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司法試験の合格発表で法務省が報道機関に配る資料―平成29年の決裁文書から分かる作成手順,4種類の配付資料及び採点結果の読み方(AI作成)

第1 この記事の対象と資料

1 対象とする資料

本記事は,法務省大臣官房人事課が平成29年9月に作成した「平成29年司法試験合格発表における報道発表資料について」との件名の決裁文書とその添付資料を読み,司法試験の合格発表に当たって報道機関に配付される資料の作られ方と,その数字の読み方を整理するものである。
資料は,内線番号が黒塗りされた開示文書(PDF・42頁)であり,次の部分から成る。

頁内容
1頁決裁文書(平成29年9月6日起案,同月7日決裁)
2頁平成29年の報道発表資料の案(合格点と合格者数が空欄のもの)
3頁~20頁参考として添付された平成28年司法試験の採点結果,得点別人員調及び法科大学院等別合格者数等
21頁平成28年司法試験受験状況(予備試験合格者)
22頁~31頁平成29年9月12日付けの合格者名簿の表紙と,参考として添付された平成28年の合格者名簿
32頁平成29年の報道発表資料(合格点と合格者数を記入したもの)
33頁~42頁平成29年の合格者名簿

合格者名簿には合格者の氏名が載っているが,本記事では氏名を転記しない。

2 確認の方法と基準日

本記事は,令和8年10月17日に開示文書の全頁を読み,添付された平成28年の数値を法務省HPの「平成28年司法試験の採点結果」及び「法科大学院等別合格者数等」と照合した上で作成した。
照合した数値は,合格者数,合格点,出願者数から最終合格者数までの各人数,得点の状況及び最低ライン点未満者の人数であり,いずれも一致した。
条文は,同日にe-Gov法令検索で確認した現行の規定による。

第2 報道発表資料が作られる流れ

1 司法試験委員会の決定前に決裁を済ませる

決裁文書の起案部署は大臣官房人事課司法試験第一係であり,平成29年9月6日に起案され,同月7日に決裁された。
伺い文は,「標記について,報道関係者に対し,昨年と同様の資料を,秘書課広報室経由で配付することとしたい。」というものである。
平成29年司法試験の合格者は,同月11日の司法試験委員会で決定され,翌12日に発表された。
つまり,報道機関に配る資料の形式と配付経路は,合格者を決める委員会の4日前(起案は5日前)に,前年と同じ形で決裁されていたことになる。

司法試験法8条は,司法試験の合格者は,司法試験考査委員の合議による判定に基づき,司法試験委員会が決定すると定めている。
報道発表資料の決裁は,この合格者の決定とは別の,発表の事務手続である。

2 前年の資料を添付し,数字を空欄にした案で決裁する

決裁文書の備考欄には,平成29年の結果は同月11日の司法試験委員会で決まるので現時点では資料が確定していないこと,そのため平成28年の資料を参考として添付したこと,及び実際に配付するのは委員会の決定後の平成29年の資料であることが記載されている。
添付された報道発表資料の案では,本文の合格点と合格者数が「○○○点」「○,○○○人」と空欄になっている。
委員会の決定後の報道発表資料では,この部分が「総合点800点以上の1,543人」と埋められている。

3 配付の経路と解禁時刻

報道発表資料は,平成29年9月12日付けの法務省名義のもので,右上に「報道取扱:12日午後4時解禁」と記載されている。
法務省の「平成29年司法試験の合格発表日時等について」によれば,合格発表は同日午後4時に法務省HPへの掲載と掲示によって行われたから,報道機関への配付資料は,合格発表と同じ時刻まで報道を控える扱いだったことになる。
問合せ先は,大臣官房人事課司法試験係(司法試験委員会庶務担当)とされている。

4 文書の分類と保存期間

決裁文書の表紙には,文書管理上の分類が,大分類「司法試験」,中分類「試験実施」,小分類は平成29年司法試験の実施記録(実施報告等)と記載されている。
保存期間は5年,保存期間満了日は平成35年3月31日とされ,機密性の格付けは「機密性2」,秘密区分は「なし」とされている。
平成35年3月31日は,改元後の暦では令和5年3月31日に当たる。

公文書等の管理に関する法律8条1項は,行政機関の長は,保存期間が満了した行政文書ファイル等について,国立公文書館等に移管し,又は廃棄しなければならないと定め,同条2項は,廃棄しようとするときは,あらかじめ内閣総理大臣に協議し,その同意を得なければならないと定めている。
そのため,同じ種類の文書を他の年度について情報公開請求で求める場合,保存期間を過ぎた年度の文書は,保存期間が延長されていない限り,既に移管又は廃棄されている可能性がある。
請求の際には,その年度の司法試験の実施記録に当たる行政文書ファイルを示して特定すると,文書を探してもらいやすくなると考えられる。

