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自動運転車が交通違反・事故を起こしたら誰が責任を負うか―レベル2・3・4の区別,道路交通法38条,特定自動運行の許可,自賠法3条及び刑事責任(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 この記事が扱う問題

令和8年10月,東京都内の繁華街の夜間の道路を自動運転で走行する動画がX(旧Twitter)で公開され,返信欄に,横断歩道で歩行者が待っていたのに止まらなかったのではないか,交通違反であれば誰の責任になるのか,という趣旨の指摘が寄せられた。
自動運転の公道走行は,国内でも試験段階から実際の運行へ移りつつあり,同じ疑問は今後も繰り返し生じると考えられる。

本記事は,自動運転車が交通違反や交通事故を起こしたときに,誰がどの法律上の責任を負うかを,道路交通法,道路運送車両法,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)及び自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」という。)の条文と,裁判例・所管官庁の報告書に基づいて整理する。
特定の動画の走行が違反に当たるかを判断するものではない。
動画は撮影者自身が倍速等の編集を加えたと注記しており,映像だけから一時停止の有無や歩行者の横断意思を確定することはできない。

条文は令和8年10月17日にe-Gov法令検索で確認した現行条文による。
道路交通法は令和8年7月21日施行版,同法施行令は同年9月1日施行版である。

2 結論

①まず,その車がどの「レベル」で走っていたかを確かめる。
運転席の人が周囲を監視し,いつでも操作を引き継ぐ前提の運転支援(いわゆるレベル2)であれば,その人が道路交通法上の「運転者」であり,横断歩道で止まらなかった違反の責任は運転者が負う。

②一般にレベル3と呼ばれる自動運行装置を使う運転でも,運転者がいることに変わりはない。
道路交通法71条の4の2第2項が運転者に適用しないとしているのは携帯電話等の使用禁止(71条5号の5)だけであり,横断歩道での一時停止義務を外す規定はない。

③運転者を置かない特定自動運行(いわゆるレベル4)では,道路交通法上の「運転」がなく,運転者もいない。
違反があれば,公安委員会による指示,許可の取消し又は効力停止という行政処分の対象になる。
これに対し,横断歩道での違反に罰則を科すときに誰を処罰するかを定めた明文は見当たらず,反則金の制度も運転者を前提としている。

④被害者の民事上の請求は,レベルを問わず,自賠法3条の運行供用者責任が基本になる。
国土交通省の令和7年4月30日の検討会報告書は,ロボットタクシー等の実装が見込まれる令和8年初頭の普及期においても,この整理を維持することが妥当であるとした。

⑤運転支援を使っていた運転者の刑事責任について,横浜地裁令和2年3月31日判決は,システムが作動していても運転者は前方を注視し,強い眠気を覚えたら運転を中止すべき義務を負うとして,過失運転致死傷罪の成立を認めた。

第2 自動運転のレベルと法律上の区別

1 運転支援(レベル2まで)

いわゆるレベル2は,加速・減速とハンドル操作の両方をシステムが支援するが,運転の主体は人である。
横浜地裁令和2年3月31日判決(平成30年(わ)第1459号,判例秘書の判例番号 L07550469)は,事故車両の運転支援システムが自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)の運転自動化レベルの区分でレベル2に当たるとした上で,レベル2では,運転者が道路状況を監視する責任を有し,システムは警告なしに制御を中断することができ,運転者はいつでも車を安全に制御する用意をしておかなければならないとされている,と判示した。

法律上も,レベル2の車は通常の自動車と同じであり,運転席の人が道路交通法2条1項17号の「運転」をする者である。
同号は「運転」を「道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いること(原動機に加えてペダルその他の人の力により走行させることができる装置を備えている自動車又は原動機付自転車にあつては当該装置を用いて走行させる場合を含み、特定自動運行を行う場合を除く。)をいう。」と定めている。
除かれているのは特定自動運行だけであるから,運転支援を使っていても,人が運転していることになる。

