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生活保護費の追加給付と原告への特別給付金―最高裁令和7年6月27日判決後の▲2.49%の水準,対象世帯及び申出期間(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

本記事は,平成25年8月から3回に分けて実施された生活扶助基準の引下げについて,最高裁判所が令和7年6月27日にデフレ調整を違法と判断したことを受けて,厚生労働省が行っている保護費の追加給付と,訴訟の原告に対する特別給付金を整理するものである。
内容は,令和8年10月16日までに確認した厚生労働省の公表資料に基づく。
判決そのものの判断枠組みは,社会保障給付の減額と司法審査―年金減額判決・生活保護基準引下げ判決・経過措置(AI作成)で説明している。

2 結論の要点

厚生労働省は,デフレ調整による減額率(▲4.78%)に代えて,専門委員会の報告書等を踏まえた新たな水準(▲2.49%)を設定し,その差額を保護費として追加給付することとした。
追加給付は,原告か否かを区別せずに行われ,平成25年8月から平成30年9月までの間に生活保護を受給したことがある全ての世帯のほか,その後の一定の世帯も対象となる。
現に生活保護を受けている世帯には,現在の自治体から原則として申出なしに支給され,現在は受給していない世帯は,当時保護を受けていた自治体に,令和8年8月1日から令和9年7月31日までの間に申し出る必要がある。
訴訟の原告については,これとは別に,厚生労働省が特別給付金を支給する。

第2 追加給付に至る経緯

1 最高裁令和7年6月27日判決

最高裁令和7年6月27日第三小法廷判決(令和5年(行ヒ)第397号ほか)は,平成25年の生活扶助基準改定のうち,物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をした点について,厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり,生活保護法3条,8条2項に違反して違法であるとした。
他方,ゆがみ調整(2分の1処理を含む。)は違法とされず,国家賠償請求も認められなかった。
同判決は保護変更決定の取消しを認めたものであるが,取消しの効力が直接及ぶのは訴訟の原告に限られるため,原告以外の受給者への対応が問題となった。

2 専門委員会の報告書と対応の方向性

厚生労働省は,社会保障審議会生活保護基準部会の下に「最高裁判決への対応に関する専門委員会」を設置し,同委員会は令和7年8月13日から9回の審議を経て,同年11月18日に報告書を公表した。
報告書は,平成21年の消費水準がリーマンショックの影響を大きく受けていたとして,その影響から一定程度回復した時点の水準に補正する方法を示し,改定率の案として▲2.49%,▲5.54%(ただし▲4.78%が下限)及び▲4.01%の3案を挙げた。
厚生労働省は,同月21日に公表した「最高裁判決への対応に関する専門委員会報告書等を踏まえた対応の方向性」において,平成25年の基準改定までに参照し得た最新のデータが平成24年のものであることから,平成24年までの変動率に基づく▲2.49%を採用した。
同資料は,保護費の追加給付に要する費用を概ね2,000億円前後(精査中)とし,1世帯当たりの追加給付額を概ね10万円(世帯類型等による。)と示している。

第3 追加給付の内容

1 新たな水準と差額の給付

追加給付は,生活保護法8条2項の規定と同法2条の無差別平等原則を踏まえ,原告・原告以外を区別せず,▲2.49%の水準で一律に高さ調整を実施することを前提に,従来の水準(▲4.78%)との差額を支給するものである。
ゆがみ調整については,判決で違法とされていないことから,追加給付の対象とされていない。
差額の算定は,「平成25年8月から令和8年3月までの間の生活保護法による保護の基準の特例」(令和8年厚生労働省告示第43号)に基づく再処分によって行われる。

2 対象世帯

厚生労働省の「追加給付の対象となる方へのご案内」によれば,対象は次のとおりである。
① 平成25年8月から平成30年9月までの間に生活保護を受給したことがある全ての世帯
② 平成30年10月から令和8年3月までの間に生活保護を受給したことがある世帯のうち,一定期間入院・入所していた者,障害者加算等が算定されていた者,毎年12月に支給される期末一時扶助費が算定された世帯等
現在は保護を受給していない世帯も,上記の条件に当てはまれば対象となる。

3 支給額の例

支給額は,当時の年齢,世帯人数,居住地域,受給期間及び加算の有無等によって異なる。
同案内は,地方部(3級地-2)の居宅で平成25年8月から令和8年3月まで継続して受給していた場合の例として,60歳代単身で8.5万円,30歳代の夫婦と4歳の子1人で16.1万円を示している。
従来水準に対する追加給付率は,平成25年8月からが+0.8%,平成26年4月からが+1.6%,平成27年4月からが+2.4%であり,平成25年改定が3年かけて段階的に実施されたことに対応している。
上記の例は各種加算を算定していないため,加算が算定されていた世帯や,入院患者日用品費等が算定されていた世帯では,額が増えることがある。

