裁判所の事務を担当することを定める。具体的な担当業務は配属先により異なるため,裁判部の事務官の仕事と,事務局の仕事を分けて理解する必要がある。

裁判所法:
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059
裁判所「裁判所の仕事について」:
https://www.courts.go.jp/saiyo/siritai/shigoto/index.html

1 知りたいことから読む

初めて調べる場合は,本記事の仕事内容と職種の違いから読むと,全体像をつかみやすい。
知りたいことが決まっている場合は,次の案内から必要な説明へ進むことができる。

知りたいこと読む場所・記事仕事内容と職種の違い第2 仕事内容/第3 書記官・調査官との違い採用試験の区分・受験資格・科目裁判所職員採用試験とは初任給・賞与・年収裁判所事務官の給料・年収勤務地・異動と勤務時間第6 給与,勤務地及び働き方高卒者区分と勉強の準備高卒で裁判所事務官になるには/過去問と勉強の進め方仕事を知る説明会・業務体験裁判所事務官の説明会・ワークショップ
2 よくある疑問

① 裁判所事務官は国家公務員か。
裁判所の採用Q&Aは,裁判所の採用試験に合格して採用されると国家公務員特別職となると説明している。
採用試験は人事院の国家公務員採用試験とは別に,裁判所が独立して実施する。

② 法学部出身者だけが採用されるのか。
裁判所の採用Q&Aは,法学部以外の様々な学部出身者も活躍しており,採用後の研修等で法律知識を習得する機会もあると説明している。
受験資格と試験科目は,自分が受験する年度・区分の案内で確認する必要がある。

③ 事務官として採用されれば自動的に書記官になるのか。
裁判所書記官になるには,養成課程入所試験に合格し,所定の研修を受ける必要がある。
勤務,入所試験,養成課程及び任命を区別し,第5の説明を参照されたい。

以上の疑問についての公式説明は,裁判所「採用Q&A」に掲載されている。

④ 裁判所事務官は難しいですか。
採用試験の難しさと,採用後の仕事を覚える難しさを分けて考える必要がある。
令和8年度の一般職・大卒程度区分の全国倍率は4.5倍であり,第1次試験の有効受験者数を最終合格者数で割った数字である。
倍率は個人の合格確率や採用率ではなく,試験区分・地域・年度によって異なる。
試験案内の倍率と配点を確認されたい。

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裁判所事務官の転勤・異動―勤務地,高裁管内,総合職と一般職の違い(AI作成)

目次

第1 転勤について公式案内から分かること第2 受験地,勤務地希望及び採用庁の違い1 筆記試験を受ける場所が勤務地を決めるわけではないこと2 申込時の勤務地希望と最終合格後の採用庁3 成績順位だけで意向照会の順序が決まるわけではないこと第3 採用後の異動と総合職・一般職の違い1 おおむね3年は目安であること2 総合職は高裁所在地と最高裁勤務の説明に注意すること3 家庭裁判所調査官補の異動と混同しないこと第4 勤務地を検討する際に確認しておくこと1 希望地域の広さと通勤条件2 確認先に伝える質問を具体化すること第5 よくある疑問と関連資料1 一般職なら地元だけで働けるのか2 最終合格すれば第一希望の裁判所に採用されるのか
第1 転勤について公式案内から分かること

裁判所事務官の採用後の異動について,裁判所の採用Q&Aは,総合職・一般職とも,希望する勤務地を管轄する高等裁判所の管轄区域内で勤務すること,異動のローテーションはおおむね3年を目安とすること,採用された裁判所の所在する都道府県内での異動が一般的であることを説明している。
ただし,上位ポストへの昇進に伴う県を越えた異動や,最高裁判所での勤務も案内されている。「一般職だから転勤がない」「希望する市町村から動かない」と保証する制度ではない。
本記事は,令和8年10月8日に確認した公式案内を基に,受験時の勤務地希望,採用庁の決定及び採用後の異動を区別して整理する。

裁判所「採用Q&A」:
https://www.courts.go.jp/saiyo/sikenjoho/siken/qa/index.html

第2 受験地,勤務地希望及び採用庁の違い
1 筆記試験を受ける場所が勤務地を決めるわけではないこと

裁判所事務官の総合職試験及び一般職試験では,第1次試験と第2次試験の筆記試験の試験地は,希望する勤務地にかかわらず,受験に便利な場所を選択できると案内されている。
他方,第2次試験の人物試験は,希望する勤務地を管轄する高等裁判所の管轄区域内の試験地で受験し,総合職の第3次試験の人物試験は東京都で受験するとされている。試験地,試験日及び選択方法は,受験する年度の受験案内で確認する必要がある。

令和8年度高卒者区分の受験案内3頁は,第1次試験地が希望する高裁管内にある場合,人物試験地を第1次と異なる場所にはできないと説明する。
筆記地を自由に選べるという説明だけで人物試験地まで選び直せると理解せず,受験区分の条件を確認する必要がある。
詳しくは,高卒で裁判所事務官になるにはを参照されたい。

2 申込時の勤務地希望と最終合格後の採用庁

公式案内では,受験申込みの受付後に,試験の種類,特例希望の有無,希望する勤務地を管轄する高等裁判所及び試験地を変更することは認められないとされる。申込前に,受験の便利さと勤務を希望する地域を分けて検討する必要がある。
最終合格後,裁判所事務官の総合職・一般職の採用庁は,希望する勤務地を管轄する高等裁判所の管轄区域内の裁判所から決められる。本人の希望だけでなく,各裁判所の欠員状況等も考慮されるため,特定の裁判所への採用を本人が自由に確定できるという意味ではない。

段階確認する事項混同しやすい点受験申込み希望勤務地の高裁管内と試験地筆記試験地と勤務地は別の情報である人物試験指定された試験地・日程筆記試験と同じ場所で受験するとは限らない最終合格後採用諾否の意向照会と採用庁最終合格と特定庁への採用確定は同じではない採用後配属先とその後の異動最初の勤務先が固定され続けるわけではない
3 成績順位だけで意向照会の順序が決まるわけではないこと

裁判所の採用Q&Aは,勤務地希望,成績及び欠員補充の緊急度等を考慮して採用候補者を推薦するため,第一希望の勤務地が異なる合格者の間では,採用候補者名簿の順番と異なる順序で意向照会をする場合があると説明する。
したがって,別の地域を希望する人に照会が来たという事実だけで,自分の採用の可否や希望庁への配置を判断することはできない。

第3 採用後の異動と総合職・一般職の違い
1 おおむね3年は目安であること

公式案内にいう「概ね3年を目安」は,一般的な異動のローテーションについての説明である。全員が必ず3年ごとに転居するという意味でも,3年間は異動しないという保証でもない。
採用された裁判所の所在する都道府県内での異動が一般的とされる一方,上位ポストへの昇進に伴い,県を異にする異動が行われる場合もある。都道府県内の異動であっても,具体的な勤務地と住居との距離によって通勤・転居の負担は異なる。

2 総合職は高裁所在地と最高裁勤務の説明に注意すること

裁判所の採用Q&Aは,総合職について,所属する高等裁判所の所在地での勤務が中心となり,多くの職員が最高裁判所での勤務も経験すると説明する。一般職でも,本人の希望状況等に応じて最高裁判所で勤務する場合がある。
これは,総合職の全員に同じ異動経路を約束した説明ではない。また,一般職には高裁管外での勤務が一切ないという説明でもない。生活設計を考える場合は,通常の勤務範囲に加え,昇進や最高裁勤務等の可能性も確認する必要がある。

3 家庭裁判所調査官補の異動と混同しないこと

家庭裁判所調査官補の総合職試験に最終合格して採用された場合は,全国の家庭裁判所等で勤務することになると案内されている。裁判所事務官についての高裁管内の説明を,家庭裁判所調査官補にもそのまま当てはめることはできない。

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裁判所職員採用試験に最終合格した後は―採用候補者名簿・意向照会・採用漏れ(AI作成)

目次

第1 最終合格と採用は同じではない1 合格後も採用庁を決める手続が残る2 令和8年度合格者の採用時期第2 採用候補者名簿の順位と有効期間1 どの範囲の名簿に記載されるか2 有効期間は1年間第3 勤務地の希望と意向照会の順序1 勤務地の照会に期限内に答える2 名簿の順位と連絡の順序は一致するとは限らない3 希望勤務地と採用対象地域第4 官庁訪問は不要だが,意向照会への対応は必要である1 自分から訪問する制度と裁判所からの照会を区別する2 合格後に確認しておきたい事項第5 採用漏れと人数の読み方1 推薦・採用されない可能性は公式に説明されている2 最終合格者数から採用漏れ率を計算しない第6 採用後の研修と院卒者区分の注意点1 家庭裁判所調査官補の養成研修2 院卒者区分の修了見込みと採用第7 公式資料と関連記事
第1 最終合格と採用は同じではない
1 合格後も採用庁を決める手続が残る

裁判所職員採用試験に最終合格すると,採用候補者名簿に記載される。その後,勤務希望地や成績,各裁判所の欠員状況等を考慮した推薦,採用諾否の意向照会等を経て,採用庁が決まる。
最終合格の発表だけで,特定の裁判所への採用が確定するわけではない。

段階何が決まるか確認すること最終合格・名簿登載採用候補者として名簿に記載される合格通知書,名簿順位,今後の案内勤務希望地の照会・推薦希望,成績,欠員等を踏まえて手続が進む回答期限,希望条件,連絡先意向照会・内定推薦を受けた裁判所が採用諾否を確認する回答内容,面接等の指示,内定の通知採用裁判所職員として勤務を開始する採用日,配属,必要書類等の個別案内

合格後の一般的な流れは,裁判所「受験から採用までの流れ」の9~12で説明されている。
この記事はその公式説明を基礎としたものであり,個々の合格者への連絡時期や採用結果を予測するものではない。

受験資格,試験科目,日程及び倍率の全体像は,「裁判所職員採用試験とは―受験資格・試験科目・日程・倍率・採用まで」を参照されたい。

2 令和8年度合格者の採用時期

公式説明では,原則として試験を実施した翌年4月1日付で採用される。
したがって,令和8年度試験については原則として令和9年4月1日付の採用となる。ただし,実際の採用日や手続は,各裁判所からの個別の案内を確認する必要がある。

第2 採用候補者名簿の順位と有効期間
1 どの範囲の名簿に記載されるか

採用候補者名簿は,試験の種類ごとに最高裁判所が作成し,最終合格者を高点順に記載する。
裁判所事務官の総合職試験及び一般職試験では,各高等裁判所の管轄区域ごとに名簿が作成される。家庭裁判所調査官補の総合職試験では,推薦・採用の対象が全国の裁判所となる。

名簿の順位は合格通知書で知らせると説明されている。
試験別・地域別の枠組みがあるため,別の試験や別の高等裁判所管内の順位を,自分の順位と単純に比較してはならない。

2 有効期間は1年間

公式説明によれば,名簿の有効期間は1年間である。
また,希望勤務地又は各裁判所の欠員状況によっては,名簿の有効期間内に推薦・採用されない場合もあると明記されている。

名簿に登載されたことと,その有効期間内に必ず採用されることは異なる。
有効期間,手続の進行状況及び自分が回答した勤務希望の取扱いに疑問がある場合は,合格後の案内に記載された担当窓口に確認する必要がある。

第3 勤務地の希望と意向照会の順序
1 勤務地の照会に期限内に答える

一般職試験の最終合格者には,名簿登載後,各高等裁判所から勤務希望地について照会がある。
その回答に基づいて採用手続を進めるため,回答期限内に回答するよう公式に案内されている。

勤務地の希望を整理するときは,第一希望の地域だけでなく,通勤,転居及び家庭の事情を踏まえて,実際に勤務できる地域を確認しておきたい。
希望を広げれば必ず採用されるという保証はないため,勤務できない場所を安易に希望するのではなく,自分の条件を正確に伝えることが大切である。

2 名簿の順位と連絡の順序は一致するとは限らない

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大学の単位認定と専攻科修了認定の司法審査―富山大学の同日2判決を読む(AI作成)

目次

第1 単位認定と課程の修了を分けて考える第2 単位認定の判決―原則と例外1 大学の内部的な問題と一般市民法秩序2 卒業要件であることだけでは足りない3 資格要件との関係は具体的に確かめる第3 専攻科修了認定の判決―施設利用の権利と処分性1 公の教育研究施設を利用する権利2 法律に細かな修了要件がないことと処分性3 当該学則の修了要件に即した専門性の判断第4 2判決から導ける範囲と導けない範囲1 修了認定の審査と単位認定の審査は同一ではない2 審査の入口と本案の結論を分ける第5 相談時に確認する資料と判断の順序1 争う行為と求める結果を特定する2 当時の法令・学則と評価資料を保存する3 審査対象・処分性・違法事由を順に検討する第6 関連記事第7 出典
第1 単位認定と課程の修了を分けて考える

大学の成績をめぐる紛争では、授業科目の点数、単位の授与、課程の修了を区別する必要がある。大学の内部の判断であるという理由だけで、すべてを裁判の対象外とすることはできない。

最高裁第三小法廷は昭和52年3月15日、大学の単位授与について原則として司法審査の対象にならないとする判決と、国公立大学の専攻科修了認定を司法審査の対象とする判決を言い渡した。いずれも事件名は「単位不認定等違法確認請求」であるが、事件番号と民集の掲載頁が異なる。

本記事は、この2判決の原文に沿って、判断対象、理由及び射程を整理する。最後の実務上の確認事項は、判決の内容を踏まえた資料整理の提案である。

判決単位認定の判決専攻科修了認定の判決事件番号昭和46年(行ツ)第52号昭和46年(行ツ)第53号掲載民集31巻2号234頁民集31巻2号280頁中心となる判断単位認定は、一般市民法秩序と直接関係する特段の事情がない限り、司法審査の対象外国公立大学の専攻科修了認定は司法審査の対象となり、行政処分に当たる読み違えやすい点単位認定は例外なく審査されない、と広げない修了認定と個別の単位認定を同じものとして扱わない
第2 単位認定の判決―原則と例外
1 大学の内部的な問題と一般市民法秩序

昭和46年(行ツ)第52号判決は、自律的な法規範を有する団体の内部的な問題のうち、一般市民法秩序と直接の関係を有しないものは、自主的・自律的な解決に委ねるという考え方を示した。

大学については、国公立・私立を問わず、教育研究という設置目的を達成するため、学則等によって必要な事項を規定し実施する自律的、包括的な権能を認めた。ただし、大学における紛争のすべてが司法審査の対象外になるという趣旨ではない。

2 卒業要件であることだけでは足りない

判決は、単位の授与を、学生が当該科目を履修し、試験に合格したことを確認する教育上の措置と捉えた。単位取得は卒業要件を構成するが、それだけで当然に一般市民法秩序と直接関係するものではないとした。

したがって、一般市民法秩序との直接の関係を認めるに足りる特段の事情がない限り、単位認定は大学の自主的・自律的判断に委ねられ、司法審査の対象にならない。

3 資格要件との関係は具体的に確かめる

判決は、特定の授業科目の単位取得それ自体が一般市民法上の資格要件とされる場合には、その限りで一般市民法秩序との直接の関係を否定できないとも述べている。

一方、一部にそのような場合があるからといって、すべての科目の単位認定が司法審査の対象になるとはしていない。同事件では、問題となった単位認定について直接の関係を基礎付ける主張立証がなかった。

実務では、資格制度の名称だけでなく、根拠法令が当該科目の単位取得にどのような効果を与えているかを確認する必要がある。単位不足による不利益が大きいことと、判決のいう直接の関係があることは、分けて検討すべき問題である。

第3 専攻科修了認定の判決―施設利用の権利と処分性
1 公の教育研究施設を利用する権利

昭和46年(行ツ)第53号判決は、国公立大学を、一般市民の利用に供された公の教育研究施設と捉えた。学生も一般市民としてこの施設を利用する権利を有することを、判断の出発点とした。

学生は、所定の教育課程を履修して専攻科を修了することにより、専攻科への入学の目的を達する。修了要件を満たしているのに大学が修了を認定しなければ、その目的を達することができない。そのため、実質的には国公立大学の利用を拒否することになり、公の施設を利用する権利に関係するという理由から、修了認定・不認定に関する争いは司法審査の対象になるとした。

2 法律に細かな修了要件がないことと処分性

大学側は、修了認定には法令上の根拠がなく、行政処分に当たらないという趣旨の主張をした。判決は、当時の学校教育法57条が専攻科の教育目的、入学資格及び修業年限を定め、法律に規定のない修了要件や効果等を各大学の学則等に委ねていると解した。

その上で、当該大学の学則に、一定の在学期間と所定の単位取得により課程の修了を認め、修了証書を授与する旨の規定があることを確認した。法令上の根拠と、公の施設を利用する権利との関係から、専攻科修了認定は行政事件訴訟法3条にいう処分に当たると判断した。

法律に詳細な認定基準が直接書かれていないことだけで、処分性を否定した判決ではない。法令と学則の関係をたどることが必要である。

3 当該学則の修了要件に即した専門性の判断

判決は、当該大学の専攻科修了要件が在学期間と所定の単位取得であり、それ以外に教育上の専門的な価値判断を要件とするものではないことを指摘した。両要件が満たされたかどうかの確認には、格別の教育上の専門的判断を必要としないとして、司法審査になじむとした。

これは、どの大学のどの課程についても、修了判断に教育上の専門性がないと断定したものではない。判決当時の学校教育法、大学設置基準及び学則を前提とする説明を、現在の条番号や現在の学則の内容と混同してはならない。

第4 2判決から導ける範囲と導けない範囲
1 修了認定の審査と単位認定の審査は同一ではない

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裁判所職員採用試験とは―受験資格・試験科目・日程・倍率・採用まで(AI作成)

目次

第1 裁判所職員採用試験で採用される職種1 最初に職種と試験区分を選ぶ2 裁判所書記官になるための試験との関係3 裁判所事務官の4区分を比較する第2 受験資格―大卒程度という名称だけで判断しない1 令和8年度の大卒程度区分と院卒者区分2 令和8年度の高卒者区分3 社会人・法学部以外の出身者の確認事項第3 試験科目と配点―一般職,大卒程度区分を中心に1 裁判所事務官・一般職,大卒程度区分2 総合職・高卒者区分との違い3 併願と総合職の特例制度第4 令和8年度の日程と申込みの注意点1 令和8年10月8日時点の進行状況2 申込み完了と試験地の確認第5 倍率の見方と勉強・面接の準備1 倍率では分母と分子を確かめる2 裁判所職員採用試験の難易度は?第6 最終合格から採用までは別の手続である第7 公式資料と関連記事
第1 裁判所職員採用試験で採用される職種
1 最初に職種と試験区分を選ぶ

裁判所職員採用試験は,裁判所事務官又は家庭裁判所調査官補を採用するために,裁判所が独自に実施する試験である。
人事院が実施する国家公務員採用試験とは別の試験であり,申込み,試験日程,合格後の採用手続も裁判所の案内を確認する必要がある。

採用される職種試験の種類区分裁判所事務官総合職試験院卒者区分・大卒程度区分裁判所事務官一般職試験大卒程度区分・高卒者区分家庭裁判所調査官補総合職試験院卒者区分・大卒程度区分

「裁判所職員」という名称だけで勉強を始めるのではなく,①裁判所事務官と家庭裁判所調査官補のどちらを希望するか,②総合職と一般職のどちらを受験するか,③自分がどの受験資格を満たすか,の順に確認すると整理しやすい。
総合職は政策の企画立案に係る高い能力,一般職は的確な事務処理に係る能力を重視して行う試験である。

試験区分の公式説明は,裁判所「試験の概要」及び裁判所「採用Q&A」に掲載されている。

受験区分を選ぶ前に職務を確認したい場合は,裁判所事務官とはを参照されたい。
裁判部と事務局の仕事,給与・勤務地,採用後に書記官を目指す進路を合わせて確認できる。

職員の説明や業務体験から仕事を確かめたい場合は,裁判所事務官の説明会・ワークショップを参照されたい。
参加対象・申込方法は企画ごとに確認し,イベントへの申込みと採用試験への申込みを分けて準備する必要がある。

2 裁判所書記官になるための試験との関係

裁判所事務官の採用試験に合格して採用された時点で,直ちに裁判所書記官として任命されるわけではない。
裁判所書記官になるためには,裁判所職員として一定期間勤務した後,裁判所職員総合研修所の裁判所書記官養成課程入所試験に合格し,所定の研修を受ける必要がある。総合職採用者については,採用初年度の入所試験に筆記試験の免除制度がある。

書記官を目指して受験する場合も,まずは本記事で採用試験の区分と受験資格を確認し,採用後の養成経路を分けて把握する必要がある。書記官の仕事内容,事務官との違い及び採用から任命までの流れは,裁判所書記官とは―採用から養成・任命までの経路で整理している。

家庭裁判所調査官補は,採用後,家庭裁判所調査官に任命されるための約2年間の養成研修を受ける。
仕事内容は「家庭裁判所調査官とは―仕事内容,家事・少年事件の調査と調査報告書」,研修制度は「裁判所職員総合研修所」を参照されたい。

3 裁判所事務官の4区分を比較する

裁判所事務官の採用試験は,総合職2区分と一般職2区分を分けて確認すると,準備する試験の違いが分かりやすい。
次の表は令和8年度受験案内の試験種目を要約したものであり,受験資格のすべてを示す表ではない。

