メインコンテンツへスキップ
       

民事上告・上告受理申立ては何か月かかる?最高裁の審理期間と統計の読み方(AI作成)

第1 統計から分かる審理期間と,個別事件の終了時期

令和7年公表の第11回迅速化検証報告書の表2では,令和6年の対象となる民事上告事件の平均審理期間は3.8か月,民事上告受理事件は3.9か月である。6か月以内に終わった割合は,それぞれ約85.3%,約84.7%となる。
これは最高裁での記録受付から終局までの期間についての既済事件の統計であり,上告状を提出した日からの期間や,個別事件の終了期限ではない(第11回検証報告書・上訴審における訴訟事件の概況・PDF20頁・冊子213頁)。
最高裁判所の月表や年表からも,審理期間別の件数を確認できる。
令和7年11月の月表では,「民事上告」欄の既済184件のうち162件,「民事受理」欄の既済212件のうち185件が6か月以内の区分に入る。割合はそれぞれ約88.0%,約87.3%である。
ただし,この集計には行政事件等も含まれる。自分の民事事件が6か月以内に終わることや,6か月を過ぎれば上告受理決定が出ることを示すものではない(令和7年11月の最高裁判所事件月表・PDF3頁)。

本記事では,月表の期間区分,年表の上告・上告受理別の内訳及び年次概況の平均期間を区別して説明する。
制度や理由書の提出手続は上告審に関するメモ書き,不受理決定の意味は上告不受理決定は原判決を正しいと認めたことになるかを参照されたい。

第2 月表で6か月以内の終局割合を読む

1 「6月以内」欄だけを分母で割らない

月表の「上告既済事件の審理期間表」には,「2月以内」「3月以内」「6月以内」「1年以内」等の欄がある。
これらは総数を期間別に分けた区分であり,後の欄に前の欄の件数が重ねて入っているわけではない。例えば,6か月以内に終わった件数は,2月以内・3月以内・6月以内の3欄を合計して求める。
令和7年11月分の計算は,次のとおりである(同月表PDF3頁)。

月表の区分既済総数6か月以内の件数総数に対する割合
民事上告184件44+48+70=162件約88.0%
民事受理212件42+51+92=185件約87.3%

割合は本記事で計算し,小数第1位に丸めたものである。分母は当月に既済となった件数であり,当月の新受件数や当月末の未済件数ではない。

2 表の「民事」と,行政事件を除いた民事事件は同じ範囲とは限らない

同月表のPDF1頁では,民事の上告(新法)の既済は145件,行政の上告の既済は33件,民事の特別上告の既済は6件である。これらを足すと,期間表の「民事上告」184件に一致する。
また,民事の上告受理の既済174件と行政の上告受理の既済38件を足すと,「民事受理」212件に一致する。
したがって,上記割合を,行政事件を除いた民事事件だけの割合として引用することはできない。

年表にも,原則として民事事件に行政事件を含め,民事上告事件に特別上告事件を含めるという凡例がある。統計の見出しだけで対象を決めず,凡例と内訳を併せて確認する必要がある(令和6年度最高裁判所事件統計年表・PDF2頁)。

第3 年次資料で上告・上告受理申立てを分けて読む

1 行政と分けた民事統計を読む

第11回迅速化検証報告書の2.1は民事訴訟事件,2.2は行政事件訴訟を分けて説明している。
民事の章の主な分析対象は,高等裁判所が第二審としてした終局判決に対して,上告が提起され,又は上告受理申立てがされた事件である。表2の令和6年の既済事件について,6か月以内の件数を求めると,次のとおりとなる(同報告書PDF19~20頁・冊子212~213頁)。

民事の区分既済総数6か月以内の件数総数に対する割合
上告事件1855件957+625=1582件約85.3%
上告受理事件2397件1175+856=2031件約84.7%

月表・年表の「民事」に行政事件等が含まれる集計とは,対象が異なる。表が異なる数字を,そのまま増減の比較に使うことはできない。

2 行政事件等を含む年表の計算

令和6年度版の年表の第11表には,令和6年の既済事件について,上告事件と上告受理事件を分けた審理期間別の内訳がある。
当審受付から終局までの6か月以内の割合を求めると,次のとおりとなる(同年表PDF18頁・冊子11頁)。ここでも,原則として行政事件及び特別上告事件を含むという凡例が適用される。また,令和6年の数値は速報値である。

年表の区分既済総数6か月以内の件数総数に対する割合
上告事件2351件712+595+714=2021件約86.0%
上告受理事件2883件750+725+977=2452件約85.1%

