最高裁判所の三つの小法廷に誰を配置し,欠員時に誰が代理し,事件をどの小法廷へ分配するかは,裁判官会議が毎年12月に翌年分を定める。
本記事は,最高裁判所裁判事務処理規則と公開された年別資料を分けて整理し,令和8年分の資料を例に,事件分配比率,特別な事件の取扱い,開廷日割り及び夏期の要急事件を説明する。
本記事では,小法廷の裁判官配置,代理順序及び事件分配を,制度を定める規則と年ごとの決定に分けて整理する。令和8年の分配比率や代理順序は当該年の資料の内容であり,すべての年度に共通する固定値ではない。大法廷・小法廷の位置付けと最高裁判所全体の役割は,最高裁判所とは―役割・裁判官・大法廷と小法廷・判例の調べ方を参照されたい。
第1 毎年の裁判官会議で定める事項
現職の最高裁判所裁判官の氏名・経歴を調べる場合は,最高裁判所裁判官の現職15人の一覧を参照されたい。
本記事は,小法廷への配置,代理順序及び事件分配の制度と年別資料を扱う。裁判官の仕事や種類全体の説明は,裁判官とはで確認できる。
1 制度を定める規則と年別の決定
最高裁判所裁判事務処理規則4条は,各小法廷の裁判官の配置,裁判官に差し支えがあるときの代理順序及び各小法廷に対する事務の分配について,毎年12月の裁判官会議で翌年分を定めるとしている。
規則が制度の枠組みを定め,年別資料が具体的な配置や分配方法を示すという関係にある。
同規則5条によれば,いったん定めた配置,代理順序及び分配は,一つの小法廷の事務が多過ぎる場合や,裁判官の退官,疾病その他の事由による継続的な欠勤等の場合を除き,一年間変更しない。
したがって,年初の資料に記載された裁判官名が,その年の全期間を通じて実際の構成員と一致するとは限らない。
2 裁判官の配置と主任裁判官の違い
同規則1条・2条は,第一小法廷,第二小法廷及び第三小法廷を置き,各小法廷の裁判官の員数を5人とし,3人以上の出席で審理及び裁判ができると定める。
同規則6条は,各事件について主任裁判官を定めるとしている。
小法廷への裁判官の配置は裁判体の構成に関する事項であり,主任裁判官の指定は個別事件に関する事項である。
年別の配置表だけから,個別事件の主任裁判官や裁判官の意見を確定することはできない。
第2 令和8年分の裁判官の代理順序
令和8年分の配置・代理順序・裁判事務分配資料の第2によれば,小法廷の裁判官に差し支えがあるときは,次の小法廷の裁判官が順次代理する。
| 差し支えがある裁判官の所属 | 代理する裁判官の所属と順序 |
|---|---|
| 第一小法廷 | 第二小法廷(最高裁判所長官を除く。)又は第三小法廷 |
| 第二小法廷 | 第三小法廷又は第一小法廷 |
| 第三小法廷 | 第一小法廷又は第二小法廷(最高裁判所長官を除く。) |
同資料は,大法廷において最高裁判所長官に差し支えがあるときは,他の裁判官が席次の順序に従って代理すると定める。
上記は令和8年分の資料の説明であり,別の年についてはその年の決定を確認する必要がある。
第3 令和8年分の事件分配比率と調整
1 基本比率は10対9対10
同資料第3の1によれば,事件は種類ごとに,第一小法廷10,第二小法廷9,第三小法廷10の比率により,順次分配する。
これは資料上の基本比率であり,年間の実際の処理件数が必ずこの比率になるという意味ではない。
2 定年退官前及び新任直後の調整
最高裁判所長官以外の裁判官が定年により退官する場合は,退官日の2箇月前から後任裁判官の配置まで,当該裁判官が配置されている小法廷の事件分配比率を2減ずる。
また,最高裁判所長官以外の裁判官が新たに就任する場合は,就任日から1箇月間,当該裁判官が配置される小法廷の比率を2減ずる。
いずれも,小法廷の基本比率を調整する規定である。
裁判官一人につき,個々の事件を固定した件数だけ減らすという規定ではない。
第4 再審・差戻し・関連事件等の分配
1 再審事件及び差戻し後の上告事件
令和8年分の資料第3の2・3によれば,大法廷がした裁判に対する再審事件は順次各小法廷へ分配し,小法廷がした裁判に対する再審事件はその小法廷へ分配する。
小法廷で差し戻した事件又は小法廷で高等裁判所の差戻し判決を是認した事件の判決に対する上告事件は,その小法廷以外の小法廷へ分配する。
ただし,分配時にその小法廷の裁判官全員が当該事件の審理に関与していないときは,この例外が適用されない。