区分筆記試験の主な違い人物試験総合職・院卒者基礎能力・専門多肢選択,専門記述(憲法・民法・刑法・訴訟法),政策論文。特例希望者は小論文も必要第2次の個別面接,第3次の個別面接・集団討論総合職・大卒程度基礎能力・専門多肢選択,専門記述(憲法・民法・刑法),政策論文。特例希望者は小論文も必要第2次の個別面接,第3次の個別面接・集団討論一般職・大卒程度基礎能力・専門多肢選択,小論文。総合職の政策論文・専門記述は課されない第2次の個別面接一般職・高卒者基礎能力・作文。専門試験は課されない第2次の個別面接

大卒程度の基礎能力・専門多肢選択は総合職と一般職で共通問題を用いるが,その後の試験種目と配点比率は異なる。
総合職の特例制度と小論文の関係は第3の3,資格は第2,詳しい科目・配点は第3を参照されたい。
資料は令和8年度裁判所事務官の総合職・一般職大卒程度の受験案内3~5頁及び一般職高卒者区分の受験案内2頁である。

第2 受験資格―大卒程度という名称だけで判断しない
1 令和8年度の大卒程度区分と院卒者区分

以下は令和8年度受験案内に基づく説明である。受験資格は受験する年度の案内で確認する必要があり,翌年度も同じ生年月日や卒業期限になるという意味ではない。
国籍その他の受験できない条件も定められているため,年齢及び学歴だけで受験可能と判断してはならない。

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占有移転禁止の仮処分とは―建物明渡しの準備,相手方と執行期限(AI作成)

目次

第1 占有移転禁止の仮処分の目的1 将来の明渡しに備える手続2 通常の債務者使用型では直ちに退去させない第2 被保全権利と保全の必要性1 明渡しを求める権利を確認する2 占有移転によって執行が困難になる危険を示す第3 相手方と対象建物の特定1 契約名義と現実の占有者を照合する2 債務者を特定しない命令は特別の事情が必要である第4 申立書と疎明資料の準備1 申立ての趣旨と物件目録を整える2 権利・必要性・占有を説明する資料を分ける第5 執行官への申立てと2週間の期限1 命令の取得とは別に保全執行を申し立てる2 申立期限だけではなく執行への着手を管理する第6 第三者への効力と本案訴訟1 執行後の占有者に対する効力には条件がある2 明渡しの実現には本案と執行の準備を続ける第7 出典・参考資料
第1 占有移転禁止の仮処分の目的
1 将来の明渡しに備える手続

占有移転禁止の仮処分は,建物等の引渡し・明渡しを求める権利を保全するため,占有の移転を禁止し,執行官に保管と公示をさせる手続である(民事保全法25条の2第1項,62条)。
建物明渡しの訴訟中に別の者へ占有が移ると,本案の債務名義を用いて誰に執行できるかが問題となるため,早い段階で必要性を検討する。
民事保全全体の位置付け及び仮差押えとの違いは,仮差押えの総論を参照する。
本記事の法令・裁判所案内の確認日は令和8年10月8日である。

2 通常の債務者使用型では直ちに退去させない

通常の債務者使用型では,執行官の保管の下で債務者に建物の使用を許す。
そのため,相手方が現実の使用を続ける場合があり,命令の取得がそのまま即時の明渡しを意味するものではない。

執行官が保管するだけで誰にも使用を許さない方法や,債権者の使用を許す方法もあるが,現実の使用状況に与える影響が異なる。
どの方法を求めるかは,必要性や執行方法を踏まえて検討し,通常の占有移転禁止と明渡断行の仮処分を混同しないことが大切である。

民事保全の3類型と手続全体の比較は,民事保全とはで説明している。

第2 被保全権利と保全の必要性
1 明渡しを求める権利を確認する

賃貸借の終了を理由とする場合は,契約の成立・内容,賃料等の支払状況,催告・解除の経緯,通知の到達等を確認する。
所有権に基づく場合など,権利の根拠が異なれば説明する事実も異なる。
単に賃料が未払であるという記載だけで,契約の終了や明渡請求権の存在まで説明できるとは限らない。

2 占有移転によって執行が困難になる危険を示す

係争物に関する仮処分には,現状の変更により権利実行が不能又は著しく困難になるおそれが必要である(民事保全法23条1項)。
権利の存在とは別に,占有移転の危険を示す事情を整理する必要がある。
東京地裁の書式4は,建物明渡請求権と保全の必要性を別々に記載する例を示しているが,その例文をそのまま写すのではなく,実際の事情と資料を対応させる。

第3 相手方と対象建物の特定
1 契約名義と現実の占有者を照合する

申立てでは,契約書に書かれた名義人だけでなく,現地で誰がどの範囲を使用・管理しているかを確認することが重要である。
法人の店舗,転貸,別会社による使用などでは,契約の名義と占有の実態が一致しているかが問題になる。
表札・看板,郵便物,現地の状況,関係者から得た説明等を適法に確認し,確認日と根拠を記録する。

2 債務者を特定しない命令は特別の事情が必要である

係争物が不動産で,執行前に債務者を特定することが困難な特別の事情がある場合には,債務者を特定しない占有移転禁止の仮処分命令を発することができる(民事保全法25条の2)。
これは,通常の調査を省略してよいという制度ではない。

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民事保全とは―仮差押え・仮処分の違い,要件,費用と手続の流れ(AI作成)

目次

第1 民事保全とは何か1 判決を待つ間の危険に備える手続2 まず選ぶべき3つの類型第2 仮差押えと仮処分の違い1 仮差押えは金銭回収のために財産を確保する2 係争物に関する仮処分は物や登記をめぐる現状を守る3 仮の地位を定める仮処分は現在の重大な損害に対応する第3 申立てに必要な要件と疎明資料1 被保全権利と保全の必要性を分ける2 事実と資料を対応させる第4 費用と担保の資金計画1 手続費用,担保,後の回収費用を見積もる2 担保は後から必ず戻るとは限らない第5 申立てから保全執行までの流れ1 申立先と面接・審尋を確認する2 発令と執行を分けて予定する第6 保全を受けた側の対応と限界第7 出典・参考資料
第1 民事保全とは何か
1 判決を待つ間の危険に備える手続

民事保全は,民事訴訟の判決を得るまでに財産が処分され,建物の占有者が変わり,又は生活・事業に重大な損害が生じる場合に,権利の実現や当面の状態を暫定的に守る裁判手続である。
金銭回収の準備をする仮差押えと,物や権利関係を守る仮処分があり,さらに仮処分は,係争物に関するものと仮の地位を定めるものに分かれる(民事保全法1条,20条,23条)。

裁判で勝てる見込みがあることと,今すぐ保全をする必要があることは別の問題である。
申立ての前には,最終的に何を実現したいのか,判決を待つと何が失われるのか,どの財産・物・行為を対象とするのかを分けて考える必要がある。
本記事は令和8年10月8日に確認した法令及び裁判所の案内を基礎とし,野村創『失敗事例でわかる!民事保全・執行のゴールデンルール30〈改訂版〉』(学陽書房,令和6年)を実務上の検討の参考としている。
同書の失敗事例は説明のための架空事例であり,掲載された金額や日数,著者の経験を全国共通の基準として扱うものではない。

2 まず選ぶべき3つの類型
最終的な目的保全の類型判決までに防ぐ危険貸金・売掛金・損害賠償金等の回収仮差押え責任財産が失われ,将来の強制執行ができなくなる危険建物明渡し,物の引渡し,登記手続等係争物に関する仮処分占有や登記等の現状が変わり,権利の実行が困難になる危険当面の生活費の確保,侵害行為の差止め等仮の地位を定める仮処分判決を待つ間に著しい損害や急迫の危険が生じること

仮差押えは金銭債権の回収を準備する手続であり,その命令だけで預金を取り立てたり,相手方から支払を受けたりできるわけではない。
これに対し,仮払いを命ずる仮処分は,当面必要な給付を暫定的に実現する場合がある。
同じ金銭に関係する申立てでも,財産の確保と現実の支払を混同してはならない。

第2 仮差押えと仮処分の違い
1 仮差押えは金銭回収のために財産を確保する

仮差押えの対象には,不動産,預金・給料などの債権,動産等がある。
対象を選ぶときは,その財産が実際に存在するか,誰に属するか,先順位の担保権や他の差押えがあるか,後に回収へ進めるだけの価値が残るかを確認する必要がある。
不動産の登記に記載された抵当権の債権額や根抵当権の極度額と,現実に残っている債務額は同じではない。

手続の詳細は,仮差押えとは―要件・手続の流れ・担保・効力・解放金・担保の取戻しの全体像で説明している。
預金・給料については,預金・給料の仮差押えを参照する。

保証人の財産を確保する場合は,連帯保証人に対する仮差押えで,主債務者と保証人双方の資力・保全の必要性を説明している。

2 係争物に関する仮処分は物や登記をめぐる現状を守る

建物明渡しを求める場合,裁判の途中で占有者が変わると,誰を相手に明渡しの執行をするのかが問題になる。
そこで,占有移転禁止の仮処分により占有の移転を禁止し,執行官の保管・公示を通じて将来の明渡しに備える。
通常の債務者使用型では相手方が建物の使用を続けるため,仮処分の発令だけで直ちに退去させる手続とは異なる。

登記請求権を守る場合は,処分禁止の仮処分が問題となる。
金銭を回収したいから相手方の不動産を確保する場合と,自分がその不動産の登記を取得・回復したい場合では,保全する権利も手続も異なる。

相手方や対象の調査,執行官への申立てと2週間の期限は,占有移転禁止の仮処分で説明している。
登記請求権の類型,処分禁止登記・保全仮登記,後の登記への効力は,処分禁止の仮処分を参照する。

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明文のない主観的追加的併合と別訴・弁論併合の実務(AI作成)

目次

第1 被告の追加と請求の変更を分ける第2 昭和62年判決が挙げた懸念を原文で確認する1 従前の訴訟状態を当然に利用できるか2 紛争処理がかえって複雑にならないか3 軽率な提訴・濫訴を増やさないか4 訴訟の遅延を招かないか第3 別訴と弁論併合では何を確認するか1 新しい被告に対する訴えを独立して整える2 裁判所の併合判断に必要な事情を示す第4 併合後も証拠・認否・自白を一括しない1 尋問の機会がなかった当事者を確認する2 共通の証拠と各被告の認否を分ける第5 試験で指定された肯定立論を実務上の一般ルールにしない第6 関連記事・出典1 関連記事2 出典と適用範囲

訴訟の途中で別の者にも責任があると分かったとき,既存事件の準備書面にその者を追加するだけでよいとは限らない。別訴の提起と裁判所による弁論の併合を分け,手数料,送達,従前の訴訟状態及び防御の機会を確認する必要がある。

第1 被告の追加と請求の変更を分ける

最高裁昭和62年7月17日第三小法廷判決(昭和59年(オ)第1382号,民集41巻5号1402頁)は,既存の被告に対する訴訟の係属後に,別の被告に対する請求を追加して一個の判決を求める場合,まず別訴を提起し,裁判所に口頭弁論の併合を促して,併合について裁判所の判断を受けるべきであるとした。

共同訴訟の要件を満たしていても,新訴が既存事件へ当然に併合される効果は認められない。現在の民事訴訟法38条は共同訴訟の要件を,152条1項は裁判所が口頭弁論の併合等を命じる権限を定める。両者は別の問題である。

また,143条の請求又は請求原因の変更と,新しい被告を訴訟に入れることは区別する。請求変更の要件を論じたことだけで,別の者に対する訴訟が当然に成立するものとしてはならない。本記事は,特別の参加・承継制度の要件によらず,被告を追加して当然併合を求める場面を対象とする。

第2 昭和62年判決が挙げた懸念を原文で確認する

判決は,明文の規定がないことに加え,旧訴訟の訴訟状態を当然に利用できるか,訴訟経済に適うか,複雑化,軽率な提訴・濫訴及び遅延を問題としている。次の4点は,判決原文の理由を実務向けに分けたものである。

1 従前の訴訟状態を当然に利用できるか

新しい被告が加わっても,それまでの主張,認否,自白,証拠調べが,どの範囲でその被告との関係に引き継がれるかが問題になる。既存の証拠を使えるということと,別の当事者の自白に拘束されるということは同じではない。

通常共同訴訟について,民事訴訟法39条は,共同訴訟人の一人の訴訟行為等が他の共同訴訟人に影響を及ぼさないと定める。従前の被告がある事実を認めたことだけを理由に,新しい被告もその事実を争えないと扱うべきではない。

2 紛争処理がかえって複雑にならないか

被告を増やせば一回で解決できるとは限らない。被告ごとに請求原因,抗弁,証拠及び審理の進行状況が異なると,一緒に審理することが争点整理を難しくする場合もある。併合の上申では,共通する争点と,被告ごとに別に審理すべき争点を示すことが有用である。

3 軽率な提訴・濫訴を増やさないか

後から被告を追加すれば足りるという運用を前提に,提訴前の相手方の特定や責任根拠の調査を省いてはならない。法人を被告にするときは,商号だけでなく,契約時から提訴時までの法人の同一性と,その法人に対する請求原因を確認する。

4 訴訟の遅延を招かないか

新しい被告に訴状を送達し,認否・反論・証拠申出の機会を与えるには時間を要する。既存事件がどの段階にあるか,新訴との争点・証拠の重複はどの程度かを確認する。審理をまとめる便益と,新たに生じる手続負担の両方を示す必要がある。

第3 別訴と弁論併合では何を確認するか
1 新しい被告に対する訴えを独立して整える

新訴について,被告の表示,請求の趣旨・原因,管轄,手数料,送達に必要な情報を確認する。昭和62年判決は,新訴の訴訟の目的の価額に応じた手数料の納付が必要であり,手数料納付命令に応じなかったため訴えを却下した原審を是認している。既存請求と経済的利益が共通するというだけで,新訴の手数料が当然に不要となるとはいえない。

現行民事訴訟法138条1項は,訴状を被告に送達しなければならないと定める。新しい被告に対する送達と防御の機会を,既存被告への送達で代替したものとして扱わない。

時効や提訴期間に関する判断も請求及び相手方ごとに行う。既存事件の提訴日,新訴の提訴日,送達日を別に記録し,期間の問題がある場合はその制度の要件と効果を個別に確認する。

2 裁判所の併合判断に必要な事情を示す

152条1項による弁論の併合は,裁判所が命じるものである。併合を上申したことだけで,併合済みとして審理や書面の提出先を扱わない。事件番号,係属部,共通争点,既に提出・取調べ済みの証拠,今後必要な証拠及び期日の状況を整理する。

次の表は,法定の一律な提出様式ではなく,代理人が準備書面や併合上申を作るための確認事項である。

確認する事項既存事件と新訴で区別するもの書面に具体化する内容当事者・請求被告,請求原因,抗弁誰に何を請求し,共通又は固有の争点がどれか提訴・送達提訴日,送達日,期間の判断新訴について履践した手続と,期間に関する根拠証拠と主張書証・証人・認否・自白共通利用を求める証拠と,各当事者の主張・認否手続保障証人尋問の機会,反論の機会既に誰がどの証人を尋問し,誰に機会がなかったか審理の進行既存事件の段階,新訴の準備状況併合の便益,追加期日・証拠調べの必要性
第4 併合後も証拠・認否・自白を一括しない
1 尋問の機会がなかった当事者を確認する

民事訴訟法152条2項は,当事者を異にする事件の口頭弁論を併合した場合,併合前に尋問した証人について,尋問の機会がなかった当事者が尋問を申し出たときは,その尋問をしなければならないと定める。

「既に尋問が終わっている」という理由だけで申出を処理しない。誰が尋問の機会を持っていたか,対象証人は誰か,併合前の取調べはどの事件のものかを確認する。

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裁判所書記官とは―仕事内容,裁判所事務官との違い,なり方と役職(AI作成)

目次

第1 裁判所書記官とは1 裁判の記録と手続を担う専門職であること2 裁判官と協働するが,役割は異なること3 裁判所書記官は国家公務員か第2 裁判所書記官の仕事内容1 記録の作成・保管と手続上の事務2 裁判の準備と進行を支える仕事3 手続案内と,担当事件についての連絡4 公証機能とコートマネジメントとは何か第3 裁判所事務官等との違い1 裁判所事務官との違い2 裁判官,家庭裁判所調査官及び裁判所速記官との違い第4 裁判所書記官になるには1 どうすれば裁判所書記官になれるのか2 裁判所書記官になるには何年かかるか第5 役職と給与の調べ方1 書記官の官名と,首席・次席・主任等の役職2 裁判所書記官の年収はいくらか3 裁判所書記官は勝ち組か―進路を比較する視点第6 裁判所へ連絡するときの確認事項1 事件と用件を先に整理すること2 手続上の確認と,主張・立証の検討を分けること第7 出典・参考資料
第1 裁判所書記官とは
1 裁判の記録と手続を担う専門職であること

裁判所書記官は,事件記録の作成・保管や手続上の事務を担い,裁判官と協働して裁判の進行を支える専門職である。
裁判所事務官として採用された時点で直ちに書記官になるわけではなく,通常は採用後の勤務,総合研修所の入所試験及び養成課程を経て任命される。
仕事内容を知りたい方は第2,書記官を目指す方は第4,担当事件の連絡について確認したい方は第6を参照されたい。

裁判所書記官は,裁判所の事件に関する記録の作成・保管,法律で定められた手続上の事務及び裁判官の調査補助を担当する裁判所職員である。
法廷の発言を書き取るだけの職ではなく,手続法の知識を用いて,裁判が適正かつ円滑に進むよう支える職である。
本記事は,令和8年10月8日に確認した法令と裁判所の公表資料に基づき,仕事内容,近接する職種との違い,養成経路及び関連資料を整理する。
仕事内容,養成経路及び給与に関する説明資料は,同月10日に改めて確認した。
身分及び養成経路に関する裁判所の公式説明と総研規程は,同月13日に再確認した。

書記官が勤務する最高裁・高裁・地裁・家裁・簡裁の役割と,裁判官や他の職員との関係は,裁判所の組織と職種の全体像で整理している。職種の違いを確かめた上で,本記事の記録・手続に関する職務へ進むとよい。

裁判所法60条2項は,事件に関する記録その他の書類又は電磁的記録の作成・保管等を,書記官の事務として定めている。
同条3項は,裁判官の命を受けて,事件に関する法令・判例その他必要な事項の調査を補助することを定めている。
紙の書類だけを扱う職という説明では,現行法が対象とする電磁的記録を含む職務を十分に表せない。

2 裁判官と協働するが,役割は異なること

裁判所書記官は,その職務を行うについて裁判官の命令に従うが,裁判官と同じ職ではない(裁判所法60条4項)。
裁判の判断を担う裁判官に対し,書記官は記録と手続上の事務を担い,裁判運営を支える。

また,同条5項は,口述の書取等に関する裁判官の命令について,書記官が作成又は変更を正当でないと認める場合には,自己の意見を書き添え,又は併せて記録できることを定めている。
職務上の命令に従うことと,記録の作成等について法律が認める意見の記載を区別する必要がある。

3 裁判所書記官は国家公務員か

裁判所書記官は,特別職の国家公務員である。
裁判所の採用Q&Aは,裁判所の採用試験が人事院の国家公務員採用試験とは別に実施され,採用された職員は特別職の国家公務員になると説明している。
もっとも,裁判所職員臨時措置法により,裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員には,給与,任免,服務等に関する一般職の国家公務員の法律が,所定の除外・読替えの下で準用される。
採用試験の「一般職」という区分と,国家公務員法上の身分区分を混同しないことが大切である。

第2 裁判所書記官の仕事内容
1 記録の作成・保管と手続上の事務

裁判所の裁判所書記官の紹介は,法廷でのやり取りを法律的に構成して必要事項を調書に記載することや,執行文を付与することを,具体的な仕事として挙げている。
調書は,手続で何が行われたかを証明するための文書であり,会話の文字起こしと同じ目的・構成で作るものではない。
個々の調書の記載事項や証明力は,民事・刑事・家事等の手続に応じて確認する必要がある。

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裁判所事務官の給料・年収―初任給,賞与,手当と昇給の見方(AI作成)

目次

第1 裁判所事務官の給料を見る際の前提第2 採用区分別の初任給1 東京都特別区内で勤務する場合の公表例2 「俸給月額」「給与月額」「手取り」を分けること第3 賞与と諸手当1 期末・勤勉手当2 通勤・住居・超過勤務に関する手当第4 年収の計算と比較の限界1 年収はその年の支給額を積み上げて確認すること2 職員全体の平均と事務官本人の年収は異なること第5 昇給,昇格及び採用区分との関係1 級別定数は個人の昇進予定表ではないこと2 総合職・一般職と社会人経験者採用第6 給与情報を確認する順序と関連資料
第1 裁判所事務官の給料を見る際の前提

裁判所事務官の初任給の公表例は,一般職・大卒程度区分で月額27万8400円,一般職・高卒者区分で月額24万360円である。
これは令和8年4月1日現在の東京都特別区内に勤務する場合の例であり,全国共通の給与額,手取り額又は年収を示すものではない。

給与を比較するときは,採用区分,勤務地,基準日及び諸手当の条件をそろえる必要がある。
本記事は裁判所の「採用Q&A」に掲載された初任給と諸手当を基に,給与月額,賞与及び年収の違いを整理する。
第2で4区分の初任給を比較し,第3で賞与・手当,第4で年収の計算と比較の限界を確認できる。
初任給の案内は令和8年10月13日に再確認した。

裁判所「採用Q&A」:
https://www.courts.go.jp/saiyo/sikenjoho/siken/qa/index.html

第2 採用区分別の初任給
1 東京都特別区内で勤務する場合の公表例

裁判所の公式案内は,次の額を「東京都特別区内に勤務する場合の例」として掲げている。大卒程度の一般職と総合職では,初任給の額だけでなく,行政職俸給表(一)の級・号俸も異なる。