第3 配付される4種類の資料

1 4種類の資料と法務省HPでの扱い

報道発表資料には,次の4種類の資料が付けられていた。

資料主な内容法務省HPでの扱い
①採点結果合格者数と合格点,選択科目別・年齢別・性別・受験回数別・既修未修別の合格者数,得点の状況,最低ライン点未満者数及び得点別人員調「総合評価」のPDFとして掲載
②法科大学院等別合格者数等法科大学院ごと及び予備試験合格者の出願者数から最終合格者数まで,既修・未修別及び修了年度別の人員調同名のPDFとして掲載
③受験状況(予備試験合格者)予備試験合格の資格に基づく受験者の性別・年齢別・職種別・最終学歴別の人数②のPDFの末尾に収録
④合格者名簿試験地ごとの受験番号と氏名受験番号だけを掲載

法務省HPの欄は,平成28年と平成29年の「司法試験の結果について」のページで確認した掲載の形である。
令和7年の同じページにも,「総合評価」「合格者受験番号」「法科大学院等別合格者数等」が並んでいる。

2 採点結果と法科大学院等別合格者数等は法務省HPの資料と同じ内容である

添付された平成28年の採点結果は,法務省HPの「平成28年司法試験の採点結果」と同じ構成であり,合格者数1,583人,合格点880点,短答式試験の合格に必要な成績を得た者4,621人等の数値も一致した。
法科大学院等別合格者数等も,予備試験合格者の行(出願者395人,受験者382人,最終合格者235人)を含め,法務省HPのPDFと同じ数値である。
したがって,報道機関向けの資料のうち①から③までは,法務省HPに載る資料と実質的に同じものと考えられる。

3 合格者名簿は試験地ごとに受験番号と氏名を並べている

合格者名簿は,「東京都」等の試験地の見出しの下に,受験番号と氏名を並べた一覧である。
法務省HPで発表されるのは合格者の受験番号だけであり,氏名は載らない。

合格者の氏名は,後日,官報で公告される。
司法試験法施行規則8条は,「司法試験委員会の委員長は、司法試験に合格した者の氏名を官報で公告するものとする。」と定めている。
平成29年は,合格発表日時等の案内で,同年10月4日に合格者の試験地,受験番号及び氏名を官報に公告するとされていた。

開示文書では,内線番号が黒塗りされている一方で,合格者名簿の氏名は黒塗りされていない。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条1号ただし書イは,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報を,個人に関する不開示情報から除いている。
合格者の氏名は官報で公告されるものであるから,この除外に当たると判断されたものと考えられる。

第4 採点結果の数字を読むときの注意

1 合格点と合格者数は年ごとに決まる

平成28年は,平成28年9月5日の司法試験委員会決定により,総合点880点以上の1,583人が合格者とされた。
平成29年は,平成29年9月11日の司法試験委員会決定により,総合点800点以上の1,543人が合格者とされた。
合格点は1年で80点下がったが,合格者数は40人減っている。
総合点の平均点も,平成28年の829.52点から平成29年の780.74点に下がっている。
合格点は,その年の司法試験委員会の決定によって定まるものであり,前年の合格点がそのまま使われるわけではない。

2 最低ライン点未満者は延べ人数と実人員を区別する

採点結果の「最低ライン点未満者」の表は,公法系科目,民事系科目,刑事系科目及び選択科目ごとの人数と,「最低ライン点未満実人員」を分けて示している。
平成28年は,科目ごとの人数を合計すると286人になるが,28人が2科目,15人が3科目,6人が4科目で最低ライン点未満となったため,実人員は210人とされている。
286人から,2科目の28人について1人分,3科目の15人について2人分,4科目の6人について3人分を差し引くと,286-28-30-18=210となる。
平成29年も同じ計算で,延べ497人に対し実人員は343人である。
科目ごとの人数を足し上げて「最低ラインで落ちた人数」とすると,人数を多く数えすぎることになる。

3 総合評価の対象者数は差引きで求める

総合点による合否の判定を受けるのは,短答式試験の合格に必要な成績を得た者のうち,論文式試験の全科目で最低ライン以上となった者である。
平成28年は,4,621人から最低ライン点未満実人員210人を引いた4,411人が総合評価の対象者であり,総合点別人員調の最後の累計人数も4,411人になっている。
平成29年は,3,937人から343人を引いた3,594人である。