2 自動運行装置を使う運転(いわゆるレベル3)

道路運送車両法41条2項は,「自動運行装置」を,センサー,電子計算機及びプログラムを主な構成要素とする装置であって,国土交通大臣が付する条件で使用される場合に「自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ、当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるもの」と定義している。

この装置を使う運転について,道路交通法71条の4の2第1項は「自動運行装置を備えている自動車の運転者は、当該自動運行装置に係る使用条件を満たさない場合においては、当該自動運行装置を使用して当該自動車を運転してはならない。」と定める。
違反には罰則がある(119条1項16号)。
同条2項は,車が整備不良車両でなく,使用条件を満たしており,運転者がそれらの条件を満たさなくなったときに直ちにそのことを認知し,自動運行装置以外の装置を確実に操作できる状態にある場合に限り,「当該運転者については、第七十一条第五号の五の規定は、適用しない。」とする。
外れるのは携帯電話等の使用禁止だけであり,運転者であることも,横断歩道での一時停止義務を含む他の義務も残る。

3 特定自動運行(いわゆるレベル4)

道路交通法2条1項17号の2は,使用条件を満たさなくなったときに「直ちに自動的に安全な方法で当該自動車を停止させることができるもの」に限った自動運行装置を,使用条件どおりに使用して自動車を運行することを「特定自動運行」と定義している(運行中の状況に応じて装置を操作する者がいる場合を除く。)。
前記のとおり,特定自動運行は「運転」から除かれるので,特定自動運行中の車には道路交通法上の運転者がいない。
令和5年版警察白書も,この改正により特定自動運行が「運転」の定義から除外されたと説明している。

特定自動運行には公安委員会の許可が要る。
同法75条の12第1項は「特定自動運行を行おうとする者は、特定自動運行を行おうとする場所を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。」と定める。
許可を受けた者(特定自動運行実施者)は特定自動運行主任者を置かなければならず,遠隔監視の場所に配置された主任者は,同法75条の21第1項により「同号に規定する装置の作動状態を監視していなければならない。」とされ,装置が正常に作動していないことを認めたときは「直ちに、当該特定自動運行を終了させるための措置を講じなければならない。」とされている。
この制度は令和5年4月1日に施行された。

4 区分の一覧

区分道路交通法上の運転者主な条文交通違反の責任
運転支援(レベル2まで)いる(運転席の人)道路交通法2条1項17号運転者が通常どおり責任を負う
自動運行装置の使用(レベル3)いる(運転席の人)道路交通法71条の4の2,道路運送車両法41条2項運転者が責任を負う。外れるのは携帯電話等の使用禁止だけ
特定自動運行(レベル4)いない道路交通法2条1項17号の2,75条の12以下許可の取消し等の行政処分。罰則の対象者を定めた明文は見当たらない

第3 横断歩道での歩行者優先(道路交通法38条1項)

1 条文

道路交通法38条1項は,次のとおり定める。
「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」

前段は,横断しようとする歩行者等がいないことが明らかでない限り,直前で止まれる速度に落として近づく義務である。
後段は,横断中又は横断しようとする歩行者等がいるときに,直前で一時停止し,通行を妨げない義務である。
いずれも主語は「車両等」であり,自動運転車も車両等に含まれる(同法2条1項9号は,特定自動運行を行う車も「自動車」に含めている。)。

2 「横断しようとする歩行者」と速度調節の義務

東京地裁平成27年9月29日判決(平成26年(行ウ)第332号)は,同条1項後段の横断しようとする歩行者等とは「車両等がそのまま進行するとその歩行者等の横断を妨げることとなるような横断歩行者等をいうものと解される」とし,これに当たるかは,道路の幅員,車両等の速度,歩行者の年齢,歩行者までの距離等を総合考慮して判断するとした。
その控訴審である東京高裁平成28年2月17日判決(平成27年(行コ)第359号)も,運転免許取消処分を適法とした原判決を維持した。