採用試験の区分初任給の公表例級・号俸総合職・院卒者区分月額30万6720円2級11号俸総合職・大卒程度区分月額29万400円2級1号俸一般職・大卒程度区分月額27万8400円1級25号俸一般職・高卒者区分月額24万360円1級5号俸

この表の数字を,そのまま他の地域の勤務者や経験者採用者の月額に当てはめることはできない。また,給与から控除される税・共済掛金等を差し引いた手取り額を示す表ではない。

2 「俸給月額」「給与月額」「手取り」を分けること

級・号俸は,俸給表上の位置を示す情報である。他方,給与の比較には,地域や本人の事情に応じた手当も関係する。公表された初任給の例と,俸給表に掲げられた俸給月額とを,同じ数字だと決め付けるべきではない。
手取りを知りたい場合は,勤務予定地と本人に適用される手当,控除項目を確認する必要がある。住居手当や通勤手当の上限を初任給に一律加算して「誰でもこの額を受け取れる」と計算することは適切でない。

第3 賞与と諸手当
1 期末・勤勉手当

裁判所の採用Q&Aでは,期末・勤勉手当について,1年間に俸給月額などの約4.65か月分と案内されている。「俸給月額など」という算定の基礎と,初任給の公表例とは区別して読む必要がある。
この案内は,採用初年度を含む全員が,公表された月額に4.65を掛けた額を必ず受け取るという意味ではない。個人の年収を計算する際には,実際の支給対象期間及び支給額を確認する必要がある。

2 通勤・住居・超過勤務に関する手当
手当裁判所の公式案内比較する際の注意点通勤手当6か月定期券の価額等。1か月当たり最高15万円上限額が全員に支給されるわけではない住居手当月額最高2万8000円家賃が月額1万6000円を超える場合に支給され,有料の国家公務員宿舎を貸与されている職員は対象外である(一般職の職員の給与に関する法律11条の10。裁判所職員臨時措置法により準用)超過勤務手当等諸手当として案内されている固定額として全員の年収に加算することはできない

通勤手当は通勤費との関係で支給されるため,額の大きさだけで生活上の余裕を比較するのは適切でない。転居を伴う採用や異動を考える際には,家賃,通勤費,家族の生活条件も併せて検討する必要がある。

書記官への任命後の俸給調整と,事務官の初任給を区別すること
令和6年10月23日の第63回東京地方裁判所委員会議事概要メモ3頁では,同地裁の人事課長が,書記官には通常の俸給に加えて俸給の調整に当たる支給があり,書記官任命後のもので,新規採用時には付かない旨を説明している。したがって,本記事の事務官の初任給の表に,書記官任命後の俸給調整を当然に含めたり,一律に上乗せしたりすることはできない。
この議事概要メモは同日の説明を記録したものであり,令和8年の支給率,調整数又は個人の年収を示してはいない。書記官の役職・給与資料の区別は,裁判所書記官とは―役職と給与の調べ方も参照されたい。

第4 年収の計算と比較の限界
1 年収はその年の支給額を積み上げて確認すること

給与収入の年額を把握するには,各月の給与と,その年に支給された期末・勤勉手当等を積み上げる必要がある。毎月の給与が変わる場合や,年度途中の採用,異動,休業等がある場合に,初任給を12倍した額だけで実際の年収を表すことはできない。
例えば,一般職・大卒程度区分の公表例27万8400円を12倍すると334万800円になる。しかし,これは同じ月額を12か月分置いた算術上の小計であり,賞与や個別の諸手当を含む実際の年収,採用初年度の年収又は手取り額を示すものではない。

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裁判所支部とは―本庁・支部・出張所の違いと管轄・提出先の調べ方(AI作成)

目次

第1 裁判所支部とは1 本庁の事務の一部を取り扱う組織である2 高裁・地裁・家裁の支部を区別する第2 本庁・支部・出張所・簡易裁判所の違い1 名称が似ていても同じ組織ではない2 家裁出張所では受付場所と審理場所が異なることがある第3 全国の裁判所支部の数と一覧1 地裁と家裁にはそれぞれ203支部がある2 一覧・住所・電話番号は目的に応じて調べる第4 支部の管轄区域と事件の提出先は一致するとは限らない1 管轄区域表の注意書きまで読む2 本庁だけでなく別の支部に集約される場合もある第5 管轄・提出先を調べる手順1 手続名,管轄,取扱庁の順に確認する2 提出先と納付先・期日参加方法を別に確認する第6 よくある疑問1 近くに支部があれば,そこへ申し立てればよいか2 裁判所支部がある地域には,高裁支部もあるか3 昔使った提出先を,次回も使ってよいか第7 出典・参考資料1 法令・全国の組織資料2 管轄・提出先・窓口案内
第1 裁判所支部とは
1 本庁の事務の一部を取り扱う組織である

裁判所支部とは,高等裁判所,地方裁判所又は家庭裁判所の事務の一部を,その裁判所の管轄区域内の別の場所で取り扱うために設けられる組織である。
裁判所法は,下級裁判所の種類を高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所としている。「支部」は,これらと並ぶ第五の種類の裁判所ではない。

最高裁・高裁・地裁・家裁・簡裁の5種類の役割と三審制は,裁判所とは―5種類の役割・三審制・管轄と利用方法で整理している。裁判所の種類を確かめた上で,本記事の本庁・支部・出張所の区別へ進むと,提出先を調べやすい。

支部を利用するときに重要なのは,支部が存在することと,その支部が目的の手続を取り扱うことを分けて確認することである。
自宅に近い支部の庁舎があっても,事件の種類によっては本庁又は別の支部へ申立てる必要がある。所在地だけで提出先を決めることはできない。

2 高裁・地裁・家裁の支部を区別する

地方裁判所そのものの役割と取扱事件は,地方裁判所とは―扱う事件・他の裁判所との違い・管轄の調べ方で説明している。まず裁判所の種類を選び,次に本記事で本庁・支部の取扱いと実際の提出先を確認するとよい。

裁判所法22条は高等裁判所の支部を,31条は地方裁判所の支部又は出張所を設けることができると定めている。家庭裁判所には,31条の5により地方裁判所の支部・出張所に関する規定が準用される。
したがって,「○○支部」という地名だけでなく,高等裁判所,地方裁判所又は家庭裁判所のどの支部かを確認する必要がある。同じ地域の地裁支部と家裁支部でも,扱う事件は同じではない。

本庁・支部の事務分配や回付の法的な位置付けを詳しく調べる場合は,地方裁判所支部・家庭裁判所支部の権限と一覧を参照されたい。

第2 本庁・支部・出張所・簡易裁判所の違い
1 名称が似ていても同じ組織ではない

本庁・支部・出張所の区別は,一つの裁判所の組織と事務の取扱場所に関する区別である。これに対し,簡易裁判所は,裁判所法が定める別の種類の下級裁判所である。
地方裁判所支部と簡易裁判所が同じ庁舎に置かれていても,申立書の宛名を一括して「○○裁判所」としてよいことにはならない。

名称位置付け利用前に確認すること本庁支部等との対比で用いられる裁判所の本体の庁本庁へ集約された手続か,担当部はどこか高裁・地裁・家裁の支部当該裁判所の事務の一部を取り扱う組織裁判所の種類,担当区域,事件類型ごとの取扱い家庭裁判所出張所家庭裁判所の事務を地域で取り扱う組織受付だけか,審理等も行うか,対象手続は何か簡易裁判所地裁や家裁とは別の種類の下級裁判所簡裁に申し立てる手続か,その簡裁の管轄はどこか
2 家裁出張所では受付場所と審理場所が異なることがある

家庭裁判所出張所の取扱いは一律ではない。裁判所の宮崎県内の管轄区域表も,一部の出張所では受付と出張による家事審判・家事調停に関する事務だけを取り扱うと注意している。

具体例として,福岡家庭裁判所の窓口案内は,甘木出張所では調停・審判の申立ての受付に関する事務のみを取り扱い,受付後の審理等は福岡家裁本庁で行うと説明している。同出張所を管轄区域とする調停・審判は,本庁に申し立てることもできるとされている。
これは甘木出張所についての案内であり,全国の出張所が同じ運用であることを意味しない。出張所の名称だけから,そこで全手続が完結すると考えないことが重要である。

家裁出張所の沿革や受付出張所については,家庭裁判所の出張所及び受付出張所を参照されたい。

第3 全国の裁判所支部の数と一覧
1 地裁と家裁にはそれぞれ203支部がある

裁判所データブック2026の組織表によれば,高等裁判所は本庁8庁・支部6庁,地方裁判所は本庁50庁・支部203庁,家庭裁判所は本庁50庁・支部203庁・出張所77庁である。
高裁6支部のほか,東京高等裁判所には特別の支部として知的財産高等裁判所が置かれている。

この数は裁判所の組織数である。同じ庁舎に複数の裁判所が置かれる場合があるため,地裁支部203庁と家裁支部203庁を足して,庁舎が406か所あると読むものではない。
また,支部数は裁判官の人数や開廷日数を示す数字でもない。

2 一覧・住所・電話番号は目的に応じて調べる

(続きを読む...)裁判所支部とは―本庁・支部・出張所の違いと管轄・提出先の調べ方(AI作成)

令和4年度最高裁民事破棄判決等の実情-25判決・3決定の一覧と主要8事件(AI作成)

目次

第1 資料の対象と位置付け第2 破棄件数と割合の読み方1 破棄判決の母数と割合2 差戻し・自判と破棄理由3 破棄決定の3件第3 掲載された25判決・3決定の一覧1 破棄判決25件2 破棄決定3件第4 主要8事件の判断1 町内会の土地と釈明義務2 別訴が係属する財産と財産分与3 ツイッター投稿の削除と比較衡量4 家賃保証契約の解除・明渡し条項5 原発事故の国賠責任と反対意見6 財産開示と弁済の主張7 子の引渡しの間接強制8 調査委員会の弁護士と訴訟代理人排除第5 関連資料への導線第6 出典・参考資料1 年次論文・一覧表2 裁判例
第1 資料の対象と位置付け

令和4年度の「最高裁民事破棄判決等の実情」によれば,対象となる破棄判決は25件,破棄決定は3件である。
対象期間は令和4年1月から12月までであり,4月から翌年3月までの会計年度ではない。
行政事件・労働事件も集計に含まれる。

原資料は,鷹野旭・和久一彦「最高裁民事破棄判決等の実情-令和4年度-」(判例時報2563号,令和5年10月1日号,88頁~112頁)である。
この論文は,当該年の事件と破棄理由を整理した解説であり,判決・決定そのものとは区別される。
以下では,論文の集計と掲載事件の索引を示し,主要8事件について裁判所公表の本文に基づいて判断を説明する。

第2 破棄件数と割合の読み方
1 破棄判決の母数と割合
(1) 調整済み既済件数

論文が示す通常上告事件の既済件数は2168件,上告受理申立て事件の既済件数は2704件であり,単純合計は4872件となる。
同一事件の通常上告と上告受理申立ての重複を調整した既済件数は2956件であり,破棄判決25件の割合はこの調整済み件数を母数としている。

25÷2956×100を計算すると約0.85%となる。
論文の表示は小数第1位までの0.8%であり,25件という件数と2956件という母数を併せて読むことで計算の関係が分かる。

(2) 個別事件の見通しとの違い

この割合は,令和4年に処理された事件全体についての記述である。
特定の事件で上告又は上告受理申立てが成功する確率を示す数値ではなく,申立て理由や原判決の内容を評価せずに個別事件へ当てはめることはできない。

2 差戻し・自判と破棄理由
(1) 主文の内訳と重複

論文によれば,差戻しを含む判決は11件,自判を含む判決は15件であり,両方を含む判決が1件ある。
11+15-1=25であり,差戻しと自判を重複のない分類として足し合わせると,件数を1件多く数えることになる。

差戻しでは破棄された部分について原審でさらに審理が行われ,自判では最高裁自身がその部分の裁判をする。
一部破棄の事件には,残る部分について棄却や却下をしたものもあるため,「破棄」の語だけでは当事者の請求がどこまで認められたかは分からない。

(2) 論旨に基づく破棄と職権破棄

破棄理由についての論文の内訳は,論旨に基づくもの21件,職権によるもの3件,両方によるもの1件である。
この3区分では21+3+1=25となり,主文の差戻し・自判の分類とは別の集計である。

3 破棄決定の3件

許可抗告事件について,論文は既済16件のうち破棄決定3件,割合18.8%と整理している。
3÷16×100=18.75%であり,判決の25件とは事件の種類も母数も異なる。

(続きを読む...)令和4年度最高裁民事破棄判決等の実情-25判決・3決定の一覧と主要8事件(AI作成)

令和6年度最高裁民事破棄判決等の実情-19判決・2決定の一覧と判旨の読み方(AI作成)

目次

第1 対象資料と破棄件数1 対象は令和6年中の裁判である2 19判決・2決定の内訳第2 破棄判決19件の一覧第3 破棄決定2件の一覧第4 判旨を読む際に分けたい三つの問題1 権限の有無と権限行使の相当性2 共通の事情と個別に確かめる事情3 破棄理由と最終的な事件の結論第5 出典・参考資料1 裁判例2 統計3 文献

各年度の記事と判例時報の掲載号は,最高裁民事破棄判決等の実情(平成元年度~令和7年度)―年度別記事と判例時報の掲載号の一覧から参照できる。

第1 対象資料と破棄件数
1 対象は令和6年中の裁判である

令和6年度の最高裁民事破棄判決等の年次論文が扱うのは,令和6年1月から12月までに言い渡された19件の破棄判決と2件の破棄決定である。
4月から翌年3月までの会計年度を集計したものではなく,行政事件及び労働事件も対象に含まれる。

基礎資料は,宮端謙一・一藤哲志「最高裁民事破棄判決等の実情―令和6年度―」(判例時報2629号,令和7年10月1日,5頁~31頁)である。
以下では,同論文の年度集計と裁判例の紹介を区別し,公表された裁判本文へのリンクを付して裁判日順に整理する。

2 19判決・2決定の内訳
(1) 差戻し・自判と破棄の根拠
区分破棄件数差戻し自判上告・上告受理事件の判決19件10件9件許可抗告事件の決定2件1件1件

年次論文によれば,19判決及び2決定はいずれも論旨を理由とする破棄であり,職権による破棄はなかった。
特別抗告事件の破棄決定もなかったとされている。

(2) 破棄割合と母数の違い

同論文は,重複を調整した上告・上告受理事件の既済件数3137件に対する19判決の割合を0.6%とする。
これは年度全体の集計値であり,特定の事件について上告が認められる確率を示すものではない。

許可抗告については,同論文の既済17件に対する2件の割合が11.8%である。
一方,司法統計年報の第2表から民事・行政の許可抗告既済件数を合算すると30件となるため,両資料の集計範囲を揃えずに同一の割合として比較することはできない。

第2 破棄判決19件の一覧

表の「差戻し」「自判」は年次論文の分類である。
一部の請求だけが破棄された裁判も含まれるため,具体的な事件の帰結は主文と併せて読むことになる。

裁判・事件番号主な論点分類最高裁令和6年1月30日第三小法廷判決(令和5年(行ヒ)第2号)海難事故の回避可能性と懲戒裁決差戻し最高裁令和6年3月12日第三小法廷判決(令和4年(受)第1041号,民集78巻1号1頁)消費者の共通義務確認訴訟と個別審理自判最高裁令和6年3月26日第三小法廷判決(令和4年(行ツ)第318号,同年(行ヒ)第360号,民集78巻1号99頁)同性の共同生活者と犯罪被害者遺族給付金差戻し最高裁令和6年4月16日第三小法廷判決(令和5年(受)第365号)業務日報の信用性と事業場外みなし労働時間制一部差戻し・一部棄却最高裁令和6年4月19日第二小法廷判決(令和4年(受)第1266号,民集78巻2号267頁)株券発行前の株式譲渡と株券交付請求差戻し最高裁令和6年4月26日第二小法廷判決(令和5年(受)第604号)職種限定合意と配置転換命令の権限差戻し最高裁令和6年6月21日第二小法廷判決(令和5年(受)第287号,民集78巻3号315頁)法的性別を女性へ変更した者に対する認知請求自判最高裁令和6年6月24日第一小法廷判決(令和4年(受)第1744号,民集78巻3号335頁)住宅供給公社の住宅と賃料減額請求差戻し最高裁令和6年6月27日第一小法廷判決(令和4年(行ヒ)第319号)飲酒運転による懲戒免職と退職手当の不支給自判最高裁令和6年7月3日大法廷判決(令和5年(オ)第1341号,同年(受)第1682号)旧優生保護法と国家賠償・除斥期間差戻し最高裁令和6年7月4日第一小法廷判決(令和5年(行ヒ)第108号,民集78巻3号662頁)労災保険給付支給決定に対する事業主の原告適格自判最高裁令和6年7月8日第一小法廷判決(令和4年(受)第1780号,民集78巻3号839頁)取締役の退職慰労金を減額する決議と裁量自判最高裁令和6年7月11日第一小法廷判決(令和4年(受)第2281号,民集78巻3号921頁)献金に関する不起訴合意と勧誘行為の違法性差戻し最高裁令和6年7月18日第一小法廷判決(令和4年(行ヒ)第373号,民集78巻3号1097頁)外国子会社合算税制における再保険事業自判最高裁令和6年9月13日第二小法廷判決(令和4年(行ヒ)第352号,第353号,民集78巻4号1219頁)年金制度一元化後の継続長期要件自判最高裁令和6年10月31日第一小法廷判決(令和5年(受)第906号)大学教員の任期と無期転換の10年特例差戻し最高裁令和6年11月12日第三小法廷判決(令和5年(行ヒ)第165号,民集78巻6号1377頁)兄弟姉妹の代襲相続と養子縁組前の子自判最高裁令和6年11月15日第二小法廷判決(令和6年(オ)第1287号)裁判体の構成と直接主義差戻し最高裁令和6年12月23日第二小法廷判決(令和5年(受)第1583号,民集78巻6号1445頁)SNS投稿後のログイン通信と発信者情報開示一部自判・一部棄却

11月15日の裁判の紹介は,年次論文の記載による。
年次論文末尾の一覧にある退職手当事件の事件番号及びSNS事件の民集号数については,裁判所の公表情報に従って上表に記載した。

年度を横断して探す場合は,最高裁の破棄判決等一覧表及び平成21年度以降の最高裁民事破棄判決の分析が参照先となる。

第3 破棄決定2件の一覧
裁判・事件番号主な論点分類最高裁令和6年10月16日第二小法廷決定(令和6年(許)第5号)刑事事件の記録についての文書提出命令自判最高裁令和6年10月23日第三小法廷決定(令和6年(許)第1号,民集78巻5号1頁)文化功労者年金を受ける権利の差押え差戻し

10月16日決定は,本件の取調べ記録媒体について,民事訴訟法231条による同法220条3号の準用と,刑事訴訟法47条による提出拒否の判断を扱ったものである。
刑事記録一般の公開や自由な利用を認めた決定と読むことはできない。

10月23日決定は,文化功労者年金を受ける権利が,その性質から当然に差押禁止になるとはいえないと判断した。

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令和5年度最高裁民事破棄判決等の実情-19判決・8決定の一覧と代表判例(AI作成)

目次

第1 対象資料と令和5年分の範囲第2 基礎件数と破棄率の分母1 上告・上告受理申立てと0.6%2 許可抗告35%と資料間の件数差3 差戻し・自判・訴訟終了の内訳第3 破棄判決19件の一覧第4 破棄決定8件の一覧第5 公式全文から読む代表9裁判1 手続の前提を誤った二つの裁判2 賃金の名称や割合で結論を決めない3 権利の時間軸と支払の性質を分ける4 行政裁量と国家賠償の審査対象5 土地一部の権利を全部の仮処分で保全できる場合第6 原資料と関連する記事への入口第7 出典・参考資料1 統計・データ2 裁判例3 文献
第1 対象資料と令和5年分の範囲

令和5年度の「最高裁民事破棄判決等の実情」が扱うのは,令和5年1月から12月までに最高裁判所がした民事の破棄判決19件と破棄決定8件である。
行政事件と労働事件も含まれており,「年度」という題名から4月始まりの会計年度と読むことはできない。

基礎資料は,川﨑直也・山本拓「最高裁民事破棄判決等の実情―令和5年度―」(判例時報2595号,令和6年8月11日号,5頁~30頁)である。
本記事は,AIを用いて,同資料の統計と全件一覧を整理し,代表9裁判について裁判所公表全文を基に判断の意味と限界を説明する。

年次解説は個々の裁判の原文ではなく,事件の所在と破棄理由を把握するための文献である。
以下の全件一覧は年次解説の記載に基づく索引であり,詳しい判例解説は公式全文へのリンクを付した9裁判に限っている。
資料確認の基準日は令和8年10月7日であるが,説明の対象は令和5年当時の裁判であり,現在の事件への適用には適用法とその後の改正・判例を区別する必要がある。

第2 基礎件数と破棄率の分母
1 上告・上告受理申立てと0.6%

年次解説5頁が示す上告と上告受理申立ての件数は,次のとおりである。
単純合計と,並行申立て等を調整した件数は別の数値である。

区分新受既済上告2369件2253件上告受理申立て2968件2804件単純合計5337件5057件年次解説の調整後件数3254件3111件

上告・上告受理の各件数は,裁判所の「令和5年司法統計年報1民事・行政編」第2表の民事と行政の各欄を足しても確認できる。
例えば,既済の上告は1903+350=2253件,上告受理は2430+374=2804件となる。

年次解説の破棄判決の割合0.6%は,19÷3111×100を小数第1位に丸めたものである。
本記事の再計算では約0.6107%となるが,19÷5057でも,19÷新受件数でもない。
分子は破棄判決の文書数であり,分母も調整後の既済件数であるため,特定の当事者や個別事件の上告成功率を表すものではない。

