第1 市民後見人として活動するまでに確認すること
大阪で市民後見人として活動するには,地域の養成講座を受講し,選考や意思確認を経て市民後見人バンクへ登録した後,家庭裁判所による選任を受けるという段階を踏む。
講座の受講・修了だけで,当然に後見人として活動できるようになるわけではない。
本記事は,市民後見人になりたい人に向け,受講先・受講要件・登録と活動支援を,令和8年10月17日に確認した大阪府・大阪市・堺市等の公表資料に基づいて説明する。
市民後見人は,親族以外の市民が第三者後見人として本人を支える担い手である。
大阪市成年後見支援センターは,市民後見人も家庭裁判所から成年後見人として選任され,専門職の成年後見人と同じ権限を与えられると説明している。
親族を自分で支援したいという相談と,地域の第三者を支える市民後見人の養成への応募とは,分けて考える必要がある。
第2 大阪市・堺市・その他の府内市町で異なる受講先
大阪府の令和8年度の案内は,大阪市に在住・在勤する人,堺市に在住・在勤する人,その他の事業実施22市町に在住・在勤する人について,養成講座の受講先を分けている。
府内のどの市町村に住んでいても,同じ条件で大阪府社会福祉協議会の養成講座へ申し込めるという案内ではない。
| 地域 | 養成・活動支援の相談先 | 電話 |
|---|---|---|
| 大阪市 | 大阪市成年後見支援センター(大阪市社会福祉協議会) | 06-4392-8282 |
| 堺市 | 堺市権利擁護サポートセンター(堺市社会福祉協議会) | 072-225-5655 |
| その他の事業実施市町 | お住まい・お勤めの市町の担当窓口,又は大阪府社会福祉協議会地域福祉部権利擁護推進室 | 06-6764-7760(推進室) |
令和8年度の説明会は,養成事業を実施していない市町村の在住・在勤者も参加でき,府内の他の会場でも受講できると案内されていた。
説明会への参加条件と,その後の養成講座の受講条件は同じではない。
事業の実施地域と次回の受講先は,申込み前に担当窓口で確認されたい。
第3 受講要件は年齢の基準日まで確認する
令和8年度の案内では,年齢と居住・勤務先に加え,講座への参加,社会貢献への意欲,現在の所属や後見活動などについて要件が定められている。
特に年齢は,単に「25歳から69歳まで」とまとめず,その案内が指定する基準日とともに確認する必要がある。
| 令和8年度の資料 | 年齢の記載 | 居住・勤務先の記載 |
|---|---|---|
| 大阪市の募集案内・PDF1頁 | 令和8年3月31日現在,24歳以上68歳以下 | 大阪市在住又は在勤 |
| 堺市の募集案内・PDF2頁 | 令和9年3月31日現在,25歳以上70歳未満 | 堺市在住又は在勤 |
| 大阪府の募集案内・PDF2頁 | 令和9年3月31日現在,25歳以上70歳未満 | 記載された府内18市4町に在住又は在勤 |
これらは令和8年度の募集資料の記載であり,次年度以降の条件を保証するものではない。
大阪府・堺市の基礎講習の案内では,原則として説明会に参加し,講座の趣旨を理解・賛同すること,基礎講習の全日程を受講できること,市民後見人として活動する意思があることなども求められている。
後見業務の養成研修を有する団体に所属する人や,現に親族以外の人の後見人として活動している人は対象外とされており,年齢と住所だけで受講できると判断しない。
令和8年度の公表された説明会は5月から7月の日程であり,本記事の確認日にはその日程を過ぎている。
今から参加したい場合は,過去の申込フォームへそのまま送るのではなく,追加の説明会・募集の有無又は次回募集を担当窓口へ問い合わせる。
令和8年度の説明会の参加費は無料と案内されているが,次回の養成講習の費用・教材・必要な参加日数も募集要項で確認する。
第4 説明会から講習・登録・家庭裁判所の選任まで
大阪市の案内は,説明会,基礎講習,実務講習・施設実習,レポート・面接等の選考,登録意思の確認,バンク登録,候補者推薦,家庭裁判所による選任という流れを示している。
大阪府社会福祉協議会の案内も,バンク登録後に受任調整会議で候補者を検討し,市町村から家庭裁判所へ推薦して選任を受ける流れを示している。
| 段階 | 参加を検討する人が確認すること |
|---|---|
| 説明会 | 活動の目的,受講要件,自分が申し込む養成講座の主催者を確認する。 |
| 基礎講習・実務講習・実習 | 日程を確保し,レポート・面接を含む選考や修了条件を確認する。 |
| バンク登録 | 活動の意思と継続できる見通しを確認する。登録後の研修にも参加する。 |
| 候補者の検討・推薦 | 本人の状況に応じた候補者の検討を経る。登録した順に当然に選任されるという仕組みではない。 |
| 家庭裁判所の選任後 | 本人との面談,関係機関との調整,財産の確認,記録と報告を,支援機関に相談しながら進める。 |
講習の日数や実習の組み方は主催者・年度によって異なる。
仕事を続けながら活動したい人は,講習の日程だけでなく,選任後の平日の手続,訪問及び報告書の準備に使える時間も具体的に考えておくとよい。
