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AIによる準備書面の最終査読―6観点の点検と依頼者向け報告書の作り方(AI作成)

第1 最終査読の目的と対象版

準備書面の最終査読では,主張の筋道が伝わることと,引用・計算・提出形式が正確であることを別々に確かめる必要がある。
AIを利用する場合も,担当弁護士が採用した主張を前提に,誤りと未確認事項を発見する工程として設計する。
以下の6観点,指摘表及び報告書の構成は,確認漏れを減らすための運用提案であり,その分け方自体が法令上の義務という趣旨ではない。

最終査読を,新たな起案,証拠採否の決定,又は争点整理ノートの更新と同時に行わせると,点検中に対象自体が変わりやすい。
確認する工程と,指摘を採用して修正する工程を分ける。
AIに専門家や裁判官の視点を指定しても,資格者の査読又は実際の裁判官の判断を受けたことにはならない。

1 ファイル名だけで版を決めない

準備書面,証拠説明書,別紙及び提出予定書証について,所在,ファイル名,確認時の更新日時,頁数,変更履歴の有無を記録する。
同じ名前のまま編集されることもあるため,必要に応じてSHA-256等のハッシュ値を残す。
ハッシュ値はファイルの同一性の手掛かりであり,内容の正しさ又は提出済みの状態を証明しない。
確認日は,法令適用の基準日や提出期限の代わりにはならない。

2 整理資料から原資料へ戻る

争点整理ノート,資料目録及び既存点検表は,原資料を探す索引として利用できる。
引用文,数値及び重要な事実については,実際の書証や従前書面へ戻る。
原資料とノートが食い違う場合は,双方の記載と根拠を残し,推測で統一しない。

資料は,①提出済み,②担当弁護士が使用・提出予定を採用した未提出資料,③採否未決の候補,④提出状況不明に分ける。
日付や号証らしいファイル名だけで提出済みと扱わない。
未提出資料に基づく主張が直ちに不適切となるわけではないが,取調べ済みであるかのような記載,内部の仮番号又は未採用候補の混入を点検する。
読めなかった資料の範囲を「問題なし」に含めない。

第2 6観点の点検

1 用紙サイズと判読性

準備書面だけでなく,証拠説明書,別紙及び提出予定書証も対象に含める。
全頁の寸法,縦横,サイズ混在を機械的に確認し,実際の頁を表示して文字・表・図の切れ及び縮小による判読性を調べる。
寸法がA4にそろっていても,小さい文字を読めるとは限らない。

民事事件等の電子情報処理組織の使用に関する細則2条は,対象となる電磁的記録について,出力する用紙の大きさを日本産業規格A4又はA3とする条件を定めている。
A4への統一は,適用される取扱いや事務所の指定と照らして決め,A3を一律に不適切と扱わない。
「A4相当」という表示だけで受入れが保証されるともいえないため,実寸,適用要領及び必要な提出先への確認を残す。

2 書証・従前書面の特定と引用

名称,作成者,正式号証,該当頁及び引用文を原資料と照合する。
印字された頁と閲覧ソフト上の通し頁が異なるときは,提出書面では「甲第○号証・印字○頁」等の表示で指す頁を明確にする。
これは一律の法定書式ではなく,原資料へ到達できるようにする運用例である。
印字頁がない資料では存在しない番号を補わず,その書証内の通し頁等の方式を明示する。

引用頁の前後の末尾と冒頭が文脈上つながるかも確認する。
疑いがあれば,抜粋,別文書への切替え又は頁の欠落を調べ,直ちに落丁と断定しない。
引用の逐語一致と,全書証にわたる落丁検査は異なる作業である。
原資料・援用箇所・立証趣旨・頁の照合は,証拠説明書の作成・監査も参照されたい。

3 内部矛盾と帰属

本文,表及び別紙を通じ,日付,人名,号証,当事者の地位,数値及び発言者を対照する。
当方の主張,相手方の主張,資料の記載及び裁判所の認定を区別し,相手方との主張の対立を内部の誤りとして修正しない。
時点,定義,資料の版又は発言主体の違いも検討する。
原資料で確定できた誤りと,追加確認を要する矛盾の候補を分ける。

事実から結論へ推認する表現の強さを変える修正は,単なる表記統一ではない。
担当弁護士が採用した因果関係や推認の主張を弱め,又は強める場合は,理由を示して採否判断を求める。

4 数値・計算

元データ,単位,対象期間,計算式及び端数処理を確認して再計算し,小計,合計及び本文への転記を照合する。
再計算できた結果と,前提不足で検証できなかった箇所を分ける。
算術的な一致は,計算前提や請求額の法的妥当性を保証しない。

5 見出し・目次・表記・書式

見出しの階層と連番,本文の相互参照,目次頁と実頁,頁番号の連続性を検査する。
目次の表示値を転記するだけでは実頁との照合にならない。
再ページ設定した完成Word又は実際の出力ファイルから見出しの実頁を取得して比較する。

全文を抽出し,誤字,重複,助詞,主述の対応,否定の脱落及び接続語を点検する。
引用の外側は採用済みの書式に合わせる一方,逐語引用の内側は原資料の表記を尊重する。
固有名詞,日付,金額及び事件番号は,内部でそろっているだけでは足りず,訴状や書証とも照合する。