2 許可抗告35%と資料間の件数差

年次解説5頁は,許可抗告の新受22件,既済20件を示している。
破棄決定8件のうち許可抗告は7件,特別抗告は1件であり,年次解説の既済許可抗告に占める破棄決定の割合は7÷20×100=35%となる。
特別抗告を含む8件を分子にして40%とする計算は,対象を混ぜている。

一方,裁判所が掲載する令和7年9月16日更新版の司法統計年報第2表では,許可抗告は民事と行政を合わせて新受23件,既済21件であり,年次解説の数値と一致しない。
本記事では35%を年次解説の集計による数値として示し,異なる資料の分母へ置き換えない。
また,許可抗告として最高裁に係属した事件の内訳と,許可を求める申立て全体がどれだけ認められるかとは区別する必要がある。

3 差戻し・自判・訴訟終了の内訳

年次解説8頁による結果の内訳は,次のとおりである。
一部破棄を含む結果分類であり,併合事件や並行事件を事件番号の数だけ重ねて数えていない。

裁判の種類結果件数破棄判決差戻し3件破棄判決自判15件破棄判決訴訟終了宣言1件破棄決定差戻し4件破棄決定自判4件

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裁判所ウェブサイトのリニューアル・運用保守契約―受注者と業務内容の変遷(AI作成)

目次

第1 契約書から分かること1 リニューアルの公開日と契約締結日2 契約の比較でそろえる条件第2 平成31年のリニューアル・運用保守契約1 受注者と契約期間2 開発と運用保守を分けて読む第3 令和7年3月3日開始の運用保守契約第4 新サイトの構築・システム移行1 ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングとの契約2 仕様書が掲げる手続案内の改善第5 チャットボットの契約を区別する1 チャットプラスとの調査支援・構築等2 スカラコミュニケーションズとの検証環境提供3 契約名のAIと現在の回答方式第6 運用報告書と関連記事第7 出典と参照箇所
第1 契約書から分かること

裁判所ウェブサイトに関する契約は,サイト本体の構築・移行,既存サイトの運用保守,チャットボットの検証・構築等に分かれている。
同じ時期に異なる受注者との契約が存在しても,担当業務や契約期間が異なれば矛盾しない。
本記事は,運用支援報告書等の資料集に掲載している3点の契約資料から,受注者,業務範囲,契約期間及び読み違えやすい点を整理するものである。

1 リニューアルの公開日と契約締結日

裁判所のリニューアル案内は,ウェブサイトの統合,手続・書式への導線の整理及びチャットボットの導入を説明している。
これらの公開されたサービスと,構築等を発注した契約の締結日とは区別する必要がある。
資料集で「令和7年9月24日の裁判所ウェブサイトのリニューアルに関する請負契約書」として掲載しているPDFは,複数の契約書・仕様書をまとめた269頁の合冊である。
合冊の最初の構築・移行契約は令和6年4月1日付であり,合冊名の日付を全ての契約の締結日と読むことはできない。

2 契約の比較でそろえる条件

以下の表は,個々の契約書に記載された金額と期間である。
会社名は契約書に表示された当時の名称による。
期間の異なる運用保守と,構築を含む契約の金額をそのまま比較して,単価の増減や費用対効果を判断することはできない。

契約・受注者契約期間契約金額(税込み)平成31年のリニューアル・運用保守/エヌ・ティ・ティ・データ平成31年4月1日~令和2年3月31日107,995,800円令和7年3月開始の運用保守/NTTデータ令和7年3月3日~3月31日4,348,300円令和6年の構築・システム移行/ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング令和6年4月1日~令和7年3月31日90,420,000円

表の3件は,各PDFの最初の契約書に基づく。
平成31年契約の終期は原文で「平成32年3月31日」と表記されており,表では令和2年に置き換えた。
これらを合計してリニューアル全体の総事業費とすることはできない。

第2 平成31年のリニューアル・運用保守契約
1 受注者と契約期間

平成31年4月1日付の契約書は,最高裁判所と株式会社エヌ・ティ・ティ・データとの契約である。
契約書第1条は,名称を「裁判所ウェブサイト等のリニューアル及び運用保守等」とし,契約期間と金額を定めている(PDF1枚目)。

2 開発と運用保守を分けて読む

仕様書の調達範囲には,システム構築,アクセシビリティ対応,セキュリティ対策,サイト構造設計,デザイン,移行,マニュアル作成,操作研修及び動作テスト等が掲げられている。
これに加えて,システムの保守・運用,障害対応,コンテンツメンテナンス,ヘルプデスク及びアクセシビリティ試験等が運用保守業務として列挙されている(PDF13~14枚目,仕様書3~4頁)。
したがって,この契約の金額を,既に完成したサイトの保守だけの年額として読むことはできない。

仕様書は,開発業務を平成32年3月2日まで,運用保守業務を同月3日から31日までとする作業期間を示している。
また,総委託期間について平成37年3月2日までを想定する記載があるが,これは当該契約書の終期を令和7年まで延ばすものではない。
契約書の期間,仕様書上の作業期間及び将来の想定期間を区別する必要がある。

第3 令和7年3月3日開始の運用保守契約

(続きを読む...)裁判所ウェブサイトのリニューアル・運用保守契約―受注者と業務内容の変遷(AI作成)

民事上告・上告受理申立ては何か月かかる?最高裁の審理期間と統計の読み方(AI作成)

目次

第1 統計から分かる審理期間と,個別事件の終了時期第2 月表で6か月以内の終局割合を読む1 「6月以内」欄だけを分母で割らない2 表の「民事」と,行政事件を除いた民事事件は同じ範囲とは限らない第3 年次資料で上告・上告受理申立てを分けて読む1 行政と分けた民事統計を読む2 行政事件等を含む年表の計算3 並行申立ての件数を重ねて数えない第4 平均審理期間と起算点の違い1 最高裁での期間と,第一審からの期間を区別する2 受理決定までと,受理後の終局までを区別する第5 審理期間から棄却・不受理や個別事件の結論を推測できるか1 期間別集計と終局区分別集計は別である2 未済事件は,まだ結果が出ていない事件の集計である第6 資料一覧・関連記事1 本記事で用いた資料2 関連記事
第1 統計から分かる審理期間と,個別事件の終了時期

令和7年公表の第11回迅速化検証報告書の表2では,令和6年の対象となる民事上告事件の平均審理期間は3.8か月,民事上告受理事件は3.9か月である。6か月以内に終わった割合は,それぞれ約85.3%,約84.7%となる。
これは最高裁での記録受付から終局までの期間についての既済事件の統計であり,上告状を提出した日からの期間や,個別事件の終了期限ではない(第11回検証報告書・上訴審における訴訟事件の概況・PDF20頁・冊子213頁)。
最高裁判所の月表や年表からも,審理期間別の件数を確認できる。
令和7年11月の月表では,「民事上告」欄の既済184件のうち162件,「民事受理」欄の既済212件のうち185件が6か月以内の区分に入る。割合はそれぞれ約88.0%,約87.3%である。
ただし,この集計には行政事件等も含まれる。自分の民事事件が6か月以内に終わることや,6か月を過ぎれば上告受理決定が出ることを示すものではない(令和7年11月の最高裁判所事件月表・PDF3頁)。

本記事では,月表の期間区分,年表の上告・上告受理別の内訳及び年次概況の平均期間を区別して説明する。
制度や理由書の提出手続は上告審に関するメモ書き,不受理決定の意味は上告不受理決定は原判決を正しいと認めたことになるかを参照されたい。

第2 月表で6か月以内の終局割合を読む
1 「6月以内」欄だけを分母で割らない

月表の「上告既済事件の審理期間表」には,「2月以内」「3月以内」「6月以内」「1年以内」等の欄がある。
これらは総数を期間別に分けた区分であり,後の欄に前の欄の件数が重ねて入っているわけではない。例えば,6か月以内に終わった件数は,2月以内・3月以内・6月以内の3欄を合計して求める。
令和7年11月分の計算は,次のとおりである(同月表PDF3頁)。

月表の区分既済総数6か月以内の件数総数に対する割合民事上告184件44+48+70=162件約88.0%民事受理212件42+51+92=185件約87.3%

割合は本記事で計算し,小数第1位に丸めたものである。分母は当月に既済となった件数であり,当月の新受件数や当月末の未済件数ではない。

2 表の「民事」と,行政事件を除いた民事事件は同じ範囲とは限らない

同月表のPDF1頁では,民事の上告(新法)の既済は145件,行政の上告の既済は33件,民事の特別上告の既済は6件である。これらを足すと,期間表の「民事上告」184件に一致する。
また,民事の上告受理の既済174件と行政の上告受理の既済38件を足すと,「民事受理」212件に一致する。
したがって,上記割合を,行政事件を除いた民事事件だけの割合として引用することはできない。

年表にも,原則として民事事件に行政事件を含め,民事上告事件に特別上告事件を含めるという凡例がある。統計の見出しだけで対象を決めず,凡例と内訳を併せて確認する必要がある(令和6年度最高裁判所事件統計年表・PDF2頁)。

第3 年次資料で上告・上告受理申立てを分けて読む
1 行政と分けた民事統計を読む

第11回迅速化検証報告書の2.1は民事訴訟事件,2.2は行政事件訴訟を分けて説明している。
民事の章の主な分析対象は,高等裁判所が第二審としてした終局判決に対して,上告が提起され,又は上告受理申立てがされた事件である。表2の令和6年の既済事件について,6か月以内の件数を求めると,次のとおりとなる(同報告書PDF19~20頁・冊子212~213頁)。

民事の区分既済総数6か月以内の件数総数に対する割合上告事件1855件957+625=1582件約85.3%上告受理事件2397件1175+856=2031件約84.7%

月表・年表の「民事」に行政事件等が含まれる集計とは,対象が異なる。表が異なる数字を,そのまま増減の比較に使うことはできない。

2 行政事件等を含む年表の計算

令和6年度版の年表の第11表には,令和6年の既済事件について,上告事件と上告受理事件を分けた審理期間別の内訳がある。
当審受付から終局までの6か月以内の割合を求めると,次のとおりとなる(同年表PDF18頁・冊子11頁)。ここでも,原則として行政事件及び特別上告事件を含むという凡例が適用される。また,令和6年の数値は速報値である。

(続きを読む...)民事上告・上告受理申立ては何か月かかる?最高裁の審理期間と統計の読み方(AI作成)

最高裁判所の小法廷への裁判官配置・代理順序・事件分配―仕組みと年別資料(AI作成)

目次

第1 毎年の裁判官会議で定める事項1 制度を定める規則と年別の決定2 裁判官の配置と主任裁判官の違い第2 令和8年分の裁判官の代理順序第3 令和8年分の事件分配比率と調整1 基本比率は10対9対102 定年退官前及び新任直後の調整第4 再審・差戻し・関連事件等の分配1 再審事件及び差戻し後の上告事件2 除斥・忌避等及び裁判に関する損害賠償事件3 関連事件及び未済事件第5 令和8年分の開廷日割り及び夏期の要急事件1 通常の開廷日割り2 夏期の要急事件は期間別に担当する第6 配置・代理順序・裁判事務分配の年別資料第7 関連記事及び出典1 関連記事2 直接参照した資料

最高裁判所の三つの小法廷に誰を配置し,欠員時に誰が代理し,事件をどの小法廷へ分配するかは,裁判官会議が毎年12月に翌年分を定める。
本記事は,最高裁判所裁判事務処理規則と公開された年別資料を分けて整理し,令和8年分の資料を例に,事件分配比率,特別な事件の取扱い,開廷日割り及び夏期の要急事件を説明する。

本記事では,小法廷の裁判官配置,代理順序及び事件分配を,制度を定める規則と年ごとの決定に分けて整理する。令和8年の分配比率や代理順序は当該年の資料の内容であり,すべての年度に共通する固定値ではない。大法廷・小法廷の位置付けと最高裁判所全体の役割は,最高裁判所とは―役割・裁判官・大法廷と小法廷・判例の調べ方を参照されたい。

第1 毎年の裁判官会議で定める事項

現職の最高裁判所裁判官の氏名・経歴を調べる場合は,最高裁判所裁判官の現職15人の一覧を参照されたい。
本記事は,小法廷への配置,代理順序及び事件分配の制度と年別資料を扱う。裁判官の仕事や種類全体の説明は,裁判官とはで確認できる。

1 制度を定める規則と年別の決定

最高裁判所裁判事務処理規則4条は,各小法廷の裁判官の配置,裁判官に差し支えがあるときの代理順序及び各小法廷に対する事務の分配について,毎年12月の裁判官会議で翌年分を定めるとしている。
規則が制度の枠組みを定め,年別資料が具体的な配置や分配方法を示すという関係にある。

同規則5条によれば,いったん定めた配置,代理順序及び分配は,一つの小法廷の事務が多過ぎる場合や,裁判官の退官,疾病その他の事由による継続的な欠勤等の場合を除き,一年間変更しない。
したがって,年初の資料に記載された裁判官名が,その年の全期間を通じて実際の構成員と一致するとは限らない。

2 裁判官の配置と主任裁判官の違い

同規則1条・2条は,第一小法廷,第二小法廷及び第三小法廷を置き,各小法廷の裁判官の員数を5人とし,3人以上の出席で審理及び裁判ができると定める。
同規則6条は,各事件について主任裁判官を定めるとしている。

小法廷への裁判官の配置は裁判体の構成に関する事項であり,主任裁判官の指定は個別事件に関する事項である。
年別の配置表だけから,個別事件の主任裁判官や裁判官の意見を確定することはできない。

第2 令和8年分の裁判官の代理順序

令和8年分の配置・代理順序・裁判事務分配資料の第2によれば,小法廷の裁判官に差し支えがあるときは,次の小法廷の裁判官が順次代理する。

差し支えがある裁判官の所属代理する裁判官の所属と順序第一小法廷第二小法廷(最高裁判所長官を除く。)又は第三小法廷第二小法廷第三小法廷又は第一小法廷第三小法廷第一小法廷又は第二小法廷(最高裁判所長官を除く。)

同資料は,大法廷において最高裁判所長官に差し支えがあるときは,他の裁判官が席次の順序に従って代理すると定める。
上記は令和8年分の資料の説明であり,別の年についてはその年の決定を確認する必要がある。

第3 令和8年分の事件分配比率と調整
1 基本比率は10対9対10

同資料第3の1によれば,事件は種類ごとに,第一小法廷10,第二小法廷9,第三小法廷10の比率により,順次分配する。
これは資料上の基本比率であり,年間の実際の処理件数が必ずこの比率になるという意味ではない。

2 定年退官前及び新任直後の調整

最高裁判所長官以外の裁判官が定年により退官する場合は,退官日の2箇月前から後任裁判官の配置まで,当該裁判官が配置されている小法廷の事件分配比率を2減ずる。
また,最高裁判所長官以外の裁判官が新たに就任する場合は,就任日から1箇月間,当該裁判官が配置される小法廷の比率を2減ずる。

いずれも,小法廷の基本比率を調整する規定である。

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少年事件の司法統計の読み方―新受人員・処分区分・特定少年の比較(AI作成)

目次

第1 少年事件の司法統計で分かること1 家庭裁判所が受理・処理した事件の統計2 目的に応じて表を選ぶ第2 新受・受理・既済・未済人員の違い1 その年に入った事件とその年に終わった事件2 繰越しと訂正を確認する第3 少年事件総数と少年保護事件の違い1 総数の範囲は表の見出しで確認する2 一般保護事件と交通関係の区分第4 既済人員,終局総人員及び処分割合1 既済人員と終局総人員は分母が異なる2 終局決定の内訳を一括して扱わない第5 特定少年と令和4年4月の集計方法変更1 特定少年の表と年齢別の表を区別する2 令和4年以前との比較には経過期の注記が必要である第6 増減を説明するときの実例と限界1 令和4年から令和7年の新受人員2 原因や業務量は別の資料を必要とする3 引用時に残す情報第7 出典・関連資料
第1 少年事件の司法統計で分かること

本記事は統計の読み方を扱う。個別の少年事件の呼出し・調査・審判を調べる場合は,少年事件の流れと保護者の対応を参照されたい。

1 家庭裁判所が受理・処理した事件の統計

少年事件の司法統計は,家庭裁判所等が取り扱った事件について,受理,処理,年末の未済及び処分内容等を集計した資料である。
犯罪の発生件数,警察の検挙人員又は全国の少年の実人数と同じ指標として扱うことはできない。

本記事は,令和7年司法統計年報・少年編を例に,統計表の対象,単位,分母及び時点を確認する方法を説明する。
同年報は令和7年中に全国の裁判所が取り扱った事件についての資料であり,令和8年6月25日掲載と記載されている。
確認日は令和8年10月7日である。

2 目的に応じて表を選ぶ

受理の増減を知りたい場合は新受人員,処分の内訳を知りたい場合は終局決定別の表,年末に残った事件を知りたい場合は未済人員を見る。
「少年事件が増えた」という説明をする際も,どの事件の,どの人員が,どの期間に増えたかを明らかにする必要がある。

裁判所の司法統計年報一覧には,年別・編別の入口がある。
同一覧では,令和6年少年編について令和8年9月17日更新版の掲載が表示されているため,過年度の数値を使う場合も更新版を確認することが必要である。

第2 新受・受理・既済・未済人員の違い
1 その年に入った事件とその年に終わった事件

新受人員はその年に新たに受理した人員,既済人員はその年に処理を終えた人員,未済人員は年末に未処理として残った人員を示す。
新受と既済は,必ずしも同じ事件の集団を追跡した数値ではない。
前年から繰り越された事件がその年に終わる場合もある。

令和7年年報の第3表は,受理人員を旧受と新受に分けている。
少年保護事件について,旧受1万79人と新受6万2565人を合わせた受理人員は7万2644人であり,既済は6万872人,未済は1万1772人である。
この例では,受理人員から既済人員を差し引いたものが未済人員と一致する。
出典は同年報第3表6頁~7頁である。

2 繰越しと訂正を確認する

一般に,新受だけから既済を差し引いても,年末の未済の増減を正確に説明できない。
繰り越された人員も含めた受理の総量を見る必要がある。

同年報の「利用上の注意」は,公表後の異同訂正により,累年表で前年の未済・当年の新受・当年の既済の計算が一致しない箇所があると説明している。
計算が合わないことだけで統計の誤りと断定せず,公表版,更新履歴及び注記を確認することが必要である。

第3 少年事件総数と少年保護事件の違い
1 総数の範囲は表の見出しで確認する

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令和3年度最高裁民事破棄判決等の実情-25判決・8決定と統計の読み方(AI作成)

目次

第1 対象と結論第2 件数と割合をどう読むか1 原論文の集計2 事件統計年表との違い第3 破棄判決25件の一覧第4 破棄決定8件の一覧1 原論文が取り上げる決定2 月別の開示一覧との掲載範囲第5 個別裁判は主文まで読む1 人損・物損の時効-11月2日判決2 会計限定監査役-7月19日判決3 競売不動産の買受け-6月21日決定4 訴訟行為の排除-4月14日決定第6 関連記事第7 出典1 文献2 公的統計・開示資料3 裁判例4 改正法の案内
第1 対象と結論

宮﨑朋紀・大竹敬人「最高裁民事破棄判決等の実情-令和3年度-」が取り上げる破棄裁判は,判決25件と決定8件である。
対象は令和3年1月から12月までに言い渡された裁判であり,「年度」という表題でも4月から翌年3月までの集計ではない。
民事事件に加えて行政・労働事件を含み,複数の事件番号があっても,一つの裁判書にまとめられたものは1件として数えている。

同論文の破棄判決の割合は1.0%,許可抗告事件の破棄決定の割合は26.7%である。
ただし,事件統計年表には異なる既済件数が載っており,分母を置き換えると割合も変わる。
以下では,論文の件数,公的統計の登録事件数及び各裁判の主文を分けて整理する。

第2 件数と割合をどう読むか
1 原論文の集計
(1) 新受・既済と破棄件数

原論文が掲げる通常の上告事件と上告受理申立事件の新受件数は,それぞれ1944件と2437件である。
合計は4381件であるが,同じ原判決に対する並行申立てを1件に換算した数は2654件とされる。
これに対し,破棄率の分母は新受ではなく既済件数である。

区分原論文の既済件数破棄裁判と割合上告・上告受理申立て合計4178件,並行申立て換算後2529件判決25件,25÷2529≒1.0%許可抗告30件決定8件,8÷30≒26.7%

これらの割合は,最高裁で処理された事件の概況を示すものである。
個別事件の勝訴確率や,高等裁判所で許可抗告が許可される割合を示すものではなく,複数の当事者をそれぞれ成功者として数えた割合でもない。

(2) 差戻しと自判の重複

原論文による判決の処理は,差戻し12件,自判16件である。
両方の処理を含む判決が3件あるため,12+16-3=25となり,単純合計が28件になることは矛盾ではない。
決定は,差戻し1件,自判6件,その他1件と整理されている。

原論文によれば,判決・決定とも,当事者の論旨に基づく破棄であり,職権による破棄はなかった。
民集・裁判集民事への登載状況は,判決が12件・8件,決定が5件・1件であり,いずれにも登載されていないものは判決5件・決定2件である。
この登載区分と,裁判所ウェブサイトに本文が公開されているかどうかとは別の問題である。

2 事件統計年表との違い
(1) 判決の件数と既済件数

最高裁判所訟廷事務室作成の「令和3年度最高裁判所事件統計年表」は,速報値である。
第10表の破棄は,上告1件・上告受理29件の計30件であり,原論文の「25判決」とは計上単位が異なる。
複数事件を含む裁判書の数と,登録された事件の数をそのまま比較することはできない。

既済件数にも相違がある。

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家庭裁判所調査官とは―仕事内容,家事・少年事件の調査と調査報告書(AI作成)

目次

第1 家庭裁判所調査官とは―基本的な役割1 家庭裁判所の調査官とは何ですか?2 役職の説明と個別事件の調査の説明3 採用後の養成課程と調査官の専門性第2 家事事件における調査1 当事者や子どもの事情と関係機関との連携2 面接に向けた事実と資料の整理第3 少年事件における調査1 面接,訪問及び専門的な調査2 教育的な働き掛けと試験観察第4 家事事件等の調査報告書の調査結果と意見1 家事事件等の公表様式2 確認された事実と調査官の評価を分けて読む第5 家事事件の報告書の閲覧と情報の保護1 家事審判と家事調停では許可の基準が異なる2 非開示希望は提出すれば必ず認められる制度ではない第6 ウェブ調査の利用と資料の探し方1 ウェブ調査を利用できるかは裁判所が判断する2 職務の解説と執務資料の一覧第7 家庭裁判所調査官についてよくある質問1 家庭裁判所の調査官になるには?2 家庭裁判所調査官の難易度は?3 家庭裁判所調査官の給料はいくらですか?4 家庭裁判所の調査官はエリートですか?第8 出典
第1 家庭裁判所調査官とは―基本的な役割

家庭裁判所全体の役割と利用する手続は,家庭裁判所とはを参照されたい。
調査官の仕事・養成を知りたい場合は第1,家事事件で面接を受ける場合は第2,少年事件の調査については第3,報告書については第4を読むと,目的に合う説明を確認できる。
少年本人と保護者が送致後の流れを確認する場合は,呼出し・調査官面接・少年審判の流れも参照されたい。

1 家庭裁判所の調査官とは何ですか?