これは1年分の既済事件を分母とした割合であり,前述の令和7年11月の1か月分の割合とは対象期間が異なる。
毎年・毎月同じ割合になるという趣旨ではない。

3 並行申立ての件数を重ねて数えない

第11表の年度別の表には,上告と上告受理の合計事件数のほか,並行申立てを1件として計上し直した件数が別段に示されている。
令和6年は,合計5234件に対して,計上し直した件数は3223件である。両手続の件数を足した数字を,そのまま別々の紛争や当事者の人数と読むことはできない。
上告・上告受理別の内訳の括弧内の数値も,並行申立てや受理決定のあった事件の内数である。総数に追加して足さない(同年表PDF18頁の注記)。

第4 平均審理期間と起算点の違い

1 最高裁での期間と,第一審からの期間を区別する

第11回迅速化検証報告書は,上告又は上告受理申立ての記録受付から終局までを平均審理期間としている。前述の3.8か月・3.9か月は,表2の対象となる民事事件の値である(同報告書PDF19頁脚注2,20頁表2)。
同報告書の表3は,同じ令和6年の対象民事事件について,第一審受理から上告審終局までの平均審理期間を示す。上告事件は39.2か月,上告受理事件は40.3か月である(第11回検証報告書の表3・PDF21頁・冊子214頁)。
最高裁での平均3.8か月・3.9か月との違いは,期間の起算点が異なることによる。第一審からの平均を,最高裁への申立て後に必要な期間と読み替えてはならない。平均は,その年に終了した対象事件をまとめた値であり,個別事件の標準的な終了期限ではない。

2 受理決定までと,受理後の終局までを区別する

上告受理申立事件については,受理・不受理を判断するまでの期間と,上告受理決定があった事件が最終的に終わるまでの期間を分ける必要がある。
第11回迅速化検証報告書の脚注2は,上告受理決定があった場合,その後の判決等が出た場合を終局として扱うことを明記する。
表2の上告受理事件には,不受理決定で終わった事件と,受理後に判決で終わった事件が含まれる。全体の平均3.9か月を,受理された事件だけの所要期間や,受理決定までの平均期間と読み替えることはできない(同報告書PDF19~20頁)。
期間を引用する際には,対象年,起算点,終点及び対象事件を併記することが必要である。

第5 審理期間から棄却・不受理や個別事件の結論を推測できるか

1 期間別集計と終局区分別集計は別である

月表の審理期間表は,いつまでに終わったかを分類する。他方,既済区分表は,判決・決定・その他の別を示す。
令和7年11月分では,「民事上告」の決定は183件,「民事受理」の決定は212件であるが,この区分表だけでは,決定の種類と期間区分を掛け合わせた件数は分からない(同月表PDF2頁)。
したがって,「約9割が6か月以内に終わった」という集計を,「約9割が6か月以内に棄却・不受理になった」という別の集計に読み替えることはできない。
期間と結果を組み合わせて読むには,第11回検証報告書の表2のような,期間別・終局区分別を併せた表が必要である。
同表の民事上告受理事件では,6か月以内の不受理決定は1166+845=2011件で,既済総数2397件に対して約83.9%である。前述の6か月以内の終局割合約84.7%とは同じ指標ではない(同報告書PDF20頁)。
終局区分だけの内訳は,年次概況の表14などでも確認できる(令和6年の事件の概況PDF10頁・冊子9頁)。

2 未済事件は,まだ結果が出ていない事件の集計である

既済事件の割合には,その時点で審理中の事件は入っていない。未済事件の期間別集計は,観測時点までに経過した期間を示すのであり,そこから終局までに必要な残りの期間を示すものではない(令和6年度版年表第12表・PDF19頁)。
6か月を過ぎたという事情だけで,受理や破棄の見込みが高くなったと判断することはできない。自分の事件の進行は,事件番号,提出・送達の記録及び裁判所からの通知に即して確認することになる。
理由書提出の期限と統計上の審理期間も別であり,前者は控訴理由書・上告理由書の提出期限を参照されたい。

第6 資料一覧・関連記事

1 本記事で用いた資料

① 令和7年11月の最高裁判所事件月表(PDF1~3頁)。
② 令和6年度最高裁判所事件統計年表(凡例PDF2頁,第11表PDF18頁,第12表PDF19頁)。令和6年の数値は速報値である。
③ 令和6年の最高裁判所事件の概況(表14PDF10頁)。
④ 第11回迅速化検証報告書・上訴審における訴訟事件の概況(令和7年公表,PDF19~21頁・冊子212~214頁。民事の主な分析対象及び平均期間の定義はPDF19頁脚注1・2)。

2 関連記事

① 最高裁判所事件月表の一覧。
② 最高裁判所の事件の概況。
③ 最高裁判所事件統計年表。
④ 最高裁の既済事件一覧表(民事)。
⑤ 上告審に関するメモ書き。
⑥ 上告不受理決定の意味。