メインコンテンツへスキップ
       

連帯保証人の財産を仮差押えするには―主債務者の資力と保全の必要性(AI作成)

第1 連帯保証人に対する仮差押えの検討

1 保証債務と保全の必要性は別の問題である

連帯保証人に金銭の支払を請求する権利があることと,その保証人の財産を今すぐ仮差押えする必要があることは別の問題である。
民事保全法13条は被保全権利と保全の必要性の疎明を求め,20条は将来の強制執行が不能又は著しく困難になるおそれを仮差押えの要件としている。
主債務者への請求状況と保証人の責任財産を確認し,なぜ保証人の財産を保全する必要があるかを検討する。
本記事の法令・裁判所掲載書式の確認日は令和8年10月8日である。

2 東京地裁の記載例は双方の資力を説明している

東京地裁の書式2-1は,連帯保証債務を被保全権利として預金債権を仮差押えする例を掲載している。
保全の必要性の欄では,主債務者からの弁済を見込めない事情と,保証人の収入・財産及び預金が引き出される危険を記載している。
保証人だけの資産不足を述べれば常に十分と考えず,主債務者側の事情も準備することが実務上重要である。

野村創の参考文献も,少なくとも東京地裁の運用として,連帯保証人単独への仮差押えでは主債務者に関する保全の必要性も検討することを説明している。
同書の「二段の保全不足」「三段の保全不足」は著者の呼称であり,法令上の独立した要件名ではない。
東京地裁の書式から,全国の裁判所が全ての保証事件で同一の資料・判断方法を採ると断定することはできないため,申立先の取扱いも確認する必要がある。

民事保全の3類型と手続全体の比較は,民事保全とはで説明している。

第2 保証債務の根拠を示す資料

1 主債務と保証契約を対応させる

主債務の成立,内容,残額,弁済期,未払状況と,保証契約の当事者・内容・範囲を確認する。
契約の成立時期や保証の種類に応じて,方式その他の保証規制が問題になる場合があり,保証書があるだけで有効性や請求範囲が確定するわけではない。
本記事は保全の準備を中心とするものであり,個別の保証契約の有効性は別に検討する必要がある。

2 連帯の合意を資料で確認する

「保証人」との記載だけで,連帯保証の合意をしたことまで当然に説明できるとは限らない。
契約書,保証書その他の資料で,どのような合意が成立したかを確認する。
主債務者・保証人への督促,返答,弁済等の経過も整理し,残額と請求内容が資料に対応するようにする。

第3 双方の資力と回収不足の調査

1 主債務者側で何を確認するか

主債務者の住所・本店等と不動産の所有関係,判明している資産,担保権や負債,支払状況などを整理する。
住所地の不動産が他人名義であることは調査資料の一つとなるが,それだけで全国の全財産が存在しないと証明したことにはならない。
判明している他の資産や回収可能性も含め,調査の範囲と分からない点を明らかにすることが重要である。

2 保証人側の資力と保全対象を確認する

保証人の財産についても,所有者,対象の価値,先順位の負担,収入等を確認する。
不動産の担保権について,登記上の債権額・極度額を現実の残債務額と同一視せず,どの程度の回収が見込めるかを検討する。
預金を対象とする場合は,銀行・取扱店舗の特定や,不動産等の他の財産についての調査も必要となる。

説明する事項資料の例避けるべき混同
主債務・保証債務の存在契約書,保証書,送金・弁済記録,督促等保証人との記載だけで連帯の合意まで推定すること
主債務者からの回収見込み登記,資産・負債に関する資料,督促への回答等住所地が他人名義であれば全資産がないと断定すること
保証人財産の保全の必要性所有関係,収入・負債,対象財産の資料等主債務者の無資力だけで保証人側の必要性を済ませること

第4 預金の仮差押えと過大な保全への注意

1 預金を対象とする場合の調査を省略しない

東京地裁の書式2-1の注は,債権仮差押えで他に仮に差し押さえるべき財産がない状況を疎明する資料として,住所地等の不動産登記やブルーマップを挙げている。
これは,同裁判所の書式・実務上の資料確認として理解し,不動産がある全ての事件で預金の仮差押えが法律上禁止されるという説明に置き換えないことが大切である。
預金や給料の特定,差押禁止の範囲,第三債務者への影響は,預金・給料の仮差押えを参照する。

2 請求債権の記載と保全する財産の範囲を区別する

主債務者と保証人の双方に請求できる場合でも,同じ債務を重ねて回収できるものと考えてはならない。
主債務者の財産で回収できる範囲,他に既にした保全,保証人の財産の価値を踏まえて,保全する範囲を検討する。
請求債権の記載額と,仮に確保する財産の範囲は別に確認する必要があり,単純に全員の財産を請求額いっぱいまで保全する方針を立てないことが重要である。

第5 申立て前の確認と手続の見通し

①主債務・保証債務の資料と連帯の合意を確認する。
②主債務者からの回収見込みと保証人側の保全の必要性を別々に整理する。
③保全対象の所有者,価値,先順位の負担,他の保全との関係を確認する。
④申立先の必要資料,担保と費用,発令後の執行方法を確認する。

手続全体は,仮差押えの総論で説明している。
申立ての準備では,資料で確認できた事実と推測を区別し,分からない資産の存在を断定せず,調査内容とその限界を説明することが重要である。

第6 出典・参考資料

①e-Gov法令検索・民事保全法(13条,20条)。
②東京地方裁判所書式2-1・債権仮差押命令申立書(主債務者及び連帯保証人の資力に関する記載例・注。令和8年10月8日確認)。
③野村創『失敗事例でわかる!民事保全・執行のゴールデンルール30〈改訂版〉』(学陽書房,令和6年)第1章9(64頁~69頁),第3章18(124頁~127頁)。主債務者と保証人の資力調査及び債権仮差押えの準備の参考とした。