家庭裁判所調査官は,家事事件や少年事件について,家族関係,生活環境,子どもの状況などを調査し,裁判官の判断に必要な情報を報告する専門職である。
裁判所の家庭裁判所調査官の職務案内は,家事事件では紛争の原因や背景と解決方法を,少年事件では非行に至った事情と立ち直りに必要な方策を検討すると説明している。

家庭裁判所が扱う家事事件,人事訴訟及び少年の保護事件の位置付けは,5種類の裁判所の役割を参照されたい。裁判所が事件を判断する役割と,調査官が調査・報告を行う役割を分けて理解することが大切である。

裁判所法61条の2は,家庭裁判所調査官の職務を定め,その職務について裁判官の命令に従うとしている。
調査官が事情を調べて意見を述べることと,裁判官が審判等の判断をすることは区別する必要がある。

2 役職の説明と個別事件の調査の説明

首席,次席,総括主任及び主任という役職は,指導監督や組織運営を理解するための区分である。
個別事件でどのような面接や調査が行われ,その結果がどのように報告されるかは,別に確認する必要がある。
役職と家庭審議官の違いについては,家庭裁判所調査官の役職を参照されたい。

調査事務の監督や関係機関との連絡調整等を担う首席の役割は,首席家庭裁判所調査官の職務で説明している。
調査官一般の仕事内容と,首席による部門の指導監督・組織運営を区別して読むと,役割を整理しやすい。

本記事は,令和8年10月7日までに確認した法令及び裁判所の公開資料を基に,調査の基本的な役割,調査官補の採用と養成,調査報告書及び当事者が事情を伝える際の整理方法を扱う。
具体的な調査対象,方法及び日程は,各事件で確認する必要がある。

3 採用後の養成課程と調査官の専門性

裁判所の職務案内によれば,家庭裁判所調査官になるには,裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)によって採用された後,養成課程で必要な知識と技能を修得する。
裁判所の養成課程の案内は,採用後約2年間,行動科学と法律の理論及び実務を学び,修了後に家庭裁判所調査官に任命されると説明している。

養成課程には,裁判所職員総合研修所での合同研修と,所属庁で指導を受けながら事件の調査に当たる実務修習がある。
採用試験の受験資格や日程は,受験年度の裁判所職員採用試験情報で確認されたい。
研修機関の組織と養成課程については,裁判所職員総合研修所の組織,研修内容及び沿革で,過去の採用広報資料については,採用案内パンフレット及び家庭裁判所調査官リーフレットで扱っている。

家庭裁判所調査官補の総合職試験について,院卒者区分・大卒程度区分の受験資格,専門科目及び日程は,裁判所職員採用試験とは―受験資格・試験科目・日程・倍率・採用までを参照されたい。
最終合格後の名簿,勤務地の決定,採用及び採用後の養成の関係は,裁判所職員採用試験に最終合格した後は―採用候補者名簿・意向照会・採用漏れで説明している。採用試験の合格と,養成課程修了後の家庭裁判所調査官への任命は別の段階である。

受験資格,専門記述の選択,令和8年度の倍率,初任給の例及び全国異動の説明は,家庭裁判所調査官になるにはを参照されたい。

第2 家事事件における調査
1 当事者や子どもの事情と関係機関との連携

裁判所の職務案内によれば,家事事件では,当事者や子どもとの面接により紛争の原因・背景を調べ,必要に応じて社会福祉・医療等の関係機関と連絡・調整を行いながら,解決方法を検討する。

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高裁の差戻・再審事件の担当部―民事部への刑事事件配分と裁判官の代理(令和8年度)(AI作成)

目次第1 差戻と再審では担当部の決め方が違う1 通常の新件の輪番だけでは分からない2 対象資料と日付の範囲第2 刑事事件を民事部が扱う例1 札幌高裁の刑事差戻事件2 広島高裁の異議と民事控訴事件の減配3 福岡高裁宮崎支部の異議第3 差戻事件の配分にある特則1 仙台高裁は新件・差戻・再審を分ける2 大阪高裁は集中部の差戻を別に定める3 知財高裁の差戻は通常控訴の配分へ繰り入れる第4 再審は「原裁判をした部」だけでは読み切れない1 原裁判部への配分と福岡高裁の除外条件2 東京高裁の第7・第9刑事部に関する附則第5 事件の分配替えと裁判官の代理は別である1 部を変えるのか,裁判官を補うのか2 長官の代理順序では担当合議体を決められない第6 担当部を確認する順序第7 関連記事第8 出典
第1 差戻と再審では担当部の決め方が違う
1 通常の新件の輪番だけでは分からない

高等裁判所の担当部を調べるときは,通常の控訴・抗告事件の配分に加え,差戻事件,再審事件,異議申立事件及び裁判官に差し支えがあるときの代理を分けて確認する必要がある。
令和8年度の事務分配の文書を見ると,札幌高裁では刑事差戻事件を民事部に配分し,仙台高裁では第1刑事部の裁判の差戻事件を第2刑事部に配分する一方,再審事件は原裁判をした部に配分している。
したがって,「刑事事件は刑事部」「原裁判をした部が再び担当する」「差戻と再審は同じ配分」と一律に考えることはできない。

本記事は,部への事件の配分を説明するものである。
特定の裁判官が個別事件に関与できるか,個々の合議体の構成が適法かという問題は,事件記録と適用法令に基づいて別に検討する必要がある。

2 対象資料と日付の範囲

本記事では,本ブログで「令和8年4月15日現在」の資料として公開している8高裁及び知財高裁の裁判官配置等の文書のうち,差戻・再審・異議・代理に関する記載を取り上げる。
PDFの頁数は,ファイルの先頭を1頁として数えた通し頁であり,文書に印刷された頁番号とは異なる場合がある。

公開ファイル名の日付,規程の施行日及び配置表の日付は同じではない。
例えば,大阪の文書には4月7日施行,札幌の文書には4月8日施行の附則があるが,これらの文書だけで4月15日までの全改定・別規程の収録や,実際の配分を確認したものではない。
文書全体の比較は,高等裁判所の事務分配の比較(令和8年度)を参照されたい。

第2 刑事事件を民事部が扱う例
1 札幌高裁の刑事差戻事件

札幌高裁の規程第2の1(10)は,刑事差戻事件を,受付順に第2民事部及び第3民事部へ順次分配する事件の一つとして掲げている。
同じ項目には,刑事部の裁判官・書記官に関する除斥・忌避・回避の申立事件と,刑事訴訟法428条2項の異議申立事件もある。
刑事部の分担を定める第3では,これらの事件を通常の刑事部の配分対象から除いている(札幌高裁の文書2頁~3頁)。

他方,民事差戻事件には別の定めがあり,第2民事部が原裁判をしたものは第3民事部,第3民事部が原裁判をしたものは第2民事部に配分する。
刑事差戻の二つの民事部への輪番と,民事差戻の二部間の交替は,異なる規定である。

2 広島高裁の異議と民事控訴事件の減配

広島高裁の文書は,刑事訴訟法428条2項の異議申立事件について,原裁判をした部又は裁判官において異議を相当とする場合のほかは,本庁では第2部,第3部の順序で他の部に分配すると定める。
この二つは,通常の民事・行政事件を担当する部である。
松江支部については,本庁第1部を配分先としている(広島高裁の文書6頁)。

控訴棄却の決定に対する異議で,配分を受けた部が異議を相当とする決定をした場合は,その部が本案事件も取り扱う。
その本案事件の分配を受けたときは,本案1件につき,記録冊数4冊未満の民事控訴事件1件の割合で配分を減らす。
民事部が刑事の本案まで扱う場合に,その後の民事事件の配分を調整するという具体的な仕組みである。

3 福岡高裁宮崎支部の異議

福岡高裁の宮崎支部では,通常の刑事事件を刑事部に分配する定めのただし書として,刑事訴訟法428条の異議申立事件を民事部に分配すると定めている(福岡高裁の文書7頁)。

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強制執行停止の申立てが取り消された場合の損害賠償―最高裁令和7年9月9日判決(AI作成)

目次

第1 判決の結論

第2 事案の概要

第3 最高裁が示した理由

1 債権者の執行利益も法的に保護される
2 請求異議の訴えと執行停止の申立ては別である
3 相当な根拠の調査・検討義務

第4 過失の推定と反証

1 推定が働く場面
2 相当な事由による反証

第5 申立人・代理人側の提出前チェック

第6 債権者側の損害立証

第7 判決の射程

第8 関連記事

第9 出典及び確認状況

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令和7年度最高裁民事破棄判決等の実情―24判決・2決定から学ぶ原判決監査と差戻審実務(AI作成)

目次

第1 資料の範囲と結論

第2 基礎件数と「破棄率」の読み方

1 裁判所の司法統計で確認できる件数
2 換算後件数の注意点

第3 24判決・2決定の論点地図

第4 原判決を監査する8つの観点

1 実体論の前に手続と訴訟要件を監査する
2 理由・主文・計算表を相互に照合する
3 契約の表題より権利帰属と取引実体を先に確定する
4 予備的主張を一審から明示する
5 行政事件では審査対象と規範を固定する
6 処分の違法と国家賠償法上の違法を分ける
7 抽象的な評価を具体的事実へ戻す
8 旧法と現行法を枝分けする

第5 差戻審で作るべき事件カード

第6 資料の照合手順

第7 関連記事

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地方裁判所長・家庭裁判所長の役割―司法行政・裁判官人事と裁判の独立(AI作成)

目次

第1 地家裁所長の役割を理解する前提
第2 裁判官会議と所長
第3 職員に対する司法行政上の監督
第4 裁判官人事と人事関係記録
 1 人事関係記録を閲覧できる者
 2 異動計画の作成
第5 就任前後の情報提供と研修
 1 実務協議会
 2 赴任前の説明に関する資料上の限界
第6 所長の役割に関する注意点
第7 関連記事

第1 地家裁所長の役割を理解する前提

裁判所そのものの取扱事件と管轄は,地方裁判所とは―扱う事件・他の裁判所との違い・管轄の調べ方で説明している。本記事では,所長が担う司法行政事務,裁判官会議・事務局との関係及び裁判の独立を区別して読む。

地方裁判所長及び家庭裁判所長は裁判官であるが,所長としての役割には,個別事件の裁判だけでなく,裁判所の組織運営である司法行政が含まれる。

裁判の内容と司法行政を混同しないことが重要である。裁判所法81条は,監督権によって裁判官の裁判権に影響を及ぼし,又は制限することはできないと定めている。

第2 裁判官会議と所長

裁判所法29条2項は,地方裁判所が司法行政事務を行うのは裁判官会議の議によるものとし,地方裁判所長がこれを総括すると定めている。同条3項は,裁判官会議を全員の判事で組織し,地方裁判所長が議長となると定めている。家庭裁判所についても同法31条の5により同様の仕組みが採られている。

したがって,司法行政の主体を所長個人とだけ説明するのは正確ではない。裁判官会議が司法行政事務を処理し,所長は議長として会議を運営するとともに,司法行政事務を総括する立場にある。

第3 職員に対する司法行政上の監督

裁判所法80条は,司法行政上の監督権の主体を定めている。同条3号によれば各地方裁判所は,その地方裁判所の職員並びに管轄区域内の簡易裁判所及びその職員を監督し,同条4号によれば各家庭裁判所は,その家庭裁判所の職員を監督する。条文上の主体は各裁判所であり,所長は裁判所法29条等に基づき司法行政事務を総括する。

他方,日常の庶務を処理する事務局が置かれ,事務局長は裁判所法59条に基づき,地方裁判所長又は家庭裁判所長の監督を受けて事務局の事務を掌理する。所長,裁判官会議及び事務局長の関係を分けて理解する必要がある。

第4 裁判官人事と人事関係記録
1 人事関係記録を閲覧できる者

司法制度改革審議会の質問に対する最高裁判所の回答として紹介されている資料によれば,最高裁判所事務総局人事局のほか,高等裁判所,地方裁判所及び家庭裁判所にも所属裁判官の人事関係記録があり,下級裁判所の記録は異動に伴って移転するとされている。

同資料は,高等裁判所長官,高等裁判所事務局長及び地家裁所長のように裁判官人事に関与する者が記録を見ることができるとしている。これは,人事事務への関与を前提とした説明であり,裁判内容を評価するための無限定な閲覧権限を意味するものではない。

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実務協議会「家庭裁判所の現状と課題」―令和4年度から令和7年度までの主要テーマ(AI作成)

目次

第1 本記事の対象
第2 事件動向から分かること
 1 家事事件全体と家事調停
 2 子をめぐる事件と人事訴訟
 3 少年事件
第3 デジタル化の位置付け
 1 令和5年度以降の独立した章
 2 民事訴訟の全面デジタル化との区別
第4 各年度に共通する運用課題
 1 家事調停と審理運営
 2 成年後見と財産管理
 3 家族法改正への対応
 4 家裁調査官と専門性
第5 資料を読む際の注意点
第6 年度別資料
第7 関連記事

第1 本記事の対象

本記事は,新任の地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長等を対象とする実務協議会で配布された,最高裁判所事務総局家庭局の「家庭裁判所の現状と課題」を,令和4年度から令和7年度まで読み比べたものである。

家庭裁判所の利用方法は,家庭裁判所の役割・手続・費用の調べ方で説明している。家事調停の期間を知りたい場合は平均審理期間と期日間隔,個別事件の調査を知りたい場合は家庭裁判所調査官の職務と調査報告書,成年後見の地域別案内は東京後見センター・大阪後見センターを参照されたい。
本記事の年度別資料が示す運営上の課題と,現在利用する手続の説明は区別して読む必要がある。

資料は,家事事件,人事訴訟事件,少年事件,家事調停,成年後見,子の返還申立事件,家裁調査官,法改正及びデジタル化を一つの冊子で扱う。法令又は個別事件の判断基準ではなく,家庭裁判所が当時どの課題に重点を置いていたかを知るための司法行政資料である。

第2 事件動向から分かること
1 家事事件全体と家事調停

令和4年度夏季資料によれば,令和3年の家事事件及び人事訴訟等事件の新受総件数は115万0372件で,そのうち家事審判事件は96万7413件,家事調停事件は13万2556件であった。

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実務協議会の刑事局資料―「刑事裁判最前線」から「刑事裁判官の支援」まで(AI作成)

目次

第1 本記事の対象
第2 「刑事裁判最前線」の継続テーマ
 1 刑事手続のデジタル化
 2 裁判員裁判と公判前整理手続
 3 裁判員裁判以外の事件
第3 令和7年度の「刑事裁判官の支援」
 1 情報を集約して到達しやすくする取組
 2 担当段階に応じた支援
 3 資料名の変化から分かること
第4 資料を読む際の注意点
第5 年度別資料
第6 関連記事

第1 本記事の対象

本記事は,新任の地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長等を対象とする実務協議会で配布された最高裁判所事務総局刑事局の資料を,令和4年度から令和7年度まで読み比べたものである。

令和4年度から令和6年度までの主な資料名は「刑事裁判最前線」である。令和7年度の資料は「刑事裁判官の支援」と題され,制度上の課題を網羅的に説明する構成から,裁判官が必要な情報と支援に到達するための構成へ重点が移っている。

第2 「刑事裁判最前線」の継続テーマ
1 刑事手続のデジタル化

令和4年度資料は,法務省の検討会報告書を踏まえ,書類の電子データ化,オンラインでの発受及び情報通信技術を用いた手続を念頭に,将来の刑事裁判事務を検討していた段階を示している。

令和5年度及び令和6年度の資料では,法制審議会の審議,制度設計並びに裁判所内のシステム及び運用の準備がより具体的に扱われた。令和6年度冬季資料は,法案・規則・通達等の整備と,デジタル化後の運用を見据えた検討を並行して進める必要があるとしている。

2 裁判員裁判と公判前整理手続

各年度の資料は,裁判員裁判について,公判前整理手続の長期化,争点と証拠の絞り込み,裁判員に分かりやすい立証,画像・図面等を用いた証拠の負担軽減及び実質的な評議を継続課題としている。

裁判員制度の対象事件だけでなく,裁判員を経験する国民への情報提供,若年層の参加,裁判員の安全確保及び裁判所と関係機関との連携も取り上げられている。記載内容は,各課題が解消したことを示すものではなく,配布時点の刑事局の問題意識を示すものである。

3 裁判員裁判以外の事件

刑事局資料の対象は裁判員裁判に限られない。単独事件,令状事務,通訳事件,性犯罪・被害者関係,再審及び医療観察等も年度に応じて扱われている。

このため,資料を引用するときは,「刑事裁判全般の方針」と一括せず,該当する事件類型,手続段階及び資料作成時点を示す必要がある。

(続きを読む...)実務協議会の刑事局資料―「刑事裁判最前線」から「刑事裁判官の支援」まで(AI作成)

実務協議会「民事・行政事件の現状と課題」―令和4年度から令和7年度までの主要テーマ(AI作成)

目次

第1 本記事の対象
第2 毎回取り上げられる分野
第3 民事訴訟手続のデジタル化の推移
 1 令和4年度―全国展開と三つの段階
 2 令和5年度―mintsの拡大と運用準備
 3 令和6年度―ウェブ口頭弁論と全庁の事件管理
 4 令和7年度―全面施行直前の準備
第4 デジタル化以外の継続課題
 1 民事通常訴訟の審理運営
 2 簡易裁判所,倒産及び民事執行
 3 行政・労働・知的財産
第5 資料の読み方
第6 年度別資料
第7 関連記事

第1 本記事の対象

本記事は,新任の地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長等を対象とする実務協議会で配布された,最高裁判所事務総局民事局・行政局の「民事・行政事件の現状と課題」を,令和4年度から令和7年度まで読み比べたものである。

各資料は,民事・行政分野の法令そのものを解説する資料ではなく,裁判所が当時どのような運用上の課題を認識し,各庁にどのような検討を求めていたかを知るための司法行政資料である。

第2 毎回取り上げられる分野

令和4年度から令和7年度までの資料では,おおむね次の分野が継続して取り上げられている。

①民事訴訟手続のデジタル化

②地方裁判所の民事通常訴訟と審理運営

③簡易裁判所の民事訴訟・民事調停,地裁と簡裁の連携

④倒産事件の事務処理及び管財人等の育成

⑤民事執行事件と執行官をめぐる課題

⑥行政事件及び国家賠償事件

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裁判所の退職準備等説明会―最高裁・大阪高裁等の不開示と答申,東京高裁の令和元年10月30日の配布資料(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論の要旨第2 最高裁判所に対する開示の申出(令和元年~令和2年)1 開示の申出と不開示2 理由説明書3 答申(令和2年度(最情)答申第32号)第3 下級裁判所に対する開示の申出(令和2年~令和4年)1 大阪地方裁判所と大阪高等裁判所2 大阪高等裁判所の不開示に対する苦情と理由説明書3 答申(令和4年度(情)答申第8号)4 東京高等裁判所第4 東京高等裁判所の令和元年10月30日の説明会の資料1 資料の構成2 早期退職募集制度の説明3 再任用と再就職規制の説明第5 資料を読む際の留意点第6 関連記事第7 出典1 法令2 開示関係文書3 説明会の資料4 裁判所HPに掲載された答申書
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,裁判所で退職を控えた職員向けに開かれる「退職準備等説明会」について,最高裁判所,大阪地方裁判所,大阪高等裁判所及び東京高等裁判所に対して配布資料の開示を申し出た経過と,当ブログに掲載している東京高等裁判所の令和元年10月30日の説明会の資料の内容を整理するものである。
いずれの文書も,当ブログに掲載しているPDF(第7の2・3)又は裁判所HPに掲載された答申書(第7の4)で確認したものである。