第5 選任後の活動と報酬・相談支援
大阪府社会福祉協議会は,市民後見人の活動として,本人の生活の見守り,預貯金の管理や支払,福祉サービスの利用等の契約,官公庁の手続などを挙げている。
同協議会は,原則として同じ市町村の1人を担当し,月に3〜4回程度訪問する活動を説明している。
訪問の回数だけでなく,本人の意思や生活の変化を捉え,必要な支援につなぐことが大切である。
大阪市の案内は,市民後見人の活動を,活動経費を除いて報酬を前提としないボランティア・市民活動と位置付け,後見監督人等は付かず単独で受任すると説明している。
これは,本人の財産を自由に使えることや,報告をしなくてよいことを意味しない。
活動経費の扱いと記録・報告の方法は,支援機関の説明と家庭裁判所からの指示を確認する。
大阪市では,センター相談員の日常相談と,弁護士・司法書士・社会福祉士の専門相談が用意されている。
専門相談は,初動期,1か月目の財産目録提出前,3か月目,6か月目の家裁への報告前,その後半年ごとの報告前などに行い,課題が生じたときの相談にも対応するとされている。
大阪府社会福祉協議会の実施地域でも,市町村等の日常相談と専門職による相談が案内されている。
第6 市民後見人になることと,専門職からのリレーは別の手順である
養成講座への応募は,自分が市民後見人として活動するための準備である。
これに対し,専門職後見人から市民後見人へのリレーは,既に後見人が付いている本人について,課題や生活状況を踏まえて後見人の交代を検討する手続である。
講座を受講する人が,自分だけで特定の事件の引継ぎを決めるわけではない。
リレーに適した事案,所属する専門職団体との調整,お尋ねの書式,辞任と後任選任の手順は,成年後見人等の辞任と交代の第8で説明している。
大阪家裁の申立先・必要書類・報告書・窓口は,大阪家庭裁判所後見センターの利用案内を参照されたい。
第7 参加前に確認したい仕事の範囲
大阪府社会福祉協議会の案内は,手術など医療行為への同意,介護・家事等の事実行為,本人の身元保証人・連帯保証人になること,葬儀の喪主になることなどを,成年後見人の業務ではないものとして挙げている。
本人の暮らしを支える活動であっても,必要な世話を全て自分で引き受けるという意味ではない。
支援機関や福祉サービス等との役割分担を理解して活動する必要がある。
応募前には,自分の住まい・勤務先,年齢の基準日,受講できる日程,活動に使える時間,報酬を前提としない活動であること及び困ったときの相談先を確認する。
本人の意思を尊重しながら支える方法は,成年後見における意思決定支援で,関係者との役割分担は身上保護事務とチーム支援で説明している。
民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)の施行後は,法定後見が補助の制度に一元化され,本人に必要な範囲に限って利用される制度となる。
厚生労働省が令和8年10月13日の第23回成年後見制度利用促進専門家会議に示した資料1は,市民後見人の役割が限定的になるとの懸念も生じ得るとしつつ,意思決定支援を含む地域の権利擁護支援において幅広く活躍することが期待されるとして,市民後見人養成研修修了者の役割は今後ますます重要になるとしている(同資料3頁)。
施行後に大阪府内の養成講座や活動支援がどのように変わるかは,各実施主体の案内を確認する必要がある。
改正後の権利擁護支援の全体像は,令和8年成年後見制度改正後の権利擁護支援―第23回専門家会議資料が示す補助の4つの利用パターン,必要性の継続確認及び家庭裁判所との連携で整理している。
第8 出典・参考資料
大阪市成年後見支援センター「市民後見人」
https://osaka-kouken.com/shimin_koukennin.html
大阪府社会福祉協議会「市民後見人養成・活動支援事業」
https://www.osakafusyakyo.or.jp/koukenshien/guardianship/index.html
堺市「堺市権利擁護サポートセンター」
https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/chiikifukushi/kenriwomamoru/kenriyougo.html
大阪府「令和8年度市民後見人養成講座オリエンテーションを開催します!」(令和8年4月20日報道提供)。同ページからリンクされた大阪市・堺市・大阪府の令和8年度募集案内PDF各2頁も参照した。
https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/fumin/o090020/prs_51101.html
厚生労働省「成年後見制度の見直し等を踏まえた適切な権利擁護支援の実施」(第23回成年後見制度利用促進専門家会議資料1,令和8年10月13日)3頁
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001758435.pdf