古い条文の下の判断であるが,東京高裁昭和46年5月31日判決(昭和45年(う)第1257号,高等裁判所刑事判例集24巻2号388頁)は,横断歩道の直前での一時停止義務を守るため,運転者はあらかじめ速度を調節して進行する義務を負い,速度調節を要しないのは横断しようとする歩行者のないであろうことが明らかな場合に限るとした。
現行の38条1項前段は,この速度調節の義務を条文に書き込んだ形になっている。

自動運転のシステムが歩行者を検知して判断する場合でも,法律が求める水準は同じである。
横断歩道の脇に立つ歩行者が渡ろうとしているかどうかが明らかでないときは,止まれる速度に落として近づく必要がある。

3 違反したときの罰則・反則金

38条の違反は,同法119条1項5号により「三月以下の拘禁刑又は五万円以下の罰金」の対象となり,過失による違反も同条3項により「十万円以下の罰金」の対象となる。
実際には,多くの場合,交通反則通告制度により処理される。
同法施行令別表第六の反則行為の種別は「横断歩行者等妨害等」で,反則金は普通車9,000円(大型車12,000円,二輪車7,000円,原付等6,000円),基礎点数は2点である(同施行令別表第二)。

4 自動運転車が38条に違反した場合

(1) 運転者がいる場合

運転支援(レベル2まで)と自動運行装置の使用(レベル3)では,運転席の人が運転者として違反の責任を負う。
システムが歩行者を見落としたことは,運転者の責任を否定する理由にならない。
反則金の対象となる反則行為も,同法125条1項が「車両等の運転者がしたもの」と定めるとおり,運転者の行為である。

(2) 特定自動運行の場合

特定自動運行(レベル4)では,運転者がいないので,反則金の制度はそのままでは働かないと読める。
119条1項5号は「第三十八条(横断歩道等における歩行者等の優先)…の規定の違反となるような行為をした者」を処罰するが,運転者のいない車の違反について,その「行為をした者」を誰とするかを定めた規定は見当たらない。
ここまでは条文からの推論であり,確立した解釈ではない。

一方,行政処分の規定は明確である。
同法75条の27第1項は,「特定自動運行実施者又はその特定自動運行業務従事者が、特定自動運行に関し、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき。」(1号)等に,公安委員会が「特定自動運行の許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めてその効力を停止することができる。」と定める。
特定自動運行中の車に係る交通事故があった場合等において,道路における危険を防止するため緊急の必要があるときは,警察署長が,その日から起算して30日を経過する日までを終期として許可の効力を仮に停止することもできる(75条の28)。
また,警察庁の「令和7年度 自動運転の拡大に向けた調査研究報告書」(令和8年3月)の事務局素案(PDF24頁)は,「特定自動運行用自動車に道路交通法違反があれば、その自動運行装置は保安基準に適合しない蓋然性が高い。」としており,違反は車両の安全基準の問題にもつながる。

第4 事故を起こした場合の刑事責任

1 運転支援を使っていた運転者の注意義務

(1) 横浜地裁令和2年3月31日判決

前記の横浜地裁令和2年3月31日判決は,東名高速道路を運転支援システムを作動させて走行していた普通乗用自動車の運転者が,強い眠気を覚えた後も運転を続けて仮睡状態に陥り,システムの機能で走り続けた車が前方に停車していた自動二輪車に衝突して,3人を死傷させた事案である。
判決は,運転者が,システムを作動させていても前方を注視し,何かあったときには運転を替わる意識を持ち続けなければならないと理解していたことなどから,システムが適切に動作しない事態や対応し難い事態による事故の危険を予見できたとし,強い眠気を覚えた時点で直ちに運転を中止すべき注意義務に違反したと認めた。
量刑の理由では,運転支援システムが搭載されていても,運転者が前方を注視して道路状況に応じた適切な運転操作をしなければ事故が発生する危険があることは否定できず,眠気を覚えた場合の運転中止義務は基本的な注意義務であることに変わりがない,とした。
結論は禁錮3年,執行猶予5年である。