2 結論の要旨

①最高裁判所は,裁判官を対象とした退職準備等説明会は実施しておらず,最高裁判所では裁判官以外の職員を対象とした説明会も実施していないと説明し,情報公開・個人情報保護審査委員会もその説明を不合理とはいえないとした(令和2年度(最情)答申第32号)。
②同委員会は,裁判官の定年退職の日は生年月日により定まるもので,多くの者が一時に退職することは想定し難いことも踏まえて,裁判官を対象とした説明会を実施していないとの説明を不合理とはいえないとしている。
③大阪高等裁判所は,少なくとも直近の数年間は裁判官を含む裁判所職員を対象とした説明会を実施しておらず,それ以前の実施状況も不明であるとして,配付資料は存在しないとした(令和4年度(情)答申第8号で妥当)。
④説明会の実施の要否は各庁の判断に委ねられており,最高裁判所が概算要求で経費を要求していても,各庁で必ず実施されるものではないとされている。
⑤東京高等裁判所の令和元年10月30日の説明会の資料は,退職手当と税金,早期退職募集制度,再任用制度と再就職規制,資産運用,共済組合の医療保険と年金を内容としている。

第2 最高裁判所に対する開示の申出(令和元年~令和2年)
1 開示の申出と不開示

令和元年11月12日付で,次の2件の開示を申し出た。
①裁判官向けの,退職準備等説明会における配布資料(最新版)
②裁判所の一般職向けの,退職準備等説明会における配布資料(最新版)

最高裁判所事務総長は,令和元年12月5日付で,いずれも作成又は取得していないとして不開示とした。

2 理由説明書

苦情の申出(令和2年1月8日受付)について,最高裁判所は,令和2年2月7日付で,対応の準備等に時間を要しているため30日以内に諮問できないと通知した上,同年3月9日に情報公開・個人情報保護審査委員会に諮問した(令和元年度(最情)諮問第61号)。

同日付の理由説明書は,①を「裁判官を対象とした退職準備等説明会で配布した資料(最新版)」と整理し,裁判官を対象とした退職準備等説明会は実施していないので,対象文書は作成又は取得していないと説明している。
②については「裁判官以外の裁判所職員を対象とした退職準備等説明会で配布した資料(最新版)」と整理し,最高裁判所において裁判官以外の裁判所職員を対象とした退職準備等説明会は実施しておらず,下級裁判所における同説明会の配布資料も取得していないと説明している。

3 答申(令和2年度(最情)答申第32号)

同委員会は,令和2年11月26日,令和2年度(最情)答申第32号で,原判断を妥当とした。

①について,答申は,裁判官の定年退職の日は当該裁判官の生年月日により定まるものであることからも(日本国憲法79条5項,80条1項,裁判所法50条参照),多くの者が一時に退職することは想定し難いことも踏まえれば,裁判官を対象とした説明会は実施していないとの説明は不合理とはいえないとしている。
②について,答申は,同委員会の庶務を通じて確認した結果によれば,最高裁判所において退職する職員は多くないことが認められ,下級裁判所の同説明会の実施はそれぞれの下級裁判所に委ねられ,最高裁判所においてその状況を掌握する必要があるものとは推察されないとして,説明は不合理とはいえないとしている。

最高裁判所事務総長は,令和2年12月25日付の苦情対応通知で,この答申を受けたことを踏まえ,不開示の判断を相当と通知した。

第3 下級裁判所に対する開示の申出(令和2年~令和4年)
1 大阪地方裁判所と大阪高等裁判所

令和2年12月6日付で,大阪地方裁判所と大阪高等裁判所に対し,次の2件の開示を申し出た。
①裁判官を対象とした退職準備等説明会における配付資料(最新版)

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裁判官の早期退職に関する最高裁の情報公開―不認定の人数,辞表の書式,応募手続のマニュアル及び公証人になった人数(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論の要旨第2 開示の申出と苦情の申出の流れ第3 早期退職が認められなかった裁判官の人数(令和6年~令和7年)1 開示の申出の内容2 最高裁判所の判断と理由説明書3 答申(令和7年度(最情)答申第24号)4 読み方第4 応募手続の問合せに使用しているマニュアル(令和2年~令和3年)1 開示の申出と不開示2 理由説明書3 答申(令和2年度(最情)答申第57号)第5 裁判官の辞表の書式(令和2年~令和3年)1 開示の申出と不開示2 答申(令和3年度(最情)答申第20号)3 読み方第6 早期退職した裁判官のうち公証人になった人数(令和元年~令和2年)1 開示の申出と不開示2 理由説明書3 答申(令和2年度(最情)答申第11号)4 同じ日の答申第12号・第13号第7 4件に共通する読み方第8 関連記事第9 出典1 法令2 開示関係文書3 裁判所HPに掲載された答申書4 募集実施要項5 内閣人事局の資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,裁判官の早期退職と依願退官に関して,最高裁判所に司法行政文書の開示を申し出た次の4件について,不開示通知書,理由説明書,答申書及び苦情対応通知の内容を整理するものである。
①早期退職が認められなかった裁判官の人数が年度別に分かる文書(令和6年~令和7年)
②早期退職への応募を考えている裁判官又は職員から手続の問合せがあった場合の受け答えに使用しているマニュアル(令和2年~令和3年)
③裁判官の辞表の書式を定めた文書(令和2年~令和3年)
④早期退職した裁判官のうち公証人に就いている人数が分かる文書(令和元年~令和2年)

いずれの文書も,当ブログに掲載しているPDF(第9の2)又は裁判所HPに掲載された答申書(第9の3)で確認したものである。
早期退職の制度そのものは,裁判官の早期退職とは―50歳以上(簡易裁判所判事は55歳以上)の募集,応募と認定,退職手当の割増し及び関係資料で整理している。

2 結論の要旨

4件とも,最高裁判所は「作成又は取得していない」ことを理由に不開示とし,苦情の申出を受けて諮問された情報公開・個人情報保護審査委員会も,いずれも不開示の判断を妥当とした。

不存在とされた理由は,①は作成又は取得を要する事情がないこと,②は問合せには個別に対応しており,募集実施要項に手続が詳細に記載されていること,③は退官を願い出る際の書式は定められていないこと,④は退官後に公証人に任命された者の人数を最高裁判所が把握する必要がないことである。
そのため,早期退職を希望したのに認められなかった裁判官の人数は,最高裁判所の開示文書からは分からない。

第2 開示の申出と苦情の申出の流れ

裁判所の保有する司法行政文書の開示は,「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」(以下「取扱要綱」という。)に基づいて行われている。
各答申書は,開示の申出が取扱要綱記第2に定めるものであり,不開示の判断に対して取扱要綱記第11の1に定める苦情が申し出られ,最高裁判所事務総長から情報公開・個人情報保護審査委員会に諮問がされたという形で事案を説明している。

本記事の4件では,次の順で手続が進んでいる。
①開示の申出に対する最高裁判所事務総長の不開示通知
②苦情の申出を受けた最高裁判所の諮問と,同委員会からの諮問番号の通知及び理由説明書の写しの送付
③同委員会の答申と答申書の写しの送付
④答申を踏まえた最高裁判所事務総長の苦情対応通知

第3 早期退職が認められなかった裁判官の人数(令和6年~令和7年)
1 開示の申出の内容

令和6年11月20日付の開示の申出の対象は,次の文書である。
「早期退職を希望したものの、『引き続き職務に従事することが公務の能率的運営を確保し、又は長期的な人事管理を計画的に推進するために特に必要であると認める場合』に該当するとして早期退職が認められなかった裁判官の人数が年度別に分かる文書(平成25年度以降のもの)」

かぎ括弧内の文言は,裁判官向けの募集実施要項(令和8年4月28日付のものでは6項(2)エ)が掲げる不認定の事由の一つであり,国家公務員退職手当法8条の2第5項4号の「応募者を引き続き職務に従事させることが公務の能率的運営を確保し、又は長期的な人事管理を計画的に推進するために特に必要であると認める場合」に対応する。

2 最高裁判所の判断と理由説明書

最高裁判所事務総長は,令和6年12月20日付で,1の文書は作成又は取得していないとして不開示とした。
苦情の申出(令和6年12月27日受付)を受けて,最高裁判所は令和7年1月27日に諮問し,同委員会は令和6年度(最情)諮問第51号として受理した。

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高等裁判所の事務分配の比較(令和8年度)―集中部,記録の量による配点,兼務と同一名簿の部及び長官の代理順序(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と資料1 対象とした資料2 日付の読み方第2 部の構成1 9庁の部の構成2 兼務表示・同一名簿・新件配分停止の違い3 特別部第3 専門部・集中部1 東京高裁・大阪高裁の集中配分2 その他の高裁第4 配点の方法1 受理の順番による配点2 記録の量の量り方3 刑事控訴の「否認事件」第5 新しい事件類型への対応1 緊急を要する親権行使者の指定の抗告事件2 その他第6 支部と代行・填補の裁判官第7 長官に差し支えがあるときの代理順序1 9庁の代理順序2 東京高裁の代表常置委員・大阪高裁の上席裁判官との関係第8 実務上の留意点第9 関連記事第10 出典1 開示文書2 参照法令・公式資料
第1 本記事の対象と資料

高裁制度の基本,全国8高裁の配置,地裁・最高裁との違いは,高等裁判所とは―役割・地裁や最高裁との違い・全国8高裁と支部の一覧を参照されたい。本記事は,その各高裁の令和8年度の開示文書を比較する。比較対象の9庁には東京高裁の特別の支部である知財高裁を含めており,全国の高裁が9つあるという意味ではない。

部の構成を比較する場合は9庁の部の構成の表,専門部・集中部を探す場合は第3,事件配分の方法を調べる場合は第4,長官の代理順序は9庁の代理順序の表へ進める。

1 対象とした資料

本記事は,全国の高等裁判所8庁と知的財産高等裁判所が定めた令和8年度の裁判官の配置,事務分配,代理順序,開廷日割等を定めた文書を読み比べ,各高裁で控訴事件や抗告事件がどの部へどのように配られるのか,長官に差し支えがあるときに誰が代理するのかを整理するものである。
対象の文書は,司法行政文書の開示を受けたものであり,次のとおり本ブログに掲載している。
なお,大阪高裁の令和6年度の同種の文書には,「平成6年7月22日付け総一第182号に基づく報告」として,大阪高等裁判所長官から最高裁判所事務総局総務局長に送付した旨の送付書が付いていた。

東京高裁,知財高裁,大阪高裁,名古屋高裁,広島高裁
福岡高裁,仙台高裁,札幌高裁,高松高裁

本記事でいう部の構成は,配置表に記載された部の構成であり,同時に稼働する独立した合議体の数ではない。
配置表の掲載順,兼務表示,本文の分担・配分及び附則を併せて読む必要がある。

2 日付の読み方

本記事は,「令和8年4月15日現在」の資料として本ブログで公開している文書の記載を比較する。
公開ファイル名,規程の制定・改正日,附則の施行日及び配置表の日付は区別する必要がある。
知財高裁は東京高裁の特別の支部であり,本記事の「9庁」は比較対象の数である。
各文書の日付は,次のとおり庁ごとに違う。

高裁文書上の日付東京令和8年1月1日施行,同年3月22日施行の改正あり。配置表は令和8年4月1日現在知財令和8年1月1日施行。配置表は令和8年4月1日現在,所長の代理順序の指名は同年1月1日現在大阪令和7年12月19日決定,令和8年1月1日施行。改正の附則が10個あり,最後は同年4月7日施行名古屋施行日として令和8年1月1日から同年4月1日まで7つの日付を列挙広島令和7年12月12日決定。改正2回で,最後は令和8年4月1日施行福岡表題の右上に「(令和8.4.1)」とあるだけ仙台「(令和8年4月1日現在)」の時点版。附則なし札幌札幌高等裁判所規程第7号(令和7年12月12日)。令和8年3月13日付けの改正4本で,最後は同年4月8日施行高松令和7年12月15日決定。令和8年3月10日付けの改正3本で,最後は同年4月1日施行

最高裁判所ウェブサイト掲載の下級裁判所事務処理規則2条では,司法年度は1月1日から12月31日までとされ,7条には年度中の変更の例外が定められている。
配置表自身の日付と改正附則の施行日は別であり,最後の施行日を配置表の基準日と一律に置き換えることはできない。
開示決定通知,交付対象一覧及び4月15日までの追加改定・差替えをすべて確認したものではないため,同日の全規程や全人事異動,実際の配分実績を網羅したものではない。

第2 部の構成
1 9庁の部の構成

各高裁の部の構成は次のとおりである。

高裁本庁の部支部東京民事部20(第3・第6・第13・第18民事部は欠番),刑事部12,特別部5なし知財通常部4,特別部(いわゆる大合議)なし大阪民事部14,刑事部6,特別部なし名古屋民事部4,刑事部2,特別部金沢支部(民事・刑事の2部)広島第1部(刑事),第2部・第3部(民事),第4部,特別部岡山支部(2部),松江支部(部なし)福岡民事部5,刑事部3,特別部宮崎支部・那覇支部(各2部)仙台民事部3,刑事部2,特別部秋田支部札幌民事部3,刑事部1,特別部なし高松第1部(刑事),第2部・第4部(民事),第3部,特別部なし

刑事事件でも民事部へ配分する特則がある。
札幌高裁は刑事差戻事件を第2・第3民事部へ配分し,宮崎支部は刑事訴訟法428条の異議申立事件を民事部へ配分する。
仙台高裁は第1刑事部の裁判の差戻事件を第2刑事部へ配分する一方,再審事件は原裁判をした部へ配分する。
部の数や名称だけでは,これらの例外は分からない(札幌高裁の文書2頁,福岡高裁の文書7頁,仙台高裁の文書7頁)。

2 兼務表示・同一名簿・新件配分停止の違い

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令和8年4月の裁判所の早期退職募集実施要項2通を読む―裁判官6人・一般職29人の募集,認定の順位,応募の締切及び退職手当の割増し(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 対象とする資料2 結論の要旨第2 早期退職募集の法的な仕組み1 根拠規定と募集の2類型2 対象となる年齢の下限3 募集実施要項の記載事項4 応募できない者5 認定,不認定,失効及び退職すべき期日の変更第3 裁判官向けの募集実施要項(令和8年4月28日付)1 主な内容2 提出先と提出方法3 応募者が募集人数を超えた場合の認定の順位第4 一般職向けの募集実施要項(令和8年4月24日付)1 主な内容2 受付担当と提出方法3 応募者が募集人数を超えた場合の認定の順位第5 前回の要項との比較1 裁判官向け2 一般職向け第6 退職手当との関係1 支給率(法5条1項6号)2 定年前早期退職特例(法5条の3)3 一般職と裁判官とで定年の読み方が違うこと第7 相談を受けたときの確認事項第8 関連記事第9 出典1 法令2 募集実施要項3 内閣人事局の資料4 裁判例
第1 本記事の対象と結論
1 対象とする資料

本記事は,最高裁判所が令和8年4月に作成した次の2通の「早期退職希望者の募集実施要項」を読み,国家公務員退職手当法及び同法施行令の規定と照らし合わせて整理するものである。
①早期退職希望者の募集実施要項(令和8年4月28日付の最高裁判所長官の文書)(以下「裁判官向け要項」という。全4頁)
②早期退職希望者の募集実施要項(一般職向け)(令和8年4月24日付の最高裁判所人事局長の文書)(以下「一般職向け要項」という。全5頁)

いずれも各頁の冒頭に「機密性2」の表示があり,問合せ先の電話番号の部分は空欄で読めない。
それ以外の募集の対象,人数,期間,手続等は読むことができる。
法令の条文は,令和8年10月5日にe-Gov法令検索(法令API)で取得した現行の本文によっている。

2 結論の要旨

裁判官向け要項は,下級裁判所の裁判官(簡易裁判所判事を除く。)で50歳以上65歳未満の者と,簡易裁判所判事で55歳以上70歳未満の者を対象に,6人を募集し,令和8年9月1日から同年10月31日までの間に退職させるものである。
一般職向け要項は,裁判官及び裁判官の秘書官以外の職員を対象に,指定職及び行政職俸給表(一)7級以上の職員17人と,それ以外の職員12人を募集し,令和8年7月25日から同月31日までの間に退職させるものである。

応募は,所属庁の長又は受付担当が受信し又は受領した日時で有効性が判断され,郵便の消印は基準にならない。
応募者が募集人数を超えたときの認定の順位は,裁判官向けでは在職期間の長さが先に来るのに対し,一般職向けでは定年までの残りの年数の少なさが先に来る。
認定を受けて退職すべき期日に退職した場合の退職手当は,勤続25年以上なら定年退職と同じ割合で計算され(国家公務員退職手当法5条1項6号),一定の要件の下で退職日の俸給月額が割り増される(同法5条の3)。

第2 早期退職募集の法的な仕組み
1 根拠規定と募集の2類型

国家公務員退職手当法(以下「法」という。)8条の2第1項は,各省各庁の長等(財政法20条2項に規定する各省各庁の長及びこれらの委任を受けた者等)は,定年前に退職する意思を有する職員の募集を行うことができると定める。
募集には,職員の年齢別構成の適正化を図ることを目的とする募集(同項1号)と,組織の改廃又は官署若しくは事務所の移転を円滑に実施することを目的とする募集(同項2号)の2類型がある。
裁判官向け要項と一般職向け要項は,いずれも冒頭で,国家公務員退職手当法「第8条の2第1項第1号の規定により」募集を行うと述べており,年齢別構成の適正化を目的とする1号の募集である。
裁判官向けは最高裁判所長官,一般職向けは最高裁判所事務総局人事局長の名義である。

2 対象となる年齢の下限

法8条の2第1項1号の募集の対象は,「第五条の三の政令で定める年齢以上の年齢である職員」である。
国家公務員退職手当法施行令(以下「施行令」という。)5条の3第3項の本則は,この年齢を「退職の日において定められているその者に係る定年から二十年を減じた年齢」とする。
もっとも,施行令附則4項は,当分の間,この「二十年」を「十五年」と読み替えている。

裁判官の定年は,最高裁判所及び簡易裁判所の裁判官が70歳,その他の裁判官が65歳である(裁判所法50条)。
定年から15年を引くと,下級裁判所の裁判官(簡易裁判所判事を除く。)は50歳,簡易裁判所判事は55歳となり,裁判官向け要項の対象年齢の下限と一致する。
本記事では,裁判官向け要項の「50歳以上」「55歳以上」は,この政令の年齢をそのまま用いたものと考えられると整理する。

3 募集実施要項の記載事項

法8条の2第2項は,募集を行うに当たり,1号・2号の別,認定を受けた場合に退職すべき期日又は期間,募集をする人数及び募集の期間その他政令で定める事項を記載した要項(募集実施要項)を,募集の対象となるべき職員に周知しなければならないと定める。

(続きを読む...)令和8年4月の裁判所の早期退職募集実施要項2通を読む―裁判官6人・一般職29人の募集,認定の順位,応募の締切及び退職手当の割増し(AI作成)

最高裁判所の令和7年度自庁研修結果報告書―自庁研修,他省庁研修への派遣,民間のIT研修及び費用(AI作成)

目次第1 令和7年度自庁研修結果報告書の概要1 資料の性質と確認範囲2 局課等別の件数,延べ人数及び費用3 研修の法的な位置付け第2 最高裁判所が自ら実施した研修(自庁研修)1 7つの自庁研修2 研修目的の記載第3 他の機関の研修への派遣(委託研修)1 人事院公務員研修所の行政研修等2 人事院人材局のセミナー3 会計・予算・決算の研修4 デジタル庁,総務省統計研究研修所等の研修5 行政管理研究センター,人事行政研究所及び国立公文書館の研修6 税務大学校本科特別研修第4 経理局の研修1 安全運転管理者講習2 予算・決算・旅費のシステム研修3 施設担当職員の建築・設備研修第5 デジタル総合政策室の民間IT研修1 27件,約400万円2 研修の内容第6 裁判所職員総合研修所の民間セミナー受講1 13件の受講と活用目的2 研修目的の欄から分かること第7 最高裁判所図書館の研修第8 報告書から分かること・分からないこと1 分かること2 分からないこと第9 情報公開請求で入手・利用するときの注意第10 関連資料・関連記事1 過去の自庁研修結果報告書等2 関連記事第11 出典1 提供資料2 法令3 その他
第1 令和7年度自庁研修結果報告書の概要
1 資料の性質と確認範囲

本記事は,最高裁判所の「(別紙様式)令和7年度 自庁研修結果報告書(最高裁判所)」(全14頁)を読み,最高裁判所に勤務する職員が令和7年度(令和7年4月から令和8年3月まで)に受けた研修の内容,人数及び費用を整理するものである。
資料は,令和7年度自庁研修結果報告書(最高裁判所)として本ブログに掲載している。
各頁の右上には「【機密性2】」と表示されているが,14頁の全部を確認した範囲では,黒塗りの部分は見当たらない。
本記事の基準日は令和8年10月6日であり,法令の条文はe-Gov法令検索で同日に確認した。

報告書は表計算ソフトの様式を印刷したものであり,各頁の右上の「局課等」欄で,次の6つの区分に分かれている。
①最高裁判所(自庁研修)(1頁)
②最高裁判所(委託研修)(2頁~7頁)
③経理局(8頁~9頁)
④デジタル総合政策室(10頁~11頁)
⑤裁判所職員総合研修所(12頁~13頁)
⑥最高裁判所図書館(14頁)

各行には,研修名,研修目的,人数,実施月,期間,委託先,備考,諸謝金及び職員旅費の欄がある。
研修目的の欄の見出しには,赤字で「研修名から当該研修の目的が明確なものについては、記載を省略して差し支えない。」と注記されており,報告書が一定の様式に従って各局課等から集められたものであることがうかがわれる。

2 局課等別の件数,延べ人数及び費用

報告書には合計欄がない。
そこで,本記事では全147行を1行ずつ読み取り,局課等ごとに件数,人数,諸謝金及び職員旅費を合計した。
人数は研修ごとの参加人数を足したものであり,同じ職員が複数の研修に参加した場合も重複して数えている(延べ人数)。

