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株式等売渡請求とは―特別支配株主の90%要件,手続,差止めと価格決定(AI作成)

第1 株式等売渡請求の仕組み

株式等売渡請求は,会社の議決権の原則90%以上を有する特別支配株主が,対象会社の承認を得て,他の株主の株式等を取得する制度である。
少数株主の個別の承諾や,対象会社の株主総会決議による株式併合とは異なる手続である。

本記事は,令和8年10月17日に確認した会社法179条から179条の10までを基に,会社側の手続と,通知を受けた少数株主の確認事項を説明する。
株式併合による締出しの手続・救済は,株式併合による少数株主の締出しで扱う。

第2 特別支配株主の90%要件

1 株式数ではなく議決権の割合を確認する

会社法179条1項の基準は,総株主の議決権の10分の9以上である。
定款でこれを上回る割合を定めている場合には,その割合が必要となる。
発行済株式数の90%という説明で済ませず,議決権を基準に算定する。

特別支配株主本人の保有分に加え,発行済株式の全部を有する株式会社その他法務省令で定める特別支配株主完全子法人の保有分を合算する仕組みがある。
単にグループ会社と呼ばれる会社の保有分を,全て合算できるわけではない。
株主名簿,議決権の数,保有構造,定款の加重要件を照合する必要がある。

2 対象となる株式・新株予約権

原則として,対象会社と特別支配株主を除く株主全員の株式全部を対象とする。
特別支配株主完全子法人には請求しないことができるが,特定の少数株主だけを任意に対象から外す一般的な仕組みではない。

株式売渡請求に併せて,新株予約権売渡請求をすることもできる。
新株予約権付社債に付された新株予約権を対象とする場合には社債についての規律も確認する必要があり,株式の手続だけで完結すると考えてはならない(同条2項・3項)。

第3 対象会社の承認・通知・開示

1 対価と取得日を定めて承認を受ける

特別支配株主は,対価となる金銭の額又は算定方法,割当て,取得日等を定め,対象会社へ通知して承認を受ける(会社法179条の2・179条の3)。
対象会社が取締役会設置会社である場合,承認するかどうかは取締役会で決議する。
株主総会を要しないことと,会社による審査・承認が不要であることは異なる。

対象会社は,保有割合・定款の条件に加え,対価の算定資料と手続の適法性を確認する必要がある。
価格算定,利益相反への対応及び意思決定の経過を保存しておくことが,後の争いへの備えとなる。

2 取得日の20日前までの通知

対象会社は,承認した場合,取得日の20日前までに,売渡株主等へ承認した旨,特別支配株主の情報,対価・取得日等の法定事項を通知する(会社法179条の4)。
売渡株主への通知は,同条2項の公告による代替の対象から除かれている。
「公告したから全株主への通知が不要」と一括して扱わない。

対象会社には,事前開示書面等の本店備置きと閲覧等への対応が求められる(179条の5)。
取得後にも,取得に関する書面等の作成・備置きと閲覧等の規律がある(179条の10)。

第4 少数株主の差止めと価格決定申立て

1 取得そのものを止めるための差止め

売渡株主は,不利益を受けるおそれがあり,①売渡請求が法令に違反する,②通知・事前開示に所定の違反がある,③金銭の額・割当てが対象会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である,という事由がある場合,特別支配株主に取得をやめるよう請求できる(会社法179条の7)。
価格への不満という結論だけでなく,どの事由に当たるかを具体化する必要がある。
取得日前の対応が必要な場合は,資料請求とともに仮処分等の手続を検討する。

2 価格決定の申立期間

売渡株主等は,取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に,裁判所へ売買価格の決定を申し立てることができる(会社法179条の8第1項)。
会社や買主と価格交渉をしていることだけで,この申立期間が延びるわけではない。
取得後に申立てを始めればよいと考えず,通知を受けたら取得日を直ちに確認する。

確認する手続主な相手・機関時期・目的
開示書面の閲覧等対象会社請求条件・価格算定の資料を確認
取得の差止め特別支配株主取得前に法令違反・著しく不当な対価等を争う
売買価格の決定申立て裁判所取得日の20日前の日から前日まで
取得後の書面閲覧等対象会社取得の実施内容を確認

価格決定申立ては,取得そのものを止める手続とは別である。
特別支配株主は取得日に売渡株式等を取得するため,取得の阻止と価格の確保を区別して対応する(179条の9)。

第5 価格の検討と保存する資料

179条の8は,裁判所が決定した売買価格に対する取得日後の法定利率による利息と,価格決定までの仮払の規律も定める。
通知された金額を受け取ったという事情だけで,全ての価格紛争が終了したと扱わず,申立て・合意の内容を確認する必要がある。

価格の検討では,決算資料,事業計画,算定書,公開買付けがある場合の資料,交渉経過及び意思決定資料を整理する。
相続税評価額をそのまま会社法の売買価格とすることはできず,会社法の株式価格決定と相続税評価の違いも参照されたい。
個別の評価手法や公正な価格の結論は,制度と取引の事情に即して判断する。

第6 出典と関連記事

①e-Gov法令検索「会社法」。179条から179条の10まで。
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

②e-Gov法令検索「会社法施行規則」。特別支配株主完全子法人,通知・開示等の関係規定。
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012

③法務省「会社法の一部を改正する法律案」。平成26年改正の立法資料。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html

④平成26年改正における制度の位置付けは,会社法の改正経緯で説明する。
合併の少数株主保護は,合併比率が不公正なときの少数株主の手段で扱う。