2 除斥・忌避等及び裁判に関する損害賠償事件
同資料第3の4によれば,小法廷の民事に関する裁判官の除斥又は忌避の申立て事件,及び小法廷の刑事に関する裁判官の忌避又は回避の申立て事件は,当該裁判官が配置された小法廷以外の小法廷へ分配する。
ただし,刑事訴訟法24条の規定により忌避の申立てを却下する場合は,この限りでない。
同資料第3の5は,小法廷がした裁判の違法を理由とする国家賠償請求事件,及びその裁判に関与した裁判官を被告とする損害賠償請求事件も,その小法廷以外へ分配すると定める。
ただし,分配時に当該小法廷の裁判官全員がその裁判の審理に関与していないときは,この限りでない。
これは最高裁判所での事件分配に関する規定であり,請求の適法性や認容の可否を定めるものではない。
3 関連事件及び未済事件
同資料第3の6・7によれば,一つの小法廷に分配された事件に関連する事件は,その小法廷へ分配できる。
別の小法廷の事件と併せて審理裁判することが便宜であるときは,関係小法廷の裁判官の協議により,一つの小法廷で併せて取り扱うこともできる。
同資料第3の8は,各小法廷の未済事件を当該小法廷が引き続き取り扱うと定める。
年が替わるたびに,係属中の事件をすべて三つの小法廷へ配り直すという取扱いではない。
第5 令和8年分の開廷日割り及び夏期の要急事件
1 通常の開廷日割り
同資料第4が定める開廷日割りは,次のとおりである。
各法廷の裁判官の協議により,これと異なる曜日に開廷することもできる。
| 法廷 | 曜日 |
|---|---|
| 大法廷 | 水曜日 |
| 第一小法廷 | 月曜日・木曜日 |
| 第二小法廷 | 月曜日・金曜日 |
| 第三小法廷 | 火曜日・金曜日 |
この日割りだけから,個別事件の弁論期日や判決期日を確定することはできない。
2 夏期の要急事件は期間別に担当する
同資料第5及び別表は,夏期の要急事件について,民事の人身保護事件・強制執行停止事件,刑事の勾留事件・上告受理事件の担当小法廷を,次のとおり定める。
| 令和8年の期間 | 担当小法廷 |
|---|---|
| 7月21日(火)~7月31日(金) | 第一小法廷・第三小法廷 |
| 8月1日(土)~8月10日(月) | 第一小法廷 |
| 8月11日(火)~8月21日(金) | 第二小法廷 |
| 8月22日(土)~8月31日(月) | 第二小法廷・第三小法廷 |
別表の期間中又はその直前に,特に迅速な処理が必要な事件が係属することが見込まれるときは,全小法廷の一致した意見により,分配すべき小法廷を定めることもできる。
夏期にも,資料に定められた要急事件を取り扱う体制がある。
なお,裁判官会議における司法行政事務の夏期の取扱いは,別の令和5年12月20日議決による。
裁判事務の分配と司法行政事務の委任は,対象となる事務と根拠資料が異なる。司法行政については,最高裁判所裁判官会議(AIリライト)を参照されたい。
第6 配置・代理順序・裁判事務分配の年別資料
元の記事である最高裁判所裁判官会議の議事録に掲載する年別資料を,以下に案内する。
既存のリンク表示は「年度」であるが,例えば令和8年分の原資料の表題は「令和8年における」である。暦年の配置資料と,情報公開答申の年度表示を混同しないよう注意が必要である。
個別年の構成員や分配条件を確認するときは,その年の原資料を用いる必要がある。
過去の配置表を,現在の裁判官構成を示す資料として使用することはできない。
第7 関連記事及び出典
1 関連記事
最高裁判所は判決をどう決めるか-大法廷・小法廷・評議・多数意見・少数意見(AI作成)
最高裁判所裁判官会議(AIリライト)
最高裁判所裁判官会議の議事録
最高裁判所裁判事務処理規則(昭和22年11月1日最高裁判所規則第6号)
2 直接参照した資料
① 最高裁判所裁判事務処理規則(裁判所公式掲載版)の1条~6条・8条。
② 令和8年における最高裁判所各小法廷の裁判官の配置,代理順序及び裁判事務の分配等についての第1~第5及び別表。
③ 夏期における司法行政事務の取扱い(令和5年12月20日付の裁判官会議議決)。
本記事の具体的な事件分配比率,代理順序,曜日及び夏期の期間は,令和8年分の資料に基づく。
各年の資料の内容がすべて同一であるという前提は置いていない。