区分(報告書の頁)件数延べ人数諸謝金職員旅費自庁研修(1頁)7件680人38,100円0円委託研修(2頁~7頁)68件1,683人166,900円1,147,258円経理局(8頁~9頁)25件37人873,643円274,394円デジタル総合政策室(10頁~11頁)27件47人3,998,500円29,986円裁判所職員総合研修所(12頁~13頁)13件13人626,100円0円最高裁判所図書館(14頁)7件28人0円0円合計147件2,488人5,703,243円1,451,638円

諸謝金と職員旅費を合わせると715万4881円である。
このうち約56%(399万8500円)はデジタル総合政策室の諸謝金であり,金額の面では,デジタル総合政策室が民間の研修会社に支払った受講料と見られるもの(第5)が最も大きい。
他方,人数の面では,人事院が主催するオンラインのセミナー(第3の2)と,最高裁判所が自ら行う研修(第2)が大部分を占める。
もっとも,これらの合計は本記事で集計した値であり,報告書自体に記載された数値ではない。

3 研修の法的な位置付け

裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の任免,能率等に関する事項については,裁判所職員臨時措置法により,国家公務員法の規定が準用されている。
その際,「人事院」及び「内閣総理大臣」は「最高裁判所」と読み替えられ,国家公務員法70条の6第1項の「研修(人事院にあつては第一号に掲げる観点から行う研修とし、内閣総理大臣にあつては第二号に掲げる観点から行う研修とし、関係庁の長にあつては第三号に掲げる観点から行う研修とする。)」は,単に「研修」と読み替えられている(同項各号は準用の対象から除かれている。)。

国家公務員法70条の5第1項は,研修の根本基準として,「研修は、職員に現在就いている官職又は将来就くことが見込まれる官職の職務の遂行に必要な知識及び技能を習得させ、並びに職員の能力及び資質を向上させることを目的とするものでなければならない。」と定めている。
同法70条の6第1項は,研修について計画を樹立し,その実施に努めなければならないとしている。

(続きを読む...)最高裁判所の令和7年度自庁研修結果報告書―自庁研修,他省庁研修への派遣,民間のIT研修及び費用(AI作成)

最高裁判所のテレワーク試行要領―対象職員,試行場所,週1日程度の目途,職務専念義務及び費用負担(AI作成)

目次第1 本記事の対象と資料の性質1 対象とする資料2 作成日,黒塗り及び表示3 本記事での区別第2 要領の構成第3 試行の枠組み1 定義と職務命令2 対象職員3 試行場所4 検証事項と週1日程度の目途5 勤務環境と移動時間第4 試行の手続1 申請と承認2 開始・終了の報告と確認第5 業務管理1 職務専念義務2 上司による執務状況の把握3 超過勤務第6 情報の取扱い第7 給与と費用負担1 通勤手当2 通信費用等の本人負担と在宅勤務等手当3 テレワーク試行担当者第8 別紙の内容1 別紙1(検証事項)2 別紙2(チェックリスト)3 別紙3(申請・報告簿)第9 法務省・検察庁の定めとの比較第10 実務上の示唆1 裁判所職員と民間の労働者の違い2 民間企業のテレワーク規程を作るときに参考になる点第11 関連記事第12 出典
第1 本記事の対象と資料の性質
1 対象とする資料

本記事は,最高裁判所におけるテレワーク試行要領(令和8年8月の開示文書)(PDF7頁)を読み,法令その他の公表資料と照合した結果を整理するものである。
基準日は令和8年10月5日である。

PDFの構成は,次のとおりである。
①1頁~4頁 本文(第1 目的~第6 その他)
②5頁 別紙1「最高裁テレワーク試行検証事項」
③6頁 別紙2「自宅等においてテレワークを行う際のチェックリスト」
④7頁 別紙3「テレワーク実施申請・報告簿」

2 作成日,黒塗り及び表示

要領には,作成日,施行日及び作成者の表示がない。
別紙3の記載例には「R6.4.8」,「R6.4.10」等の日付が入っているから,令和6年4月頃の運用を念頭に置いて作られた様式であると考えられる。
もっとも,記載例の日付から要領の制定日を特定することはできない。

本文第2の2の対象職員の定めのうち,職員が使う端末に入れるソフトウェアの名称に当たる部分(2か所)は黒塗りである。
本記事は,黒塗りの部分の内容を推測しない。
別紙1の右上には「機密性2」の表示がある。

3 本記事での区別

本記事では,次の三つを区別して書く。
①要領に書いてあること(頁又は項目を示す。)
②法令,人事院・厚生労働省の公表資料,法務省及び検察庁の開示文書で確認したこと(出典を示す。)
③それらを踏まえた本記事の評価(「考えられる」,「本記事では~と整理する」等と書く。)

本記事は,裁判例を取り上げていない。

第2 要領の構成
項目主な内容第1 目的最高裁判所におけるテレワークの試行及び運用に関する事項を定める第2 試行の枠組み等定義,対象職員,試行場所,検証事項と週1日程度の目途,環境整備,移動時間第3 試行手続前日までの申請,上司の承認,開始・終了の報告,通信障害時の連絡第4 業務管理等職務専念義務,上司による執務状況の把握,超過勤務(午後8時まで)第5 情報の取扱い等個人情報・情報セキュリティの定めの遵守,公衆回線の不使用,機密性2以上の情報の扱い,インシデントの連絡第6 その他通勤手当への影響,通信費用等の本人負担,テレワーク試行担当者別紙1~3検証事項,作業環境のチェックリスト,申請・報告簿
第3 試行の枠組み
1 定義と職務命令

要領は,テレワークを,職員がICTを活用して,試行場所(自宅等)において「通常の勤務官署における勤務と同等の職務を遂行する勤務形態」と定義している(第2の1(1)。1頁)。
テレワークは「職務命令に基づき試行する」ものであり(同(2)),勤務官署における勤務と「同等の質、量」が確保される必要があるとされる(同(3))。

2 対象職員

(続きを読む...)最高裁判所のテレワーク試行要領―対象職員,試行場所,週1日程度の目途,職務専念義務及び費用負担(AI作成)

司法研修所事務局の4課14係と事務分掌―令和7年度転入職員説明会の資料で読む組織,裁判官研修及び修習事務(AI作成)

目次第1 本記事で扱う資料1 資料の概要2 読み方の注意第2 司法研修所の法的位置付け1 裁判所法上の位置付け2 司法研修所規則と事務局3 司法研修所規程4 資料の裁判所法の抜粋で注意すべき点第3 事務局の4課14係1 組織図2 事務分掌の一覧(令和7年4月1日実施)3 司法修習生から見た担当係第4 平成25年4月1日現在の事務分掌からの変化1 総務課と経理課2 企画第一課と企画第二課第5 裁判官研修部門の令和7年5月当時の体制1 別館の体制と施設2 令和7年度裁判官研修のイメージ第6 企画第二課と司法修習の事務1 企画第二課の構成と担当事務2 修習事務の年間の流れ3 修習生の人数4 司法修習生との連絡と基本資料第7 経理課の説明と公開されなかった部分1 経理課の事務と施設の利用2 黒塗りとされた部分第8 関連記事第9 出典
第1 本記事で扱う資料
1 資料の概要

本記事は,司法研修所事務局が令和7年5月15日に実施した令和7年度転入職員説明会の資料(全26頁)を読み,司法研修所事務局の組織と事務分掌,当時の裁判官研修部門の体制及び司法修習の事務の流れを整理するものである。
資料は,司法研修所事務局の転入者向け説明資料(令和7年5月15日実施の転入職員説明会)として掲載している。

資料は,次の4部分から成る。
① 総務課所管事項(PDF1頁~10頁):最高裁判所機構図・司法研修所機構図,裁判所法の抜粋,司法研修所規則,司法研修所規程及び「司法研修所事務分掌(令和7年4月1日実施)」
② 経理課の説明(PDF11頁~19頁):経理課の事務,案内図,最高裁判所和光庁舎・司法研修所別館の配置図,門扉の開放時間,駐車場・駐輪場の使用,休日の登庁及びIC式乗車カードの注意点
③ 企画第一課の概況(PDF20頁~24頁):別館の体制,配置図,令和7年度裁判官研修のイメージ,令和7年度裁判官研修実施計画カレンダー(令和7年1月23日時点)及びフロア図
④ 企画第二課の事務の概況(PDF25頁~26頁):企画第二課の構成と担当事務,第78期・第79期修習における資料配布等のスケジュール

2 読み方の注意

資料の多くの頁には「機密性2」の表示がある。
執務室等の鍵の管理場所,門扉の開放時間,休日に登庁する際の入構経路,配置図及びフロア図の内部は黒塗りであり,本記事もこれらに触れない。

資料は令和7年5月当時のものである。
最高裁判所の「司法研修所について」(令和8年10月5日閲覧)によれば,裁判官の研修部門は,平成25年8月に司法研修所別館へ移転した後,令和8年2月に司法研修所本館へ移転した。
したがって,資料に記載された別館の体制は移転前の状況であり,現在の配置を示すものではない。
事務分掌も年度ごとに改められ得るので,現在の窓口は,その時点の通知や案内で確かめる必要がある。

本記事では,資料の記載,最高裁判所ホームページ・e-Gov法令検索等の一次資料で確認した事項及び本記事の推論を区別して書く。

第2 司法研修所の法的位置付け
1 裁判所法上の位置付け

裁判所法14条は,裁判官の研究及び修養並びに司法修習生の修習に関する事務を取り扱わせるため,最高裁判所に司法研修所を置くと定めている。
同法55条は司法研修所教官を,同法56条は司法研修所長を定めており,司法研修所長は,司法研修所教官の中から最高裁判所が補し,最高裁判所長官の監督を受けて司法研修所の事務を掌理し,職員を指揮監督する(令和8年10月5日にe-Gov法令検索で現行条文を確認)。

資料の最高裁判所機構図は,司法行政部門(裁判官会議)の下に,事務総局,司法研修所,裁判所職員総合研修所及び最高裁判所図書館を置いている。
最高裁判所の「最高裁判所の組織」も,司法研修所,裁判所職員総合研修所及び最高裁判所図書館を附属機関として説明している。

2 司法研修所規則と事務局

資料に収録された司法研修所規則(昭和22年12月1日最高裁判所規則第11号)3条は,司法研修所の庶務を掌らせるため,司法研修所に事務局を置くと定めている。
事務局長及び事務局次長は,裁判所事務官の中から最高裁判所が補し,事務局長は,司法研修所長の命を受けて事務局の事務を掌理し,事務局の職員を指揮監督する。
事務局には課が置かれ,課長は裁判所事務官をもって充てられる。

同規則2条は,最高裁判所が,必要があると認めるときは,裁判官,検察官,弁護士又は学識経験のある者に司法研修所教官の事務の一部を嘱託すると定めている。
弁護士が務める民事弁護教官及び刑事弁護教官の嘱託と謝金は,司法研修所弁護教官の謝金の記事で扱っている。

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裁判所職員の端末の起動に時間がかかる理由―令和3年度整備のHDD端末,勤務時間管理システム及びGSS移行(AI作成)

目次第1 本記事の対象と資料の性質1 対象とする資料2 作成者,作成時期及び黒塗り第2 参議院法務委員会での質疑1 質問の内容2 最高裁判所の答弁3 答弁資料と会議録の違い4 デジタル庁の答弁とGSS第3 職員向け周知資料の内容1 「重い」理由として示されたこと2 推奨スペックの記載とMicrosoftの最小要件3 今後の見通し4 当面の対応第4 勤務時間の記録と端末の起動時間1 裁判所職員の勤務時間の法的枠組み2 民間の労働時間の把握との対比3 起動時刻を勤務時間の記録に使うときの注意4 法律事務所・企業の端末更新への示唆第5 関連記事第6 出典
第1 本記事の対象と資料の性質
1 対象とする資料

本記事は,裁判所職員のパソコンの起動に時間がかかる場合があることに関する最高裁の問題意識が書いてある文書(最新版)(PDF4頁)を読み,参議院の会議録その他の公表資料と照合した結果を整理するものである。
基準日は令和8年10月5日である。

このPDFは,性質の違う二つの文書から成る。
①1頁~2頁は,「「パソコンの動作が重い」と思ったら…」と題する職員向けの周知資料(横長のスライド2枚)である。
②3頁~4頁は,令和8年4月23日の参議院法務委員会における仁比聡平議員の質問(問1及び問2)に対する答弁資料である。

2 作成者,作成時期及び黒塗り

職員向けの周知資料には,作成者及び作成日の表示がない。
もっとも,「令和8年5月までのフェーズ3開始に備えて」との記載と,GSS端末を令和8年度末までに配布する予定で現在予算要求中であるとの記載(いずれも1頁)があるから,民事訴訟の全面デジタル化(いわゆるフェーズ3)が始まる前,令和8年度予算の要求中の時期に作られたものと考えられる。
「他の人と比べて明らかに重い場合は、保守対応も含め総務課にご相談ください。」との記載(2頁)からは,各庁の総務課を相談先とする職員一般向けの資料であることがうかがわれる。

周知資料のうち,タスクマネージャーで確認したメモリ使用率の数値(1頁)と,バックグラウンドで動くアプリの止め方に関する記載の一部(2頁)は黒塗りである。
本記事は,黒塗りの部分の内容を推測しない。

答弁資料は,会議録と照らし合わせると,最高裁判所事務総局総務局長の実際の答弁とほぼ同じ文言である(第2の3)。

第2 参議院法務委員会での質疑
1 質問の内容

令和8年4月23日の参議院法務委員会(第221回国会,第7号)は,裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を審査した。
仁比聡平議員は,勤務時間管理システムが全庁で開始されたことに触れ,同システムは「パソコンを起動したら遅くともその時間には業務を始めているでしょう」という形で勤務時間を客観的に把握しようとするものであるのに,職員の端末は起動に10分以上,中には20分掛かる場合があり,登庁直後の電話の問合せに事件管理システムで応答できない,登庁時間が重なってログインが集中するといった事態があると聞くが,そのとおりかと質問した(会議録の発言番号107)。

続けて同議員は,一般の職員が使う端末の記憶装置がSSDではなくハードディスクドライブ(HDD)であり,令和3年頃に導入されたWindows 10の搭載機であって,Microsoft 365の導入とWindows 11へのアップグレードで動作が遅くなったと現場で語られているが,そのとおりかと質問した(発言番号109)。

2 最高裁判所の答弁
(1) 起動時間について

最高裁判所事務総局総務局長は,「本年一月から全国の裁判所において勤務時間管理システムを導入しているところでございます。」と答弁した(発言番号108)。
そのうえで,職員が利用するシステムは担当業務等によって異なるため,端末の起動に掛かる時間を何分かと一概に答えることは困難であるとしつつ,「職員から端末の起動に一定の時間が掛かる場合があるという声もあることは承知しているところでございます。」と述べた。

(2) 端末の仕様について

同局長は,裁判所職員の端末は,民事訴訟を担当する一部の裁判官が利用しているものを除き,令和3年度に整備されたものであり,内蔵ストレージはSSDではなくHDDであると答弁した(発言番号110)。
また,整備後にMicrosoft 365の導入とWindows 11へのアップグレードが行われたこと,Windows 11のシステム要件は充足しているものの,「近時、端末の動作が遅いとの声があるものと認識しております。」と述べた。

3 答弁資料と会議録の違い

答弁資料(3頁・4頁)の「(答)」欄は,会議録の答弁とほぼ同じ内容である。
答弁資料の問2には,答弁の後に「(参考)」として,Windows 11を快適に使用するための推奨スペック(CPU:Inter Core i5以上(原文ママ),メモリ:8GB以上,ストレージ:128GB以上,SSD推奨)を掲げ,「職員端末は、SSDの点を除いては、上記推奨スペックも満たしている。」と記載した部分がある(4頁)。

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執行官に対する加害行為の防止と警察との連携―令和8年4月24日付け最高裁事務連絡,警察庁通知及び民事執行法6条の警察上の援助(AI作成)

目次第1 本記事の対象と資料1 対象とする文書2 契機となった事件第2 第三課長等事務連絡の内容1 裁判所の内部だけでは限界があるという認識2 警察署との連携の再確認3 都道府県警察本部との連携第3 警察庁通知の内容1 宛先と位置付け2 求められた対応第4 民事局参事官事務連絡の具体的取組1 庁として警察本部と連携する2 連携の具体的な内容3 監督官・監督補佐官による現場の実情把握4 警察上の援助要請の実情の把握5 今後の実施状況の照会第5 別添資料と民事執行法上の権限1 別添資料が説明する執行官の職務2 威力の使用と警察上の援助3 警察上の援助を受けるときの立会人4 建物明渡しの手続との関係第6 刑法による保護1 公務執行妨害罪2 強制執行行為妨害等3 執行補助者に対する暴行と裁判例4 事後の処罰と事前の備え第7 債権者側の代理人弁護士が確認しておくこと1 援助要請は執行官が判断する2 執行官に伝えておく事項3 現場に出向く関係者の安全第8 関連記事第9 出典1 提供資料2 法令及び規則3 裁判例4 公的資料5 報道
第1 本記事の対象と資料
1 対象とする文書

本記事は,本ブログに掲載した「加害行為の防止に関する警察との連携等について(令和8年4月24日付の最高裁民事局第三課長及び総務局参事官の事務連絡)」(PDF7頁)の内容を整理し,民事執行法6条の警察上の援助,執行官規則による監督及び刑法上の保護と併せて,強制執行の現場の安全確保を説明するものである。
基準日は令和8年10月6日であり,条文は同日にe-Gov法令検索で確認した。

このPDFには,表題の事務連絡だけでなく,次の4点の文書が綴じられている。
①最高裁判所事務総局民事局第三課長及び総務局参事官から地方裁判所事務局長宛ての事務連絡「加害行為の防止に関する警察との連携等について」(令和8年4月24日。PDF1頁~2頁)
②その別添として,警察庁生活安全局生活安全企画課長,警察庁長官官房参事官(教養・厚生・国際担当)及び警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課長から警視庁の各部長及び各道府県警察本部長宛ての通知「民事執行法(昭和54年法律第4号)に基づいた執行官の職務の執行に関する裁判所との連携について」(警察庁丁生企発第242号,丁参人発第298号,丁組一発第315号,令和8年4月24日。PDF3頁)
③最高裁判所事務総局民事局参事官から地方裁判所(民事)首席書記官宛ての事務連絡「加害行為の防止に関する警察との連携等における具体的取組について」(令和8年4月24日。PDF4頁~6頁)
④③の別添資料「執行官の職務について」(○○地方裁判所名義の1枚もの。PDF7頁)

①と③の各頁には機密性2の表示があり,②には原議保存期間を1年(令和10年3月31日まで)とする表示がある。
以下では,①を「第三課長等事務連絡」,②を「警察庁通知」,③を「民事局参事官事務連絡」,④を「別添資料」と呼ぶ。

2 契機となった事件

警察庁通知は,「本年1月15日」に,民事執行法に基づく執行官の職務の執行に際して,執行官等が関係者に刃物で刺される事案が発生したことを受けて,裁判所から事務連絡が発出されたと記載している。
第三課長等事務連絡も,執行の現場において債務者の加害行為により執行官及び関係者が死傷する事案が発生したと記載している。

時事通信の令和8年1月15日付け配信記事によれば,同日午前10時頃,東京都杉並区のアパートで家賃滞納による住宅明渡しの強制執行のため訪問した東京地方裁判所の執行官と保証会社の社員が包丁で刺され,保証会社の社員が死亡し,住人の男が殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。
共同通信の同年4月27日付け配信記事は,最高裁判所が全国の地方裁判所に対し,再発防止に向けて各地の警察本部と協議を行うなど連携強化を求める事務連絡を出したと報じている。
刑事事件の帰すうは本記事の対象外であり,報道を超える事実関係及び刑事責任は確定したものとして扱わない。

第2 第三課長等事務連絡の内容
1 裁判所の内部だけでは限界があるという認識

第三課長等事務連絡は,公務遂行に対する加害行為を防止し,裁判所の職員や利用者,関係者らの安全を確保するためには,まず裁判所内部で関係職員間の意思疎通を十分に図り,有効な対策を講じる必要があるとする。
その上で,裁判所の内部だけの対応では限界があり,特に執行の現場のような庁舎外での公務遂行の場面における安全の確保については,警察との連携が重要であると述べている。

2 警察署との連携の再確認

同事務連絡は,これまでも各庁が,対応する警察署との間で連絡態勢の整備,関連する情報の交換,訓練の実施等を通じて連携を図ってきたものと承知しているとした上で,この機会に警察署との連携の重要性を改めて確認し,加害行為の防止及び職員や利用者,関係者らの安全確保に特段の配慮をするよう求めている。

3 都道府県警察本部との連携

同事務連絡の中心は,連携の相手方を広げた点にある。
これまでは,主に裁判所敷地内での加害行為を念頭に,裁判所庁舎所在地を所轄する警察署との連携が中心であったと考えられるが,執行の現場のような庁舎外での公務遂行では,緊急事態が当該警察署の管外で生じ得る。
そこで同事務連絡は,各庁に対し,対応する都道府県警察本部との間でも打合せや協議を行うなどして連携を図るよう求めている。
また,同事務連絡は警察庁と協議済みであり,警察庁からも都道府県警察に対して別添の通知(警察庁通知)が送付されると記載している。

裁判所の敷地内での加害行為については,最高裁判所事務総局総務局参事官の平成28年8月23日付け事務連絡「裁判所の敷地内において加害行為が発生した際の留意点について」が既にある。

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AIによる準備書面の最終査読―6観点の点検と依頼者向け報告書の作り方(AI作成)

