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会社補償契約とD&O保険の違い―対象費用,決定手続,利益相反と開示(AI作成)

第1 会社補償とD&O保険の違い

会社補償契約は,役員等の防御費用や第三者に対する賠償に伴う一定の損失を,会社が契約に基づいて補償する仕組みである。
D&O保険は,役員等の責任追及等による損害を,保険会社が契約の定めに従って填補する仕組みである。
役員の責任そのものを免除する制度とは異なり,補償・保険があるだけで任務懈怠責任がなくなるわけではない。

本記事は,令和8年10月17日に確認した会社法430条の2・430条の3及び施行規則を基に,株式会社の契約内容の決定と責任追及を受けた役員への対応の基本を説明する。
法律上可能な範囲と,実際の契約・約款上の支払範囲を区別する必要がある。

比較事項会社補償契約D&O保険
主な契約関係会社と役員等会社と保険会社。役員等が被保険者となる
支払の基礎補償契約と法定の補償制限保険約款・特約と法定の決定手続
原資会社の財産保険契約に基づく保険金
確認事項対象費用,補償禁止,返還・報告対象者,保険事故,限度額,免責,通知・同意

第2 会社補償の対象と補償できないもの

1 責任追及に対処する費用

会社法430条の2第1項1号は,役員等が職務執行に関して法令違反を疑われ,又は責任追及の請求を受けたことに対処するための費用を対象とする。
弁護士費用等についても,どの請求・調査に対応する費用か,契約の対象か,通常要する範囲かを確認する。
通常要する費用の額を超える部分は補償できない(同条2項1号)。

防御費用と,最終的に責任が認められた場合の賠償金は別の基準で判断する。
株主代表訴訟についても,両者を一括して「全て補償できない」又は「全て補償できる」と扱わない。

2 第三者への賠償・和解による損失

同条1項2号は,職務執行に関して第三者に損害賠償責任を負う場合の,賠償又は和解に基づく支払による損失を対象とする。
ただし,会社がその損害を賠償したなら役員等が会社に423条1項の責任を負う場合の当該責任部分や,役員等の悪意・重過失による第三者責任の損失は補償できない(430条の2第2項2号・3号)。

会社自身に対する賠償責任を,会社が補償して実質的に消すこととは区別する。
責任免除・責任限定契約の要件も,補償契約の決議だけで満たされるものではない。

3 不正目的が判明した場合の返還

防御費用を補償した会社が,役員等が自己・第三者の不正な利益を図り,又は会社に損害を加える目的で職務を執行したことを知った場合には,補償額に相当する金銭の返還を請求できる(同条3項)。
悪意・重過失に関する損失の補償禁止と,この不正目的に基づく防御費用の返還の規律は区別する必要がある。

第3 内容決定の機関と利益相反

補償契約の内容は,株主総会,取締役会設置会社では取締役会の決議で決める(会社法430条の2第1項)。
役員等賠償責任保険契約の内容の決定にも,同様の決議が必要である(430条の3第1項)。
代表取締役の署名と,会社として必要な決議の有無を別々に確認する。

両条は,通常の利益相反取引規制等について適用除外を定める。
しかし,内容決定の決議まで不要になるわけではなく,特別利害関係を有する取締役の議決参加は会社法369条2項等により別に確認する。
対象者,契約範囲,会社の負担,職務の適正性への影響を検討して決議資料に残すことが望ましい。

補償契約に基づく補償をした取締役と補償を受けた取締役には,重要な事実を遅滞なく取締役会へ報告する義務がある(430条の2第4項)。
契約の承認,個別支出の審査,支出後の報告を同じ処理で済ませない。

第4 D&O保険で確認する契約条件

会社法430条の3は,役員等を被保険者とし,職務執行に関する責任やその追及による損害を保険者が填補する契約を規律する。
法務省令で対象から除かれる保険契約もあり,商品の名称だけで適用を判断しない。

個別の事故対応では,保険証券・約款・特約から,①対象役員と退任者の範囲,②対象となる請求,③保険期間・通知期限,④防御費用,⑤限度額・免責額,⑥故意行為等の免責,⑦和解・弁護士選任の事前同意を確認する。
これらは個々の契約の確認項目であり,全商品に同じ免責・通知条件があるとするものではない。

保険会社の支払判断と,会社の補償契約上の義務は別の問題である。
会社と役員の費用負担が争われる場合や,会社も役員も被告となった場合には,それぞれの利害と代理人選任を分けて検討する。

第5 開示と証拠の保存

公開会社の事業報告では,会社法施行規則119条,121条3号の2から3号の4まで,121条の2等に従い,補償契約の相手方・内容,補償の実施,保険の被保険者の範囲・内容の概要等を確認する。
全会社に同じ開示項目を当てはめず,公開会社該当性,機関設計,対象役員及び契約・支払内容を照合する。

契約書,約款・特約,議事録,責任追及の資料,費用見積書・明細,保険会社への通知,支払判断及び取締役会への報告を対応させて保存するとよい。
事前の契約確認と事後の支出審査を分けることで,支払根拠と補償制限を確認しやすくなる。

第6 出典と関連記事

①e-Gov法令検索「会社法」。430条の2,430条の3,369条2項。
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

②e-Gov法令検索「会社法施行規則」。119条,121条,121条の2等。
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012

③法務省「会社法の一部を改正する法律について」。会社補償・保険契約の改正。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00001

④報酬配分は,取締役報酬の再一任を参照されたい。
会社の顧問弁護士による受任は,株主代表訴訟における利益相反で扱う。
沿革は,会社法の改正経緯で説明する。