(2) 定速走行機能(オートクルーズ)の事例

より単純な定速走行機能(オートクルーズ)の事例でも,裁判所は運転者の過失を認めている。
名古屋地裁平成29年3月15日判決(平成28年(わ)第2137号)は,オートクルーズ機能を使って高速道路を時速約80キロメートルで走行中,考え事に気を取られて前方不注視のまま進行し,路肩に停車していたバスに衝突した大型貨物自動車の運転者について,前方左右を注視し適切な進路を保持すべき注意義務の違反を認め,禁錮2年に処した。
大津地裁平成19年1月26日判決(平成17年(わ)第875号)は,眠気を感じた後もオートクルーズ機能によるハンドル操作のみの運転を続けて名神高速道路で多重事故を起こした運転者について,運転中止義務違反の過失を認めた。
これらは機能の水準がレベル2より低い事例であるが,機能に任せて監視を怠ったことを運転者の過失とする点で,横浜地裁判決と同じ考え方に立っている。

2 自動運行装置を使う運転者の注意義務

自動運行装置の使用中は,運転者は常時の前方注視から一定程度解放されるが,道路交通法71条の4の2第2項3号のとおり,使用条件を満たさなくなったときに「直ちに、そのことを認知するとともに、当該自動運行装置以外の当該自動車の装置を確実に操作することができる状態」にあることが前提である。
使用条件を外れたのに引き継がずに事故を起こせば,運転者の過失が問われる。
睡眠や飲酒で引き継げない状態になっていれば,前提そのものを欠く。

3 特定自動運行の事故

特定自動運行中の事故では,道路交通法上の運転者がいないため,自動車運転処罰法5条の「自動車の運転上必要な注意を怠り」という構成要件を誰について問うのかが,条文から直ちには決まらない。
遠隔監視をする特定自動運行主任者が,装置の異常を認めたのに75条の21第1項の終了措置を講じなかったような場合には,その者の過失が問題となりうる。
設計,保守又は運行管理の過失が問題となる場合には,刑法211条の業務上過失致死傷罪が検討の対象になると考えられる。
もっとも,前記の警察庁の報告書を含め,特定自動運行の事故で誰が刑事責任を負うかを確定させた公的な整理は見当たらず,裁判所HP及び判例秘書でも,特定自動運行の事故を判断した裁判例は見当たらなかった。

第5 被害者の民事上の請求

1 自賠法3条の運行供用者責任

自賠法3条は,「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」と定める。
人身事故の被害者は,運転者の過失を証明しなくても,車の保有者等の運行供用者に賠償を求めることができ,運行供用者の側が免責の要件を証明しない限り責任を免れない。

2 国土交通省の整理

(1) 平成30年の研究会報告書

国土交通省の「自動運転における損害賠償責任に関する研究会報告書」(平成30年3月)は,レベル0からレベル4までの車が混在する過渡期について,従来の運行供用者責任を維持しつつ,保険会社等による自動車メーカー等への求償権行使の実効性を確保する仕組みを検討することが適当であるとした。

(2) 令和7年の検討会報告書

その後の「ロボットタクシー導入等に向けた自動運転における自賠法上の損害賠償責任に関する検討会報告書」(令和7年4月30日,国土交通省物流・自動車局)は,「レベル0~4までの自動運転車が混在する令和8年初頭の普及期においても、迅速な被害者救済の観点等を踏まえ、当該整理を維持することが妥当である。」とした(PDF6頁)。
同報告書は,旅客運送の乗客は「保有者」に当たらないとし(PDF7頁),自動運転タクシー等の事故では,被害者は旅客自動車運送事業者等の旅客運送の運送主体を運行供用者として自賠法上の責任を追及すればよいと整理している(PDF10頁)。
免責要件のうち「自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」等の解釈については,引き続き検討が必要とされている。