人員調の累計割合は,表によって分母が違う。
総合点別人員調の累計割合は総合評価の対象者に対する割合であり,論文式試験の得点別人員調の累計割合は短答式試験の合格に必要な成績を得た者に対する割合である。
同じように,合格率も分母によって大きく変わる。
平成28年の合格者1,583人は,受験者6,899人に対しては約22.9%であるが,総合評価の対象者4,411人に対しては約35.9%になる。
平成29年は,受験者5,967人に対して約25.9%,総合評価の対象者3,594人に対して約42.9%である。

4 平均点と最低点の意味

論文式試験の平均点は二つ示されている。
平成28年の397.67点は総合評価の対象者の平均点であり,括弧内の389.72点は最低ライン点未満の者を含めた平均点である。
また,平成28年の総合点の最低点414.60点は総合評価の対象者のうち最も低い点であり,合格点ではない。

5 年齢・受験回数・既修未修の基準

採点結果の合格者に関する情報は,項目ごとに基準が違う。
年齢別構成は「本年12月末現在」の年齢であり,合格発表の時点の年齢ではない。
受験回数は,その年の司法試験の受験資格による受験回数とされている。
既修・未修別は,受験願書に基づく情報とされている。
法科大学院等別合格者数等の受験者数には,途中欠席者が含まれる。

第5 予備試験合格者の受験状況

1 平成28年の受験状況

添付資料の平成28年司法試験受験状況(予備試験合格者)は,予備試験合格の資格に基づいて受験した者について,性別,年齢別,職種別及び最終学歴別の人数を示している。
主な区分は次のとおりである。

区分出願者受験者短答式合格者最終合格者
合計395人382人376人235人
20歳~24歳138人138人136人130人
大学生72人72人72人69人
法科大学院生99人98人97人86人
無職93人91人90人37人

受験者に対する最終合格者の割合は,合計で約61.5%である。
大学生は72人中69人,法科大学院生は98人中86人が最終合格しており,若い年齢層と在学中の者の合格率が特に高い。

2 読むときの注意

職種別と最終学歴別の人数は出願者の自己申告によるもので,出願時現在のものとされ,年齢別は平成28年12月31日現在のものとされている。
法務省HPの平成29年の法科大学院等別合格者数等によれば,平成29年の予備試験合格者は,出願者408人,受験者400人,短答式合格者393人,最終合格者290人であり,受験者に対する最終合格者の割合は72.5%である。

第6 合格発表の方法の変化

1 平成29年から令和8年までの比較

法務省の各年の「合格発表日時等について」によれば,合格発表の方法は次のように変わっている。

年法務省HPでの発表掲示による発表官報公告
平成29年9月12日午後4時,受験番号法務省の掲示板(全試験地の受験番号)ほか6か所10月4日
令和7年11月12日午後4時,受験番号法務省の掲示板(試験地「東京都」の受験番号のみ)ほか7か所12月3日
令和8年11月11日午後4時(予定),受験番号行わない12月2日(予定)

令和8年は,法務省及び各試験地の掲示板での発表を行わず,法務省HPだけで受験番号を発表するとされている。
いずれの年も,電話による合否の問合せには応じないとされている。

2 公表資料で確認できないこと

令和8年に報道機関へどのような資料が配付されるかは,法務省の公表資料では確認できない。
平成29年の決裁文書は前年と同様の資料を配付するとしているが,その後の年に同じ4種類の資料が配付されているかは,本記事の資料からは分からない。

第7 関連記事

司法試験の合格点と人数については,次の記事で扱っている。
①司法試験の合格点・採点・成績通知―短答式の足切り,論文式の最低ライン,総合点及び順位
②司法試験の合格率・合格者数の推移―令和4年~令和7年と受験資格別の比較
③法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧
④司法試験とは―受験資格・試験科目・日程・合格率・合格後の流れ
⑤司法試験合格者数と司法修習生採用者数が一致しない理由
⑥司法試験合格者の最年少記録-年齢制限・予備試験経由・公表資料の限界

第8 出典

1 開示文書

①平成29年司法試験合格発表における報道発表資料について(平成29年9月7日決裁)及び添付資料

2 法務省の公表資料

①平成29年司法試験の結果について
②平成29年司法試験の採点結果
③平成29年司法試験法科大学院等別合格者数等
④平成29年司法試験の合格発表日時等について
⑤平成28年司法試験の結果について
⑥平成28年司法試験の採点結果
⑦平成28年司法試験法科大学院等別合格者数等
⑧令和7年司法試験の合格発表日時等について
⑨令和8年司法試験の合格発表日時等について

3 法令

①e-Gov法令検索「司法試験法」8条
②e-Gov法令検索「司法試験法施行規則」8条
③e-Gov法令検索「公文書等の管理に関する法律」8条
④e-Gov法令検索「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」5条