行間,余白,フォント,孤立見出し及び表の切れは,本文抽出だけでは判断できない。
段落設定,スタイル,頁設定及び実際の表示を併用する。
事務所が行間を1行と指定した場合は倍数1.15が残っていないか調べるが,その指定を全事件共通の法的義務と説明しない。

6 判例の実在・引用内容・適用範囲

裁判所の裁判例検索又は利用可能な判例データベースで判文を確認する。
裁判所,年月日,事件番号等に加え,引用箇所,結論,理由及び本件との主要事実・要件の違いを照合する。
要旨や二次解説だけを読んだ場合は,判文確認済みと表示しない。

未掲載,検索不発,接続不能又は閲覧権限不足は,その経路で確認できなかったという意味であり,不存在とは異なる。
使用資料・データベース,該当頁及び確認日を残す。
実在する判例でも主張を支えない場合があるため,実在と射程の評価を分ける。

第3 指摘表と「問題なし」の書き方

1 同じ原因をまとめても出現箇所を消さない

指摘表には,指摘ID,観点,対象頁・見出し・短い原文,問題点,照合元・該当箇所,重大度,根拠確認状態及び修正案・確認手順を記載する。
重大度は重大・要修正・軽微等,根拠確認状態は原資料で確認済み・一部確認・未確認又は検証不能等に分ける。
重大だが未確認という組合せもあるため,二つの軸を混同しない。

同一原因の指摘は統合するが,その原因が現れた全箇所を残す。
評価が割れた場合は多数決で確定せず,原資料,解釈の理由及び確認事項を併記する。
1枚の概要に収まらない指摘は全件表へ回し,指摘自体を省略しない。

2 分母・手法・未確認範囲を残す

「問題なし」は,対象版と確認項目を限定した結論として記載する。
例えば「対象版の目次見出し全件について,出力後の実頁との照合で不一致を認めなかった」とし,内部記録には件数,抽出器名,頁の取得方法及び一覧を残す。
見出し数,引用数及び段落数は,何を数えた分母かを示す。

0件という検査結果だけで誤りがないと結論しない。
作業用コピー又はテスト入力へ既知の誤りを置いて検出を試し,正しい箇所や原文どおりの逐語引用を誤検出しないかも確かめる。
対象本文が入っていることは文字数・段落数に加え,冒頭,末尾及び重要箇所を現物と対照する。
文字が返ることや日本語の割合は,抽出の正確性の代用にならない。

対照検査をしても,日本語の意味,法的評価及び全ての誤字を漏れなく検出できたとはいえない。
自動検査と人の原資料・文脈・表示の確認を組み合わせ,限界を明記する。
並列担当を使った場合は各担当の範囲を残し,使っていない場合は並列・独立検証を実施したと表示しない。

第4 依頼者向け報告書と内部記録

1 内容面を先に説明する

依頼者向け報告書は,総合評価,内容面,形式面,結びの順で構成すると,何を主張し,何が根拠で,何を確認してほしいかが伝わりやすい。
総合評価では,評価できる主張の構造を具体的な号証・頁と結び付ける。
内容面では重要な不足や反対材料を示し,依頼者の記憶,認識又は資料提供が必要な点を明確にする。

形式面に指摘がない場合も,確認した項目について問題がなかったと短く明記する。
準備書面の点検だけで提出予定書証の用紙サイズも確認済みになるわけではないため,書証を対象に含めたかを別に示す。
結びでは担当弁護士の最終判断と依頼者への確認事項を具体化する。
依頼者の事実確認を,法的評価や提出可否の責任を依頼者へ移す手続として扱わない。

2 内部メモと更新工程を分ける

抽出器名,検査式,分母,対照結果,版の同一性及び未読資料は内部メモに整理する。
重要な未確認事項は依頼者向け本文にも反映し,内部メモを同封する必要があるかは別に判断する。
修正後は最終版を読み直して報告書を作成し,過去版の頁や結論を流用しない。

ノートの誤記,提出状態の食い違い及び追加立証候補は,反映先,旧記載,根拠資料・頁,提案及び未確認点を別記して更新担当へ渡す。
新資料の精読と正式ノートへの統合は別工程とする。
6観点の確認だけで,専門的な実質審査,引用の全数照合又は全書証の落丁検査まで完了したことにはならない。

第5 出典・関連する確認手順

用紙の条件は,前掲細則2条等と対象手続の最新案内で確認する。
裁判所の書式案内では証拠説明書等の書式が公開されており,個別の事務所書式とは区別して参照できる。
本記事の6観点,指摘表,対照検査及び報告順序は,公式資料が一括して定めたものではなく運用提案である。

全体工程は,裁判所提出書面のハルシネーション防止方法を,変換後のファイル確認は,mints提出用PDFの作り方を参照されたい。

変更履歴付きの修正案の検証は,Wordの変更履歴で法律文書を添削する方法で説明している。

公開資料:
民事事件等に関する手続における電子情報処理組織の使用に関する細則
裁判所・民事訴訟手続のデジタル化に関する参考資料
裁判所・証拠説明書の記載要領・記載例