3 メーカーの責任と立証の重さ

車のシステムに欠陥があった場合,運行供用者や保険会社がメーカーに求償し,又は被害者が製造物責任法3条に基づいてメーカーに請求することが考えられる。
もっとも,欠陥の立証は重い。
広島地裁平成13年12月19日判決(平成12年(ワ)第117号)は,走行中にハンドルの制御が利かなくなったと主張された事故について,異常が自動車の性状に起因することを具体的に明らかにせず「単にその可能性を指摘するのみでは,欠陥の主張がなされたとはいえない」として,請求を棄却した。
東京地裁令和7年2月20日判決(令和5年(ワ)第19101号)は,停車中の高級乗用車が突然発進・加速したとして製造物責任法3条等に基づく賠償が求められた事案で,運転者がアクセルペダルを踏んでいないのに発進・加速したとは認められないとし,運転席のドアが開くと自動的にPレンジへ移る機能が搭載されていないことも,搭載を義務付ける法規等がないことなどから欠陥に当たらないとして,請求を棄却した。
システムの判断過程を被害者側が明らかにすることは容易でなく,運行供用者責任が被害者救済の中心であり続ける理由もここにある。

4 自動ブレーキの作動と相手方の責任

運転支援の機能が作動したこと自体が争いになる場面もある。
東京地裁令和5年12月11日判決(令和3年(ワ)第3787号,判例秘書の判例番号 L07832532)は,丁字路交差点で左折した原告車の自動ブレーキが,対向してきた被告車に反応して作動し急停車したため原告が負傷したと主張した非接触事故の事案で,被告車は道路の中央を越えていたもののその程度は大きくなく,そのまま走行しても接触せずに走行することは十分可能であったなどとして,自動ブレーキが被告車に反応したとしても相当因果関係は認め難いとした。
システムが危険を感じて止まったことと,相手方に法的な責任があることとは,別に判断される。

第6 国内の実装状況(令和8年10月時点)

1 特定自動運行の許可

令和5年版警察白書によれば,令和5年5月11日,福井県公安委員会が福井県永平寺町の無人自動運転移動サービスについて,全国で初めて特定自動運行の許可をした。
国土交通省の資料「自動運転の普及・拡大に関する取組」(令和8年1月29日)は,その後,東京都大田区(羽田),北海道上士幌町,三重県多気町,愛媛県松山市,長野県塩尻市,茨城県日立市,大阪市(万博)及び千葉県柏市でレベル4の運行が始まり(2025年11月時点。PDF4頁),レベル4のバス等が9か所で実装されたとしている(PDF6頁)。
いずれもバス等による移動サービスである。

2 東京のタクシー

GO株式会社,Waymo及び日本交通株式会社は,令和8年9月15日,2027年中に東京でレベル4の完全無人走行による商用タクシー運行を目指すと発表した。
同発表によれば,3社は2025年から東京都内7区で公道での試験走行を行っており,現在は日本交通の乗務員が同乗した自動走行試験を行っている。
正式な運行開始時期は,道路交通法や道路運送法等に規定された必要な許認可の取得が完了した後に決めるとされている。
東京都も,令和8年9月4日,多摩市諏訪・永山地区で「レベル2(運転手搭乗型)」の自動運転車両によるテスト走行を始めると発表した。

東京都内でも大田区(羽田)ではレベル4の運行が始まっているが,前記のタクシーや東京都の実証は,いずれも乗務員又は運転手が乗る形で行われている。
この段階の車が交通違反をしたときは,原則として,乗っている運転者がその責任を負うことになる。