目次第1 最終査読の目的と対象版1 ファイル名だけで版を決めない2 整理資料から原資料へ戻る第2 6観点の点検1 用紙サイズと判読性2 書証・従前書面の特定と引用3 内部矛盾と帰属4 数値・計算5 見出し・目次・表記・書式6 判例の実在・引用内容・適用範囲第3 指摘表と「問題なし」の書き方1 同じ原因をまとめても出現箇所を消さない2 分母・手法・未確認範囲を残す第4 依頼者向け報告書と内部記録1 内容面を先に説明する2 内部メモと更新工程を分ける第5 出典・関連する確認手順
第1 最終査読の目的と対象版

準備書面の最終査読では,主張の筋道が伝わることと,引用・計算・提出形式が正確であることを別々に確かめる必要がある。
AIを利用する場合も,担当弁護士が採用した主張を前提に,誤りと未確認事項を発見する工程として設計する。
以下の6観点,指摘表及び報告書の構成は,確認漏れを減らすための運用提案であり,その分け方自体が法令上の義務という趣旨ではない。

最終査読を,新たな起案,証拠採否の決定,又は争点整理ノートの更新と同時に行わせると,点検中に対象自体が変わりやすい。
確認する工程と,指摘を採用して修正する工程を分ける。
AIに専門家や裁判官の視点を指定しても,資格者の査読又は実際の裁判官の判断を受けたことにはならない。

1 ファイル名だけで版を決めない

準備書面,証拠説明書,別紙及び提出予定書証について,所在,ファイル名,確認時の更新日時,頁数,変更履歴の有無を記録する。
同じ名前のまま編集されることもあるため,必要に応じてSHA-256等のハッシュ値を残す。
ハッシュ値はファイルの同一性の手掛かりであり,内容の正しさ又は提出済みの状態を証明しない。
確認日は,法令適用の基準日や提出期限の代わりにはならない。

2 整理資料から原資料へ戻る

争点整理ノート,資料目録及び既存点検表は,原資料を探す索引として利用できる。
引用文,数値及び重要な事実については,実際の書証や従前書面へ戻る。
原資料とノートが食い違う場合は,双方の記載と根拠を残し,推測で統一しない。

最終版から引用元へ戻る確認に加え,記録側から,重要事実,抗弁,反対証拠及び回答すべき争点が最終版に残っているかを確認する。
引用が一致していても,取り上げるべき争点自体を落とした場合は,引用照合だけでは検出できない。
担当弁護士が争点・重要資料を指定し,実質的な採否判断と形式・引用の点検を分けて結果を対応させる。

資料は,①提出済み,②担当弁護士が使用・提出予定を採用した未提出資料,③採否未決の候補,④提出状況不明に分ける。
日付や号証らしいファイル名だけで提出済みと扱わない。
未提出資料に基づく主張が直ちに不適切となるわけではないが,取調べ済みであるかのような記載,内部の仮番号又は未採用候補の混入を点検する。
読めなかった資料の範囲を「問題なし」に含めない。

第2 6観点の点検
1 用紙サイズと判読性

準備書面だけでなく,証拠説明書,別紙及び提出予定書証も対象に含める。
全頁の寸法,縦横,サイズ混在を機械的に確認し,実際の頁を表示して文字・表・図の切れ及び縮小による判読性を調べる。
寸法がA4にそろっていても,小さい文字を読めるとは限らない。

民事事件等の電子情報処理組織の使用に関する細則2条は,対象となる電磁的記録について,出力する用紙の大きさを日本産業規格A4又はA3とする条件を定めている。

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Wordの変更履歴で法律文書を添削する方法―承諾後・却下後の照合と版管理(AI作成)

目次第1 添削モードで何を残すか第2 原本と基準本文を保全する1 編集する版を決める2 以前から履歴がある場合の基準第3 記録と表示,本文と書式を分ける1 履歴を非表示にしても消えない2 採用済みの主張と書式を尊重する第4 承諾後・却下後の全文を照合する1 二つの検証用コピーを作る2 期待本文と基準本文を比較する3 Wordの比較機能を併用する第5 完成版と関連書面を読み直す1 頁割り・目次・出力結果2 証拠説明書と報告書への反映第6 コメント・隠し情報と外部提供用コピー第7 出典
第1 添削モードで何を残すか

法律文書の添削では,完成後の本文に加え,どの箇所を何の理由で変えたかを確認できることが重要である。
Wordの変更履歴はそのための機能であるが,履歴を付けただけで修正範囲の正しさや復元可能性が保証されるわけではない。
本記事は,Windowsのデスクトップ版Wordの公式説明を踏まえた運用提案であり,メニュー名や機能は版・言語・利用環境で確認する必要がある。

第2 原本と基準本文を保全する
1 編集する版を決める

編集前に原本のコピーを保存し,ファイル名,所在,更新日時及び必要に応じてSHA-256等のハッシュ値を記録する。
原本を直接編集する指示がある場合も先に退避版を確保する。
同じファイル名でも内容が変わるため,版番号だけで同一性を決めない。

履歴付きのレビュー版と,担当者が承認した完成版を区別する。
修正前・修正後,理由,原資料及び判断事項を対応させた指摘表を付けると,承諾対象が明確になる。
証拠採否,認否,請求内容又は推認の強さを変える修正は,表記修正とは分けて判断する。

2 以前から履歴がある場合の基準

受領時点で履歴やコメントがある場合は,誰のどの変更が未確定かを確認する。
今回分と以前の変更を区別せず「すべて元に戻す」を実行すると,以前の変更まで取り消される。
そのため,添削前に画面で読んでいた本文と全履歴を元に戻した本文が違っていても,直ちに今回の添削ミスとは限らない。

担当者と基準を決め,既存履歴を保持する原本とは別に,比較用コピーで状態を固定する。
今回分を元に戻した状態が,定義した添削前の基準本文と一致するかを照合する。
今回分を判別できない場合は,履歴全体の状態も比較し,確認の限界を記録する。

第3 記録と表示,本文と書式を分ける
1 履歴を非表示にしても消えない

Microsoftの変更履歴の説明によれば,記録を有効にして変更を追跡し,挿入・削除や書式の表示を選択できる。
「変更履歴なし」や「オリジナル」の表示で隠しても,未処理の変更やコメントは文書内に残る。
表示の切替えを,承諾,元に戻す操作又は削除と混同しない。

開始時に記録が有効であることを確認し,必要な本文・書式変更が履歴に残るかを小さい変更で確かめる。
校閲者や変更種類の表示を絞っていると履歴が見えないことがあるため,レビュー時の表示設定も確認する。
履歴の作成者表示や時刻だけを本人の承認の証拠として扱わない。

2 採用済みの主張と書式を尊重する

引用内は原資料の句読点,数字及び送り仮名を尊重する。

(続きを読む...)Wordの変更履歴で法律文書を添削する方法―承諾後・却下後の照合と版管理(AI作成)

社会福祉法人の解散命令と執行停止―清算法人の存続と事業基盤の喪失を疎明する方法(AI作成)

目次第1 解散命令を受けた法人が最初に確認すること第2 解散と法人格の消滅を分けて考える1 清算の目的の範囲で法人はなお存続する2 何の停止を求めるかを特定する第3 重大な損害を三つの判断要素に対応させる1 損害の回復の困難の程度2 損害の性質及び程度3 処分の内容及び性質第4 契約・信用の喪失について参考となる裁判例第5 緊急の必要と停止した場合の影響を別に説明する1 損害が進む日程と疎明資料をそろえる2 公共の福祉と本案の見通し第6 出典及び関連記事
第1 解散命令を受けた法人が最初に確認すること

社会福祉法人が解散命令の取消訴訟を提起しても,そのことだけで処分の効力は止まらない。
事業基盤が本案判決までに失われるおそれがある場合には,取消訴訟と併せて行政事件訴訟法25条の執行停止を検討する必要がある。

受任直後は,処分書の名宛人,理由,到達日及び効力発生日を確認し,清算,利用者の移転,雇用及び契約関係について,いつ何が変わるかを整理する。
損害額の集計とともに,勝訴後も同じ事業を再開しにくくなる原因と,その変化が進む日程を把握することが重要である。

第2 解散と法人格の消滅を分けて考える
1 清算の目的の範囲で法人はなお存続する

社会福祉法46条1項6号は,所轄庁の解散命令を解散事由とする。
同法46条の3第1項は解散した社会福祉法人の清算を定め,同法46条の4は,解散した法人が清算の目的の範囲内で,清算結了までなお存続すると定める。

したがって,解散命令と同時に法人格が消滅したと説明するのは正確でない。
執行停止の申立てでは,清算のために法人が存続することと,従前の事業を継続するための法的地位や基盤に生じる影響を区別して示す。
許認可・指定,委託,補助金又は個々の契約への影響は,それぞれの根拠法令,条件及び契約条項を確認する必要がある。

2 何の停止を求めるかを特定する

行政事件訴訟法25条2項は,処分の効力,処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止を定める。
同項ただし書により,効力停止は,執行又は手続の続行の停止で目的を達成できる場合には認められない。

解散による法的地位の変化が損害の原因となる場合には,清算の個々の行為を止めるだけで目的を達成できるかを検討する。
申立書には,止めたい法律上の効果と,その停止によって避けられる損害を対応させる。
別の処分や契約上の措置も問題となる場合には,解散命令の効力停止がそれらに及ぼす影響を個別に確認する。

第3 重大な損害を三つの判断要素に対応させる
1 損害の回復の困難の程度

行政事件訴訟法25条3項は,損害の回復の困難の程度を考慮すると定める。
法人については,取消判決後に施設,人員,利用者との契約,取引先との関係又は信用をどの程度回復できるかを説明する。

① 移転先での利用関係が定着し,元の施設へ戻ることが難しくなるか。
② 必要な職員が退職した場合に,配置の回復にどの程度の期間を要するか。
③ 契約が終了し,施設や設備が処分された場合に,同じ条件で再取得できるか。

これらは確認事項であり,移転,退職又は契約終了が必ず生じるという意味ではない。
通知書,契約書,相手方の回答及び再取得・再採用の見込みを示す資料によって,予測の根拠を具体化する。

2 損害の性質及び程度

同項は,損害の性質及び程度も勘案すると定める。

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補助参加と後訴の判決効―援用する人・相手・判断内容・手続保障の確認(AI作成)

目次第1 後の訴訟では「誰が誰に何を援用するか」を先に決める第2 既判力と参加的効力を分ける1 補助参加したことだけで既判力が及ぶとはいえない2 参加的効力は理由中の判断にも及ぶが,限界がある第3 援用の方向が変わると,追加の論証が要る1 被参加人から補助参加人への援用2 補助参加人から被参加人への援用3 前の訴訟の相手方と補助参加人との関係第4 46条の例外は,訴訟の経過と結び付けて確認する第5 訴訟告知をした場合も,参加の利益と判断の範囲を確認する第6 後の訴訟の準備書面に落とし込む確認手順第7 出典
第1 後の訴訟では「誰が誰に何を援用するか」を先に決める

補助参加をした訴訟の判決が確定しても,その判決のすべての判断を,関係者の誰にでも援用できるわけではない。
後の訴訟で判決を使うときは,①援用する人,②援用される相手,③拘束を求める判断,④その判断を争う機会の有無を,順に確認する必要がある。
この順序を守ると,既判力,参加的効力,判決書の証拠としての利用を混同しにくくなる。

本記事は,通常の補助参加を対象として,民事訴訟法46条による参加的効力と,補助参加人から被参加人に対する援用が問題になる場合の確認手順を扱う。
調査基準日は令和8年10月4日であり,民事訴訟法は同日時点の施行中の条文を確認した。
共同訴訟的補助参加その他の特別な判決効については,それぞれの制度と条文による検討が必要である。

第2 既判力と参加的効力を分ける
1 補助参加したことだけで既判力が及ぶとはいえない

民事訴訟法114条1項は,確定判決の既判力を,主文に包含するものに限って認めている。
相殺のために主張した請求については,同条2項の特則がある。
誰に効力が及ぶかは,同法115条などの規定によって確認する。
補助参加人は,補助参加したという理由だけで115条1項1号の当事者になるわけではなく,参加的効力とは別に検討する必要がある。

2 参加的効力は理由中の判断にも及ぶが,限界がある

最高裁昭和45年10月22日判決の原文は,旧民事訴訟法70条の効力を,既判力とは異なる特殊な効力とし,判決確定後に補助参加人が被参加人に対して判決の不当を主張することを禁ずるものと説明している。
同判決は,補助参加人が協力し,又は協力し得たのに被参加人が敗訴した場合に,敗訴の責任を分担させることが衡平にかなうという理由を示す。
その効力は,主文だけでなく,その前提となる理由中の事実認定や先決的権利関係の判断にも及ぶ。

最高裁平成14年1月22日判決の原文は,理由中の判断の範囲を,主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などに限っている。
判決の結論に影響しない傍論まで拘束力を持つわけではない。
判決書の一文を取り出す前に,その判断が主文へ至る過程でどの役割を果たしたかを確認する。

第3 援用の方向が変わると,追加の論証が要る
1 被参加人から補助参加人への援用

民事訴訟法46条の柱書は,例外に当たる場合を除いて,裁判が補助参加人に対しても効力を有するという構造である。
昭和45年判決が示したのは,被参加人との後の訴訟で,補助参加人が前の判決の不当を主張できなくなるという効力である。
この方向で援用するときも,対象となる判断の範囲と,46条各号の例外を確認しなければならない。

2 補助参加人から被参加人への援用

補助参加人の側が,被参加人との後の訴訟で前の判決を援用する場合は,条文が想定する通常の方向と逆になる。
昭和45年判決を引用しただけで,この逆方向の援用まで当然に認められると説明することはできない。

令和5年司法試験の採点実感の民事系第3問・設問3課題2は,この逆方向の援用を検討対象とし,参加的効力の根拠と46条の文言の双方を踏まえて結論を論証することを求めている(22~23頁)。

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確定判決の後に取消し・相殺・解除・建物買取請求をして争い直せるか―基準時後の形成権行使と既判力に関する最高裁判例5件(AI作成)

目次第1 この記事の結論第2 既判力の基準時と遮断の仕組み1 既判力は基準時の判断に生じる2 条文上の手掛かり3 なぜ遮断されるのか第3 最高裁判例5件1 取消権:基準時後に行使しても争えない(最高裁昭和55年10月23日判決)2 白地手形の補充権:特段の事情がない限り争えない(最高裁昭和57年3月30日判決)3 相殺:口頭弁論終結後の相殺は請求異議の事由になる(最高裁昭和40年4月2日判決)4 建物買取請求権:判決確定後に行使して請求異議で主張できる(最高裁平成7年12月15日判決)5 別の取得原因:前の訴訟で主張しなかった相続も争えない(最高裁平成9年3月14日判決)6 5件の整理第4 解除権と,判決確定後に初めて分かった事実1 解除権について判例は見当たらない2 基準時後に生じた解除原因は別である3 期待可能性説とその限界4 使用貸借の明渡請求で敗訴した場合第5 実務での対応1 前の訴訟の段階で行うこと2 判決確定後に相談を受けたときの確認手順3 勝訴した側の対応第6 関連記事第7 出典1 法令2 判例3 公的資料
第1 この記事の結論

民事訴訟で判決が確定した後に,相手方に対する取消し,相殺,解除,建物買取請求等の意思表示をして,判決の結論を争い直したいという相談がある。
本記事は,この場面について,最高裁判所の判例5件を判決原文で確認し,実務上の確認事項を整理したものである。

結論は,次のとおりである。
①確定判決の既判力は,事実審の口頭弁論終結時(基準時)の権利関係についての判断に生じ,基準時より前に存在した事由に基づいてその判断を争う主張は,後の訴訟では原則として許されない。
②基準時の後に意思表示をしても,それだけでは「基準時後の事由」にならない。
判例は,取消権と白地手形の補充権については後の主張を許さず,相殺と借地上の建物の買取請求については請求異議の事由として主張できるとしている。
③前の訴訟で主張しなかった別の取得原因(相続による共有持分の取得等)を後の訴訟で主張することも,既判力に抵触するとされている。
④基準時前から存在した解除原因に基づく解除を判決確定後に主張できるかを正面から判断した最高裁判例は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索では見当たらなかった。
⑤前の訴訟で主張することがおよそ期待できなかった事由には既判力による遮断が及ばないとする見解(期待可能性説)があるが,強い批判もあり,これに頼ることを前提に訴訟を組み立てるのは危険である。
⑥したがって,前の訴訟の段階で,取消し・解除・相殺等の原因を全部調べ,必要なものは予備的にでも主張しておくことが最も確実な対応である。

第2 既判力の基準時と遮断の仕組み
1 既判力は基準時の判断に生じる

確定判決は,主文に包含するものに限り,既判力を有する(民事訴訟法114条1項)。
給付訴訟や確認訴訟の判決の主文は,事実審の口頭弁論終結時における権利関係の存否を判断したものと理解されている。
当事者が攻撃防御の資料を提出できるのは口頭弁論の終結時までだからである。

既判力は,後の訴訟の裁判所が,基準時の権利関係について前の判決の判断を前提にしなければならないという形で働く。
その結果として,当事者が基準時より前に存在した事由を持ち出して前の判断と矛盾する主張をしても,その主張は排斥される。
これが,いわゆる既判力の遮断効である。

2 条文上の手掛かり

民事執行法35条2項は,確定判決についての請求異議の事由は「口頭弁論の終結後に生じたものに限る」と定めている。
確定判決に基づく強制執行を止めようとする債務者は,基準時より前の事由を請求異議の訴えで主張できないことになる。
確定判決の効力が及ぶ人の範囲は,当事者,当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人,口頭弁論終結後の承継人等である(民事訴訟法115条1項)。

3 なぜ遮断されるのか

遮断の根拠は,二つの面から説明されている。
一つは,確定判決による紛争の解決を蒸し返させず,勝訴した当事者の地位と法的安定を守るという制度的な面である。
もう一つは,前の訴訟で主張立証の機会が与えられていたのに,これを使わなかった以上,その結果は自分の責任として引き受けるべきだという面である。

この二つは,第4の3で触れる期待可能性説をどう評価するかに関わる。

第3 最高裁判例5件

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判例を実務に使うための読み方―結論・理由・事実・射程を分け,原文で確かめる手順(AI作成)

目次第1 資料の役割を分けて読む1 研究者の回想から得られる学習の手掛かり2 学説の説明と判決の判断を区別する第2 判例を読む順序1 事件と請求を特定する2 事実・理由・主文を往復する3 自分の事件との共通点と相違点を示す第3 背信的悪意者からの転得者の判決で確かめる1 第二買主と転得者の関係を分ける2 破棄差戻しを最終的な勝訴と読まない3 認識という言葉の対象を明らかにする第4 原文確認と確認状況の記録1 公開検索で見つからないことと不存在を区別する2 判例秘書などの本文と公式公開資料を照合する3 図と確認メモを更新する第5 出典と関連記事

判例を相談,交渉又は準備書面に使うときは,結論だけでなく,どの請求について,どの事実を前提に,どの理由で判断したかを確認する必要がある。
本記事は,公開された法学研究者の回想を学習方法の手掛かりとし,裁判所が公開する判決を使って,原文の確認と事案の比較の手順を整理する。

第1 資料の役割を分けて読む
1 研究者の回想から得られる学習の手掛かり

松岡久和教授オーラルヒストリーは,立命館法学2025年5・6号に掲載された公開資料である。
授業で得た説明を自分の言葉で整理し,具体的な問題について議論し,疑問を調べ直す経験や,同じ結論でも裁判の理由が異なることに着目した研究の経緯が語られている(PDF6頁及び11~12頁)。

この経験から,判例を読んだ後に,自分で法律関係を図にし,結論が変わる条件を問い直すという学習方法を考えられる。
これは本記事の実務上の提案であり,回想だけで学習効果が実証されたわけではない。

2 学説の説明と判決の判断を区別する

研究者が判例の理由を批判し,又は別の理論で説明できると述べていても,その理論を裁判所が採用したことにはならない。
判決を引用する際は,裁判所自身が述べた理由と,評釈者が示した理解を別々に記録する。

裁判所の判決原文,法令の公式条文及び立法過程の公式資料には,それぞれ確認できる対象がある。
判決原文は当該事件の判断を確認する資料であり,議事録は発言や審議の経緯を確認する資料である。
議事録に提案が載っているというだけで,提案が現行法になったと扱わない。

第2 判例を読む順序
1 事件と請求を特定する

最初に,裁判所,裁判年月日,事件番号及び事件名を記録する。
同日の別事件や,下級審と上級審を取り違えないようにする。

次に,当事者が何を請求し,原審がどの請求を認め,上級審がどの部分を維持又は変更したかを確認する。
登記請求,明渡請求及び損害賠償請求などが一つの判決に含まれる場合は,請求ごとに主文と理由を対応させる。

2 事実・理由・主文を往復する

事実関係では,裁判所の認定した事実,当事者の主張及びまだ判断されていない事項を分ける。
契約,支払,占有,登記及び各人の認識を時系列に並べると,どの事実が法律上の要件に関係するかを確かめやすい。

理由では,一般的な判断基準と,当該事件への当てはめを分けて読む。
その上で主文に戻り,理由中の判断が,請求の認容,棄却又は差戻しのどれにつながったかを確認する。

3 自分の事件との共通点と相違点を示す

判例の射程とは,その判断をどの範囲の事案に使えるかという問題である。
似た用語が出てくるというだけで結論を移さず,請求の根拠,権利取得の順序,登記の有無,認識の対象及び判断の相手方を比べる。

準備書面では,判例の判断を示した後に,本件で共通する事実と,結論を左右し得る相違点を書く。

(続きを読む...)判例を実務に使うための読み方―結論・理由・事実・射程を分け,原文で確かめる手順(AI作成)