第4 受給中の世帯と受給していない世帯の手続

1 現に生活保護を受けている世帯

現に生活保護を受けている世帯には,現在保護を受けている自治体が追加給付を行うため,原則として申出は不要である。
厚生労働省は,受給中の世帯について令和8年3月から順次追加給付を開始していると公表している。
ただし,平成25年8月以降に別の自治体で保護を受けていた期間がある場合は,その期間について当時保護を受けていた自治体への申出が必要である。

2 現に生活保護を受けていない世帯

現在は生活保護を受けていない世帯は,当時保護を受けていた自治体に申し出ることにより追加給付を受ける。
厚生労働省の令和8年7月17日の公表によれば,申出の受付期間は令和8年8月1日から令和9年7月31日までであり,多くの自治体では開庁日(平日)に受け付ける。
申出は当時の世帯主から行うことが予定されており,転居を重ねた世帯は,受給していた自治体ごとに申し出る必要がある。

3 死亡した世帯員と収入認定の扱い

同案内のよくある質問によれば,亡くなった者は保護費の追加給付の対象とならず,例えば当時3人世帯で父親が死亡し現在2人で受給している場合には,2人分の追加給付となる。
また,現に保護を受けている世帯への追加給付は,収入認定の対象とならないが,保有が認められない物品の購入等は認められない。
厚生労働省は,同省や自治体が電話で口座番号等を聞くことはないとして,詐欺への注意を呼び掛けている。

第5 原告への特別給付金

厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護基準引下処分取消等請求訴訟に係る原告への特別給付金の支給について」(令和8年2月20日付け社援発0220第2号)は,最高裁判決を含む確定判決により保護変更決定処分が取り消された原告について,紛争の一回的解決の要請を踏まえ,高さ調整を実施しない水準となるよう,保護費に代えて予算措置による特別給付金を支給するとしている。
同通知に付された支給要領によれば,実施主体は厚生労働省であり,原告(途中で保護廃止となった原告を含む。)であって追加給付の対象となった者が,被告自治体に支給申請書を提出する。
支給額は,ゆがみ調整のみを実施した上での高さ調整0%と▲2.49%との差額と,当時の法定利率(年5%)に基づく金利相当分の合計であり,特別給付金給付率は対象期間に応じて0.87%,1.74%及び2.61%とされている。
特別給付金の法的性格は贈与契約であって行政処分ではないから,支給に係る不服申立ての対象とはならないとされ,支給された特別給付金は収入認定せず,自立更生に充てられるよう助言指導するものとされている。

第6 弁護士・支援者が確認すべき事項

成年後見人,相続人の代理人又は支援者として関与する場合は,次の事項を確認する。
① 平成25年8月以降の受給期間と,受給していた全ての自治体
② 現在も受給中か,受給を終えているか(受給終了世帯は申出期間内に当時の自治体へ申し出る必要がある。)
③ 当時の世帯主と現在の申出者の関係,死亡した世帯員の有無
④ 加算・入院入所・期末一時扶助の有無(支給額に影響する。)
⑤ 原告であったか否か(原告は特別給付金の申請を別に要する。)

なお,日本弁護士連合会は,令和8年1月23日付けの「最高裁判所判決を受けた厚生労働省の対応策の撤回と全ての生活保護利用者への全面的な補償措置等を求める会長声明」で,厚生労働省の対応策を批判している。
追加給付の水準そのものを争うかどうかは,個別の受給者ごとに,新たな処分の内容と不服申立ての期間を確認して判断する必要がある。

第7 出典

裁判所「最高裁令和7年6月27日第三小法廷判決(令和5年(行ヒ)第397号ほか)」
厚生労働省「社会保障審議会(生活保護基準部会 最高裁判決への対応に関する専門委員会)」
厚生労働省社会・援護局「最高裁判決への対応に関する専門委員会報告書等を踏まえた対応の方向性」
厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護基準引下処分取消等請求訴訟に係る原告への特別給付金の支給について」(令和8年2月20日付け社援発0220第2号)
厚生労働省「最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付に関するお知らせ」(令和8年7月17日)
厚生労働省「追加給付の対象となる方へのご案内」
日本弁護士連合会「最高裁判所判決を受けた厚生労働省の対応策の撤回と全ての生活保護利用者への全面的な補償措置等を求める会長声明」(令和8年1月23日)