第7 自動運転車の違反・事故に関わったときの確認事項

①車の区分を確かめる。
運転席に人がいて操作を引き継ぐ前提か,特定自動運行の許可を受けた運行かで,責任を負う者が変わる。

②記録を早く保全する。
事故時のシステムの作動状態,警報や引継ぎ要求の時刻,運転者の操作は,車載の記録装置やカメラに残るが,修理やソフトウェアの更新で失われることがある。

③被害者は,まず自賠法3条により運行供用者(自動運転タクシーであれば運送事業者等)に請求する。
メーカーへの請求は,求償や製造物責任の問題として,欠陥の立証の見通しを踏まえて検討する。

④歩行者や他の車の側も,自動運転車が止まってくれることを前提にした行動を取らない。
自動運転車の側に違反があっても,歩行者側の動きは過失相殺の対象として別に評価される。

第8 関連記事

刑事事件の起訴状での過失の書き方は「過失運転致死傷罪の起訴状における過失の記載方法」,高速道路での取締りと特定自動運行の許可制度は「高速道路交通警察隊とは」,任意保険の免責と自動運転の扱いは「任意保険が適用されない場合」,自賠責保険の支払基準は「自賠責保険の支払基準」,横断歩道での歩行者優先は「全国交通安全運動とは」,歩行者側の責任は「歩行者が交通事故の加害者となる場合」で扱っている。

第9 出典

1 法令

①道路交通法(昭和35年法律第105号)2条1項9号・17号・17号の2,38条1項,71条の4の2,75条の12,75条の21,75条の27,75条の28,119条1項5号・16号・3項,125条1項(e-Gov法令検索。令和8年7月21日施行版)
②道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)別表第二,別表第六(e-Gov法令検索。令和8年9月1日施行版)
③道路運送車両法(昭和26年法律第185号)41条1項20号・2項
④自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)3条
⑤自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成25年法律第86号)5条
⑥刑法(明治40年法律第45号)211条
⑦製造物責任法(平成6年法律第85号)3条

2 裁判例

①横浜地裁令和2年3月31日判決(平成30年(わ)第1459号,判例秘書の判例番号 L07550469)
②名古屋地裁平成29年3月15日判決(平成28年(わ)第2137号)
③大津地裁平成19年1月26日判決(平成17年(わ)第875号)
④東京地裁平成27年9月29日判決(平成26年(行ウ)第332号)
⑤東京高裁平成28年2月17日判決(平成27年(行コ)第359号)
⑥東京高裁昭和46年5月31日判決(昭和45年(う)第1257号,高等裁判所刑事判例集24巻2号388頁)
⑦広島地裁平成13年12月19日判決(平成12年(ワ)第117号)
⑧東京地裁令和7年2月20日判決(令和5年(ワ)第19101号)
⑨東京地裁令和5年12月11日判決(令和3年(ワ)第3787号,判例秘書の判例番号 L07832532)

3 官公庁等の資料

①国土交通省「自動運転における損害賠償責任に関する研究会報告書」(平成30年3月)
②国土交通省物流・自動車局「ロボットタクシー導入等に向けた自動運転における自賠法上の損害賠償責任に関する検討会報告書」(令和7年4月30日)PDF6頁,7頁,10頁
③警察庁「令和7年度 自動運転の拡大に向けた調査研究報告書」(令和8年3月)PDF24頁
④警察庁「令和5年版警察白書」第5章第4節第5項「ITSの推進と自動運転の実現に向けた取組」
⑤国土交通省物流・自動車局技術・環境政策課「自動運転の普及・拡大に関する取組」(令和8年1月29日)PDF4頁,6頁
⑥GO株式会社「GO、Waymo、日本交通 自動運転タクシー商用化の実現に向けて合意 2027年中に国内初の完全無人タクシー運行を目指す」(令和8年9月15日)
⑦東京都都市整備局「多摩市(諏訪・永山地区)において自動運転車両の実証走行を行います!」(令和8年9月4日)
⑧警察庁「自動運転」